説明

セグメントの止水構造

【課題】ピース間接合面に一定のクリアランスが生じるセグメントを用いたトンネルの構成に際し、組み付け性が良好であり、しかも、止水性が良好なセグメントの止水構造を提供する。
【解決手段】セグメント11の一方のピース間接合面11Aに突条部15を設けるとともに、他方の接合面11Bに突条部を受容する凹部16が設けられている。セグメント11は、突条部15を凹部16に受容させた状態で環状に接合されるとともに、これを軸方向に接合することでトンネルを構成する。突条部を凹部に受容させたときに接合面11A、11B間に所定のクリアランスCが形成されるようになっており、これら突条部及び凹部に隣接する位置に溝17が設けられている。溝17には第1のシール材20が配置され、これに第2のシール材21が重ね合わされている。第2のシール材は、前記セグメント11を一周するように巻き付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル用セグメントの接合面にシール材を配置したセグメントの止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル用のセグメントは、それぞれが湾曲した板状をなし、これを周方向に接合して環状に形成するするとともに、更に軸方向に連続させることによりトンネルを構成するものとなっている。
【0003】
一般に、前記セグメントの周方向接合面であるピース間接合面や、軸方向接合面であるリング間接合面には、各々シール材を配置するための溝が設けられており、当該溝に帯状のシール材を貼り付けた状態でセグメントを接合することにより、トンネル内に地下水などが浸入しないように構成される。
【0004】
前記シール材は、一本の連続した帯状のシール材をセグメントに巻き付けて一周させて前記端縁の接合部を最小限の一箇所にすることが行われている。また、前記接合部をセグメントのコーナーを除く辺の途中に設定することにより、接合部から漏洩し難くすることができる。
【0005】
一方、近年ではトンネルの耐震性を向上させるために、セグメントのピース間接合面の一方に突条部を形成するとともに他方に凹部を設け、突条部が凹部に嵌入若しくは受容されるように接合される構造のセグメントが使用されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
このようなセグメントは、突条部の頂点が凹部に略接触して接合され、それ以外の部分はクリアランス、いわゆる「遊び」があり、接触しない構造となっている。そのため、地震の揺れの際にはセグメント部分が揺れに追従するように作用し、当該セグメントの破損を防止することができる。
【特許文献1】特開2002−332799号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1におけるセグメントの止水構造にあっては、突条部と凹部との間にシール材が配置される構成であるため、当該突条部と凹部との突き合わせ領域において、シール材が破断されてしまう可能性があり、長期使用によってシール材の反発性が失われた場合には、前述したクリアランスが変化してしまい、トンネル全体ががたついてしまう、という不都合を招来する。
【0007】
また、ピース間接合面にクリアランスを形成する構造のセグメントを使用して、ピース間接合面及びリング間接合面に同一形状のシール材を配置した場合には、リング間接合面に配置したシール材は所定量圧縮されることになるが、ピース間接合面に配置したシール材は圧縮されない状態となるか、圧縮されたとしても僅かしか圧縮されない状態となってしまい止水性は低いものとなる。この一方、ピース間接合面に合わせてシール材の厚さを設定した場合には、リング間接合面は、シール材の厚さが厚くなり過ぎることになり、締め付けに非常に強い力が必要となる等の施工性に支障をきたすおそれもある。
【0008】
更に、前記セグメントに連続する帯状のシール材を一周巻き付けた場合には、シール材の厚さ(高さ)はピース間接合面とリング間接合面とで同じに形成されるものであるため、それぞれの接合面の適切な厚さを形成することができないものとなる。
【0009】
前記シール材はピース間接合面に貼るためのシール材、リング間接合面に貼るためのシール材を別個に用意し、合計4個のシール材をそれぞれの端面に貼り付けることにより略閉ループ状に形成することができる。
しかし、シール材の端縁同士の接合部は他の部分と比べ強度が弱く、セグメント組立時においてシール材同士が擦れたりして接合部分が切れたり、剥がれたりするおそれがある。
更に、シール材に水膨張性ゴムを使用した場合には、使用時にシール材が膨張したときに、接合部に隙間が生じたり、接合部が剥離し易くなり、シール材がセグメントから脱落するおそれもある。特にシール材の突き合わせ端縁同士の接合部がセグメントのコーナーに一致する場合には、セグメントの組み立て作業中に接合部が剥がれ易く、その部分から漏水してしまうという不都合を招来する。
また、帯状に連続したシール材で厚さの異なる部分を形成しておき、厚い部分をピース間に、薄い部分をリング間に位置するように一周巻き付ける方法も考えられるが、セグメントの大きさに合わせて正確にシール材を形成することは実用的でない。
【0010】
このような事情から、ピース間接合面が突条部と凹部で接合されるセグメントを用いたトンネルの構成に際し、容易且つ確実な止水構造の提供が待望されている。
【0011】
[発明の目的]
本発明は、前述した実状に鑑みて案出されたものであり、その目的は、ピース間接合面に一定のクリアランスが生じるセグメントを用いたトンネルの構成において、組み付け性が良好であり、しかも、止水性が良好なセグメントの止水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、筒体を軸方向に複数分割した形状をなす板状部材の周方向一端面に、当該端面に沿う突条部を設けるとともに、他方の端面に前記突条部を受容する凹部を設けてトンネル用セグメントを形成し、前記突部を凹部に受容させて各セグメントを環状に接合するとともに、これらセグメントを軸方向に接合して形成されるトンネルのセグメント止水構造において、
前記セグメントは、前記突部を凹部に受容させたときに、前記端面間に所定のクリアランスが形成されるように形成され、これら突部及び凹部に隣接する位置で前記端面の長さに略対応する溝がそれぞれ設けられ、
前記溝に第1のシール材を配置するとともに、当該第1のシール材に重なるように第2のシール材を配置し、
前記第2のシール材は、前記セグメントを一周するように巻き付けられる、という構成を採っている。
【0013】
本発明において、前記第1のシール材は略C字状のチャンネルを長さ方向に備えた帯状シール材であり、当該第1のシール材に重なる第2のシール材は、前記チャンネル内に位置するように配置される、という構成を採ることが好ましい。
【0014】
また、前記溝は、前記突部及び凹部の内側と外側にそれぞれ形成するとよい。
【0015】
更に、前記シール材は水膨張性ゴムと非膨張性ゴムを組み合わせたものにより構成することが好ましい。
【0016】
シール材を構成する材料としては、天然ゴム、合成ゴムが使用できるが、継手の動きに追従するため適度な伸縮性と反発弾性を有するものであれば何でも良い。具体的にはイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。また、この他に軟質塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂やウレタン製やポリエチレン製の発泡体等も使用可能である。
また、これらのゴム基材に親水性ウレタン樹脂や高吸水性樹脂を混合し、水膨張機能を付与した水膨張ゴムでも良く、水膨張ゴムと非膨張ゴムを複合構造にしたものが更に好ましい。特に、シール材の大部分を水膨張性ゴムで形成し、その側面に非膨張性ゴムを形成するとシール材の幅方向に膨張するのを防止することができ好ましい(高さ方向に膨張するのが好ましい)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、セグメントの組み付け性が良好でシール材が膨張してもセグメントから脱落せず、長期的に止水性を保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示されるように、本発明に係るトンネル10は、コンクリートからなる複数のセグメント11によって構成される。セグメント11は、筒体を軸方向に六分割した板状部材であり、六枚のセグメント11が一組とされ、これらを周方向に相互に接合して環状とし、これを軸方向に順次接合することでトンネル10を構成する。なお、各セグメントは、六分割されたものに限定されるものではなく、分割数は任意に決定される。
【0019】
前記セグメント11は、図2ないし図4に示されるように、平面形状が略方形をなし、円弧状に湾曲したコンクリート製若しくは鋼製のものが好ましくは採用される。このセグメント11は、図2ないし図4に示されるように、環状となるように接合した際の周方向両側に位置する端面がピース間接合面11A、11Bとされる一方、軸方向となる端面がリング間接合面11Cとされる。ピース間接合面11A、11Bのうち、一方のピース間接合面11Aには、当該ピース間接合面11Aの略全長に亘って延びる突条部15が設けられているとともに、他方のピース間接合面11Bには、突条部15を受容する凹部16がピース間接合面11Bの略全長に亘って形成されている。これらセグメント11は、隣接するセグメント11間において、突条部15が凹部16に受容された状態で接合されるとともに、当該接合状態で、ピース間接合面11A、11B間にクリアランスC(図6参照)が形成される寸法設定とされている。
【0020】
前記ピース間接合面11A、11Bには、図6に示されるように、突条部16及び凹部16の内側及び外側に溝17がそれぞれ形成されている。各溝17は、底部17Aと、当該底部17Aの幅方向両端から次第に拡開するように傾斜した側面17Bとを備えた形状となっている。また、前記リング間接合面11Cには、図7に示されるように、前記溝17に連なる溝18が形成されている。この溝18も、溝17と同様の底部18A、側面18Bを備えた形状とされ、これにより、セグメント11の外周端面には、前記溝17,18により連続した閉ループ状の溝が形成される。
【0021】
前記ピース間接合面11A、11Bにおける各溝17には、第1のシール材20がそれぞれ配置され、当該第1のシール材20上には、第2のシール材21が重なる状態で配置される。第1及び第2のシール材20、21は、図5に示されるように、それぞれ帯状に延びる形状を備えており、第1のシール材20は、略C字状のチャンネル22を長さ方向に備えた形状に設けられている。この一方、第2のシール材21は、前記チャンネル22内に収まる幅を備えた形状に設けられている。第1のシール材20は、接着剤を介して前記ピース間接合面11A、11Bの溝17内に貼付され、第2のシール材20は、接着剤を介して第1のシール材20のチャンネル22内に貼付される。なお、前記リング間接合面11Cには、前記溝18に第2のシール材21が貼付される。この第2のシール材21は、セグメント11の外周端面を一周する長さのものが用いられ、当該第2のシール材21は、セグメント11の外周におけるコーナーを除く任意の位置に第2のシール材21の一端を始点として貼付し、外周端面を一周するように巻き付けて第2のシール材21の他端を前記始点に突き合わせるようにして貼付される。
【0022】
以下に、本発明の更に具体的な実施例及び止水実験の結果について説明する。
【0023】
[実施例]
セグメント11はコンクリート製とし、ピース間接合面11A、11Bの長さが1600mm、リング間接合面11Cの長さが3600mm、厚さ320mmのものとし、6枚合わせると円形(環状)になるものを使用した。
ピース間接合面11A、11B間は内側(坑内側)、外側(地山側)とも約3mmのクリアランスCを生じており、リング間接合面11C間はクリアランスがCが生じない構造である(目開き量0mm)。
ピース間接合面11A、11B及びリング間接合面11Cには以下寸法の溝17、18が設けられている。
溝17は、図6(B)において、w1:25mm、w2:30mm、d1:2.5mm、d2:2.5mm、t1:3mm)、溝17,17間の断面積は227.5mmである。
溝18は:図7(B)において、w3:25mm、w4:30mm、d3:2.5mm、d4:2.5mm、溝18間の断面積は137.5mmである。
【0024】
第1のシール材20は、図5において、w5:17mm、w6:23mm、t2:1.5mm、t3:3mmであり、第2のシール材21は、w7:17mm、t4:4mmのものを使用した。
第1及び第2のシール材20,21の材質はクロロプレンゴムである。また、これらシール材の硬度はA45である。ここでは、水膨張性のゴムと非膨張性のゴムを組み合わせた複合構造のものが用いられ、シール材全体で膨張率が200%になるように、水膨張性ゴムの材質、水膨張性ゴムと非膨張性ゴムの比率が選択される。ここで、前記非膨張性のゴムは、第1のシール材20の幅方向外側と、溝部を除く上面側に用いられ、第2のシール材21では、幅方向外側に用いられ、これにより、シール材幅方向への膨張を抑制するようにした。
なお、接着方法はピース間接合面11A、11Bにゴム系溶剤揮散型接着剤を塗布し、10分〜30分指触乾燥させた後、接着剤被塗布面に第1のシール材20を貼り付けた。次に、第1のシール材20のチャンネル22内部及びリング間接合面11Cにゴム系溶剤揮発型接着剤を塗布し、10分〜30分指触乾燥させた後、接着剤被塗布面に第2のシール材21を貼り付けた。
【0025】
[止水実験1]
本発明のピース間接合部を想定した構造での止水実験を模擬セグメントを用いて行った。
図8に示す模擬セグメントシール構造に前記実施例と同様の溝を形成し、第1シール材と第2シール材を重ね合わせてシール材を形成した。シール材同士が接触するように接合した。ただし、接合面間に4mmのスペーサーを入れて、ピース間接合面にクリアランスが生じるようにした。4mmのスペーサーとは、ピース間に想定される3mmに1mmの施工誤差(目開き1mmという)時を想定したものである。
また、4mmのスペーサーに替え、6mmのスペーサーを用いて行った。これはピース間に想定される3mmに3mmの変異(地震などでセグメントが移動した場合:(目開き3mmという))を想定したものである。なお、図8の上側フランジと下側フランジの溝は上側フランジが3mm内側に形成され、シール材同士が3mmずれて接触するようにしている(目違い量3mmを想定している。なお、目違い量とはシール材の横方向のズレである)。
【0026】
[止水実験2]
また、シール材の形状を変えて止水実験1と同様に行った。
第1のシール材としてチャンネルを有しない平坦な帯状シール材(幅:20mm、厚み1.5mm、水膨張ゴムの幅方向両端部に非膨張ゴムを配したもの)を用い、第2のシール材として帯状シール材(幅:20mm、厚み:4mm、水膨張ゴムの幅方向両端部に非膨張ゴムを配したもの)を貼り合わせ、止水性を測定した。
【0027】
止水実験1及び止水実験2で準備したシール材を用いて止水実験(耐水圧試験)を行った。
止水圧は、スペーサー4mm(目開き量1mm)の実験は、水圧を0.1〜0.5MPaと変化させ、即時止水性を確認した。その結果を表1に示す
【0028】
【表1】

【0029】
また、スペーサー6mm(目開き量3mm)の実験は、吸水養生14日させた後水圧を0.1〜0.4MPaまで変化させて止水性を確認した。その結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
さらに、その後、0.4MPaの圧力を維持したままその状態を180日間保持し長期止水性の確認を行った。その結果を表3に示す。
【0032】
【表3】

【0033】
以上の試験において、目開き量1mm、目違い量3mm時は、止水実験1及び止水実験2とも、水圧0.5MPaを止水できた。しかし、目開き量3mm・目違い量3mm時は、止水実験1は180日間止水性を保持したが、止水実験2は60日後において漏水が発生した。このことから止水実験1の方が良好な止水性を示すことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】実施形態を示すトンネルの概略斜視図。
【図2】トンネルを構成するセグメントの概略斜視図。
【図3】図2のB−B線に沿う矢視拡大断面図。
【図4】図2のA−A線に沿う矢視拡大断面図。
【図5】第1のシール材と第2のシール材の要部斜視図。
【図6】(A)はピース間接合面を接合した状態を示す平面図、(B)は図6(A)のC部拡大図。
【図7】(A)はリング間接合面を接合した状態を示す平面図、(B)は図7(A)のD部拡大図。
【図8】本発明に係るシール構造の試験装置を示す概略正面図。
【符号の説明】
【0035】
10 トンネル
11 セグメント
11A、11B ピース間接合面
11C リング間接合面
15 突条部
16 凹部
20 第1のシール材
21 第2のシール材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体を軸方向に複数分割した形状をなす板状部材の周方向一端面に、当該端面に沿う突条部を設けるとともに、他方の端面に前記突条部を受容する凹部を設けてトンネル用セグメントを形成し、前記突部を凹部に受容させて各セグメントを環状に接合するとともに、これらセグメントを軸方向に接合して形成されるトンネルのセグメント止水構造において、
前記セグメントは、前記突部を凹部に受容させたときに、前記端面間に所定のクリアランスが形成されるように形成され、これら突部及び凹部に隣接する位置で前記端面の長さに略対応する溝がそれぞれ設けられ、
前記溝に第1のシール材を配置するとともに、当該第1のシール材に重なるように第2のシール材を配置し、
前記第2のシール材は、前記セグメントを一周するように巻き付けられていることを特徴とするセグメントの止水構造。
【請求項2】
前記第1のシール材は略C字状のチャンネルを長さ方向に備えた帯状シール材であり、当該第1のシール材に重なる第2のシール材は、前記チャンネル内に位置するように配置されることを特徴とする請求項1記載のセグメントの止水構造。
【請求項3】
前記溝は、前記突部及び凹部の内側と外側にそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のセグメントの止水構造。
【請求項4】
前記シール材は水膨張性ゴムと非膨張性ゴムを組み合わせたものである請求項1,2又は3記載のセグメントの止水構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−169628(P2008−169628A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−4024(P2007−4024)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【出願人】(000132404)株式会社スリーボンド (140)
【出願人】(592082206)スリーボンドユニコム株式会社 (11)
【Fターム(参考)】