説明

セグメントの連結構造

【課題】 複数のセグメントを千鳥状に連結するためのセグメントの連結構造において、特に大きな曲げモーメントに対しても対抗しえる高耐力および高剛性セグメントの連結構造を提供する。
【解決手段】 トンネル又は立坑の周方向に隣接するセグメントの当接される継手板21同士を跨いで、且つ上記周方向に対して略直角方向へ複数のセグメントに渡って、配設された補剛梁23と、前記当接される継手板21に対してトンネル又は立坑の軸方向に隣り合うセグメントの主桁25において、セグメント高さ方向の前記補剛梁23が配設されている側の当該主桁25の端部に、前記隣り合う継手板21の当接箇所を跨ぐように、溶接により固着された板状の補強部材24とを備え、前記補剛梁23は前記補強部材24に接合されていることを特徴とするセグメントの連結構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセグメントを千鳥状に連結して構造物を構築するためのセグメントの連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルにおいては、複数のセグメントからなる覆工体をトンネル内面に組み立てて構築される。このとき、従来の円形トンネルと異なり、道路トンネル分岐合流部等においては、かかる分岐合流部と本線トンネルの接続部近傍において大きな曲げモーメントが局所的に負荷されることになる。
【0003】
このためシールドトンネルにおいては、シールドトンネル全体の構造耐力および剛性を向上させるべく、隣接するセグメントリング間でセグメントを千鳥配置に連結し、かつセグメントリング間をリング間継手で結合することで、かかる連結をより強固にしている。
【0004】
ところで、これらセグメントの連結構造においては、セグメント本体と比較してセグメント連結部の耐力および剛性が小さいため、大きな曲げモーメントが負荷される箇所においてこれを構築する場合には、特にこの連結構造について高耐力化、高剛性化を図る必要があった。
【0005】
近年において提案された高耐力なセグメントの連結構造は、例えば、特許文献1等において開示されているが、これらはあくまで継手の構造をより複雑化させ、製作コストの増大を招くという点において問題があった。
【0006】
また、従来においては、連結構造における継手構造を構成するボルト径をより太くし、ボルトを多段に亘って配置させ、或いは継手板の板厚を増大させることにより、かかる継手構造自体の高耐力化が試みられてきた。
【0007】
しかしながら、かかる継手構造を構成するボルトの太径化を図る場合において、例えばM20mm程度のボルト径をM56mm程度まで太くすると、これを螺着させるための締め付け作業において作業者の負担が増大してしまう。また、かかるボルトを2段、更に、3段、4段と多段配置させる場合には、隣接するボルトの間隔が例えば数十mm程度と極めて狭小となるところ、さらなる高耐力化を図ることができない点において問題があった。
【0008】
特にトンネル構造の大深度化が進展するに際し、トンネルに負荷される曲げモーメントが飛躍的に増大するところ、セグメントの継手構造に対して更なる高耐力化、高剛性化が要求されることになるが、継手構造の改良のみでは、かかる要求に応えることができなくなってきている。このため、かかる大深度におけるトンネル工事を実現する上でも、トンネル全体の構造耐力および剛性を向上し得る新たな連結構造を提案する必要があった。
【0009】
そのため、特許文献2では、トンネル周方向に隣り合うセグメント同士の継手部を箱状とし、継手板を地山側に突出させて2箇所、セグメント内部側に1箇所設けてボルト接合し、更に箱内にグラウトを注入した高剛性、高耐力のセグメント連結構造が開示されている。
【特許文献1】特開2003−090197号公報
【特許文献2】特開平7−62988号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献2に開示のセグメントの連結構造では、トンネル周方向の連結においては、高耐力、高剛性になるものの、トンネル軸方向のセグメントリング間の耐力及び剛性は不十分であるという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、複数のセグメントを千鳥状に連結するためのセグメントの連結構造において、特に大きな曲げモーメントに対しても、トンネル周方向及び軸方向共に対抗し得る高耐力及び高剛性のセグメントの連結構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した問題点を解決するために、本発明のセグメントの連結構造は、(1)継手板及び主桁を有する複数のセグメントを千鳥状に連結するトンネル又は立坑を構成するセグメントの連結構造であって、トンネル又は立坑の周方向に隣接するセグメントの当接される継手板同士を跨いで、且つトンネル又は立坑の軸方向へ複数のセグメントに渡って、配設された補剛梁と、前記当接される継手板に対してトンネル又は立坑の軸方向に隣り合うセグメントの主桁において、セグメント高さ方向の前記補剛梁が配設されている側の当該主桁の端部に、前記隣り合う継手板の当接箇所を跨ぐように、溶接により固着された板状の補強部材とを備え、前記補剛梁は前記補強部材に接合されていることを特徴とする。
【0013】
(2)(1)記載のセグメントの連結構造において、前記補剛梁が、H形鋼又は角形鋼管からなることを特徴とする。
【0014】
(3)(1)又は(2)記載のセグメントの連結構造において、前記主桁に固着されている補強部材の前記周方向における端部と、当該主桁と前記軸方向に隣接する主桁に固着されている補強部材の端部とが、前記軸方向の1断面において重なっていることを特徴とする。
【0015】
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載のセグメントの連結構造において、前記継手板と前記主桁とが構成する隅角部の前記補剛梁側には、板状の伝達プレートが前記継手板及び前記主桁に溶接により固着されており、且つ、当該伝達プレートに前記補剛梁が接合されていることを特徴とする。
【0016】
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のセグメントの連結構造において、前記補剛梁は、前記連結すべきセグメントのトンネル又は立坑の内面側、外面側の少なくともいずれかに配設されていることを特徴とする。
【0017】
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のセグメントの連結構造において、前記当接される継手板の高さをセグメント高さよりも低くし、当該継手板の高さに合せて前記継手板の当接箇所における前記主桁及び前記補強部材の形状を調整して、前記補剛梁のセグメント高さ方向の突出を小さくしたことを特徴とする。
【0018】
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載のセグメントの連結構造において、前記補剛梁が、トンネル2次覆工構造内に設置されていることを特徴とする。
【0019】
尚、本発明でいうところのトンネルには、道路用、鉄道用に限らず、水路用や電線用等の暗渠を含むものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、トンネル又は立坑の周方向に隣接するセグメントの当接される継手板同士を跨いで、且つ上記周方向に対して略直角方向へ複数のセグメントに渡って、配設された補剛梁と、前記当接される継手板に対してトンネル又は立坑の軸方向に隣り合うセグメントの主桁において、セグメント高さ方向の前記補剛梁が配設されている側の当該主桁の端部に、前記隣り合う継手板の当接箇所を跨ぐように、溶接により固着された板状の補強部材とを備え、前記補剛梁は前記補強部材に接合されているセグメントの連結構造としていることから、大きな曲げモーメントが生じても、トンネル周方向及び軸方向共に対抗し得る、高耐力、高剛性なセグメントの連結構造とすることができる。
【0021】
すなわち、補剛梁並びに補強部材を配設するのみで、周方向に隣接するセグメントの境界において曲げモーメントを抑えつつ、応力伝達性能を向上させることができる。この補剛梁並びに補強部材の配設は比較的容易であり、材料や工数に必要なコストの低減化をも図ることができる。また、従来技術の如く継手構造の構成を複雑化させる必要もなくなることから、セグメントの連結構造のさらなるコスト低減を図ることも可能となる。また、周方向に隣接するセグメントの境界において曲げモーメントを小さくすることができることから、継手構造を構成する継手ボルトも細径化させることが可能となり、またこれら継手ボルトを多段配置させる必要もなくなることから、製作に伴う労力を軽減させることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の対象となるセグメントは、鋼板を組立て或いは鋳造により製造される鋼殻セグメントおよび鋼殻の内部にコンクリートを充填してなる合成セグメントである。
【0023】
鋼殻セグメントは主桁、継手板、スキンプレート、縦リブで構成されるものであり、合成セグメントには前記鋼殻セグメント内部にコンクリートを充填したものであるが、場合によってはコンクリート中に異形棒鋼を配置する構造もある。
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態として、複数のセグメントを千鳥状に連結するためのセグメントの連結構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は、本発明に係るセグメントの連結構造が適用されるシールドトンネル3の例を示している。この図1に示すように、シールドトンネル3は、複数の円弧状のセグメント4をセグメント継手部5においてリング状に連結した覆工体をトンネル内面に組み立てて構築される。このシールドトンネルにおいては、シールドトンネル3全体の構造耐力および剛性を向上させるべく、隣接するセグメントリング2間でセグメント4を千鳥配置に連結し、かつセグメントリング2間を結合することで、かかる連結をより強固にしている。
【0026】
図2は、シールドトンネル3の軸方向、周方向に連結されたセグメントリング2のトンネル内面側の正面図である。この図2に示すように、各セグメント4は、周方向に隣接するセグメントを連結するための連結構造11が形成されている。この連結構造11は、連結すべきセグメント4の周方向端部に設けられた継手板21と、周方向に隣接するセグメント4間で互いに当接させた継手板21を固定させる継手ボルト22とを有する継手部20と、当接させた継手板21同士を跨らせて周方向に対して略直角方向に(軸方向に)配設された補剛梁23と、継手板21の当接箇所に対応してトンネル3の軸方向に隣り合うセグメント4の主桁において、セグメント高さ方向の補剛梁23が配設されている側の主桁25端部に、隣り合う継手板21の当接箇所を跨ぐように固着された補強部材24と、好ましくは、当接される継手板21と主桁25との隅角部において、セグメント高さ方向の補剛梁23側に固着された伝達プレート29とを備えている。
【0027】
図3(a)、(b)は、図2に示す連結されたセグメントリングの一部側面図であり、(a)は図2のA−A方向からの側面、(b)は図2のB−B方向からの側面を示した図である。
【0028】
継手板21は、例えば、セグメントリング2の側面図である図3(b)に示すように、周方向に隣接するセグメント4の接合面としての役割を果たす。継手板21は、その上端がセグメント4の上面を構成するスキンプレート28と接触させて構成される。この継手板21の接合面には、継手ボルト22を挿通可能な孔31が上下、左右2箇所ずつ、計4箇所に亘り形成されている。この継手板21は、隣接するセグメント4における継手板21と当接させるときに、相互に孔31の位置が合うように位置調整されることになる。継手板21の高さにもよるが、継手ボルト22を3段以上にすることは、施工性の悪化や、ボルト間隔の狭小化による耐力低下を招くため、あまり好ましくない。
【0029】
継手ボルト22は、この隣接するセグメント4間に当接させた継手板21の孔31に挿入される。この孔31に挿入された継手ボルト22の先端部22aは、相手側のセグメント4における継手板21から突出されることになり、当該先端部22aに形成されている螺子部と継手ナット32とを螺合させることにより、これら当接された継手板21を強固に固定することが可能となる。
【0030】
補剛梁23は、図3(a)、(b)に示すように、略鉛直に向けられたウェブ42の上下端に上部フランジ41と下部フランジ43がそれぞれ形成されたいわゆるH形鉄骨梁(例えば、H形鋼)とすることが好ましい。図3の例は、この補剛梁23をシールドトンネル3の内面側に配設する場合を示している。
【0031】
図3(a)において、この補剛梁23は、セグメント4の高さ方向におけるトンネル内面側の主桁25(図2参照)端部に溶接により固着されている補強部材24に対して、接続ボルト45並びに接続ナット46により固定される。かかる場合には、この補剛梁23における上部フランジ41には、接続ボルト45のボルト径に応じた孔47を予め形成させておくことが必要になる。ちなみにこの補剛梁23は、補強部材24に対してボルト接合する場合に限定されるものではなく、溶接等により固着させるようにしてもよいが、作業の容易性や施工性を考慮するとボルト接合が好ましい。
【0032】
図3(b)において、この補剛梁23は、セグメント4の継手板21と主桁25とが構成する隅角部でのセグメント高さ方向のトンネル内面側において、継手板21及び主桁25(図2参照)の両方の端部に溶接により固着されている補強部材24に対して、接続ボルト45並びに接続ナット46により固定される。かかる場合には、この補剛梁23における上部フランジ41には、接続ボルト45のボルト径に応じた孔47を予め形成させておくことが必要になる。ちなみにこの補剛梁23は、補強部材24に対してボルト接合する場合に限定されるものではなく、溶接等により固着させるようにしてもよいが、作業の容易性や施工性を考慮するとボルト接合が好ましい。
【0033】
また、この補剛梁23は、いわゆるH形鉄骨梁で構成される場合に限定されるものではなく、例えば、断面が矩形且つ中空の角形鋼管等、セグメントに対する曲げ荷重に対して必要な耐力及び剛性を確保できる梁で構成することができる。
【0034】
補剛梁23は隣接する千鳥組されるセグメントのリング間の荷重伝達を行うことを目的とするため、補剛梁は少なくとも隣接2リングを連続して跨ることが望ましく、また、その長さは、トンネル内における作業性から最大で10m程度が好ましい。
【0035】
補強部材24は、図2の点線で示すように台形状又は長方形状(図示せず)の鋼板で構成されている。この補強部材24は、図2、図3(a)に示すように、継手板21に対してトンネル又は立坑の軸方向(図2の補剛梁23の長手方向)に隣り合うセグメントの主桁25の、セグメント高さ方向(図2における垂直方向)の前記補剛梁が配設されている側の当該主桁の端部に、前記隣り合う継手板の当接箇所を跨ぐように、溶接により固着されている。そして、補強部材24には、トンネル又は立坑の周方向に隣接するセグメントの当接される継手板同士を跨いで、且つ上記周方向に対して略直角方向へ複数のセグメントに渡って、配設された補剛梁23がセグメント4に対して螺着させるための接続ボルト45により、固定される。補剛梁23を補強部材24に接合する手段としては溶接も可能であるが、作業の容易性や施工性を考慮するとボルト接合が好ましい。
【0036】
そして、補強部材24は、トンネル又は立坑の軸方向に隣接するセグメント同士において、一方の主桁に固着されている補強部材の周方向における端部と、当該主桁と軸方向に隣接する主桁に固着されている補強部材の端部とが、軸方向の1断面において重なっていること(図2においては、隣接するそれぞれの主桁に固着されている補強部材24の端部同士は、台形状の斜面部分において一部が重なっている)がより好ましい。これにより、曲げモーメントが生じた時の応力の伝達がよりスムーズに行われるためである。
【0037】
また、補強部材24は、セグメント高さ方向において、補剛梁23が配設される側と反対側にも固着配置しても良く、より耐力、剛性が向上する(図3(c)参照)。
【0038】
この補強部材24のサイズ、形状は、この図2に示す例に限定されるものではなく、矩形状他、いかなるものであってもよい。周方向の長さとしては、少なくとも1m以上(中央部すなわち軸方向に隣り合う継手板に対応する位置から周方向にそれぞれ50cm以上)とることが好ましい。軸方向の幅としては、少なくともボルト頭がはみ出ない幅とすることが好ましい。
【0039】
また、補強部材24は主桁25に溶接する板に替えて、主桁と一体化させた断面L字状の部材(例えば、山形鋼)または、断面C字状の部材(例えば、溝形鋼)を用いることも可能である。
【0040】
伝達プレート29は、長方形又は正方形の鋼板で構成されている。この伝達プレート29は、継手板21と主桁25とが構成する隅角部の補剛梁23側に、継手板21及び主桁25の両方に溶接により固着されており、更に、この伝達プレート29には補剛梁が接続ボルト45等により接合される。補剛梁23を伝達プレート29に接合する手段としては溶接も可能であるが、作業の容易性や施工性を考慮するとボルト接合が好ましい。
【0041】
この伝達プレート29の形状は、この図2に示す略正方形に限定されるものではなく、矩形状他、いかなるものであってもよい。サイズは少なくともボルト頭がはみ出ない幅とすることが好ましい。
【0042】
このような構成からなる連結構造11が適用されたシールドトンネル3は、例えば図4(a)に示すように、分岐合流部61に接続される本線トンネル62に対して適用されることになる。ちなみに、このような道路トンネル分岐合流部60を構成する本線トンネル62には、例えば図4(b)に示すような曲げモーメントが発生する。即ち、発生する曲げモーメントの分布は、本線トンネル62の周方向において著しい格差があることがわかる。
【0043】
ここで、シールドトンネル3を構成する各セグメントに対して曲げモーメントに基づく荷重が負荷された場合につき、説明をする。
【0044】
たとえば図5(a)に示すように、一のセグメント4aに負荷された力は、周方向に隣接する他のセグメント4bへ伝達されることになる。しかしながら、この周方向に隣接するセグメント4の境界には、上述した補剛梁23が軸方向へ向けて配設されているところ、セグメント4bへの力の伝達は大きく抑えられることになる。その結果、力は、図中矢印で示されるように、これらセグメント4a、4bの軸方向に隣接するセグメント4c、4dへと伝達していくことになる。
【0045】
この隣接するセグメント4c、4dへ伝達された力は、最終的にセグメント4bへと流れていくことになるが、これら力の伝達力を向上させるべく、本発明においては、補強部材24を設けている。即ち、この補強部材24を、隣接するセグメント4c,4dに対して力が伝達される領域に沿って形成しておく。これにより、補剛梁23により継手板21を通しての、セグメント4bへの伝達が抑えられた力は、補強部材24を介して補剛梁23を迂回し、セグメント4bへと伝達することが可能となる。
【0046】
図6は、図5(a)におけるセグメント4c又はセグメント4dにおける点A又は点Cと、補剛梁23が配設される点Bとの間で曲げモーメントの発生率(セグメント継手が無いとした場合における当該点における発生曲げモーメントに対する比率)を解析した結果を示している。ちなみに、この図6では、補剛梁23の剛性(補剛梁バネ定数)を変化させた場合の当該点における発生曲げモーメントの発生状況の関係を示している。本解析はトンネル外径13mクラスの道路トンネル用セグメントを想定して、セグメント高さ500mm、セグメント幅1200mm、セグメント長2000mmの2主桁の鋼製セグメントを用いている。縦リブは500mmピッチで配置されるため、リング間のバネ定数は4.5×10kN/mと設定したものである。
【0047】
セグメント継手部を設けない場合には、曲げモーメントの発生率は、点A、点B、点Cともに均等に1.0になるが、セグメント継手を設けるのみの場合では、点Bにおける応力伝達性能が約40%低下する一方、点A、点Cにおける曲げモーメントの発生率は約20%大きくなる。掛かる場合においては、セグメント継手では点Bに発生する曲げモーメントに抵抗しうる継手構造としなければならない。
【0048】
そこで、補剛梁23を配設するとともに補剛梁23のバネ定数を増加させていくと、これに応じて点Bにおける応力伝達性能はさらに低下するところ、点Bにおける曲げモーメントの発生率はさらに約70%程度まで小さくなり、その分、点A、点Cにおける曲げモーメントの発生率はさらに約35%程度まで大きくなることがわかる。
【0049】
このように補剛梁23を配設し、さらにこのバネ定数を補剛梁23の形状や板厚を適切に選定することで調整することにより、点A、点Cを含むセグメント4c、4dへ伝達される力をコントロールすることができる。このセグメント4c、4dへ伝達される力は、上述の如く補強部材23を介して効率よく伝達されることが可能となり、連結構造11全体の応力伝達性能を向上させることが可能となる。
【0050】
このバネ定数はセグメントに配置される縦リブのバネ定数よりも大きく設定することで荷重伝達効果が大きく発揮されるため、補剛梁23の形状や板厚を設定する場合には、縦リブのバネ定数を参照して決定すると良い。
【0051】
即ち、本発明を適用した連結構造11では、補剛梁23並びに補強部材24を配設するのみで、周方向に隣接するセグメント4の境界において曲げモーメントを抑えつつ、応力伝達性能を向上させることができる。この補剛梁23並びに補強部材24の配設は比較的容易であり、材料や工数に必要なコストの低減化をも図ることができる。また、従来技術の如く継手構造の構成を複雑化させる必要もなくなることから、さらなるコスト低減を図ることも可能となる。また、周方向に隣接するセグメント4の境界において曲げモーメントを小さくすることができることから、継手構造11を構成する継手ボルト22も細径化させることが可能となり、またこれら継手ボルト22を多段配置させる必要もなくなることから、製作に伴う労力を軽減させることも可能となる。
【0052】
なお、本発明を適用した連結構造11は、例えば深度の大きい箇所にシールドトンネル3を配設する場合において、特に有用である。かかる場合においてシールドトンネル3には大きな曲げモーメントが局所的に負荷されることになるが、本発明を適用した連結構造11では、周方向に隣接するセグメント4の境界において、大きな曲げモーメントが負荷されることがなく、耐久性そのものを向上させることができる。また極度に大きい曲げモーメントが負荷されるケースにおいては、継手ボルト22の径を太径化させ、或いは継手ボルトの多段配置を実行することにより、これに対応することも可能となる。
【0053】
また、シールドトンネル3が、図4に示す本線トンネル62にとして適用される場合に、発生する曲げモーメントに応じて補剛梁23の断面2次モーメントや、補強部材24の形状を異ならせるようにしてもよい。
【0054】
図5(b)は、本発明を適用した連結構造11において、内面側が凸となるように曲げ変形が加わった場合について、また図5(c)は、外面側が凸となるように曲げ変形が加わった場合について示している。
【0055】
図5(b)に示す方向に曲げ変形が加わった場合に、力の伝達ルートは、図5(a)に示すセグメント継手当接面101から接続ボルト45を経て補剛梁23、さらに接続ボルト45を経て補強部材24へと至ることになる。
【0056】
これに対して、図5(c)に示す方向に曲げ変形が加わった場合に、力の伝達ルートは、伝達プレート29から接続ボルト45、補剛梁23、隣設リング当接面102から接続ボルト45を経て、補強部材24へと至ることになる。
【0057】
ちなみに、この補剛梁23は、例えば図7に示すように、トンネル2次覆工構造内に設置するようにしてもよい。かかる場合において、補剛梁23は、トンネル2次覆工用のコンクリート95に内包されることになる。
【0058】
また、本発明を適用した連結構造11は、例えば図8(a)に示すように、地中に埋設された矩形トンネルとして具現化される矩形構造物7の壁面を構成するセグメント4に対して適用されるようにしてもよい。ちなみに、この矩形構造物7の壁面は、セグメント4が千鳥状に配置されている。図8(b)は、この矩形構造物7に負荷される曲げモーメントの分布を示している。曲げモーメントが局所的に大きくなる箇所のみにおいて、上述した連結構造11を設けることにより、曲げモーメントに基づく力の伝達性能を向上させることができ、ひいては耐久性を向上させることが可能となる。
【0059】
また、本発明を適用した連結構造11は、例えば図9に示すような矩形立坑8の壁面を構成するセグメント4に対して適用されるようにしてもよい。ちなみに、この矩形立坑8の壁面には、セグメント4が底版81に至るまで千鳥状に配置されている。このような矩形立坑8に適用される場合においても、同様に、曲げモーメントが局所的に大きくなる箇所のみにおいて、上述した連結構造11を設けることにより、耐久性を向上させることが可能となる。
【0060】
さらに、本発明を適用した連結構造11は、橋の主桁を支持するための橋脚の壁体を構成する千鳥状のセグメント4等に用いるようにしてもよい。
【0061】
また、図10〜14は、この継手構造11のバリエーションの例を示している。
【0062】
図10(a)、(b)に示す例では、補剛梁23をシールドトンネル3の外面側(スキンプレート28側)に配設する場合につき示している。ちなみに、この図10(a)は、図2のA−A方向からの側面、図10(b)は図2のB−B方向からの側面を示した図である。
【0063】
また、図11(a)、(b)に示す例では、補剛梁23をシールドトンネル3の内面側と外面側の双方に配設する場合につき示している。ちなみに、この図10(a)は、図2のA−A方向からの側面、図10(b)は図2のB−B方向からの側面を示した図である。
【0064】
これらによっても同様にシールドトンネル3全体の構造耐力および剛性を向上させることが可能となる。特に図11に示す例では、連結構造11を橋脚の壁体としてのセグメント4に適用する場合において、橋脚の内外に補剛梁23を設置し得る点において有用といえる。
【0065】
また、図12に示す例では、セグメント4並びに補強部材24における継手板21の当接箇所には、補剛梁23の形状に応じた切り欠き9をシールドトンネル3の内面側に形成させる場合につき示している。即ち、このセグメント4は、切り欠き9の形状に応じた凹部を形成させるようにし、更に補強部材24も、上部フランジ41のフランジ面が当接可能な当接面24aを形成しつつ、セグメント4の内側へ折り曲げられた折り曲げ部24bを形成しておく。ちなみに、この折り曲げ部24bに沿って図示しない止水材を設けるようにしてもよい。
【0066】
これにより、補剛梁23の一部、又は全てをセグメント4の内側へ収めることが可能となり、継手構造11全体をコンパクトな形状にまとめることが可能となる。
【0067】
図13に示す例では、シールドトンネル3の外面側に切り欠き9を形成し、かかる切り欠き9に補剛梁23を配設する場合について示している。また、図14に示す例では、シールドトンネル3の内面側と外面側の双方に切り欠き9を形成しておき、これら双方の切り欠き9に対して補剛梁23を配設する場合につき示している。これらによっても同様にシールドトンネル3全体の構造耐力および剛性を向上させつつ、構造をコンパクトにまとめることが可能となる。
【0068】
本発明のセグメントの連結構造において、セグメントを合成セグメントとする場合は、補強部材24及び伝達プレート29に接続ナット45を予め点付け溶接等で固定しておき、コンクリート等の充填材を充填する際に、接続ナット45の孔部を充填材で塞がれないように、接続ナット45の周囲を鉄製等のボックスで覆い、当該ボックス内に充填材が入り込まないようにすれば良い。これにより、補剛梁23を補強部材24及び伝達プレート29にボルト接続することが可能となる。
【0069】
尚、本発明のセグメントの連結構造は、適用先のトンネル又は立坑の断面形状が矩形の場合、円形の場合等、形状は問わない。但し、補剛梁にH形鋼等の形鋼を使用し、且つ、トンネルの断面が円形で曲率が小さい場合においては、補剛梁をトンネルの曲率に合せて曲げる必要性が生じることがあり、製作時間増加及び製作コスト増大を招くこともあるため、断面矩形のトンネル等に適用することがより好ましい。
【0070】
トンネルの断面が円形で曲率を有する場合については、その曲率に合せて補剛梁の熱間曲げ加工を行う(例えば、H形鋼の場合は、曲率に合せて、補強部材に取り付ける側のフランジを曲げ加工する)だけでなく、補剛梁は曲げ加工せずに、補剛梁とセグメントとの隙間に、ライナーとなる鋼板又は棒鋼等を補剛梁の長さに渡って装入することで対応することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るセグメントの連結構造が適用されるシールドトンネルの例を示す図である。
【図2】シールドトンネルの軸方向、周方向に連結されたセグメントリングの正面図である。
【図3】(a)図2のA−A方向の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手板及び主桁を有する複数のセグメントを千鳥状に連結するトンネル又は立坑を構成するセグメントの連結構造であって、
トンネル又は立坑の周方向に隣接するセグメントの当接される継手板同士を跨いで、且つトンネル又は立坑の軸方向へ複数のセグメントに渡って配設された補剛梁と、
前記当接される継手板に対してトンネル又は立坑の軸方向に隣り合うセグメントの主桁において、セグメント高さ方向の前記補剛梁が配設されている側の当該主桁の端部に、前記隣り合う継手板の当接箇所を跨ぐように、溶接により固着された板状の補強部材とを備え、
前記補剛梁は前記補強部材に接合されていること
を特徴とするセグメントの連結構造。
【請求項2】
前記補剛梁は、H形鋼又は角形鋼管からなること
を特徴とする請求項1記載のセグメントの連結構造。
【請求項3】
前記主桁に固着されている補強部材の前記周方向における端部と、当該主桁と前記軸方向に隣接する主桁に固着されている補強部材の端部とは、前記軸方向の1断面において重なっていること
を特徴とする請求項1又は2記載のセグメントの連結構造。
【請求項4】
前記継手板と前記主桁とが構成する隅角部の前記補剛梁側には、板状の伝達プレートが前記継手板及び前記主桁に溶接により固着されており、且つ、当該伝達プレートに前記補剛梁が接合されていること
を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセグメントの連結構造。
【請求項5】
前記補剛梁は、前記連結すべきセグメントのトンネル又は立坑の内面側、外面側の少なくともいずれかに配設されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセグメントの連結構造。
【請求項6】
前記当接される継手板の高さをセグメント高さよりも低くし、当該継手板の高さに合せて前記継手板の当接箇所における前記主桁及び前記補強部材の形状を調整して、前記補剛梁のセグメント高さ方向の突出を小さくしたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセグメントの連結構造。
【請求項7】
前記補剛梁は、トンネル2次覆工構造内に設置されていること
を特徴とする請求項1〜6の何れか1項に記載のセグメントの連結構造。

【図3】(b)図2のB−B方向の側面図である。
【図3】(c)補強部材がセグメント高さ方向の両端部に設置される場合における、図2のA−A方向の側面図である。
【図4】本発明に係る連結構造が道路トンネル分岐合流部に適用される例につき示す図である。
【図5】一のセグメントに負荷される力の伝達経路につき説明するための図である。
【図6】点A、Cと点Bとの間で曲げモーメントの発生率を解析した結果を示す図である。
【図7】補剛梁をトンネル2次覆工構造内に設置する場合につき説明するための図である。
【図8】地中に埋設された矩形トンネルとして具現化される矩形構造物に本発明を適用する例につき示す図である。
【図9】本発明に係る継手構造を矩形立坑の壁面を構成するセグメントに対して適用する例を示す図である。
【図10】(a)、(b) 補剛梁をシールドトンネルの外面側に配設する場合につき示す図である。
【図11】(a)、(b) 補剛梁をシールドトンネルの内面側と外面側の双方に配設する場合につき示す図である。
【図12】補剛梁の形状に応じた切り欠きをシールドトンネルの内面側に形成させる場合につき示す図である。
【図13】シールドトンネルの外面側に切り欠きを形成し、かかる切り欠きに補剛梁を配設する例について示す図である。
【図14】シールドトンネルの内面側と外面側の双方に切り欠きを形成しておき、これら双方の切り欠きに対して補剛梁を配設する例を示す図である。
【符号の説明】
【0072】
2 セグメントリング
3 シールドトンネル
4 セグメント
5 セグメント継手部
9 切り欠き
11 連結構造
20 継手部
21 継手板
22 継手ボルト
23 補剛梁
24 補強部材
25 主桁
28 スキンプレート
29 伝達プレート
31 孔
32 継手ナット
41 上部フランジ
42 ウェブ
43 下部フランジ
45 接続ボルト
46 接続ナット
47 孔
61 分岐合流部
62 本線トンネル
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−100340(P2007−100340A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289819(P2005−289819)
【出願日】平成17年10月3日(2005.10.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】