説明

セグメント組立装置

【課題】セグメントの内周面に孔のない平板形のセグメントをバキュームパッドで吸着した際に、そのセグメントをバキュームパッドに対してずらすことなく健全に保持して既設セグメントに組み付けることができるセグメント組立装置を提供する。
【解決手段】シールド掘進機の外殻を成す筒状のシールドフレーム2の内部にて、セグメント3をリング状に組み立てるセグメント組立装置1であって、セグメント3を保持すると共に、保持したセグメント3をリング状に組み立てるため、トンネルの周方向、径方向及び軸方向に移動する移動台6と、移動台6に設けられ、組み立てるセグメント3の内周面を吸着するバキュームパッド22と、移動台6に設けられ、バキュームパッド22により吸着されたセグメント3の切羽側端面23に形成された凹部24に係合する凸部25とを備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機の外殻を成す筒状のシールドフレームの内部にて、セグメントをリング状に組み立てるセグメント組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、筒状のシールドフレームと、シールドフレームの前部に配設されたカッタと、カッタで切削された土砂をシールドフレーム内の隔壁後方に取り込む排土装置と、セグメントをシールドフレームの内周面に沿ってリング状に組み立てるべくシールドフレーム内に設けられたセグメント組立装置(エレクタ)と、リング状に組み立てられたセグメントに反力を取ってシールドフレームを前進させるべくシールドフレームに複数取り付けられたシールドジャッキとを備えている。
【0003】
かかるシールド掘進機は、シールドジャッキを伸長させてカッタを切羽に押し付けてそのカッタで切羽を切削し、掘削された土砂を排土装置(スクリューコンベヤ等)によってシールドフレーム内の隔壁後方に取り込み、シールドフレームをシールドジャッキの伸長ストロークに応じて前進(掘進)させ、爾後、シールドジャッキを収縮させて既設のセグメントとシールドジャッキとの間にスペースを形成し、そのスペースにエレクタによってセグメントをリング状に組み立て、トンネルを構築するものである。
【0004】
エレクタには、セグメントを把持すると共に、把持したセグメントをリング状に組み立てるため、トンネルの周方向、径方向及び軸方向に移動する移動台が備えられている。この移動台に、組み立てるセグメントの内周面を吸着して保持するバキュームパッドを設けると共に、セグメントの中央にその内外周面を貫通して形成された保持孔に嵌入することでセグメントの保持を補助するセーフティピンを伸縮自在に設けたエレクタが知られている(特許文献1、2)。
【0005】
このエレクタによれば、バキュームパッドによってセグメントの内周面を吸着すると共にセーフティピンをセグメントの保持孔に嵌入することでセグメントを保持するので、セグメントの内周面にセグメント把持用の把持金物を取り付け、セグメントの組み立て後にその把持金物を取り外すという一般的なエレクタでは必要な把持金物の着脱作業が不要となり、セグメントの組み立ての高速化及び自動化が可能となる。
【0006】
【特許文献1】特開平9−189200号公報
【特許文献2】特開平10−88990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記エレクタにおいては、セグメントに、その内外周面を貫通するようにして、セーフティピンを嵌入するための保持孔を形成する必要がある。このため、セグメントをリング状に組み立てた後、保持孔を塞いて地下水の浸入を防止する防水施工が必要となり、コストアップを招く。
【0008】
また、セグメントの内周面の保持孔が形成された部分はバキュームパッドによって吸着できないため、バキュームパッドの形状を保持孔を避けた形状としなければならず、吸着面積が制限されて吸着力の向上が制限されてしまうと共に、バキュームパッドの形状が複雑となってコストアップを招く。
【0009】
他方、セグメントに上記保持孔を設けなければ、上述のような問題点は生じないが、この場合、エレクタのセーフティピンをセグメントの保持孔に嵌入することができないため、セグメントはバキュームパッドのみで吸着保持されることになる。このため、セグメントがバキュームパッドに対してずれ、セグメントの組み付けに支障を来すケースが生じ得る。
【0010】
例えば、セグメントをバキュームパッドで吸着保持した状態のときに、停電や故障等によってバキュームポンプの作動が停止した場合、バキュームパッドの吸着力が低下するため、セグメントがバキュームパッドに対してずれる可能性がある。このずれは、トンネル底部にてバキュームパッドで吸着されたセグメントがエレクタによってトンネル周方向に90度旋回された状態のときに、生じ易い。
【0011】
また、バキュームパッドで吸着されたセグメントを既設セグメントに押し付けて組み付ける際に、既設セグメントからの反力によって、吸着保持したセグメントがバキュームパッドに対してずれる可能性がある。
【0012】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、セグメントの内周面に孔(上記保持孔)のない平板形のセグメントをバキュームパッドで吸着した際に、そのセグメントをバキュームパッドに対してずらすことなく健全に保持して既設セグメントに組み付けることができるセグメント組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明は、シールド掘進機の外殻を成す筒状のシールドフレームの内部にて、セグメントをリング状に組み立てるセグメント組立装置であって、セグメントを保持すると共に、保持したセグメントをリング状に組み立てるため、トンネルの周方向、径方向及び軸方向に移動する移動台と、該移動台に設けられ、組み立てるセグメントの内周面を吸着するバキュームパッドと、上記移動台に設けられ、上記バキュームパッドにより吸着されたセグメントの切羽側端面に形成された凹部に係合する凸部とを備えたものである。
【0014】
上記凸部が、上記移動台にトンネル軸方向に移動自在に設けられ、上記移動台に、上記凸部をトンネル軸方向に移動させるためのアクチュエータを設けてもよい。
【0015】
上記移動台に、上記バキュームパッドにより吸着されたセグメントの切羽側端面に当接される押え部を設けてもよい。
【0016】
上記押え部が、上記移動台にトンネル軸方向に移動自在に設けられ、上記移動台に、上記押え部をトンネル軸方向に移動させるためのアクチュエータを設けてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るセグメント組立装置によれば、セグメントの内周面に孔のない平板形のセグメントをバキュームパッドで吸着した際に、そのセグメントをバキュームパッドに対してずらすことなく健全に保持して既設セグメントに組み付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0019】
図1(a)は本実施形態に係るセグメント組立装置(以下エレクタともいう)の側断面図を示し、図1(b)は図1(a)のIb−Ib線断面図を示す。
【0020】
エレクタ1は、シールド掘進機の外殻を成す円筒状のシールドフレーム2の内部にて、セグメント3をリング状に組み立てるものであり、シールドフレーム2の軸心を中心としてトンネル周方向に回転する旋回フレーム4と、旋回フレーム4にトンネル径方向に移動可能に設けられた吊りビーム5と、吊りビーム5にトンネル軸方向に移動可能に設けられた移動台6とを備え、移動台6は、セグメント3を保持、解放するセグメント保持部7を有している。
【0021】
旋回フレーム4は、円環状に形成され、シールドフレーム2の内周面に設けられたリングガーダー8に軸支された支持ローラ9に、回転可能に支持されている。旋回フレーム4は、軸方向の前部に駆動ギヤ10を有し、その駆動ギヤ10に図示しないモータのピニオンが噛合されて回転駆動される。なお、リングガーダー8には、リング状に組み立てられた後のセグメント3に反力を取ってシールドフレーム2を前進させるシールドジャッキ11が設けられている。
【0022】
旋回フレーム4の軸方向の後部には、180度間隔で配設された一対の支持フレーム12が、夫々軸方向後方に延出されて設けられている。支持フレーム12には、吊りビーム5がトンネル径方向に移動可能に装着されている。吊りビーム5は、各支持フレーム12にシールドフレーム2の直径方向と平行に装着された円筒状のガイド筒に挿通されるガイド柱13と、これらガイド柱13の端部同士を連結する連結部14とからU字状に形成されており、連結部14と支持フレーム12との間に介設されたジャッキ15によってトンネル径方向に移動される。
【0023】
吊りビーム5の連結部14には、移動台6がトンネル軸方向に移動可能に装着されている。移動台6は、吊りビーム5の連結部14にトンネル幅方向に間隔を隔ててトンネル軸方向に延出された一対のガイド柱16に挿通された円筒状のガイド筒17を有し、ガイド筒17とガイド柱16との間に介設されたジャッキ(図示せず)によってトンネル軸方向に移動される。
【0024】
図1(a)の部分拡大図である図2、図2のIII−III線断面図である図3、図2のIV−IV線断面図である図4に示すように、移動台6は、上記ガイド筒17が形成された台本体18と、台本体18に姿勢調節部19を介して装着されたセグメント保持部20とから主に構成されている。セグメント保持部20は、セグメント3を保持、解放するものであり、台本体18に姿勢調節部19を介して装着された保持部本体21と、保持部本体21の下面(トンネル径方向外側面)に装着されたバキュームパッド22と、保持部本体21にトンネル軸方向に移動自在に装着されセグメント3の切羽側端面23に形成された凹部24(ズレ防止穴)に係合する凸部25(ズレ防止ピン)とを有する。
【0025】
バキュームパッド22は、ゴム等の可撓性材料からリング状(高さの低い筒状)に形成されており、その上端が保持部本体21の下面に接着等によって固定され、下端がセグメント3の上面(内周面)に当接される。バキュームパッド22の下端がセグメント3の上面に当接された状態で、バキュームパッド22の内方の空気は、保持部本体21の下面に形成された排気口からバキュームポンプによって排気されるようになっている。この排気により、バキュームパッド22の内方が負圧となり、セグメント3が吸着される。
【0026】
保持部本体21には、トンネル軸方向に延出された円筒状のガイド筒26が、トンネル幅方向に間隔を隔てて一対設けられ、各ガイド筒26には、ガイド柱27が夫々スライド可能に挿通されている。各ガイド柱27の先端部(トンネル軸方向前部)は、接続板28によって連結されている。接続板28は、各ガイド柱27の先端部を連結するトンネル幅方向の長さを有すると共に、バキュームパッド22により吸着したセグメント3のトンネル軸方向前部の端面(切羽側端面23)に対向するトンネル径方向の高さを有する。
【0027】
接続板28のトンネル幅方向の中央には、バキュームパッド22で吸着したセグメント3の切羽側端面23に形成された前記凹部(ズレ防止穴)24に係合する前記凸部(ズレ防止ピン)25が設けられている。ズレ防止ピン25は、本実施形態では円錐台状(円錐の頂部を切除した形状)に形成され、それに合わせてズレ防止穴24が円錐台穴状に形成されているが、これに限らず、例えばズレ防止ピン25を円柱状としズレ防止穴24を円孔としてもよく、ズレ防止ピン25を角柱状としズレ防止穴24を角孔としてもよい。
【0028】
接続板28のトンネル幅方向の両端側には、バキュームパッド22で吸着したセグメント3の切羽側端面23に当接される押え部(ズレ防止板)29が、上記ズレ防止ピン25を中間に挟むようにして夫々配設されている。ズレ防止板29は、セグメント3を傷つけないために樹脂やウレタンゴム等の軟質材からなり、本実施形態では、図3に示すようにトンネル径方向から見てガイド柱27と重なる位置に配設されているが、重ならない位置に配設されても構わない。
【0029】
接続板28と保持部本体21との間には、接続板28をトンネル軸方向に移動させるアクチュエータ(ジャッキ)30が介設されている。ジャッキ30は、その伸縮により接続板28を保持部本体21に対してトンネル軸方向に移動させ、接続板28に設けたズレ防止ピン25を、バキュームパッド22に吸着したセグメント3のズレ防止穴24に係合離脱させると共に、接続板28に設けたズレ防止板29をバキュームパッド22に吸着したセグメント3の切羽側端面に当接、離間させるものである。ジャッキ30は、保持部本体21の上面(トンネル径方向内方側面)に載置されているので、シールドジャッキ11と干渉することはない。なお、ジャッキ30は、本実施形態では、図3に示すようにトンネル径方向から見てズレ防止ピン25と重なる位置に配設されているが、重ならない位置に配設されても構わない。
【0030】
バキュームパッド22、ズレ防止ピン25及びズレ防止板29によって保持されたセグメント3は、図2、図3に示す姿勢調節部19によって保持姿勢が調節されるようになっている。姿勢調節部19は、台本体18と保持部本体21との間に介設され保持部本体21を台本体18に対して全方向傾動可能に吊り下げる吊下ロッド31と、台本体18と保持部本体21との間にトンネル幅方向、軸方向に間隔を隔てて配置された4本の姿勢制御ジャッキ32とを有し、各姿勢制御ジャッキ32の伸縮量を制御することで、バキュームパッド22等によって保持されたセグメント3の姿勢を、台本体18に対して変更するものである。
【0031】
上述のバキュームパッド22、ズレ防止ピン25及びズレ防止板29は、内周面が平面状(平滑)の部分を有するセグメント3(所謂平板形セグメント尚、以下、内周平面セグメントともいう)を保持するものであるが、トンネルのカーブ掘進時等においては、内周平面セグメントを用いるのではなく内周面に凹凸を有するセグメント(所謂鋼製セグメント、ダグタイルセグメント等、以下、内周凹凸セグメントともいう)を用いてトンネルを構築する必要が生じるケースが有る。内周凹凸セグメント3は、バキュームパッド22によって吸着できないため、別のセグメント保持部によって保持する必要がある。
【0032】
そこで、本実施形態に係るセグメント組立装置1は、内周凹凸セグメント3を保持するため、以下に述べる構成を有している。
【0033】
図1(a)、図1(b)に示すように、支持フレーム12には、別の吊りビーム33がトンネル径方向に移動可能に装着されている。この吊りビーム33は、支持フレーム12にシールドフレーム2の直径方向と平行に装着された円筒状のガイド筒に挿通された一対のガイド柱35と、これらガイド柱35の端部同士を連結する連結部36とからU字状に形成されており、連結部36と支持フレーム12との間に介設されたジャッキ37によってトンネル径方向に移動される。
【0034】
吊りビーム33の連結部36には、移動台38がトンネル軸方向に移動可能に装着されており、移動台38は、ジャッキ39によってトンネル軸方向に移動される。移動台38には、内周凹凸セグメント3を把持するためのセグメント把持部40が設けられている。セグメント把持部40は、内周凹凸セグメント3の内周面に形成された補強リブをトンネル軸方向から挟んでボルト等によって連結される連結部41と、連結部41をトンネル幅方向から挟んでその両脇に配設され連結部41に連結されたセグメント3の内周面を押圧することでそのセグメント3をしっかりと保持するためのサポートジャッキ42とを有する。
【0035】
本実施形態の作用を述べる。
【0036】
図1(a)、図1(b)に示すように、本実施形態に係るセグメント組立装置1に、内周平面セグメント3を保持する際には、内周平面セグメント3をトンネル底部に仮置きし、旋回フレーム4をトンネル周方向に回転させ、吊りビーム5をトンネル径方向に移動させ、移動台6をトンネル軸方向に移動させることで、移動台6に装備したバキュームパッド22を、トンネル底部に仮置きした内周平面セグメント3の内周面に対向させる。
【0037】
バキュームパッド22を内周平面セグメント3に対向させた後、吊りビーム5をトンネル径方向外方に移動させてバキュームパッド22を内周平面セグメント3の内周面に当接させ(軽く触れさせ)、ジャッキ30を収縮することで接続板28をトンネル軸方向後方(坑口側)に移動させ、図2、図4に示すように、接続板28に設けたズレ防止ピン25を内周平面セグメント3の切羽側端面23に形成されたズレ防止穴24に係合させると共に、接続板28に設けたズレ防止板29を内周平面セグメント3の切羽側端面23に押し付ける。これにより、内周平面セグメント3の保持部本体26に対する位置が定められる。
【0038】
ジャッキ30を収縮させてズレ防止ピン25をズレ防止穴24に係合させる際、ズレ防止ピン25が円錐台状に形成されていると共にズレ防止穴24がそのズレ防止ピン25に応じた円錐台穴状に形成されているので、ズレ防止穴24に対するズレ防止ピン25の位置が仮にずれていてもズレ防止ピン25が正規の位置に案内される。このとき、ズレ防止ピン25が設けられた接続板28及び接続板28が装着された保持部本体26が、ズレ防止穴24が形成された内周平面セグメント3(この段階ではトンネル底部に仮置きされている)に対して相対移動する。よって、ズレ防止ピン25をズレ防止穴24に係合させる前に、保持部本体26が取り付けられた台本体18を吊りビーム5に対してトンネル軸方向に移動自在とし、吊りビーム5を旋回フレーム4に対してトンネル径方向に移動自在とし、旋回フレーム4をトンネル周方向に回転自在としておくことで、トンネル底部に仮置きされた内周平面セグメント3に対する保持部本体26の相対移動(三次元的な相対移動)を許容するようにする。
【0039】
ジャッキ30の収縮によって、ズレ防止ピン25がズレ防止穴24に係合され、ズレ防止板29が内周平面セグメント3の切羽側端面23に当接された後、バキュームパッド22の内方の空気をバキュームポンプによって排気してバキュームパッド22に内周平面セグメント3を吸着させる。これにより、内周平面セグメント3がバキュームパッド22、ズレ防止ピン25及びズレ防止板29によって位置決めされて保持される。保持後、吊りビーム5をトンネル径方向に移動させ、旋回フレーム4をトンネル周方向に回転させ、移動台6の台本体18をトンネル軸方向に移動させることで、バキュームパッド22、ズレ防止ピン25及びズレ防止板29によって保持された内周平面セグメント3を所望の組付位置に移動させ、図5に示すように、既設セグメント3に組み付ける。
【0040】
本実施形態における内周平面セグメント3は、内周面3aがバキュームパッド22によって健全に吸着できるように凹部がなく平滑に形成されており、坑口側端面43に係合ピン44が設けられ、切羽側端面23に係合孔45が形成されていると共に前記ズレ防止穴24が形成され、一方のピース間端面46にコーン状に形成された雄コーン部47が設けられ、他方のピース間端面48にコーン穴を有する雌コーン部49が設けられている。かかる内周平面セグメント3は、一方のピース間端面46が既設セグメント3のピース間端面48に軸方向にずれた状態で当接された後、軸方向に移動され、これにより、雄コーン部47が既設セグメント3の雌コーン部49に係合され、係合ピン44が既設セグメント3の係合孔45に係合され、組み付けが達成される。
【0041】
バキュームパッド22等により保持した内周平面セグメント3をトンネル軸方向後方(坑口側)に移動させて既設セグメント3に押し付けて組み付ける際、保持した内周平面セグメント3は既設セグメント3からトンネル軸方向前方(切羽側)の反力を受けることになるが、この反力は図4に示すようにバキュームパッド22で保持した内周平面セグメント3の切羽側端面23に当接された接続板28のズレ防止ピン25及びズレ防止板29によって支持される。よって、保持した内周平面セグメント3をバキュームパッド22に対してズラすことなく所定の適切な力で坑口側の既設セグメント3に押し付けることができる。
【0042】
ところで、セグメント3をバキュームパッド22で吸着保持した状態のときに、例えば停電や故障等によってバキュームポンプの作動が停止すると、バキュームパッド22の吸着力が低下する。すなわち、バキュームパッド22とバキュームポンプとの間の排気経路又はバキュームポンプ内部にはバキュームパッド22の吸着力を保持するための逆止弁が設けられているものの、セグメント3を保持している間は通常作動されているべきバキュームポンプが停電等によって停止すると、逆止弁やバキュームパッド22の縁部から少しずつ負圧が抜けるので、バキュームパッド22の吸着力が低下する。
【0043】
このように停電、故障等によりバキュームポンプの作動が停止してバキュームパッド22の吸着力が低下しても、本実施形態ではズレ防止ピン25がズレ防止穴24に係合されてセグメント3の保持を補助しているので、セグメント3がバキュームパッド22に対してズレたりバキュームパッド22から脱落することが抑制される。
【0044】
詳しくは、停電等によってバキュームポンプの作動が停止した状態で、トンネル底部にてバキュームパッド22で吸着されたセグメント3が旋回フレーム4の回転によりトンネル周方向に90度旋回移動された状態となると、セグメント3とバキュームパッド22との間の吸着面に剪断力が作用するため、セグメント3のズレ及び脱落が最も生じ易いが、図4を参照すると、90度旋回されて立てられた状態のセグメント3は、バキュームパッド22の吸着力の低下によりズレ防止ピン25を中心として回転してズレて脱落しようとするところ、セグメント3の切羽側端面23の下部がズレ防止ピン25の下方に位置するズレ防止板29に押し付けられてセグメント3の回転が防止されるので、セグメント3のズレ及び脱落が防止される。
【0045】
また、セグメント3のトンネル底部からの周方向旋回角度が90度未満のときには、セグメント3とバキュームパッド22との間の吸着面に生じる剪断力は90度旋回された場合と比べて小さくなるので、90度のときと比べるとセグメント3はズレ難く脱落し難い。また、セグメント3のトンネル底部からの周方向旋回角度が90度を超えると、セグメント3の自重の一部がバキュームパッド22の上に載せられた状態となる(180度旋回移動されたときにはセグメント3の全自重がバキュームパッド22に載せられた状態となる)ので、90度のときと比べるとセグメント3はズレ難く脱落し難い。
【0046】
このように本実施形態では、セグメント3の切羽側端面23を利用するズレ防止ピン25及びズレ防止板29によってバキュームパッド22によるセグメント3の吸着保持を補助しているので、セグメント3の内周面にセーフティピン(特許文献1、2参照)を差し込むための保持孔を形成する必要はない。
【0047】
よって、セグメント3を組み付けた後(一次覆工後)、保持孔を塞ぐ防水施工(二次覆工)が不要となり、コストダウンを図ることができる。また、バキュームパッド22の形状を保持孔を避けた形状とする必要はなく、バキュームパッド22の吸着面積が保持孔によって制限されることはなく、バキュームパッド22の吸着力向上が保持孔によって制限されることはない。また、バキュームパッド22の形状を保持孔を避けて複雑な形状とする必要もなく、コストダウンに繋がる。
【0048】
すなわち、本実施形態に係るセグメント組立装置1によれば、セグメント3の内周面に孔(保持孔)のない平板形のセグメント3をバキュームパッド22で吸着した際に、そのセグメント3をバキュームパッド22に対してずらすことなく健全に保持でき、既設セグメント3に的確に組み付けることができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、図2〜図4に示す凸部(ズレ防止ピン)25及び押え部(ズレ防止板)29が設けられた接続板28を、保持部本体21に固定してもよい。この場合、保持部本体21が装着された台本体18をトンネル軸方向に移動させることで、凸部25及び押え部29をセグメント3の切羽側端面23に接触させるようにする。また、凸部25と押え部29とを別々にトンネル軸方向に移動可能とし、別々にアクチュエータ(ジャッキ)で移動させるようにしてもよい。また、押え部29を省略してもよい。また、図6に示すように、凸部25を2個とし、押え部29を1個としてもよい。
【0051】
また、エレクタ1の凸部25(ズレ防止ピン25)は、図6に示すように、セグメント3の切羽側端面23に形成された凹部24(ズレ防止穴24)に挿入されるのものに限られず、トンネル軸方向に隣接するセグメント3同士の位置を定めるため、セグメント3の坑口側端面43に設けられた調芯用ピン(例えば係合ピン44と同様のもの)が挿入されるようにセグメント3の切羽側端面23に形成された調芯用孔(例えば係合孔45と同様のもの)に、差し込まれるものでもよい。また、凸部25(ズレ防止ピン25)は、トンネル軸方向に隣接するセグメント3同士を連結するボルトを収容するためにセグメント3の切羽側端面23に形成されたボルト接合用凹部に、差し込まれるものでもよい。
【0052】
また、バキュームパッド22によって吸着保持されるセグメント3は、図5に示すように内周面の全てが凹凸なく平坦状となっていてもよいが、内周面の一部(バキュームパッド22が当接される部分)のみが凹凸なく平坦状となっていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施形態に係るセグメント組立装置の説明図であり、(a)はセグメント組立装置の側断面図、(b)は図1(a)のIb−Ib線断面図である。
【図2】図1(a)の部分拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】上記セグメント組立装置によるセグメントの組み立ての様子を示す説明図である。
【図6】本発明の変形実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1 セグメント組立装置(エレクタ)
2 シールドフレーム
3 セグメント
6 移動台
22 バキュームパッド
23 切羽側端面
24 凹部
25 凸部
29 押え部
30 アクチュエータ(ジャッキ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘進機の外殻を成す筒状のシールドフレームの内部にて、セグメントをリング状に組み立てるセグメント組立装置であって、
セグメントを保持すると共に、保持したセグメントをリング状に組み立てるため、トンネルの周方向、径方向及び軸方向に移動する移動台と、
該移動台に設けられ、組み立てるセグメントの内周面を吸着するバキュームパッドと、
上記移動台に設けられ、上記バキュームパッドにより吸着されたセグメントの切羽側端面に形成された凹部に係合する凸部と
を備えたことを特徴とするセグメント組立装置。
【請求項2】
上記凸部が、上記移動台にトンネル軸方向に移動自在に設けられ、
上記移動台に、上記凸部をトンネル軸方向に移動させるためのアクチュエータを設けた請求項1に記載のセグメント組立装置。
【請求項3】
上記移動台に、上記バキュームパッドにより吸着されたセグメントの切羽側端面に当接される押え部を設けた請求項1又は2に記載のセグメント組立装置。
【請求項4】
上記押え部が、上記移動台にトンネル軸方向に移動自在に設けられ、
上記移動台に、上記押え部をトンネル軸方向に移動させるためのアクチュエータを設けた請求項3に記載のセグメント組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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