説明

セグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法

【課題】 拡幅セグメントを拡幅する際のシール部材の破損を防止するとともに、将来のセグメント間に目開きが生じた際にも止水性を確保することを目的とする。
【解決手段】 坑の半径方向に拡幅若しくは縮幅するリング状の拡幅セグメント4と拡幅セグメント4に接合されるリング状の接合セグメント3´とのリング間を止水するセグメント間のシール構造において、互いに対向する拡幅セグメント4のリング間端面4aと接合セグメント3´のリング間端面3aとの間に介在されているとともに、接合セグメント3´の周方向に沿って延在するシール部材13と、シール部材13を拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けるとともに、拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けられたシール部材13の圧力を調整する圧力調整手段14とが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡幅セグメントとその拡幅セグメントに接合される接合セグメントのリング間を止水するセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によるトンネル工事においては、一般に、シールド機による掘削作業に追従させてセグメントを組み立てて、掘削されたトンネルの内壁面を覆工する作業を行う。セグメントは、湾曲に形成された複数のセグメント部材を環状に組み立てた構成からなる。
一方、シールド機を用いて構築されるトンネルに例えば非常駐車帯や分岐合流部等を設ける際、前後のトンネルよりも内径が広げられた拡幅部をトンネル内に形成する必要がある。また、小口径シールド工法では、坑内を走行するトロッコをすれ違わせるための拡幅部を形成する必要があり、この拡幅部は施工時に一時的に形成されて後で前後のトンネルと同じように縮幅する必要がある。
【0003】
拡幅部を形成する場合、通常は地上から掘削して余掘り部を形成し、この余掘り部に拡幅部用のセグメントを形成して拡幅部を形成する。近年、掘削途中で掘削面積を自由に拡幅できるシールド機が提案されており、このシールド機を用いて必要部分のみを拡幅断面で拡幅する方法がある(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0004】
また、上記した拡幅自在のシールド機で坑内の一区間を拡幅して拡幅部を形成するとき、当該区間に拡幅セグメントを設置する必要がある。拡幅セグメントは、ヒンジによって回転自在に取り付けられた拡幅セグメント部材が備えられ、この拡幅セグメント部材をジャッキで内側から余掘り部方向に押してヒンジを中心に外側に回動させて押し広げる構成となっている。また、近年では、坑の幅方向にスライドするスライド部材が備えられ、拡幅セグメント部材を水平方向にスライドさせる構成からなる拡幅セグメントが提案されている。
【0005】
上記した構成からなる拡幅セグメントとこの拡幅セグメントに接合される拡幅しないセグメント(以下、接合セグメントと記す。)との間には、拡幅セグメントのリング間端面(セグメントの周方向に延在する端面であり、以下同じ。)と接合セグメントのリング間端面との間から地下水がセグメント内に浸入することを防止するシール構造が形成される。従来のセグメント間のシール構造は、接合セグメントのリング間端面に付設されているとともに接合セグメントの周方向に延在して環状に形成されたシール部材からなっており、このシール部材が、拡幅前(縮幅時)の拡幅セグメントのリング間端面に密着されるとともに拡幅後の拡幅セグメントのリング間端面にも密着される構成となっている。
【0006】
ところで、拡幅セグメントと接合セグメントとのリング間の継手箇所には、地震等の影響によりセグメント同士を繋ぐボルトが緩み、或いはセグメントが変形・移動することで、将来的に両セグメントのリング間端面の間が拡がって2mm程度の隙間が生じる現象(以下、目開きと記す。)が起こることが予想される。このため、この目開きが生じたときにも、拡幅セグメントと接合セグメントとのリング間の止水性能を確保するべく、従来、拡幅セグメントと接合セグメントとを継手させる際、シール部材を膨大な圧力で拡幅セグメントのリング間端面に密着させている。これによって、将来、目開きが生じた場合にもシール部材が拡幅セグメントのリング間端面に密着し、リング間継手箇所の止水性を確保することができる。
【特許文献1】特開2002−89170号公報
【特許文献2】特開2001−329781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来のセグメント間のシール構造では、シール部材が拡幅前の拡幅セグメントのリング間端面に対して膨大な圧力で密着されており、拡幅セグメントを拡幅する際、シール部材が膨大な圧力で拡幅セグメントのリング間端面に密着された状態のまま、拡幅セグメント部材をスライド移動させることになるため、シール部材が破損する虞があり、シール部材が破損すると止水性を確保することができなくなるという問題がある。一方、シール部材の破損を防止するためにシール部材の圧力を小さくすると、上記した将来の目開き時に止水性能を確保することができなくなるという問題がある。
【0008】
また、シールド機を掘進させる際に、接合セグメントのリング間端面から反力をとる場合があるが、この場合、シールド機の反力をとる部分(例えば、スプレッダー)と接合セグメントのリング間端面との間にシール部材が介在され、シール部材がスプレッダーに潰されて破損する場合があるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、拡幅セグメントを拡幅する際のシール部材の破損を防止するとともに、将来のセグメント間に目開きが生じた際にも止水性を確保することができるセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法を提供することを目的としている。
さらに、接合セグメントのリング間端面からシールド機を掘進させる際の反力をとる場合であっても、シール部材が破損することを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明は、坑の半径方向に拡幅若しくは縮幅するリング状の拡幅セグメントと該拡幅セグメントに接合されるリング状の接合セグメントとのリング間を止水するセグメント間のシール構造において、互いに対向する前記拡幅セグメントのリング間端面と前記接合セグメントのリング間端面との間に介在されているとともに、前記接合セグメントの周方向に沿って延在するシール部材と、該シール部材を前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けるとともに、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けられた前記シール部材の圧力を調整する圧力調整手段とが備えられていることを特徴としている。
【0011】
このような特徴により、拡幅セグメントのリング間端面に密着するシール部材の圧力は、圧力調整手段によって適宜調節可能であり、拡幅セグメントを拡幅或いは縮幅する際のシール部材の圧力と拡幅或いは縮幅した後のシール部材の圧力とがそれぞれ最適な圧力に設定される。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のセグメント間のシール構造において、前記接合セグメントのリング間端面には、前記接合セグメントの周方向に沿って凹部が形成され、該凹部の中に、前記シール部材が出入り可能に嵌合されていることを特徴としている。
【0013】
このような特徴により、接合セグメントが拡幅セグメントに接合されてなく、シール部材が不要なときには、シール部材が凹部内に収容され、シール部材が接合セグメントのリング間端面から殆ど突出しない或いは全く突出しない状態になる。また、接合セグメントが拡幅セグメントに接合されてリング間を止水するときには、シール部材が凹部内から突出されて拡幅セグメントのリング間端面に密着された状態となる。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載のセグメント間のシール構造において、前記シール部材は、前記拡幅セグメントのリング間端面に密着される弾性材が、前記圧力調整手段によって押圧される基板上に積層された構成からなっていることを特徴としている。
【0015】
このような特徴により、基板上に積層された弾性材は変形し難く、弾性材が拡幅セグメントのリング間端面の全面に亘って隙間無く密着される。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載のセグメント間のシール構造において、前記シール部材と前記接合セグメントとの間を止水する止水部材が備えられていることを特徴としている。
【0017】
このような特徴により、シール部材と接合セグメントのリング間端面との間に形成された隙間が止水部材によって塞がれる。特に、シール部材を拡幅セグメントのリング間端面に大きな圧力で押し付けることで、シール部材と接合セグメントのリング間端面との間に隙間があいた場合に、当該隙間が塞がれる。
【0018】
請求項5記載の発明は、坑の半径方向に拡幅若しくは縮幅するリング状の拡幅セグメントと該拡幅セグメントに接合されるリング状の接合セグメントとのリング間を止水するセグメント間のシール方法において、前記拡幅セグメントを拡幅若しくは縮幅するときは、互いに対向する前記拡幅セグメントのリング間端面と前記接合セグメントのリング間端面との間に介在されているとともに前記接合セグメントの周方向に沿って延在するシール部材を、地下水圧と同等の圧力で、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付け、拡幅セグメントを拡幅若しくは縮幅した後は、前記シール部材を、将来のリング間の目開き時にも止水性を確保できる程度の圧力で、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けることを特徴としている。
【0019】
このような特徴により、拡幅セグメントを拡幅若しくは縮幅するときは、地下水の浸入を防ぐための必要最低限な圧力でシール部材が拡幅セグメントのリング間端面に押し付けられ、シール部材の圧力が必要以上に大きくならない。一方、拡幅セグメントが拡幅若しくは縮幅した後は、シール部材が将来のリング間の目開きが生じた場合にも止水性を確保できる程度の膨大な圧力で拡幅セグメントのリング間端面に押し付けられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセグメント間のシール構造およびシール方法によれば、拡幅セグメントを拡幅或いは縮幅する際のシール部材の圧力と拡幅或いは縮幅した後のシール部材の圧力とがそれぞれ最適な圧力に設定されるため、拡幅セグメントを拡幅或いは縮幅する際にシール部材の圧力を必要以上に大きくする必要がなく、シール部材が破損することを防止することができるとともに、拡幅或いは縮幅した後のシール部材の圧力を膨大な圧力に調整することができ、将来、目開きが生じた場合でもセグメントのリング間の止水性を確保することができる。
【0021】
また、接合セグメントのリング間端面に、接合セグメントの周方向に沿って凹部を形成し、この凹部の中にシール部材を出入り可能に嵌合させることで、接合セグメントが拡幅セグメントに接合されてないときには、シール部材が凹部内に収容されて接合セグメントのリング間端面から殆ど突出しない或いは全く突出しない状態になり、また、接合セグメントを拡幅セグメントに接合させたときには、シール部材が凹部内から突出された状態となる。このように、シール部材は必要なときだけ突出するようになっているため、取り付け時やその他のときにシール部材が破損し難くなり、シール部材の破損を防止することができる。また、シールド機を掘進させるために、接合セグメントのリング間端面から反力をとる場合に、シール部材が凹部内に収容されて接合セグメントのリング間端面から殆ど突出しない或いは全く突出しない状態にすることで、シール部材がシールド機の反力をとる部分によって潰されることがなく、シール部材の破損を防止することができる。
【0022】
また、拡幅セグメントのリング間端面に密着される弾性材が圧力調整手段によって押圧される基板上に積層された構成からなるシール部材を使用することで、基板上に積層された弾性材は変形し難く、弾性材が拡幅セグメントのリング間端面の全面に亘って隙間無く密着されるため、拡幅セグメントと接合セグメントとのリング間の止水性を確保することができる。
【0023】
また、シール部材と接合セグメントのリング間端面との間を止水する止水部材を備えることで、シール部材と接合セグメントのリング間端面との間に形成された隙間が止水部材によって塞がれるため、シール部材を拡幅セグメントのリング間端面に大きな圧力で押し付けることで、シール部材と接合セグメントのリング間端面との間に隙間があいた場合にも当該隙間が塞がれ、拡幅セグメントと接合セグメントとのリング間の止水性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係るセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法の第1,第2の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0025】
[第1の実施の形態]
図1はシールド機Xによって掘削されたトンネルT内に覆工2を組み立てる状況を表した平面図であり、図2は組み立てられた覆工2を表す斜視図である。
図1,図2に示すように、地山の中には、シールド機Xによって断面円形状のトンネルTが掘削されており、このトンネルTの一部には、トンネルTの幅方向に拡幅された断面小判形状の拡幅部T´が形成されている。
【0026】
トンネルT内には、トンネルTの内壁面を覆う覆工2が組み立てられている。この覆工2は、複数の環(リング)状のセグメント3…,4…をトンネルTの軸線方向に連結させた構成からなり、各セグメント3…,4…はトンネルTの内壁面に沿ってそれぞれ配設されている。セグメント3…,4…には、断面円形状のトンネルTの内壁面に沿って形成される断面形状円形の通常の円形セグメント3…と断面小判形状の拡幅部T´の内壁面に沿って形成される断面小判形状の拡幅セグメント4…とがある。
【0027】
図3(a)は図1に示すA−A間の断面図であり、拡幅セグメント4…が拡幅される前の状態(縮幅状態)にあるときの図であり、図3(b)は図1に示すA−A間の断面図であり、拡幅セグメント4…が拡幅された後の状態(拡幅状態)にあるときの図である。
【0028】
図2,図3(a),図3(b)に示すように、円形セグメント3…は、弓形に形成された複数のセグメント部材5…を環状に組み立てた構成からなっている。各セグメント部材5…の端面のうち、円形セグメント3の軸線方向に沿って延在する直線的な端面(部材間端面5a)には、図示せぬ孔が複数あけられており、この孔に挿装されるボルト等からなるセグメント継手6…によって、隣接するセグメント部材5,5同士は接合されている。
【0029】
拡幅セグメント4…は、トンネルTの拡幅部T´の天井面に対向する上基部セグメント7と、拡幅部T´の底面に対向する下基部セグメント8と、拡幅部T´の両側の側壁面にそれぞれ対向する移動自在の移動セグメント9,9とから構成されている。拡幅セグメント4は、両側の移動セグメント9,9をそれぞれトンネルTの幅方向に移動させることで拡幅・縮幅される。移動セグメント9,9は、弓形に形成された複数のセグメント部材10…を半円弧状に組み立てた構成からなっている。各セグメント部材10…の端面のうち、拡幅セグメント4の軸線方向に沿って延在する直線的な端面(部材間端面10a)には、図示せぬ複数の孔があけられており、この孔に挿装されるボルト等からなるセグメント継手11…によって、隣接するセグメント部材10,10同士は接合されている。
【0030】
円形セグメント3の端面(リング間端面3a)、つまり各セグメント部材5…の端面のうち円形セグメント3の周方向に延在する円弧状の端面、および、拡幅セグメント4の端面(リング間端面4a)、つまり各セグメント部材10…の端面のうち拡幅セグメント4の周方向に延在する円弧状の端面には、図示せぬ複数の孔がそれぞれあけられており、この孔に挿装されるボルト等からなるリング間継手12…によって、隣接する円形セグメント3,3同士、隣接する拡幅セグメント4,4同士が各々接合されている。
【0031】
図4は拡幅セグメント4に接合される円形セグメント(接合セグメント3´)を表した斜視図であり、図5は接合セグメント3´の内側面の拡大斜視図であり、図6は拡幅セグメント4と接合セグメント3´とのリング間を止水するシール構造を表した拡大断面図である。なお、図4には後述するシリンダー14が省略されて図示されてなく、また、図5には後述するシール部材13が省略されて図示されていない。
【0032】
図3(a),図3(b),図4,図5,図6に示すように、拡幅セグメント4と接合セグメント3´とのリング間を止水するシール構造は、互いに対向する拡幅セグメント4のリング間端面4aと接合セグメント3´のリング間端面3aとの間に介在されたシール部材13と、シール部材13を拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けるシリンダー(圧力調整手段)14と、シール部材13と接合セグメント3´のリング間端面3aとの間を止水するOリング(止水部材)15とから構成されている。
【0033】
シール部材13は、接合セグメント3´の周方向に沿って延在する薄板状の部材であり、シリンダー14によって押圧される基板18上に、拡幅セグメント4のリング間端面4aに密着される弾性材17を積層させた構成からなっている。また、シール部材13は、接合セグメント3´のリング間端面3aに形成されて接合セグメント3´の周方向に沿って延在する環状の凹部16内に出入り可能に嵌合されており、シール部材13の厚さは、凹部16の深さは同等或いは凹部16の深さより薄くなっている。また、シール部材13は、止水性を確保できる継手具19を介して複数の円弧状の部材13a…を環状に連結した構成からなっており、シール部材13を構成する部材13a…の継手箇所は、接合セグメント3´や拡幅セグメント4を構成するセグメント部材5…,10…の継手箇所と位置をずらしてある。
【0034】
シリンダー14は、シール部材13を拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けるとともに、拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けたシール部材13の圧力を調整するものである。シリンダー14は、接合セグメント3´側に配置されており、接合セグメント3´の内側面に設けられている。シリンダー14のピストン20は、接合セグメント3´のリング間端面3aに形成された凹部16の底面を貫通して設けられており、凹部16の底面には、ピストン20を挿通させるための孔21が形成されている。ピストン20の先端は、前記孔21を挿通してシール部材13の基板18に接合されている。また、シリンダー14は、所定の間隔をあけて複数平行に並べられており、複数のシリンダー14…は、接合セグメント3´の縦リブ(接合セグメント3´の軸線方向に沿って延在するリブ)22…間に配置されている。
【0035】
Oリング15は、例えばゴム系材料等の弾性材料からなる止水部材であり、シール部材13の両側面に沿ってそれぞれ設けられており、シール部材13の両側面と当該両側面にそれぞれ対向する凹部16の両側面との間に介在されている。
【0036】
図7は拡幅セグメント4と接合セグメント3´とのリング間の接合構造を表した拡大断面図である。図7に示すように、複数のシリンダー14…の間には、隣接する接合セグメント3´と拡幅セグメント4とを接合するリング間継手23…が配設されている。このリング間継手23…は、両端に雄ネジが切られたボルト24と、このボルト24の両端に螺合されるナット25,25と、ワッシャ26とから構成されており、ボルト24を、接合セグメント3´のリング間端面3a(凹部16の底面)に形成された孔27と拡幅セグメント4のリング間端面4aに形成された孔28とシール部材13に形成された孔29とにそれぞれ挿通させ、両側からナット25,25で締結する構成からなっている。拡幅セグメント4のリング間端面4aには、縮幅状態のときにボルト24を挿通させる孔28aと、拡幅状態のときにボルト24を挿通させる孔28bとがそれぞれ形成されている。
【0037】
次に、上記した構成からなる拡幅セグメント4を拡幅する際の接合セグメント3´と拡幅セグメント4とのリング間のシール方法について説明する。
【0038】
まず、図1に示すように、シールド機Xを掘進させてトンネルTを掘削するとともに、掘削されたトンネルT内にセグメント3,4を順次組み立てていく。このとき、トンネルTの拡幅部T´の箇所には拡幅セグメント4を組み立てる。このとき、拡幅セグメント4は、図3(a)に示す縮幅状態になっており、その断面形状は円形セグメント3と同じ円形になっている。
【0039】
次に、図6に示すように、シリンダー14によって、拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けられるシール部材13の圧力P1を、拡幅セグメント4の外側で湧き出る地下水圧P2と同等の圧力に調整する。具体的には、地下水圧P2が0.6Mpaの場合は、シール部材13が0.6Mpaの圧力で拡幅セグメント4のリング間端面4aを押し付けるようにシリンダー14を調整する。なお、シリンダー14によるシール部材13の圧力P1の調整を、拡幅セグメント4の拡幅直前に行ってもよく、或いは、接合セグメント3´と拡幅セグメント4とを接合させた組立当初に行ってもよい。
【0040】
次に、隣接する拡幅セグメント4,4同士を接合するリング間継手12…や隣接する接合セグメント3´と拡幅セグメント4とを接合するリング間継手23…をそれぞれ取り外し、拡幅セグメント4をトンネルTの幅方向に拡幅させ、図3(b)に示す拡幅状態にする。このとき、上述した方法によってシール部材13の圧力P1は調整されており、シール部材13は地下水圧P2と同等の圧力P1で拡幅セグメント4のリング間端面4aを押し付けている。
【0041】
次に、拡幅セグメント4を拡幅させた後、図8に示すように、シリンダー14によって、拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けられるシール部材13の圧力P1を増大させ、将来のリング間(接合セグメント3´のリング間端面3aと拡幅セグメント4のリング間端面4aとの間)に目開きDが生じた場合にも止水性を確保できる程度の圧力P1´に調整する。具体的には、将来の目開き量(例えば2mm)を想定し、その目開きDが生じた場合にも地下水圧P2と同等以上の圧力でシール部材13が拡幅セグメント4のリング間端面4aを押圧するように、シリンダー14を調整する。
【0042】
また、拡幅セグメント4を拡幅させた後、その拡幅された位置で、リング間継手12…,23…を取り付け、隣接する拡幅セグメント4,4同士および隣接する接合セグメント3´と拡幅セグメント4とをそれぞれ接合する。
最後に、図示せぬ注入口から、シール部材13の裏側に形成された凹部16の内部空間の中に、充填性に優れた樹脂剤などからなる裏込め材29を充填する。
【0043】
上記した構成からなるセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法によれば、拡幅セグメント4を拡幅する際のシール部材13の圧力P1と拡幅した後のシール部材13の圧力P1´とがそれぞれ最適な圧力に設定されるため、拡幅セグメント4を拡幅する際にシール部材13の圧力P1を必要以上に大きくする必要がなく、シール部材13が破損することを防止することができる。また、拡幅した後のシール部材13の圧力P´を膨大な圧力に調整することができ、将来、目開きDが生じた場合でも接合セグメント3´と拡幅セグメント4とのリング間の止水性を確保することができる。
【0044】
また、接合セグメント3´のリング間端面3aに凹部16を形成し、この凹部16の中にシール部材13を出入り可能に嵌合させることで、接合セグメント3´が拡幅セグメント4に接合されてないときには、シール部材13が凹部16内に収容されてシール部材13の弾性材17の表面と接合セグメント3´のリング間端面3aとが面一になり、接合セグメント3´のリング間端面から全く突出しない状態になる。また、接合セグメント3´を拡幅セグメント4に接合させたときには、シール部材13が凹部16内から突出された状態となる。このように、シール部材13は必要なときだけ突出するようになっているため、取り付け時やその他のときにシール部材13が破損し難くなり、シール部材13の破損を防止することができる。
【0045】
また、図1,図9に示すように、シールド機Xを掘進させるために、接合セグメント3´のリング間端面3aから反力をとる場合に、シール部材13が凹部16内に収容されて接合セグメント3´のリング間端面3aから全く突出しない状態にすることで、シール部材13がシールド機Xの反力をとるスプレッダーX´によって潰されることがなく、シール部材13の破損を防止することができる。
【0046】
また、シール部材13は、拡幅セグメント4のリング間端面4aに密着される弾性材17がシリンダー14によって押圧される基板18上に積層された構成からなるため、基板18上に積層された弾性材17は変形し難く、弾性材17が拡幅セグメント4のリング間端面4aの全面に亘って隙間無く密着される。これによって、拡幅セグメント4と接合セグメント3´とのリング間の止水性を確保することができる。
【0047】
また、シール部材13と接合セグメント3´のリング間端面3aとの間を止水するOリング15が備えられているため、シール部材13と接合セグメント3´のリング間端面3aとの間に形成された隙間がOリング15によって塞がれるため、シール部材13を大きな圧力で拡幅セグメント4のリング間端面4aに押し付けることで、シール部材13と接合セグメント3´のリング間端面3aとの間に隙間があいた場合にも当該隙間が塞がれる。これによって、拡幅セグメント4と接合セグメント3´とのリング間の止水性を確保することができる。
【0048】
[第2の実施の形態]
次に本発明に係るセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法の第2の実施の形態について説明する。
【0049】
図10は拡幅セグメント4…が拡幅される前の状態(縮幅状態)にあるときの図であり、図11は拡幅セグメント4…が拡幅された後の状態(拡幅状態)にあるときの図である。なお、第2の実施の形態の構成のうち、上述した第1の実施の形態と同様の構成については同じ符号を付すことでその説明を省略する。
【0050】
図10,図11に示すように、シール部材113の基板118には、シール部材113の延在方向に沿って延在する断面凹状の溝118a,118bが間隔をあけて2本平行に形成されている。これらの溝118a,118b内には、溝118a,118bに沿って延在する弾性材117,117がそれぞれ付設されている。この弾性材117,117は基板118の表面よりも突出して設けられており、拡幅セグメント4のリング間端面4aに密着される。
【0051】
また、基板118には、拡幅セグメント4のリング間端面4aに密着された際に、基板118と拡幅セグメント4のリング間端面4aとの間であって2本の弾性材117,117の間に充填性に優れた充填材130を充填するための充填手段131が備えられている。この充填手段131は、基板118を貫通する注入孔132と、基板118の裏面側で注入孔132に連通されたジョイント133と、このジョイント133を介して注入孔132に接続されるチューブ134とから構成されている。
【0052】
注入孔132は、2本の溝118a,118bの間の位置に形成されている。チューブ134は、充填材130を圧送する図示せぬ圧送手段に接続されており、必要に応じてジョイント133から取り外し自在な構成になっている。
【0053】
上記した構成からなるシール部材113を備えたセグメント間のシール構造では、2本の弾性材117,117のうち何れか一方が損傷して止水性を確保することができなくなった場合に、図示せぬ圧送手段によって充填材130を圧送し、基板118と拡幅セグメント4のリング間端面4aとの間であって2本の弾性材117,117の間に充填材130を充填し、新たなシール部を形成することができる。なお、チューブ134は充填材130を注入するときだけジョイント133に接続させればよく、通常はチューブ134は外されている。
【0054】
また、上記した構成からなるシール部材113を備えたセグメント間のシール構造では、弾性材117が損傷した場合に限らず、拡幅セグメント4を拡幅した後に充填材130を充填させてもよい。具体的には、拡幅セグメント4を拡幅した後、ジョイント133にチューブ134を差し込んで接続し、図示せぬ圧送手段によって充填材130を圧送し、基板118と拡幅セグメント4のリング間端面4aとの間であって2本の弾性材117,117の間に充填材130を充填し、新たなシール部を形成する。これによって、拡幅後の止水性能を向上させることができる。
【0055】
以上、本発明に係るセグメント間のシール構造およびセグメント間のシール方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、拡幅セグメント4を拡幅する場合について説明したが、本発明は、拡幅セグメントを縮幅させる場合でもよい。
【0056】
また、上記した実施の形態では、圧力調整手段としてシリンダー14を使用しているが、本発明は、圧力調整手段としてネジ式ジャッキ機構やパンタグラフ機構、ボールネジ機構、バネによる付勢機構等を使用してもよい。また、拡幅セグメントの拡幅・縮幅後に、圧力調整手段によって、シール部材の圧力を、将来のリング間の目開き時にも止水性を確保できる程度の圧力に調整した後、圧力調整手段をサポートパイプに盛り替えてもよい。
【0057】
また、上記した実施の形態では、シール部材13と接合セグメント3´との間を止水する止水部材としてOリング15が使用されているが、本発明は、シール部材と接合セグメントとの間に介在されるゴムパッキンや、シール部材と接合セグメントとの隙間を塞ぐ薄布状のゴムカバーでもよく、その他の構成からなる止水部材であってもよい。
【0058】
また、本発明は、接合セグメントのリング間端面に凹部が形成されていなくてもよく、或いは弾性材と基板とからなるシール部材以外のシール部材であってもよく、止水部材が備えられていなくてもよく、上記した構成を適宜組み合わせた構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係る第1の実施の形態を説明するためのセグメント組立状況を表した平面図である。
【図2】本発明に係る第1の実施の形態を説明するための組み立てられたセグメントの斜視図である。
【図3】図1に示すA−A間の断面図であり、(a)は拡幅セグメントが拡幅される前の状態の図であり、(b)は拡幅セグメントが拡幅された後の状態の図である。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態を説明するための接合セグメントを表した斜視図である。
【図5】本発明に係る第1の実施の形態を説明するための接合セグメントの拡大斜視図である。
【図6】本発明に係る第1の実施の形態を説明するためのリング間のシール構造を表した拡大断面図である。
【図7】本発明に係る第1の実施の形態を説明するためのリング間の接合構造を表した拡大断面図である。
【図8】本発明に係る第1の実施の形態を説明するためのリング間のシール方法を表した拡大断面図である。
【図9】本発明に係る第1の実施の形態を説明するためのシールド機を掘進させる際の接合セグメントを表した拡大断面図である。
【図10】本発明に係る第2の実施の形態を説明するためのリング間の接合構造を表した拡大断面図である。
【図11】本発明に係る第2の実施の形態を説明するためのリング間の接合構造を表した拡大断面図である。
【符号の説明】
【0060】
3´ 接合セグメント
3a (接合セグメントの)リング間端面
4 拡幅セグメント
4a (拡幅セグメントの)リング間端面
13,113 シール部材
14 シリンダー(圧力調整手段)
15 Oリング(止水部材)
16 凹部
17,117 弾性材
18,118 基板
T トンネル(坑)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
坑の半径方向に拡幅若しくは縮幅するリング状の拡幅セグメントと該拡幅セグメントに接合されるリング状の接合セグメントとのリング間を止水するセグメント間のシール構造において、
互いに対向する前記拡幅セグメントのリング間端面と前記接合セグメントのリング間端面との間に介在されているとともに、前記接合セグメントの周方向に沿って延在するシール部材と、
該シール部材を前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けるとともに、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けられた前記シール部材の圧力を調整する圧力調整手段と
が備えられていることを特徴とするセグメント間のシール構造。
【請求項2】
請求項1記載のセグメント間のシール構造において、
前記接合セグメントのリング間端面には、前記接合セグメントの周方向に沿って凹部が形成され、該凹部の中に、前記シール部材が出入り可能に嵌合されていることを特徴とするセグメント間のシール構造。
【請求項3】
請求項1または2記載のセグメント間のシール構造において、
前記シール部材は、前記拡幅セグメントのリング間端面に密着される弾性材が、前記圧力調整手段によって押圧される基板上に積層された構成からなっていることを特徴とするセグメント間のシール構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のセグメント間のシール構造において、
前記シール部材と前記接合セグメントとの間を止水する止水部材が備えられていることを特徴とするセグメント間のシール構造。
【請求項5】
坑の半径方向に拡幅若しくは縮幅するリング状の拡幅セグメントと該拡幅セグメントに接合されるリング状の接合セグメントとのリング間を止水するセグメント間のシール方法において、
前記拡幅セグメントを拡幅若しくは縮幅するときは、互いに対向する前記拡幅セグメントのリング間端面と前記接合セグメントのリング間端面との間に介在されているとともに前記接合セグメントの周方向に沿って延在するシール部材を、地下水圧と同等の圧力で、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付け、
拡幅セグメントを拡幅若しくは縮幅した後は、前記シール部材を、将来のリング間の目開き時にも止水性を確保できる程度の圧力で、前記拡幅セグメントのリング間端面に押し付けることを特徴とするセグメント間のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−51433(P2007−51433A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235712(P2005−235712)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【Fターム(参考)】