説明

セミリーン物理溶媒を冷却するための二酸化炭素吸収剤の部分的ポンプアラウンド

本発明は、合成ガス流からの、二酸化炭素および硫化水素の除去を提供する。部分的ポンプアラウンド(部分的ポンプ循環)を実施することによって、二酸化炭素吸収装置の底部から出る溶媒の一部分を冷却する。これによって溶媒循環割合および関連機器サイズを低減することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレングリコールのジメチルエーテル(DMPEG;dimethyl ether of polyethylene glycol)などの物理溶媒を使用することによって、エネルギーおよび資本必要量を低減して、汚染天然ガスまたはガス化により生じる合成ガスなどの汚染ガスを処理し、二酸化炭素および硫化水素を濃縮して除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成ガス流から硫化水素および二酸化炭素を別々に除去するための従来技術による設計では、フラッシュ再生したセミリーン溶媒(semi−lean solvent)を、二酸化炭素吸収装置の底部と1つまたは複数の低圧フラッシュドラムとの間に循環することによって、二酸化炭素吸収装置内を流れる合成ガスから二酸化炭素を除去する。こうしたセミリーン溶媒(これは比較的少量の二酸化炭素を含む)は、このような種類の設計においては、極めて大きな流量になり得る。−30℃(−22°F)から15℃(59°F)の間の温度まで溶媒を冷却すると、溶媒容量が増加し、必要な溶媒流量が低下するが、こうした流れを低温まで直接的に冷却することは、冷却負荷が大きく、大きな機器サイズを伴うので、経済的に魅力がない。
【0003】
操業されている商用ユニットにおける現状のやり方では、二酸化炭素吸収装置の底部近くで全排出トレイ(全ドローオフトレー)が利用され、ここで、カラムを流下する装填溶媒(loaded solvent)は、すべてカラムから排出されて、冷却交換器内にポンプ輸送され、そこで、上流の硫化水素吸収装置から出るガスと混合され、冷却された後に、二酸化炭素吸収装置の底部サンプ部分(底部排液溜め部分)に入る。こうした全排出のやり方は、二酸化炭素吸収装置の底部サンプ部分内の、装填溶媒の温度を効果的に低下させ、また、この溶媒は一連のフラッシュドラムを介してフラッシュ再生されるので、このセミリーン溶媒の温度は、溶媒からフラッシュアウトする二酸化炭素の冷却効果によってさらに低下する。こうしたセミリーン溶媒の温度が低くなることによって溶媒の二酸化炭素吸収容量が増加するので、かかる溶媒の流量を低減することができる。続く二酸化炭素のフラッシュの前に、冷却によって溶媒を冷却すると、最終のフラッシュドラムでの温度を、典型的な冷却交換器でこうした操作をしない場合に普通にみられる温度よりも低くすることが可能になる。こうした設計の欠点は、全排出トレイのために、二酸化炭素吸収装置の接線長が顕著に増加し、カラム内部のコストが増加し、専用ポンプを必要とすることによりユニット用の機器を追加させ、そして、ユニットの溶媒保有量を顕著に増加させることである。従来技術による設計では、ミキサー/交換器もやはり非常に大きく、予測可能で満足な性能を出すように設計するのが困難である。こうした従来のミキサー/交換器の運転に対する懸念も存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、溶媒の部分的ポンプアラウンド(partial pumparound)に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、ポンプアラウンド(ポンプ循環)用の溶媒は、排出トレイ(ドローオフトレイ)から排出されるのではなく、カラムの底部サンプ部分(底部排液溜め部分)を出る主たる流れの支流から分割される。この装填溶媒(loaded solvent)は、装填溶媒を硫化水素吸収装置へ送達するのに使用される既存のポンプを用いて、二酸化炭素吸収装置の底部からポンプ輸送され、硫化水素吸収装置に供給するのに使用される装填溶媒と共用される交換器内で冷却される。約5℃(40°F)まで冷却された直後に、溶媒のポンプアラウンド(ポンプ循環)部分が切り離され、静的ミキサーまで送られ、ここで、硫化水素吸収装置の頂部から来るガスと混合された後に、二酸化炭素吸収装置の底部サンプ部分に輸送される。このポンプアラウンドにおける溶媒の流量は、フラッシュ再生部分の最終フラッシュドラムで所望される温度によって決定される。ポンプアラウンドの流量を増加させると、二酸化炭素吸収装置の底部温度および最終フラッシュ温度が低下することになる。−30℃(−22°F)もの低い温度が、ユニットで使用する冷媒の所要温度を低下させることなく、またはいかなる追加のポンプ、交換器も追加することなく、または二酸化炭素吸収装置の接線長を実質的に増加させることなく、達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1は、物理溶媒を使用することによって合成ガスまたは他のガス流を処理し、二酸化炭素および硫化水素を除去し、濃縮するための流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、物理溶媒を用いることによって、ガス流から硫化水素および二酸化炭素などの不純物を除去するものである。本発明で使用するための代表的な物理溶媒には、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコールのジアルキルエーテル、リン酸トリブチル、テトラメチレンスルホン、プロピレンカーボネート、メタノール、アルカノールピリジン、およびスルホラン(テトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシド)が含まれる。ポリプロピレングリコールのジメチルエーテルが好ましい溶媒である。
【実施例】
【0008】
図1は、本発明の実施形態を示す。シフト反応器を通ってきた合成ガス1の流れが示され、それは、供給原料/生成物交換器4を介してライン8まで進み、次いで、溶媒を格納する硫化水素吸収装置10の底部に入り、この溶媒は、合成ガスの流れと接触することによって硫化水素および他のイオウ化合物を除去する。流れ12は、硫化水素吸収装置10から出て、この流れ12は硫化水素の濃度が増加している。次いで、流れ12は、イオウ再生区画14に進み、その流れから硫化水素が除去され、流れ16として示されるように系(システム)から回収される。第2の流れ28が示され、これは硫化水素吸収装置10の頂部を出て、次いで、静的ミキサー30まで進み、冷却装填溶媒流78と混合され、次いで、合わさった流れは、ライン32を介して二酸化炭素吸収装置34の底部に入る。二酸化炭素が装填された溶媒流38は、二酸化炭素吸収装置34の底部を出て、一連のフラッシュドラム(40、46、52)に続く流れ39と、部分的ポンプアラウンド(部分的ポンプ循環)の一部分としての流れ68とに分割される。流れ68が示され、これは装填溶媒ポンプ70によってライン72へポンプ輸送され、次いで、装填溶媒冷却器74までポンプ輸送されてライン76に入る。流れ76は、硫化水素吸収装置10の頂部に入る流れ79と、静的ミキサー30まで行って第2の流れ28と合わせられる流れ78とに分割される。流れ39が示され、これは高圧フラッシュCOフラッシュドラム40まで進み、ライン42は、二酸化炭素が出るところを示し、溶媒は、ライン44を介して中圧フラッシュCOフラッシュドラム46まで進み、二酸化炭素はライン48から出て行く、溶媒はライン50内を進み続けて低圧フラッシュCOフラッシュドラム52に至り、二酸化炭素は、ライン54に示すように出て行く。生成したセミリーン溶媒(semi−lean solvent)は、ライン56を介してセミリーン溶媒ポンプ58を通ってライン60に進み、次いで、図に示したように二酸化炭素吸収装置34まで戻る。精製された合成ガスは、二酸化炭素吸収装置34の頂部を出て、ライン36を介して供給原料/生成物交換器4まで進みライン6に至り、次いで、さらに所望の通りに加工される。流れ62も示されているが、これは、イオウ再生区画14からリーン溶媒冷却器64を介してライン66まで進み、次いで、二酸化炭素吸収装置34まで進む。ライン18は、イオウ再生区画14からリサイクル圧縮機20まで進み、さらにライン22、リサイクルガス冷却器24およびライン26まで進み、硫化水素吸収装置10に至る。
【0009】
本発明の部分的ポンプアラウンド(部分的ポンプ循環)を使用すると、このような部分的ポンプアラウンドを全く使用しない場合と比較して、セミリーン溶媒流量および関連の機器サイズを10〜15%低減させることが可能になる。本発明は、追加のポンプまたは問題の多い追加の交換器を必要とせずに、必要な溶媒流量が低くてもより低い温度を提供し、あるいは流量が同じ場合にはより大きい容量を提供する。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)二酸化炭素吸収装置ユニット中にガス流を送る工程であって、ここで前記ガス流を溶媒と接触させることによって二酸化炭素を除去し、二酸化炭素含量が低下した処理ガス流および二酸化炭素含量が増加した装填溶媒流を生成させる工程;
(b)前記装填溶媒流を、前記装填溶媒流の第1の部分および前記装填溶媒流の第2の部分に分割する工程;
(c)前記装填溶媒流の前記第1の部分を少なくとも1つのフラッシュドラムに送ることによって、前記装填溶媒流をフラッシュ再生してセミリーン溶媒流を生成させ、次いで前記セミリーン溶媒流を、前記二酸化炭素吸収装置ユニットに戻す工程;
(d)前記装填溶媒流の第2の部分を冷却することによって、冷却装填溶媒流を生成させる工程;
(e)前記冷却装填溶媒流の第1の部分を、前記二酸化炭素吸収装置ユニットに戻す工程;および
(f)前記冷却装填溶媒流の第2の部分を、硫化水素吸収器ユニットに送る工程;
を含む、前記ガス流を精製する方法。
【請求項2】
前記装填溶媒流の前記部分を冷却した後、前記硫化水素吸収装置ユニットからの生成物流と混合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セミリーン溶媒流が、冷却器または熱交換器を通過せずに前記二酸化炭素吸収装置に戻る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ガス流が、合成ガス流である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス流が、天然ガス流である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記装填溶媒流が、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコールのジアルキルエーテル、リン酸トリブチル、テトラメチレンスルホン、プロピレンカーボネート、メタノール、アルカノールピリジン、およびテトラヒドロチオフェン−1,1−ジオキシドからなる群から選択される物理溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記装填溶媒流が、ポリプロピレングリコールのジメチルエーテルを含む、請求項6に記載の方法。

【公表番号】特表2011−525860(P2011−525860A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516360(P2011−516360)
【出願日】平成21年4月29日(2009.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2009/042093
【国際公開番号】WO2009/158064
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(598055242)ユーオーピー エルエルシー (182)
【Fターム(参考)】