説明

セメントモルタルの造粒方法

【課題】廃棄コンクリートの中から分離されたセメントモルタルを、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できるようにする。
【解決手段】 回転自在の転動パン1内に粉状のセメントモルタル2を投入し、そのセメントモルタル2に水3を滴下し、前記転動パン1を回転させることにより、前記セメントモルタル2を転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法とした。滴下された水が造粒の核を形成することによって円滑に造粒が成され、また、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できる。また、回転自在の転動パン1内に粉状のセメントモルタル2を投入し、そのセメントモルタル2に水3と生石灰とを添加し、前記転動パン1を回転させることにより、前記セメントモルタル2を転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法とした。生石灰を添加したことによって、その生石灰が造粒補助材として作用し、円滑に造粒が成されるとともに、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、廃棄コンクリートから発生するセメントモルタルの造粒方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
解体した建造物等から発生する建設廃棄物の中でその大部分を占める廃棄コンクリートは、従来から路盤材や埋め戻し材として再利用されてきた。しかし、近年は、この廃棄コンクリートを、コンクリート用骨材として再利用する機会が増えている。
【0003】
廃棄コンクリートをコンクリート用骨材として再利用する場合、その廃棄コンクリートの中には種々の大きさのものが混じっているので、処理工場等において所定の大きさのコンクリート塊に細かく破砕される。
【0004】
また、破砕されたコンクリート塊には、その外殻にセメントモルタルが付着しているため、骨材としての再利用に際し、そのコンクリート塊からセメントモルタルを除去する必要がある。セメントモルタルが骨材に付着していると、その骨材を用いて打設するコンクリートの品質に影響を及ぼすからである。
【0005】
セメントモルタルの分離には種々の手法が作用されるが、例えば、特許文献1に示すように、コンクリート塊に圧縮力を加えながら互いに摩擦接触させる(以下、この作用を摩砕と言う)手法によるものがある。
【0006】
この装置は、ケーシング内に設けた上下方向の偏心回転軸に筒状ロータを回転自在に取り付け、そのケーシング内壁と筒状ロータとの間に環状の摩砕室を形成したものである。
【0007】
ケーシングの上部には投入部が設けられており、その投入部から摩砕室へ投入されたコンクリート塊は、前記筒状ロータの偏心回転で圧縮力を加えられながら互いに摩擦接触し、そのコンクリート塊の表面に付着しているセメントモルタル分が、コンクリート塊から分離されていく。
摩砕室の下方には、排出規制板を介して処理後のコンクリート塊とセメントモルタル分を落下させ、次工程へ搬出するようになっている。この後、コンクリート塊とセメントモルタル分とは、振動篩等によって分別される(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
分離されたセメントモルタルは、上記摩砕によって粉状に微細化しており(以下、「微細状態」という)、このような微細状態では輸送時に飛散防止の処理を施さなければならないという問題がある。また、この微細状態で埋め戻し処理をすると、地盤の締まりすぎの問題が生じ得る。地盤が締まりすぎると、透水性が悪くなって、地表における排水処理の問題を生じ得るとともに、支持杭や地盤強化用のパイルを打設することが困難になるので不都合である。
【0009】
さらに、セメントモルタルが微細状態であるから、特に、六価クロムが含まれている場合には、そのまま埋め戻すとその六価クロムの溶出の問題も生じ得る。
そこで、微細状態にあるセメントモルタルの造粒処理が、各種手法により行われている。
【0010】
一般的な粉体の造粒処理としては、例えば、水やバインダを使わずに、ロールなどの圧力で粉体を圧縮することで材料の凝集力を高めて造粒する、いわゆる圧縮造粒(乾式造粒)の手法や、水やバインダの付着力を利用して造粒する湿式造粒の手法等がある。
また、特に、上記セメントモルタルを造粒する際には、霧状の水を加えながら混練することにより造粒する手法(噴霧乾燥造粒)が用いられている。
【0011】
なお、産業廃棄物など各種処理物を造粒させる際の処理方法としては、例えば、その処理物に、セメント固化法、プラスチック固化法等により固体化処理が施された後、未だその処理物が泥状あるいはスラリー状である場合に、その泥状あるいはスラリー状の処理物に、他の粉体状の廃棄物を混合して粒状体に造粒する技術がある(例えば、特許文献2参照)。
【0012】
また、セメントモルタルの造粒処理ではないが、低含水浄水汚泥の処理方法として、その低含水浄水汚泥に、生石灰が主導する減水材と、セメント系固化剤を添加し、混練ミキサで撹拌及び練り込みを行い、さらに生石灰を主導する造粒粉材を添加混練することで、その処理物を造粒する技術がある。(例えば、特許文献3参照)。
【0013】
【特許文献1】特開2003−299973号公報
【特許文献2】特開昭54−71774号公報
【特許文献3】特開2006−88051号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記セメントモルタルを造粒する場合、特に、その造粒物を埋め戻し材として使用する場合には、適度な硬さ(壊れやすさ)が必要である。
しかし、上記噴霧乾燥造粒では、噴霧後の混練を伴うため、粒が硬くなりすぎて、埋め戻し材として適度な硬さとすることができなかった。
【0015】
また、上記特許文献2,3の造粒方法は、泥状あるいはスラリー状の処理物に対する造粒方法であって、微細状態にあるセメントモルタルの造粒には、そのまま適用することができない。
【0016】
そこで、この発明は、廃棄コンクリートの中から分離されたセメントモルタルを、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、この発明は、セメントモルタルに水を滴下し、転動造粒したのである。
このようにすれば、その滴下された水が造粒の核を形成することによって円滑に造粒が成され、また、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できることを発見した。
【0018】
また、他の手段として、セメントモルタルに水と生石灰を添加して、転動造粒したのである。
生石灰を添加したことによって、その生石灰が造粒補助材として作用し、円滑に造粒が成されるとともに、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できることも発見した。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、造粒の手法として転動造粒を採用し、その造粒の際に、水の滴下又は水と生石灰の添加を行ったので、廃棄コンクリートの中から分離されたセメントモルタルを、埋め戻し材として適度な硬さに造粒できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の実施形態としては、回転自在の転動パン内に粉状のセメントモルタルを投入し、そのセメントモルタルに水を滴下し、前記転動パンを回転させることにより、前記セメントモルタルを転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法が挙げられる。この造粒の際、前記セメントモルタルに生石灰を添加することもできる。
【0021】
また、回転自在の転動パン内に粉状のセメントモルタルを投入し、そのセメントモルタルに水と生石灰とを添加し、前記転動パンを回転させることにより、前記セメントモルタルを転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法が挙げられる。
【0022】
すなわち、生石灰の添加を伴う手段による場合、水の添加方法は滴下には限定されず、噴霧など他の手法を採用しても、生石灰による造粒補助材としての効果を期待できる。ただし、生石灰の添加に加え、滴下による水の添加方法を採用すれば、前記造粒時の核形成の効果を併せて期待することができる。
【0023】
また、生石灰を添加することで、その生石灰が持つ自己発熱作用によって、造粒後の早期乾燥が可能となる。このため、造粒した製品を早期に出荷することができる。このとき、生石灰は、前記セメントモルタルに対して5〜20重量%であることが好ましいことが確認できた。
【0024】
なお、セメントモルタルに六価クロムが含まれている場合において、生石灰を添加することにより、その六価クロムを無害化することができる。このため、六価クロムの溶出の問題を回避することができる。この六価クロムの無害化の効果についても、前記セメントモルタルに対して5〜20重量%であることが好ましいことが確認できた。
【0025】
また、前記転動パンは、その回転中心が鉛直方向に対して傾斜した状態で回転自在である構成を採用することができる。造粒機をパン傾斜回転式とすることで、粉状のセメントモルタルに対しては、さらに適度な硬さの造粒が可能となる。
また、そのパン傾斜回転式の造粒機において、処理材に接触する部分(材接部)は、パンと必要に応じて設けられるスクレーパ等であるので、砂分の混入の多いセメントモルタルに対しても、摩耗の発生しやすい箇所が限られる。このため造粒機のメンテナンスが容易になる。
【0026】
また、セメントモルタルに添加する水は、前記セメントモルタルに対して10〜40重量%であることが望ましいことが確認できた。水の含有率が10重量%を未満となると、粒が形成されない、あるいは円滑な造粒が成されなくなり、逆に40重量%を超えると、セメントモルタルが泥状になってしまうからである。
【実施例】
【0027】
この発明の実施例を以下に説明する。図1に示すように、フラットで平面視円形の底板1bとその周囲に立ち上がる周壁1cとからなる転動パン1が、その下方に配置された駆動装置5の駆動力によって回転するようになっている。その回転中心1aは、鉛直方向に対して傾斜する方向となっている。
【0028】
転動パン1の上には、水(水滴)3を滴下することができる機能を有する複数のノズル4aが設けられている。各ノズル4aには、配管4を通じて水が供給される。
【0029】
この転動パン1内に粉状のセメントモルタル2を投入し、そのセメントモルタル2に前記ノズル4aから水3を滴下(矢印C参照)しながら、前記転動パン1を矢印Aのように回転させて造粒を行う。セメントモルタル2は、矢印Bのように転動パン1内で流動しながら所定の粒径に造粒されていく。
【0030】
以下、表1に、セメントモルタル2の造粒の際の配合例、及びその造粒の結果を示す。
なお、実験3〜14では、水の添加量を違えて、複数の造粒試験を行った。水の添加に関し、実験13のみ水の添加方法を噴霧とし、それ以外は水を滴下した。実験1,2では水を添加していない。
また、実験6〜8及び10〜14では、添加する生石灰の量を違えて複数の造粒試験を行った。生石灰の添加に関し、実験1〜5及び9では生石灰を添加せず、生石灰を添加しない場合は、それと同量のセメントを添加した(実験3〜5及び9)。
【0031】
試験後、造粒が成されたもののうち実験4,6,7,8,10、及び、造粒が成されなかった実験1,2に対して、それぞれ六価クロムの溶出試験を行った。
【0032】
なお、表中の造粒評価で、○は造粒が適正に成されたもの、△は造粒が一部適正に成されたもの、×は造粒が適正になされなかったものを示す。
【0033】
また、表中の判定で、○は六価クロムの溶出が規定量(表1の欄外に示す「土壌環境基準値0.05mg/l)以下であったもので、◎は特に溶出量の少なかったもの、×はその溶出量が規定量以上であったものを示す。
【0034】
【表1】

【0035】
以上の結果から、水3の添加量に関する限り、滴下による添加方法を採用した場合は、セメントモルタル2に対して5〜40重量%であることが好ましいことがわかる(表中の造粒評価○印と△印参照)。なお、水3の滴下量が10〜40重量%であれば、造粒状況が特に好ましいことが確認できた(表中の造粒評価○印参照)。また、水3の滴下量が、実験11の値よりも低くなると(5重量%未満となると)、造粒がうまく成されないことも確認されている。
さらに、水3の添加を、滴下によらず噴霧とした場合には、実験13のように、10重量%の水3を添加しても造粒は成されなかった。
【0036】
また、生石灰の添加量に関する限り、5重量%以上の水3の滴下を伴えば、セメントモルタル2に対して3〜20重量%であることが好ましいことがわかる(表中の造粒評価○印と△印参照)。なお、このとき、生石灰の添加量が5重量%以上であれば、造粒状況が特に好ましいことが確認できた(表中の造粒評価○印参照)。
一方、生石灰の添加量が5重量%を下回ると、実験14に示すように、造粒状況がやや劣る結果となっている。なお、生石灰の添加量を20重量%以上とすることもできるが、その効果には変わりない。
【0037】
ただし、実験11や実験12のように、水3の滴下量が5重量%あるいは30重量%となると、生石灰の添加量が5重量%以上であっても、造粒状況がやや劣る結果が出ている。
この点、水3の滴下量を10〜15重量%とした実験10、水の滴下量を20重量%とした実験6、水の滴下量を25重量%とした実験8では、それぞれ、生石灰の添加量を7重量%、20重量%、5重量%とした状況下で、良好な造粒結果が得られている。また、生石灰の添加量を、実験7のように10重量%以上とすれば、水3の滴下量が30重量%の状況下でも良好な造粒結果が得られている。
【0038】
六価クロムの溶出に関しては、生石灰の添加量を7重量%とした実験10、10重量%とした実験7、20重量%とした実験6で、特に良好な結果が得られている。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】造粒機の全体を示す斜視図
【符号の説明】
【0040】
1 転動パン
1a 回転中心
1b 底板
1c 周壁
2 セメントモルタル
3 水
4 配管
4a ノズル
5 駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転自在の転動パン(1)内に粉状のセメントモルタル(2)を投入し、そのセメントモルタル(2)に水(3)を滴下し、前記転動パン(1)を回転させることにより、前記セメントモルタル(2)を転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法。
【請求項2】
前記セメントモルタル(2)に生石灰を添加したことを特徴とする請求項1に記載のセメントモルタルの造粒方法。
【請求項3】
回転自在の転動パン(1)内に粉状のセメントモルタル(2)を投入し、そのセメントモルタル(2)に水(3)と生石灰とを添加し、前記転動パン(1)を回転させることにより、前記セメントモルタル(2)を転動造粒させるセメントモルタルの造粒方法。
【請求項4】
前記生石灰は、前記セメントモルタル(2)に対して5〜20重量%であることを特徴とする請求項2又は3に記載のセメントモルタルの造粒方法。
【請求項5】
前記転動パン(1)は、その回転中心(1a)が鉛直方向に対して傾斜した状態で回転自在であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載のセメントモルタルの造粒方法。
【請求項6】
前記水(3)は、前記セメントモルタル(2)に対して10〜40重量%であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載のセメントモルタルの造粒方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−76275(P2010−76275A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247488(P2008−247488)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(506059861)クリモトメック株式会社 (34)
【Fターム(参考)】