説明

セメント急結剤

本発明は、a)ケイ酸カルシウムセメント、b)アルミン酸カルシウムセメント、c)少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール及びd)場合により硫酸カルシウムを含有する無機結合剤系に関する。さらに、a)ケイ酸カルシウムセメント、b)アルミン酸カルシウムセメント及びd)場合により硫酸カルシウムを含有する無機結合剤系用の急結剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールの使用が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、a)ケイ酸カルシウムセメント、b)アルミン酸カルシウムセメント及びc)少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコールを含有する無機結合剤系並びにこのようなセメント系用の急結剤としての少なくとも1種のポリアルキレングリコールの使用に関する。
【0002】
固化促進剤は、殊に、無機結合剤系がフロストライン付近の低い温度で用いられる場合に使用される。例えばポルトランドセメントの水和速度は、温度に非常に依存し、かつ、より低い温度では大きく低下する。これらの温度で、例えばコンクリート又はモルタルの満足のいく強度形成が求められる場合、水和の促進のための措置が講じられなければならない。このための手段は、セメント割合の増大、コンクリート若しくはモルタルの加熱、又は固化促進のための化学物質の使用である。種々の固化促進剤が一般的に知られている。それらに属するのは、アルカリ金属水酸化物、ケイ酸塩、フルオロケイ酸塩、ギ酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム並びに硝酸カルシウム及び亜硝酸カルシウムである。
【0003】
迅速な強度形成を得るための更なる手段は、ケイ酸カルシウムセメント及びアルミン酸カルシウムセメントを含有する結合剤混合物の使用であり、その際、それらは殊にポルトランドセメント(PZ)及びアルミナセメント(TZ)であってよい。このような結合剤系は、迅速な建設進捗及び該進捗と結び付いた迅速な硬化が得られるべき場合に殊に用いられる。ケイ酸カルシウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント及び付加的に硫酸カルシウムを含有する結合剤混合物は、そのうえ迅速な乾燥並びにそれにより低い残留湿分及び良好な容積安定性を示す;耐水性は、しかし大きく減少する。それゆえ、この結合剤は、有利には室内領域用に定められている急速硬化建設材料用に適している。水との迅速な反応は、短時間で、製造された生成物の低い含水量につながり、その際、これらは比較的容積安定性である。そのため、例えば、たたき材(Estrichmasse)又はフィラー(Spachtelmasse)として使用される場合、迅速に被覆される準備を整えることができ、なぜなら、そのようにして製造されたたたき又はフィラーは、すでに短時間後に歩行可能であり、カットされることができ、かつ低い残留湿分及び高い強度に基づき、表面材、例えばテキスタイルオーバーレイ、プラスチックオーバーレイ又はタイル及びスラブでも一面が覆われることができるからである。このような系は、一般にドライブレンドモルタルとして存在する。これらは、使用の用意ができている粉末状のモルタル混合物であり、該混合物は、現場で、つまり、建設現場での使用直前に水と混合してモルタルにされる。ドライブレンドモルタルは、結合剤、充填材及び更なる成分、例えば硬化調節剤、レオロジー添加剤、保水剤及び均展剤から成る。このようなドライブレンドモルタルは、一般的に大型の混合プラント中で混合され、かつ引き続き有利には紙袋に詰められ、使用されるまでその中で貯蔵される。
【0004】
そのため、例えばDE3527981から、急速硬化型のモルタル及びしっくいを製造するための混合物が知られており、該混合物は、本質的な結合剤成分として、反応性ケイ酸カルシウム、反応性アルミン酸塩、水酸化カルシウム及び硫酸カルシウム半水和物/硫酸カルシウム硬セッコウIIを含有する。
【0005】
DE102005001101から、ポルトランド石灰石セメント、アルミン酸セメント及び硫酸カルシウムを硫酸鉄及び/又は硫酸アルミニウムとの組合せにおいて含有する乾燥混合物が知られている。
【0006】
さらに、DE4343407は、互いの特定の混合比における含鉄アルミナセメント、硫酸カルシウム及びポルトランドセメントからの混合物を含有する水硬性結合剤を特許請求している。
【0007】
DE19724700は、水硬性結合剤を基礎とする、なかでも、白色セメント0.1〜6質量%、消石灰0.1〜3質量%、アルミナセメント5〜45質量%並びに硫酸カルシウム2〜18質量%を含有することを特徴とするフィラーに関する。
【0008】
結合剤ブレンドは、非常に迅速な凝結挙動を示す。凝結挙動の制御のために、これらの系になお遅延剤及び急結剤を添加してよい。遅延剤は、加工時間又はポットライフの調整のために利用される:急結剤は、強度形成を高めるためにポットライフの終了後に添加される。
【0009】
ケイ酸カルシウムセメント及びアルミン酸カルシウムセメント及び場合により硫酸カルシウムを基礎とするこれらの系の依然としてある問題は、高い温度、殊に20〜30℃の温度でも、低い温度、殊に15〜5℃の温度でも、可能な限り変わらないポットライフ及び強度形成を達成することである。係る急速硬化型の仕上がったモルタルの基準値として、良好な加工性にとってのポットライフは15〜90分であるべきである。先行技術に従ったこのような系のポットライフが、低い温度、例えば5℃で許容でき、かつ強度形成が十分早い場合、ポットライフは、より高い温度、例えば30℃では、あまりに短くなる。
【0010】
したがって、本発明の課題は、低い温度、殊に5〜15℃で最適な固化及び強度形成を有し、かつ同時に高い温度、殊に20〜30℃でなお十分長い加工時間を有する、ケイ酸カルシウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント及び場合により硫酸カルシウムを含有する無機結合剤系を提供することであった。
【0011】
さらに、この発明の課題は、加工に際して、室温でも、低い温度、殊に10℃を下回る温度でも、ほぼ変わらないポットライフ及び強度形成を有する、ケイ酸カルシウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント及び場合により硫酸カルシウムを含有するドライブレンドモルタルを提供することであった。
【0012】
この課題は、a)ケイ酸カルシウムセメント、b)アルミン酸カルシウムセメント、c)少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール及び場合によりd)硫酸カルシウムを含有する無機結合剤系によって解決される。
【0013】
意想外にも、ポリアルキレングリコールが、ケイ酸カルシウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント及び場合により硫酸カルシウムを含有する系において、低い温度で急結剤として作用することがわかった。ここで、特に意想外だったのは、高い温度での係る系の加工時間が、本発明による急結剤の添加によってほんの些細にしか変化しなかったことである。
【0014】
成分a)のケイ酸カルシウムセメントは、殊にポルトランドセメントである。そのうえ、潜在水硬性結合剤、例えば、ポゾラン、例えばメタカオリン、メタケイ酸カルシウム及び/又は火山スラグ、火山凝灰岩、フライアッシュ、高炉スラグ、火山土及び/又は微小シリケート(Mikrosilikat)も、場合によりカルシウム源、例えば水酸化カルシウム及び/又はセメントと一緒に用いてよい。ケイ酸カルシウムセメントに関していえば、本発明による系中での量は、幅広い範囲で変わってよい。一般的に、ケイ酸カルシウムセメントの量は、本発明による系を基準として、10〜30質量%、殊に10〜25質量%、有利には10〜20質量%の範囲にある。それにも関わらず、個々のケースに応じて又は適用上、前述の量と相違している必要がある可能性もある。
【0015】
成分b)のアルミン酸カルシウムセメントは、殊にアルミナセメント又は高アルミナセメントである。アルミン酸カルシウムセメントに関していえば、本発明による系中でのその量は、幅広い範囲で変わってよい。一般的に、アルミン酸カルシウムセメントの量は、本発明による系を基準として、1〜10質量%、殊に1〜8質量%、有利には1〜4質量%の範囲にある。それにも関わらず、個々のケースに応じて又は適用上、前述の量と相違している必要がある可能性もある。2,000〜4,000cm2/g、殊に2,500〜3,750cm2/g、有利には2,750〜3,500cm2/gのブレーン比表面積を有するアルミン酸カルシウムセメントが用いられる場合、特に良好な結果が得られる。
【0016】
ケイ酸カルシウムセメントと対照的に、アルミ酸カルシウムセメントは、水和に際して石灰を遊離しない;これらの特性並びにその低い空隙率が、建設用化学配合物、例えばフィラー、たたき材又は床均し材に良好な耐薬品性を与え、かつ白華を防止する。殊に、使用されるアルミン酸カルシウムセメントは、20〜30℃の温度で、水和に際しての高い速度によって際立つ混合物が生じるように、本発明による系の範囲内で、なかでも凝結促進剤及び固化促進剤として作用する。本発明により有利には使用されるアルミン酸カルシウムセメントは、そのつど該アルミン酸カルシウムセメントを基準として、かつ、そのつどDIN EN196−2:1994に従って測定して、CaO 35〜41質量%、SO2 1〜6質量%、Al23 35〜45質量%及びFe23 12〜19質量%を有する。
【0017】
殊に、三官能性ポリアルキレングリコールは、有利にはトリメチロールプロパン又はグリセリンを基礎とする、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールである。一般的に、三官能性ポリアルキレングリコールの量は、本発明による系を基準として、0.05〜5質量%、殊に0.1〜2質量%、有利には0.5〜1.5質量%の範囲にある。それにも関わらず、個々のケースに応じて又は適用上、前述の量と相違している必要がある可能性もある。
【0018】
任意に含有された硫酸カルシウム成分d)は、好ましくは、水和された形態で、殊に硫酸カルシウム半水和物又は硬セッコウの形態で存在する。本発明による系において使用される硫酸カルシウムの量も、幅広い範囲で変わってよい。一般的に、硫酸カルシウムの量は、本発明による系を基準として、0〜20質量%、殊に2〜15質量%、有利には3〜8質量%の範囲にある。2,500〜3,500cm2/g、有利には2,750〜3,250cm2/g、特に有利には約3,000cm2/gのブレーン比表面積を有する硫酸カルシウムが用いられる場合、特に良好な結果が得られる。使用される硫酸カルシウムは、少なくとも90質量%の硫酸カルシウム含有率を有するべきである。本発明による有利な硫酸カルシウムは、2.5〜3.0g/cm3、殊に2.7〜2.9g/cm3の真密度、及び800〜1,200g/l、殊に850〜1,150g/l、好ましくは900〜1,100g/lのかさ密度を有する。
【0019】
殊に、本発明による無機結合剤系は、a)ポルトランドセメント、b)アルミナセメント、c)少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール及びd)硬セッコウを有する。特に有利には、該系は以下の組成物を有する:a)ポルトランドセメント10〜30質量%、b)アルミナセメント1〜10質量%、c)トリメチロールプロパン又はグリセリン並びにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールを基礎とする少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール及びd)硬セッコウ0〜20質量%、殊に2〜18質量%。
【0020】
凝結時間の制御のために、更なる急結剤若しくは遅延剤として、殊に水酸化物、無機酸及び/又は有機酸及び/又はそれらの塩並びにアルカリ金属炭酸塩又はこれらの化合物の混合物を添加してよい。殊に、更なる急結剤若しくは遅延剤として、水酸化カルシウム、クエン酸及び/又はそれらの塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウム又はこれらの化合物の混合物を添加してよい。凝結調節剤の量は、幅広い範囲で変わってよい。一般的に、凝結調節剤は、無機結合剤系を基準として、0.001〜4質量%、殊に0.01〜0.25質量%の量で用いられる。それにも関わらず、場合により、前述の量と相違している必要がある可能性もある。
【0021】
殊に、本発明による無機結合剤系は、さらに、石英砂20〜60質量%、更なるセメント急結剤、殊にアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物、有利には水酸化カルシウム並びにアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩、殊に炭酸リチウム0.1〜2質量%及びセメント遅延剤、殊にポリヒドロキシカルボン酸及び他のポリヒドロキシ化合物を含有してよい。
【0022】
本発明による無機結合剤系中での充填材の割合は、有利には10〜85質量%である。使用される充填材は、殊に、石英砂、石英粉、石灰石、重晶石、方解石、苦灰石、滑石、カオリン、雲母及び白亜である。軽量充填材として、パーライト、無機質発泡体、発泡体ビーズ、軽石、発泡ガラス、中空ガラス球及びケイ酸カルシウム水和物を用いてよい。当然の事ながら、充填材の混合物も用いてよい。
【0023】
さらに、無機結合剤系は、充填材として石灰石粉を、該無機結合剤系を基準として、5〜40質量%、好ましくは20〜35質量%、特に有利には25〜35質量%の量で含有してよい。本発明により有利な石灰石粉は、該石灰石粉を基準として、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%を含有する。特に良好な結果は、800〜1,000g/l、殊に900〜950g/lのかさ密度を有する石灰石粉により得られる。本発明の範囲内で有利な石灰石粉は、3,500〜4,500cm2/g、好ましくは3,750〜4,250cm2/g、特に有利には約4,000cm2/gのブレーン比表面積を有する。
【0024】
有利には、該系は、充填材として石英砂を、該無機結合剤系を基準として、15〜85質量%、好ましくは25〜65質量%、特に有利には35〜60質量%の量で含有してよい。本発明の特別な実施形態によれば、異なる粒度及び/又は異なるブレーン比表面積の石英砂の混合物が用いられる。殊に、比較的いくらか粒の細かい石英砂が、比較的いくらか粒の粗い石英砂と組み合わせられる。本発明により有利な石灰砂は、該石灰砂を基準として、95質量%より高い、好ましくは98質量%より高いSiO2含有率を有する。本発明により有利な石英砂は、少なくとも60cm2/g、好ましくは少なくとも70cm2/g、特に有利には少なくとも80cm2/gの理論比表面積(ブレーン)を有する。
【0025】
さらに、無機結合剤系は、なお少なくとも1種の潜在水硬性の固体成分、例えばカオリン、メタカオリン、スラグ、フライアッシュ、マイクロシリカ、活性白土(ポゾラン)、酸化ケイ素、酸化アルミニウムを含有してよい。これらは、場合により、無機結合剤系を基準として、1〜15質量%、好ましくは1〜5質量%の量で用いられる。
【0026】
さらに、無機結合剤系は、適用特性を最適化するために、更なる構成成分及び/又は添加剤を含有することが予定されていてよい。係る構成成分若しくは添加剤は、例えば、液化剤、再分散性ポリマー粉末、消泡剤、安定化剤、保水剤、増粘剤、均展剤、制塵剤及び顔料の群から選択されていてよい。
【0027】
例えば、本発明による無機結合剤系は、少なくとも1種の液化剤を、該無機結合剤系を基準として、殊に0.01〜5質量%、好ましくは0.05〜2質量%、特に有利には0.1〜0.5質量%の量で含有してよい。有利な液化剤の例は、リグノスルフェート、カゼイン、スルホン化ナフタリンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物及び変性されたポリカルボキシレートエーテルを基礎とする液化剤である。殊に、該液化剤は、混合に際して必要とされる水の量を減少させ、かつ、そのうえ好ましくは特に良好な早期強度形成をもたらすか若しくは該形成を促進するように選択される。
【0028】
さらに、本発明による無機結合剤系は、適用特性の最適化のために、レオロジー特性及び/又は物理特性を改善するか若しくは該特性に影響を及ぼす添加剤を含有してよい。これは、例えば、水再分散性ポリマー粉末を基礎として、好ましくは酢酸ビニル及びエチレンを基礎として(エチレン/酢酸ビニル−コポリマー)形成されていてよい。このような添加剤は、無機結合剤系を基準として、1〜15質量%、好ましくは1〜5質量%の量で用いられることができる。
【0029】
本発明による系は、少なくとも1種の消泡剤を含有してよく、例えば液状炭化水素と非晶質シリカの組合せを含有してよい。係る消泡剤は、系全体を基準として、殊に0.001〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%の量で用いられることができる。
【0030】
さらに、無機結合剤は、少なくとも1種の安定化剤を含有してよい。係る安定化剤は、例えば、ガム(例えばダイユータンガム)から選択されていてよいか、さもなければ、セルロース又はセルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース)を基礎として形成されていてよい。種々の安定化剤を互いに組み合わせてもよく、例えば、一方ではガムを、かつ他方ではセルロース又はセルロース誘導体を用いてよい。安定化剤としてガムが用いられる場合、これらは、無機結合剤系を基準として、0.001〜0.2質量%、好ましくは0.03〜0.08質量%の量で用いられることができる。安定化剤としてセルロース若しくはセルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース)が用いられる場合、これらは、系全体を基準として、0.001〜0.5質量%、好ましくは0.05〜0.15質量%の量で用いられることができる。
【0031】
そのうえまた、本発明による無機系は、水分保持能の調整のために少なくとも1種の添加物質を含有してよい。保水剤として、殊にメチルセルロースが、0.5〜2質量%の量で、好ましくは0.8〜1.5質量%の量で混合物中に存在していてよい。
【0032】
最後に、有利な実施形態の場合、膨潤性層状ケイ酸塩(例えばベントナイト、アタパルジャイト、カオリナイト)及びポリアクリレート又はこれらの組合せ物の群から有利には選択されており、かつ無機結合剤系を基準として、好ましくは0.5〜2質量%の量で用いられる増粘剤もなお含有されている。
【0033】
さらに、本発明による無機結合剤系に、殊に酸化鉄の群からの顔料も添加してよい。
【0034】
有利には、本発明による無機結合剤はドライブレンドモルタルである。トライブレンドモルタルは、特に移送プロセス及び混合プロセスに際して明らかに粉塵を形成する傾向にある。したがって、有利な実施形態において、本発明によるドライブレンドモルタルに制塵剤を添加してよく、その際、それは、有利には脂肪族炭化水素である。有利な制塵剤に関しては、DE202006016797も参照され、該文献は、これによって本出願に組み込まれる。
【0035】
有利には、本発明による無機結合剤系は、充填材30〜60質量%、ケイ酸カルシウムセメント10〜30質量%、アルミン酸カルシウムセメント1〜10質量%、少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール0.05〜5質量%及び場合により少なくとも1種の更なる急結剤及び/又は遅延剤0.005〜1質量%及び硫酸カルシウム0〜20質量%を含有する。
【0036】
有利な実施形態において、無機結合剤系は、フィラー、たたき材又はレベリング材として用いられる。
【0037】
さらに、本発明は、成分a)ケイ酸カルシウムセメント、b)アルミン酸カルシウムセメント及び場合によりc)硫酸カルシウムを包含するセメント系用の急結剤としての、少なくとも1種のポリアルキレングリコールの使用を規定する。
【0038】
ポリアルキレングリコールは、殊に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコール、特に有利にはポリエチレングリコールであってよい。ポリアルキレングリコールは、有利には2〜10個のヒドロキシル基を、特に有利には3個のヒドロキシル基を含有し、かつ32〜20000g/モル、特に有利には40〜2000g/モル、かつ殊に100〜800g/モルの重量平均分子量を有する。有利には、それは少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール、殊に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコール、特に有利にはポリエチレングリコールであり、かつ殊にトリメチロールプロパン又はグリセリンを基礎とする。有利には、三官能性ポリアルキレングリコールの平均モル質量は200〜800g/モルである。ポリアルキレングリコールとして、好ましくは、室温で液状の化合物が適している。
【0039】
さらに、本発明では、本発明による無機結合剤系を5〜30℃の温度で加工する方法が定められる。
【0040】
総合的に、本発明では、高い温度、殊に20〜30℃でも、低い温度、殊に15〜5℃でも、変わらないポットライフ及び強度形成によって際立つ、ケイ酸カルシウムセメント、アルミン酸カルシウムセメント及び場合により硫酸カルシウムを基礎とする無機結合剤系が提供される。
【0041】
後続の例は、本発明の利点を明確に示す。
【0042】

フィラー1:
0.1〜1.2mmの石英砂 71.8質量%
軽量充填材 2.0質量%
ポルトランドセメント CEM II 52.5 20質量%
アルミナセメント 2.0質量%
分散粉末 1.0質量%
急結剤 3.0質量%
遅延剤 0.2質量%
混水量:粉末1kg当たり220g
【0043】
フィラー2:
0.1〜1.2mmの石英砂 71.6質量%
軽量充填材 2.0質量%
ポルトランドセメント CEM II 52.5 17質量%
アルミナセメント 2.0質量%
硬セッコウ 3.0質量%
分散粉末 1.0質量%
急結剤 3.0質量%
遅延剤 0.2質量%
混水量:粉末1kg当たり220g
【0044】
フィラー3:
0.1〜1.2mmの石英砂 69.3質量%
ポルトランドセメント CEM II 52.5 20質量%
アルミナセメント 3.0質量%
硬セッコウ 3.0質量%
ミクロシリカ 2.5質量%
分散粉末 1.0質量%
急結剤 1.0質量%
遅延剤 0.2質量%
混水量:粉末1kg当たり180g
【0045】
混合:
それぞれのフィラーを、上記の混水量及び場合によりPluriol A4TE(BASF SEのPluriol A4TEは、グリセリンを基礎とする三官能性ポリエチレングリコールである。それは一分子当たり3個のヒドロキシル基を有する)と、ボーリングマシーン及びM17 ディスク型撹拌機を用いて塊がなくなるまで混合する。3分の進行時間後、モルタルを再びレードルを使って手で手短に混合し、そして試験を開始する。
【0046】
加工時間:
上記の水量とかき混ぜた後、フィラーの平滑性を直視的に5分毎に試験する。そのために、混合したモルタルを容器に入れる;層の高さ約4cm。加工時間が終了となるのは、フィラーが、しゃくしですじを入れた後に、もはや寄り集まって均一な表面とならず、かつ境目が認められ続ける時である。
【0047】
固化の開始/終了:
それぞれの混合したモルタルの固化時間を、DIN EN 196 part 3に従ったビカー法(Vicat-Verfahren)により調べる。
【0048】
被覆の準備性:
混合したモルタルを、非吸収性の基材に2cmの層厚で塗布する。24時間後、消しゴムを使って表面を中程度の力で圧して負荷をかけ、かつ360°の回転に供する。被覆の準備が整うのは、モルタルの剥離又はモルタルの摩耗がもはや生じない時である。
【0049】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ケイ酸カルシウムセメント、
b)アルミン酸カルシウムセメント、
c)少なくとも一種の三官能性ポリアルキレングリコール、
d)場合により硫酸カルシウム
を含有する無機結合剤系。
【請求項2】
a)ポルトランドセメント、
b)アルミナセメント、
c)少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール、
d)場合により硬セッコウ
を有することを特徴とする、請求項1記載の無機結合剤系。
【請求項3】
a)ポルトランドセメント10〜30質量%、
b)アルミナセメント1〜10質量、
c)トリメチロールプロパン又はグリセリン並びにポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールを基礎する少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール0.05〜5質量%、
d)硬セッコウ0〜20質量%
を含有することを特徴とする、請求項1又は2記載の無機結合剤系。
【請求項4】
さらに、
石英砂20〜60質量%、
更なるセメント急結剤0.1〜4質量%、
セメント遅延剤0.1〜2質量%
が含有されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項5】
前記セメント系がドライブレンドモルタルであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項6】
液化剤、再分散性ポリマー粉末、消泡剤、安定化剤、保水剤、増粘剤、制塵材、急結剤、遅延剤及び顔料の群からの少なくとも1種の更なる添加剤が含有されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項7】
更なる急結剤若しくは遅延剤として、水酸化物、無機酸及び/又は有機酸及び/又はそれらの塩並びにアルカリ金属炭酸塩又はこれらの化合物の混合物が用いられることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項8】
更なる急結剤若しくは遅延剤として、水酸化カルシウム、クエン酸及び/又はそれらの塩、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウム又はこれらの化合物の混合物が用いられることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項9】
前記セメント系が、充填材として、石英砂、石英粉、石灰石、重晶石、方解石、苦灰石、滑石、カオリン、雲母及び白亜の群からの少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項10】
前記セメント系が、充填材30〜60質量%、ケイ酸カルシウムセメント10〜30質量%、アルミン酸カルシウムセメント1〜10質量%、少なくとも1種の三官能性ポリアルキレングリコール0.05〜5質量%及び場合により少なくとも1種の更なる急結剤及び/又は遅延剤0.005〜1質量%及び硫酸カルシウム0〜20質量%を含有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項11】
前記セメント系が、潜在水硬性の固体成分1〜15質量%を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項12】
前記セメント系が、フィラー、たたき材又はレベリング材として用いられることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の無機結合剤系。
【請求項13】
以下の成分
a)ケイ酸カルシウムセメント及び
b)アルミン酸カルシウムセメント及び場合により
c)硫酸カルシウム
を包含するセメント系用の急結剤としての、少なくとも1種のポリアルキレングリコールの使用。
【請求項14】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール及び/又はポリテトラメチレングリコールであることを特徴とする、請求項13記載の使用。
【請求項15】
請求項1から12までのいずれか1項記載の前記無機結合剤系を5〜15℃の温度で加工する方法。

【公表番号】特表2013−521217(P2013−521217A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−556468(P2012−556468)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国際出願番号】PCT/EP2011/053349
【国際公開番号】WO2011/110509
【国際公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】