説明

セメント混和材及びそれを用いたセメント組成物

【課題】 ダレなどを防止し、材料分離が無く、軽い、スランプロスの小さい、良好な作業性のコンクリートが製造できる、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリート用のセメント混和材及びそれを用いたセメント組成物を提供する。
【解決手段】 ベントナイト、酸性白土、及び活性白土からなる群より選ばれた一種又は二種以上のベントナイト類とポリビニルアルコールとを含有してなる、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリート用のセメント混和材、さらに、糖類を配合する該セメント混和材、セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、ベントナイト類、及び該ポリビニルアルコールを主成分とするセメント組成物、セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部、ポリビニルアルコールが0.03〜1部、及び糖類が0.01〜0.2部である該セメント組成物を構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単位セメント量の少ない領域においてもブリーディングなどの材料分離がなく、スランプロスを改善し、かつ、スランプが23cm程度以下では流動せず、それ以上では流動して自己充填性を有する、二律背反的な良好な作業性を有するポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリート用のセメント混和材及びそれを用いたセメント組成物に関し、一般の土木建築構造物やコンクリート二次製品等に使用されるものである。
なお、本発明における部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
また、本発明のコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートを総称するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリカルボン酸塩系減水剤は、他のリグニンスルホン酸塩系減水剤等の一般的な減水剤や、ポリアルキルアリルスルホン酸塩系の高性能減水剤やメラミン樹脂スルホン酸塩系の高性能減水剤とは区別されている。そして、ポリカルボン酸塩系減水剤は、前記高性能減水剤と同様の高減水率を発揮するが、空気連行性を有し、モルタル又はコンクリートのフロー低下やスランプロスを低減した減水剤であることが異なる点である。
【0003】
ポリカルボン酸塩系減水剤は、高流動コンクリートに多用されており、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用したコンクリートは、粘ちょう性の強い自己流動性のあるコンクリートとなり、斜面での施工にダレなどが生ずるので施工性が悪いという課題を有していた。
【0004】
さらに、少ないセメント量で高い強度を得るためにポリカルボン酸塩系減水剤の使用量を多くして単位水量を絞ろうとすると、ペーストの粘度が異常に低下して材料分離をおこし、ブリーディングが発生すると共に、ペーストやモルタルと、骨材の分離したコンクリートになるなどの課題を有していた。
【0005】
また、これほど極端ではないが、高性能減水剤を使用する場合も、単位セメント量を少なくして高性能減水剤の添加量を多くすると、材料分離気味になると同時に粘ちょう性が強くなり、同様の課題を有していた。
【0006】
高性能減水剤を使用した場合の粘ちょう性を軽減して斜面の施工でダレなくするために、ベントナイトなどを配合することは既に提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用したコンクリートに、ベントナイトを添加してミキサで練り混ぜると、練り始めは流動性のあるコンクリートでも、練り混ぜを継続すると急激なスランプドロップが生じて全く流動性のない状態となり、スランプを一定とすると単位水量が異常に増加するという課題があった。
【0008】
一方、ポリビニルアルコールは、高性能減水剤のスランプロスの改善に効果を示すことは公知である(特許文献2参照)。
しかしながら、ポリカルボン酸塩系減水剤とベントナイトとを組合わせた場合に生ずる練り混ぜ中の急激なスランプドロップに対して、ポリビニルアルコールが改善し、その後のスランプロスを低減する効果を有するか否かは知られていない。
【0009】
一方、糖類も高性能減水剤のスランプロス低減に効果を示すことは既に知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、ポリカルボン酸塩系減水剤とベントナイトとを併用した場合の急激なスランプドロップに対して、糖類は単独では全く効果は示さないものである。
【0010】
【特許文献1】特開平07−277795号公報
【特許文献2】特開2002−104853号公報
【特許文献3】特開昭57−047754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、ポリカルボン酸塩系減水剤が有する前記課題を解決するに当たり鋭意研究した結果、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリートに、ベントナイト類とポリビニルアルコールの少量を、また、これらと糖類の少量を用いることにより、ダレや材料分離がないという性質を有しながら、単位水量の増加や、ポリカルボン酸塩系減水剤量の調節によりスランプ23cm前後以上とすることにより自己流動性をも発揮し、かつ、モルタルフローの低下やコンクリートのスランプロスの小さい、良好な作業性を発揮できるモルタル又はコンクリートが得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ベントナイト、酸性白土、及び活性白土からなる群より選ばれた一種又は二種以上のベントナイト類とポリビニルアルコールとを含有してなる、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリート用のセメント混和材であり、ポリビニルアルコールの平均重合度が2,000以下である該セメント混和材であり、ポリビニルアルコールの平均重合度が2,000以下で、鹸化度が95mol%以下の部分鹸化物である該セメント混和材であり、さらに、糖類を配合する該セメント混和材であり、セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、及び該セメント混和材とを主成分とするセメント組成物であり、セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、ベントナイト類、及び該ポリビニルアルコールを主成分とするセメント組成物であり、セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、ベントナイト類、該ポリビニルアルコール、及び糖類を主成分とするセメント組成物であり、セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部である該セメント組成物であり、セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部である該セメント組成物であり、セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部でポリビニルアルコールが0.03〜1部である該セメント組成物であり、セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部、ポリビニルアルコールが0.03〜1部、及び糖類が0.01〜0.2部である該セメント組成物である。
【発明の効果】
【0013】
ベントナイト類とPVAとを、また、ベントナイト類とPVAと糖類とを併用すると、ポリカル系減水剤を使用したコンクリートの材料分離や、粘性が強いことからくるダレなどを防止し、(1)材料分離が無く、軽い(コンクリートの切り返しに力を必要としない)、スランプロスの小さい、良好な作業性のコンクリートが製造できる、(2)スランプが23cm程度以下ではスランプは自立して、ダレなく、それ以上で自己流動性のコンクリートが製造できる、(3)高強度混和材を併用すると、より高い強度が少ない単位セメント量で得られるなどの効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0015】
本発明で使用するポリカルボン酸塩系減水剤(以下、ポリカル系減水剤という)は、通常は、不飽和カルボン酸モノマーを一成分として含む重合体や共重合体又はその塩である。
例えば、不飽和カルボン酸モノマーとしては、ポリアルキレングリコールモノアクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノメタクリル酸エステル、無水マレイン酸、アクリル酸やメタクリル酸、及びアクリル酸やメタクリル酸の塩等が挙げられる。
また、ポリカル系減水剤は、さらに、これらの不飽和カルボン酸モノマーと重合や共重合が可能なモノマーから導かれるポリカルボン酸塩系減水剤であれば特に限定されるものではないが、一例としてはこれらの不飽和カルボン酸モノマーとスチレンとの共重合体等を挙げることができ、(株)エヌエムビー社製商品名「レオビルドSP8」シリーズ、フローリック(株)社製商品名「フローリックSF500」シリーズ、竹本油脂(株)社製商品名「チュポールHP8,11」、グレースケミカルズ(株)社製商品名「ダーレックススーパー100,200,300,1000」シリーズ、並びに、花王(株)社製商品名「マイティ21WH」や「マイティ3000」シリーズ、その他が市販されており、通常は液状である。
ポリカル系減水剤の使用量は、セメント100部に対して、0.3〜5部が好ましく、0.5〜4部がより好ましい。0.3部未満ではポリビニルアルコールを適量配合しても、ベントナイトと併用した場合の急激なスランプロスやその後のスランプロスを改善することはできない場合があり、5部を超えると減水率が頭打ちとなる場合や硬化不良になる場合がある。
【0016】
本発明で使用する、ベントナイト、酸性白土、及び活性白土からなる群より選ばれた一種又は二種以上のベントナイト類は、ポリカル系減水剤を使用したコンクリートの材料分離を抑えて、プラスチック性を与え、ダレがなく、軽い、取り扱い易いコンクリートが得られるものである。
また、単位水量やポリカル系減水剤の調節によりスランプを23cm以上とすると自己流動性を発揮するものである。
【0017】
ベントナイトの主要鉱物はモンモリロナイトであり、大部分が火山灰のガラス成分が分解して生成した粘土鉱物である。そして層状の結晶構造を持ちその層間に陽イオンと水とを取り込んで膨潤する性質を有する。
また、ベントナイトは合成も可能であり、本発明においては、天然産や合成品、さらには膨潤度の大小に関係なくベントナイトであれば、いずれも使用可能である。
【0018】
酸性白土は、火山灰のガラス成分がさらに分解が進んで、膨潤しなくなった粘土鉱物で酸性を呈する。そしてその比表面積が大きいのが特徴である。
【0019】
活性白土は、酸性白土を鉱酸処理してアルミナ成分を溶解させ、より比表面積を大きくして活性を高めたものである。
【0020】
本発明において、これらベントナイト類の一種又は二種以上が使用され、ベントナイト類の使用量は、単独で又は二種以上の合量で、セメント100部に対して、0.1〜10部が好ましい。単独使用の場合の好ましい量は、ベントナイトでは0.1〜3部であり、酸性白土では2〜10部であり、活性白土では1〜6部である。二種以上を併用する場合は、各々を単独使用する場合の使用量範囲で調節することが好ましい。
なお、ベントナイト類は少量で効果を発揮するが、0.1部未満では保水性の強いベントナイト類を用いてもポリカル系減水剤の材料分離を軽減する効果は小さく、10部を超えると保水性を強化する効果がベントナイトよりは小さい酸性白土を用いても、同一スランプとすると単位水量が急に増加し、強度的に好ましくない。
【0021】
本発明で使用するポリビニルアルコール(以下、PVAという)は、ベントナイト類とポリカル系減水剤とを併用した場合の練り混ぜ中の急激なコンクリートのスランプドロップなどを防止すると共にその後のスランプロスを防止する効果を有するものである。
本発明では、PVAの平均重合度は2,000以下が好ましく、小さいほどより好ましい。PVAの平均重合度が2,000を超えるとスランプロス防止効果が小さくなる場合がある。
さらに、本発明では、PVAの鹸化度が95mol%以下の部分鹸化物を使用するのがより好ましい。PVAの鹸化度が95mol%を超えると、平均重合度が小さくないと、練り混ぜ中の急激なスランプドロップの改善は難しい場合がある。PVAの鹸化度が95mol%以下の場合でも、平均重合度が2,000を超えると、急激なスランプドロップを改善する効果又はその後のスランプロスを低減する効果は小さくなる場合がある。
なお、市販品の部分鹸化物の平均重合度は、低い方では400〜500程度のものまであり、これらの使用はより好ましい。
PVAの配合量は、セメント100部に対して、0.03〜1部が好ましく、0.05〜0.7部がより好ましい。0.03部未満ではベントナイト類の配合量が少なくてもスランプロスを改善する効果は小さく、1部を超えて配合すると、強度の低下が大きくなる場合がある。
【0022】
本発明で使用する糖類とは、二糖類又は三糖類等のオリゴ糖を示す。具体的には、蔗糖やラフィノースなどが挙げられる。これら糖類単独ではポリカル系減水剤とベントナイト類とを併用した場合の急激なスランプドロップやその後のスランプロスを低減する効果はないが、ポリカル系減水剤、ベントナイト類、及びPVAを併用したコンクリートを練り混ぜた後のスランプロスの低減効果を助長する。
糖類の使用量は、セメント100部に対して、0.01〜0.2部が好ましく、0.02〜0.15部がより好ましい。0.01部未満ではスランプロスを助長する効果は小さく、0.2部を超えて配合すると、強度の低下が大きくなる場合がある。
【0023】
本発明においては、石膏類及び/又は活性シリカやメタカオリンなどの、高強度を発現させる成分又はこれらを含有した高強度混和材を併用することは、高い強度を得るためや、材料分離抵抗性や自己流動性を高めるために好ましく、これらを併用しても、本発明のスランプロスの低減効果は変わらないものである。
また、材料分離抵抗性や自己流動性を助長する成分としてフライアッシュを適宜併用することは好ましい。
【0024】
ここで、石膏類とは、二水石膏、半水石膏、II型無水石膏、及びIII型無水石膏が使用可能であるが、特に、二水石膏、半水石膏、及びII型無水石膏は強度増進効果が大きいので好ましい。
II型無水石膏は、天然産のもの、フッ酸発生時に副生するフッ酸石膏、及び他の形態の石膏を350℃以上で熱処理したものが挙げられ、その粉末度はセメントと同等以上で有れば特に限定されるものではない。
石膏類の配合量は、セメント100部に対して、無水物換算で10部以下が好ましく、1〜8部がより好ましく、2〜6部が最も好ましい。10部を超えて配合しても強度増進効果は頭打ちとなる。
【0025】
活性シリカとは、金属シリコンやシリコン合金を電気炉で製造するときに発生するシリカフュームや、稲、藁、竹、及び葦等のケイ化木の焼成灰、並びに、人工のアエロジルなどで、いずれも非晶質SiO2を主成分とする超微粉である。
活性シリカの配合量は、セメント100部に対して、25部以下が好ましく、20部以下がより好ましく、2〜15部が最も好ましい。25部を超えて配合しても強度増進効果は頭打ちとなる。
【0026】
メタカオリンとは、カオリナイト鉱物を600℃前後で熱処理して、OHの形で結晶格子内に入っている水を脱水させたものであって、X線的には非晶質のアルミノケイ酸であり、ポゾラン活性を有する。
メタカオリンの配合量は、セメント100部に対して、15部以下が好ましく、12部以下がより好ましく、2〜10部が最も好ましい。15部を超えて配合しても強度増進効果は頭打ちとなる。
【0027】
本発明で使用するセメントとしては、普通、早強、超早強、中庸熱、白色、低熱(ビーライト)、及び耐硫酸塩性等の各種ポルトランドセメント、混合セメント、並びに、エコセメントが挙げられる。
【0028】
本発明における各材料の混合方法は特に限定されるものではなく、各成分を別々に、また、他の材料と一緒にミキサに投入して練り混ぜることが可能である。
また、ポリカル系減水剤を使用する場合は、ポリカル系減水剤以外の成分をあらかじめセメント混和材やセメント組成物中に配合しておいて、練り混ぜるときにポリカル系減水剤と、セメント混和材やセメント組成物を別々に、また、他の材料と一緒にミキサに投入して練り混ぜることが可能である。
【0029】
なお、本発明のセメント混和材を用いたコンクリート構造物やコンクリート製品の養生方法は特に限定されるものではなく、通常の養生、蒸気養生、及びオートクレーブ養生が可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実験例にて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
実験例1
単位量が、セメント350kg/m3、細骨材920kg/m3、粗骨材930kg/m3、水145kg/m3、及びポリカル系減水剤7.0kg/m3(セメント100部に対して、2.0部)、空気量4.5±1.0%のコンクリート配合を用いて、表1に示すベントナイト類とPVAとを使用して、10リットル分のコンクリートをオムニミキサで5分間練り混ぜ、20℃で、静置状態でのスランプの経時変化と、標準養生した材齢28日の圧縮強度とを測定した。結果を表1に併記する。
【0032】
<使用材料>
セメント :電気化学工業(株)社製普通ポルトランドセメント
細骨材 :新潟県姫川産川砂、5mm下
粗骨材 :新潟県姫川産玉石、25〜5mm
ポリカル系減水剤A:グレースケミカルズ(株)商品名「ダーレックススーパー100PHX」、汎用品、液状
ベントナイト類a:(株)ホージュン社製、膨潤度24のもの
ベントナイト類b:酸性白土、日本活性白土(株)社製
ベントナイト類c:活性白土、日本活性白土(株)社製
PVAロ :重合度500、鹸化度86.5〜89.5mol%の部分鹸化物
【0033】
<測定方法>
スランプの経時変化:JIS A 1101によりスランプを測定。スランプの経時変化はコンクリートを静置した状態とし、測定時間毎に練り返して測定
圧縮強度 :JIS A 1132によりφ10×20cmの型枠を成形し、JIS A 1108により標準養生材齢28日の圧縮強度を測定
【0034】
【表1】

【0035】
表1において、単位セメント量が少ない配合の場合、ポリカル系減水剤を多く添加して単位水量を絞ると、モルタル部分が流動してスランプが崩れ、かつ、ブリーディングが発生するなどの材料分離が生ずる(実験No.1- 1)。
また、ベントナイト類のみを添加すると、練り混ぜ初期は流動性のある状態が、練り混ぜを継続すると急速にスランプロスが生じ、その後のスランプロスも促進される。(実験No.1- 2〜No.1- 4)。
PVAの添加量を一定にしてベントナイト類の添加量を変えていくと、0.1部では少しモルタルが分離気味ではあるがブリーディングは止まり、スランプも30分程度で有れば保持する傾向を示す。ベントナイト類の添加量を順次多くしていくと、材料分離はなくなり、軽い、プラスチックなコンクリートになると同時にスランプの保持時間が長くなる。そしてベントナイト類の添加量が多くなりすぎるとベントナイト類の保水性が大きいためにスランプは逆に小さくなり、かつ、スランプロスも促進されるようになる。したがってベントナイト類の添加量は、0.1〜10部である。ベントナイト類の中でベントナイトaのより好ましい添加量は0.2〜3.0部であり、3.0部を超えると、よりスランプが小さくなり、かつ、同一スランプとする場合は単位水量が増加し、強度低下が示唆される。ベントナイト類が酸性白土bの場合は同様の理由で、より好ましい配合量は2.0〜8.0部であり、活性白土の場合は1.0〜6.0部であることも示される。
【0036】
実験例2
実験例1のコンクリート配合を用い、セメント100部に対して、表2に示すベントナイト類とPVAとを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0037】
<使用材料>
PVAイ :重合度400、鹸化度87.5〜90.5mol%の部分鹸化物
PVAハ :重合度800、鹸化度85〜88mol%の部分鹸化物
PVAニ :重合度1,000、鹸化度88〜91mol%の部分鹸化物
PVAホ :重合度1,700、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAヘ :重合度2,000、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAト :重合度2,400、鹸化度87〜89mol%の部分鹸化物
PVAチ :重合度500、鹸化度98〜99mol%の完全鹸化物
【0038】
【表2】

【0039】
表2より、セメント100部に対して、ベントナイト類の種類と添加量を一定として、PVAの種類と添加量を任意に変えた場合において、種類を変えた場合ではPVAの平均重合度は小さいほどスランプの経時変化は小さく、大きくしていくと徐々にスランプロス防止効果は低下してくる。特に、平均重合度1,700を超えて、2,000、又は2,000を超えるとスランプロス防止効果は大きく失われてくる。したがって、PVAの平均重合度は2,000以下であり、1,700以下でより小さい方がより好ましい。また、完全鹸化物の場合は平均重合度500で、部分鹸化物1,700〜2,000相当のスランプ保持性を示す(実験No.2- 1〜No.2- 8)。
また、添加量を変えた場合では、0.03部からスランプロス防止効果が示され、添加量が多くなるほど効果も大きくなることが示される。しかしながら、強度は少しずつ低下する傾向が示され、特に、1.0部で大きくなり、それ以上の添加はより強度の低下が懸念される。したがって、PVAの添加量は0.3〜1部が好ましく、0.05〜0.7部がより好ましい(実験No.2- 9〜No.2-16)。
【0040】
実験例3
実験例1のコンクリート配合を用い、セメント100部に対して、ベントナイト類a1.5部と、表3に示すPVAロと糖類とを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0041】
<使用材料>
糖類 :蔗糖、二糖類
【0042】
【表3】

【0043】
表3より、セメント100部に対して、ベントナイト類とPVAの種類と添加量を一定として、糖類の添加量を変えていくと、糖類は0.01部からスランプロス防止効果が認められ、添加量が多くなるほどスランプロス防止効果も大きくなることが示される。しかしながら、多くなり過ぎると強度が低下するようになり、0.2部で顕著となり、それ以上の添加はより強度が低下することが推察される。したがって、糖類の添加量は0.01〜0.2部が好ましく、0.02〜0.15部がより好ましくいことが示される。
なお、ベントナイト類にPVAを併用しないで糖類のみを添加してもスランプロス防止効果は発揮されない(実験No.3- 1)。
【0044】
実験例4
実験例1のコンクリート配合をベース配合とし、セメント100部に対して、ベントナイト類a1.5部とPVAロ0.2部とを使用し、表4に示す単位水量と、セメント100部に対して、表4に示すポリカル系減水剤とを使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0045】
<使用材料>
ポリカル系減水剤B:グレースケミカルズ(株)商品名「ダーレックススーパー1000N」、超高強度用、液状
【0046】
【表4】

【0047】
表4より、セメント100部に対して、ベントナイト類とPVAの種類と添加量を一定としてポリカル系減水剤の種類とその添加量を変えると、ポリカル系減水剤が0.3部でスランプロス防止効果が示され、添加量が多くなるほどスランプロス防止効果は大きくなることが示される。また、減水率は4.0〜5.0部で頭打ちとなる。したがって、ポリカル系減水剤の添加量は0.3〜5.0部が好ましく、0.5〜4.0部がより好ましい(実験No.4- 4〜No.4-11)。
また、糖類を併用すると、少なくても条件によっては120分はスランプは変わらないことが示される(実験No.4- 1〜No.4- 3)。そして、スランプの大きさによっては自己流動性を発揮することも示される(実験No.4- 1〜No.4- 3、No.4- 9〜No.4-11)。
【0048】
実験例5
実験例1のコンクリート配合をベース配合とし、表5に示す単位水量と、セメント100部に対して、PVAロ0.2部、ポリカル系減水剤2.5部、及び表5に示すベントナイト類を使用したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0049】
【表5】

【0050】
表5より、ベントナイト類の中で二成分又は三成分の組み合わせてもスランプロス防止効果を阻害することはないことが示される。
【0051】
実験例6
単位量が、セメント350kg/m3、細骨材883kg/m3、粗骨材980kg/m3、水140kg/m3、及びポリカル系減水剤A7.0kg/m3(セメント100部に対して、2.0部)で、空気量4.5±1.0%のコンクリート配合を用いて、セメント100部に対して、ベントナイト類aを1.5部、PVAロを0.2部、及び糖類を0.03部、及び表6に示す高強度混和材を配合した場合(実施例)と、ベントナイト類、PVA、及び糖類とを配合しない場合(比較例)について、スランプの経時変化と、標準養生の材齢1日、7日、及び28日の圧縮強度とを測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0052】
<使用材料>
高強度混和材α:石膏類、天然無水石膏、ブレーン値5,000cm2/g
高強度混和材β:活性シリカ、シリカフューム、BET比表面積23m2/g
【0053】
【表6】

【0054】
表6より、高強度混和材を併用しても、本発明のセメント混和材のスランプロス防止効果を阻害しない。
また、本発明のセメント混和材を使用しないで、少ない単位セメント量でポリカル系減水剤量を多くして単位水量を絞ろうとすると、高強度混和材が添加されていても分離気味のコンクリートとなるが、本発明のセメント混和材が併用されていれば分離のない、軽い、扱い易いコンクリートとなり、モルタルと粗骨材の接着力が高まるためか強度も向上することが示される(実験No.6- 1とNo.6- 5、実験No.6- 9とNo.6-11)。
高強度混和材が石膏の場合は、強度の面から添加量は10以下が好ましく、1.0〜8.0部がより好ましく、2.0〜6.0部が最も好ましいことが示される。また、高強度混和材がシリカフュームの場合も強度の面から添加量は25部以下が好ましく、20部以下がより好ましく、2.0〜15部が最も好ましいことが示される。
さらに両者の併用は少ない添加量でより高い強度が示され、相乗的効果が認められる(実験No.6-16)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイト、酸性白土、及び活性白土からなる群より選ばれた一種又は二種以上のベントナイト類とポリビニルアルコールとを含有してなる、ポリカルボン酸塩系減水剤を使用するコンクリート用のセメント混和材。
【請求項2】
ポリビニルアルコールの平均重合度が2,000以下である請求項1に記載のセメント混和材。
【請求項3】
ポリビニルアルコールの平均重合度が2,000以下で、鹸化度が95mol%以下の部分鹸化物である請求項1に記載のセメント混和材。
【請求項4】
さらに、糖類を配合する請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載のセメント混和材。
【請求項5】
セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、及び請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載のセメント混和材を主成分とするセメント組成物。
【請求項6】
セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、ベントナイト類、及びポリビニルアルコールを主成分とするセメント組成物。
【請求項7】
セメント、ポリカルボン酸塩系減水剤、ベントナイト類、ポリビニルアルコール、及び糖類を主成分とするセメント組成物。
【請求項8】
セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部である、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項9】
セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部である、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項10】
セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部であり、ポリビニルアルコールが0.03〜1部である、請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のセメント組成物。
【請求項11】
セメント100部に対して、ポリカルボン酸塩系減水剤が0.3〜5部であり、ベントナイト類が0.1〜10部、ポリビニルアルコールが0.03〜1部、及び糖類が0.01〜0.2部である請求項5〜請求項7のいずれか一項に記載のセメント組成物。

【公開番号】特開2006−219321(P2006−219321A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−32575(P2005−32575)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】