セメント系注入材の注入方法
【課題】 広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができるセメント系注入材の注入方法を提供する。
【解決手段】 強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する。続いて、注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入する。さらに、注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系注入材を後行して注入する。こうして、注入口の遠方に極超微粒子セメント系注入材を注入し、注入口の近傍に超微粒子セメント系注入材を注入する。
【解決手段】 強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する。続いて、注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入する。さらに、注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系注入材を後行して注入する。こうして、注入口の遠方に極超微粒子セメント系注入材を注入し、注入口の近傍に超微粒子セメント系注入材を注入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系注入材の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎地盤の強化、耐震補強、液状化の防止、ダムやトンネルの補強などの工事では、セメント系注入材を地盤に注入し、地盤の強化を図っている。セメント系注入材の注入によって地盤の強化を図る際には、地盤内の広範囲を効率的に強化させることが求められ、そのためには、地盤を構成する粒子の間隙にセメント粒子が浸透しやすい条件でグラウチングを行うことが有利となる。
【0003】
セメント粒子が浸透しやすい条件でグラウチングを行うため、従来、セメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替える注入が行われている。富配合のセメントミルクを注入し続けると、注入初期の段階からセメント粒子によって地盤に目詰まりが発生しやすくなる。注入初期にセメント粒子による地盤の目詰まりが生じると、注入圧力が上昇して早期にセメントミルクの注入が不可能となりセメント粒子の浸透を妨げることになる。そこで、従来の注入方法として、注入初期の段階では貧配合のセメントミルクを注入し、その後、セメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替えることにより、注入初期におけるセメント粒子による地盤の目詰まりを防止し、セメント粒子を浸透しやすくする注入方法がある。
【0004】
あるいは、セメントミルクに用いるセメントとして、粒子径の小さいものを用いることによっても、地盤の粒子間にセメント粒子が浸透しやすくなる。粒子系が小さいセメント系注入材である超微粒子セメント系注入材として、従来、最大粒径が18μmであり、2.2μm以下の超微粒子セメントが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、粒径1〜5μmの粒子量が60〜80%体積%である極超微粒子セメントも開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3423913号公報
【特許文献2】特開2007−238428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のセメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替える注入方法では、注入口からの距離が遠くなるほど地盤内に入り込むセメントの濃度が低下し、地盤内における強度が不均一になりやすいという問題があった。地盤内である程度均一となる強度を確保するためには、注入地点の配置を高密度としたり、セメント注入量を調整したりすることが考えられる。ところが、これらの方法では、作業工数や無駄なセメント使用の増大が生じるという問題があった。
【0007】
一方、超微粒子セメントや極超微粒子セメントを用いた場合には、作業工数の増大などに改善を図ることができる。ところが、これらの問題を大きく改善するには至らず、セメント使用量については増加する傾向にあることがある。特に、極超微粒子セメントについては、製造の際に手間が掛かるなどのため、その使用量の抑制について高く求められるところであった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができるセメント系注入材の注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るセメント系注入材の注入方法は、強化対象地盤に対してセメント系注入材を注入して、強化対象地盤を強化するセメント系注入材の注入方法であって、強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する注入口挿入工程と、注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入工程と、注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系材料を後行して注入する後行注入工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るセメント系注入材の注入方法においては、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する。このため、注入口の遠方領域に対して、平均粒径が小さい極超微粒子セメント系注入材が浸透するので、広い範囲で高い浸透性を発揮しながらセメント粒子を注入することができる。極超微粒子セメント系注入材の先行注入が済んだら、続いて平均粒径3〜5μmである超微粒子セメントを後行注入する。極超微粒子セメント系注入材の注入後に超微粒子セメント系注入材を注入することにより、極超微粒子セメント系注入材が超微粒子セメント系注入材によって注入口の遠方領域まで押し出される。このため、注入口の遠方領域におけるセメント粒子の充填性を高めることができる。また、注入口の遠方領域では、粒径の小さい極超微粒子セメント系注入材が浸透しているので、目詰まりが生じる可能性を低いものとすることができる
【0011】
一方、注入口の近傍領域では、セメント粒子の浸透範囲が狭いので、極超微粒子セメント系注入材を用いることなく超微粒子セメント系注入材を用いた場合でも、目詰まりが生じる可能性が低く、高い充填性を発揮することができる。したがって、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【0012】
ここで、極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされている態様とすることができる。
【0013】
このように、極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされていることにより、注入口から遠い領域におけるセメント粒子の注入をより好適に行うことができる。
【0014】
また、先行注入工程と後行注入工程との間に、極超微粒子よりも貧配合の注入材を注入する中間注入工程を、さらに含む態様とすることができる。
【0015】
このように、先行注入工程と後行注入工程との間に、極超微粒子セメント系注入材よりも貧配合の貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入することにより、注入口から遠い領域におけるセメント系注入材の浸透性をさらに高くすることができる、その結果、広い範囲でセメント粒子をより高濃度で注入することができる。
【0016】
さらに、先行注入工程から後行注入工程の間の工程でセメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によってセメント系注入材を注入する態様とすることができる。
【0017】
このように、セメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によってセメント系注入材を注入することにより、注入口から遠い領域におけるセメント粒子の充填性をより高めることができる。
【0018】
また、極超微粒子セメントは、3CaO・Al2O3の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメンを混合してなる態様とすることができる。
【0019】
このように、上記の配合および成分を用いることにより、極超微粒子セメント系注入材を好適に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセメント系注入材の注入方法によれば、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】セメント系注入材が注入された地盤を模式的に示す図である。
【図2】セメント系注入材を注入する工程を説明する工程図である。
【図3】図2に続く工程を説明する工程図である。
【図4】一次元注入試験に用いた試験装置の構成図である。
【図5】試験に用いたグラウトおよび試験結果を示す表である。
【図6】供試体における一軸圧縮強さ分布を示すグラフである。
【図7】(a)は、超微粒子セメント系注入材のみが注入された地盤を模式的に示す図、(b)は、極超微粒子セメント系注入材が注入された後、超微粒子セメント系注入材が注入された地盤を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0023】
本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法は、二重管ストレーナ工法やダブルパッカ工法などの注入工法におけるいわゆる二次注入の際に行われる。一般に、二重管ストレーナ工法では、瞬結となる一次注入と緩結となる二次注入が行われる。また、ダブルパッカ工法では、セメントベントナイト材(CB材)の注入による一次注入と、緩結による二次注入とがある。本実施形態は、これらの工法における二次注入の際に行われることで、より効果的に、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【0024】
本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法においては、極超微粒子セメントおよび超微粒子セメントを水に混合撹拌してスラリー状にしたセメント系注入材を強化の対象となる強化対象地盤に対して注入する。ここで用いられる超微粒子セメント系注入材としては、たとえばポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカーと高炉スラグと石膏とを含む超微粒子セメントを必須成分として構成される。超微粒子セメント系注入材は、その最大粒径が10〜16μm程度とされており、平均粒径が4.0μmとされている。超微粒子セメント系注入材としては、平均粒径が3〜5μmのものが用いられる。
【0025】
また、極超微粒子セメント系注入材は、3CaO・Al2O3・の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメントおよびポリカルボン酸系分散剤を必須成分として混合して構成される。極超微粒子セメント系注入材は、平均粒径が1.5μmとされている。極超微粒子セメント系注入材としては、平均粒径が1〜3μmのものが用いられる。
【0026】
この極超微粒子注入材組成物の好ましい形態としては、ポリカルボン酸系分散剤が不飽和ポリアルキレングリコール系単量体に由来する繰り返し単位と不飽和カルボン酸系単量体に由来する繰り返し単位とを有するポリカルボン酸系共重合体を含む形態である。さらに、極超微粒子セメント系注入材を製造する方法は、周速314m/min以上で混合撹拌する高速撹拌工程を有することが好適となる。
【0027】
さらに、極超微粒子セメント系注入材は、水セメント比W/Cを400〜1600%に設定することが好適である。水セメント比W/Cが400%未満では、セメント量が多いため、目詰まりが発生し、注入の継続が困難となるからである。また、水セメント比W/Cが1600%を超えると、セメント量が少なく、所定の強度や浸透長が確保しにくくなるからである。
【0028】
次に、本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法によってセメント系注入材を地盤に注入した際の地盤内におけるセメント系注入材の流動について説明する。地盤にセメント系注入材を注入する際には、セメント系注入材におけるセメントが、地盤に対して広い範囲かつ均一に浸透することが求められる。本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法では、図1に示すように、注入口Pの近傍領域には、主に超微粒子セメント系注入材が浸透した超微粒子セメント系注入材注入領域SOが形成され、注入口Pの遠方領域には、主に極超微粒子セメント系注入材が浸透した極超微粒子セメント系注入材注入領域SVが形成される。
【0029】
超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材と比較して平均粒径が大きいため、極超微粒子セメント系注入材と比較して地盤に対する浸透性は劣り、改良範囲が狭くなる。しかし、脱水ろ過現象によってセメント量が濃縮されることから、改良範囲内の地盤における間隔に占めるセメントの体積は大きくなる。一方、極超微粒子セメント系注入材は、超微粒子セメント系注入材と比較して平均粒径が小さいことから、地盤に対する浸透性には優れ、改良範囲は広くなる。しかし、セメント量の濃縮が少ないので、地盤における間隙を埋めて十分な改良強度を得るためには、極超微粒子セメント系注入材を多量に必要とすることとなる。さらに、超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材と比較して、地盤に注入した際に目詰まりを発生させやすくなる。
【0030】
これらの特性を踏まえ、本実施形態では、注入口から極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、続いて超微粒子セメント系注入材を後行注入する。地盤に注入された極超微粒子セメント系注入材は、地盤Gにおける注入口Pの周囲に浸透していく。極超微粒子セメント系注入材は、その平均粒径が1.5μmと非常に小さいので、極超微粒子セメント系注入材は、注入口Pの近傍領域において目詰まりが生じにくくなっている。このため、注入口Pの近傍領域から遠方領域に至るまで、目詰まりを生じることなく幅広く浸透する。
【0031】
極超微粒子セメント系注入材の注入が済んだら、超微粒子セメント系注入材を後行注入する。地盤Gにおける注入口Pの周囲には、すでに注入された極超微粒子セメント系注入材が浸透している。ところが、極超微粒子セメント系注入材は、その平均粒径が非常に小さいことから、超微粒子セメント系注入材を注入した際においても、地盤Gにおける目詰まりの発生が防止される。
【0032】
一方、超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材よりも平均粒径が大きくされている。極超微粒子セメント系注入材の注入後に超微粒子セメント系注入材を注入すると、超微粒子セメント系注入材に押し出され、または超微粒子セメント系注入材とともに極超微粒子セメント系注入材が注入口Pの遠方まで浸透していく。そして、注入口Pの近傍位置には、超微粒子セメント系注入材が主に浸透した超微粒子セメント系注入材注入領域SOが形成され、注入口Pの遠方領域には、極超微粒子セメント系注入材が主に浸透した極超微粒子セメント系注入材注入領域SVが形成される。
【0033】
したがって、たとえば注入管を複数並設し、または注入管を移動させながら注入を行うにあたり、超微粒子セメント系注入材のみによる注入を行った場合、図7(a)に示すように、超微粒子セメント系注入材が注入された超微粒子セメント系注入材注入領域SOが隣接した状態で改良がなされる。一方、極超微粒子セメント系注入材を注入した後に超微粒子セメント系注入材を注入する注入を行った場合には、図7(b)に示すように、極超微粒子セメント系注入材SVが注入された極超微粒子セメント系注入材領域が隣接した状態で改良がなされる。ここでは、極超微粒子セメント系注入材領域の内側に極超微粒子セメント系注入材領域SOが形成された状態となる。
【0034】
このように、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、続いて超微粒子セメント系注入材を後行注入することにより、注入口Pの近傍領域における目詰まりを防止することができる。さらには、セメント系注入材を注入口Pの遠方領域にまで広い範囲で注入して浸透させることができることから、補強された地盤Gにおける強度を向上させることができるとともに、強度の分布が滑らかになり、地盤Gの強度の均一化を図ることができる。加えて、注入口Pの近傍領域は比較的平均粒径が大きい超微粒子セメント系注入材が注入されている。このため、セメント系注入材、特に極超微粒子セメント系注入材の使用量を抑制することができる。
【0035】
次に、実際に地盤にセメント系注入材を注入する手順を説明する。図2は、地盤にセメント系注入材を注入する際の工程を示す工程図である。地盤にセメント系注入材を注入する際には、まず、図2(a)に示すように、強化対象地盤である地盤Gにおける所定箇所に対してボーリング削孔を行うとともに、削孔した掘削孔に対してケーシング1を挿入する。
【0036】
地盤Gにケーシング1を挿入したら、図2(b)に示すように、ケーシング1の内側に注入ホース2を挿入し、注入ホース2からシールグラウト3を吐出させることにより、ケーシング1の内側にシールグラウト3を注入する。シールグラウト3は、流動性を有しており、所定時間の経過によって固化するものである。
【0037】
シールグラウト3の注入が済んだら、シールグラウト3が固化する前に注入ホース2をケーシング1から引き出す。その後、図2(c)に示すように、ケーシング1の内側にスリーブパイプ4を挿入する。スリーブパイプ4の挿入はシールグラウト3が固化する前に行われる。
【0038】
また、スリーブパイプ4の下端部には、スリーブパイプ4の下方開口部を閉塞するパイプキャップ5が設けられている。このため、ケーシング1にスリーブパイプ4を挿入する際におけるスリーブパイプ4内へのシールグラウト3の浸入が阻止されている。また、スリーブパイプ4の側面には、長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数の注入口4A,4B,4C,4Dが形成されている。これらの注入口からセメント系注入材が注入される。スリーブパイプ4の挿入が注入口挿入工程となる。
【0039】
スリーブパイプ4の挿入が完了したら、シールグラウト3が固化する前に、地盤Gに形成した削孔からケーシング1を引き抜く。その後、しばらく時間の経過を待ち、削孔内におけるシールグラウト3を固化させる。シールグラウト3が固化すると、スリーブパイプ4の内側が空洞となった状態でスリーブパイプ4と地盤Gの削孔との間に固化シールグラウト6が生成される。
【0040】
その後、図3(a)に示すように、空洞となっているスリーブパイプ4の内側にダブルパッカ7を挿入し、最上方に位置する注入口4Aの側方に配置する。ダブルパッカ7には、インジェクションパイプが内設されており、インジェクションパイプを作動させることによってセメント系注入材をスリーブパイプ4内に排出する。ここでは、セメント系注入材として、先行して極超微粒子セメント系注入材を排出する。
【0041】
その後、極超微粒子セメント系注入材の排出を継続することにより、図3(b)に示すように、極超微粒子セメント系注入材がスリーブパイプ4における注入口4Aから排出され、側方にクラッキングCが形成され、クラッキングC内に極超微粒子セメント系注入材が浸透する。こうして、地盤Gに対する極超微粒子セメント系注入材の注入が先行注入工程として行われる。
【0042】
地盤Gにおける所定範囲まで極超微粒子セメント系注入材が浸透したら、図3(c)に示すように、下方の注入口4Bの側方にダブルパッカ7を移動させ、同様の手順によって地盤G内に極超微粒子セメント系注入材を注入する。以後、同様の注入口4C,4Dの側方にダブルパッカ7を配置して極超微粒子セメント系注入材を地盤Gに注入する。
【0043】
図3に示す態様では、最上方に配置された注入口4Aから注入を開始し、徐々に下方に位置する注入口4B〜4Dに下がって注入を行ういわゆるステップダウンの施工手順で注入を行っているが、いわゆるステップアップの施工手順で注入を行うこともできる。ステップダウンの施工手順で注入を行う際には、最初に、最下方に配置された注入口4Dから注入を開始し、徐々に上方に位置する注入口4C〜4Aに上がって注入を行う。
【0044】
こうして、極超微粒子セメント系注入材の注入が済んだら、ダブルパッカ7からスリーブパイプ4に排出するセメント系注入材を極超微粒子セメント系注入材から超微粒子セメント系注入材に変更して、後行注入工程を行う。超微粒子セメント系注入材の後行注入は、極超微粒子セメント系注入材の先行注入と同様の手順によって行う。こうして、図1に示すように、注入口の遠方領域に対して主に極超微粒子セメント系注入材を注入することができるとともに、注入口の近傍領域に対して主に超微粒子セメント系注入材を注入することができる。
【0045】
次に、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入する際のセメント系注入材の浸透状態について説明する。本発明者らは、これらのセメント系注入材の浸透状況についての一次元注入試験を行った。一次元注入試験では、硅砂7号供試土を用いた。
【0046】
図4に示すように、一次元注入試験では、鉛直に立てた内径5cm、長さ1mの透明アクリル製筒体11に供試土を詰め、端部をそれぞれ下蓋12および上蓋13で塞ぐことにより地盤を模した供試体14を構築した。供試体14を構成する砂層は、細粒分含有率6%、相対密度87%とした。下蓋12と供試体14の間および上蓋13と供試体14の間には、それぞれ下フィルタ材15および上フィルタ材16が設けられている。
【0047】
下蓋12には注入入口17が形成されており、上蓋13には注入出口18が形成されている。下フィルタ材15と供試体14との間、および上フィルタ材16と供試体14との間には、それぞれ隙間が無いように供試土が充填されている。供試体14の長さ(下フィルタ材15の上端と上フィルタ材16の下端の距離)は97.5cmである。
【0048】
注入入口17は注入管19によりグラウトタンク21に繋がっている。グラウトタンク21は密閉可能な蓋付容器であり、グラウト22を撹拌するためのミキサ23を備え、外部から所定の圧力を付与することにより、グラウトタンク21内のグラウト22を注入入口17より供試体14中に注入できるようになっている。注入出口18は排出管20により外部に繋がっており、注入出口18から排出された流体の量をメスシリンダ24によって計測できるようになっている。
【0049】
グラウトに使用するセメント系注入材としては、極超微粒子セメント系注入材および超微粒子セメント系注入材を先行材料と後行材料とに分けて、あるいは分けることなく複数の組み合わせで用いた。セメント系注入材は、水セメント比W/C600%の配合とし、砂層の間隙100%の体積となる設計注入量で注入を行った。また、単位セメント量は、いずれのグラウトにおいても158kg/m3とした。
【0050】
図5に示すように、第1グラウトによる注入では、極超微粒子セメント系注入材を100%注入した。第2グラウトによる注入では、50質量%の極超微粒子セメント系注入材と50質量%の超微粒子セメント系注入材とをあらかじめ粉体混合したセメント系注入材を100%注入した。第3グラウトによる注入では、超微粒子セメント系注入材を100%注入した。第4グラウトの注入では、超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した後、極超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した。第5グラウトの注入では、極超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した後、超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した。
【0051】
グラウトの注入にあたっては、供試体14に水を注入入口17から一定圧力で注入し、その水が供試体14の土粒子の間隙を通って上部の注入出口18に接続されている排出管20から流れ出る状態をとし、土粒子の間隙を水で満たした。次に、全グラウト注入量が設計注入量に等しくなるようにグラウトタンク21内のグラウト22を注入入口17から一定圧力で注入する実験を行った。グラウト22の注入量は、排出される水の量をメスシリンダ24で計測することによって把握することができる。
【0052】
設計注入量に等しい注入量のグラウトを注入した後、供試体に対するグラウトの浸透長(cm)、材令7日での一軸圧縮強さの平均値(kN/m2)およびその標準偏差(kN/m2)を第1グラウト〜第4グラウトのそれぞれについて求めた。その結果を図5に示す。
【0053】
さらに、供試体が固化した後、供試体を10cm刻みで切断し、材令28日における一軸圧縮強さ分布を調べた。その結果を図6に示す。図6において、切断した供試体における最も下側(注入入口17側)の供試体に供試体番号1を付与し、その上の供試体に供試体番号2を付与した。さらには、上側にいくにつれて供試体番号3、供試体番号4・・・と順に大きくした供試体番号を付与した。また、第1グラウトを「USF」、第2グラウトを「USF+SF」、第3グラウトを「USF→SF」、第4グラウトを「SF」としてそれぞれ示している。
【0054】
図5および図6に示すように、極超微粒子セメント系注入材からなる第1グラウトでは、浸透長は100%であり、供試体の全体にわたって浸透していた。また、一軸圧縮強さは、供試体の注入入口17から注入出口18に進むに伴って小さくなり、平均1422kN/m2、強度ばらつきを示す変動係数は39%、標準偏差は559kN/m2とばらつきが大きかった。
【0055】
また、極超微粒子セメント系注入材と超微粒子セメント系注入材とを混合した第2グラウトでは、浸透長は80cmであり、供試体に目詰まりが生じてしまった。また、一軸圧縮強さは凹凸がある分布になっており、平均2070kN/m2、変動係数は40%、標準偏差822kN/m2とばらつきが大きかった。
【0056】
さらに、超微粒子セメント系注入材を用いた第3グラウトでは、浸透長が60%であり、目詰まりが大きく生じてしまう結果となった。また、一軸圧縮強さは、平均1169kN/m2、変動係数28%、標準偏差324kN/m2であり、ばらつきは多少小さいものの、一軸圧縮強さ自体が非常に小さくなる結果となった。
【0057】
また、先行材料として超微粒子セメント系注入材を用い、後行材料として極超微粒子セメント系注入材を用いた第4グラウトでは、浸透長は100%と供試体全体にグラウトが浸透していた。また、一軸圧縮強さは凹凸がある分布になっており、平均1502kN/m2、変動係数は69%、標準偏差1043kN/m2であり、ばらつきが大きかった。
【0058】
そして、先行材料として極超微粒子セメント系注入材を用い、後行材料として超微粒子セメント系注入材を用いた第5グラウトでは、浸透長は100%と供試体全体にグラウトが浸透していた。また、一軸圧縮強さは供試体の注入入口17から注入出口18にわたって平滑化され、平均1463kN/m2、変動係数は14%、標準偏差241kN/m2とばらつきが小さかった。
【0059】
以上の結果から、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入した第3グラウトが、供試体中におけるばらつきが小さい結果となった。一方、他のグラウトでは、いずれも第3グラウトに対して、標準偏差が大きくなる傾向となった。したがって、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入することにより、セメント系材料を注入口の遠方に対しても注入することができるとともに、平滑な分布の強度を達成することができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、極超微粒子セメント系注入材を先行注入した直後に超微粒子セメント系注入材を後行注入するようしているが、極超微粒子セメント系注入材の先行注入と超微粒子セメント系注入材の後行注入との間に、中間注入工程として、貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入する態様とすることもできる。ここでの貧配合極超微粒子セメント系注入材としては、たとえば水セメント比W/Cが1600〜4000%、かつ先行注入と中間注入との積算W/Cが1600%以下となるようにする。このように、貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入することにより、より少ないセメント量で所定の強度や浸透性を有して。改良範囲を拡大することができる。
【0061】
また、セメント系注入材を注入する際に、動的注入または超音波振動を付与した注入を行う態様とすることもできる。これらの動的注入または超音波振動を付与した注入は、特に、極超微粒子セメント系注入材を注入する際に行うことが好適である。動的注入または超音波振動を付与した注入を行うことにより、セメント系注入材を地盤に対してスムースに浸透させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…ケーシング
2…注入ホース
3…シールグラウト
4…スリーブパイプ
4A,4B,4C,4D…注入口
5…パイプキャップ
6…固化シールグラウト
7…ダブルパッカ
11…透明アクリル製筒体
12…下蓋
13…上蓋
14…供試体
15…下フィルタ材
16…上フィルタ材
17…注入入口
18…注入出口
19…注入管
20…排出管
21…グラウトタンク
22…グラウト
23…ミキサ
24…メスシリンダ
C…クラッキング
G…地盤
P…注入口
SO…超微粒子セメント系注入材注入領域
SV…極超微粒子セメント系注入材注入領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント系注入材の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基礎地盤の強化、耐震補強、液状化の防止、ダムやトンネルの補強などの工事では、セメント系注入材を地盤に注入し、地盤の強化を図っている。セメント系注入材の注入によって地盤の強化を図る際には、地盤内の広範囲を効率的に強化させることが求められ、そのためには、地盤を構成する粒子の間隙にセメント粒子が浸透しやすい条件でグラウチングを行うことが有利となる。
【0003】
セメント粒子が浸透しやすい条件でグラウチングを行うため、従来、セメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替える注入が行われている。富配合のセメントミルクを注入し続けると、注入初期の段階からセメント粒子によって地盤に目詰まりが発生しやすくなる。注入初期にセメント粒子による地盤の目詰まりが生じると、注入圧力が上昇して早期にセメントミルクの注入が不可能となりセメント粒子の浸透を妨げることになる。そこで、従来の注入方法として、注入初期の段階では貧配合のセメントミルクを注入し、その後、セメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替えることにより、注入初期におけるセメント粒子による地盤の目詰まりを防止し、セメント粒子を浸透しやすくする注入方法がある。
【0004】
あるいは、セメントミルクに用いるセメントとして、粒子径の小さいものを用いることによっても、地盤の粒子間にセメント粒子が浸透しやすくなる。粒子系が小さいセメント系注入材である超微粒子セメント系注入材として、従来、最大粒径が18μmであり、2.2μm以下の超微粒子セメントが開示されている(たとえば、特許文献1参照)。また、粒径1〜5μmの粒子量が60〜80%体積%である極超微粒子セメントも開示されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3423913号公報
【特許文献2】特開2007−238428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のセメントミルクの配合を貧配合から富配合に順次切り替える注入方法では、注入口からの距離が遠くなるほど地盤内に入り込むセメントの濃度が低下し、地盤内における強度が不均一になりやすいという問題があった。地盤内である程度均一となる強度を確保するためには、注入地点の配置を高密度としたり、セメント注入量を調整したりすることが考えられる。ところが、これらの方法では、作業工数や無駄なセメント使用の増大が生じるという問題があった。
【0007】
一方、超微粒子セメントや極超微粒子セメントを用いた場合には、作業工数の増大などに改善を図ることができる。ところが、これらの問題を大きく改善するには至らず、セメント使用量については増加する傾向にあることがある。特に、極超微粒子セメントについては、製造の際に手間が掛かるなどのため、その使用量の抑制について高く求められるところであった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができるセメント系注入材の注入方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るセメント系注入材の注入方法は、強化対象地盤に対してセメント系注入材を注入して、強化対象地盤を強化するセメント系注入材の注入方法であって、強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する注入口挿入工程と、注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入工程と、注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系材料を後行して注入する後行注入工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明に係るセメント系注入材の注入方法においては、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する。このため、注入口の遠方領域に対して、平均粒径が小さい極超微粒子セメント系注入材が浸透するので、広い範囲で高い浸透性を発揮しながらセメント粒子を注入することができる。極超微粒子セメント系注入材の先行注入が済んだら、続いて平均粒径3〜5μmである超微粒子セメントを後行注入する。極超微粒子セメント系注入材の注入後に超微粒子セメント系注入材を注入することにより、極超微粒子セメント系注入材が超微粒子セメント系注入材によって注入口の遠方領域まで押し出される。このため、注入口の遠方領域におけるセメント粒子の充填性を高めることができる。また、注入口の遠方領域では、粒径の小さい極超微粒子セメント系注入材が浸透しているので、目詰まりが生じる可能性を低いものとすることができる
【0011】
一方、注入口の近傍領域では、セメント粒子の浸透範囲が狭いので、極超微粒子セメント系注入材を用いることなく超微粒子セメント系注入材を用いた場合でも、目詰まりが生じる可能性が低く、高い充填性を発揮することができる。したがって、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【0012】
ここで、極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされている態様とすることができる。
【0013】
このように、極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされていることにより、注入口から遠い領域におけるセメント粒子の注入をより好適に行うことができる。
【0014】
また、先行注入工程と後行注入工程との間に、極超微粒子よりも貧配合の注入材を注入する中間注入工程を、さらに含む態様とすることができる。
【0015】
このように、先行注入工程と後行注入工程との間に、極超微粒子セメント系注入材よりも貧配合の貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入することにより、注入口から遠い領域におけるセメント系注入材の浸透性をさらに高くすることができる、その結果、広い範囲でセメント粒子をより高濃度で注入することができる。
【0016】
さらに、先行注入工程から後行注入工程の間の工程でセメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によってセメント系注入材を注入する態様とすることができる。
【0017】
このように、セメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によってセメント系注入材を注入することにより、注入口から遠い領域におけるセメント粒子の充填性をより高めることができる。
【0018】
また、極超微粒子セメントは、3CaO・Al2O3の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメンを混合してなる態様とすることができる。
【0019】
このように、上記の配合および成分を用いることにより、極超微粒子セメント系注入材を好適に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセメント系注入材の注入方法によれば、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】セメント系注入材が注入された地盤を模式的に示す図である。
【図2】セメント系注入材を注入する工程を説明する工程図である。
【図3】図2に続く工程を説明する工程図である。
【図4】一次元注入試験に用いた試験装置の構成図である。
【図5】試験に用いたグラウトおよび試験結果を示す表である。
【図6】供試体における一軸圧縮強さ分布を示すグラフである。
【図7】(a)は、超微粒子セメント系注入材のみが注入された地盤を模式的に示す図、(b)は、極超微粒子セメント系注入材が注入された後、超微粒子セメント系注入材が注入された地盤を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0023】
本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法は、二重管ストレーナ工法やダブルパッカ工法などの注入工法におけるいわゆる二次注入の際に行われる。一般に、二重管ストレーナ工法では、瞬結となる一次注入と緩結となる二次注入が行われる。また、ダブルパッカ工法では、セメントベントナイト材(CB材)の注入による一次注入と、緩結による二次注入とがある。本実施形態は、これらの工法における二次注入の際に行われることで、より効果的に、広い範囲でセメント粒子を注入することができるとともに、極超微粒子セメントの使用量の抑制を図ることができる。
【0024】
本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法においては、極超微粒子セメントおよび超微粒子セメントを水に混合撹拌してスラリー状にしたセメント系注入材を強化の対象となる強化対象地盤に対して注入する。ここで用いられる超微粒子セメント系注入材としては、たとえばポルトランドセメントまたはポルトランドセメントクリンカーと高炉スラグと石膏とを含む超微粒子セメントを必須成分として構成される。超微粒子セメント系注入材は、その最大粒径が10〜16μm程度とされており、平均粒径が4.0μmとされている。超微粒子セメント系注入材としては、平均粒径が3〜5μmのものが用いられる。
【0025】
また、極超微粒子セメント系注入材は、3CaO・Al2O3・の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメントおよびポリカルボン酸系分散剤を必須成分として混合して構成される。極超微粒子セメント系注入材は、平均粒径が1.5μmとされている。極超微粒子セメント系注入材としては、平均粒径が1〜3μmのものが用いられる。
【0026】
この極超微粒子注入材組成物の好ましい形態としては、ポリカルボン酸系分散剤が不飽和ポリアルキレングリコール系単量体に由来する繰り返し単位と不飽和カルボン酸系単量体に由来する繰り返し単位とを有するポリカルボン酸系共重合体を含む形態である。さらに、極超微粒子セメント系注入材を製造する方法は、周速314m/min以上で混合撹拌する高速撹拌工程を有することが好適となる。
【0027】
さらに、極超微粒子セメント系注入材は、水セメント比W/Cを400〜1600%に設定することが好適である。水セメント比W/Cが400%未満では、セメント量が多いため、目詰まりが発生し、注入の継続が困難となるからである。また、水セメント比W/Cが1600%を超えると、セメント量が少なく、所定の強度や浸透長が確保しにくくなるからである。
【0028】
次に、本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法によってセメント系注入材を地盤に注入した際の地盤内におけるセメント系注入材の流動について説明する。地盤にセメント系注入材を注入する際には、セメント系注入材におけるセメントが、地盤に対して広い範囲かつ均一に浸透することが求められる。本実施形態に係るセメント系注入材の注入方法では、図1に示すように、注入口Pの近傍領域には、主に超微粒子セメント系注入材が浸透した超微粒子セメント系注入材注入領域SOが形成され、注入口Pの遠方領域には、主に極超微粒子セメント系注入材が浸透した極超微粒子セメント系注入材注入領域SVが形成される。
【0029】
超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材と比較して平均粒径が大きいため、極超微粒子セメント系注入材と比較して地盤に対する浸透性は劣り、改良範囲が狭くなる。しかし、脱水ろ過現象によってセメント量が濃縮されることから、改良範囲内の地盤における間隔に占めるセメントの体積は大きくなる。一方、極超微粒子セメント系注入材は、超微粒子セメント系注入材と比較して平均粒径が小さいことから、地盤に対する浸透性には優れ、改良範囲は広くなる。しかし、セメント量の濃縮が少ないので、地盤における間隙を埋めて十分な改良強度を得るためには、極超微粒子セメント系注入材を多量に必要とすることとなる。さらに、超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材と比較して、地盤に注入した際に目詰まりを発生させやすくなる。
【0030】
これらの特性を踏まえ、本実施形態では、注入口から極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、続いて超微粒子セメント系注入材を後行注入する。地盤に注入された極超微粒子セメント系注入材は、地盤Gにおける注入口Pの周囲に浸透していく。極超微粒子セメント系注入材は、その平均粒径が1.5μmと非常に小さいので、極超微粒子セメント系注入材は、注入口Pの近傍領域において目詰まりが生じにくくなっている。このため、注入口Pの近傍領域から遠方領域に至るまで、目詰まりを生じることなく幅広く浸透する。
【0031】
極超微粒子セメント系注入材の注入が済んだら、超微粒子セメント系注入材を後行注入する。地盤Gにおける注入口Pの周囲には、すでに注入された極超微粒子セメント系注入材が浸透している。ところが、極超微粒子セメント系注入材は、その平均粒径が非常に小さいことから、超微粒子セメント系注入材を注入した際においても、地盤Gにおける目詰まりの発生が防止される。
【0032】
一方、超微粒子セメント系注入材は、極超微粒子セメント系注入材よりも平均粒径が大きくされている。極超微粒子セメント系注入材の注入後に超微粒子セメント系注入材を注入すると、超微粒子セメント系注入材に押し出され、または超微粒子セメント系注入材とともに極超微粒子セメント系注入材が注入口Pの遠方まで浸透していく。そして、注入口Pの近傍位置には、超微粒子セメント系注入材が主に浸透した超微粒子セメント系注入材注入領域SOが形成され、注入口Pの遠方領域には、極超微粒子セメント系注入材が主に浸透した極超微粒子セメント系注入材注入領域SVが形成される。
【0033】
したがって、たとえば注入管を複数並設し、または注入管を移動させながら注入を行うにあたり、超微粒子セメント系注入材のみによる注入を行った場合、図7(a)に示すように、超微粒子セメント系注入材が注入された超微粒子セメント系注入材注入領域SOが隣接した状態で改良がなされる。一方、極超微粒子セメント系注入材を注入した後に超微粒子セメント系注入材を注入する注入を行った場合には、図7(b)に示すように、極超微粒子セメント系注入材SVが注入された極超微粒子セメント系注入材領域が隣接した状態で改良がなされる。ここでは、極超微粒子セメント系注入材領域の内側に極超微粒子セメント系注入材領域SOが形成された状態となる。
【0034】
このように、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、続いて超微粒子セメント系注入材を後行注入することにより、注入口Pの近傍領域における目詰まりを防止することができる。さらには、セメント系注入材を注入口Pの遠方領域にまで広い範囲で注入して浸透させることができることから、補強された地盤Gにおける強度を向上させることができるとともに、強度の分布が滑らかになり、地盤Gの強度の均一化を図ることができる。加えて、注入口Pの近傍領域は比較的平均粒径が大きい超微粒子セメント系注入材が注入されている。このため、セメント系注入材、特に極超微粒子セメント系注入材の使用量を抑制することができる。
【0035】
次に、実際に地盤にセメント系注入材を注入する手順を説明する。図2は、地盤にセメント系注入材を注入する際の工程を示す工程図である。地盤にセメント系注入材を注入する際には、まず、図2(a)に示すように、強化対象地盤である地盤Gにおける所定箇所に対してボーリング削孔を行うとともに、削孔した掘削孔に対してケーシング1を挿入する。
【0036】
地盤Gにケーシング1を挿入したら、図2(b)に示すように、ケーシング1の内側に注入ホース2を挿入し、注入ホース2からシールグラウト3を吐出させることにより、ケーシング1の内側にシールグラウト3を注入する。シールグラウト3は、流動性を有しており、所定時間の経過によって固化するものである。
【0037】
シールグラウト3の注入が済んだら、シールグラウト3が固化する前に注入ホース2をケーシング1から引き出す。その後、図2(c)に示すように、ケーシング1の内側にスリーブパイプ4を挿入する。スリーブパイプ4の挿入はシールグラウト3が固化する前に行われる。
【0038】
また、スリーブパイプ4の下端部には、スリーブパイプ4の下方開口部を閉塞するパイプキャップ5が設けられている。このため、ケーシング1にスリーブパイプ4を挿入する際におけるスリーブパイプ4内へのシールグラウト3の浸入が阻止されている。また、スリーブパイプ4の側面には、長さ方向に所定の間隔をおいて配置された複数の注入口4A,4B,4C,4Dが形成されている。これらの注入口からセメント系注入材が注入される。スリーブパイプ4の挿入が注入口挿入工程となる。
【0039】
スリーブパイプ4の挿入が完了したら、シールグラウト3が固化する前に、地盤Gに形成した削孔からケーシング1を引き抜く。その後、しばらく時間の経過を待ち、削孔内におけるシールグラウト3を固化させる。シールグラウト3が固化すると、スリーブパイプ4の内側が空洞となった状態でスリーブパイプ4と地盤Gの削孔との間に固化シールグラウト6が生成される。
【0040】
その後、図3(a)に示すように、空洞となっているスリーブパイプ4の内側にダブルパッカ7を挿入し、最上方に位置する注入口4Aの側方に配置する。ダブルパッカ7には、インジェクションパイプが内設されており、インジェクションパイプを作動させることによってセメント系注入材をスリーブパイプ4内に排出する。ここでは、セメント系注入材として、先行して極超微粒子セメント系注入材を排出する。
【0041】
その後、極超微粒子セメント系注入材の排出を継続することにより、図3(b)に示すように、極超微粒子セメント系注入材がスリーブパイプ4における注入口4Aから排出され、側方にクラッキングCが形成され、クラッキングC内に極超微粒子セメント系注入材が浸透する。こうして、地盤Gに対する極超微粒子セメント系注入材の注入が先行注入工程として行われる。
【0042】
地盤Gにおける所定範囲まで極超微粒子セメント系注入材が浸透したら、図3(c)に示すように、下方の注入口4Bの側方にダブルパッカ7を移動させ、同様の手順によって地盤G内に極超微粒子セメント系注入材を注入する。以後、同様の注入口4C,4Dの側方にダブルパッカ7を配置して極超微粒子セメント系注入材を地盤Gに注入する。
【0043】
図3に示す態様では、最上方に配置された注入口4Aから注入を開始し、徐々に下方に位置する注入口4B〜4Dに下がって注入を行ういわゆるステップダウンの施工手順で注入を行っているが、いわゆるステップアップの施工手順で注入を行うこともできる。ステップダウンの施工手順で注入を行う際には、最初に、最下方に配置された注入口4Dから注入を開始し、徐々に上方に位置する注入口4C〜4Aに上がって注入を行う。
【0044】
こうして、極超微粒子セメント系注入材の注入が済んだら、ダブルパッカ7からスリーブパイプ4に排出するセメント系注入材を極超微粒子セメント系注入材から超微粒子セメント系注入材に変更して、後行注入工程を行う。超微粒子セメント系注入材の後行注入は、極超微粒子セメント系注入材の先行注入と同様の手順によって行う。こうして、図1に示すように、注入口の遠方領域に対して主に極超微粒子セメント系注入材を注入することができるとともに、注入口の近傍領域に対して主に超微粒子セメント系注入材を注入することができる。
【0045】
次に、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入する際のセメント系注入材の浸透状態について説明する。本発明者らは、これらのセメント系注入材の浸透状況についての一次元注入試験を行った。一次元注入試験では、硅砂7号供試土を用いた。
【0046】
図4に示すように、一次元注入試験では、鉛直に立てた内径5cm、長さ1mの透明アクリル製筒体11に供試土を詰め、端部をそれぞれ下蓋12および上蓋13で塞ぐことにより地盤を模した供試体14を構築した。供試体14を構成する砂層は、細粒分含有率6%、相対密度87%とした。下蓋12と供試体14の間および上蓋13と供試体14の間には、それぞれ下フィルタ材15および上フィルタ材16が設けられている。
【0047】
下蓋12には注入入口17が形成されており、上蓋13には注入出口18が形成されている。下フィルタ材15と供試体14との間、および上フィルタ材16と供試体14との間には、それぞれ隙間が無いように供試土が充填されている。供試体14の長さ(下フィルタ材15の上端と上フィルタ材16の下端の距離)は97.5cmである。
【0048】
注入入口17は注入管19によりグラウトタンク21に繋がっている。グラウトタンク21は密閉可能な蓋付容器であり、グラウト22を撹拌するためのミキサ23を備え、外部から所定の圧力を付与することにより、グラウトタンク21内のグラウト22を注入入口17より供試体14中に注入できるようになっている。注入出口18は排出管20により外部に繋がっており、注入出口18から排出された流体の量をメスシリンダ24によって計測できるようになっている。
【0049】
グラウトに使用するセメント系注入材としては、極超微粒子セメント系注入材および超微粒子セメント系注入材を先行材料と後行材料とに分けて、あるいは分けることなく複数の組み合わせで用いた。セメント系注入材は、水セメント比W/C600%の配合とし、砂層の間隙100%の体積となる設計注入量で注入を行った。また、単位セメント量は、いずれのグラウトにおいても158kg/m3とした。
【0050】
図5に示すように、第1グラウトによる注入では、極超微粒子セメント系注入材を100%注入した。第2グラウトによる注入では、50質量%の極超微粒子セメント系注入材と50質量%の超微粒子セメント系注入材とをあらかじめ粉体混合したセメント系注入材を100%注入した。第3グラウトによる注入では、超微粒子セメント系注入材を100%注入した。第4グラウトの注入では、超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した後、極超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した。第5グラウトの注入では、極超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した後、超微粒子セメント系注入材を50体積%注入した。
【0051】
グラウトの注入にあたっては、供試体14に水を注入入口17から一定圧力で注入し、その水が供試体14の土粒子の間隙を通って上部の注入出口18に接続されている排出管20から流れ出る状態をとし、土粒子の間隙を水で満たした。次に、全グラウト注入量が設計注入量に等しくなるようにグラウトタンク21内のグラウト22を注入入口17から一定圧力で注入する実験を行った。グラウト22の注入量は、排出される水の量をメスシリンダ24で計測することによって把握することができる。
【0052】
設計注入量に等しい注入量のグラウトを注入した後、供試体に対するグラウトの浸透長(cm)、材令7日での一軸圧縮強さの平均値(kN/m2)およびその標準偏差(kN/m2)を第1グラウト〜第4グラウトのそれぞれについて求めた。その結果を図5に示す。
【0053】
さらに、供試体が固化した後、供試体を10cm刻みで切断し、材令28日における一軸圧縮強さ分布を調べた。その結果を図6に示す。図6において、切断した供試体における最も下側(注入入口17側)の供試体に供試体番号1を付与し、その上の供試体に供試体番号2を付与した。さらには、上側にいくにつれて供試体番号3、供試体番号4・・・と順に大きくした供試体番号を付与した。また、第1グラウトを「USF」、第2グラウトを「USF+SF」、第3グラウトを「USF→SF」、第4グラウトを「SF」としてそれぞれ示している。
【0054】
図5および図6に示すように、極超微粒子セメント系注入材からなる第1グラウトでは、浸透長は100%であり、供試体の全体にわたって浸透していた。また、一軸圧縮強さは、供試体の注入入口17から注入出口18に進むに伴って小さくなり、平均1422kN/m2、強度ばらつきを示す変動係数は39%、標準偏差は559kN/m2とばらつきが大きかった。
【0055】
また、極超微粒子セメント系注入材と超微粒子セメント系注入材とを混合した第2グラウトでは、浸透長は80cmであり、供試体に目詰まりが生じてしまった。また、一軸圧縮強さは凹凸がある分布になっており、平均2070kN/m2、変動係数は40%、標準偏差822kN/m2とばらつきが大きかった。
【0056】
さらに、超微粒子セメント系注入材を用いた第3グラウトでは、浸透長が60%であり、目詰まりが大きく生じてしまう結果となった。また、一軸圧縮強さは、平均1169kN/m2、変動係数28%、標準偏差324kN/m2であり、ばらつきは多少小さいものの、一軸圧縮強さ自体が非常に小さくなる結果となった。
【0057】
また、先行材料として超微粒子セメント系注入材を用い、後行材料として極超微粒子セメント系注入材を用いた第4グラウトでは、浸透長は100%と供試体全体にグラウトが浸透していた。また、一軸圧縮強さは凹凸がある分布になっており、平均1502kN/m2、変動係数は69%、標準偏差1043kN/m2であり、ばらつきが大きかった。
【0058】
そして、先行材料として極超微粒子セメント系注入材を用い、後行材料として超微粒子セメント系注入材を用いた第5グラウトでは、浸透長は100%と供試体全体にグラウトが浸透していた。また、一軸圧縮強さは供試体の注入入口17から注入出口18にわたって平滑化され、平均1463kN/m2、変動係数は14%、標準偏差241kN/m2とばらつきが小さかった。
【0059】
以上の結果から、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入した第3グラウトが、供試体中におけるばらつきが小さい結果となった。一方、他のグラウトでは、いずれも第3グラウトに対して、標準偏差が大きくなる傾向となった。したがって、極超微粒子セメント系注入材を先行注入し、超微粒子セメント系注入材を後行注入することにより、セメント系材料を注入口の遠方に対しても注入することができるとともに、平滑な分布の強度を達成することができる。
【0060】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、極超微粒子セメント系注入材を先行注入した直後に超微粒子セメント系注入材を後行注入するようしているが、極超微粒子セメント系注入材の先行注入と超微粒子セメント系注入材の後行注入との間に、中間注入工程として、貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入する態様とすることもできる。ここでの貧配合極超微粒子セメント系注入材としては、たとえば水セメント比W/Cが1600〜4000%、かつ先行注入と中間注入との積算W/Cが1600%以下となるようにする。このように、貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入することにより、より少ないセメント量で所定の強度や浸透性を有して。改良範囲を拡大することができる。
【0061】
また、セメント系注入材を注入する際に、動的注入または超音波振動を付与した注入を行う態様とすることもできる。これらの動的注入または超音波振動を付与した注入は、特に、極超微粒子セメント系注入材を注入する際に行うことが好適である。動的注入または超音波振動を付与した注入を行うことにより、セメント系注入材を地盤に対してスムースに浸透させることができる。
【符号の説明】
【0062】
1…ケーシング
2…注入ホース
3…シールグラウト
4…スリーブパイプ
4A,4B,4C,4D…注入口
5…パイプキャップ
6…固化シールグラウト
7…ダブルパッカ
11…透明アクリル製筒体
12…下蓋
13…上蓋
14…供試体
15…下フィルタ材
16…上フィルタ材
17…注入入口
18…注入出口
19…注入管
20…排出管
21…グラウトタンク
22…グラウト
23…ミキサ
24…メスシリンダ
C…クラッキング
G…地盤
P…注入口
SO…超微粒子セメント系注入材注入領域
SV…極超微粒子セメント系注入材注入領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化対象地盤に対してセメント系注入材を注入して、前記強化対象地盤を強化するセメント系注入材の注入方法であって、
前記強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する注入口挿入工程と、
前記注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入工程と、
前記注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系注入材を後行して注入する後行注入工程と、
を含むことを特徴とするセメント系注入材の注入方法。
【請求項2】
前記極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされている請求項1に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項3】
前記先行注入工程と前記後行注入工程との間に、前記極超微粒子セメント系注入材よりも貧配合の貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入する中間注入工程を、さらに含む請求項1または請求項2に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項4】
前記先行注入工程から前記後行注入工程の間の工程でセメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によって前記セメント系注入材を注入する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項5】
前記極超微粒子セメント系注入材は、3CaO・Al2O3の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメントを混合してなる請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項1】
強化対象地盤に対してセメント系注入材を注入して、前記強化対象地盤を強化するセメント系注入材の注入方法であって、
前記強化対象地盤における所定箇所に注入口を挿入する注入口挿入工程と、
前記注入口から、平均粒径が1〜3μmである極超微粒子セメント系注入材を先行注入する先行注入工程と、
前記注入口から、平均粒径が3〜5μmである超微粒子セメント系注入材を後行して注入する後行注入工程と、
を含むことを特徴とするセメント系注入材の注入方法。
【請求項2】
前記極超微粒子セメント系注入材の水セメント比W/Cが400〜1600%とされている請求項1に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項3】
前記先行注入工程と前記後行注入工程との間に、前記極超微粒子セメント系注入材よりも貧配合の貧配合極超微粒子セメント系注入材を注入する中間注入工程を、さらに含む請求項1または請求項2に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項4】
前記先行注入工程から前記後行注入工程の間の工程でセメント系注入材を注入するにあたり、動的注入または超音波振動付与注入によって前記セメント系注入材を注入する請求項1〜請求項3のうちのいずれか1項に記載のセメント系注入材の注入方法。
【請求項5】
前記極超微粒子セメント系注入材は、3CaO・Al2O3の含有量が5質量%以下であるセメントクリンカー2〜25質量%、高炉スラグ74〜97質量%、石膏1〜5質量%を含み、粉体中の粒径1〜5μmの粒子量が60〜80体積%である極超微粒子セメントを混合してなる請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載のセメント系注入材の注入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2012−172468(P2012−172468A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37416(P2011−37416)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(592048970)日鐵セメント株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390036504)日特建設株式会社 (99)
【出願人】(592048970)日鐵セメント株式会社 (6)
【Fターム(参考)】
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