説明

セメント組成物の製造方法

【課題】アクリル酸エステル共重合体エマルジョンを使用した空洞充填材のA剤とB剤を容量で等量混合が可能なセメント組成物を提供すること。
【解決手段】A剤とB剤から構成され、A剤は、セメント100質量部に対して、40〜150質量部の水からなるセメントミルクであり、B剤は、セメント100質量部に対して、アクリル酸エステル共重合体エマルジョンが固形分換算で0.1〜0.7質量部、増量材が20〜200質量部、カルシウムアルミネートと石膏からなる凝結促進剤が1〜30質量部、硬化遅延剤が0.01〜1質量部、及び水が50〜150質量部からなる増粘剤であり、A剤とB剤を容量比45:55〜55:45の混合割合で混合するセメント組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建築分野で使用するセメント組成物の製造方法に関し、特に、地山の空洞や空隙部分に充填する裏込め材において、セメント組成物を使用したセメントミルク、モルタル、又はコンクリートの粘度を急激に上昇させる必要がある用途に使用するセメント組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの覆工において、施工時や施工後に、その背面に空洞が発生する場合があり、その空洞に充填する裏込め材として、通常、セメント−ベントナイトが用いられてきたが、流動性が大きすぎ、裏込め材が遠方まで不必要に逸流する、湧水があると裏込め材が流出するなどの課題があった。
【0003】
そこで、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンを添加してその粘度を大きくする方法が提案されている(特許文献1〜特許文献3)。
【0004】
しかしながら、これら特許文献には、セメントミルクと、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョンと増量材の含有物とを別々に調製し、使用する直前に混合することについての記載はない。
また、セメントミルク(A剤)を圧送するポンプに対して、アルカリ増粘型ポリマーエマルジョン(B剤)の添加量が少ないため、B剤を圧送するポンプは少量圧送する特殊なポンプが必要となり汎用的でないため、機材の用意等に課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−179447号公報
【特許文献2】特開2004−143037号公報
【特許文献3】特開2006−256919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、特定のセメント組成物を使用することにより、上記課題が解決できるという知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の手段を採用する。
(1)A剤とB剤から構成され、A剤は、セメントと、セメント100質量部に対して、40〜150質量部の水からなるセメントミルクであり、B剤は、セメント100質量部に対して、アクリル酸エステル共重合体エマルジョンが固形分換算で0.1〜0.7質量部、増量材が20〜200質量部、カルシウムアルミネートと石膏からなる凝結促進剤が1〜30質量部、硬化遅延剤が0.01〜1質量部、及び水が50〜150質量部からなる増粘剤であり、A剤とB剤を容量比45:55〜55:45の混合割合で混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法である。
(2)前記増量材が、石炭灰又は炭酸カルシウムである前記(1)のセメント組成物の製造方法である。
(3)さらに、減水剤を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)のセメント組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセメント組成物を使用することにより、A剤を圧送するポンプと、B剤を圧送するポンプを同一又は同等とすることができるため、特殊なポンプを用意する必要がなくなり機材の調達が容易である。また、等量圧送できる2連のポンプなども使用可能である。さらに、等量混合できることで、配合ミスが少なく、施工時の材料管理が楽で作業者の負担も減るという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用する部や%は、特に規定のない限り質量基準である。
【0010】
本発明で使用するA剤は、セメントミルクである。
【0011】
本発明で使用するセメントは、特に限定されるものではなく、通常のセメントが使用可能である。具体的には、普通、早強、超早強、及び中庸熱等の各種ポルトランドセメントや、これらポルトランドセメントに、高炉スラグ、シリカ、又はフライアッシュなどを混合した各種混合セメントの使用が可能である。また、これらのセメントをさらに細かくした微粒子セメントや超微粒子セメントの使用も可能である。
【0012】
本発明で、A剤に使用する水の量としては、セメント100部に対して、40〜150部が好ましく、60〜120部がより好ましい。40部未満ではセメントミルクの粘性が高くなり、圧送が困難になる場合があり、150部を超えると強度低下やB剤と混合する際の増粘効果が低下する場合がある。
【0013】
A剤の粘度としては、B型粘度計で測定された粘度で2,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。この範囲より高いと圧送が困難になる場合がある。
【0014】
本発明で使用するB剤は、アクリル酸エステル共重合体エマルジョンと増量材とを含有するものである。
【0015】
本発明で使用するアクリル酸エステル共重合体エマルジョンとは、セメントとの混合により、瞬時に増粘するもので、空洞充填する際に目的の箇所以外への逸流を防止するため使用するものである。
【0016】
アクリル酸エステル共重合体エマルジョン(以下、本エマルジョンという)は、不飽和カルボン酸と、不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和化合物とを、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合等の方法を用いて共重合することにより得られるポリマーエマルジョンである。
【0017】
不飽和カルボン酸類としては、アクリル酸、メタクリル酸、及びマレイン酸等の不飽和カルボン酸、無水マレイン酸や無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸無水物、並びに、マレイン酸モノエチルなどの不飽和カルボン酸半エステルなどが挙げられる。これらの中では、増粘性状が大きい面で、不飽和カルボン酸が好ましく、アクリル酸及び/又はメタクリル酸がより好ましい。
【0018】
不飽和カルボン酸と共重合可能なエチレン性不飽和化合物としては、エチレン、アクリルニトリルなどのシアノビニルモノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びブチルアクリレートなどのアクリル酸エステルモノマー、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、及びブチルメタクリレートなどのメタクリル酸エステルモノマーや、脂肪族カルボン酸ビニルエステル、ビニルエーテルモノマーなどの多官能性ビニルモノマーなどが挙げられる。これらの中では、より優れた効果を示す点で、アクリル酸エステルモノマー及び/又はメタクリル酸エステルモノマーが好ましい。
【0019】
本エマルジョン中、不飽和カルボン酸類とエチレン性不飽和化合物の共重合比(質量比)は、不飽和カルボン酸類:エチレン性不飽和化合物が20:1〜1:20が好ましく、5:1〜1:5がより好ましい。この範囲外では凝結効果が悪くなる場合がある。
【0020】
本エマルジョンの使用量は、通常、セメント100部に対して、固形分換算で0.1〜0.7部が好ましく、0.2〜0.4部がより好ましい。0.1部未満では増粘効果が期待できない場合があり、0.7部を超えるとその効果の向上が期待できないばかりか、短・長期強度が悪くなる場合がある。
【0021】
本発明で使用する増量材とは、セメントの水和に悪影響を与えない粉体であり、配合することにより、増量でき、A剤の量と同程度になり、ポンプの制限を不要とするものであり、A剤と混合する際の増粘効果を助長するものである。例えば、石炭灰等のポゾラン物質、炭酸カルシウム、石灰石微粉末、及び硅石粉等の石粉が挙げられる。
増量材のブレーン比表面積(以下、ブレーン値という)は特に限定されるものではないが、1,000cm2/g以上が好ましく、3,000〜7,000cm2/gがより好ましい。この範囲より小さいと、水と混合する際に材料が沈降し易くなる場合がある。
【0022】
本発明で増量材として使用する石炭灰は、例えば、火力発電所のボイラから排出される石炭燃焼灰等、石炭を燃焼させて得られた燃焼灰の総称をいう。
石炭灰とは、例えば、石炭火力発電所から発生する灰であり、微粉炭燃焼によって生成し、燃焼ボイラの燃焼ガスから空気余熱器、又は節炭器等を通過する際に落下採取された石炭灰、電気集塵機で採取された石炭灰、さらには燃焼ボイラの炉底に落下した石炭灰等が該当する。これらの中では、JIS規格のフライアッシュが好ましい。
石炭灰のブレーン値は、2,500cm2/g以上が好ましく、3,800〜4,000cm2/gがより好ましい。
石炭灰の密度は、1.95g/cm3以上が好ましく、2.2〜2.3g/cm3がより好ましい。
【0023】
本発明で増量材として使用する炭酸カルシウムは特に限定されるものではないが、天然の石灰石を粉砕して得られた石灰石微粉末や合成によって得られる炭酸カルシウムなどがある。
炭酸カルシウムのブレーン値は、2,000cm2/g以上が好ましく、4,000〜6,000cm2/gがより好ましい。
【0024】
増量材の使用量は、セメント100部に対して、20〜200部が好ましく、50〜150部がより好ましい。20部未満では増粘効果が得られない場合があり、200部を超えるとB剤の粘度が高くなり、ポンプ圧送が困難になる場合がある。
【0025】
本発明で使用するカルシウムアルミネートと石膏からなる凝結促進剤とは、本エマルジョンと混合して増粘したセメントミルクを、数十秒から数分で硬化促進させるために使用する。
【0026】
本発明で使用するカルシウムアルミネート(以下、CAという)は、CaOとAl2O3を含有するものであり、SiO2を含有してもよい。石膏との併用により主として短期強度の発現に寄与するものである。
CAの組成は、CaO含有率20〜60%、Al2O3含有率20〜70%が好ましく、CaO含有率30〜55%、Al2O3含有率30〜60%、及びSiO2含有率0〜20%がより好ましい。この範囲外では短期強度が小さくなる場合がある。
【0027】
CAは、石灰石等のカルシア原料、アルミナ、ボーキサイト、長石、及び粘土等のアルミナ原料に、さらには、ケイ石、ケイ砂、石英、及びケイ藻土等のシリカ原料等を配合した後、ロータリーキルンなどで焼成、又は、電気炉や高周波炉等で溶融することにより製造される。
【0028】
また、CaOをC、Al2O3をAとすると、CAとして、C12A7、CA、C3A、及び2CaO・Al2O3・SiO2やCaO・Al2O3・2SiO2などの結晶性化合物を使用することも可能であるが、短期強度が大きい点で、溶融物を急冷して得られるガラス質のものが好ましい。
【0029】
CAのブレーン値は、3,000cm2/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm2/gがより好ましい。この範囲より小さいと、初期の強度発現性の向上を充分示さない場合がある。
【0030】
本発明で使用する石膏としては、無水石膏、半水石膏、及び二水石膏が挙げられ、また、天然石膏や、リン酸副生石膏、排脱石膏、及びフッ酸副生石膏等の化学石膏、又はこれらを熱処理して得られる石膏等が挙げられる。これらの中では、強度発現性が大きい点で、無水石膏が好ましい。
【0031】
石膏のブレーン値は、3,000cm2/g以上が好ましく、4,000〜7,000cm2/gがより好ましい。この範囲より小さいと、初期の強度発現性の向上を充分示さない場合がある。
石膏の使用量は、CA100部に対して、50〜200部が好ましく、70〜150部がより好ましい。この範囲外では短期強度が小さい場合がある。
【0032】
凝結促進剤の使用量は、セメント100部に対して、1〜30部が好ましく、3〜10部がより好ましい。1部未満では、短期強度の発現が不良である場合があり、30部を超えると、硬化時間の制御が難しく、ミキサやポンプを固めてしまい、破損してしまう場合がある。また、長期強度発現に問題が生ずる可能性があり、経済的でない場合がある。
【0033】
本発明で使用する硬化遅延剤とは、B剤中の本エマルジョンと、増量材および凝結促進剤との反応を抑制でき、B剤の硬化を防止するために使用するもので、硬化遅延剤としては、アルミン酸ナトリウムやアルミン酸カリウムなどのアルミン酸塩、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムなどの炭酸塩、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの水酸化物、硫酸アルミニウム、硫酸鉄、及びミョウバンなどの硫酸塩、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウムなどのケイ酸塩、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、及びリン酸マグネシウムなどのリン酸塩、並びに、ホウ酸リチウムやホウ酸ナトリウムなどのホウ酸塩等の無機塩、クエン酸、グルコン酸、酒石酸、及びリンゴ酸又はこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩等の有機酸、並びに、糖等が挙げられ、これらのうちの一種又は二種以上を使用することが可能である。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0034】
硬化遅延剤の使用量は、セメント100部に対して、0.01〜1部が好ましく、0.03〜0.07部がより好ましい。0.01部未満では遅延効果が得られない場合があり、1部を超えるとセメントが硬化しない場合がある。
【0035】
本発明では、セメントミルクの粘性を改善する目的で、セメント減水剤やAE剤等の各種混和剤を併用することが可能である。
【0036】
本発明で使用するB剤における水の量は、セメント100部に対して、50〜150部が好ましく、70〜120部がより好ましい。50部未満ではB剤の粘性が高くなり圧送が困難になる場合があり、150部を超えると増粘効果が低下する場合がある。
【0037】
B剤の粘度としては、B型粘度計で測定された粘度で2,000mPa・s以下が好ましく、500mPa・s以下がより好ましい。この範囲より高いと圧送が困難になる場合がある。
【0038】
本発明において、A剤とB剤の混合方法は特に限定されるものではないが、A剤とB剤をそれぞれポンプで圧送することが好ましい。例えば、ダイヤフラムポンプ、スクイズポンプ、ピストンポンプ、及びスネークポンプなどの、ポンプにより圧送し、Y字管で合流させた後に、リミキサやスタティックミキサを用いて混合する。A剤とB剤とを混合すると、瞬時に増粘するため、混合から充填箇所までのホースの距離は10m以下とすることが好ましい。
【0039】
本発明のA剤とB剤の混合割合としては、A剤:B剤の割合が容量比で45:55〜55:45が好ましく、50:50がより好ましい。この範囲外では強度低下や増粘効果が低下する場合がある。
【0040】
本発明のセメント組成物を使用して空洞充填材とする。
本発明で使用する空洞充填材は、日本道路公団規格試験法であるシリンダー法によって測定されたフロー値が、80〜150mmであることが好ましく、80〜120mmであることがより好ましい。空洞充填材のフロー値の測定には、内径80mmのシリンダーを使用するので、フロー値は80mm未満とはならず、この範囲より大きいと限定注入等には適さない場合がある。本発明で使用する空洞充填材は、優れた可塑性能を有し、限定注入にも適している。
【実施例】
【0041】
以下、実験例に基づき詳細に説明する。
【0042】
実験例1
A剤は、セメントと、セメント100部に対して、表1に示す量の水と減水剤をハンドミキサで混合し、5リットルとなるように調製する。
B剤は、セメント100部に対して、本エマルジョンを固形分換算で0.3部、増量材70部、凝結促進剤5部、硬化遅延剤0.05部、及び水80部とし、ハンドミキサで混合し、5リットルとなるように調製する。
A剤とB剤の粘度を測定後、5リットルのA剤と5リットルのB剤をハンドミキサで3秒間混合してモルタルを調製した。増粘後のフロー値と圧縮強度の測定をした。結果を表1に併記する。
比較のため、本エマルジョンをB剤でなくA剤に混合して同様に行った実験結果を併記する。
【0043】
<使用材料>
セメント :普通ポルトランドセメント、ブレーン値3,200cm2/g、市販品
減水剤 :ナフタレンスルホン酸、市販品
本エマルジョン:エチルアクリレート/メタクリル酸を共重合したポリマーエマルジョン(質量比1/1)、固形分30%
増量材(A):フライアッシュ、JIS II種品、市販品
凝結促進剤:CA/石膏=1/1、ブレーン値4,000 cm2/g
CA :CaO/Al2O3/SiO2=50/40/10、ブレーン値4,000 cm2/g
石膏 :無水石膏、ブレーン値4,000 cm2/g
硬化遅延剤:クエン酸、市販品
【0044】
<測定方法>
粘度 :B型粘度計で測定。
フロー値 :JHS A 313、コンシステンシー試験方法のシリンダー法に準じた(φ80×80mm)。
圧縮強度 :モルタルを型枠に詰めて4cm×4cm×16cmの成形体を作製し、材齢3日と28日の圧縮強度をJIS R 5201に準じて測定した。
【0045】
【表1】

【0046】
表1から、本発明により、粘度が低く、良好なフロー値が得られることが判る。
本エマルジョンをA剤に配合した場合は、A剤の粘度が高くなり、また、B剤と混合する際の増粘効果が低下することが判る。
【0047】
実験例2
A剤は、セメント100部と水60部とし、B剤の本エマルジョンの固形分換算の量を、セメント100部に対して、表2に示すように変化させ、セメント100部に対して、増量材70部、凝結促進剤5部、硬化遅延剤0.05部、及び水80部としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表2に併記する。
【0048】
【表2】

【0049】
表2から、本発明により、粘度が低く、良好なフロー値が得られることが判る。
【0050】
実験例3
A剤は、セメント100部と水60部とし、B剤の増量材を、セメント100部に対して、表3に示すように変化させ、セメント100部に対して、本エマルジョンを固形分換算で0.3部、凝結促進剤5部、硬化遅延剤0.05部、及び水80部としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表3に併記する。
【0051】
<使用材料>
増量材(B):炭酸カルシウム、ブレーン値5,000cm2/g、市販品
増量材(C):高炉スラグ、ブレーン値6,000cm2/g、市販品
増量材(D):硅石粉、ブレーン値5,000cm2/g、市販品
【0052】
【表3】

【0053】
表3から、本発明により、粘度が低く、良好なフロー値が得られることが判る。
【0054】
実験例4
A剤は、セメント100部と水60部とし、B剤の凝結促進剤を、セメント100部に対して、表4に示すように変化させ、セメント100部に対して、本エマルジョンを固形分換算で0.3部、増量材70部、硬化遅延剤0.05部、及び水80部としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表4に併記する。
【0055】
【表4】

【0056】
表4から、本発明により、粘度が低く、良好なフロー値が得られたことが判る。
【0057】
実験例5
A剤は、セメント100部と水60部とし、B剤の硬化遅延剤を、セメント100部に対して、表5に示すように変化させ、セメント100部に対して、本エマルジョンを固形分換算で0.3部、増量材70部、凝結促進剤5部、及び水80部とし、B剤の1時間後の粘度をさらに測定したこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表5に併記する。
【0058】
【表5】

【0059】
表5から、本発明により、粘度が低く、粘度の保持性が良く、良好なフロー値が得られることが判る。
【0060】
実験例6
A剤は、セメント100部と水60部とし、B剤の水の量を、セメント100部に対して、表6に示すように変化させ、本エマルジョンを固形分換算で0.3部、増量材70部、凝結促進剤5部、及び硬化遅延剤0.05部としたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表6に併記する。
【0061】
【表6】

【0062】
表6から、本発明により、粘度が低く、良好なフロー値が得られることが判る。
【0063】
実験例7
A剤は、セメント100部と水60部とし、A剤とB剤の混合割合を表7に示すように変化させたこと以外は実験例1と同様に行った。結果を表7に併記する。
【0064】
【表7】

【0065】
表7から、本発明により、配合比率に多少のバラツキが生じても、粘度が低く、良好なフロー値が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のセメント組成物を使用することにより、B剤を圧送する際の特殊なポンプが不要となり、A剤とB剤の等量混合が可能になることで、施工時の材料管理が楽になり、配合ミスを減らすことができるため、護岸の吸い出し防止やトンネルの裏込めに極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A剤とB剤から構成され、A剤は、セメントと、セメント100質量部に対して、40〜150質量部の水からなるセメントミルクであり、B剤は、セメント100質量部に対して、アクリル酸エステル共重合体エマルジョンが固形分換算で0.1〜0.7質量部、増量材が20〜200質量部、カルシウムアルミネートと石膏からなる凝結促進剤が1〜30質量部、硬化遅延剤が0.01〜1質量部、及び水が50〜150質量部からなる増粘剤であり、A剤とB剤を容量比45:55〜55:45の混合割合で混合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
【請求項2】
前記増量材が、石炭灰又は炭酸カルシウムであることを特徴とする請求項1に記載のセメント組成物の製造方法。
【請求項3】
さらに、減水剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のセメント組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−95633(P2013−95633A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239850(P2011−239850)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】