説明

セラミックを形成する結晶化可能なガラスを有するハニカムセメントおよびそのための方法

セラミックハニカム体のためのセメントを開示する。これらのセメントを焼成されたセラミックハニカム体に施用し、次いで焼成して差し支えなく、あるいは、焼成されていない(未焼成の)ハニカム体に施用した後に未焼成のハニカム体と共に焼成することもできる。セメントは、ハニカム体における1つ以上のセルを塞栓するのに使用することができ、ここでセメントは未焼成または焼成されたセラミックハニカム体に挿入した後に、焼成することができる。セメントを用いたセラミックハニカム物品の製造方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、「セラミックを形成する結晶化可能なガラスを有するハニカムセメントおよびそのための方法(Honeycomb Cement with Ceramic-Forming Crystallizable Glass and Method Therefor)」という発明の名称で2007年11月30日に出願の米国仮特許出願第61/004,891号の利益を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、ハニカム体の外周に外層を形成するため、またはハニカム体に塞栓を形成するためなど、セラミックハニカム体と共に使用するのに適したセメントに関する。
【背景技術】
【0003】
炭化水素ガス、ガソリン、またはディーゼル燃料などの炭化水素燃料を利用する内燃機関システムによって放出される排気ガスは、深刻な大気汚染を生じうる。これらの排気ガス中の多くの汚染物質の中には、炭化水素および酸素含有化合物があり、後者は窒素酸化物(NOx)および一酸化炭素(CO)を含む。自動車産業は、長年にわたり、自動車エンジンシステムから放出されるガス量の低減化を試みてきた。ハニカム構造が実施されている。外層または「人工外皮」または「後施用外皮」は、ハニカム体を押出成形した後で、ハニカム体の外周に施用することができる。これらの外皮または層は、ハニカム体と一緒には共押出しされず、ハニカム体を押出成形した後で、施用される。
【0004】
乾燥または硬化させるのに低い温度しか必要としないが、乾燥または硬化後に900℃を超える温度に曝露すると軟化および脆弱化し始めうる、既知の乾燥器で硬化させたコーティングから形成された外皮を有するハニカム構造の触媒化の後には、外皮の亀裂、分離、および層間剥離などの欠陥が見られる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様では結晶化するガラスフリットを含む、ハニカム体のためのセメントが本明細書に開示される。結晶化するガラスフリットは、セラミック形成成分を含む複数の無機成分と混合される。セメント混合物は、水、および有機結合剤、例えば、セルロースエーテルまたはメチルセルロースのようなセルロース性の結合剤、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイドなど、溶媒を含むことがさらに好ましい。ハニカム体は、例えば、セラミック形成前駆体、または焼成セラミック材料を含む、未焼成のものでありうる。未焼成のハニカム体およびその上に施用されるセメント混合物の外層は、同時に、外層およびハニカム体にセラミックを同時に形成するのに十分に焼成されうる。セラミックおよびその上に施用されるセメント混合物の外層を含むハニカム体は、同時に、外層にセラミックを形成するのに十分に焼成されうる。
【0006】
別の態様では、ハニカム構造の製造方法が本明細書に開示され、該方法は、
ハニカム体の外表面にセメント混合物を施用して、外側のハニカム体上に前記セメント混合物が施用された外層を形成し、ここで前記セメント混合物は、セラミック形成成分を含む複数の無機成分と、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子とを含み、次に、
前記ガラス粒子から第1の結晶相を有する第1のセラミック材料を形成するのに十分な時間および1つ以上の温度で、前記施用された外層を備えた前記ハニカム体を第1の焼成雰囲気に曝露する、
各工程を有してなる。
【0007】
別の態様では、ガラスに結合したセラミックの外層を有するセラミックハニカム体を備えたハニカム構造が本明細書に開示される。
【0008】
別の態様では、セラミックハニカム物品の製造方法が本明細書で開示され、該方法は、
複数のセルを画成する交差するセラミック壁の未焼成のセラミック形成マトリクスを提供し、
外側のセラミック形成層をマトリクスの外表面に施用し、ここで前記外層はセラミックを形成する結晶化するガラスフリットを含み、
前記マトリクスおよび同時に外層を同時に焼成してセラミックハニカム物品を形成する各工程を有してなる。
【0009】
本明細書に開示されるセメント混合物は、好ましくは1000℃を超える温度まで、さらに好ましくは1200℃を超える温度まで、なおさらに好ましくは1300℃を超える温度まで加熱され、一部の実施の形態では1380℃を超え、他の実施の形態では1400℃以上である。
【0010】
本発明の追加の特性および利点は、以下の詳細な説明に記載されるであろうし、ある程度はその説明から当業者に容易に明らかとなり、あるいは、以下の詳細な説明を含む明細書、特許請求の範囲、ならびに添付の図面に記載される本発明を実施することによって認識されるであろう。
【0011】
前述の概要および後述する詳細な説明は、本発明の実施の形態を提供し、特許請求の範囲に記載される本発明の本質および特性を理解するための概観または枠組みを提供することが意図されているものと理解されたい。添付の図面は、本発明のさらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に取り込まれ、その一部を構成する。図面は、本発明のさまざまな実施の形態および態様を例証し、その説明とともに特許請求の範囲に記載される本発明の原理および作業を説明する役割をする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本明細書に開示されるセメント混合物に用いられるガラスフリット番号1の典型的な焼結および結晶化温度を示す示差走査熱量測定(DSC)プロット。
【図2】本明細書に開示されるセメント混合物に用いられるガラスフリット番号2の典型的な焼結および結晶化温度を示す示差走査熱量測定(DSC)プロット。
【図3】フリット含量に対するさまざまなセメントの曲げ強度を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付の図面に示す本開示の実施の形態、実施例および態様について、以下に詳細に述べる。
【0014】
本明細書では「セラミック前駆体成分」という用語は、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットなどの無機材料、および、焼成の際に、結合剤、溶媒、滑剤などと共に、少なくとも一部がコージエライトなどの所望のセラミック相を形成する、バッチ材料(たとえば、MgO、Al23、SiO2など)を含む。
【0015】
本明細書では「焼結開始温度」という用語は、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットが焼結し始める温度のことをいう。
【0016】
本明細書では「結晶化温度」という用語は、少なくとも1つのセラミック相がセラミックを形成する結晶化するガラスフリットから形成される、すなわち、それらから結晶化する温度のことをいう。
【0017】
1つの態様では、第1の主要結晶相を有する第1のセラミック材料からなるハニカム体のためのセメント混合物が本明細書に開示され、前記セメント混合物は、セメント混合物の焼成の際に第2の主要結晶相を形成する能力のあるセラミック形成成分と、セメント混合物の焼成の際に第2のセラミック材料を形成する能力のある、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子とを含む複数の無機成分を有する第2のセラミック材料を含む。
【0018】
一部の実施の形態では、複数の無機成分はセラミック成分を含みうる。セラミック成分は、第2の主要結晶相を含みうる。一部の実施の形態では、セラミック成分はコージエライトからなる。他の実施の形態では、複数の無機成分はセラミック成分を含まない。一部の実施の形態では、複数の無機成分はコージエライトを含まない。第1および第2の結晶相は同一である、すなわち、同一タイプのセラミックであることが好ましい。例えば、一部の実施の形態では、第1および第2の結晶相は両方ともコージエライトである。一部の実施の形態では、第1の結晶相はコージエライトである。一部の実施の形態では、セラミック形成成分および結晶化可能なガラス粒子は、焼成すると、同一の結晶相を有するセメントを、ハニカム体として形成する。一部の実施の形態では、セラミック形成成分は酸化物源を含み、これらの実施の形態の一部では、セラミック形成成分はコージエライト形成成分を含み、これらの実施の形態の一部では、セラミック形成成分はMg、Al、およびSiの酸化物源を含み、これらの実施の形態の一部では、セラミック形成成分は、MgO、Al23、およびSiO2を含む。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、セメント混合物中に約2%〜約8重量%の量で存在する。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ土類金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、セメント混合物は、15重量%未満、および他の実施の形態では10重量%未満のアルカリ土類金属酸化物を含み、一部の実施の形態では、セメント混合物は5重量%未満のアルカリ土類金属酸化物を含む。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、セメント混合物は2重量%未満、および他の実施の形態では1重量%未満のアルカリ金属酸化物を含む。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、重量%で、15%〜25%のMgO、18%〜30%のAl23、および45%〜65%のSiO2の酸化物組成からなる。
【0019】
別の態様では、未焼成のハニカム体の焼成の際に、第1の結晶相を有する第1のセラミック材料を含むセラミックハニカム体に形成する能力のある、未焼成のハニカム体と共に使用するのに適したセメント混合物が本明細書に開示され、ここで、未焼成のハニカム体はセラミック形成成分を含む。セメント混合物は、セメント混合物を焼成する際に、セラミック形成成分を形成する能力のある第2の結晶相を有する第2のセラミック材料と、セメント混合物を焼成する際に、第2の結晶相を有する第2のセラミック材料を形成する能力のあるセラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子とを含む複数の無機成分を含む。
【0020】
一部の実施の形態では、未焼成のハニカム体は、コージエライト形成成分からなる。一部の実施の形態では、セラミック形成成分はコージエライト形成成分である。一部の実施の形態では、複数の無機成分はセラミック成分を含む。一部の実施の形態では、セラミック成分は第2の主要結晶相を含む。一部の実施の形態では、セラミック成分はコージエライトからなる。一部の実施の形態では、複数の無機成分はセラミック成分を含まない。一部の実施の形態では、複数の無機成分はコージエライトを含まない。一部の実施の形態では、セラミック形成成分および結晶化可能なガラス粒子は、焼成されたときに、ハニカム体として、同一の結晶相を有するセメント混合物を形成する。一部の実施の形態では、セラミック形成成分は酸化物源を含む。一部の実施の形態では、セラミック形成成分はコージエライト形成成分を含む。一部の実施の形態では、セラミック形成成分はMg、Al、およびSiの酸化物源を含む。一部の実施の形態では、セラミック形成成分はMgO、Al23、およびSiO2を含む。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、セメント混合物中に約2%〜約8重量%の量で存在する。一部の実施の形態では、セメント混合物はさらにアルカリ土類金属酸化物からなる。
【0021】
一部の実施の形態では、セメント混合物は5重量%未満のアルカリ土類金属酸化物を含む。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、重量%で、15%〜25%のMgO、18%〜30%のAl23、および45%〜65%のSiO2の酸化物組成からなる。
【0022】
別の態様では、ハニカム構造の製造方法が本明細書で開示され、該方法は、
ハニカム体の外表面にセメント混合物を施用して、セメント混合物の外層を有するハニカム体からなる、コーティングされたハニカム体を形成し、前記セメント混合物は、セラミック形成成分を含む複数の無機成分と、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子とを含み、
その後、ガラス粒子から、第1の結晶相を有する第1のセラミック材料を形成させるのに十分な時間および1つ以上の温度で、前記コーティングされたハニカム体を第1の焼成雰囲気に曝露する、
各工程を有してなる。
【0023】
一部の実施の形態では、曝露工程の間に、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子が焼結し、その後、第1のセラミック材料が焼結されたガラス粒子から結晶化する。これらの実施の形態の一部では、第1のセラミック材料は、第1の焼成雰囲気における温度が、ガラス粒子が焼結し始める温度よりも200℃を超えて大きい場合に、焼結されたガラス粒子から結晶化する。一部の実施の形態では、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子は、第1の焼成雰囲気における温度が約700℃を超える場合に焼結する。
【0024】
一部の実施の形態では、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子は、第1の温度または外層の温度が約700〜950℃の範囲にあるときに焼結する。一部の実施の形態では、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子は、第1の温度または外層の温度が約700〜920℃の範囲にあるときに焼結する。一部の実施の形態では、第1のセラミック材料は、第1の温度が約920〜1050℃の範囲にあるときに焼結されたガラス粒子から結晶化する。
【0025】
一部の実施の形態では、本方法は、コーティングされたハニカム体を第1の焼成雰囲気に曝露した後に、セラミック形成成分から第2の結晶相を有する第2のセラミック材料を形成させるのに十分な第2の時間および第2の温度で、コーティングされたハニカム体を第2の焼成雰囲気に曝露し、それによってセラミック外層を含むハニカム構造を形成する工程をさらに有してなる。
【0026】
一部の実施の形態では、第2の温度が約1350〜1430℃の範囲である場合、第2のセラミック材料はセラミック形成成分から形成される。一部の実施の形態では、第2の温度が約1380〜1420℃の範囲である場合、第2のセラミック材料はセラミック形成成分から形成される。
【0027】
一部の実施の形態では、第1および第2の結晶相は同一であり、これらの実施の形態の一部では、第1および第2の結晶相はコージエライトである。
【0028】
一部の実施の形態では、ハニカム体は、複数のセラミック形成成分からなり、コーティングされたハニカム体を第2の焼成雰囲気に曝露することで、複数のセラミック形成成分から第3の結晶相を有する第3のセラミック材料を形成させ、これらの実施の形態の一部では、第1、第2、および第3の結晶相はコージエライトである。
【0029】
一部の実施の形態では、ハニカム体は、第3の結晶相を有する第3のセラミック材料からなる、多孔質のハニカム体であり、これらの実施の形態の一部では、第1、第2、および第3の結晶相はコージエライトである。
【0030】
一部の実施の形態では、本方法は、セメント混合物を施用する前に、前記ハニカム体の外側部分を除去して前記ハニカム体の曝露された部分を形成し、その後、前記セメント混合物を前記曝露された部分に施用する工程をさらに有してなる。
【0031】
一部の実施の形態では、本方法は、施用工程前に、複数のセルを画成する交差する壁のマトリクスを押出成形してハニカム体を形成する工程をさらに有してなる。
【0032】
一部の実施の形態では、本方法は、セメント混合物の施用前に、前記ハニカム体を焼成雰囲気に曝露する工程をさらに有してなる。一部の実施の形態では、本方法は、セメント混合物の施用前に、前記ハニカム体のセルの少なくとも一部を塞栓する工程をさらに有してなり、これらの実施の形態の一部では、本方法は、塞栓後かつセメント混合物の施用前に、前記ハニカム体を焼成雰囲気に曝露する工程をさらに有してなる。
【0033】
別の態様ではハニカム体のためのセメント混合物が本明細書で開示され、セメント混合物は、1つ以上のセラミック形成成分、1つ以上のセラミック成分、およびそれらの組合せからなる群より選択される複数の無機成分と、焼成の際に、セラミック材料の結晶相を形成する能力がある、結晶化可能なガラス粒子とを含む。一部の実施の形態では、前記1つ以上のセラミック成分の少なくとも1つは、前記結晶化可能なガラス粒子が焼成されたときに形成される前記セラミック材料と同一の結晶相を含む。一部の実施の形態では、前記結晶化可能なガラス粒子が複数のセラミック形成成分を含み、一部の実施の形態では、複数のセラミック形成成分は酸化物源を含む。一部の実施の形態では、前記複数のセラミック形成成分がコージエライト形成成分を含み、これらの実施の形態の一部では、複数のセラミック形成成分はMg、Al、およびSiの酸化物源を含み、これらの実施の形態の一部では、複数のセラミック形成成分はMgO、Al23、およびSiO2を含む。一部の実施の形態では、1つ以上のセラミック成分はコージエライトを含む。一部の実施の形態では、1つ以上のセラミック形成成分はコージエライト形成成分を含む。一部の実施の形態では、ガラス粒子はセメント混合物中に約2%〜約8重量%の量で存在する。一部の実施の形態では、セメント混合物はさらにアルカリ土類金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、セメント混合物は5重量%未満のアルカリ土類金属酸化物を含む。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、重量%で、15%〜25%のMgO、18%〜30%のAl23、および45%〜65%のSiO2の酸化物組成からなる。
【0034】
別の態様では、ハニカム物品のためのセメント混合物が本明細書に開示され、前記セメント混合物は、複数のセラミック前駆体成分を含み、前記セラミック前駆体成分の少なくとも1つは、セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子を含む。一部の実施の形態では、ガラス粒子はコージエライト前駆体材料からなる。一部の実施の形態では、ガラス粒子はMgO、Al23、およびSiO2で構成される。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにセラミック(すなわち、すでに焼成された)成分からなっている。一部の実施の形態では、焼成されたセラミック成分はコージエライトである。一部の実施の形態では、前記ガラス粒子が約700℃を超える焼結開始温度と、前記焼結開始温度を超える約200℃よりも高い結晶化温度とを有する。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、セメント混合物中に約2%〜約8重量%の量で存在する。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ土類金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、セメント混合物は5重量%未満のアルカリ土類金属酸化物を含む。一部の実施の形態では、セメント混合物は、さらにアルカリ金属酸化物からなる。一部の実施の形態では、ガラス粒子は、重量%で、15%〜25%のMgO、18%〜30%のAl23、および45%〜65%のSiO2の酸化物組成からなる。
【0035】
さらに別の態様では、複数のセルを画成する交差する壁の未焼成のハニカムマトリクス、および該マトリクスの外表面に配置された外層を含むハニカム構造が本明細書に開示され、前記外層は本明細書に開示されるセメント混合物からなる。未焼成のハニカムマトリクスは押出成形した構造体であり、かつ外層はマトリクスと共押出成形されないことが好ましい。
【0036】
さらに別の態様では、複数のセルを画成する交差する壁のセラミックハニカムマトリクスを含むハニカム構造が本明細書に開示され、ここで本明細書に開示されるセメント混合物が前記複数のセルの少なくとも一部に配置される。
【0037】
別の態様では、セラミックハニカムマトリクスおよび外層を含むハニカム構造が本明細書に開示され、前記外層は、本明細書に開示されるセメント混合物から形成されたガラスに結合したセラミックを含み、ここで前記外層はハニカムマトリクスに結合される。ハニカムマトリクスの少なくとも内側部分はガラスを含有しないことが好ましい。
【0038】
別の態様では、セラミックハニカムマトリクスおよび複数の塞栓を含むハニカム構造が本明細書に開示され、前記塞栓は、本明細書に開示されたセメント混合物から形成されたガラスに結合したセラミックを含み、ここで前記塞栓はハニカムマトリクスに結合される。ハニカムマトリクスの少なくとも内側部分はガラスを含有しないことが好ましい。
【0039】
別の態様では、セラミックハニカムマトリクスおよび、該マトリクス上に配置された外層を含むハニカム構造が本明細書に開示され、前記外層はガラスに結合したセラミックを含む。ハニカムマトリクスの少なくとも内側部分はガラスを含有しないことが好ましい。
【0040】
別の態様では、セラミックハニカムマトリクスおよび該マトリクス上に配置された、ガラスに結合したセラミック層を含むハニカム構造が本明細書に開示される。ハニカムマトリクスの少なくとも内側部分はガラスを含有しないことが好ましい。
【0041】
別の態様では、複数のセルを画成する複数の壁を有するセラミックハニカムマトリクスを含むハニカム構造、および、少なくとも1つのセルに配置されたガラスに結合したセラミックの塞栓が本明細書に開示され、ここで、ハニカムマトリクスの少なくとも内側部分はガラスを含有しない。
【0042】
本明細書では、第2の複数のセラミック前駆体成分の少なくとも1つ(タルク、粘土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、有機結合剤、および溶媒などの無機セラミック形成成分に加えて)は、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットである。我々は、焼結、および、ハニカムマトリクスの壁への結合におけるガラスフリット助剤は、焼成の際に、所望の相を結晶化し、改善されたセメント(外層または外皮またはコーティング、または塞栓など)を提供することを見出した。一部の実施の形態では、ガラスフリットはコージエライト前駆体材料を含みうる。他の実施の形態では、ガラスフリットは、表1に例証するように、MgO、Al23、およびSiO2を含みうる。図1〜2にそれぞれ「S」および「C」と記載された線によって大まかに示すように、ガラスフリットは、約700℃を超える焼結開始温度、および前記焼結開始温度を超える約200℃よりも高い結晶化温度を有しなければならない。一部の実施の形態では、ガラスフリットはアルカリ土類金属酸化物を含んでよく、ここで、アルカリ土類金属酸化物はMgO、CaO、およびそれらの組合せからなる群より選択される。別の態様では、ガラスフリットはアルカリ金属酸化物を含んでよく、ここで、アルカリ金属酸化物は、重量%で、0.01%〜2.0%の量で存在し、アルカリ金属酸化物はNa2O、K2O、およびそれらの組合せからなる群より選択される。
【表1】

【0043】
一部の実施の形態では、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットを含む外層は、焼成セラミック材料をさらに含み、ここで焼成セラミック材料はコージエライトである。一部の実施の形態では、ガラスフリットは焼結開始温度よりも約200℃〜300℃高い結晶化温度を有する。一部の実施の形態では、ガラスフリットは、外層に約2%〜約8重量%の量で存在する。
【0044】
セラミックハニカム物品を製造するための別の方法が本明細書に開示され、該方法は、
複数のセルを画成する交差するセラミック壁の未焼成のセラミック形成マトリクスを提供し、セラミック形成外層をマトリクスの外表面に施用し、
マトリクスおよび外層を同時に焼成してセラミックハニカム物品を形成する、
各工程を有してなる。未焼成のセラミック形成マトリクスは押出成形した構造体であるが、セラミック形成外層はマトリクスとは共押出成形されない。
【0045】
一部の実施の形態では、セラミック前駆体成分からなるセラミック形成外層は、上述のように、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットを含む。焼成されたセラミック相は、焼成の際に、外層に、セラミック前駆体成分から形成される。さらには、マトリクスは、焼成後に、第1のセラミック主要相を含み、外層は、焼成後に、第2のセラミック主要相を含み、各相は同一であって差し支えなく、ここで第1のセラミック主要相はコージエライトである。
【0046】
一部の実施の形態では、本明細書に記載されるセメントは、焼成後に、MgO、Al23、およびSiO2を含む。一部の実施の形態では、外層は、焼成後に、重量%で、13%〜15%のMgO、34%〜36%のAl23、および50%〜52%のSiO2の酸化物組成を含む。一部の実施の形態では、セメントは、焼成後に、固形ロッドの円形断面上で測定して、6895kPa(1000ポンド/平方インチ(psi))を超える破壊係数、好ましくは7585kPa(1100psi)を超える、さらに好ましくは10340kPa(1500psi)を超える、なおさらに好ましくは13790kPa(2000psi)を超える破壊係数を示し、一部の実施の形態では17240kPa(2500psi)をも超える破壊係数を示す。より高い曲げ強度は、改善された耐熱衝撃性を提供することが予想される。
【実施例】
【0047】
本発明は、次の実施例によってさらに明らかになるであろう。
【0048】
タルク、粘土、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、セラミックを形成する結晶化するガラスフリット(フリット1またはフリット2)、および、随意的に、コージエライト粉末をメトセルロース(methocellulose)結合剤(1重量%、無機物に上乗せ添加)および水(45重量%、無機物に上乗せ添加)と合わせて、ガラスフリット含有セメントをペーストの形態で生成する。フリット1は、重量%で、0.53%のNa2O、0.12%のK2O、14.8%のMgO、6.99%のCaO、1.26%のB23、18.10%のAl23、および54.10%のSiO2の酸化物組成を含んでいた。フリット2は、重量%で、1.13%のNa2O、0.20%のK2O、20.2%のMgO、5.50%のCaO、1.05%のB23、23.50%のAl23、および44.90%のSiO2の酸化物組成を含んでいた。ペーストを、焼成されていない(未焼成の)ディーゼルフィルタのハニカムマトリクスにその上のコーティングとして施用し、一般に200〜300℃および約1000℃に温度を維持し、前記マトリクスと共に約1400℃まで共焼成した。表2は、ガラスフリット含有セメントの6つの実施例(実施例2〜7)およびガラスフリットを含まないセメントの1つの例の配合、焼成後の酸化物組成、焼成された結晶相、および、それぞれ対応する焼成セメント組成物の曲げ強度の値(psi単位における破壊係数)を記載している。
【0049】
表2は、セラミックを形成する結晶化するガラスフリットの添加が、本明細書に開示されるセメントから形成された、焼成セラミック・コーティングまたは塞栓の強度を増大させることを示唆している。セメントは約1400℃に至る温度で焼成され、1000℃までのダイライトメーター試験ではスランプまたは粘性流が見られなかったことから、少なくとも1000℃までのセメント特性は安定であった。表2の実施例に示すように、セメントの焼成後に形成されたセラミックの第1相すなわち主要相はコージエライトであり、微量相にはスピネルおよび/またはサフィリンが含まれていた。
【0050】
図3は、フリット含量に対する、表2における実施例1の0%のガラスフリット、ならびに実施例2、3、4、および5のガラスフリット含有セメントで形成された、コーティングの曲げ強度を示す。
【表2】

【0051】
ガラス粒子は、重量%で、約15%〜25%のMgO、約18%〜30%のAl23、および約45%〜65%のSiO2の酸化物組成からなる。ガラス粒子は、所望のセラミック相には見られない5モル%以下のアルカリ土類酸化物を含むことが好ましい。ガラス粒子は少なくとも50モル%の所望のセラミック相を提供する組成、すなわち、セメント混合物に添加される他の材料が寄与するモル%は含めない組成からなることが好ましい。表3は、表2で採用された結晶化可能なガラス粒子、すなわち、フリット番号1および2の組成を記載している。
【表3】

【0052】
本発明の精神および範囲を逸脱することなく、本発明に対してさまざまな変更および変形をなしうることは、当業者には明らかであろう。よって、本発明は、それらが添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にあることを条件として、本発明の変更および変形にも及ぶことが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のセラミック形成成分、1つ以上のセラミック成分、およびそれらの組合せからなる群より選択される複数の無機成分と、
焼成の際にセラミック材料の結晶相を形成する能力がある、結晶化可能なガラス粒子と、
を含む、ハニカム体のためのセメント混合物。
【請求項2】
前記1つ以上のセラミック成分の少なくとも1つが、前記結晶化可能なガラス粒子が焼成されたときに形成される前記セラミック材料と同一の結晶相を有することを特徴とする請求項1記載のセメント混合物。
【請求項3】
前記結晶化可能なガラス粒子が複数のセラミック形成成分を含むことを特徴とする請求項1記載のセメント混合物。
【請求項4】
前記複数のセラミック形成成分がコージエライト形成成分を含むことを特徴とする請求項3記載のセメント混合物。
【請求項5】
前記ガラス粒子が約700℃を超える焼結開始温度と、前記焼結開始温度を超える約200℃よりも高い結晶化温度とを有することを特徴とする請求項1記載のセメント混合物。
【請求項6】
ハニカム構造の製造方法であって、
ハニカム体の外表面にセメント混合物を施用し、前記ハニカム体の上に前記セメント混合物が施用された外層を形成し、ここで前記セメント混合物が、
セラミック形成成分を含む複数の無機成分、および
セラミックを形成する結晶化可能なガラス粒子を含み、
次いで、
前記ガラス粒子から第1の結晶相を有する第1のセラミック材料を形成するのに十分な時間および1つ以上の温度で、前記施用された外層を備えた前記ハニカム体を第1の焼成雰囲気に曝露する、
各工程を有してなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−505273(P2011−505273A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535976(P2010−535976)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/013012
【国際公開番号】WO2009/073096
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】