説明

セラミックグリーンシート用バインダー

【課題】適度な引張強度・伸びを有し、キャリアシート剥離時に伸びが発生しない、かつ泡の少ないグリーンシートを得ることができるセラミックグリーンシート用バインダーを提供することを課題としている。
【解決手段】(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルレート単量体を3重量%以上、(b)分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体を1重量%以上、(c)アルキル(メタ)アクリレート単量体を共重合(ただし、単量体の合計を100重量%とする)して得られる共重合体であり、かつ、(a)+(b)の合計が20重量%以上であり、かつ、ガラス転移温度が、40℃以上60℃以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート用バインダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック成形に使用されるバインダー樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックグリーンシートはセラミック無機粉末に分散剤、溶剤、可塑剤、バインダー等を添加し所要時間混練してスラリーを得、これをキャリアフィルム上にドクターブレードで厚みを調整してキャストし乾燥して製造される。その後得たグリーンシートを所定の寸法・形状に打ち抜き・切断などの加工を施し焼成することにより所望のセラミックシートを得る。
【0003】
しかし、キャリアシートとしてPETフィルムを用いて作成したグリーンシートは、バインダーや可塑剤を含んでいるためにキャリアシートに付着し、グリーンシートをキャリアシートから剥離またはキャリアシートをグリーンシートから剥離する際にグリーンシートが変形・破れるという問題があった。また、打ち抜きなどの加工の際に金型から離型しやすいことも求められている。
【0004】
また一方、セラミックスラリーをキャリアフィルム上にキャストする際に、スラリーの脱泡不良または移送時の気泡の混入等によりスラリー中に泡が存在し、キャスト・乾燥後のシート上に欠陥を作り問題となることがある。こうした問題に対して泡抜け性、消泡性や破泡性のよいスラリーが求められている。
【0005】
従来からこれらの用途においては、セラミック無機粉末に粒経や粒度分布の調整された原料粉末を使用し、バインダーとしてはポリビニルブチラール等のブチラール樹脂やエチルセルロースなどのセルロース系樹脂、(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル系樹脂やポリビニルアルコール等が用いられ工業化されている。
【0006】
しかし、上記の従来のバインダーでは前記のような剥離の際のグリーンシートの変形に耐えるシートを作成することが十分にできていない。
【0007】
【特許文献1】特開2000−233975号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、適度な引張強度・伸びを有し、キャリアシート剥離時に伸びが発生しない、かつ泡の少ないグリーンシートを得ることができるセラミックグリーンシート用バインダー樹脂を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明にかかるセラミックグリーンシート用バインダー樹脂は、水酸基を含有する(メタ)アクリルレート単量体と、分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体と、アルキル(メタ)アクリレート単量体を特定量で混合し、共重合して得られる共重合体であり、かつ、ガラス転移温度が、40℃以上60℃以下であることを特徴とする。なお、各重合性単量体の混合比は、(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルレート単量体を3重量%以上、(b)分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体を1重量%以上(ただし、単量体の合計を100重量%とする)であり、かつ、(a)+(b)の合計が20重量%以上とする。また、上記共重合体の重量平均分子量は、20万以上50万以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセラミックグリーンシート用バインダーは、上述の構成よりなり、セラミック粉末、可塑剤、溶剤等とともにセラミックグリーンシートに使用した際に、適度な引張物性を持ちかつ泡による欠陥の少ない、優れたグリーンシートを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のセラミックグリーンシート用バインダーは、水酸基を含有する(メタ)アクリルレート単量体と、分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体と、アルキル(メタ)アクリレート単量体を特定量で混合し、共重合して得られる共重合体であり、かつ、ガラス転移温度が、40℃以上60℃以下であることを特徴とする。なお、各重合性単量体の混合比は、(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルレート単量体を3重量%以上、(b)分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体を1重量%以上(ただし、単量体の合計を100重量%とする)であり、かつ、(a)+(b)の合計が20重量%以上とする。また、上記共重合体の重量平均分子量は、20万以上50万以下であることが好ましい。
【0012】
本発明のバインダーは、(a)水酸基を有する(メタ)アクリレート単量体、(b)窒素原子を含有する重合性単量体、(c)アルキル(メタ)アクリレートの混合物を共重合して得られる共重合体である。上記の単量体混合物における(a)の割合は、(a)〜(c)の合計を100重量%とすると、3重量%以上、50重量%以下が好ましく、中でも5重量%以上、30重量%以下が特に好ましい。(a)の割合が3重量%以下では適度な引張強度が得られず、50重量%以上では引張伸びが不足しシートが破れやすくなる恐れがある。また、50重量%以上ではスラリーの泡抜け性も悪化する恐れがある。同様に、上記の単量体混合物における(b)の割合は、(a)〜(c)の合計を100重量%とすると、1重量%以上、80重量%以下が好ましく、中でも5重量%以上、50重量%以下が特に好ましい。(b)の割合が80重量%以上では適度な引張強度が得られず、1重量%以下では引張伸びが不足しシートが破れやすくなったり、泡の数が多くなる恐れがある。また、(a)と(b)の合計は、20重量%以上、80重量%以下であることが望ましく、中でも25重量%以上、50重量%以下が特に好ましい。
【0013】
本発明で使用する水酸基を含有する(メタ)アクリルレート単量体としては、分子中に少なくとも1個の水酸基を有するものであれば任意に選択して使用できるが、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、中でも炭素数2〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが特に好ましい。これらは単独で使用しても、あるいは2種以上を併用しても構わない。好適なヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0014】
次に、本発明で使用する分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体としては、分子内に少なくとも1個の窒素原子を有するものであれば任意に選択して使用できるが、分子中にアミノ基を含有する単量体が好ましい。分子中にアミノ基を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアミンの様な1級アミンを含有するもの;N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−フェニルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド等の様な2級アミンを含有するもの;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドンのような3級アミンを含有するものやまたこれらを4級化したもの等が挙げられ、これらは単独で使用しても、あるいは必要に応じ2種以上を併用しても構わない。
【0015】
本発明のバインダーに使用されるアルキル(メタ)アクリレートの割合は、重合性単量体の合計を100重量%とすると、そのうち20重量%以上、80重量%以下が好ましく、50重量%以上、75重量%以下がさらに好ましい。50重量%以下では熱分解性が低下し、一方、75重量%を超えると、グリーンシートの可とう性が低下したり、硬くなってクラックや割れが生じやすくなる恐れがある。上記のアルキル(メタ)アクリレートは、炭素数1〜20、好ましくは1〜8のアルキル、またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレートであり、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
本発明におけるバインダーのガラス転移温度は、上限60℃、下限40℃が好ましく、下限は50℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が40℃より低い場合には、キャリアフィルムから剥離する際にグリーンシートが伸びて変形してしまう恐れがある。一方、ガラス転移温度が60℃を超えると、グリーンシートが硬くなりクラックや割れが生じやすくなる恐れがある。
【0017】
バインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、バインダーを構成する各成分のホモポリマーのガラス転移温度から、下記の式1により計算することができる。
(式1) :100/Tg=Wa/Tga + Wb/Tgb + Wc/Tgc
a,b,c:バインダーを構成する各単量体成分
Tg:ガラス転移温度(絶対温度)
Tga〜c:各単量体成分のホモポリマーのガラス転移温度(絶対温度)
W:各単量体成分の重量分率(%)
本発明におけるバインダーとなる上記共重合体の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、20万以上、50万以下であることが好ましい。分子量が20万以下であると、グリーンシートに十分な強度が得られず、シートが破れたり、バインダーの多量添加が必要となる恐れがある。また、重量平均分子量が50万を超えると、粘度が上昇して溶解性が低下し、また脱バインダー性の低下が懸念される。重量平均分子量の下限は、25万がより好ましく、30万が最も好ましい。また重量平均分子量のより好ましい上限値は45万であり、40万がさらに好ましい。
【0018】
本発明におけるバインダーの重合方法としては、一般的な重合反応を用いればよく、例えば、塊状重合(バルク重合)、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられる。上記重合反応の際の反応温度や反応時間等の反応条件は適宜設定すればよい。また、上記重合反応は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0019】
上記重合反応においては、重合開始剤を使用することが好ましい。上記重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物、2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0020】
本発明のバインダーのスラリー組成における使用量としては、セラミックス粉末100重部に対し、10部〜30部が好ましく、15部〜25部がより好ましい。
【0021】
上記バインダーを用いて作成されるセラミックスラリーは、公知の方法でセラミック粉末に溶媒とバインダーをボールミル等で混練することにより調製されるが、必要に応じて分散剤、可塑剤、消泡剤、レベリング性向上剤等を加えても良い。
【0022】
上記バインダーと組み合わされて使用されるセラミックス粉末は、具体的には、例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニアなどの酸化物や、Y,Ce,Sm,Pr,Scのうち1以上で安定化されたジルコニア酸化物、ビスマス、ガリウム、インジウムの酸化物やこれらにアルカリ土類金属や希土類金属をドープまたは添加したもの等が挙げられる。これらの粉末は、平均粒径が0.1〜1μmのものが好ましく、特に0.2〜0.8μmの粉末がより好ましい。
【0023】
溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ジブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、オレイルアルコール等が挙げられ、単独あるいは2種以上を混合して使用される。
【0024】
分散剤としては、グリセリン、ソルビタン等の多価アルコールエステル系、ポリエーテルポリオール系やポリエチレンイミン等のアミン系、ポリアクリル酸等の高分子電解質、イソブチレンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体およびそのアミン塩等が用いられる。
【0025】
また可塑剤としては、ポリエチレングリコールの誘導体やフタル酸エステル系が用いられるが、本発明の樹脂に対して、フタル酸エステル系の可塑剤を使用することが好ましく、特にジブチルフタレート、ジオクチルフタレートが好適である。可塑剤の使用量は、セラミック粉末100重量部に対し、15重量部以下が好ましく、10重量部以下が特に好ましい。
【0026】
セラミック粉末とバインダー、溶剤や可塑剤等必要に応じ加えられた添加剤が均一に混合されたスラリーは、次いで減圧脱泡して粘度を適度な範囲に調整し、一定の隙間を有するドクターブレードでキャリアフィルム上にシート状にキャスティングした後、40〜150℃の温度で、一定あるいは順次連続的に昇温して加熱乾燥することによりセラミックグリーンシートを得る。
【0027】
基材として用いるキャリアフィルムとしては、高分子基材、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート等である。これらの基材は、必要に応じて、スラリー塗工面に離型剤等を塗布したものを用いても良い。
【0028】
上記セラミックグリーンシートの厚みは、0.1mm〜1mm程度が適当であり、100〜900μmが好ましい範囲である。また、上記グリーンシートは、そのまま焼成して平坦なセラミックシートとしてもよいし、機械的作業または手作業によって3次元に成形した後焼成してもよく、特に限定されない。このようにして成形された前記グリーンシートの破断強度は、以上、以下とすることができる(ただし、破断伸度〜%)。このような破断強度を有するグリーンシートは、キャリアフィルム剥離時や成形加工後にシートを金型から外す際に形態を保持するに十分な特性を持つ。上記セラミックグリーンシートの引張物性の測定方法については、例えば、JIS K−7127にかかれた条件で測定する方法が挙げられる。具体的には、例えば、厚さ600〜900μmのグリーンシートをダンベル型に切り抜き、インストロンにて100mm/分の速度で測定する。グリーンシートの厚さや引張速度等は必要に応じて適宜調整すればよい。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下ことわりのない場合、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」をそれぞれ示すものとする。
【0030】
実施例1
温度計、冷却管、ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、メタクリル酸メチル55部と、水酸基を含有する単量体としてメタクリル酸2−ヒドロキシエチル2.5部、窒素原子含有の単量体としてメタクリル酸ジメチルアミノエチル25部、メタクリル酸シクロヘキシル10部、アクリル酸2−エチルヘキシル7.5部、トルエン39部、酢酸エチル61部を仕込んだ後、反応器内を窒素ガスに置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら75℃に昇温した後、重合開始剤として2,2´‐アゾビスイゾブチロニトリル0.1部を添加して、5時間重合反応を行った後、アゾビスイソブチロニトリルを0.39部加えて85℃に昇温しさらに2時間重合を行い、(メタ)アクリル共重合体溶液を得た。この共重合体のガラス転移温度は55℃、重量平均分子量は233,000であった。
【0031】
次いで、上記(メタ)アクリル共重合体溶液59部に、セラミック粉末としてイットリアで安定化されたジルコニア酸化物を122部、分散剤としてG−700(共栄社製)3.65部、溶媒としてトルエンを33.5部、酢酸エチルを15.3部、可塑剤としてフタル酸ジブチルを8部添加しボールミルで約24時間混合分散した。得られたスラリーを脱泡・濃縮した後、ドクターブレードを用いて成形、乾燥し厚さ平均663μmのグリーンシートを得た。このシートをダンベル型に切り取り、インストロンにて引張速度100mm/分の速度での破断強度を測定したところ、伸び268%で破断強度3.17MPaであった。
【0032】
実施例2
実施例1において、単量体成分を表1に示すように変更した以外は同様の操作により、ガラス転移温度41℃、重量平均分子量384,000のバインダー溶液及び厚さ平均630μmのグリーンシートを得た。破断強度は、伸び263%で破断強度3.32MPaであった。
【0033】
実施例3
実施例1において、単量体成分を表1に示すように変更し、可塑剤としてフタル酸ジオクチルを使用した以外は同様の操作により、ガラス転移温度55℃、重量平均分子量299,000のバインダー溶液及び厚さ平均660μmのグリーンシートを得た。
【0034】
実施例4〜6
実施例3において、単量体成分を表1に示すように変更した以外は同様の操作により、実施例4〜6のバインダー樹脂及びグリーンシートを得た。得られたバインダーのガラス転移温度、分子量、シート剥離テストの結果を表1に示す。
【0035】
評価方法
(分子量測定)
重量平均分子量は、東ソー株式会社製HLC−8220GPCを用い、ジメチルホルムアミド、1mol%臭化カリウム溶液を溶媒に、カラムにTSKgel GMHHR−H(S)を2本用いて、温度40℃、0.35mL/分の流量溶出時間を測定し、ポリスチレン標準物質を検量線として、重量平均分子量を計算した。
(引張強度)
引張強度は、○製○を用い、150mm×20mm、厚さ600〜900μm、測定部の幅10mmのダンベル型試験片を引張速度100mm/分の速度で引張り、破断伸び、破断強度を測定した。
(フィルム剥離性)
20mm×50mmのグリーンシートをPETフィルム上から手で引っ張り剥がした後のシートの状態を見る。
○:変化なし
△:微クラックが入る
×:シートが伸びて変形する、またはシートが破れる
(泡抜け性)
乾燥後のグリーンシート(200mm×200mm)の泡の数を目視で数えた。
【0036】
尚、下記表1及び2の単量体組成の略語は、以下のように示す。
HEMA:メタクリル酸2−ヒドロキシエチル
DAM:メタクリル酸ジメチルアミノエチル
MMA:メタクリル酸メチル
BMA:メタクリル酸n−ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
2−EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
【0037】
【表1】

【0038】
比較例1〜5
実施例3において、単量体成分を表2に示すように変更した以外は同様の操作により、比較例1〜5のバインダー樹脂及びグリーンシートを得た。得られたバインダーのガラス転移温度、分子量、シート剥離テストの結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
表1,2から明らかなように、実施例に挙げられたバインダー樹脂は、特定量の水酸基及び/またはアミノ基を含有し、かつ特定のガラス転移温度を有する(メタ)アクリル共重合体であるため、これを用いて作成したセラミックグリーンシートは、泡が少なく適度な物性を持つものとなり、キャリアフィルムからの剥離性も良好である。一方、比較例1,4,5のバインダーを用いたグリーンシートでは、水酸基及び/またはアミノ基の量が少なかったり、またはいずれか片方のみを有するため、フィルムから剥離する際に破れが怒り、また泡の数も比較的多くなった。また、比較例2では、バインダーのガラス転移温度が低いために適度な量の官能基を有していても、剥離の際に伸びが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明のセラミックシート用バインダーは、適度な引張強度・伸びを有し、キャリアシート剥離時に伸びが発生しない、かつ泡の少ないグリーンシートを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)分子内に水酸基を有する(メタ)アクリルレート単量体を3重量%以上、(b)分子内に窒素原子を含有する不飽和結合を持つ重合性単量体を1重量%以上、(c)アルキル(メタ)アクリレート単量体を共重合(ただし、単量体の合計を100重量%とする)して得られる共重合体であり、かつ、(a)+(b)の合計が20重量%以上であり、かつ、ガラス転移温度が、40℃以上60℃以下であることを特徴とするセラミックグリーンシート用バインダー。
【請求項2】
前記共重合体の重量平均分子量が、20万以上50万以下である請求項1に記載のセラミックグリーンシート用バインダー。
【請求項3】
請求項1または2に記載のセラミックグリーンシート用バインダーを用いて作成されたセラミックスラリー及びグリーンシート。

【公開番号】特開2007−277442(P2007−277442A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107171(P2006−107171)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】