セラミックス−金属接合体、及びその製造方法
【課題】接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することが可能なセラミックス−金属接合体を提供する。
【解決手段】本発明のセラミックス−金属接合体100は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材31と、金属部材32とが、ろう材33を介して接合されたものであり、セラミックス部材31を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものである。
【解決手段】本発明のセラミックス−金属接合体100は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材31と、金属部材32とが、ろう材33を介して接合されたものであり、セラミックス部材31を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス−金属接合体、及びその製造方法に関する。更に詳しくは、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することが可能なセラミックス−金属接合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス材料と金属材料とを接合する方法としては、従来、多くの場面でろう付けによる接合方法が用いられている。通常、セラミックス材料と金属材料とをろう材によって接合する場合には、セラミックス材料に対するろう材の濡れ性が低いため、例えば、以下のような2種類の接合方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
第一の方法としては、セラミックスの表面にメタライズ(金属コート)を行い、このようにメタライズを行ったセラミックス材料と金属材料とをろう付けする間接的方法であり、第二の方法としては、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属や、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)等の活性金属を含む特殊なろう材を用い、セラミックスとろう材との活性を高めることによって、セラミックス材料と金属材料とを直接的にろう付けする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−119760号公報
【特許文献2】特開2002−37679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したメタライズを行ってろう付けする方法(第一の方法)においては、メタライズの工程が複雑となり、コスト高になるという問題があった。
【0006】
また、活性金属ろう材を用いる接合方法(第二の方法)においても、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を使用するため、コスト高になるという問題があった。特に、このような活性金属ろう材を用いる接合方法は、高額な装置部品等の接合に使用されることはあっても、例えば、自動車部品等の安価な製造が求められる大量生産品の接合に使用されることはなかった。
【0007】
また、その他のろう付けによる接合方法として、例えば、接合界面に大きな圧力をかけながら、拡散接合のようにしてろう付けする方法もあるが、例えば、セラミックス材料が、多孔質セラミックスである場合には、セラミックス材料の強度が低いため、接合時における圧力によってセラミックス材料が破損してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することが可能なセラミックス−金属接合体、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のセラミックス−金属接合体、及びその製造方法を提供する。
【0010】
[1] 骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とが、ろう材を介して接合されてなり、前記セラミックス材料が、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス−金属接合体。
【0011】
[2] 前記骨材としての前記炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmである前記[1]に記載のセラミックス−金属接合体。
【0012】
[3] 前記金属部材を構成する金属材料が、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有する前記[1]又は[2]に記載のセラミックス−金属接合体。
【0013】
[4] 前記セラミックス部材が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体であり、前記金属材料が、前記電極端子突起部に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線であり、前記セラミックス部材としての前記電極端子突起部と、前記金属部材としての前記金属端子部又は前記金属配線とが、前記ろう材を介して接合されたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体。
【0014】
[5] 骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、前記セラミックス材料として、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料を用いるセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0015】
[6] 前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する前記[5]に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセラミックス−金属接合体は、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いて、金属部材とのろう材接合を行った接合体であり、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が極めて高く、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することができる。また、接合に使用するろう材として、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を特別使用する必要もないため、接合体を極めて安価に製造することができる。
【0017】
また、セラミックス材料として、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス材料が用いられているため、金属ろう材を用いてセラミックス材料と金属材料と接合することによって、セラミックス材料と金属材料とを電気的に接続した状態で接合を行うことができる。このため、例えば、セラミックス材料がヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス材料としての抵抗体と接続されたセラミックス製の電極端子等である場合に、電圧を印加するための金属性の電極端子や電極配線との電気的接続を確保した状態で、良好にろう材接合を行うことができる。
【0018】
また、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、上述した本発明のセラミックス−金属接合体を簡便且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図2】本発明のセラミックス−金属接合体の他の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図3】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図5】図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す平面図である。
【図6】図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。
【図7】図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図8】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図9】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図10A】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10B】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10C】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10D】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
(1)セラミックス−金属接合体:
本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態は、図1に示すように、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材31と、金属部材32とが、ろう材33を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体100である。ここで、図1は、本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【0022】
そして、本実施形態のセラミックス−金属接合体100は、セラミックス部材31を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものである。
【0023】
このように構成することによって、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、接合強度が大きく、且つセラミックス材料(セラミックス部材)と金属材料(金属部材)とを簡便に接合することができる。即ち、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いることによって、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性を大幅に向上させることができ、特別なろう材を使用しなくとも、良好なろう材接合が実現されている。また、接合に使用するろう材として、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を特別使用する必要もないため、セラミックス−金属接合体を極めて安価に製造することができる。
【0024】
また、セラミックス材料として、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス材料が用いられているため、金属ろう材を用いてセラミックス材料と金属材料と接合することによって、セラミックス材料と金属材料とを電気的に接続した状態で接合を行うことができる。このため、例えば、セラミックス材料がヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス材料としての抵抗体と接続されたセラミックス製の電極端子等である場合に、電圧を印加するための金属性の電極端子や電極配線との電気的接続を確保した状態で、良好にろう材接合を行うことができる。
【0025】
このように本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス表面の組成をコントロールし、特定のセラミックス材料に対して、ろう材を介して金属材料との接合を行うものであり、メタライズといった複雑且つコスト高となる工程を取らずとも、また、貴金属ろう材を使用せずとも、更に、活性金属ろう材を使用せずとも、非常に良好な接合強度及び信頼性を有するろう付け接合が可能となる。
【0026】
セラミックス部材を構成するセラミックス材料における珪素の含有割合が、30質量%未満であると、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が低くなり、ろう材接合が困難になる。一方、珪素の含有割合が、80質量%超であると、骨材としての炭化珪素粒子の含有割合が低すぎて、セラミックス部材の焼成が困難になると同時に、セラミックス部材の機械的強度が低下してしまう。なお、ろう材の濡れ性とセラミックス部材の特性とを考慮すると、珪素の含有割合は、30〜60質量%であることが更に好ましく、30〜45質量%であることがより好ましい。
【0027】
また、セラミックス材料に含有される骨材としての炭化珪素粒子は、比較的に大きな粒子径のものであることが好ましい。具体的には、炭化珪素粒子の平均粒子径は、30〜100μmであることが好ましく、30〜60μmであることが更に好ましい。炭化珪素粒子の平均粒子径が小さい(即ち、30μm未満である)と、ろう材の濡れ性が低下し、ろう材による接合が困難になることがあり、一方、炭化珪素粒子の平均粒子径が大きすぎる(即ち、60μm超であり、特に100μm超である)と、セラミックス部材の表面が粗くなり、金属部材とのろう材接合が困難になることがある。なお、炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0028】
更に、本実施形態のセラミックス−金属接合体に用いられるセラミックス部材は、多孔質のセラミックス材料からなる多孔質体である。本実施形態のセラミックス−金属接合体においては、このセラミックス部材を構成するセラミックス材料の気孔率が、10〜50%であることが好ましい。気孔率が10%未満であると、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が低くなり、ろう材による接合が困難になることがあり、気孔率が50%超であると、セラミックス部材の機械的強度が極端に低下してしまう。
【0029】
なお、セラミックス部材の気孔率が高過ぎると、セラミックス部材の機械的強度が低下するため、セラミックス−金属接合体の破損を防止する観点から、セラミックス部材の気孔率は、20〜45%であることが更に好ましい。また、セラミックス部材の気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0030】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体に用いられるセラミックス部材は、ろう材を介して接合される接合面におけるセラミックス材料の組成が、これまでに説明した特定のセラミックス材料(以下、このようなセラミックス材料を「特定セラミックス材料」ということがある)であればよい。即ち、上記特定セラミックス材料を用いることによって、接合強度が大きく、信頼性の高いろう材接合を実現することができるため、セラミックス部材は、接合面から所定の厚さ範囲の成分が、上記特定セラミックス材料によって構成されたものであってもよいし、勿論、その全体が上記特定セラミックス材料によって構成されたものであってもよい。なお、セラミックス部材の接合面側が、上記特定セラミックス材料によって構成される場合には、少なくともセラミックス部材の厚さ方向(即ち、接合面に直交する方向)における長さの0.1mm以上の範囲が、上記特定セラミックス材料によって構成されていることが好ましく、0.3mm以上の範囲であることが更に好ましい。なお、この特定セラミックス材料によって構成される範囲の上限は、セラミックス部材の総厚さ、即ち、セラミックス部材全体が、特定セラミックス材料によって構成される場合である。
【0031】
また、セラミックス部材と金属部材とを接合するろう材としては特に制限はなく、従来公知のろう材を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fu)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)等を含有するろう材を挙げることができる。特に、接合部分の強度が高く、耐熱性、耐食性、耐衝撃性等に優れた接合を実現することができることから、例えば、Niろう(ニッケルろう)を好適例として挙げることができる。なお、上記Niろうとしては、日本工業規格の「BNi−2」等のNiろうを挙げることができる。
【0032】
また、上記したろう材は、例えば、クロム(Cr)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、リチウム(Li)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含んだものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお、このような添加剤の含有割合については特に制限はないが、例えば、ろう材中に、1〜50質量%の割合で含有(添加)されていることが好ましく、5〜40質量%の割合であることが更に好ましい。
【0034】
特に限定されることはないが、上記したろう材は、粒子状のろう材に少量のバインダを混ぜたペースト状、又は箔状であることが好ましい。粒子の大きさについて特に制限はないが、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。箔状の場合、厚さについては特に制限はないが、例えば、0.1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、良好なろう材接合を行うことが可能となる。
【0035】
また、特に限定されることはないが、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、図2に示すように、ろう材32の少なくとも一部(ろう材33a)が、少なくとも金属部材32の内部に浸透した状態で接合されたものであってもよい。ここで、図2は、本発明のセラミックス−金属接合体の他の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【0036】
即ち、本実施形態のセラミックス−金属接合体においては、セラミックス部材と金属部材と接合するろう材として、金属部材の内部に浸透し得る材料からなるろう材を用いることが好ましい。このようなろう材を用いることによって、セラミックス部材と金属部材との接合面に、ろう材が層(ろう材層)のままの状態で存在することがなく、ろう材層によるセラミックス−金属接合体の機械的強度の低下や、耐熱・耐食性の低下を有効に防止することができる。
【0037】
また、セラミックス部材と接合を行う金属部材を構成する金属材料としては、特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、ステンレス、耐熱合金、低膨張合金等の金属材料を好適に用いることができる。また、このような金属材料のうち、耐熱性、及び耐食性に優れ、且つ、電気抵抗の低い金属材料として、SUS316、SUS310S、SUS430、SUS630、S816、インコネル600、インコネル718等を好適例として挙げることができる。また、このような金属材料のうち、低膨張であり、且つ耐熱性に優れ、電気抵抗の低い金属材料としては、インコロイ909、コバール等を好適例として挙げることができる。このような金属材料を用いることによって、本実施形態のセラミックス−金属接合体を、例えば、自動車の排気系に設置される排ガス処理装置等の装置部品に適用することができる。
【0038】
また、金属部材を構成する金属材料としては、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有するものであることが好ましい。このような金属体を含有する金属材料を用いることによって、ろう付け時の冷却過程で生じるセラミックスと金属間の熱応力を緩和し、ろう付け部の破損を防止することができる。
【0039】
なお、このような金属体は、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミ)からなる群から選択される少なくとも1種を含む金属体であり、例えば、耐熱性に優れ、電気抵抗の低い金属材料として公知のフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼等を用いることができる。より具体的には、SUS430、SUS630等を挙げることができる。
【0040】
なお、セラミックス部材と金属部材との形状については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途に応じて適宜選択することができる。なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材と金属部材とが共に導電性を有するものであるため、例えば、セラミックス部材を、ヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子とし、金属部材を、このセラミックス部材に電圧を印加するための電極端子や電極配線とすることができる。
【0041】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、これまでに説明した特定の組成のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料からなる金属部材とをろう材を介して接合させた接合体であれば、それ以外の構成についても特に制限はなく、本実施形態のセラミックス−金属接合体に対して、更に別の構成要素が付与されているものであってもよい。
【0042】
(2)セラミックス−金属接合体の製造方法:
次に、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態について具体的に説明する。本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、これまでに説明した本実施形態のセラミックス−金属接合体を製造する製造方法である。
【0043】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、セラミックス部材を構成するセラミックス材料として、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料(特定セラミックス材料)を用いるものである。
【0044】
このように、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材に対して、ろう材を介して金属材料を接合するものであり、メタライズといった複雑且つコスト高となる工程を取らずとも、また、貴金属ろう材を使用せずとも、更に、活性金属ろう材を使用せずとも、非常に良好な接合強度及び信頼性を有するろう付け接合が可能となる。特に、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いることで、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が大幅に向上し、上述した特別なろう材を使用しなくとも、良好なろう材接合を行うことができる。
【0045】
上記した特定セラミックス材料からなるセラミックス部材は、例えば、以下のように製造することができる。
【0046】
まず、セラミックス材料の主成分とする炭化珪素粉末(炭化珪素)と、金属珪素(金属珪素粉末)とを用意する。この際、結合材としての金属珪素の量を、セラミックス材料(即ち、炭化珪素粉末と金属珪素との合計量)100質量%に対して、30〜80質量%となる量とする。このように構成することによって、得られるセラミックス部材と金属部材とをろう材によって良好に接合することが可能となる。
【0047】
また、セラミックス部材を作製する際には、骨材となる炭化珪素粉末を構成する炭化珪素粒子として、その平均粒子径が、30〜100μmであるものを用いることが好ましい。
【0048】
なお、金属珪素粉末を構成する金属珪素粒子の平均粒子径については特に制限はないが、例えば、0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることが更に好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0049】
このように用意した炭化珪素粉末(炭化珪素)と金属珪素(金属珪素粉末)とに、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を加え、混合、混練することによって、セラミックス部材を作製するためのセラミックス原料を調整する。混練の方法については特に制限はないが、例えば、混練機等を用いることができる。
【0050】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、上記セラミックス原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0051】
水の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0052】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0053】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0054】
その後、このようにして得られたセラミックス原料を所定の形状に成形して、未焼成のセラミックス部材を作製する。成形方法については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体に使用するセラミックス部材を作製することが可能な方法であればよい。例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、シート成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。また、成形後、更に所定の形状となるように加工を行ってもよい。
【0055】
このようにして得られた未焼成のセラミックス部材を、乾燥させた後、焼成を行ってセラミックス部材を作製する。なお、乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0056】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は、例えば、大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜24時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0057】
また、金属部材の作製については、従来公知の金属加工によって、所望の形状の金属部材を作製することができる。
【0058】
以上のように形成されたセラミックス部材と、金属部材とを、ろう材を介した状態で接合してセラミックス−金属接合体を製造する。なお、ろう材の種類については特に制限はなく、上記したセラミックス−金属接合体の実施形態において説明したろう材を好適に用いることができる。
【0059】
ろう材による接合方法としては、セラミックス部材と金属部材とを接合する表面同士を当接させて、セラミックス部材と金属部材との少なくとも一方の表面に接する形でろう材を配置し、接合を行う。この際、ろう材の配置方法としては、セラミックス部材と金属部材との間に、ろう材を予め挟んでしまう方法と、セラミックス部材と金属部材とを重ね合わせて積層し、このセラミックス部材と金属部材との隙間に、ろう材を接するように配置し、ろう材を溶かすことによって、溶けたろう(ろう材)を、毛細管現象を利用して、セラミックス部材と金属部材と隙間に流し込む方法と、の2通りの方法を好適例として挙げることができる。なお、上記した毛細管現象を利用して、溶けたろうを流し込む「隙間」は、二つの部材(セラミックス部材と金属部材)を重ね合わせた際に、両部材の接合面の表面粗さや加工精度等に起因して存在する(例えば、不可避的に存在する)接合界面の隙間や、例えば、温度上昇により、接合を行う各部材の熱膨張率の差によって生じる隙間等を挙げることができる。なお、意図的にろうを流し込む隙間を形成することも可能である。
【0060】
この接合時における雰囲気、温度条件、接合体に加える圧力等については、使用するろう材の種類や、金属部材の材質、セラミックス部材と金属部材との形状及び接合面の大きさ等によって適宜設定することができる。特に、良好な真空度で、金属部材の融点以下の温度で、且つ、セラミックス部材の破壊強度以下の圧力によって接合することが好ましい。具体的な条件としては、例えば、1Pa以下の真空度であることが好ましく、0.1Pa以下であることが更に好ましく、0.01Pa以下であることが特に好ましい。温度については、620〜1140℃の温度が好ましく、780〜1090℃であることが更に好ましく、890〜1050℃であることが特に好ましい。圧力については、2MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることが更に好ましく、無負荷であることが特に好ましい。
【0061】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、接合に使用するろう材の少なくとも一部を、金属材料に浸透させながら、セラミックス材料と金属材料とを接合することが好ましい。このように構成することによって、セラミックス材料と金属材料との接合面に、ろう材が板状部材積層体の層のままの状態で存在することがなく、得られるセラミックス−金属接合体の耐食性、機械的強度の低下を有効に防止することができる。
【0062】
(3)電極付きハニカム構造体:
次に、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態として、セラミックス部材が、多孔質セラミックスからなるハニカム構造体であり、金属部材が、このハニカム構造体に接合された金属部材である、電極付きハニカム構造体を例に更に具体的に説明する。
【0063】
本実施形態の電極付きハニカム構造体(セラミックス−金属接合体)は、セラミックス部材が、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21と、一対の電極部21,21のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部22,22と、を備えたハニカム構造体20であり、金属部材が、上記電極端子突起部22,22に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線(図3及び図4においては、金属端子部23,23である場合を示す)である電極付きハニカム構造体100Aである。
【0064】
本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、上述したハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなり、特に、電極端子突起部22,22を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するもの(即ち、これまでに説明した特定セラミックス材料)である。
【0065】
そして、セラミックス部材としての電極端子突起部22,22と、金属部材としての金属端子部23,23とが、ろう材を介して接合されている。ここで、図3は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図4は、図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。また、図5は、図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す斜視図であり、図6は、図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。また、図7は、図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0066】
このような本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、ハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるため、ハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21間に電流を流すことにより、ハニカム構造部4が発熱し、ヒータとして好適に用いることができる。なお、ハニカム構造体20は、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されている。
【0067】
そして、本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、金属端子部23,23と電気的に接続された状態でろう材接合される電極端子突起部22が、上述した特定セラミックス材料からなるため、セラミックス材料と金属材料との接合部分が、高い耐衝撃性を有し、高い信頼性をもった状態で接合されている。
【0068】
なお、ハニカム構造部4、電極部21、及び電極端子突起部22は、共に骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるため、各構成部材同士の熱膨張係数が近く、接合強度が高いため、ハニカム構造部4の側面への電極部21の配設を極めて簡便に行うことができる。例えば、セラミックス材料からなるハニカム構造部4に対して、金属性の電極部を直接配設することは、十分な接合強度を得ることができない。例えば、隔壁の厚みが薄く強度が低いハニカム構造部と金属とを接合した場合には、熱膨張係数の違いにより発生する熱応力により、ハニカム構造部が破損してしまうことがある。即ち、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造体の一部を構成する電極端子突起部までを、導電性を有するセラミックス材料によって形成し、このセラミックス材料からなる電極端子突起部に対して、金属材料からなる金属端子部又は金属配線を、これまでに説明した本発明のセラミックス−金属接合体における接合方法を適用してろう材接合によって接合したものである。
【0069】
このような本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、金属端子部23,23間に電圧を印加することにより、電極端子突起部22、及び電極部21を通じてハニカム構造部4に電流が流れ、ハニカム構造部4が抵抗体となり発熱する。
【0070】
従来、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合には、触媒を所定の温度まで昇温する必要があり、例えば、エンジン始動時には、触媒温度が低く、排ガスが十分に浄化されないという問題があったが、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造部に電圧を印加して発熱させることができるため、エンジンの運転状態に関わらず、必要に応じて適宜ハニカム構造体を所定の温度まで昇温することができる。
【0071】
上記した電極端子突起部は、ハニカム構造体に電圧を印加するための電気配線等との電気的接続を確保するためのハニカム構造体側の端子であり、この電極端子突起部と、電源からの電気配線等が接続された金属端子部とが電気的に接続されている。従来のハニカム構造体において、例えば、セラミックス材料と金属材料とを接合する場合には、物理蒸着や化学蒸着等の極めて煩雑な接合が必要とされていたが、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、セラミックス材料からなる電極端子突起部と、金属材料からなる金属端子部とが、ろう材を介して電気的に接続された状態で接合されているため、簡便な方法によって、優れた耐熱性、及び高い耐衝撃性を有する接合が実現されている。
【0072】
なお、一対の電極部(換言すれば、電極端子突起部に接合されたそれぞれの金属端子部)間に印加する電圧は、ハニカム構造体を昇温する温度や、ハニカム構造部の材質等によって適宜選択することができるが、例えば、50〜300Vが好ましく、100〜200Vが更に好ましい。例えば、自動車の電気系統に電圧200Vの電源を使用している場合には、当該200Vの電圧を印加することが好ましい。
【0073】
本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部が、凸形状又は凹形状に形成されてなるとともに、金属端子部が、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成されてなることが好ましい。図3〜図5においては、電極端子突起部22が、凸形状に形成され、金属端子部が凹形状に形成された場合の例を示している。なお、図8に示すように、電極端子突起部22が、凹形状に形成され、金属端子部が凸形状に形成されていてもよい。ここで、図8は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0074】
なお、例えば、図7に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなる場合には、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の厚さが0.05〜5mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることが更に好ましく、0.2〜1mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、金属端子部の見かけの強度が小さくなり、凸形状の電極端子突起部への応力(具体的には、熱膨張の違いにより発生する熱応力)が軽減され、ヒートサイクルによる、電極端子突起部及び金属端子部の破損、また、ろう材による接合部分の剥離等を有効に防止することができる。なお、上記した凹形状を形成する壁部分の厚さは、電極端子突起部及び金属端子部の大きさによって異なるため、上記した範囲に限定されることはない。
【0075】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、例えば、図9に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなり、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の端面形状が、凹形状の内周側が突出するような先細り形状であることが好ましい。このように構成することによって、金属端子部23の凹形状を形成する壁部分の端面における、圧縮及び引張応力を小さくすることができる。ここで、図9は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0076】
なお、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部と金属端子部とがろう材を介して接合した場合の例を示しているが、例えば、特定のセラミックス材料からなる電極端子突起部に対して、金属性の配線をろう材によって直接接合した電極付きハニカム構造体であってもよい。即ち、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、電極端子突起部が、これまでに説明した特定セラミックス材料によって構成されているため、電極端子突起部に対しては、如何なる形状の金属材料であっても良好にろう材接合することが可能であり、金属部材側の形状については特に制限されることはない。
【0077】
また、電極端子突起部は、金属端子部(金属部材)との接合面近傍が、上記特定セラミックス材料によって形成されたものであってもよい。即ち、突起部全体が特定セラミックス材料によって形成されていなくとも、少なくとも、その接合面側の組成が上記特定セラミックス材料であれば、ろう材によって金属端子部との接合を良好に行うことができる。
【0078】
電極端子突起部と金属端子部と接合するためのろう材は、本実施形態のセラミックス−金属接合体にて説明したろう材を好適に用いることができる。また、このようなろう材に各種添加剤が更に含有されたものであってもよい。
【0079】
また、電極部と電極端子突起部とは、炭化珪素粒子と珪素との比率が同一の導電性セラミックス材料からなるものであってもよいし、異なる比率の導電性セラミックス材料からなるものであってもよい。なお、電極部の成分と電極端子突起部の成分とが同じ(又は近い)成分である場合には、電極部と電極端子突起部の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になるため好ましい。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部と電極端子突起部との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部が電極部から剥れたり、電極端子突起部と電極部との接合部分が破損したりすることを良好に防止することができる。
【0080】
なお、図3〜図7に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aと、円柱状の突起部22b(凸形状の部分)とによって構成されていることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0081】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから外れ易くなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0082】
電極端子突起部22において、基板22aの、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)は、電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さの、20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。20%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0083】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜20mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bと金属端子部23とをより強固に接合させることができる。3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。20mmより太いと、金属端子部23と接続させ難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、金属端子部23を良好に接合させるとことができる。3mmより短いと金属端子部23と接合させ難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0084】
図4に示すように、電極端子突起部22は、電極部21の「セル2の延びる方向」における中央部に配置されていることが好ましい。これにより、ハニカム構造部4全体を均等に加熱し易くなる。
【0085】
電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗は、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.01〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が0.01Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0086】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、5μmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の平均細孔径が、50μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0087】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aの、「一対の電極部21,21のそれぞれに配設された電極端子突起部間」で測定された400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、5〜20Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0088】
また、金属端子部を構成する金属材料の種類については特に制限はないが、例えば、低熱膨張金属を使用し、ヒートサイクル(加熱冷却)時の熱応力を低減可能なものであることが好ましい。具体的な金属材料としては、例えば、コバール、インコロイ909、SUS430等を好適例として挙げることができる。
【0089】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体に用いられる金属端子部は、これまでに説明した電極端子突起部との電気的接続を行うための端子であり、金属材料によって形成されたものである。金属端子部の形状は、これまでに説明した電極端子突起部と、ろう材を介して電気的、且つ物理的な接続を行うことが可能なものであればよい。
【0090】
また、この金属端子部は、薄肉金属を使用することによっても、ヒートサイクル時の熱応力を低減することができる。即ち、上述したように、金属端子部のろう材を介して接合される部分の肉厚(例えば、図4における金属端子部22の凹形状を形成する壁部分の厚さ)を薄くすることで、接合部分における金属端子部の熱膨張量を小さくして、ヒートサイクルによる、電極端子突起部及び金属端子部の破損、また、ろう材による接合部分の剥離等を有効に防止することができる。
【0091】
この金属端子部は、ハニカム構造体に電圧を印加するための電源と、金属配線等によって電気的に接続されている。金属端子部と金属配線とは共に金属であるため、従来公知の金属同士の接合方法(例えば、溶接やはんだ付け等)によって、低抵抗な電気的接続が可能である。
【0092】
ハニカム構造部は、骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなり、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有するものである。このハニカム構造部は、上述したように骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料(即ち、導電性を有するセラミックス材料)からなるため、電極部を通じて電圧が印加された際に、ハニカム構造部が抵抗体として作用し、ハニカム構造体を発熱させる。
【0093】
ハニカム構造体20を構成するハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0094】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁厚さは、50〜150μmであることが好ましく、70〜100μmであることが更に好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがあり。隔壁厚さが150μmより厚いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0095】
ハニカム構造部4は、セル密度が40〜200セル/cm2であることが好ましく、70〜100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがあり、セル密度が200セル/cm2より高いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0096】
また、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜30μmであり、5〜20μmであることが好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗を1〜20Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が大きくなるため好ましくない。炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が小さくなるため好ましくない。また、炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがあるため好ましくない。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0097】
また、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗は、1〜20Ωcmであることが好ましく、5〜20Ωcmであることが更に好ましい。400℃における体積電気抵抗が1Ωcmより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における体積電気抵抗が20Ωcmより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがあるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における体積電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0098】
また、ハニカム構造体20の400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、5〜20Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0099】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗より低いものであり、更に、電極部21の400℃における体積電気抵抗が、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下であり、0.02〜10%であることが好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗を、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0100】
隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、45〜55%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうため好ましくない。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下するため好ましくない。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0101】
隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径が15μmより大きいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0102】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁1及び外周壁3が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を主成分とすることが好ましく、炭化珪素及び珪素のみから形成されていてもよい。隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素及び珪素のみから形成される場合においても、10質量%以下の微量の不純物が含有されてもよい。隔壁1及び外周壁3が、「炭化珪素及び珪素」以外の物質(微量の不純物)を含有する場合、隔壁1及び外周壁3に含有される他の物質としては、酸化珪素、ストロンチウム等を挙げることができる。ここで、「隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0103】
図3〜図6に示すように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びると共に両端部間(両端面11,12間)に亘る「帯状」に形成されていることが好ましい。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されていることが好ましい。このように、電極部21を帯状に形成し、帯状の電極部21の長手方向が、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びるようにして、更に、電極部21がハニカム構造部4の両端部間(両端面11,12間)に亘るようにしたため、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されるようにすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。
【0104】
電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さ(外周の長さ)の、1/30〜1/4であることが好ましく、1/15〜1/4であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。電極部21の、ハニカム構造部4の周方向Rにおける長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さの、1/30より短いと、均一に発熱できないことがある。1/4より長いと、ハニカム構造部4の中心部付近が加熱され難くなることがある。
【0105】
電極部21の厚さは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.05mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。2.0mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0106】
電極部21は、図10Aに示すように、外周壁3の表面に配設されていることが好ましい。また、電極部21は、図10Bに示すように、外周壁3の内部に埋め込まれるようにして配設されていてもよい。更に、電極部21は、図10C、及び図10Dに示すように、一部(外周壁に接触している側)が外周壁3の内部に埋め込まれた状態で、残りの一部(表面側の一部)が外周壁3から外に(表面側に)出た状態となっていることも好ましい態様である。図10Cにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さより薄い態様が示されている。図10Dにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さと同じ厚さとなっている態様が示されている。
【0107】
ここで、図10A〜図10Dは、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。なお、図10A〜図10Dにおいては、外周壁3の一部及び片方の電極部21のみが表され、隔壁等は表されていない。
【0108】
電極部21は、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ(又は近い)成分となるため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ(又は近く)になる。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。このため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすること良好に防止することができる。
【0109】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.01〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の400℃における体積電気抵抗が0.01Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。
【0110】
電極部21は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、45%より高いと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0111】
電極部21は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。電極部21の平均細孔径が、20μmより大きいと、強度が弱く破損することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0112】
電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の400℃における体積電気抵抗を、0.01〜2.0Ωcmにすることができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の400℃における体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱く破損することがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0113】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜45質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。そして、45質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0114】
本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aにおいては、電極部21の気孔率が30〜45%であり、電極部の平均細孔径が5〜20μmであり、電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される「珪素の質量」の比率が、20〜50質量%であり、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであり、電極部21の体積電気抵抗が、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましい。これにより、特に、通電時に均一にハニカム構造体を発熱することができる。
【0115】
本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部の、ハニカム構造部の周方向における中央部において、ハニカム構造部の外周に接する接線を引いたときに、当該接線が、いずれかの隔壁と平行であることが好ましい。これにより、キャニング時に破損し難くなる。
【0116】
また、ハニカム構造体20の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体20の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0117】
ハニカム構造体20は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形又は六角形であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体20に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0118】
また、ハニカム構造体20の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm2であることが好ましく、4000〜10000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0119】
ハニカム構造体20のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましい。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0120】
次に、このような電極付きハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0121】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜30質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜30μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、成形原料全体の質量に対して30〜78質量%であることが好ましい。
【0122】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0123】
水の含有量は、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0124】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0125】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0126】
また、成形原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0127】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0128】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0129】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0130】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0131】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0132】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0133】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜45質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、製造時に変形し易くなることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、電極部形成原料全体の質量に対して40〜80質量%であることが好ましい。
【0134】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜15質量%であることが好ましい。
【0135】
水の含有量は、電極部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0136】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0137】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0138】
また、電極部形成原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0139】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0140】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0141】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0142】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、ハニカム構造体の実施形態にて説明した種々の形状に形成することができる。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。なお、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0143】
ここで、電極端子突起部形成用部材は、本発明のセラミックス−金属接合体におけるセラミックス部材を構成する特性セラッミクス材料となる原料(電極端子突起部形成原料)を用い、この電極端子突起部形成原料を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部形成原料としての特性セラッミクス材料は、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものであり、骨材としての炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmであることが好ましい。また、得られる電極端子突起部の気孔率が10〜50%となるように、造孔材等の配合量を調整することが更に好ましい。
【0144】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を、上記範囲を満たすように添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。
【0145】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0146】
水の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0147】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0148】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0149】
炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して混練する方法については特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0150】
また、得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0151】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0152】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体(ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分)に貼り付ける方法は、特に限定されないが、上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に貼り付く面(ハニカム成形体に接触する面)」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0153】
そして、電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、ハニカム構造部と、このハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部とを作製する。
【0154】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0155】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜24時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0156】
なお、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【0157】
次に、金属材料からなる金属端子部を作製する。なお、金属端子部の作製は、ハニカム構造部の作製の前に行ってもよい。
【0158】
なお、金属端子部の形状は、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成することが好ましい。金属端子部を形成するための金属材料としては、コバール、インコロイ909、SUS430等を好適に用いることができる。
【0159】
次に、得られた金属端子部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部の表面に配置された電極端子突起部とを、ろう材を介して接合する。具体的には、例えば、金属端子部と電極端子突起部との間に、薄膜状のろう材を配置して、所定の温度で加熱してろう材接合方法を挙げることができる。
【0160】
また、ろう材による接合方法は、上述した方法に限定されることはなく、例えば、粒子状のろう材にバインダを混ぜることによって、ペースト状のろう材を作製し、このペースト状のろう材を用いて、金属端子部と電極端子突起部とを接合する方法であってもよい。この際、ペースト状のろう材を、金属端子部と電極端子突起部との間に直接配置して接合することもできるし、或いは、金属端子部と電極端子突起部との接合面を先に当接させ(即ち、ろう材を介さずに当接させ)、その接合面の端部に、上記ペースト状のろう材を配置して、接合面の隙間にろう材が流れ込むようにして接合することもできる。このようにして、図3〜図7に示すような電極付きハニカム構造体を製造することができる。
【0161】
ろう材の種類については、これまでにセラミックス−金属接合体の実施形態にて説明したろう材を好適に用いることができる。また、接合時における温度や、接合雰囲気(例えば、真空中での接合)等については、使用するろう材の種類に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0162】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0163】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを70:30の質量割合で混合し、これに、焼結助剤として炭酸ストロンチウム、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練して坏土を作製した。なお、実施例1においては、炭化珪素(SiC)粉末を構成する炭化珪素粒子として、平均粒子径が30μmの粒子を用いた。なお、本実施例において、平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0164】
得られた坏土を押出成形機を用いて成形し、円筒形状の未焼成のセラミックス部材を得た。得られた未焼成のセラミックス部材を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した後に焼成し、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材を作製した。なお、セラミックス部材のサイズは、端面の直径が8.3mmとし、長さを20mmとした。
【0165】
一方、金属部材として、丸棒形状の金属部材に切削加工を施し、内径が8.4mmで、内寸8mm(キャップ形状の凹部の深さ)のキャップ形状の金属端子を2個作製した。
【0166】
得られたセラミックス部材の両側の端部に、2つの金属部材をそれぞれ嵌め合わせ、Niろう粒子を含有するペースト状のろう材を用いて、セラミックス部材と2つの金属部材とをろう材接合することによってセラミックス−金属接合体を作製した。即ち、実施例1のセラミックス−金属接合体は、円筒形状のセラミックス部材の両側の端部に、キャップ形状の金属部材がろう材を介して接合された接合体である。なお、ペースト状のろう材に使用したNiろう粒子の平均粒子径は、0.1mmであった。
【0167】
ろう材による接合の条件は、0.01Pa以下の真空雰囲気とし、温度を1000〜11100℃、セラミックス部材と金属部材とを押圧する圧力は無負荷とした。
【0168】
このようにして得られたセラミックス−金属接合体について、以下の方法で接合強度の評価を行った。評価結果(測定結果)を表1に示す。なお、表1中の「金属珪素の含有割合」は、セラミックス材料中の、結合材としての珪素の割合(質量%)を示す。
【0169】
【表1】
【0170】
(接合強度)
セラミックス−金属接合体を構成するセラミックス部材の両側の端部に接合された、それぞれの金属端子同士を、セラミックス部材の端部外側に向けて引っ張ることによって、セラミックス−金属接合体の接合強度の評価を行った。
【0171】
なお、接合強度の評価においては、金属端子同士を、0.01MP毎に力(引張力)を増加させながら引っ張り、セラミックス部材と金属端子との接合が解除される時点の力を測定した。なお、5MPaの力で引っ張った場合でも、セラミックス部材と金属端子との接合が解除されないものを「合格」とした。なお、表1においては、上記合格の場合を、「>5MPa」として示す。また、5MPa到達前に、接合が解除された場合には、接合が解除された時点における力の値を表1に示す。
【0172】
(実施例2及び3)
金属珪素の含有割合、及び炭化珪素粒子の平均粒子径を、表1に示すように変更以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、接合強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0173】
(比較例1)
金属珪素の含有割合、及び炭化珪素粒子の平均粒子径を、表1に示すように変更以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、接合強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0174】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜3のセラミックス−金属接合体は、製造時においてセラミックス部材に対するろう材の濡れ性が極めて良好であり、接合体の接合強度が大きい結果となった。一方、金属珪素の含有割合が20%の比較例1は、ろう材の濡れ性が低く、セラミックス部材と金属部材との接合が困難であり、極めて接合強度が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のセラミックス−金属接合体は、セラミックス材料と金属材料とを非常に良好な接合強度で、極めて簡便に接合された接合体であり、安価な製造が求められる大量生産品の接合体として良好に用いることができる。また、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、上記したセラミックス−金属接合体を簡便且つ低コストに製造することが可能な製造方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0176】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:側面、11:一方の端面、12:他方の端面、20:ハニカム構造体、21:電極部、22:電極端子突起部、22a:基板、22b:突起部、23:金属端子部、24:ろう材、25:隙間、26:結晶化ガラス、27:金属被膜、31:セラミックス部材、32:金属部材、33:ろう材、33a:ろう材(金属部材の内部に浸透したろう材)、100:セラミックス−金属接合体、100A:セラミックス−金属接合体(電極付きハニカム構造体)、O:中心部、R:周方向。
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス−金属接合体、及びその製造方法に関する。更に詳しくは、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することが可能なセラミックス−金属接合体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス材料と金属材料とを接合する方法としては、従来、多くの場面でろう付けによる接合方法が用いられている。通常、セラミックス材料と金属材料とをろう材によって接合する場合には、セラミックス材料に対するろう材の濡れ性が低いため、例えば、以下のような2種類の接合方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0003】
第一の方法としては、セラミックスの表面にメタライズ(金属コート)を行い、このようにメタライズを行ったセラミックス材料と金属材料とをろう付けする間接的方法であり、第二の方法としては、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属や、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)等の活性金属を含む特殊なろう材を用い、セラミックスとろう材との活性を高めることによって、セラミックス材料と金属材料とを直接的にろう付けする方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−119760号公報
【特許文献2】特開2002−37679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したメタライズを行ってろう付けする方法(第一の方法)においては、メタライズの工程が複雑となり、コスト高になるという問題があった。
【0006】
また、活性金属ろう材を用いる接合方法(第二の方法)においても、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を使用するため、コスト高になるという問題があった。特に、このような活性金属ろう材を用いる接合方法は、高額な装置部品等の接合に使用されることはあっても、例えば、自動車部品等の安価な製造が求められる大量生産品の接合に使用されることはなかった。
【0007】
また、その他のろう付けによる接合方法として、例えば、接合界面に大きな圧力をかけながら、拡散接合のようにしてろう付けする方法もあるが、例えば、セラミックス材料が、多孔質セラミックスである場合には、セラミックス材料の強度が低いため、接合時における圧力によってセラミックス材料が破損してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することが可能なセラミックス−金属接合体、及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するため、本発明は、以下のセラミックス−金属接合体、及びその製造方法を提供する。
【0010】
[1] 骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とが、ろう材を介して接合されてなり、前記セラミックス材料が、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス−金属接合体。
【0011】
[2] 前記骨材としての前記炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmである前記[1]に記載のセラミックス−金属接合体。
【0012】
[3] 前記金属部材を構成する金属材料が、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有する前記[1]又は[2]に記載のセラミックス−金属接合体。
【0013】
[4] 前記セラミックス部材が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体であり、前記金属材料が、前記電極端子突起部に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線であり、前記セラミックス部材としての前記電極端子突起部と、前記金属部材としての前記金属端子部又は前記金属配線とが、前記ろう材を介して接合されたものである前記[1]〜[3]のいずれかに記載のセラミックス−金属接合体。
【0014】
[5] 骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、前記セラミックス材料として、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料を用いるセラミックス−金属接合体の製造方法。
【0015】
[6] 前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する前記[5]に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のセラミックス−金属接合体は、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いて、金属部材とのろう材接合を行った接合体であり、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が極めて高く、接合強度が大きく、且つセラミックス材料と金属材料とを簡便に接合することができる。また、接合に使用するろう材として、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を特別使用する必要もないため、接合体を極めて安価に製造することができる。
【0017】
また、セラミックス材料として、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス材料が用いられているため、金属ろう材を用いてセラミックス材料と金属材料と接合することによって、セラミックス材料と金属材料とを電気的に接続した状態で接合を行うことができる。このため、例えば、セラミックス材料がヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス材料としての抵抗体と接続されたセラミックス製の電極端子等である場合に、電圧を印加するための金属性の電極端子や電極配線との電気的接続を確保した状態で、良好にろう材接合を行うことができる。
【0018】
また、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、上述した本発明のセラミックス−金属接合体を簡便且つ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図2】本発明のセラミックス−金属接合体の他の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【図3】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図である。
【図4】図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【図5】図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す平面図である。
【図6】図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。
【図7】図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図8】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図9】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【図10A】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10B】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10C】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【図10D】本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0021】
(1)セラミックス−金属接合体:
本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態は、図1に示すように、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材31と、金属部材32とが、ろう材33を介して接合されてなるセラミックス−金属接合体100である。ここで、図1は、本発明のセラミックス−金属接合体の一の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【0022】
そして、本実施形態のセラミックス−金属接合体100は、セラミックス部材31を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものである。
【0023】
このように構成することによって、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、接合強度が大きく、且つセラミックス材料(セラミックス部材)と金属材料(金属部材)とを簡便に接合することができる。即ち、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いることによって、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性を大幅に向上させることができ、特別なろう材を使用しなくとも、良好なろう材接合が実現されている。また、接合に使用するろう材として、高価な貴金属等を含む活性金属ろう材を特別使用する必要もないため、セラミックス−金属接合体を極めて安価に製造することができる。
【0024】
また、セラミックス材料として、炭化珪素粒子と珪素とを含有する導電性セラミックス材料が用いられているため、金属ろう材を用いてセラミックス材料と金属材料と接合することによって、セラミックス材料と金属材料とを電気的に接続した状態で接合を行うことができる。このため、例えば、セラミックス材料がヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス材料としての抵抗体と接続されたセラミックス製の電極端子等である場合に、電圧を印加するための金属性の電極端子や電極配線との電気的接続を確保した状態で、良好にろう材接合を行うことができる。
【0025】
このように本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス表面の組成をコントロールし、特定のセラミックス材料に対して、ろう材を介して金属材料との接合を行うものであり、メタライズといった複雑且つコスト高となる工程を取らずとも、また、貴金属ろう材を使用せずとも、更に、活性金属ろう材を使用せずとも、非常に良好な接合強度及び信頼性を有するろう付け接合が可能となる。
【0026】
セラミックス部材を構成するセラミックス材料における珪素の含有割合が、30質量%未満であると、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が低くなり、ろう材接合が困難になる。一方、珪素の含有割合が、80質量%超であると、骨材としての炭化珪素粒子の含有割合が低すぎて、セラミックス部材の焼成が困難になると同時に、セラミックス部材の機械的強度が低下してしまう。なお、ろう材の濡れ性とセラミックス部材の特性とを考慮すると、珪素の含有割合は、30〜60質量%であることが更に好ましく、30〜45質量%であることがより好ましい。
【0027】
また、セラミックス材料に含有される骨材としての炭化珪素粒子は、比較的に大きな粒子径のものであることが好ましい。具体的には、炭化珪素粒子の平均粒子径は、30〜100μmであることが好ましく、30〜60μmであることが更に好ましい。炭化珪素粒子の平均粒子径が小さい(即ち、30μm未満である)と、ろう材の濡れ性が低下し、ろう材による接合が困難になることがあり、一方、炭化珪素粒子の平均粒子径が大きすぎる(即ち、60μm超であり、特に100μm超である)と、セラミックス部材の表面が粗くなり、金属部材とのろう材接合が困難になることがある。なお、炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0028】
更に、本実施形態のセラミックス−金属接合体に用いられるセラミックス部材は、多孔質のセラミックス材料からなる多孔質体である。本実施形態のセラミックス−金属接合体においては、このセラミックス部材を構成するセラミックス材料の気孔率が、10〜50%であることが好ましい。気孔率が10%未満であると、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が低くなり、ろう材による接合が困難になることがあり、気孔率が50%超であると、セラミックス部材の機械的強度が極端に低下してしまう。
【0029】
なお、セラミックス部材の気孔率が高過ぎると、セラミックス部材の機械的強度が低下するため、セラミックス−金属接合体の破損を防止する観点から、セラミックス部材の気孔率は、20〜45%であることが更に好ましい。また、セラミックス部材の気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0030】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体に用いられるセラミックス部材は、ろう材を介して接合される接合面におけるセラミックス材料の組成が、これまでに説明した特定のセラミックス材料(以下、このようなセラミックス材料を「特定セラミックス材料」ということがある)であればよい。即ち、上記特定セラミックス材料を用いることによって、接合強度が大きく、信頼性の高いろう材接合を実現することができるため、セラミックス部材は、接合面から所定の厚さ範囲の成分が、上記特定セラミックス材料によって構成されたものであってもよいし、勿論、その全体が上記特定セラミックス材料によって構成されたものであってもよい。なお、セラミックス部材の接合面側が、上記特定セラミックス材料によって構成される場合には、少なくともセラミックス部材の厚さ方向(即ち、接合面に直交する方向)における長さの0.1mm以上の範囲が、上記特定セラミックス材料によって構成されていることが好ましく、0.3mm以上の範囲であることが更に好ましい。なお、この特定セラミックス材料によって構成される範囲の上限は、セラミックス部材の総厚さ、即ち、セラミックス部材全体が、特定セラミックス材料によって構成される場合である。
【0031】
また、セラミックス部材と金属部材とを接合するろう材としては特に制限はなく、従来公知のろう材を用いることができる。例えば、ニッケル(Ni)、鉄(Fu)、銅(Cu)、銀(Ag)、チタン(Ti)等を含有するろう材を挙げることができる。特に、接合部分の強度が高く、耐熱性、耐食性、耐衝撃性等に優れた接合を実現することができることから、例えば、Niろう(ニッケルろう)を好適例として挙げることができる。なお、上記Niろうとしては、日本工業規格の「BNi−2」等のNiろうを挙げることができる。
【0032】
また、上記したろう材は、例えば、クロム(Cr)、珪素(Si)、リン(P)、ホウ素(B)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ナトリウム(Na)、ジルコニウム(Zr)、ベリリウム(Be)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、リチウム(Li)からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を更に含んだものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合信頼性を向上させることができる。
【0033】
なお、このような添加剤の含有割合については特に制限はないが、例えば、ろう材中に、1〜50質量%の割合で含有(添加)されていることが好ましく、5〜40質量%の割合であることが更に好ましい。
【0034】
特に限定されることはないが、上記したろう材は、粒子状のろう材に少量のバインダを混ぜたペースト状、又は箔状であることが好ましい。粒子の大きさについて特に制限はないが、0.1〜500μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。箔状の場合、厚さについては特に制限はないが、例えば、0.1〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることが更に好ましい。このように構成することによって、良好なろう材接合を行うことが可能となる。
【0035】
また、特に限定されることはないが、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、図2に示すように、ろう材32の少なくとも一部(ろう材33a)が、少なくとも金属部材32の内部に浸透した状態で接合されたものであってもよい。ここで、図2は、本発明のセラミックス−金属接合体の他の実施形態を示し、セラミックス部材と金属部材との接合面に直交する断面を示す模式図である。
【0036】
即ち、本実施形態のセラミックス−金属接合体においては、セラミックス部材と金属部材と接合するろう材として、金属部材の内部に浸透し得る材料からなるろう材を用いることが好ましい。このようなろう材を用いることによって、セラミックス部材と金属部材との接合面に、ろう材が層(ろう材層)のままの状態で存在することがなく、ろう材層によるセラミックス−金属接合体の機械的強度の低下や、耐熱・耐食性の低下を有効に防止することができる。
【0037】
また、セラミックス部材と接合を行う金属部材を構成する金属材料としては、特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、ステンレス、耐熱合金、低膨張合金等の金属材料を好適に用いることができる。また、このような金属材料のうち、耐熱性、及び耐食性に優れ、且つ、電気抵抗の低い金属材料として、SUS316、SUS310S、SUS430、SUS630、S816、インコネル600、インコネル718等を好適例として挙げることができる。また、このような金属材料のうち、低膨張であり、且つ耐熱性に優れ、電気抵抗の低い金属材料としては、インコロイ909、コバール等を好適例として挙げることができる。このような金属材料を用いることによって、本実施形態のセラミックス−金属接合体を、例えば、自動車の排気系に設置される排ガス処理装置等の装置部品に適用することができる。
【0038】
また、金属部材を構成する金属材料としては、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有するものであることが好ましい。このような金属体を含有する金属材料を用いることによって、ろう付け時の冷却過程で生じるセラミックスと金属間の熱応力を緩和し、ろう付け部の破損を防止することができる。
【0039】
なお、このような金属体は、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Ti(チタン)、Co(コバルト)、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Al(アルミ)からなる群から選択される少なくとも1種を含む金属体であり、例えば、耐熱性に優れ、電気抵抗の低い金属材料として公知のフェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼等を用いることができる。より具体的には、SUS430、SUS630等を挙げることができる。
【0040】
なお、セラミックス部材と金属部材との形状については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体の使用用途に応じて適宜選択することができる。なお、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、セラミックス部材と金属部材とが共に導電性を有するものであるため、例えば、セラミックス部材を、ヒータ等の抵抗体、或いは、別のセラミックス部材としての抵抗体に接続されたセラミックス製の電極端子とし、金属部材を、このセラミックス部材に電圧を印加するための電極端子や電極配線とすることができる。
【0041】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体は、これまでに説明した特定の組成のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料からなる金属部材とをろう材を介して接合させた接合体であれば、それ以外の構成についても特に制限はなく、本実施形態のセラミックス−金属接合体に対して、更に別の構成要素が付与されているものであってもよい。
【0042】
(2)セラミックス−金属接合体の製造方法:
次に、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法の一の実施形態について具体的に説明する。本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、これまでに説明した本実施形態のセラミックス−金属接合体を製造する製造方法である。
【0043】
本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、セラミックス部材を構成するセラミックス材料として、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料(特定セラミックス材料)を用いるものである。
【0044】
このように、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法は、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材に対して、ろう材を介して金属材料を接合するものであり、メタライズといった複雑且つコスト高となる工程を取らずとも、また、貴金属ろう材を使用せずとも、更に、活性金属ろう材を使用せずとも、非常に良好な接合強度及び信頼性を有するろう付け接合が可能となる。特に、特定のセラミックス材料からなるセラミックス部材を用いることで、セラミックス部材に対するろう材の濡れ性が大幅に向上し、上述した特別なろう材を使用しなくとも、良好なろう材接合を行うことができる。
【0045】
上記した特定セラミックス材料からなるセラミックス部材は、例えば、以下のように製造することができる。
【0046】
まず、セラミックス材料の主成分とする炭化珪素粉末(炭化珪素)と、金属珪素(金属珪素粉末)とを用意する。この際、結合材としての金属珪素の量を、セラミックス材料(即ち、炭化珪素粉末と金属珪素との合計量)100質量%に対して、30〜80質量%となる量とする。このように構成することによって、得られるセラミックス部材と金属部材とをろう材によって良好に接合することが可能となる。
【0047】
また、セラミックス部材を作製する際には、骨材となる炭化珪素粉末を構成する炭化珪素粒子として、その平均粒子径が、30〜100μmであるものを用いることが好ましい。
【0048】
なお、金属珪素粉末を構成する金属珪素粒子の平均粒子径については特に制限はないが、例えば、0.1〜50μmであることが好ましく、0.1〜15μmであることが更に好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0049】
このように用意した炭化珪素粉末(炭化珪素)と金属珪素(金属珪素粉末)とに、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を加え、混合、混練することによって、セラミックス部材を作製するためのセラミックス原料を調整する。混練の方法については特に制限はないが、例えば、混練機等を用いることができる。
【0050】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、上記セラミックス原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0051】
水の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0052】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0053】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、上記セラミックス原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0054】
その後、このようにして得られたセラミックス原料を所定の形状に成形して、未焼成のセラミックス部材を作製する。成形方法については特に制限はなく、セラミックス−金属接合体に使用するセラミックス部材を作製することが可能な方法であればよい。例えば、押出成形、射出成形、プレス成形、シート成形等の従来公知の成形方法を用いることができる。また、成形後、更に所定の形状となるように加工を行ってもよい。
【0055】
このようにして得られた未焼成のセラミックス部材を、乾燥させた後、焼成を行ってセラミックス部材を作製する。なお、乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0056】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は、例えば、大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜24時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0057】
また、金属部材の作製については、従来公知の金属加工によって、所望の形状の金属部材を作製することができる。
【0058】
以上のように形成されたセラミックス部材と、金属部材とを、ろう材を介した状態で接合してセラミックス−金属接合体を製造する。なお、ろう材の種類については特に制限はなく、上記したセラミックス−金属接合体の実施形態において説明したろう材を好適に用いることができる。
【0059】
ろう材による接合方法としては、セラミックス部材と金属部材とを接合する表面同士を当接させて、セラミックス部材と金属部材との少なくとも一方の表面に接する形でろう材を配置し、接合を行う。この際、ろう材の配置方法としては、セラミックス部材と金属部材との間に、ろう材を予め挟んでしまう方法と、セラミックス部材と金属部材とを重ね合わせて積層し、このセラミックス部材と金属部材との隙間に、ろう材を接するように配置し、ろう材を溶かすことによって、溶けたろう(ろう材)を、毛細管現象を利用して、セラミックス部材と金属部材と隙間に流し込む方法と、の2通りの方法を好適例として挙げることができる。なお、上記した毛細管現象を利用して、溶けたろうを流し込む「隙間」は、二つの部材(セラミックス部材と金属部材)を重ね合わせた際に、両部材の接合面の表面粗さや加工精度等に起因して存在する(例えば、不可避的に存在する)接合界面の隙間や、例えば、温度上昇により、接合を行う各部材の熱膨張率の差によって生じる隙間等を挙げることができる。なお、意図的にろうを流し込む隙間を形成することも可能である。
【0060】
この接合時における雰囲気、温度条件、接合体に加える圧力等については、使用するろう材の種類や、金属部材の材質、セラミックス部材と金属部材との形状及び接合面の大きさ等によって適宜設定することができる。特に、良好な真空度で、金属部材の融点以下の温度で、且つ、セラミックス部材の破壊強度以下の圧力によって接合することが好ましい。具体的な条件としては、例えば、1Pa以下の真空度であることが好ましく、0.1Pa以下であることが更に好ましく、0.01Pa以下であることが特に好ましい。温度については、620〜1140℃の温度が好ましく、780〜1090℃であることが更に好ましく、890〜1050℃であることが特に好ましい。圧力については、2MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以下であることが更に好ましく、無負荷であることが特に好ましい。
【0061】
また、本実施形態のセラミックス−金属接合体の製造方法においては、接合に使用するろう材の少なくとも一部を、金属材料に浸透させながら、セラミックス材料と金属材料とを接合することが好ましい。このように構成することによって、セラミックス材料と金属材料との接合面に、ろう材が板状部材積層体の層のままの状態で存在することがなく、得られるセラミックス−金属接合体の耐食性、機械的強度の低下を有効に防止することができる。
【0062】
(3)電極付きハニカム構造体:
次に、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態として、セラミックス部材が、多孔質セラミックスからなるハニカム構造体であり、金属部材が、このハニカム構造体に接合された金属部材である、電極付きハニカム構造体を例に更に具体的に説明する。
【0063】
本実施形態の電極付きハニカム構造体(セラミックス−金属接合体)は、セラミックス部材が、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有する筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21と、一対の電極部21,21のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部22,22と、を備えたハニカム構造体20であり、金属部材が、上記電極端子突起部22,22に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線(図3及び図4においては、金属端子部23,23である場合を示す)である電極付きハニカム構造体100Aである。
【0064】
本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、上述したハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなり、特に、電極端子突起部22,22を構成するセラミックス材料が、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するもの(即ち、これまでに説明した特定セラミックス材料)である。
【0065】
そして、セラミックス部材としての電極端子突起部22,22と、金属部材としての金属端子部23,23とが、ろう材を介して接合されている。ここで、図3は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体を模式的に示す斜視図であり、図4は、図3に示す電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。また、図5は、図3に示す電極付きハニカム構造体のハニカム構造体を示す斜視図であり、図6は、図5に示すハニカム構造体のA−A’断面を示す模式図である。また、図7は、図4に示す電極付きハニカム構造体の電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0066】
このような本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、ハニカム構造体20が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるため、ハニカム構造部4の側面に配設された一対の電極部21,21間に電流を流すことにより、ハニカム構造部4が発熱し、ヒータとして好適に用いることができる。なお、ハニカム構造体20は、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されている。
【0067】
そして、本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、金属端子部23,23と電気的に接続された状態でろう材接合される電極端子突起部22が、上述した特定セラミックス材料からなるため、セラミックス材料と金属材料との接合部分が、高い耐衝撃性を有し、高い信頼性をもった状態で接合されている。
【0068】
なお、ハニカム構造部4、電極部21、及び電極端子突起部22は、共に骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるため、各構成部材同士の熱膨張係数が近く、接合強度が高いため、ハニカム構造部4の側面への電極部21の配設を極めて簡便に行うことができる。例えば、セラミックス材料からなるハニカム構造部4に対して、金属性の電極部を直接配設することは、十分な接合強度を得ることができない。例えば、隔壁の厚みが薄く強度が低いハニカム構造部と金属とを接合した場合には、熱膨張係数の違いにより発生する熱応力により、ハニカム構造部が破損してしまうことがある。即ち、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造体の一部を構成する電極端子突起部までを、導電性を有するセラミックス材料によって形成し、このセラミックス材料からなる電極端子突起部に対して、金属材料からなる金属端子部又は金属配線を、これまでに説明した本発明のセラミックス−金属接合体における接合方法を適用してろう材接合によって接合したものである。
【0069】
このような本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aは、金属端子部23,23間に電圧を印加することにより、電極端子突起部22、及び電極部21を通じてハニカム構造部4に電流が流れ、ハニカム構造部4が抵抗体となり発熱する。
【0070】
従来、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合には、触媒を所定の温度まで昇温する必要があり、例えば、エンジン始動時には、触媒温度が低く、排ガスが十分に浄化されないという問題があったが、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、ハニカム構造部に電圧を印加して発熱させることができるため、エンジンの運転状態に関わらず、必要に応じて適宜ハニカム構造体を所定の温度まで昇温することができる。
【0071】
上記した電極端子突起部は、ハニカム構造体に電圧を印加するための電気配線等との電気的接続を確保するためのハニカム構造体側の端子であり、この電極端子突起部と、電源からの電気配線等が接続された金属端子部とが電気的に接続されている。従来のハニカム構造体において、例えば、セラミックス材料と金属材料とを接合する場合には、物理蒸着や化学蒸着等の極めて煩雑な接合が必要とされていたが、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、セラミックス材料からなる電極端子突起部と、金属材料からなる金属端子部とが、ろう材を介して電気的に接続された状態で接合されているため、簡便な方法によって、優れた耐熱性、及び高い耐衝撃性を有する接合が実現されている。
【0072】
なお、一対の電極部(換言すれば、電極端子突起部に接合されたそれぞれの金属端子部)間に印加する電圧は、ハニカム構造体を昇温する温度や、ハニカム構造部の材質等によって適宜選択することができるが、例えば、50〜300Vが好ましく、100〜200Vが更に好ましい。例えば、自動車の電気系統に電圧200Vの電源を使用している場合には、当該200Vの電圧を印加することが好ましい。
【0073】
本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部が、凸形状又は凹形状に形成されてなるとともに、金属端子部が、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成されてなることが好ましい。図3〜図5においては、電極端子突起部22が、凸形状に形成され、金属端子部が凹形状に形成された場合の例を示している。なお、図8に示すように、電極端子突起部22が、凹形状に形成され、金属端子部が凸形状に形成されていてもよい。ここで、図8は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0074】
なお、例えば、図7に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなる場合には、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の厚さが0.05〜5mmであることが好ましく、0.1〜2mmであることが更に好ましく、0.2〜1mmであることが特に好ましい。このように構成することによって、金属端子部の見かけの強度が小さくなり、凸形状の電極端子突起部への応力(具体的には、熱膨張の違いにより発生する熱応力)が軽減され、ヒートサイクルによる、電極端子突起部及び金属端子部の破損、また、ろう材による接合部分の剥離等を有効に防止することができる。なお、上記した凹形状を形成する壁部分の厚さは、電極端子突起部及び金属端子部の大きさによって異なるため、上記した範囲に限定されることはない。
【0075】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、例えば、図9に示すように、電極端子突起部22が、凸形状に形成されてなるとともに、金属端子部23が、凹形状に形成されてなり、金属端子部23は、凹形状を形成する壁部分の端面形状が、凹形状の内周側が突出するような先細り形状であることが好ましい。このように構成することによって、金属端子部23の凹形状を形成する壁部分の端面における、圧縮及び引張応力を小さくすることができる。ここで、図9は、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、電極端子突起部と金属端子部とを拡大して示す拡大断面図である。
【0076】
なお、本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、電極端子突起部と金属端子部とがろう材を介して接合した場合の例を示しているが、例えば、特定のセラミックス材料からなる電極端子突起部に対して、金属性の配線をろう材によって直接接合した電極付きハニカム構造体であってもよい。即ち、本実施形態の電極付きハニカム構造体は、電極端子突起部が、これまでに説明した特定セラミックス材料によって構成されているため、電極端子突起部に対しては、如何なる形状の金属材料であっても良好にろう材接合することが可能であり、金属部材側の形状については特に制限されることはない。
【0077】
また、電極端子突起部は、金属端子部(金属部材)との接合面近傍が、上記特定セラミックス材料によって形成されたものであってもよい。即ち、突起部全体が特定セラミックス材料によって形成されていなくとも、少なくとも、その接合面側の組成が上記特定セラミックス材料であれば、ろう材によって金属端子部との接合を良好に行うことができる。
【0078】
電極端子突起部と金属端子部と接合するためのろう材は、本実施形態のセラミックス−金属接合体にて説明したろう材を好適に用いることができる。また、このようなろう材に各種添加剤が更に含有されたものであってもよい。
【0079】
また、電極部と電極端子突起部とは、炭化珪素粒子と珪素との比率が同一の導電性セラミックス材料からなるものであってもよいし、異なる比率の導電性セラミックス材料からなるものであってもよい。なお、電極部の成分と電極端子突起部の成分とが同じ(又は近い)成分である場合には、電極部と電極端子突起部の熱膨張係数が同じ(又は近い)値になるため好ましい。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部と電極端子突起部との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部が電極部から剥れたり、電極端子突起部と電極部との接合部分が破損したりすることを良好に防止することができる。
【0080】
なお、図3〜図7に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aと、円柱状の突起部22b(凸形状の部分)とによって構成されていることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0081】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから外れ易くなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0082】
電極端子突起部22において、基板22aの、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)は、電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さの、20〜100%であることが好ましく、30〜100%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。20%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0083】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜20mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bと金属端子部23とをより強固に接合させることができる。3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。20mmより太いと、金属端子部23と接続させ難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、金属端子部23を良好に接合させるとことができる。3mmより短いと金属端子部23と接合させ難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0084】
図4に示すように、電極端子突起部22は、電極部21の「セル2の延びる方向」における中央部に配置されていることが好ましい。これにより、ハニカム構造部4全体を均等に加熱し易くなる。
【0085】
電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗は、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.01〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が0.01Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0086】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜50μmであることが好ましく、10〜35μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、5μmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極端子突起部22の平均細孔径が、50μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0087】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aの、「一対の電極部21,21のそれぞれに配設された電極端子突起部間」で測定された400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、5〜20Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0088】
また、金属端子部を構成する金属材料の種類については特に制限はないが、例えば、低熱膨張金属を使用し、ヒートサイクル(加熱冷却)時の熱応力を低減可能なものであることが好ましい。具体的な金属材料としては、例えば、コバール、インコロイ909、SUS430等を好適例として挙げることができる。
【0089】
また、本実施形態の電極付きハニカム構造体に用いられる金属端子部は、これまでに説明した電極端子突起部との電気的接続を行うための端子であり、金属材料によって形成されたものである。金属端子部の形状は、これまでに説明した電極端子突起部と、ろう材を介して電気的、且つ物理的な接続を行うことが可能なものであればよい。
【0090】
また、この金属端子部は、薄肉金属を使用することによっても、ヒートサイクル時の熱応力を低減することができる。即ち、上述したように、金属端子部のろう材を介して接合される部分の肉厚(例えば、図4における金属端子部22の凹形状を形成する壁部分の厚さ)を薄くすることで、接合部分における金属端子部の熱膨張量を小さくして、ヒートサイクルによる、電極端子突起部及び金属端子部の破損、また、ろう材による接合部分の剥離等を有効に防止することができる。
【0091】
この金属端子部は、ハニカム構造体に電圧を印加するための電源と、金属配線等によって電気的に接続されている。金属端子部と金属配線とは共に金属であるため、従来公知の金属同士の接合方法(例えば、溶接やはんだ付け等)によって、低抵抗な電気的接続が可能である。
【0092】
ハニカム構造部は、骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなり、図3〜図7に示すように、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する(隔壁1全体の外周を取り囲むように配設された)外周壁3とを有するものである。このハニカム構造部は、上述したように骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料(即ち、導電性を有するセラミックス材料)からなるため、電極部を通じて電圧が印加された際に、ハニカム構造部が抵抗体として作用し、ハニカム構造体を発熱させる。
【0093】
ハニカム構造体20を構成するハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましく、20〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0094】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁厚さは、50〜150μmであることが好ましく、70〜100μmであることが更に好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがあり。隔壁厚さが150μmより厚いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0095】
ハニカム構造部4は、セル密度が40〜200セル/cm2であることが好ましく、70〜100セル/cm2であることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cm2より低いと、触媒担持面積が少なくなることがあり、セル密度が200セル/cm2より高いと、ハニカム構造体20を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることがある。
【0096】
また、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜30μmであり、5〜20μmであることが好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗を1〜20Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が大きくなるため好ましくない。炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム構造体20の400℃における体積電気抵抗が小さくなるため好ましくない。また、炭化珪素粒子の平均粒子径が30μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがあるため好ましくない。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0097】
また、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗は、1〜20Ωcmであることが好ましく、5〜20Ωcmであることが更に好ましい。400℃における体積電気抵抗が1Ωcmより小さいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における体積電気抵抗が20Ωcmより大きいと、200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがあるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における体積電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0098】
また、ハニカム構造体20の400℃における電気抵抗は、1〜20Ωであることが好ましく、5〜20Ωであることが更に好ましい。400℃における電気抵抗が1Ωより小さいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れるため好ましくない。400℃における電気抵抗が20Ωより大きいと、例えば200Vの電源によってハニカム構造体20に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなるため好ましくない。ハニカム構造体の400℃における電気抵抗は、二端子法により測定した値である。
【0099】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗より低いものであり、更に、電極部21の400℃における体積電気抵抗が、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下であり、0.02〜10%であることが好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗を、ハニカム構造部4の400℃における体積電気抵抗の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0100】
隔壁1の気孔率は、35〜60%であることが好ましく、45〜55%であることが更に好ましい。気孔率が、35%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうため好ましくない。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下するため好ましくない。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0101】
隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径が15μmより大きいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎるため好ましくない。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0102】
また、ハニカム構造部4を構成する隔壁1及び外周壁3が、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を主成分とすることが好ましく、炭化珪素及び珪素のみから形成されていてもよい。隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素及び珪素のみから形成される場合においても、10質量%以下の微量の不純物が含有されてもよい。隔壁1及び外周壁3が、「炭化珪素及び珪素」以外の物質(微量の不純物)を含有する場合、隔壁1及び外周壁3に含有される他の物質としては、酸化珪素、ストロンチウム等を挙げることができる。ここで、「隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、隔壁1及び外周壁3が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0103】
図3〜図6に示すように、一対の電極部21,21のそれぞれは、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びると共に両端部間(両端面11,12間)に亘る「帯状」に形成されていることが好ましい。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されていることが好ましい。このように、電極部21を帯状に形成し、帯状の電極部21の長手方向が、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びるようにして、更に、電極部21がハニカム構造部4の両端部間(両端面11,12間)に亘るようにしたため、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。また、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心部Oを挟んで反対側に配設されるようにすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。
【0104】
電極部21の、「ハニカム構造部4の周方向R」における長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さ(外周の長さ)の、1/30〜1/4であることが好ましく、1/15〜1/4であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、ハニカム構造部4全体をより均等に加熱することができる。電極部21の、ハニカム構造部4の周方向Rにおける長さ(幅)が、ハニカム構造部4の側面5の、周方向Rにおける長さの、1/30より短いと、均一に発熱できないことがある。1/4より長いと、ハニカム構造部4の中心部付近が加熱され難くなることがある。
【0105】
電極部21の厚さは、0.05〜2.0mmであることが好ましく、0.1〜1.5mmであることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、均一に発熱することができる。電極部21の厚さが0.05mmより薄いと、電気抵抗が高くなり均一に発熱できないことがある。2.0mmより厚いと、キャニング時に破損することがある。
【0106】
電極部21は、図10Aに示すように、外周壁3の表面に配設されていることが好ましい。また、電極部21は、図10Bに示すように、外周壁3の内部に埋め込まれるようにして配設されていてもよい。更に、電極部21は、図10C、及び図10Dに示すように、一部(外周壁に接触している側)が外周壁3の内部に埋め込まれた状態で、残りの一部(表面側の一部)が外周壁3から外に(表面側に)出た状態となっていることも好ましい態様である。図10Cにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さより薄い態様が示されている。図10Dにおいては、電極21の外周壁3の内部に埋め込まれた部分の厚さが、外周壁3の厚さと同じ厚さとなっている態様が示されている。
【0107】
ここで、図10A〜図10Dは、本発明のセラミックス−金属接合体の更に他の実施形態である電極付きハニカム構造体の、セルの延びる方向に直交する断面における、外周壁に電極部が配設された状態を示す模式図である。なお、図10A〜図10Dにおいては、外周壁3の一部及び片方の電極部21のみが表され、隔壁等は表されていない。
【0108】
電極部21は、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ(又は近い)成分となるため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ(又は近く)になる。また、材質が同じ(又は近く)になるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。このため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすること良好に防止することができる。
【0109】
電極部21の400℃における体積電気抵抗は、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.01〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極部21の400℃における体積電気抵抗をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の400℃における体積電気抵抗が0.01Ωcmより小さいと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の400℃における体積電気抵抗が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。
【0110】
電極部21は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、45%より高いと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0111】
電極部21は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な体積電気抵抗が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、体積電気抵抗が高くなり過ぎることがある。電極部21の平均細孔径が、20μmより大きいと、強度が弱く破損することがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0112】
電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の400℃における体積電気抵抗を、0.01〜2.0Ωcmにすることができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の400℃における体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極部21の強度が弱く破損することがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0113】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率が、20〜45質量%であることが好ましく、25〜40質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、適切な体積電気抵抗が得られる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。そして、45質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0114】
本実施形態の電極付きハニカム構造体100Aにおいては、電極部21の気孔率が30〜45%であり、電極部の平均細孔径が5〜20μmであり、電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される「珪素の質量」の比率が、20〜50質量%であり、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであり、電極部21の体積電気抵抗が、0.01〜2.0Ωcmであることが好ましい。これにより、特に、通電時に均一にハニカム構造体を発熱することができる。
【0115】
本実施形態の電極付きハニカム構造体においては、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部の、ハニカム構造部の周方向における中央部において、ハニカム構造部の外周に接する接線を引いたときに、当該接線が、いずれかの隔壁と平行であることが好ましい。これにより、キャニング時に破損し難くなる。
【0116】
また、ハニカム構造体20の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜2mmであることが好ましい。0.1mmより薄いと、ハニカム構造体20の強度が低下することがある。2mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0117】
ハニカム構造体20は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形又は六角形であることが好ましい。セル形状をこのようにすることにより、ハニカム構造体20に排ガスを流したときの圧力損失が小さくなり、触媒の浄化性能が優れたものとなる。
【0118】
また、ハニカム構造体20の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mm2であることが好ましく、4000〜10000mm2であることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0119】
ハニカム構造体20のアイソスタティック強度は、1MPa以上であることが好ましい。アイソスタティック強度が1MPa未満であると、ハニカム構造体を触媒担体等として使用する際に、破損し易くなることがある。アイソスタティック強度は水中にて静水圧をかけて測定した値である。
【0120】
次に、このような電極付きハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0121】
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜30質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜30μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、体積電気抵抗が小さくなり過ぎることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、成形原料全体の質量に対して30〜78質量%であることが好ましい。
【0122】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、成形原料全体に対して2〜10質量%であることが好ましい。
【0123】
水の含有量は、成形原料全体に対して20〜60質量%であることが好ましい。
【0124】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、成形原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0125】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、成形原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0126】
また、成形原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、成形原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0127】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0128】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0129】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとするハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0130】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されず、例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0131】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0132】
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0133】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜45質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、製造時に変形し易くなることがある。20μmより大きいと、体積電気抵抗が大きくなり過ぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。炭化珪素粒子及び金属珪素の合計質量は、電極部形成原料全体の質量に対して40〜80質量%であることが好ましい。
【0134】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜15質量%であることが好ましい。
【0135】
水の含有量は、電極部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0136】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0137】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0138】
また、電極部形成原料は、焼結助剤として炭酸ストロンチウムを含有することが好ましい。焼結助剤の含有量は、電極部形成原料全体に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0139】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0140】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。また、電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の形状になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0141】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0142】
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、ハニカム構造体の実施形態にて説明した種々の形状に形成することができる。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。なお、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0143】
ここで、電極端子突起部形成用部材は、本発明のセラミックス−金属接合体におけるセラミックス部材を構成する特性セラッミクス材料となる原料(電極端子突起部形成原料)を用い、この電極端子突起部形成原料を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部形成原料としての特性セラッミクス材料は、セラミックス材料100質量%に対して、結合材としての珪素を、30〜80質量%含有するものであり、骨材としての炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmであることが好ましい。また、得られる電極端子突起部の気孔率が10〜50%となるように、造孔材等の配合量を調整することが更に好ましい。
【0144】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を、上記範囲を満たすように添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。
【0145】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して1〜15質量%であることが好ましい。
【0146】
水の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10〜45質量%であることが好ましい。
【0147】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して2質量%以下であることが好ましい。
【0148】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、電極端子突起部形成原料全体に対して10質量%以下であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、5〜50μmであることが好ましい。5μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。50μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0149】
炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して混練する方法については特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0150】
また、得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0151】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0152】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体(ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分)に貼り付ける方法は、特に限定されないが、上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に貼り付く面(ハニカム成形体に接触する面)」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0153】
そして、電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体を乾燥し、焼成して、ハニカム構造部と、このハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部とを作製する。
【0154】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0155】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜24時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0156】
なお、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【0157】
次に、金属材料からなる金属端子部を作製する。なお、金属端子部の作製は、ハニカム構造部の作製の前に行ってもよい。
【0158】
なお、金属端子部の形状は、電極端子突起部との接合部分における形状が相補形状となる、凹形状又は凸形状に形成することが好ましい。金属端子部を形成するための金属材料としては、コバール、インコロイ909、SUS430等を好適に用いることができる。
【0159】
次に、得られた金属端子部と、ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部の表面に配置された電極端子突起部とを、ろう材を介して接合する。具体的には、例えば、金属端子部と電極端子突起部との間に、薄膜状のろう材を配置して、所定の温度で加熱してろう材接合方法を挙げることができる。
【0160】
また、ろう材による接合方法は、上述した方法に限定されることはなく、例えば、粒子状のろう材にバインダを混ぜることによって、ペースト状のろう材を作製し、このペースト状のろう材を用いて、金属端子部と電極端子突起部とを接合する方法であってもよい。この際、ペースト状のろう材を、金属端子部と電極端子突起部との間に直接配置して接合することもできるし、或いは、金属端子部と電極端子突起部との接合面を先に当接させ(即ち、ろう材を介さずに当接させ)、その接合面の端部に、上記ペースト状のろう材を配置して、接合面の隙間にろう材が流れ込むようにして接合することもできる。このようにして、図3〜図7に示すような電極付きハニカム構造体を製造することができる。
【0161】
ろう材の種類については、これまでにセラミックス−金属接合体の実施形態にて説明したろう材を好適に用いることができる。また、接合時における温度や、接合雰囲気(例えば、真空中での接合)等については、使用するろう材の種類に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0162】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0163】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを70:30の質量割合で混合し、これに、焼結助剤として炭酸ストロンチウム、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練して坏土を作製した。なお、実施例1においては、炭化珪素(SiC)粉末を構成する炭化珪素粒子として、平均粒子径が30μmの粒子を用いた。なお、本実施例において、平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0164】
得られた坏土を押出成形機を用いて成形し、円筒形状の未焼成のセラミックス部材を得た。得られた未焼成のセラミックス部材を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥した後に焼成し、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材を作製した。なお、セラミックス部材のサイズは、端面の直径が8.3mmとし、長さを20mmとした。
【0165】
一方、金属部材として、丸棒形状の金属部材に切削加工を施し、内径が8.4mmで、内寸8mm(キャップ形状の凹部の深さ)のキャップ形状の金属端子を2個作製した。
【0166】
得られたセラミックス部材の両側の端部に、2つの金属部材をそれぞれ嵌め合わせ、Niろう粒子を含有するペースト状のろう材を用いて、セラミックス部材と2つの金属部材とをろう材接合することによってセラミックス−金属接合体を作製した。即ち、実施例1のセラミックス−金属接合体は、円筒形状のセラミックス部材の両側の端部に、キャップ形状の金属部材がろう材を介して接合された接合体である。なお、ペースト状のろう材に使用したNiろう粒子の平均粒子径は、0.1mmであった。
【0167】
ろう材による接合の条件は、0.01Pa以下の真空雰囲気とし、温度を1000〜11100℃、セラミックス部材と金属部材とを押圧する圧力は無負荷とした。
【0168】
このようにして得られたセラミックス−金属接合体について、以下の方法で接合強度の評価を行った。評価結果(測定結果)を表1に示す。なお、表1中の「金属珪素の含有割合」は、セラミックス材料中の、結合材としての珪素の割合(質量%)を示す。
【0169】
【表1】
【0170】
(接合強度)
セラミックス−金属接合体を構成するセラミックス部材の両側の端部に接合された、それぞれの金属端子同士を、セラミックス部材の端部外側に向けて引っ張ることによって、セラミックス−金属接合体の接合強度の評価を行った。
【0171】
なお、接合強度の評価においては、金属端子同士を、0.01MP毎に力(引張力)を増加させながら引っ張り、セラミックス部材と金属端子との接合が解除される時点の力を測定した。なお、5MPaの力で引っ張った場合でも、セラミックス部材と金属端子との接合が解除されないものを「合格」とした。なお、表1においては、上記合格の場合を、「>5MPa」として示す。また、5MPa到達前に、接合が解除された場合には、接合が解除された時点における力の値を表1に示す。
【0172】
(実施例2及び3)
金属珪素の含有割合、及び炭化珪素粒子の平均粒子径を、表1に示すように変更以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、接合強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0173】
(比較例1)
金属珪素の含有割合、及び炭化珪素粒子の平均粒子径を、表1に示すように変更以外は、実施例1と同様にしてセラミックス−金属接合体を製造した。得られたセラミックス−金属接合体について、接合強度の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0174】
(結果)
表1に示すように、実施例1〜3のセラミックス−金属接合体は、製造時においてセラミックス部材に対するろう材の濡れ性が極めて良好であり、接合体の接合強度が大きい結果となった。一方、金属珪素の含有割合が20%の比較例1は、ろう材の濡れ性が低く、セラミックス部材と金属部材との接合が困難であり、極めて接合強度が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明のセラミックス−金属接合体は、セラミックス材料と金属材料とを非常に良好な接合強度で、極めて簡便に接合された接合体であり、安価な製造が求められる大量生産品の接合体として良好に用いることができる。また、本発明のセラミックス−金属接合体の製造方法は、上記したセラミックス−金属接合体を簡便且つ低コストに製造することが可能な製造方法として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0176】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、5:側面、11:一方の端面、12:他方の端面、20:ハニカム構造体、21:電極部、22:電極端子突起部、22a:基板、22b:突起部、23:金属端子部、24:ろう材、25:隙間、26:結晶化ガラス、27:金属被膜、31:セラミックス部材、32:金属部材、33:ろう材、33a:ろう材(金属部材の内部に浸透したろう材)、100:セラミックス−金属接合体、100A:セラミックス−金属接合体(電極付きハニカム構造体)、O:中心部、R:周方向。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とが、ろう材を介して接合されてなり、
前記セラミックス材料が、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス−金属接合体。
【請求項2】
前記骨材としての前記炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmである請求項1に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項3】
前記金属部材を構成する金属材料が、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有する請求項1又は2に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項4】
前記セラミックス部材が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体であり、
前記金属材料が、前記電極端子突起部に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線であり、
前記セラミックス部材としての前記電極端子突起部と、前記金属部材としての前記金属端子部又は前記金属配線とが、前記ろう材を介して接合されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項5】
骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、
前記セラミックス材料として、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料を用いるセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項6】
前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する請求項5に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項1】
骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有する多孔質のセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属部材とが、ろう材を介して接合されてなり、
前記セラミックス材料が、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス−金属接合体。
【請求項2】
前記骨材としての前記炭化珪素粒子の平均粒子径が、30〜100μmである請求項1に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項3】
前記金属部材を構成する金属材料が、オーステナイト相の冷却によってフェライト変態、マルテンサイト変態、ベイナイト変態、及びパーライト変態の四つの相変態のうちの少なくとも一つの相変態を起こし得る金属体を含有する請求項1又は2に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項4】
前記セラミックス部材が、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部と、前記一対の電極部のそれぞれの表面に配設された電極端子突起部と、を備えたハニカム構造体であり、
前記金属材料が、前記電極端子突起部に電気的に接続された金属材料からなる金属端子部又は金属配線であり、
前記セラミックス部材としての前記電極端子突起部と、前記金属部材としての前記金属端子部又は前記金属配線とが、前記ろう材を介して接合されたものである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセラミックス−金属接合体。
【請求項5】
骨材としての炭化珪素粒子、及び前記炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するセラミックス材料からなるセラミックス部材と、金属材料とを、ろう材を介して接合する工程を備え、
前記セラミックス材料として、前記セラミックス材料100質量%に対して、前記結合材としての前記珪素を、30〜80質量%含有するセラミックス材料を用いるセラミックス−金属接合体の製造方法。
【請求項6】
前記ろう材の少なくとも一部を、前記金属材料に浸透させながら、前記セラミックス材料と前記金属材料とを接合する請求項5に記載のセラミックス−金属接合体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【公開番号】特開2011−195378(P2011−195378A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63835(P2010−63835)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]