説明

セラミックス・有機物複合構造体の製造方法

【課題】セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有することを特徴とするセラミックス・有機物複合構造体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス材料は、微細組織と結晶構造とをナノサイズで制御することにより、新しい特徴と機能が発現し、用途と応用が格段に広がることを期待できる。例えば、ナノメーターサイズのセラミックス微粒子を規則的に配列させた構造は、新規な導電性、光学的性質、磁気的性質等を発現すると期待される。
【0003】
このようなナノ構造を制御する技術の例として、例えば、特許文献1では、互いに非相溶な2種類以上のポリマー鎖が各々末端で結合したブロックポリマーを用いて金属微粒子をラメラ状に配列する方法が提案されている。しかしながら、このような従来の方法では、ポリマー鎖が鎖状分子であるため、官能基等を付与しても物性の変化が現れにくく、合成されたポリマー鎖の単離が困難である。また、ポリマー鎖の一端は親水基、もう一端は疎水基となり、各々末端で結合して規則的に一次元配列されるため、3次元的な配列等は困難であり、粒子の配列がラメラ状に限られてしまうという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−72952公報
【特許文献2】特開平7−252188公報
【特許文献3】特開平7−247256公報
【特許文献4】特開2005−325085公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体の製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明においては、下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有することを特徴とするセラミックス・有機物複合構造体の製造方法を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)
【0009】
本発明によれば、上記工程を経ることにより、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるという利点を有する。
【0010】
また、本発明においては、上記のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法により得られたセラミックス・有機物複合構造体を、焼結する焼結工程を有することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記工程を経ることにより、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス焼結体を得ることができるという利点を有する。
【0012】
また、本発明においては、下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンにセラミックス微粒子が包接され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列していることを特徴とするセラミックス・有機物複合構造体を提供する。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)
【0015】
本発明によれば、上記レゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンにセラミックス微粒子が包接され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体であるので、上記セラミックスの種類等に対応した所望の性能を持つ高性能なセラミックス・有機物複合構造体とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法、セラミックス焼結体の製造方法およびセラミックス・有機物複合構造体について、以下詳細に説明する。
【0018】
A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法
まず、本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法は、下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)
【0021】
本発明によれば、上記工程を経ることにより、セラミックス微粒子が環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス・有機物複合体を得ることができ、環状カリックスアレーン同士のアルキル鎖が結合等することにより、上記セラミックス・有機物複合体がゲル化して3次元的に規則的な配列構造が形成されるので、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるという利点を有する。
【0022】
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法を、図を用いて説明する。
図1は本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法の流れ(セラミックス・有機物複合構造体作製フロー図)の一例を示したものである。図1に示すように、この例では、まず、環状カリックスアレーン合成工程によって、上記一般式(1)に示される環状カリックスアレーンを合成する。次に、上記環状カリックスアレーン合成工程の後、図1に示すように混合工程を経る。上記混合工程においては、上記環状カリックスアレーン合成工程で得られた環状カリックスアレーンを、所定の温度で、例えばエタノール等の親水性溶媒中に溶解させる。これに、さらに所望のセラミックス微粒子を添加して混合することにより、図2で示される上記一般式(1)のレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーン1の親水基Rを上記セラミックス微粒子表面の親水基に溶媒和した親水性溶媒に付着させて、図3で例示するようにセラミックス微粒子2と、それを包接する環状カリックスアレーン部3(複数の環状カリックスアレーン1からなる)とからなるセラミックス・有機物複合体4を得ることができる。上記混合工程の後、通常、水添加工程が行われる。上記水添加工程においては、上記混合工程において用いるエタノール等の親水性溶媒に水を加える。これにより、環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子との間の水素結合を安定化させることができる。さらに、上記水添加工程の後に、ゲル化工程が行われる。上記ゲル化工程においては、上記環状カリックスアレーン合成工程、混合工程、水添加工程を経て得られた図3で示されるセラミックス・有機物複合体4を含有した溶液を所定の温度まで冷却してゲル化する。これにより、図4に示されるような、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体5を得ることができる。
【0023】
このようなセラミックス・有機物複合構造体の製造方法においては、少なくとも上記のレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、上記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明に必須の工程である混合工程、ゲル化工程と、その他の工程について詳細に説明する。
【0024】
1.混合工程
本発明における混合工程について説明する。本発明における混合工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、後述する環状カリックスアレーン合成工程で得られた環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを所定の温度で、所定の溶媒中にて混合することにより、環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体を得る工程である。具体的には、エタノール溶媒中に環状カリックスアレーンを添加して、所定の温度で溶解させた後、さらに所望のセラミックス微粒子を、所定の量、添加して攪拌・超音波分散等する方法が挙げられる。
【0025】
本工程を経ることにより、セラミックス微粒子の表面を環状カリックスアレーンによって包接した所望のセラミックス・有機物複合体を得ることができる。これは以下の理由によるものと推定することができる。図2は、本工程で使用される上記一般式(1)のレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンの化学立体図である。図2で示されるように、上記環状カリックスアレーンには、親水基Rと疎水基Rが存在している。一方、セラミックス微粒子は、通常その表面にOH基等の親水基を有している。上記環状カリックスアレーンを、所定の温度で、エタノール等の親水性溶媒に溶解させた後、粒子表面に親水基を有しているセラミックス微粒子を添加すると、セラミックス微粒子の表面に存在する親水基は極性を持つ親水性溶媒と静電的結合あるいは水素結合を作る。さらに、図2中に示される環状カリックスアレーンの親水基Rがセラミックス微粒子表面の親水基に溶媒和した上記親水性溶媒と静電的結合あるいは水素結合を作る。このため、セラミックス微粒子2の表面を複数の環状カリックスアレーン1が覆うことができ、図3で示すようなセラミックス微粒子2と、それを包接する環状カリックスアレーン部3とからなるセラミックス・有機物複合体4を得ることができる。
【0026】
本発明に用いられる上記環状カリックスアレーンは、図2で図示されるような、上記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなるものである。上記環状カリックスアレーンは、親水基Rおよび疎水基Rを有している。すなわち、親水性および疎水性の両方の性質を兼ね備えた両親媒性という性質を持っているものである。親水基は極性を持つ親水性溶媒等と静電的結合あるいは水素結合を作る。一方、疎水基は水を避けるよう疎水基同士で凝集する。本工程においては、親水性の溶媒中に上記環状カリックスアレーンを、所定の温度で溶解させ、セラミックス微粒子を添加して攪拌させた場合、上記環状カリックスアレーンの親水基Rがセラミックス微粒子表面の親水基に溶媒和した親水性溶媒と静電的結合あるいは水素結合を作って付着する。一方、疎水基Rはセラミックス微粒子表面とは逆方向を向いて存在している。すなわち、図3においては、環状カリックスアレーン部3のセラミックス微粒子2側に親水基Rが付着し、疎水基Rを外側にしてセラミックス微粒子が環状カリックスアレーンにより包接されている。上記疎水基Rは、後述するゲル化工程の際には、複数の疎水基R同士が結合して、セラミックス・有機物複合体同士を3次元的に規則的に配列させる役割を有している。
【0027】
上記Rとしては、通常、ヒドロキシル基、またはアセチレン基であり、中でも、ヒドロキシル基が好ましい。
上記Rとしては、通常、炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基である。上記Rが直鎖状アルキル基の場合には、中でも炭素数が10、11、17のものが後述するゲル化工程において、ゲル化しやすい等の理由から好ましい。
【0028】
上記環状カリックスアレーンの上記溶媒中の濃度としては、後述するセラミックス微粒子の濃度、平均粒径等によっても変化するものであるが、上記セラミックス微粒子を包接して、後述するゲル化工程において、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる濃度であれば、特に限定されるものではない。具体的には、0.5〜20wt%の範囲内、中でも、0.5〜5wt%の範囲内であることが好ましい。上記範囲内であれば、上記セラミックス微粒子を、上記環状カリックスアレーンによって、過不足なく包接できる。すなわち、上記範囲内であれば、セラミックス微粒子表面に、環状カリックスアレーンによって包接されていない部分が少なく、さらに、セラミックス微粒子に包接しないような余分な環状カリックスアレーンを最小限とし、上記セラミックス微粒子をより均一に包接できる。また、後述するゲル化工程において、所望のゲル化が十分可能である。
【0029】
上記環状カリックスアレーンの製造方法としては、上記一般式(1)で示される所望のレゾルシン4量体からなる環状カリックスアレーンが得られるものであれば、特に限定されるものではない。具体的な方法については、後述する「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法3.その他工程(1)環状カリックスアレーン合成工程」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0030】
本工程に用いられる上記セラミックス微粒子としては、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体とした場合に、所望の性能が得られるものであれば特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。上記用途およびその用途に適したセラミックス微粒子としては、例えば(光)触媒として使用するような場合には、上記セラミックス微粒子としてTiO等を選択することが好ましい。
【0031】
上記セラミックス微粒子の平均粒径としては、上記セラミックス微粒子を3次元的に規則的に配列した所望のセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、100nm以下、中でも、1〜75nmの範囲内であることが好ましい。
【0032】
上記セラミックス微粒子の上記溶媒中の濃度としては、上記環状カリックスアレーンの量、セラミックス微粒子の平均粒径等によっても変化するものであるが、上記セラミックス微粒子が十分に包接され、後述するゲル化工程において、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる濃度であれば、特に限定されるものではない。具体的には、0.5〜20wt%の範囲内、中でも、0.5〜5wt%の範囲内であることが好ましい。
【0033】
また、本発明に用いられる上記溶媒としては、本工程において、上記環状カリックスアレーンを溶解させることができ、後述するゲル化工程において、所望のゲル化を行うことができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸、DEG(ジエチレングリコール)等が好ましく、中でも、高溶解性、高沸点である等の理由から、ジエチレングリコールが好ましい。
また、本発明においては、上記親水性溶媒に、後述する水添加工程を経ることにより水を添加することが好ましい。水は、上記セラミックス微粒子の表面の親水基と水和して、この水和した水により環状カリックスアレーンの親水基の水素結合を安定化させることができる。このため、例えば、環状カリックスアレーンにより包接されていないセラミックス微粒子表面部分が減少することなどにより、セラミックス微粒子を環状カリックスアレーンがより安定的に、全体を包接することができる。したがって、後述するゲル化工程においてゲル化した際に、配列の乱れ等が少なく、セラミックス微粒子が3次元的により規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。
【0034】
上記溶媒の量としては、上記環状カリックスアレーン、セラミックス微粒子、また、後述する水添加工程における水の添加量等によって変化するものであり、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる量であれば、特に限定されるものではなく、所望の条件に応じて適宜選択することができる。
【0035】
本工程において、環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを溶媒中にて混合して、環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体を得るための、上記所定の温度としては、上記環状カリックスアレーンと上記セラミックス微粒子とが上記溶媒中に均一に溶解して、所望の上記セラミックス・有機物複合体が得ることができればよく、特に限定されるものではない。
【0036】
2.ゲル化工程
次に、本発明におけるゲル化工程について説明する。本発明におけるゲル化工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程、水添加工程を経ることにより得られた環状カリックスアレーンによって包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体をゲル化させることにより、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得る工程である。より具体的な方法としては、上記混合工程、水添加工程を経て得られた、上記セラミックス・有機物複合体を含有した溶液の温度を下げて冷却することにより、セラミックス・有機物複合体をゲル化させ、その後、乾燥等して不純物を除去することにより上記セラミックス・有機物複合構造体を得る方法等が挙げられる。
【0037】
本工程を経ることにより、上記セラミックス・有機物複合体をゲル化させることができ、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。これは以下の理由によるものと推定することができる。すなわち、混合工程において得られた上記セラミックス・有機物複合体とは、図3で示すようなセラミックス微粒子2と、それを包接する環状カリックスアレーン部3とからなるものである。ここで、上記環状カリックスアレーンは、図2で示されるように、親水基Rと疎水基Rを持っており、親水基Rは上記セラミックス微粒子表面の親水基に静電的結合あるいは水素結合を作って親水性溶媒等と結合している。一方、疎水基Rはセラミックス微粒子とは逆方向を向いている。混合工程や、水添加工程において、所定の温度に保っている状態では、それぞれのセラミックス・有機物複合体が溶媒中に溶解した液体状態にある。本工程においては、混合工程や、水添加工程において、所定の保持された温度から温度を下げて、セラミックス・有機物複合体が溶媒中に溶解している溶液の冷却を行う。温度を下げて冷却し、ゲル化する温度(ゲル化温度)に達すると、上記疎水基R同士で結合が起きる。さらに、上記親水基R同士で水素結合が起きる。このため、上記ゲル化温度に達すると、ゲル化して液体の状態から、固体の状態になる。このように、セラミックス・有機物複合体同士がつながり、3次元的に規則的に配列するため、図4に例示するようなセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。
【0038】
本工程における上記ゲル化を行う場合のゲル化温度としては、上記環状カリックスアレーン、セラミックス微粒子、上記溶媒の量、後述する水添加工程における水の添加量等によって変化するものであり、ゲル化して所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができればよく、特に限定されるものではない。
【0039】
本工程に用いられる、上記ゲル化する方法としては、通常、上述したように温度を制御することにより、セラミックス・有機物複合体が所定の溶媒中に溶解している溶液を冷却してゲル化させる方法が挙げられるが、このような温度を制御することによりゲル化する方法以外に、水や、金属などを上記溶液中に添加することによりゲル化する方法等を挙げることができる。
【0040】
また、本工程のゲル化工程は、後述する水添加工程と同時に行っても良い。例えば、混合工程において、環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを所定の温度で、溶媒中にて混合することにより、セラミックス・有機物複合体を得た後、後述する水添加工程において水を添加する際に、加熱等して温度を保持したりせずに、水を添加することにより、上記溶液をゲル化温度まで冷却してゲル化しても良い。
【0041】
3.その他の工程
本発明においては、本発明に必須の工程である上記混合工程、ゲル化工程の他に、必要に応じて、環状カリックスアレーン合成工程、水添加工程を行うことができる。以下、これらについて詳細に説明する。
(1)環状カリックスアレーン合成工程
本発明における環状カリックスアレーン合成工程について説明する。本発明における環状カリックスアレーン合成工程とは、例えば、図1で示されるセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程において添加され用いられる環状カリックスアレーンを合成する工程である。このような環状カリックスアレーン合成工程について、以下に説明する。
上記環状カリックスアレーンの製造方法としては、上記一般式(1)に示される所望のレゾルシン4量体からなる環状カリックスアレーンが得られるものであれば、特に限定されるものではない。具体的な方法としては、レゾルシノールあるいはレゾルシノール誘導体とアルデヒド化合物(パラホルムアルデヒドあるいはパラアルデヒド)とを所定のモル比で、エタノールあるいは酢酸溶媒中塩酸あるいは硫酸触媒下、所定の温度で数時間反応させることで環状化合物、線状化合物を合成することができる。この合成された生成物から、メタノール等で再結晶することにより単離して、環状カリックスアレーンのみを得ることができる。例えば、下記式(2)に示されるような反応を挙げることができ、生成物から、環状カリックスアレーンのみを単離して得ることができる。
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、RはC1021を示す。)
【0044】
このような環状カリックスアレーンの製造方法においては、レゾルシノール誘導体とアルデヒド化合物のモル比を等しくすることが、環状カリックスアレーンを得るのに好ましい。アルデヒド化合物が多くなると、線上体や分枝状物が優先して生成する可能性があるからである。
【0045】
(2)水添加工程
次に、本発明における水添加工程について説明する。本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法においては、上記水添加工程を有することが好ましい。本発明における水添加工程とは、例えば、図1で示すセラミックス・有機物複合構造体の作製フロー図において、上述した混合工程で得られた環状カリックスアレーンにより包接されたセラミックス微粒子、すなわち、セラミックス・有機物複合体を含有した親水性溶媒中に水を添加することにより、上記セラミックス微粒子の表面の親水基と水和して、この水和した水により環状カリックスアレーンの親水基の水素結合を安定化させる工程である。
【0046】
本工程を経ることにより、上記環状カリックスアレーンの親水基の水素結合を安定化させることができる。このため、例えば、セラミックス粒子表面上の環状カリックスアレーンにより包接されていないような部分が減少する。したがって、セラミックス微粒子を環状カリックスアレーンがより安定的に全体を包接することができるので、上述したゲル化工程において、配列の乱れが少なく、セラミックス微粒子が3次元的に、より規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。
【0047】
本工程の水添加工程を行うタイミングとしては、例えば、上述した図1のセラミックス・有機物複合構造体作製フロー図で示されるように、上記ゲル化工程の前に行っても良いが、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるタイミングであれば、特に限定されるものではない。例えば、混合工程の際に、所定の温度(ゲル化しないで溶液状態を保てる温度)を保ちながら環状カリックスアレーンを添加する前に水溶性溶媒に水を所定の量、添加しても良いし、セラミックス微粒子を添加する際に同時に入れても良い。また、上述したゲル化工程と同時に行うこともできる。この場合、水を添加することにより、セラミックス・有機物複合体が所定の溶媒中に溶解している溶液の温度を下げてゲル化温度まで冷却することによりゲル化することができる。
【0048】
本工程において、水を添加する方法としては、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、スポイト等で、所望の量を溶液中に滴下しても良いし、水中にセラミックス微粒子が分散されたようなセラミックス原料を用いることにより、セラミックス微粒子を水溶性溶媒中に添加する際に、同時に水を添加しても良い。
【0049】
本工程において、添加する水の量としては、上記水溶性溶媒の量や種類、上記環状カリックスアレーンの量や種類(親水基、疎水基の種類)、セラミックス微粒子の量や種類等によっても変化するものであり、上記環状カリックスアレーンが均一に溶解するなどして、所望のセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができれば、特に限定されるものではない。
【0050】
4.用途
本発明により得られるセラミックス・有機物複合構造体の用途としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではないが、例えば、触媒等として、用いることができる。
【0051】
B.セラミックス焼結体の製造方法
次に、本発明のセラミックス焼結体の製造方法について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス焼結体の製造方法は、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られたセラミックス・有機物複合構造体を、焼結する焼結工程を有することを特徴とするものである。
【0052】
本発明によれば、上記工程を経ることにより、セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が焼成してなくなり、3次元的に規則的に配列したセラミックス微粒子が焼結されて緻密な焼結体を得ることができる。
【0053】
本発明のセラミックス焼結体の製造方法を、図を用いて説明する。
図5は本発明のセラミックス焼結体の製造方法の流れ(セラミックス焼結体作製フロー図)の一例を示したものである。図5に示すように、本発明のセラミックス焼結体の製造方法においては、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られたセラミックス・有機物複合構造体を焼結して、セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が焼成してなくなり、3次元的に規則的に配列したセラミックス微粒子が焼結されて緻密な焼結体を得ることができる焼結工程を有する。
このようなセラミックス焼結体の製造方法においては、少なくとも上記焼結工程、を有するものであれば、特に限定されるものではなく、他の工程を有していても良い。
以下、本発明に必須の工程である焼結工程と、その他の工程について詳細に説明する。
【0054】
1.焼結工程
本発明における焼結工程について説明する。本発明における焼結工程とは、図5で示すセラミックス焼結体作製フロー図において、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」により得られた、3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を焼結して、高密度セラミックスを得る工程である。例えば、常圧焼結法等を用いて、所定の温度履歴にしたがって、所定の温度にて所定の時間焼結する方法等が挙げられる。
【0055】
本工程を経ることにより、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を焼結するので、セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が焼成してなくなり、緻密な焼結体を得ることができる。
一般的なセラミックスの焼結においては、通常、バインダーを添加してセラミックス原料粒子同士の結合力を改善し、粒子の配列を良好にして焼結する。これにより、より高密度なセラミックスを得ることができる。本発明においては、上記セラミックス・有機物複合構造体における有機物(環状カリックスアレーン)が3次元的に規則的に配列したセラミックス微粒子を取り囲んで、優れたバインダーとしての役割を果たしているため、これを焼結することにより高密度セラミックスを得ることができるものと推測される。
【0056】
本工程おいて上記焼結を行う焼結方法としては、所望の緻密な焼結体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではない。具体的には、常圧焼結方法、ガス圧焼結方法、熱間静水圧焼結方法、プラズマ焼結方法などを挙げることができる。
また、上記焼結を行う際の、焼結条件、例えば、雰囲気、焼結温度、焼結時間等については、所望の緻密な焼結体を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、所望の条件に応じて適宜選択することができる。
【0057】
2.用途
本発明により得られるセラミックス焼結体の用途としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではないが、例えば、磁性材料、電子材料、光学材料、構造材料等として、用いることができる。
【0058】
C.セラミックス・有機物複合構造体
本発明のセラミックス・有機物複合構造体について、以下詳細に説明する。
本発明のセラミックス・有機物複合構造体は、上記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンによりセラミックス微粒子が包接され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列していることを特徴とするものである。
【0059】
本発明によれば、上記レゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンにセラミックス微粒子が包接され、環状カリックスアレーン同士のアルキル鎖が結合などすることなどにより3次元的に規則的な配列構造が形成され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。このため、上記セラミックスの種類等に対応した所望の性能を持つ高性能なセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる。
【0060】
以下、本発明のセラミックス・有機物複合構造体について、図を用いて説明する。
図4は本発明のセラミックス・有機物複合構造体の構成の一例を示す模式図である。本発明のセラミックス・有機物複合構造体はゲル状であり、図4に示すように、本発明のセラミックス・有機物複合構造体5は、セラミックス微粒子2と、その周りに包接して取り囲んでいる環状カリックスアレーン部3とを有するものである。また、上記環状カリックスアレーン部3同士のアルキル鎖の結合、親水基部分の水素結合により3次元的に規則的に配列している。
以下、本発明のセラミックス・有機物複合構造体について、構成ごとに詳細に説明する。
【0061】
1.環状カリックスアレーン部
本発明における環状カリックスアレーン部は、複数の環状カリックスアレーンがセラミックス微粒子を包接することにより形成されている。上記環状カリックスアレーンとしては、下記一般式(1)で示されるものであり、図2で示されるような立体構造を持ち、親水基Rおよび疎水基Rを有している。親水基Rはセラミックス微粒子に包接した状態で、親水基R同士で水素結合を作っており、また、疎水基Rはセラミックス微粒子とは逆方向に形成されており、疎水基R同士で結合している。このため、図4に例示するように、上記環状カリックスアレーン部が包接したセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列することができる。
【0062】
【化5】

【0063】
(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)
【0064】
本発明に用いられる上記環状カリックスアレーンとしては、上記一般式(1)で示されるものである。一般式(1)において、親水基Rおよび疎水基Rについては、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法1.混合工程」で説明したものと同様のものであるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
上記環状カリックスアレーンの製造方法としては、所望のレゾルシン4量体からなる環状カリックスアレーンが得られるものであれば、特に限定されるものではない。具体的な方法については、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法3.その他工程(1)環状カリックスアレーン合成工程」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0066】
2.セラミックス微粒子
本発明に用いられるセラミックス微粒子は、ゲル状となった上記環状カリックスアレーン部によって包接されることにより、3次元的に規則的に配列することができる。
【0067】
本発明に用いられる上記セラミックス微粒子としては、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体とした場合に、所望の性能が得られるものであれば特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。具体的な用途およびセラミックス微粒子の種類については、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法1.混合工程」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0068】
また、上記セラミックス微粒子の平均粒径としては、上記セラミックス微粒子を3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。具体的な値については、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法1.混合工程」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0069】
3.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法としては、上記のセラミックス・有機物複合構造体を得ることができる方法であれば、特に限定されるものではないが、例えば、「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法」に記載した製造方法により得ることができる。
【0070】
4.用途
本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法としては、セラミックスの種類等により変化するものであり、特に限定されるものではない。用途の例としては、上述した「A.セラミックス・有機物複合構造体の製造方法4.用途」に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0071】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0072】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
【0073】
[実験例1]
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:1で、20mlのエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、環状カリックスアレーンを得た。反応後の溶液中にメタノールを添加して、再結晶することで生成物の中から環状カリックスアレーンを単離した。
【0074】
[実験例2]
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比5:4で、20mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、環状カリックスアレーンを得た。反応後の溶液中にメタノールを添加して、再結晶することで生成物の中から環状カリックスアレーンを単離した。
【0075】
[実験例3]
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:2で、50mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で6時間反応させることで合成して、線状体を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
【0076】
[実験例4]
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比2:3で、45mlエタノール中、1.5ml塩酸(HCl)触媒下、75℃で3時間反応させることで合成して、線状体を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
【0077】
[実験例5]
レゾルシノール(Resolcinol)とウンデカナール(Undecanal)とをモル比1:2で、20mlエタノール中、0.75ml塩酸(HCl)触媒下、50℃で4.5時間反応させることで合成して、ゲル状物質(線状体)を得た。反応後の溶液中にアセトンを添加して、カリックス部を抽出除去した。これをTHFに溶かして再沈させることで、線状体を単離した。
【0078】
(NMR測定)
実験例1、2で得られた環状カリックスアレーンのNMR(核磁気共鳴、Nuclear Magnetic Resonance)測定を行った。実験例1、2についての測定結果を図6に示す。図6に示されるように、実験例1、2においては、環状カリックスアレーンを示すNMRスペクトルが得られ、環状カリックスアレーンが得られたことが確認できた。
【0079】
[実施例1]
(セラミックス・有機物複合構造体作製)
実験例1で得られた環状カリックスアレーンを用いて、エタノール溶媒中、環状カリックスアレーンを1〜20wt%(図7参照)、10〜70nmの粒径を持つシリカ微粒子を1〜5wt%(図7参照、5wt%の場合)添加し、混合した(この時点では、溶液で、ゲル化はしていない)。次に、ここに、10〜50wt%の水を添加してセラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[実施例2]
実験例2で得られた環状カリックスアレーンを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例1]
実験例3で得られた線状体を用いて、エタノール溶媒中、線状体を1〜20wt%、10〜70nmの粒径を持つシリカ微粒子を1〜5wt%添加し、混合した。次に、ここに、10〜50wt%の水を添加して、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例2]
実験例4で得られた線状体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
[比較例3]
実験例5で得られた線状体を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、セラミックス・有機物複合構造体を作製した。
【0080】
[評価]
実施例1、実施例2および比較例1〜3で得られたセラミックス・有機物複合体に対して、ゲル化したかどうか確認を行った。実施例1、実施例2においては、ゲル化が起こり、シリカ微粒子が3次元的に規則的に配列したゲル状組織体が得られた。図7は、実施例1において、環状カリックスアレーンの濃度を変化させた場合のゾル‐ゲル転移温度を測定した実験結果である。図7においては、シリカの含有量は5wt%で、エタノールと、添加した水とのモル比は2:1である。図7に示されるように、実施例1においては、幅広い環状カリックスアレーン濃度範囲でゲル化できることがわかった。また、図8は、実施例で得られたゲル状組織体の代表的なTEM写真である。図8に示されるように、実施例においてはナノメートルサイズのSiO(シリカ)微粒子(黒色部分)が、環状カリックスアレーン(白色部分)により、包接され、3次元的に規則的に配列していることが確認された。一方、比較例1〜3では、ゲル化は起こらず、粒子配列も起こらなかった。線状体は、環状体(環状カリックスアレーン)に比べて、溶媒への溶解性が悪い。これは親水部と疎水部の配置が環状体の場合には相対する位置となっているのに対し、線状体ではランダムになっていることが原因と考えられる。こうした溶媒への溶解性が原因となり、ゲル化が起こらず、粒子配列も起こらなかったものと推測される。
【0081】
以上の結果から、本発明の実施例1、実施例2では、環状カリックスアレーンを用いることにより、環状カリックスアレーンにセラミックス微粒子が包接された後、ゲル化が起きて、環状カリックスアレーン同士のアルキル鎖が結合などすることにより3次元的に規則的な配列構造が形成された。このため、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法の一例を示す作製フロー図である。
【図2】本発明に用いられる環状カリックスアレーンの一例を示す化学立体図である。
【図3】本発明におけるセラミックス・有機物複合体の構成の一例を示す模式図である。
【図4】本発明により得られるセラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体の構成の一例を示す模式図である。
【図5】本発明のセラミックス焼結体の製造方法の一例を示す作製フロー図である。
【図6】実験例1、2で得られた環状カリックスアレーンのNMR測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例1において、環状カリックスアレーンの濃度を変化させた場合のゾル‐ゲル転移温度の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1、2で得られたゲル状組織体の代表的なTEM写真である。
【符号の説明】
【0083】
1 … 環状カリックスアレーン
2 … セラミックス微粒子
3 … 環状カリックスアレーン部
4 … セラミックス・有機物複合体
5 … 3次元的に規則的に配列したセラミックス・有機物複合構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンとセラミックス微粒子とを混合する混合工程と、前記混合工程で得られたセラミックス・有機物複合体をゲル化するゲル化工程と、を有することを特徴とするセラミックス・有機物複合構造体の製造方法。
【化1】

(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス・有機物複合構造体の製造方法により得られたセラミックス・有機物複合構造体を、焼結する焼結工程を有することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項3】
下記一般式(1)で示されるレゾルシン環状4量体からなる環状カリックスアレーンにセラミックス微粒子が包接され、セラミックス微粒子が3次元的に規則的に配列していることを特徴とするセラミックス・有機物複合構造体。
【化2】

(式中、Rはヒドロキシル基、またはアセチレン基を表し、Rは炭素数が1〜17までの直鎖状アルキル基、またはフェニル基を示す。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−247725(P2008−247725A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95232(P2007−95232)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(504160781)国立大学法人金沢大学 (282)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】