セラミックス製ロール
【課題】ランインテーブル設備に用いられるテーブルロールにおいて、セラミックス製スリーブと金属製ロール基体を嵌合して組み立て、両者の熱膨張係数差に起因するロールの破損を簡易に防止できるセラミックス製ロールを提供する。
【解決手段】鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体３と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブ２とを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝６ａを形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リング５ａを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とする。
【解決手段】鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体３と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブ２とを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝６ａを形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リング５ａを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、鉄鋼圧延工程で条鋼を移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールに係り、詳しくは金属製軸材の外周にセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールに関する。
【背景技術】
【０００２】
鋼材を製造する鉄鋼生産設備ラインにおいては、搬送など種々の用途にロールが用いられており、大別すると金属製ロール、ロール表面の鋼材と接触する部分に硬質材料を溶射した溶射ロール、耐摩耗性、耐熱性等に優れたセラミックス製ロールがある。
【０００３】
鉄鋼生産設備において、形鋼、平鋼、棒鋼等の条鋼を冷却床へ移載するためランインテーブルと称する設備があり、これには円筒状のテーブルロール（ローラ）が用いられている。テーブルロールは、条鋼の移送方向に所定間隔で複数本配備されており、ロールを冷却床側へ下向きに傾斜して設置し、条鋼の移送方向に対して直角方向の軸回りに回転する。
【０００４】
特許文献１には、条鋼の冷却床の側部に設けられ、条鋼の移送方向に直角方向の軸まわりに回転し、かつ冷却床側へ下向きに傾斜し条鋼の移送方向に互いに間隔をおいて配置された複数のテーブルローラを備えた圧延設備におけるランインテーブルにおいて、ローラの表面が複数の異種材質で構成されているテーブルローラが記載されている。特許文献１の第３頁右欄には、モータ側の胴部を機械構造用炭素鋼として熱処理により表面硬度を高め、冷却床側の胴部を鋳鉄製としたことが記載されている。
【０００５】
特許文献２には、熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いるセラミックス製ロールであって、１個または複数個のセラミックス製スリーブを金属製軸材の外周に嵌着して構成され、そのうち１個のセラミックス製スリーブは金属製軸材の軸長方向の中央部を覆うように嵌着し、セラミックス製スリーブは相対密度が９８％以上であり、常温における４点曲げ強度が６００ＭＰａ以上であり、常温における熱伝導率が５０Ｗ／（ｍ・Ｋ）以上である窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるセラミックス製ロールが記載されている。
【０００６】
特許文献３には、ローラハース炉の焼成室内に被焼成品の搬送方向に多数並設されたセラミックローラが記載されている。これは、セラミックローラの端部に、ローラを回転駆動させるための駆動軸に割りピンにより連結された金属製のローラ駆動用キャップが嵌着し、駆動軸の回転力をローラに伝達するものである。ローラにトレランスリングを取付け、トレランスリングの外周に環状ゴムシートを装着し、ローラ駆動用キャップ内にローラを挿入、固定する。この構成により、すべりの発生がなく、操業時に熱及び重量によりローラに撓みが生じてもローラが破損せず、またローラの芯ブレを吸収してローラの芯ずれを防止できる。
【０００７】
【特許文献１】実公平６−４９７５号公報
【特許文献２】特開２００４−２８３８９８号公報
【特許文献３】特開２００５−１０６３１９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
特許文献１は、ロールを構成する二つの胴部がいずれも金属からなるため、特に耐摩耗性に劣り耐用寿命が短く、ロール交換の頻度が多くなるという問題があった。ランインテーブルのロールの場合、ロール本数が多く、ロールの交換作業が容易でないため致命的な問題であった。
【０００９】
特許文献２は、セラミックス製スリーブと金属製軸材を嵌合したものであるが、ロールの操業中、ロール表面が加熱されると両者の熱膨張係数差が要因となり、セラミックス製スリーブが破損しやすいという問題があった。
【００１０】
特許文献３は、単体のセラミックローラの端部にローラ駆動用キャップを設け、その間に取付けたトレランスリングにより、すべりの発生を抑えて固定できる。回転体の駆動伝達機構に有用な固定手段である。しかしながら、セラミックス製スリーブと金属製軸材を嵌合した複合構造のセラミックス製ロールの破損防止について考慮されているものではない。
【００１１】
本発明の目的は、ランインテーブル設備に用いられるテーブルロールにおいて、セラミックス製スリーブと金属製ロール基体を嵌合して組み立て、両者の熱膨張係数差に起因するロールの破損を簡易に防止できるセラミックス製ロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明のセラミックス製ロールは、鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブとを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝を形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１３】
本発明のセラミックス製ロールは、金属製のロール基体の外周に、セラミックス製スリーブを嵌合した構成であり、鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備のテーブルロールとして用いられる。ロール基体は、外側の円筒体の内部に内側の円筒体を有する二重円筒状に構成される。ロール胴部と円筒部は一体的に接続されて形成される。外側の円筒体であるロール胴部の外周にはセラミックス製スリーブが嵌合される。内側の円筒体である円筒部の内面には回転軸材（シャフト）が接続される。セラミックス製スリーブは、ロールの表層部であり、高温の条鋼と接触して使われる。
【００１４】
ロール胴部の外周に連続した環状の凹溝を形成し、この凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着する。別の態様として、セラミックス製スリーブの内周に連続した環状の凹溝を形成し、この凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着してもよい。また環状の凹溝は、ロール胴部の外周およびセラミックス製スリーブの内周に形成してもよいが、いずれか一方に形成するのが製作コストの点からも望ましい。
【００１５】
このように金属製リングを装着、介在させた状態で、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着する。
【００１６】
本発明の最大の特徴は、弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを介在させる点である。金属製リングとしてはトレランスリングを用いるのが望ましい。トレランスリングはステンレス鋼などの鋼材料からなり、弾性力を利用した波形リング状の締結・緩衝部材である。従来のように嵌合キー等を必要とせずに、セラミックス製スリーブとロール基体を簡易に締結できる。
【００１７】
ロール胴部の凹溝の内部にトレランスリングを収納して締結することにより、ロール基体とセラミックス製スリーブにトルクおよびスラスト力を伝達できる。また両者の熱膨張による寸法変形を吸収することにより、締結力を保持し、同心度を確保するとともに、セラミックス製スリーブの破損を防止できる。
【００１８】
トレランスリングは熱膨張の吸収効果を考慮して設けるのに設計の自由度が高く、ロール胴部の凹溝の仕上げ精度を高く必要とせず、比較的粗な加工精度でよく、凹溝への装着が容易である。
【００１９】
少なくともロール胴部は室温で熱膨張係数が５×１０-6（１／Ｋ）以下の低熱膨張性合金で形成するのが望ましい。好ましい低熱膨張性合金としてインコロイ系合金がある。セラミックス製ロールを高温下で使用する場合、低熱膨張性合金でロール胴部を形成することにより、ロール胴部の膨張に起因するロールの張り割れを防止できる。
【００２０】
セラミックス製スリーブは室温で熱膨張係数が１．５×１０-6（１／Ｋ）以上であるのが望ましい。この熱膨張係数未満では、ロール使用時の温度上昇の際にセラミックス製スリーブとロール胴部間の嵌合に緩みを生じやすくなるので好ましくない。
【００２１】
セラミックス製スリーブは特に窒化ケイ素を主成分とする焼結体で形成することにより、耐摩耗性、耐熱性に優れた効果を発揮する。セラミックス焼結体は相対密度９８%以上、常温における４点曲げ強度６００ＭＰａ以上が好ましい。また、常温における熱伝導率５０Ｗ／（ｍ・Ｋ）以上が熱衝撃による破壊を十分に防止できるのでより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２２】
図１は本発明実施例のセラミックス製ロールの概略断面図である。図１において、１はセラミックス製ロールであり、セラミックス製スリーブ２、ロール基体３、弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リング５ａ（５ｂ、５ｃ）、金属製締付部材７から構成される。
【００２３】
ロール基体３として、オーステナイト系ステンレス鋼であるＳＵＳ３０４からなる中空円筒体を準備した。ロール基体３は、外側の円筒体であるロール胴部３ｂの内部に、内側の円筒体である円筒部３ｃを同軸的に設けて構成される。ロール胴部３ｂと、円筒部３ｃとは円盤状の中間リブ部３ｆを介して一体的に接続される。３ｅはロール胴部３ｂの内方に形成された中空部である。円筒部３ｃの内面に形成した中空部３ｄの内には、ロールの回転軸となる金属製の回転軸材（図示せず）が接続される。
【００２４】
ロール基体３のロール胴部３ｂの外周に環状の凹溝６ａ、６ｂ、６ｃを形成した。また、ロール胴部３ｂの一端に環状の突起部であるストッパー部３ａを設け、ロール胴部３ｂの他端の外周面にねじ部を設けた。
【００２５】
セラミックス製スリーブ２として、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるスリーブを製作した。このセラミックス製スリーブは、室温で熱膨張係数が３．２×１０-6（１／Ｋ）、相対密度が９９．４％、常温における熱伝導率が５５Ｗ／（ｍ・Ｋ）、常温における４点曲げ強度が９１０ＭＰａである。
【００２６】
金属製リング５ａ、５ｂ、５ｃとして、それぞれステンレス鋼からなるトレランスリングを用意した。
【００２７】
金属製締付部材７として、ＳＵＳ３０４を用いて内周面にねじ溝を形成した中空円筒体を製作した。
【００２８】
これらの部材を用いて、ロール胴部３ｂの外周に形成した凹溝６ａ、６ｂ、６ｃに金属製リング５ａ、５ｂ、５ｃを装着した後、ロール胴部３ｂの外周にセラミックス製スリーブ２をロール胴部３ｂのストッパー部３ａまで圧入により挿入した。その後、金属製締付部材７をロール胴部３ｂの他端の外周面に設けたねじ部に螺合固定し、本発明のセラミックス製ロールを組立てた。
【００２９】
次いで、このセラミックス製ロール１のロール基体３の円筒部３ｃに形成した中空部３ｄの内に、ロールの回転軸となる回転軸材（図示せず）を嵌入し、キー止めにより固定した。そして、このセラミックス製ロール１を鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるランインテーブルロールとして供した。
【００３０】
このテーブルロールは、形鋼、平鋼、棒鋼等の条鋼の冷却床の側部に設けられ、条鋼の移送方向に所定間隔で複数本配備されており、ロールを冷却床側へ下向きに傾斜して設置し、条鋼の移送方向に対して直角方向の軸回りに回転する。テーブルロールは軸受によって支承され、カップリングにより駆動用モータに直結されている。
【００３１】
本発明のセラミックス製ロールをランインテーブルロールに適用した結果、耐摩耗性、耐熱性が良好であり、金属製ロールに比べて耐用寿命が延び、またセラミックス製スリーブとロール胴部の熱膨張係数差に起因するロールの破損は見られず、安定した操業を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【００３２】
本発明のセラミックス製ロールによれば、セラミックス製スリーブとロール胴部の熱膨張係数差に起因するロールの破損を簡易に抑えることができる。本発明のセラミックス製ロールは、鉄鋼以外に非鉄（アルミニウム、銅など）の生産設備ラインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明実施例のセラミックス製ロールの概略断面図である。
【符号の説明】
【００３４】
１ セラミックス製ロール、 ２ セラミックス製スリーブ、 ３ ロール基体、
４ 金属製締付部材、 ５ａ（５ｂ、５ｃ） 金属製リング、
６ａ（６ｂ、６ｃ） 凹溝、 ７ 金属製締付部材、
【技術分野】
【０００１】
本発明は、鉄鋼圧延工程で条鋼を移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールに係り、詳しくは金属製軸材の外周にセラミックス製スリーブを嵌着させたセラミックス製ロールに関する。
【背景技術】
【０００２】
鋼材を製造する鉄鋼生産設備ラインにおいては、搬送など種々の用途にロールが用いられており、大別すると金属製ロール、ロール表面の鋼材と接触する部分に硬質材料を溶射した溶射ロール、耐摩耗性、耐熱性等に優れたセラミックス製ロールがある。
【０００３】
鉄鋼生産設備において、形鋼、平鋼、棒鋼等の条鋼を冷却床へ移載するためランインテーブルと称する設備があり、これには円筒状のテーブルロール（ローラ）が用いられている。テーブルロールは、条鋼の移送方向に所定間隔で複数本配備されており、ロールを冷却床側へ下向きに傾斜して設置し、条鋼の移送方向に対して直角方向の軸回りに回転する。
【０００４】
特許文献１には、条鋼の冷却床の側部に設けられ、条鋼の移送方向に直角方向の軸まわりに回転し、かつ冷却床側へ下向きに傾斜し条鋼の移送方向に互いに間隔をおいて配置された複数のテーブルローラを備えた圧延設備におけるランインテーブルにおいて、ローラの表面が複数の異種材質で構成されているテーブルローラが記載されている。特許文献１の第３頁右欄には、モータ側の胴部を機械構造用炭素鋼として熱処理により表面硬度を高め、冷却床側の胴部を鋳鉄製としたことが記載されている。
【０００５】
特許文献２には、熱間圧延ラインにおいて鋼板を搬送するのに用いるセラミックス製ロールであって、１個または複数個のセラミックス製スリーブを金属製軸材の外周に嵌着して構成され、そのうち１個のセラミックス製スリーブは金属製軸材の軸長方向の中央部を覆うように嵌着し、セラミックス製スリーブは相対密度が９８％以上であり、常温における４点曲げ強度が６００ＭＰａ以上であり、常温における熱伝導率が５０Ｗ／（ｍ・Ｋ）以上である窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるセラミックス製ロールが記載されている。
【０００６】
特許文献３には、ローラハース炉の焼成室内に被焼成品の搬送方向に多数並設されたセラミックローラが記載されている。これは、セラミックローラの端部に、ローラを回転駆動させるための駆動軸に割りピンにより連結された金属製のローラ駆動用キャップが嵌着し、駆動軸の回転力をローラに伝達するものである。ローラにトレランスリングを取付け、トレランスリングの外周に環状ゴムシートを装着し、ローラ駆動用キャップ内にローラを挿入、固定する。この構成により、すべりの発生がなく、操業時に熱及び重量によりローラに撓みが生じてもローラが破損せず、またローラの芯ブレを吸収してローラの芯ずれを防止できる。
【０００７】
【特許文献１】実公平６−４９７５号公報
【特許文献２】特開２００４−２８３８９８号公報
【特許文献３】特開２００５−１０６３１９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００８】
特許文献１は、ロールを構成する二つの胴部がいずれも金属からなるため、特に耐摩耗性に劣り耐用寿命が短く、ロール交換の頻度が多くなるという問題があった。ランインテーブルのロールの場合、ロール本数が多く、ロールの交換作業が容易でないため致命的な問題であった。
【０００９】
特許文献２は、セラミックス製スリーブと金属製軸材を嵌合したものであるが、ロールの操業中、ロール表面が加熱されると両者の熱膨張係数差が要因となり、セラミックス製スリーブが破損しやすいという問題があった。
【００１０】
特許文献３は、単体のセラミックローラの端部にローラ駆動用キャップを設け、その間に取付けたトレランスリングにより、すべりの発生を抑えて固定できる。回転体の駆動伝達機構に有用な固定手段である。しかしながら、セラミックス製スリーブと金属製軸材を嵌合した複合構造のセラミックス製ロールの破損防止について考慮されているものではない。
【００１１】
本発明の目的は、ランインテーブル設備に用いられるテーブルロールにおいて、セラミックス製スリーブと金属製ロール基体を嵌合して組み立て、両者の熱膨張係数差に起因するロールの破損を簡易に防止できるセラミックス製ロールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１２】
本発明のセラミックス製ロールは、鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブとを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝を形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【００１３】
本発明のセラミックス製ロールは、金属製のロール基体の外周に、セラミックス製スリーブを嵌合した構成であり、鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備のテーブルロールとして用いられる。ロール基体は、外側の円筒体の内部に内側の円筒体を有する二重円筒状に構成される。ロール胴部と円筒部は一体的に接続されて形成される。外側の円筒体であるロール胴部の外周にはセラミックス製スリーブが嵌合される。内側の円筒体である円筒部の内面には回転軸材（シャフト）が接続される。セラミックス製スリーブは、ロールの表層部であり、高温の条鋼と接触して使われる。
【００１４】
ロール胴部の外周に連続した環状の凹溝を形成し、この凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着する。別の態様として、セラミックス製スリーブの内周に連続した環状の凹溝を形成し、この凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着してもよい。また環状の凹溝は、ロール胴部の外周およびセラミックス製スリーブの内周に形成してもよいが、いずれか一方に形成するのが製作コストの点からも望ましい。
【００１５】
このように金属製リングを装着、介在させた状態で、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着する。
【００１６】
本発明の最大の特徴は、弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを介在させる点である。金属製リングとしてはトレランスリングを用いるのが望ましい。トレランスリングはステンレス鋼などの鋼材料からなり、弾性力を利用した波形リング状の締結・緩衝部材である。従来のように嵌合キー等を必要とせずに、セラミックス製スリーブとロール基体を簡易に締結できる。
【００１７】
ロール胴部の凹溝の内部にトレランスリングを収納して締結することにより、ロール基体とセラミックス製スリーブにトルクおよびスラスト力を伝達できる。また両者の熱膨張による寸法変形を吸収することにより、締結力を保持し、同心度を確保するとともに、セラミックス製スリーブの破損を防止できる。
【００１８】
トレランスリングは熱膨張の吸収効果を考慮して設けるのに設計の自由度が高く、ロール胴部の凹溝の仕上げ精度を高く必要とせず、比較的粗な加工精度でよく、凹溝への装着が容易である。
【００１９】
少なくともロール胴部は室温で熱膨張係数が５×１０-6（１／Ｋ）以下の低熱膨張性合金で形成するのが望ましい。好ましい低熱膨張性合金としてインコロイ系合金がある。セラミックス製ロールを高温下で使用する場合、低熱膨張性合金でロール胴部を形成することにより、ロール胴部の膨張に起因するロールの張り割れを防止できる。
【００２０】
セラミックス製スリーブは室温で熱膨張係数が１．５×１０-6（１／Ｋ）以上であるのが望ましい。この熱膨張係数未満では、ロール使用時の温度上昇の際にセラミックス製スリーブとロール胴部間の嵌合に緩みを生じやすくなるので好ましくない。
【００２１】
セラミックス製スリーブは特に窒化ケイ素を主成分とする焼結体で形成することにより、耐摩耗性、耐熱性に優れた効果を発揮する。セラミックス焼結体は相対密度９８%以上、常温における４点曲げ強度６００ＭＰａ以上が好ましい。また、常温における熱伝導率５０Ｗ／（ｍ・Ｋ）以上が熱衝撃による破壊を十分に防止できるのでより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２２】
図１は本発明実施例のセラミックス製ロールの概略断面図である。図１において、１はセラミックス製ロールであり、セラミックス製スリーブ２、ロール基体３、弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リング５ａ（５ｂ、５ｃ）、金属製締付部材７から構成される。
【００２３】
ロール基体３として、オーステナイト系ステンレス鋼であるＳＵＳ３０４からなる中空円筒体を準備した。ロール基体３は、外側の円筒体であるロール胴部３ｂの内部に、内側の円筒体である円筒部３ｃを同軸的に設けて構成される。ロール胴部３ｂと、円筒部３ｃとは円盤状の中間リブ部３ｆを介して一体的に接続される。３ｅはロール胴部３ｂの内方に形成された中空部である。円筒部３ｃの内面に形成した中空部３ｄの内には、ロールの回転軸となる金属製の回転軸材（図示せず）が接続される。
【００２４】
ロール基体３のロール胴部３ｂの外周に環状の凹溝６ａ、６ｂ、６ｃを形成した。また、ロール胴部３ｂの一端に環状の突起部であるストッパー部３ａを設け、ロール胴部３ｂの他端の外周面にねじ部を設けた。
【００２５】
セラミックス製スリーブ２として、窒化ケイ素を主成分とする焼結体からなるスリーブを製作した。このセラミックス製スリーブは、室温で熱膨張係数が３．２×１０-6（１／Ｋ）、相対密度が９９．４％、常温における熱伝導率が５５Ｗ／（ｍ・Ｋ）、常温における４点曲げ強度が９１０ＭＰａである。
【００２６】
金属製リング５ａ、５ｂ、５ｃとして、それぞれステンレス鋼からなるトレランスリングを用意した。
【００２７】
金属製締付部材７として、ＳＵＳ３０４を用いて内周面にねじ溝を形成した中空円筒体を製作した。
【００２８】
これらの部材を用いて、ロール胴部３ｂの外周に形成した凹溝６ａ、６ｂ、６ｃに金属製リング５ａ、５ｂ、５ｃを装着した後、ロール胴部３ｂの外周にセラミックス製スリーブ２をロール胴部３ｂのストッパー部３ａまで圧入により挿入した。その後、金属製締付部材７をロール胴部３ｂの他端の外周面に設けたねじ部に螺合固定し、本発明のセラミックス製ロールを組立てた。
【００２９】
次いで、このセラミックス製ロール１のロール基体３の円筒部３ｃに形成した中空部３ｄの内に、ロールの回転軸となる回転軸材（図示せず）を嵌入し、キー止めにより固定した。そして、このセラミックス製ロール１を鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるランインテーブルロールとして供した。
【００３０】
このテーブルロールは、形鋼、平鋼、棒鋼等の条鋼の冷却床の側部に設けられ、条鋼の移送方向に所定間隔で複数本配備されており、ロールを冷却床側へ下向きに傾斜して設置し、条鋼の移送方向に対して直角方向の軸回りに回転する。テーブルロールは軸受によって支承され、カップリングにより駆動用モータに直結されている。
【００３１】
本発明のセラミックス製ロールをランインテーブルロールに適用した結果、耐摩耗性、耐熱性が良好であり、金属製ロールに比べて耐用寿命が延び、またセラミックス製スリーブとロール胴部の熱膨張係数差に起因するロールの破損は見られず、安定した操業を実現することができた。
【産業上の利用可能性】
【００３２】
本発明のセラミックス製ロールによれば、セラミックス製スリーブとロール胴部の熱膨張係数差に起因するロールの破損を簡易に抑えることができる。本発明のセラミックス製ロールは、鉄鋼以外に非鉄（アルミニウム、銅など）の生産設備ラインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【００３３】
【図１】本発明実施例のセラミックス製ロールの概略断面図である。
【符号の説明】
【００３４】
１ セラミックス製ロール、 ２ セラミックス製スリーブ、 ３ ロール基体、
４ 金属製締付部材、 ５ａ（５ｂ、５ｃ） 金属製リング、
６ａ（６ｂ、６ｃ） 凹溝、 ７ 金属製締付部材、
【特許請求の範囲】
【請求項１】
鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブとを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝を形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とするセラミックス製ロール。
【請求項１】
鉄鋼圧延工程で条鋼を冷却床へ移載するランインテーブル設備で用いられるテーブルロールであって、円筒体状のロール胴部とロール胴部の内方に形成されて回転軸材が接続される円筒部とを有する金属製のロール基体と、ロールの表層部を形成するセラミックス製スリーブとを有し、ロール基体のロール胴部の外周および／またはセラミックス製スリーブの内周に環状の凹溝を形成し、該凹溝に弾性力を有しかつトルクを伝達する金属製リングを装着、介在させて、ロール胴部の外周にセラミックス製スリーブを嵌着したことを特徴とするセラミックス製ロール。
【図１】
【公開番号】特開２００８−２２１２２１（Ｐ２００８−２２１２２１Ａ）
【公開日】平成２０年９月２５日（２００８．９．２５）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００７−５８３７９（Ｐ２００７−５８３７９）
【出願日】平成１９年３月８日（２００７．３．８）
【出願人】（０００００５０８３）日立金属株式会社 (2,051)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年９月２５日（２００８．９．２５）
【国際特許分類】
【出願日】平成１９年３月８日（２００７．３．８）
【出願人】（０００００５０８３）日立金属株式会社 (2,051)
【Ｆターム（参考）】
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