説明

セラミックヒータ

【課題】場所によって昇温性能が偏ることのないセラミックヒータを得る。
【解決手段】ハニカム状の抵抗体セラミック4の電極平面の全域に金属膜8a,8bを形成し、金属膜8a,8bの全域にプレート状の発泡金属10,12を被せて拡散接合する。発泡金属10,12に接合面積が発泡金属10,12のみかけ面積よりも小さい電極14,16を拡散接合した。発泡金属10,12の表面のほぼ中央に電極14,16を発泡金属10,12から略垂直方向に立設して接合した。抵抗体セラミック4は六面体状で、互いに反対側の表面を電極平面として金属膜8a,8bを形成して発泡金属10,12を接合し、各発泡金属10,12にそれぞれ電極14,16を接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム状の抵抗体セラミックに通電して流体を暖めるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、セラミックヒータでは、特許文献1にあるように、炭化珪素、金属シリコンを主原料とし、混合、加水、混練したものをハニカム状に押し出し成形し焼結して抵抗体セラミックを形成する。この抵抗体セラミックの表面に導電性を有する銀ペーストを塗布して焼成、あるいは、純アルミを溶射して金属膜を形成し、この金属膜にプレート状の電極押えを押し付けると共に、電極押えに導線を接続していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−106883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした従来のものでは、電極押えを金属膜に押さえつけているが、金属膜を形成する抵抗体セラミックの表面の小さな凹凸や表面の波のようなうねり等により、金属膜の表面が平坦にならず、電極押えを金属膜に押し付けても、通電抵抗が場所によって異なり、セラミックヒータの昇温性能が場所によって偏るという問題があった。
【0005】
本発明の課題は、場所によって昇温性能が偏ることのないセラミックヒータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を達成すべく、本発明は課題を解決するため次の手段を取った。即ち、
ハニカム状の抵抗体セラミックの電極平面に金属膜を形成し、
前記金属膜にプレート状の発泡金属を被せて接合し、
かつ、前記発泡金属に、接合面積が前記発泡金属のみかけ面積よりも小さい電極を接合したことを特徴とするセラミックヒータがそれである。
【0007】
前記発泡金属の表面のほぼ中央に前記電極を前記発泡金属から略垂直方向に立設して接合した構成とするとよい。また、前記抵抗体セラミックは六面体状で、互いに反対側の表面を前記電極平面として前記金属膜を形成して前記発泡金属を接合し、前記各発泡金属にそれぞれ前記電極を接合した構成とするとよい。更に、前記抵抗体セラミックの前記電極平面の全域に前記金属膜を形成してもよく、あるいは、前記金属膜の全域にプレート状の前記発泡金属を被せて接合してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明のセラミックヒータは、抵抗体セラミックの電極平面に凹凸やうねりがあっても、発泡金属が電極平面の凹凸やうねりに倣って変形し、金属膜と発泡金属とが隙間なく接合されて通電抵抗のばらつきを抑制でき、また、発泡金属と電極との接合面積が小さくても、発泡金属を介して電流が全域にわたって分散し、抵抗体セラミックの全体をほぼ均等に発熱させることができ、昇温性能が偏ることがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態としてのセラミックヒータをダクトに組み込んだ一部を断面で示す斜視図である。
【図2】本実施形態のセラミックヒータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1、図2に示すように、1はセラミックヒータで、セラミックヒータ1はダクト2内に収納されている。本実施形態では、ダクト2内を流体としての空気が流通するが、空気に限らず他の気体でも、あるいは流体として水等の液体でも実施可能である。
【0011】
セラミックヒータ1は抵抗体セラミック4を備え、抵抗体セラミック4は、複数の縦と横のリブで格子状に仕切られて四角形の小さい貫通孔6を多数有するハニカム状の構造をしており、炭化珪素、金属シリコンを主原料とし、混合、加水、混練したものをハニカム状に押し出し、成形する。そして、これを窒素(不活性ガス)雰囲気中の炉で反応焼成させることにより、炭化珪素、窒化珪素の複合系の抵抗体セラミック4を形成する。
【0012】
この抵抗体セラミック4は導電性を有し、多孔質で、本実施形態では、抵抗体セラミック4の外形は、直方体状の六面体に形成されており、貫通孔6は抵抗体セラミック4の長手方向に形成されて、抵抗体セラミック4の両端面4a,4bに貫通孔6が開口されている。抵抗体セラミック4の両端面4a,4bを除く他の4つの表面は平面状に形成されている。
【0013】
この4つの表面のうち、対向する2つの表面が電極平面とされ、2つの電極平面には、金属膜8a,8bが形成されている。金属膜8a,8bは、電極平面の全域にわたって形成されており、金属膜8a,8bは耐熱性で導電性を有する銀ペーストを塗布し、高温で焼成するか、または純アルミを溶射して形成される。
【0014】
両金属膜8a,8b上には、それぞれプレート状の発泡金属10,12が被せられて接合されている。発泡金属10,12は、金属膜8a,8bの表面の全域にわたる大きさに形成されている。
【0015】
発泡金属10,12は、金属粉末と水溶性バインダーと界面活性剤と水を混合し、更に非水溶性有機溶剤を添加混合して、均一に分散分布させた成形体を成形し、この成形体を一定温度に保持することにより、成形体中の非水溶性有機溶剤を気化させ、ガスとして蒸発させる。
【0016】
この蒸発により、成形体中には微細にして整寸の気泡が多数発生して発泡金属10,12が形成される。形成された発泡金属10,12は、高温で焼結処理することにより金属粉部分が焼結され、気泡を覆う骨格で構成された導電性を有する多孔質金属体として得られる。金属粉末の材質は、銅系やアルミ系等の導電性の良いものが好ましく、また、発泡金属10,12は軟質に形成するのが好ましく、発泡金属10,12の気孔径や気孔率は実験等により決定するとよい。
【0017】
金属膜8a,8bと発泡金属10,12との接合は、本実施形態では、押圧状態で加熱した拡散接合により行われており、拡散接合により、互いに接触した状態での金属同士の相互拡散を起こす。
【0018】
抵抗体セラミック4に金属膜8a,8bが形成されるので、抵抗体セラミック4と発泡金属10,12とを金属膜8a,8bを介して拡散接合できる。また、抵抗体セラミック4の電極平面は、小さな凹凸や波のようなうねりが存在し、面粗さや平坦度がよい平面ではない。
【0019】
金属膜8a,8bを形成する抵抗体セラミック4の電極平面に凹凸やうねりがあっても、拡散接合する際に発泡金属10,12が電極平面の凹凸やうねりに倣って変形し、金属膜8a,8bと発泡金属10,12とが隙間なく接合される。
【0020】
例えば、電極平面の小さな凸が発泡金属10,12の接合面側の気泡内に入り込んだり、発泡金属10,12の接合面側に小さな凸が食い込んだ状態となって、電極平面の凹凸を吸収して、金属膜8a,8bに発泡金属10,12が全域で密着する。また、電極平面にうねりがあっても、うねりに沿って発泡金属10,12が変形して、金属膜8a,8bに発泡金属10,12が全域で密着する。
【0021】
両発泡金属10,12には、プレート状の発泡金属10,12の表面のほぼ中央にそれぞれ金属製の電極14,16が接合されている。発泡金属10,12と電極14,16との接合は、本実施形態では、拡散接合により行われている。
【0022】
電極14,16の発泡金属10,12との接合面積は、プレート状の発泡金属10,12のみかけ面積よりも小さく形成されて、電極14,16は、発泡金属10,12の表面から略垂直方向に立設して設けられている。発泡金属10,12の表面は、金属の部分と気泡の部分とで形成されており、これらが交互に繰り返された状態で表面が形成されている。発泡金属10,12のみかけ面積は、これら金属の部分と気泡の部分の両方の表面を含む発泡金属10,12の表面の面積である。接合面積は、発泡金属10,12のみかけ面積よりも小さい電極14,16の面積で、発泡金属10,12の金属の部分と気泡の部分との両方を含むみかけ状の表面に接触させる電極14,16の表面の面積である。
【0023】
抵抗体セラミック4に形成した両金属膜8a,8bに発泡金属10,12を被せて重ね、更に発泡金属10,12に電極14,16を重ねて、これら3種類の部品を同時に拡散接合することにより、接合作業が容易になる。
【0024】
また、3種類の部品は拡散接合されているので、金属膜8a,8bと発泡金属10,12、及び発泡金属10,12と電極14,16とのそれぞれの接触面は密着し、かつ金属的に結合されており、接触面が直接外部環境部に触れないため、経時的な通電抵抗の増加が起こり難い。接触面が金属的に結合されていない場合は、経時的に接触面に生成される酸化皮膜により通電抵抗が場所によって増加する。通電抵抗が場所によって異なると、セラミックヒータ1の昇温性能が場所によって偏ってしまうが、密着し、かつ金属的に結合されている場合は、昇温性能の偏りを防止できる。
【0025】
セラミックヒータ1の使用にあたっては、抵抗体セラミック4の両端面4a,4bを除いて、発泡金属10,12の表面を含めて、非導電性で柔軟性のあるマット20により覆う。電極14,16はマット20から外部に突出させる。
【0026】
マット20で覆ったセラミックヒータ1をダクト2内に収納し、その際、電極14,16はダクト2の外部に突出させ、ケーブルと接続する。電極14,16に通電すると、抵抗体セラミック4が発熱して、ダクト2内を流通する流体が貫通孔6を流れる際に加熱される。
【0027】
通電すると、電極14,16から発泡金属10,12と金属膜8a,8bを介して抵抗体セラミック4に電流が流れるが、抵抗体セラミック4の対向する電極平面に金属膜8a,8bを形成したので、両金属膜8a,8b間の通電方向の距離が均一に形成され、通電が均一化される。
【0028】
また、発泡金属10,12と電極14,16との接合面積が小さくても、抵抗体セラミック4の抵抗値に対して、発泡金属10,12の抵抗値を十分小さくすることができるので、発泡金属10,12を介して電流が全域にわたって分散し、抵抗体セラミック4の全体をほぼ均等に発熱させることができる。
【0029】
発泡金属10,12は体積が同じ金属板に比べて重量が軽く、また、電極14,16を小さくできるので、セラミックヒータ1を軽量化できる。セラミックヒータ1は小型化できるので、自動車の室内や浴室やトイレ等の小さな部屋の暖房、あるいは、スポット的に暖房をすることもできる。
【0030】
以上本発明はこの様な実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0031】
1…セラミックヒータ 2…ダクト
4…抵抗体セラミック 4a,4b…端面
6…貫通孔 8a,8b…金属膜
10,12…発泡金属 14,16…電極
20…マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハニカム状の抵抗体セラミックの電極平面に金属膜を形成し、
前記金属膜にプレート状の発泡金属を被せて接合し、
かつ、前記発泡金属に、接合面積が前記発泡金属のみかけ面積よりも小さい電極を接合したことを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
前記発泡金属の表面のほぼ中央に前記電極を前記発泡金属から略垂直方向に立設して接合したことを特徴とする請求項1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記抵抗体セラミックは六面体状で、互いに反対側の表面を前記電極平面として前記金属膜を形成して前記発泡金属を接合し、前記各発泡金属にそれぞれ前記電極を接合したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記抵抗体セラミックの前記電極平面の全域に前記金属膜を形成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
前記金属膜の全域にプレート状の前記発泡金属を被せて接合したことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のセラミックヒータ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−4270(P2013−4270A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133303(P2011−133303)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(391002498)フタバ産業株式会社 (110)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】