説明

セラミックフォーム

【課題】枠体を設けることなく、周面の気孔からの対象ガスの漏出、周面のカケを防止できるとともに、軽量化、コストダウンを図ることができ、さらに、設置面積当りのガス通過面積を拡大できるセラミックフォームを提供する。
【解決手段】本セラミックフォームは内部が三次元網目構造であるセラミックフォームの多孔質部と、この多孔質部の周面に内部と同質材料で形成され、多孔質部の気孔を封止する非多孔質部と、この非多孔質部近傍の多孔質部にセラミックフォーム固定用の固定子貫通孔が設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミックフォームに係り、特に多孔質部にセラミックフォーム固定用の固定子貫通孔を設けたセラミックフォームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に臭気成分、排気ガス成分、不純物成分などを分解除去する光触媒セラミックフォームはセラミックフォームに光触媒を担持してなる。
【0003】
図9に示すように、光触媒セラミックフォーム構造体21は、光触媒セラミックフォーム22が多孔質であり、周面の気孔から対象ガスが漏出したり、脆いため、セラミックフォーム22の周面を金属製の枠体23で囲ってなり、光触媒セラミックフォーム22を1枚あるいは複数枚重ねて、紫外線光源24を取り付けた取付枠25にボルト26で固定して一体化している。この一体化は、枠体23の外周に設けられた取付片23aのボルト貫通孔23bと、取付枠25の外周に設けられた取付片25aのボルト貫通孔25bにボルト26を貫通して行う。
【0004】
しかし、従来の光触媒セラミックフォーム構造体は、別個の枠体のコストがかかり、重量が増加し、取り扱いにくい。
【0005】
なお、光触媒を担持したセラミックフォームの周面を枠体で囲ったセラミックフォームを複数枚重ねて、取付枠に取り付けた光触媒装置が提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−246228号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、枠体を設けることなく、周面の気孔からの対象ガスの漏出、周面のカケを防止できるとともに、軽量化、コストダウンを図ることができ、さらに、設置面積当りのガス通過面積を拡大できるセラミックフォームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係るセラミックフォームは、内部が三次元網目構造であるセラミックフォームの多孔質部と、この多孔質部の周面に内部と同質材料で形成され、前記多孔質部の気孔を封止する非多孔質部と、この非多孔質部の近傍の前記多孔質部にセラミックフォーム固定用の固定子貫通孔が設けられたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るセラミックフォームによれば、枠体を設けることなく、周面の気孔からの対象ガスの漏出、周面のカケを防止できるとともに、軽量化、コストダウンを図ることができ、さらに、設置面積当りのガス通過面積を拡大できるセラミックフォームを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の一実施形態に係るセラミックフォームについて添付図面を参照して説明する。
【0010】
図1は本発明の一実施形態に係るセラミックフォームの概念図である。
【0011】
図1に示すように、セラミックフォーム1は、板状、長方形状をなし、内部が三次元網目構造であるセラミックフォームの多孔質部2の周面に、内部と同質材料で形成され、多孔質部2の気孔を封止する非多孔質部3が設けられ、さらに、この非多孔質部3近傍の多孔質部2の4隅にセラミックフォーム固定用の固定子貫通孔4が4個設けられる。
【0012】
セラミックフォーム例えばアルミナフォームの製造は、アルミナ原料粉末を溶媒に分散させてスラリーを調製し、このスラリーをウレタンフォームに浸透させて、骨格表面にスラリー層を形成させた後、焼成してウレタンを焼き抜き、セラミックフォームを得るか、スラリーに架橋重合性樹脂を混合撹拌し、泡状として架橋させた後、焼成し、セラミックフォームを得る。
【0013】
非多孔質部3は多孔質部2の気孔を封止してガス漏出を防止するものであり、多孔質部2の気孔をつぶすように設けた、例えばアルミナフォームにあってはアルミナの緻密質部である。この非多孔質部としての緻密質部は、アルミナフォームの焼成時、アルミナフォームの周面にアルミナを塗布し、焼成して形成する。
【0014】
非多孔質部を周面に形成することで、気孔を封止するほか、焼成時のワレの防止、取り扱い時の周面のカケ防止、また、強度の向上、流入するガス流を一定方向に流すこと、さらに、強度の向上により、セラミックフォームを厚くすることが可能になる。
【0015】
固定子貫通孔4は、焼成前に治具により非多孔質部3近傍の多孔質部2に穿設する。また、固定子貫通孔4の周囲に非多孔質部を設けるのが好ましい。この非多孔質部は、上記同様にアルミナフォームの焼成時、固定子貫通孔の周囲にアルミナを塗布し、焼成して形成する。これにより、固定子貫通孔の気孔を介してガスが漏出することがなく、セラミックフォームのガス通過率を向上させることができる。
【0016】
なお、セラミックフォーム1は、長方形状に限らず、正方形状、図2に示すような三角形状、図3に示すような円形状、図4に示すような多角形状例えば六角形状であってもよい。
【0017】
上記構造のセラミックフォームは、非多孔質部を設けることにより、枠体を設けることなく、周面の気孔からの対象ガスの漏出、周面のカケを防止できるとともに、軽量化、コストダウンを図ることができる。
【0018】
次に本発明に係るセラミックフォームを光触媒脱臭装置に用いた例を説明する。
【0019】
本発明のセラミックフォームに光触媒としてのチタニアを担持させる。
【0020】
このチタニアの担持は、上記のようにして製造されたセラミックフォームを、例えば、アナターゼ型チタニアと、炭素、水素、窒素、硫黄から選ばれた少なくとも2種類がドープされているアナターゼ型チタニアと、さらに、微量の混合物からなるチタニア微粒子が含まれるスラリーに浸漬等して、セラミックフォーム表面にチタニア微粒子を付着し、熱処理する。
【0021】
図5に示すように、光触媒セラミックフォーム10は、紫外線光源11と僅かに離間して、紫外線光源11が取り付けられた取付体12と一体化されて、光触媒セラミックフォーム構造体13が組み立てられる。この組み立ては、図中矢印で示すように、取付体12の内側4隅に設けられた取付片12aの固定子貫通孔12bを貫通する取り付け固定子例えばボルト14を、多孔質部2の4隅に設けた固定子貫通孔4に貫通させることで行われる。
【0022】
本光触媒セラミックフォーム10は、上記セラミックフォームの奏する効果のほか、従来と異なりボルト孔を設けた取付片を設ける必要がなく、また、取付枠12に設ける取付片12aを取付枠12の内側に配することが可能になるため、図6に示すように、光触媒セラミックフォーム構造体13を光触媒脱臭装置15の本体16に組み込む場合、組み込みが容易になり、また、本体16の開口面積一杯まで、光触媒セラミックフォーム10の面積を大きくすることができ、設置面積当りのガス通過面積を拡大でき、光触媒脱臭装置15の脱臭の能力を向上させることができる。
【0023】
上述した本実施形態に係るセラミックフォームによれば、枠体を設けることなく、周面の気孔からの対象ガスの漏出、周面のカケを防止できるとともに、軽量化、コストダウンを図ることができ、さらに、設置面積当りのガス通過面積を拡大できるセラミックフォームが実現する。
【実施例】
【0024】
目的:図7に示すように、本発明の光触媒セラミックフォームを光触媒ガス浄化装置に組み込み、ガス通過率を調べ、図8に示す光触媒ガス浄化装置(比較例)と比較する。
【0025】
[試料]
実施例:チタニア光触媒を三次元網目構造のアルミナフォームで担持し、周面をアルミナで封じた光触媒セラミックフォーム。サイズは150×150×10mm
比較例:実施例2と同様のもので、周面を金枠で囲った光触媒セラミックフォーム。
【0026】
[試験条件]
原臭:アンモニア3.86ppm、温度:25℃、相対湿度:50%、風量:5L/min
[結果]
実施例:89.9%、 比較例:90.0%
実施例と比較例間にガス通過率の差異は認められない。しかしながら、実施例は金枠を使用していない分だけ、装置全体の重量が4kg軽量化され、金枠作製分の費用も削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るセラミックフォームの概念図。
【図2】本発明の他の実施形態に係るセラミックフォームの概念図。
【図3】本発明の他の実施形態に係るセラミックフォームの概念図。
【図4】本発明の他の実施形態に係るセラミックフォームの概念図。
【図5】本発明の一実施形態に係るセラミックフォームを用いた光触媒セラミックフォーム構造体の分解図。
【図6】本発明の一実施形態に係る光触媒セラミックフォームを組み込んだ光触媒ガス浄化装置の概念図。
【図7】本発明の一実施形態に係る光触媒セラミックフォームを組み込んだガス通過率試験用の光触媒ガス浄化装置の概念図。
【図8】従来の光触媒セラミックフォームを組み込んだガス通過率試験用の光触媒ガス浄化装置の概念図。
【図9】従来の光触媒セラミックフォーム構造体の概念図。
【符号の説明】
【0028】
1 セラミックフォーム
2 多孔質部
3 非多孔質部
4 固定子貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が三次元網目構造であるセラミックフォームの多孔質部と、この多孔質部の周面に内部と同質材料で形成され、前記多孔質部の気孔を封止する非多孔質部と、この非多孔質部近傍の前記多孔質部にセラミックフォーム固定用の固定子貫通孔が設けられたことを特徴とするセラミックフォーム。
【請求項2】
前記固定子貫通孔の周囲に非多孔質部が設けられたことを特徴とするセラミックフォーム。
【請求項3】
前記多孔質部は、光触媒を担持することを特徴とする請求項1または2に記載のセラミックフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−114131(P2008−114131A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298421(P2006−298421)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】