説明

セラミック中空繊維複合体、その生産方法およびその使用

酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つ含む複合体であって、該材料が、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせであり、該中空繊維の外表面が、同じ中空繊維または他の中空繊維の外表面と接触しており、該接触点が焼結により接合されている、前記複合体について記載する。
他の複合体は、酸素輸送性セラミック材料であって、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせである前記酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つと、少なくとも一端面における流体の導入または放出のための接続要素とを含み、ここにおいて、中空繊維と接続要素は接合されている。
該複合体は、酸素含有ガス混合物から酸素を単離するため、または酸化反応を実施するために、用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、酸素含有流体から酸素を回収する、または酸化反応を実施するのに非常に適している、中空セラミック繊維の複合体に関する。
中空セラミック繊維は、それ自体が公知である。それらの生産については、例えば、US−A−4222977またはUS−A−5707584に記載されている。
【0002】
J.Mem.Sci.193(2001)249−260において、S.Liu、X.Tan、K.LiおよびR.Hughesは、SrCe0.95Yb0.052.975で構成されるセラミックの膜および中空繊維の生産について報告している。気密性中空繊維が生産され、それらの機械的性質および微細構造が研究されている。
【0003】
CIMTEC 2002、pp.249−258において、J.Luytenは、ペロブスカイト型セラミック繊維の生産について報告している。La0.6Sr0.4Co0.8Fe0.23-δの中空繊維が記載されている。
【0004】
J.Mem.Sci.5229(2002)1−15において、J.Tong、W.Yang、B.ZhuおよびR.Caiは、ジルコニウムをドープした酸素分離用ペロブスカイト型セラミック膜に関する研究について報告している。BaCo0.4Fe0.6-xZrx3-δの膜が記載されている。
【0005】
他の酸素伝導性セラミック材料は、US−A−6−165431、US−A−6146549、US−A−6471921およびUS−A−6592782に開示されている。
第一に、セラミック材料で構成される膜は気密性に作成することができ、第二に、選択されたセラミック材料は酸素透過性を示し、したがって、ガス混合物から酸素を分離するのに用いることができる。そのようなセラミックスの考えうる用途は、とりわけ、ガス分離のような高温での用途または新規タイプの膜反応器である。
【0006】
酸化反応のための反応器における酸素伝導性セラミック膜の使用は、例えば、US−A−6214757、US−A−6033632およびUS−A−6641626に記載されている。
【0007】
高温でイオンを伝導するセラミックスに関する考えうる使用および材料の概観は、The Electrochemical Society Interface,Summer 2001,pp.22−27に見いだすことができる。
【0008】
中空セラミック繊維を生産するための公知の方法は、第1段階において弾性未処理繊維をセラミック材料の前駆体とポリマーとを含む可紡性組成物から生産する紡糸法を包含する。その後、存在するポリマー部分を高温で燃焼させ、純粋な中空セラミック繊維を形成する。
【0009】
紡糸中に転相工程が起こり、一般に第1段階で多孔質膜が得られる。これらは、制御された温度を用いて高密度まで燃焼させることもできる。
このようにして生産された繊維は、比較的高い機械的安定性を有するが、当然ながら、セラミック材料に特有の脆性および破壊に対する過敏性を示す。
【0010】
今回、意外にも、選択された材料で構成された中空セラミック繊維を、他の造形体またはさらなる中空セラミック繊維と組み合わせて、より複雑な構造体を形成し、焼結によりこれを接合することができることを見いだした。これは、一時的な接着剤を用いることなく実現することができる。著しくより高い安定性を有し、取扱いが特に安全面での配慮に関しかなり改善されている構造体が形成する。
【0011】
中空無機繊維の複合体は公知である。DE10043666C1には、短繊維フラグメントの不規則な集成体からなるセラミック絶縁材料が記載されている。これらのフラグメントは、接触点で互いに接合することもできる。
【0012】
GB2022565Aには、無機材料で構成され、多孔質壁と横断面に関し異方性の細孔容積の側面(anisotropic pore volume profile over the cross section)とを有する中空繊維が記載されている。一緒に加撚されていて一緒に焼結されていない中空金属繊維の組合わせが、開示されている。
【0013】
本発明は、選択されたセラミック材料の前駆体が、他の材料との接触点において加熱すると非常に効率的に一緒に焼結し、このための接着剤またはスリップなどの助剤の使用は必要ないということを、予期せず認識したことに基づいている。
【0014】
本発明の目的は、1以上の中空セラミック繊維、または他の造形部分を一緒に伴う中空セラミック繊維で構成される構造体を提供することである。
本発明の他の目的は、これらの構造体の簡単な生産方法であって、セラミック造形体を生産するための通例の装置を用いることができる方法を提供することである。
【0015】
本発明は、酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つ含む複合体であって、該材料が、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせであり、該中空繊維の外表面が、同じ中空繊維または酸素輸送性セラミック材料の他の中空繊維の外表面と接触しており、該接触点が焼結により接合されている、前記複合体を提供する。
【0016】
本発明の他の態様は、酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つ含む複合体であって、該材料が、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせであり、該中空繊維の一端面、好ましくは両端面が、流体の導入または放出のために、該中空繊維に接続している接続要素、好ましくは、焼結により中空繊維に接合されている接続要素を備えている、前記複合体を提供する。
【0017】
本発明に従って用いられる中空繊維は、あらゆる横断面、例えば、角張った形、楕円形、またはとりわけ円形の横断面を有することができる。
本説明の目的に関し、中空繊維は、中空の内部空間を有し、あらゆる外部寸法、すなわち、直径または線寸法を有することができる構造体である。
【0018】
本説明の目的に関し、中空繊維は、この用語の従来の意味だけでなく、0.5〜5mmの外径を有する細管および5mmを超える外径を有する管も指すことができる。
中空繊維の好ましい外径または線寸法は、最大5mmの範囲で変動する。3mm未満の外径を有する中空繊維を用いることが、とりわけ好ましい。
【0019】
本説明の目的に関し、中空繊維は、あらゆる長さを有する中空繊維である。例は、中空モノフィラメントまたは中空ステープルファイバー(有限長のモノフィラメント)である。
【0020】
本発明の複合体では、通常、長さが外径をかなり上回る中空セラミック繊維が用いられる。好ましく用いられる中空セラミック繊維は、少なくとも50:1、好ましくは少なくとも100:1、とりわけ少なくとも200:1の長さと外径の比率を有する。
【0021】
本発明の複合体は、予め決定した幾何学的形状(統計的配向を有する不規則な集成体での中空繊維の蓄積とは対照的に)を有する構造体であり、該構造体は、少なくとも1つの中空繊維、好ましくは複数の中空繊維を接合して複合体を形成することにより形成されており、この複合体は、中空繊維の内容積により形成される少なくとも1つの内部空間と、中空繊維を包囲する容積により形成される少なくとも1つの外部空間を有する。複合体は通常、流体が内部空間を通って流れて、内部空間を通過する間に酸素を激減させることができ、該酸素が中空セラミック繊維の壁を通って外部空間に輸送されるような形状をしている。反対方向での酸素の輸送が起こる配置も可能である。
【0022】
本発明の複合体は、酸素輸送性セラミック材料で構成される中空セラミック繊維のあらゆる組合わせに相当することができる。
例えば、以下の複合体を生産することが可能である:
・平面状に配置され縦方向に接触している複数の中空繊維
・複数の編組された中空繊維または複数の一緒に加撚された中空繊維
・モノリス(monolith)を形成するように組み合わされた複数の中空繊維(中空繊維で作られた多流路要素)。
【0023】
セラミック(前駆体)相の割合が過度に高くない未処理繊維は柔軟性および弾性を有するので、他の多くの幾何配置が可能である。この構造化の結果、繊維は元の機能(すなわち、酸素伝導のためのガス透過性)を保持する。
【0024】
その後、そのような複合体をさらに組み合わせて、膜モジュールを生産することができる。これらの系は、とりわけ、ガス分離のような高温での用途での使用または膜反応器の部品としての使用に適している。
【0025】
本発明に従って用いられる中空繊維は、それ自体が公知の紡糸法により生産することができる。これは、乾式もしくは湿式紡糸のような溶液紡糸法か、または溶融紡糸法であることができる。
【0026】
紡糸する組成物は、微細セラミック材料またはその前駆体と可紡性ポリマーとを含む。
紡糸する組成物中の可紡性ポリマーの含量は広い範囲内で変動することができるが、紡糸する組成物または紡糸液の全体に基づき通常2〜30重量%、好ましくは5〜10重量%である。
【0027】
紡糸する組成物中の微細セラミック材料またはその前駆体の含量は、同様に広い範囲内で変動することができるが、紡糸する組成物または紡糸液の全体に基づき通常20〜90重量%、好ましくは40〜60重量%である。
【0028】
紡糸する組成物中の溶媒の含量は広い範囲内で変動することができるが、紡糸液全体に基づき通常10〜80重量%、好ましくは35〜45重量%である。
可紡性ポリマーおよび微細セラミック材料またはその前駆体のタイプおよび量は、可紡性ポリマーの含量をできるだけ低く保ちつつなお可紡性である組成物が得られるように選択することが好ましい。
【0029】
紡糸は、紡糸液または加熱し可塑化した紡糸組成物を、環状ノズルに通して押し出した後、空気中で冷却し、および/または紡糸組成物に用いられているポリマーに対する非溶媒を含有する沈殿浴中に導入することにより、もたらされる。
【0030】
その後、得られた未処理中空繊維を、さらなる加工段階、例えば、切断してステープルを形成する段階または一時的な貯蔵のために巻き取る段階に付すことができる。
造形に続く加工段階において、得られた未処理中空繊維を組み合わせて、所望の複合体を形成する。
【0031】
この未処理複合体は、複数の同一または異なる未処理中空繊維の組合わせであるか、流体、例えば液体もしくはとりわけガスの導入または放出のための少なくとも1つの接続要素を端面に有する1以上の未処理中空繊維の組合わせであることができる。
【0032】
未処理中空繊維は、任意の技術により組み合わせることができる。例は、平行な中空繊維を互いに隣接して置くような手動での組合わせ、および生地生産技術、例えば、編まれた物、織物、レイアップ、編まれた製品、編組または加撚されている構造体の生産である。
【0033】
未処理中空繊維(1以上)の複合体の生産後、ポリマーを、それ自体が公知の方法で熱処理により除去する。この段階は、セラミック材料の前駆体からのセラミックの形成および/または微細セラミック粒子の焼結も包含する。形成するセラミックの性質は、温度プログラムおよび雰囲気などの処理パラメーターを選択することにより、当業者に公知の方法で制御することができる。
【0034】
本発明の複合体中に存在する中空繊維は酸素輸送性セラミック材料を含む。そのような材料は、それ自体が公知である。
本発明の複合体の酸素輸送に関する典型的な値は、当該複合体の全表面にわたる平均として測定して、少なくとも0.01標準cm3/(min*cm2)、好ましくは少なくとも0.1標準cm3/(min*cm2)の酸素流束である。ここで、標準cm3は、標準立方センチメートル(1barおよび25℃における)である。酸素流束に関して与えられる値は、本説明の目的の場合、950℃において2つの自由な気相(free gas phase)間の酸素分圧差0.2barで決定され、ここにおいて、高い方の酸素分圧が0.2barである。
【0035】
これらのセラミックスは、酸素アニオンおよび電子を伝導する材料を含むことができる。しかしながら、異なるセラミックスの組合わせまたはセラミック材料と非セラミック材料の組合わせ、例えば、酸素アニオンを伝導するセラミックスと電子を伝導するセラミックスとの組合わせ、または、それぞれ酸素アニオンおよび電子を伝導するか、すべての構成要素が酸素伝導を示すとは限らない異なるセラミックスの組合わせ、または、酸素伝導性セラミック材料と金属のような非セラミック材料との組合わせを用いることも可能である。
【0036】
好ましい多層膜系の例は、イオン伝導性を示すセラミックと電子伝導性を示す他の材料、とりわけ金属との混合物である。これらとしては、とりわけ、蛍石型構造または蛍石関連構造を有する材料と電子伝導性材料との組合わせ、例えば、それぞれCaOまたはY23でドープされていてもよいZrO2またはCeO2と、パラジウムなどの金属との組合わせが挙げられる。
【0037】
好ましい多層膜系の他の例は、部分的にペロブスカイト型構造を有する混合構造体、すなわち、さまざまな結晶構造が固体中に存在し、これらの少なくとも1種がペロブスカイト型構造またはペロブスカイト型関連構造である混合系である。
【0038】
好ましく用いられる酸素輸送性材料は酸化物セラミックスであり、その中でもペロブスカイト型構造またはブラウンミラライト型構造またはアウリビリウス(aurivillite)型構造を有するものがとりわけ好ましい。
【0039】
本発明に従って用いられるペロブスカイトは通常ABO3-δ構造を有し、ここにおいて、Aは二価のカチオンであり、Bは三価以上のカチオンであり、Aのイオン半径はBのイオン半径より大きく、δは、材料が電気的に中性になるように、0.001〜1.5、好ましくは0.01〜0.9、より好ましくは0.01〜0.5である。異なるカチオンAおよび/またはカチオンBの混合物も、本発明に従って用いられるペロブスカイト中に存在することができる。
【0040】
本発明に従って用いられるブラウンミラライトは通常A225-δ構造を有し、ここにおいて、A、Bおよびδは上記の通りである。本発明に従って用いられるブラウンミラライト中にも、異なるカチオンAおよび/またはカチオンBの混合物が存在することができる。
【0041】
カチオンBは、好ましくは複数の酸化状態で現れることができる。しかしながら、タイプBのカチオンの一部またはすべてが、一定の酸化状態を有する三価以上のカチオンであることもできる。
【0042】
とりわけ好ましく用いられる酸化物セラミックスは、主族II、遷移族I、遷移族II、ランタニド族のカチオン、またはこれらのカチオンの混合物の中から、好ましくは、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Ag2+、Zn2+、Cd2+および/またはランタニドの中から選択されるタイプAのカチオンを含有する。
【0043】
とりわけ好ましく用いられる酸化物セラミックスは、周期表のIIIB〜VIIIB族および/もしくはランタニド族、主族III〜Vの金属のカチオン、またはこれらのカチオンの混合物の中から、好ましくは、Fe3+、Fe4+、Ti3+、Ti4+、Zr3+、Zr4+、Ce3+、Ce4+、Mn3+、Mn4+、Co2+、Co3+、Nd3+、Nd4+、Gd3+、Gd4+、Sm3+、Sm4+、Dy3+、Dy4+、Ga3+、Yb3+、Al3+、Bi4+、またはこれらのカチオンの混合物の中から選択されるタイプBのカチオンを含有する。
【0044】
とりわけ好ましく用いられる他の酸化物セラミックスは、Sn2+、Pb2+、Ni2+、Pd2+、ランタニドの中から選択されるタイプBのカチオン、またはこれらのカチオンの混合物を含有する。
【0045】
本発明に従って用いられるアウリビライト(aurivillite)は、通常、構造要素(Bi222+(VO3.5[ ]0.52-または関連する構造要素を含み、ここにおいて、[ ]は酸素欠損である。
【0046】
ペロブスカイト型構造を有する酸素輸送性酸化物セラミックが、元素Ba、Sr、Fe、ZnおよびOまたは元素Ba、Co、Fe、ZrおよびOを含む、とりわけ、組成物BaCoxFeyZrz3-δ[式中、x、yおよびzの合計は1であり、zは0.1〜0.5の値をとり、xはa*yの範囲内の値を有し、aは0.8〜1.2の値をとり、δは先に定義した意味を有する]を含む複合体が、きわめて特に好ましい。
【0047】
本発明は、上記複合体の生産方法であって、処置:
i)ポリマーと、セラミック、とりわけ酸化物セラミック、またはセラミックの前駆体とを含む組成物を、ノズル、好ましくは環状ノズルに通して、それ自体が公知の方法で押し出すことによる、未処理中空繊維の生産、
ii)段階i)で生産された1以上の未処理中空繊維からの、該未処理中空繊維(1以上)の外表面(1以上)の間に接点を形成することによる、未処理複合体の生産、および
iii)ポリマーを除去し、段階i)でセラミックの前駆体を使用する場合はセラミックを形成し、中空セラミック繊維の間に接点を構築するための、段階ii)で生産された未処理複合体の熱処理、
を含む方法を提供する。
【0048】
他の態様において、本発明は、先に定義した複合体の生産方法であって、処置:
i)ポリマーと、セラミック、とりわけ酸化物セラミック、またはセラミックの前駆体とを含む組成物を、ノズル、好ましくは環状ノズルに通して、それ自体が公知の方法で押し出すことによる、未処理中空繊維の生産、
iv)段階i)で生産された1以上の未処理中空繊維と、該未処理中空繊維の少なくとも一端面において流体を導入または放出するための少なくとも1つの接続要素からの、未処理複合体の生産、および
v)ポリマーを除去し、中空セラミック繊維と少なくとも1つの接続要素の間に接点を構築し、そしてまた、段階i)でセラミックの前駆体を使用する場合はセラミック、とりわけ酸化物セラミックを形成するための、段階iv)で生産された未処理複合体の熱処理、
を含む方法を提供する。
【0049】
本発明に従って生産される中空繊維の外径(De)および内径(Di)は、広い範囲内で変動することができる。Deの例は、0.1〜5mm、とりわけ0.5〜3mmである。Diの例は、0.01〜4.5mm、とりわけ0.4〜2.8mmである。
【0050】
中空繊維を、横断面の形状が円形、楕円形またはn角形であるモノフィラメントの形態で生産することがとりわけ好ましく、ここにおいて、nは3以上である。
繊維の横断面が非円形である場合、Deは外側横断面の最大寸法であり、Diは内側横断面の最大寸法である。
【0051】
セラミック繊維の生産に関しそれ自体が公知のポリマーを、本発明に従って用いられる中空繊維の生産に用いることができる。ポリマーは、原理上、溶融体または溶液から紡糸することができるあらゆるポリマーであることができる。これらの例は、ポリエステル、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリエーテルスルホンおよびセルロースである。
【0052】
本発明に従って用いられる中空繊維を生産するためには、それ自体がセラミック繊維の生産に関し公知であり酸素伝導性を有するセラミック組成物、またはその前駆体を用いることが可能である。酸素伝導性セラミック組成物の例は先に挙げている。これらのセラミック組成物の前駆体は、例えば、造形中はまだ非晶質または部分的な結晶質であり、造形体の焼結中にのみ所望の結晶構造に転化する混合物であることができる。
【0053】
紡糸組成物を紡糸口金に通して押し出した後、未処理中空繊維を沈殿浴または冷却浴、好ましくは水浴に導入した後、巻き上げる。
引取速度は、通常1分あたり1〜100m、好ましくは5〜20m/minである。
【0054】
未処理中空繊維は、セラミック材料またはそれらの前駆体およびポリマーだけでなく、他の助剤も含むことができる。これらの例は、スリップ用安定剤、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、界面活性剤、エチレンジアミン四酢酸またはクエン酸、スリップの粘度を調整するための添加剤、例えばポリビニルピロリドン、あるいは、セラミックをドープするためのカチオンの供給源としての塩である。
【0055】
未処理中空繊維の生産後、これらを上記方法で組み合わせて、すなわち、他の中空繊維および/または流体のための入口および出口と組み合わせて、複合体を形成する。入口および出口は、金属、セラミックスまたはセラミックスの前駆体で構成される造形体であることができる。
【0056】
その後、未処理複合体を熱処理する。これは、空気中または保護ガス雰囲気中で実施することができる。温度プログラムおよび焼結時間は個々の場合に適合させなくてはならない。この目的のために設定すべきパラメーターは当業者に公知である。熱処理段階は未処理前駆体の緻密化をもたらす。最初にポリマーが消失し、次に、得られたセラミックの細孔が、適切に選択された熱処理条件下で閉鎖し、これにより気密性複合体が得られる。
【0057】
未処理複合体を流体のための入口および出口と組み合わせる代わりに、セラミック中空繊維で構成される完成複合体を、流体のための入口および出口に、例えばセラミック接着剤を用いて接着結合させることができる。
【0058】
本発明の複合体は、あらゆる工業分野で用いることができる。それらは、酸化反応を高温および/または攻撃的な環境で実施するか、酸素をガス混合物から分離しなければならない用途で、好ましく採用される。
【0059】
本発明は、酸素含有ガス混合物、とりわけ空気から酸素を単離するための、上記複合体の使用を規定する。
本発明はさらに、酸化反応の実施、とりわけ有機化合物の接触酸化のための、上記複合体の使用を規定する。
【0060】
以下の実施例は、本発明を制限することなく例示するものである。パーセンテージは、特記しない限り重量基準である。
実施例1:未処理中空繊維の生産
組成BaCo0.4Fe0.4Zr0.23-δを有するセラミック粉末を、ポリスルホン(UDEL P−3500、Solvay)および1−メチル−2−ピロリドン(NMP)(≧99.0%、Merck)と一緒に撹拌して、スリップを生産した。その後、これをボールミルで均質化した。
【0061】
このようにして得た紡糸組成物を、外径(De)1.7mmおよび内径(Di)1.2mmを有する中空コアノズルに通して紡糸した。この目的のために、紡糸組成物を圧力容器に導入し、窒素で加圧した。圧力容器上の活栓を開けた後、紡糸組成物を流出させ、中空コアノズルに通して押し出した。未処理繊維ストランドを沈殿水浴に通して運んだ後、乾燥した。
【0062】
実施例2:中空セラミック繊維で構成される複合体の生産
実施例1に記載したように生産した複数の中空繊維を、それらがその外壁に沿って接触するように互いに平行に配置した。未処理中空繊維のこの複合体を、炉内に吊り下げて焼結した。
【0063】
焼結は、以下の温度プログラムに従って実施した:
・96℃/h 500℃(1h保持)
・120℃/h 1000℃
・60℃/h 1300℃(6h保持)
・120℃/h 800℃
・180℃/h 80℃
焼結後、個々の中空繊維の凝集複合体が得られた。個々の中空繊維は、30〜35cmの長さ、ならびに0.8〜0.9mmのDe径および0.5〜0.6mmのDi径を有していた。
【0064】
実施例2に記載したように生産した中空繊維は、酸素に対する選択的透過性を有していた。
実施例3:中空セラミック繊維で構成される他の複合体の生産
実施例1に記載したように生産した複数の中空繊維を手で編組し、実施例2に記載した方法により熱的に処理した。
【0065】
焼結後、個々の中空繊維の凝集編組物が得られた。
実施例3に記載したように生産した中空繊維は、酸素に対する選択的透過性を有していた。
【0066】
実施例4:中空セラミック繊維で構成される他の複合体の生産
実施例1に記載したように生産した複数の中空繊維を、それらが、管状多流路要素であって、該要素の個々の細管が互いに平行に延長している中空繊維である、前記管状多流路要素を形成するように、ロッド形の型の表面上で互いに手で組合わせた。
【0067】
得られた未処理多流路要素を、実施例2に記載した方法により熱的に処理した。
焼結し、ロッド形の型を取り外した後、多流路要素の内部空間は空であった。平行な中空繊維で構成される多流路要素であって、該中空繊維が一緒に焼結されていて酸素に対する選択的透過性を有する、前記多流路要素が得られた。
【0068】
実施例5:中空セラミック繊維で構成される他の複合体の生産
実施例1に記載したように生産した複数の中空繊維を、それらが、個々の細管がらせんに沿って互いに接触しているらせん形の多流路要素を形成するように、ロッド形の型の表面に沿って巻き付けた。
【0069】
得られた未処理多流路要素を、実施例2に記載した方法により熱的に処理した。
焼結し、ロッド形の型を取り外した後、多流路要素の内部空間は空であった。中空繊維で構成される多流路要素であって、該中空繊維が一緒に焼結されていて、らせん形に互いに平行に延長しており、酸素に対する選択的透過性を有する、前記多流路要素が得られた。
【0070】
実施例6:ガスの導入および放出のための接続要素を有する中空セラミック繊維で構成される複合体の生産
実施例1に記載したように生産した複数の中空繊維を、それらが、多流路要素であって、該要素の個々の細管が互いに平行に延長している中空繊維である、前記多流路要素を形成するように、互いに手で組合わせた。多流路要素の内部空間は、横断面で見ると、中空繊維で完全に満たされていた。
【0071】
ガスの導入および放出のための金属性接続要素を未処理多流路要素の両端面に付着させた。
得られた未処理複合体を、実施例2に記載した方法により熱的に処理した。
【0072】
焼結後、平行な中空繊維で構成される多流路要素あって、該中空繊維が一緒に焼結されていて酸素に対する選択的透過性を有する、前記多流路要素が得られた。この多流路要素を、両端面において金属性接続要素に焼結によりしっかり接続した。
【0073】
実施例7:ガスの導入および放出のための接続要素を有する中空セラミック繊維で構成される複合体の生産
ガスの導入および放出のための金属性接続要素を未処理多流路要素に付着させないという変更をして、実施例6を繰り返した。セラミック多流路要素の焼結後、2つの接続要素を、セラミック接着剤を用いてセラミック中空繊維の両端面で接合した。その後、この複合体を100℃で加熱して、両端面に金属性接続要素が付着している多流路要素を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つ含む複合体であって、該材料が、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせであり、該中空繊維の外表面が、同じ中空繊維または酸素輸送性セラミック材料の他の中空繊維の外表面と接触しており、該接触点が焼結により接合されている、前記複合体。
【請求項2】
酸素輸送性セラミック材料の中空繊維を少なくとも1つ含む複合体であって、該材料が、酸素アニオンおよび電子を伝導するセラミック材料であるか、または酸素アニオンを伝導するセラミック材料と電子を伝導するセラミックもしくは非セラミック材料との組合わせであり、流体の導入または放出のための1つまたは2つの接続要素が、該中空繊維の少なくとも一端面、好ましくは両端面に提供されている、前記複合体。
【請求項3】
一緒に編組または加撚されている複数の中空繊維を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の複合体。
【請求項4】
少なくとも2つの中空繊維を含むことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の複合体であって、該中空繊維が、酸素輸送性セラミック材料で構成され、互いに平行に延長しており、それらの外壁がそれらの長さの少なくとも一部に沿って接触している、前記複合体。
【請求項5】
複数の平行な中空繊維または管を含むことを特徴とする請求項4に記載の複合体であって、該中空繊維または管が管状多流路要素の形態で配置されており、それらの外壁がそれらの長さの少なくとも一部に沿って接触している、前記複合体。
【請求項6】
中空繊維または管が管状多流路要素の外壁を形成し、該管状多流路要素の内部空間が、中空であるか、ロッド形の強化材料を含むことを特徴とする、請求項5に記載の複合体。
【請求項7】
中空繊維または管が、気密性または多孔性材料で構成される管の内側に沿って平行に延長していることを特徴とする、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
管状多流路要素の中空内部空間が酸化触媒を含むことを特徴とする、請求項6に記載の複合体。
【請求項9】
互いに製織されているか、形成ループ編成されているか、または引き抜きループ編成されている1以上の中空繊維を含むことを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の複合体。
【請求項10】
酸素輸送性セラミック材料が酸化物セラミックであることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の複合体。
【請求項11】
酸化物セラミックが、ペロブスカイト型構造またはブラウンミラライト型構造またはアウリビリウス型構造を有することを特徴とする、請求項10に記載の複合体。
【請求項12】
酸化物セラミックがペロブスカイト型構造ABO3-δを有することを特徴とする請求項11に記載の複合体であって、Aが二価のカチオンであり、Bが三価以上のカチオンであり、Aのイオン半径がBのイオン半径より大きく、δが、材料が電気的に中性になるように、0.01〜0.9、好ましくは0.01〜0.5であり、そして、Aおよび/またはBが、異なるカチオンの混合物として存在することができる、前記複合体。
【請求項13】
酸化物セラミックがブラウンミラライト型構造A225-δを有することを特徴とする請求項11に記載の複合体であって、Aが二価のカチオンであり、Bが三価以上のカチオンであり、Aのイオン半径がBのイオン半径より大きく、δが、材料が電気的に中性になるように、0.01〜0.9、好ましくは0.01〜0.5であり、そして、Aおよび/またはBが、異なるカチオンの混合物として存在することができる、前記複合体。
【請求項14】
タイプAのカチオンが、主族II、遷移族I、遷移族II、ランタニド族のカチオン、またはこれらのカチオンの混合物の中から、好ましくは、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Cu2+、Ag2+、Zn2+、Cd2+および/またはランタニドの中から選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の複合体。
【請求項15】
タイプBのカチオンが、周期表のIIIB〜VIIIB族および/もしくはランタニド族、主族Vの金属のカチオン、またはこれらのカチオンの混合物の中から、好ましくは、Fe3+、Fe4+、Ti3+、Ti4+、Zr3+、Zr4+、Ce3+、Ce4+、Mn3+、Mn4+、Co2+、Co3+、Nd3+、Nd4+、Gd3+、Gd4+、Sm3+、Sm4+、Dy3+、Dy4+、Ga3+、Yb3+、Al3+、Bi4+、またはこれらのカチオンの混合物の中から選択されることを特徴とする、請求項12または13に記載の複合体。
【請求項16】
ペロブスカイト型構造を有する酸素輸送性酸化物セラミックが、元素Ba、Sr、Fe、ZnおよびOまたは元素Ba、Co、Fe、ZrおよびOを含む、好ましくは、組成物BaCoxFeyZrz3-δ[式中、x、yおよびzの合計は1であり、zは0.1〜0.5の値をとり、xはa*yの範囲内の値を有し、aは0.8〜1.2の値をとり、δは請求項12で定義した意味を有する]を含むことを特徴とする、請求項12に記載の複合体。
【請求項17】
請求項1に記載の複合体の生産方法であって、処置:
i)ポリマーと、セラミック、とりわけ酸化物セラミック、またはセラミックの前駆体とを含む組成物を、ノズル、好ましくは環状ノズルに通して、それ自体が公知の方法で押し出すことによる、未処理中空繊維の生産、
ii)段階i)で生産された1以上の未処理中空繊維からの、該未処理中空繊維(1以上)の外表面(1以上)の間に接点を形成することによる、未処理複合体の生産、および
iii)ポリマーを除去し、段階i)でセラミックの前駆体を使用する場合はセラミックを形成し、中空セラミック繊維の間に接点を構築するための、段階ii)で生産された未処理複合体の熱処理、
を含む前記方法。
【請求項18】
押出を、乾式紡糸法、湿式紡糸法、または溶融紡糸法に従って実施することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
複合体の生産を、未処理中空繊維(1以上)の編組、加撚、製織、形成ループ編成、引き抜きループ編成により、または未処理中空繊維を互いに平行に置くことにより、達成することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
未処理中空繊維がロッド形の強化要素の周囲または管の周囲に配置されていることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
段階ii)で生産された未処理複合体の熱処理を900〜1600℃の範囲の温度で実施することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
段階iii)で生産された複合体を、流体の導入または放出のための少なくとも1つの接続要素に中空繊維の少なくとも一端面において接合する、好ましくは接着結合することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
請求項2に記載した複合体の生産方法であって、処置:
i)ポリマーと、セラミック、とりわけ酸化物セラミック、またはセラミックの前駆体とを含む組成物を、ノズル、好ましくは環状ノズルに通して、それ自体が公知の方法で押し出すことによる、未処理中空繊維の生産、
iv)段階i)で生産された1以上の未処理中空繊維と、該未処理中空繊維の少なくとも一端面において流体を導入または放出するための少なくとも1つの接続要素からの、未処理複合体の生産、および
v)ポリマーを除去し、中空セラミック繊維と少なくとも1つの接続要素の間に接点を構築し、そしてまた、段階i)でセラミックの前駆体を使用する場合はセラミック、とりわけ酸化物セラミックを形成するための、段階iv)で生産された未処理複合体の熱処理、
を含む前記方法。
【請求項24】
酸素含有ガス混合物、とりわけ空気から酸素を単離するための、請求項1〜16のいずれかに記載の複合体の使用。
【請求項25】
酸化反応の実施、とりわけ有機化合物の接触酸化のための、請求項1〜16のいずれかに記載の複合体の使用。

【公表番号】特表2008−528825(P2008−528825A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553500(P2007−553500)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000546
【国際公開番号】WO2006/081959
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(504378582)ウーデ・ゲーエムベーハー (10)
【出願人】(507263586)ボルシグ・プロセス・ヒート・イクスチェンジャー・ゲーエムベーハー (2)
【Fターム(参考)】