説明

セラミック基板の製造方法

【課題】めっき付着や基板のわれがなく、レジスト成分が残留しない、セラミック基板の製造方法を提供する。
【解決手段】セラミック基板と、セラミック基板の一方の主面上に形成された表面電極21と下地電極22と、を用意する工程であって、表面電極21のセラミック基板の他方の主面からの厚みが、下地電極22のセラミック基板の他方の主面からの厚みよりも大きくなるように、セラミック基板と、表面電極21と、下地電極22と、を用意する工程を備える。そして、表面電極21上と前記下地電極22上とに、めっき電極31を形成する工程と、表面電極21上のめっき電極を除去する工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板の製造方法に関する。特に、部分的にめっき電極を形成する必要のあるセラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板内部にコンデンサやインダクタ等の受動素子機能が内蔵されたセラミック基板が、無線通信機器等に用いられている。このようなセラミック基板は、一般的には、シート成形されたセラミックグリーンシート上に電極を印刷等で形成し、複数のセラミックグリーンシートを積層、圧着後に焼成することで製造する。かかる方法により、セラミック基板の表面上や内部に、複数の電極パターンを形成することができる。
【0003】
近年、実装が複雑化し、一つのセラミック基板内で、はんだや導電性接着剤などの異なる接合方法を行う必要が出てきている。その場合、全ての電極パターン上にめっき電極を形成する必要はなく、一部の電極上にのみめっき電極を形成する技術が必要である。すなわち、基板上に形成された電極パターンには、めっきの下地電極として用いられる部分と、めっきで被覆せずにそのまま表面電極として用いられる部分がある。
【0004】
例えば、部分的にめっき電極を形成する方法として、特許文献1のような技術がある。先行文献1では、めっき電極を付与したい部分以外にシール状に剥離できるレジスト層を使用する。そして、触媒付与後あるいはめっき後にレジスト層を剥離するめっき方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−41097号公報
【発明の概要】
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示の方法は、レジスト層の密着力が弱いと、レジスト層の密着部分にまでめっき液が浸透してしまい、めっきが析出する場合があった。一方、レジスト層の密着力が強いと、レジスト層の剥離時の基板のわれが問題になっていた。また、レジスト層が完全にはがれず、レジスト成分が基板に残留するなどの問題も生じていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、めっき付着や基板のわれがなく、レジスト成分が残留しない、セラミック基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るセラミック基板の製造方法は、セラミック基板と、前記セラミック基板の一方の主面上に形成された表面電極と下地電極と、を用意する工程であって、前記表面電極の前記セラミック基板の他方の主面からの厚みが、前記下地電極の前記セラミック基板の他方の主面からの厚みよりも大きくなるように、前記セラミック基板と、前記表面電極と、前記下地電極と、を用意する工程と、前記表面電極上と前記下地電極上とに、めっき電極を形成する工程と、前記表面電極上の前記めっき電極を除去する工程と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明では、表面電極の他方の主面からの厚みと下地電極の他方の主面からの厚みを変えることにより、表面電極上のめっき電極を除去しやすくなる。したがって、部分的にめっき電極を形成することが可能である。
【0011】
また、本発明では、前記除去する工程は、前記表面電極上と前記下地電極上を含んだ領域よりも大きい研磨媒体を用いて行うことが好ましい。
【0012】
この場合、表面電極上と下地電極上を含んだ領域が小さい場合に、電極の簡易な加工が可能となる。
【0013】
また、本発明では、前記表面電極と前記下地電極上のめっき電極とは、接合方法が異なることが好ましい。
【0014】
この場合、一つのセラミック基板上で、異なる接合方法の電極を形成することが可能となる。
【0015】
また、本発明では、前記表面電極の厚みが、前記下地電極の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0016】
この場合、表面電極と、下地電極との厚みを変えることにより、簡易に他方の主面からの厚みを変えることが可能となる。
【0017】
また、本発明では、前記用意する工程は、複数のセラミックグリーンシートを用意する工程と、前記複数のセラミックグリーンシートのうち所定のセラミックグリーンシート上に、前記表面電極と、前記下地電極と、を形成する工程と、前記複数のセラミックグリーンシートを積層、圧着後に焼成して、前記表面電極と前記下地電極とが主面に露出するようにセラミック基板を形成する工程と、を備えることが好ましい。
【0018】
この場合、セラミックグリーンシート上の電極を形成する際に、電極の厚みを変えることで、簡易に他方の主面からの厚みを変えることが可能となる。
【0019】
また、本発明では、前記めっき電極が無電解めっきにより形成されることが好ましい。
【0020】
この場合、めっき時に電気を流す必要がないので、セラミック基板の設計が容易であり、小型化が可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のセラミック基板の製造方法では、研磨を行うため、より確実にめっき電極が不要な部分を除去することができる。また、レジスト層剥離時の基板のわれも発生しない。また、レジストを使用しないため、レジスト成分が残留する問題も生じない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のセラミック基板の製造工程を示す断面図である。
【図2】本発明のセラミック基板の製造工程を示す断面図である。
【図3】本発明のセラミック基板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
【0024】
図1、図2は本発明のセラミック基板の製造工程を示す断面図である。
【0025】
まず、図1(a)に示すように、複数のセラミックグリーンシート11を用意する。セラミックグリーンシート11は、セラミック粉末と、有機樹脂バインダを含んでおり、例えばドクターブレード法で形成される。セラミック粉末の種類は、セラミック基板の特性により選択される。
【0026】
次に、図1(b)に示すように、セラミックグリーンシート11に電極を形成する。まず、複数のセラミックグリーンシートのうち所定のセラミックグリーンシート(図1(b)の一番上のセラミックグリーンシート)上に、表面電極21と、下地電極22を形成する。表面電極21と下地電極22は、同時に形成しても良いし、別々に形成しても良い。表面電極21は、最終的にめっき電極が除去されて、電子部品と直接接合される。下地電極22は、最終的にその上にめっき電極が形成されて、めっき電極と電子部品とが接合される。本実施形態では、表面電極21の厚みが、下地電極22の厚みよりも大きくなるように形成する。
【0027】
また、セラミックグリーンシート上に、内部電極23を形成する。また、セラミックグリーンシートの内部にビアホール電極24を形成する。表面電極21、下地電極22、内部電極23は例えば印刷工法で形成される。また、電極は銀や銅を主成分としたもので形成される。内部電極23やビアホール電極24は、セラミック基板が所望の特性が得られるように形成される。
【0028】
次に、図1(c)のように、複数のセラミックグリーンシートを積層、圧着後に焼成して、セラミック基板10を形成する。その際、表面電極21と下地電極22がセラミック基板の主面上に露出するように積層する。このようにして、セラミック基板10と、その一方の主面上に形成された表面電極21と、下地電極22が用意される。
【0029】
次に、図2(d)のように、表面電極21と下地電極22上に、めっき電極31を形成する。めっき電極31は、めっき時に電気を流す必要がなく、電極パターンの設計が容易であり、小型化が可能である、無電解めっきで形成するのが好ましい。
【0030】
次に、図2(e)のように、研磨媒体41を用いて、表面電極21上のめっき電極を除去する。研磨媒体41は、例えば研磨紙や砥石が挙げられる。研磨媒体の材質としては、例えばSiC、Al23やダイヤモンドが挙げられる。研磨媒体41は、表面電極21と下地電極22上を含んだ領域よりも大きいことが好ましい。表面電極の厚みを下地電極の厚みより大きくしておくことで、研磨媒体が表面電極21上と下地電極22上を含んだ領域よりも大きい場合に、電極の簡易な加工が可能となる。ここで「表面電極上と下地電極上を含んだ領域」とは、セラミック基板を上方から見た場合に、表面電極と下地電極を含んだ領域をいう。表面電極21の厚みは、下地電極22とめっき電極31を合わせた厚みよりも大きいことが好ましい。また、最終的に複数のセラミック基板をより大きな基板から切り出して製造することが製造コスト上好ましいが、その場合でも、大きな研磨媒体により、電極を簡易に加工することが可能である。
【0031】
図3に、本発明のセラミック基板の平面図を示す。図3(a)は電子部品の実装前の図であり、図3(b)は電子部品の実装後の図である。
【0032】
図3(a)の実装前では、セラミック基板10上に、表面電極21が形成されている。また、下地電極上にめっき電極31が形成されている。
【0033】
図3(b)の実装後では、電子部品51と52が実装されている。電子部品51は、めっき電極31と接合されている。電子部品51は、例えばICが挙げられる。電子部品51とめっき電極とは、例えばワイヤボンディングで接合されている。電子部品51の端子53とめっき電極31とは、導線54で接続されている。
【0034】
一方、電子部品52は、表面電極21と接合されている。電子部品52は、例えばコンデンサ等が挙げられる。電子部品52と表面電極21とは、例えば導電性接着剤で接合されている。
【0035】
ワイヤボンディングで接合する際には、セラミック基板の表面に形成されている電極には金でめっきされていることが必要である。一方、導電性接着剤で接合する場合に、電極にめっきされていると、接合強度が小さくなる等の問題が生じるため、めっきは不要である。図3のように、一つのセラミック基板上で異なる接合方法が必要である場合に、本発明は特に有効である。
【0036】
本実施形態では、表面電極と下地電極の厚みを変えることで、セラミック基板の他方の主面からの厚みを変えている。一方、内部電極の有無や、セラミックグリーンシートの形状の工夫等により、セラミック基板の他方の主面からの厚みを変えることは可能である。また、表面電極と下地電極は、セラミック基板の焼成後に、新たに形成しても良い。また、内部に受動素子機能が内蔵されていないセラミック基板に対しても、本発明の適用は可能である。
【0037】
[実験例]
CaO−Al23−SiO2−B23系材料に対して、有機樹脂バインダ、水、添加物を混合してスラリーを調製した。そのスラリーをドクターブレード法により樹脂フィルム上に塗布することにより、複数のセラミックグリーンシートを得た。そして、複数のセラミックグリーンシートのうち所定のセラミックグリーンシート上に表面電極と下地電極を形成した。表面電極と下地電極とは銀で形成し、表面電極部分が高くなるように2回印刷した。そして、その複数のセラミックグリーンシートを積層、圧着後に焼成して、表面電極と下地電極とが主面に露出するように□100mm×100mmのセラミック基板を作製した。表面電極の厚みは30μm、下地電極の厚みは10μmであり、表面電極の方を20μm大きくした。
【0038】
上記のセラミック基板を、奥野製薬工業株式会社製エースクリーンにより、60℃1分の条件で処理し、セラミック基板に水ぬれ性を付与した。
【0039】
次に、水洗後に、奥野製薬工業株式会社製NNPアクセラを使用し、25℃3分の条件で処理し、セラミック基板の表面に触媒を付与した。
【0040】
次に、水洗後に、奥野製薬工業株式会社製ICPニコロンGMを使用し、80℃20分の条件で処理し、セラミック基板上に無電解Niめっきを行った。
【0041】
次に、水洗後に、奥野製薬工業株式会社製パラトップNを使用し、60℃3分の条件で処理し、セラミック基板上に無電解Pdめっきを行った。
【0042】
次に、水洗後に、奥野製薬工業株式会社製フラッシュゴールド2000を使用し、80℃10分の条件で処理し、セラミック基板上にフラッシュAuめっきを行い、条件1のセラミック基板を得た。
【0043】
その後、100℃20分の条件で乾燥を行った。そして、丸本ストルアス社製ロトフォースで#1000で1分間研磨し、表面電極上のめっき電極を除去した。
[比較例]
比較例では、研磨の代わりにレジスト層を使用して部分的にめっき電極を形成したセラミック基板を作製し、条件2とした。
【0044】
まず、表面電極と下地電極の厚みが同じである以外は、実験例と同様のセラミック基板を形成した。下地電極と表面電極の厚みはどちらも10μmとした。
【0045】
その後、表面電極上にレジスト(アサヒ化学研究所製#503B−SH)を印刷し、乾燥により固化させた。その後、実験例と同様の方法で、セラミック基板上にめっきを行った。そして、100℃30分の条件で乾燥を行い、レジスト層を剥離した。
【0046】
条件1と条件2で、100個のセラミック基板を作製した。そして、表面電極上へのめっき付着数と、レジスト層剥離後の基板われ数、及びレジスト成分残留数を評価した。表1に結果を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1から分かるように、レジスト層を形成した条件2では、表面電極上へのめっき付着や、基板われ、及びレジスト成分の残留が発生している。一方、本発明の条件1では、めっき付着や基板われ、レジスト成分の残留は発生していないことが分かる。
【符号の説明】
【0049】
10 セラミック基板
11 セラミックグリーンシート
21 表面電極
22 下地電極
23 内部電極
24 ビアホール電極
31 めっき電極
41 研磨媒体
51、52 電子部品
53 端子
54 導線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック基板と、前記セラミック基板の一方の主面上に形成された表面電極と下地電極と、を用意する工程であって、前記表面電極の前記セラミック基板の他方の主面からの厚みが、前記下地電極のセラミック基板の他方の主面からの厚みよりも大きくなるように、前記セラミック基板と、前記表面電極と、前記下地電極と、を用意する工程と、
前記表面電極上と前記下地電極上とに、めっき電極を形成する工程と、
前記表面電極上の前記めっき電極を除去する工程と、
を備える、セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記除去する工程は、前記表面電極上と前記下地電極上を含んだ領域よりも大きい研磨媒体を用いて行う、請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記表面電極と前記下地電極上のめっき電極とは、接合方法が異なる、請求項1または2に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記表面電極の厚みが、前記下地電極の厚みよりも大きい、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項5】
前記用意する工程は、
複数のセラミックグリーンシートを用意する工程と、
前記複数のセラミックグリーンシートのうち所定のセラミックグリーンシート上に、前記表面電極と、前記下地電極と、を形成する工程と、
前記複数のセラミックグリーンシートを積層、圧着後に焼成して、前記表面電極と前記下地電極とが主面に露出するように前記セラミック基板を形成する工程と、
を備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項6】
前記めっき電極が無電解めっきにより形成される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−49292(P2011−49292A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195504(P2009−195504)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】