説明

セラミック放電管

【課題】強力な発光源を必要とする照明用途のためのセラミック放電管を提供する。
【解決手段】放電管1は、膨らんだ形状を有し、半球形端部溜め17を備えている。膨らんだ形状の管は、軸線方向に対称の中空体6であり、この中空体は、放電室12を包囲している。この中空体は、放電によって発生される放射線によって刺激された場合に1つ以上の可視光波長を放出する発光ドーパントを含有する多結晶性酸化ジスプロシウムから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック放電管に関する。
【背景技術】
【0002】
金属ハロゲン化物放電ランプは、希土類化学薬品によって発生される複合放出スペクトルから生じる性質を提供する高い効率および高い彩色にとって好都合であった。伝統的な石英アーク水銀管型を凌駕する色温度および効率にするのに改善された彩色を提供するセラミックメタルハライドランプは、特に望ましい。これは、セラミック材料が石英よりも高い温度で動作することができ、種々の金属ハロゲン化物の化学薬品と殆んど反応しないという理由による。好ましいセラミック材料は、多結晶性アルミナ(PCA)であった。
【0003】
セラミック放電管には、直円柱の形状からほぼ球状の(膨らんだ)形状までの範囲の種々の形状が提案された。これらの種類のアーク放電管の例は、欧州特許出願公開第0587238号明細書A1および米国特許第5936351号明細書にそれぞれ示されている。半球状の端部を有する膨らんだ形状は、好ましい。それというのも、この形状は、よりいっそう均一な温度分布を生じ、金属ハロゲン化物充填材料による放電管の腐蝕の減少を生じるからである。
【特許文献1】欧州特許出願公開第0587238号明細書A1
【特許文献2】米国特許第5936351号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記に課されたような課題が生じた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多結晶性酸化ジスプロシウム(ジスプロシア dysprosia)、Dy23は、金属ハロゲン化物放電ランプのためのセラミック放電管を形成させるための材料として使用されてもよい。PCAとは異なり、多結晶性ジスプロシアは、立方構造を有し、それ故に、高い光処理量(optical throughput)およびその結果、強力な発光源を必要とする照明用途のための透明放電管を形成させる可能性を有している。また、多結晶性ジスプロシアは、PCAには存在しない275〜475nmの範囲内の幾つかの固有吸収バンドを有している。結果として、放電管の本体の色は、白っぽいPCA管と比較して僅かに黄色である。多結晶性ジスプロシアの強い青吸収およびUV吸収は、アーク放電によって放出される短波長の放射線を濾過し、ランプによって発生される光の色温度を減少させる。例えば、通常の3000Kのメタルハライド化学薬品は、多結晶性ジスプロシア放電管中に使用した際に約2500Kの色温度を生じる。
【0006】
強く吸収される紫外線は、1つ以上の希土類金属、例えばセリウム、テルビウムおよびユウロピウムで多結晶性ジスプロシアをドーピングすることによって可視光線に変換されうることが見い出された。他の発光ドーパントは、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、エルビウム、イッテルビウム、ホルミウムおよびツリウムを含むことができる。希土類金属、例えばMn、Cr、Ti、Co、Ni、Cu、Bi、Pb、SnおよびSbは、付加的に可能な発光ドーパントを表わす。
【0007】
これは、複雑なメタルハライド充填物の化学薬品を調節する必要なしにメタルハライドランプのスペクトルを調節する可能性を提供する。例えば、セリウム(Ce3+)は、黄色の放出を増大させるために使用されてよく、テルビウム(Tb3+)は、緑色の放出を増大させるために使用されてよく、ユウロピウム(Eu3+)は、よりいっそう赤色の放出を増大させるために使用されてよい。また、放電管の本体からの付加された可視光の放出は、ランプの有効度を増大させる。それというのも、アーク放電によって放出されるよりいっそう多くの放射線は、可視光に変換されるからである。放電管からの補助的な放出は、石英メタルハライドランプ中で観察されるオレンジ色のナトリウムマントルからの放出に類似したアークコアの周囲の拡張されたマントルの効果を有する。付加的に、減少されたUV出力は、放電管の周囲に通常置かれているUV吸収囲い板の必要性を改善し、UV線の過剰照射から人々を保護するであろう。
【0008】
図1は、本発明によるセラミックメタルハライド放電管を示す断面図である。
【0009】
図2は、研磨された多結晶性ジスプロシアディスクのインライン透過率を示す線図である。
【0010】
図3は、Eu231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルである。励起源は、270nmの紫外線であった。
【0011】
図4は、Tb231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルである。励起源は、270nmの紫外線であった。
【0012】
図5は、Ce231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルである。励起源は、270nmの紫外線であった。
【0013】
本発明を、別の及び更なる課題、その利点及び性能と共により良く理解するために、図面に関連して採用される以下の開示及び係属された特許請求の範囲が参照される。
【0014】
今や、図1に関連して、メタルハライドランプのための放電管の断面が示されている。放電管1は、膨らんだ形状を有し、半球形端部溜め17を備えている。膨らんだ形状の管は、軸線方向に対称の中空体6であり、この中空体は、放電室12を包囲している。本発明によれば、放電管の本体は、有利にセリウム、テルビウムおよびユウロピウムから選択される1つ以上の元素でドープされた多結晶性酸化ジスプロシウムから形成されている。このジスプロシア本体中のドーパントの量は、有利に約0.1〜約10質量%の範囲内であることができ、よりいっそう好ましいのは、金属の酸化物に対して約1質量%(wt.%)である。
【0015】
2本の対向した毛管2は、中心の軸線に沿って本体6から外向きに延びる。この実施態様において、毛管は、アーク管の本体で一体成形されている。アーク管の放電室12は、緩衝ガス、例えば30トル〜20バールのXe、Kr、Arまたはその混合物、ならびにメタルハライド充填物8、例えば水銀およびメタルハライド塩、例えばNaI、CaI2、DyI2、HoI3、TmI3およびTiIの混合物、または金属水銀を単独で、動作中に200バールの圧力を達成させるのに十分な量で含む。
【0016】
電極アセンブリ14は、毛管2に対して封止されている。1つの好ましい構造において、電極アセンブリは、ニオブ貫通接続部とタングステン電極とモリブデンコイルとから構成されており、この場合このモリブデンコイルは、モリブデンまたはMo−Al23サーメットロッドに巻き付けられており、このロッドは、タングステン電極とニオブ貫通接続部との間で溶接されている。アークのための取り付けポイントを形成するタングステンコイルまたは他の適当な手段は、タングステン電極の端部に付着されていてよい。フリット材料9は、電極アセンブリ14と毛管2との間に気密封止を形成する。通常、メタルハライドランプにおいて、毛管中へのフリット材料の侵入を最少化し、腐食性のメタルハライド充填物との不利な反応を回避させることが望ましい。
【0017】
内部に配置された電極を介しての励起は好ましいけれども、他の配置も可能である。例えば、励起は、容量電極、空洞共振器または無電極ランプで実現されるような誘導法によって外部から適用されてよい。実際に、この配置は、例えばクロリド塩の場合に電極構造体を攻撃しうるよりっそう攻撃性の充填剤を使用する場合に、よりいっそう望ましい。
【実施例】
【0018】
実施例
研磨された多結晶性ジスプロシウムディスクのインライン透過率は、図2に示されている。多結晶性ジスプロシアの強いUV吸収および青色吸収は、200〜約475nmの低い透過率値によって示されている。
【0019】
多結晶性酸化ジスプロシウムディスクを、それぞれEu231質量%、Tb231質量%およびCe231質量%で形成させた。ディスク(厚さ1.3mmで直径10mmまで)を紫外線(270nm)で露光し、可視線の放出を測定した。3個のディスクの放出スペクトルは、図3〜5に示されている。それぞれのディスクは、少なくとも1つの放出ピークを400nm〜700nmの可視波長域内で放出した。Eu231質量%を含有するディスクは、特有のredEU3+放出を約614nmで示し(図3);Tb231質量%を含有するディスクは、特有の緑色Tb3+放出ピークを約545nmで示し(図4);およびCe231質量%を含有するディスクは、黄色のCe3+放出を約573nmで示した(図5)。3つの中で、Eu231質量%を含有するディスクは、最も強力な放出を示した。これは、メタルハライドランプにとって特に有用である。それというのも、よりいっそう高い特殊な、R9演色指数を得る目的でランプの赤色放出を増加させるためにメタルハライド充填物を調節することがしばしば必要であるからである。
【0020】
この結果は、発光イオンでドープされた多結晶性ジスプロシア放電管がメタルハライドランプの放出スペクトルをスペクトルの異なる成分の増強によって調節するために使用されうることを証明する。これは、ランプの設計において融通性が増大されることを付与する。それというのも、ランプのスペクトルは、セラミック材料中にドープされたイオン(またはイオンの組合せ)の濃度およびタイプに応じて変動しうるからである。
【0021】
現在、本発明の好ましい実施態様であると考えられるものについて提示し、記載してきたが、係属された特許請求の範囲に定義された本発明の範囲を逸脱することなく本明細書中で多様な変更及び改良が可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明によるセラミックメタルハライド放電管を示す断面図。
【図2】研磨された多結晶性ジスプロシアディスクのインライン透過率を示す線図。
【図3】Eu231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルを示す線図。
【図4】Tb231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルを示す線図。
【図5】Ce231質量%でドープされた多結晶性ジスプロシアの放出スペクトルを示す線図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック放電管であって、この放電管は、放電を封じ込める中空体を有し、この中空体は、放電によって発生される放射線によって刺激された場合に1つ以上の可視光波長を放出する発光ドーパントを含有する多結晶性酸化ジスプロシウムからなることを特徴とするセラミック放電管。
【請求項2】
発光ドーパントからの可視放出が赤色の放出である、請求項1記載の放電管。
【請求項3】
発光ドーパントからの可視放出が緑色の放出である、請求項1記載の放電管。
【請求項4】
発光ドーパントからの可視放出が黄色の放出である、請求項1記載の放電管。
【請求項5】
放電管を含むランプから放出された光に対する増加されたR9値を、発光ドーパントを含有しない多結晶性酸化ジスプロシウム放電管を含む同様のランプから放出された光に対するR9値と比較して、放電管を含むランプから放出された光に対する増加されたR9値を提供するのに発光ドーパントからの赤色の放出で十分である、請求項2記載の放電管。
【請求項6】
セラミック放電管であって、この放電管は、放電を封じ込める中空体を有し、この中空体は、Ce、Tb、Eu、Pr、Nd、Sm、Er、Yb、Ho、Tm、Mn、Cr、Ti、V、Co、Mi、Cu、Bi、Pb、SnおよびSbから選択される1つ以上の金属を含有する多結晶性酸化ジスプロシウムからなることを特徴とするセラミック放電管。
【請求項7】
多結晶性酸化ジスプロシウムが金属の酸化物をベースとして金属を約0.1〜約10質量%含有する、請求項6記載のセラミック放電管。
【請求項8】
多結晶性酸化ジスプロシウムが金属の酸化物をベースとして金属を約1質量%含有する、請求項6記載のセラミック放電管。
【請求項9】
多結晶性酸化ジスプロシウムがCe、Eu、Pr、Nd、Sm、Er、Yb、HoおよびTmの1つまたはそれ以上を含有する、請求項6記載のセラミック放電管。
【請求項10】
多結晶性酸化ジスプロシウムが金属の酸化物をベースとして金属を約0.1〜約10質量%含有する、請求項9記載のセラミック放電管。
【請求項11】
セラミック放電管であって、この放電管は、放電を封じ込める中空体を有し、この中空体は、ユウロピウム、セリウムおよびテルビウムから選択される1つ以上の金属を含有する多結晶性酸化ジスプロシウムからなることを特徴とするセラミック放電管。
【請求項12】
多結晶性酸化ジスプロシウムが金属の酸化物をベースとして金属を約0.1〜約10質量%含有する、請求項11記載のセラミック放電管。
【請求項13】
多結晶性酸化ジスプロシウムが金属の酸化物をベースとして金属を約1質量%含有する、請求項12記載のセラミック放電管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−48743(P2007−48743A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−175827(P2006−175827)
【出願日】平成18年6月26日(2006.6.26)
【出願人】(596104131)オスラム シルヴェニア インコーポレイテッド (72)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM SYLVANIA Inc.
【住所又は居所原語表記】100 Endicott Street, Danvers, Massachusetts 01923, USA
【Fターム(参考)】