説明

セラミック積層体の製造方法、セラミック積層体の製造装置および積層セラミック電子部品の製造方法

【課題】 セラミックグリーンシートを高精度に積層できるセラミック積層体の製造方法等を提供する。
【解決手段】
設置されている第1グリーンシートの上に、キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートを積み重ねる工程と、前記キャリアフィルムの上から、前記第1および第2グリーンシートの周縁部分には第1の圧力を印加し、前記第1および第2グリーンシートの中央部分には前記第1の圧力とは異なる第2の圧力を印加して、前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートを仮圧着する工程と、前記キャリアフィルムを前記第1グリーンシートから剥がす工程とを有するセラミック積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック積層体の製造方法、セラミック積層体の製造装置、および積層セラミック電子部品の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型で電気特性の良い電子部品を製造するために、セラミックグリーンシートを高精度に積層できるセラミック積層体の製造方法が求められている。高精度に積層されたセラミック積層体を得るためには、積み重ねられたグリーンシートをプレスする際に、グリーンシートが変形したり、積層ずれを起こしたりする現象を抑制する必要がある。
【0003】
積み重ねられたグリーンシートをプレスする従来技術としては、例えば、セラミック積層体を内部に充填し、セラミック積層体の中央部と周縁部とを、別々のポンチで押圧するものが知られている(特許文献1等参照)。このような従来技術では、セラミック積層体の中央部と周縁部に対して、ほぼ均一な圧力を加えることができる。
【0004】
しかしながら、従来技術に係るセラミック積層体の製造方法では、積層が完了したグリーンシートをプレスしているために、積層された各グリーンシートの間で積層ずれが発生する場合がある。例えば、各グリーンシートが十分に密着していないような場合には、プレス時に、各グリーンシートの間で発生する積層ずれが大きくなる場合がある。
【特許文献1】特開平6−112088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、セラミックグリーンシートを高精度に積層できるセラミック積層体の製造方法、セラミック積層体の製造装置および積層電子部品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するため、本発明に係るセラミック積層体の製造方法は、
設置されている第1グリーンシートの上に、キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートを積み重ねる工程と、
前記キャリアフィルムの上から、前記第1および第2グリーンシートの周縁部分には第1の圧力を印加し、前記第1および第2グリーンシートの中央部分には前記第1の圧力とは異なる第2の圧力を印加して、前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートを仮圧着する工程と、
前記キャリアフィルムを前記第1グリーンシートから剥がす工程とを有するセラミック積層体の製造方法。
【0007】
本発明に係るセラミック積層体の製造方法では、グリーンシートは、各グリーンシート毎に仮圧着されながら積層されるので、グリーンシート間の積層ずれが抑制される。また、本発明に係るセラミック積層体の製造方法では、仮圧着の際に、グリーンシートの周縁部分に印加する圧力と、グリーンシートの中央部分に印加する圧力が異なるため、周縁部分と中央部分の双方に対して、適切な圧力が印加される。
【0008】
本発明に係るセラミック積層体の製造方法において、前記第1の圧力は、前記第2の圧力より大きくてもよい。例えば、第2の圧力より、第1の圧力を大きくすることによって、グリーンシートの周縁部分が強固に固定され、キャリアフィルムをグリーンシートから剥離する際に、グリーンシートが損傷することを防止できる。また、第2の圧力を、第1の圧力より小さくすることによって、電極層が形成されているグリーンシート中央部分に過剰な圧力が印加され、グリーンシートの積層ずれや、崩れが発生することを防止できる。
【0009】
本発明に係るセラミック積層体の製造装置は、
設置されている第1グリーンシートの上に、キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートが積み重ねられて設置される下型と、
前記キャリアフィルムの上から前記第1および第2グリーンシートの周縁部分を加圧する周縁部パンチ型と、前記周縁部パンチ型に対して加圧方向に相対移動自在であって前記キャリアフィルムの上から前記第1および第2グリーンシートの中央部分を加圧する中央部パンチとを有する上型と、
前記上型または前記下型を駆動する型駆動手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
また、例えば、本発明に係るセラミック積層体の装置において、前記周縁部パンチ型が前記第1および第2グリーンシートの前記周縁部分を加圧する第1の圧力は、前記中央部パンチが前記第1および第2グリーンシートの前記中央部分を加圧する第2の圧力より大きくてもよい。
【0011】
本発明に係るセラミック積層体の製造装置によれば、キャリアフィルムの上からグリーンシートを仮圧着する際に、グリーンシートの周縁部分と、グリーンシートの中央部分とで異なる圧力を印加することができる。したがって、仮圧着において、周縁部分と中央部分の双方に対して、適切な圧力を印加することができるため、グリーンシートの変形や損傷を防止することができる。また、第1の圧力を、第2の圧力より大きくすることによって、キャリアフィルム剥離する際にグリーンシートが損傷することを防止しつつ、グリーンシート中央部分において積層ずれや、崩れが発生することを防止できる。
【0012】
また、例えば、本発明に係るセラミック積層体の装置は、前記キャリアフィルムを剥離する剥離手段をさらに有していてよい。
また、例えば、前記型駆動手段から前記中央部パンチに伝えられる力を調整する弾性部材をさらに有していてもよい。
【0013】
本発明の第2の観点に係るセラミック積層体の製造装置によれば、弾性部材によって、グリーンシートに印加する第1の圧力および第2の圧力を適切な値に調整することができる。
【0014】
また、例えば、前記型駆動手段は、前記周縁部パンチ型を加圧する周縁部駆動手段と、前記中央部パンチを加圧する中央部駆動手段とを有していてもよい。
【0015】
また、例えば、前記周縁部駆動手段は流体シリンダであり、前記中央部駆動手段はサーボモータであってもよい。
【0016】
また、例えば、前記周縁部駆動手段および前記中央部駆動手段は、サーボモータであってもよい。
【0017】
本発明の第3の観点に係るセラミック積層体の製造装置によれば、型駆動手段として上記のような駆動手段を用いることにより、グリーンシートに印加する第1の圧力および第2の圧力を適切な値に調整することができる。
【0018】
また、例えば、本発明に係るセラミック積層体の装置は、前記キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートを、前記下型に設置する供給手段をさらに有していてもよい。
【0019】
また、本発明に係る積層電子部品の製造方法では、上記いずれかに記載のセラミック積層体の製造方法によってセラミック積層体を得る工程と、
前記セラミック積層体を切断してグリーンチップを得る工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程と、を有することを特徴とする。
【0020】
本発明に係る積層電子部品の製造方法によれば、セラミックグリーンシートが高精度に積層されたセラミック積層体を用いて積層電子部品を製造するため、小型で電気特性の良い電子部品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法によって製造されたセラミックコンデンサの一例を表す概略断面図、
図2は、本発明の第1実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図、
図3は、図2に示す製造装置の積層部に供給されるグリーンシートを表す平面図、
図4は、図3に示すグリーンシートのIV−IV線に沿う断面図、
図5は、図3に示すグリーンシートの表面の一部を拡大した拡大図、
図6は、図2に示す製造装置の積層部において、グリーンシートをプレスする状態を表した要部断面図、
図7は、図2に示す製造装置の積層部において、グリーンシートからキャリアフィルムを剥離する状態を表した要部断面図、
図8は、図2に示す製造装置によって製造されたセラミック積層体の一例を表した断面図、
図9は、本発明の第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図、
図10は、本発明の参考例に係る金型装置を表した概略断面図、
図11は、本発明の実施例において、グリーンシートに印加される圧力の分布を調査した感圧シートを示す写真、
図12は、本発明の参考例において、グリーンシートに印加される圧力の分布を調査した感圧シートを示す写真である。
第1実施形態
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造装置を用いて製造されたセラミックコンデンサ2の一例を表す概略断面図である。ただし、実施形態に係る製造装置を用いて製造される積層セラミック電子部品としては、コンデンサに限定されず、インダクタ、バリスタ、フィルタ等の他の電子部品であってもよい。
【0023】
図1に示すように、積層セラミックコンデンサ2は、コンデンサ素体4と、第1端子電極6と第2端子電極8とを有する。コンデンサ素体4は、誘電体層10と、内部電極層12とを有し、誘電体層10の間に内部電極層12が交互に積層してある。交互に積層される一方の内部電極層12は、コンデンサ素体4の外側に形成してある第1または第2端子電極6,8の内側に対して電気的に接続してある。
【0024】
図2に、本発明の第1実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図を示す。本実施形態に係るセラミック積層体の製造装置90は、キャリアフィルム28の表面に形成されたセラミックグリーンシート20を、積層部82に供給する供給部80と、グリーンシート20を積層する積層部82とを有する。
【0025】
供給部80は、供給テーブル30と搬送ヘッド32を有する。供給テーブル30には、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20(図3)が設置される。搬送ヘッド32は、供給テーブル30に設置されているキャリアフィルム28を吸着し、供給部80の供給テーブル30から、積層部82の下部金型34まで搬送する。
【0026】
図3は、供給テーブル30に設置されるキャリアフィルム28およびグリーンシート20を、供給テーブル30の側(Z軸負方向側)から観察した平面図である。本実施形態に係るグリーンシート20およびキャリアフィルム28は、矩形平板形状を有しており、キャリアフィルムは28は、グリーンシート20と同じか、若干広い面積を有している。グリーンシート20は、表面に電極パターン層24を有しないグリーンシート周縁部20aと、表面に電極パターン層24が形成されるグリーンシート中央部20bとを有する。
【0027】
図4に示すように、グリーンシート20の一方の表面は、キャリアフィルム28と接触しており、一方の表面の反対側の表面である他方の表面に、電極パターン層24が形成される。電極パターン層24は、図5に示すように、通常多数の電極パターン24aによって構成される。ただし、電極パターン層24を構成する電極パターン24aの形状および数は特に限定されず、作製される電子部品に応じて適宜設計される。
【0028】
グリーンシート20を形成するための誘電体用ペーストは、例えば、セラミック粉末と有機ビヒクルとを混練して得られた有機溶剤系ペースト、または水系ペーストで構成される。なお、有機ビヒクルとは、バインダを有機溶剤中に溶解したものである。有機ビヒクルに用いるバインダは特に限定されず、エチルセルロース、ポリビニルブチラール等の通常の各種バインダから適宜選択すればよい。
【0029】
電極パターン24aを形成するための内部電極用ペーストは、各種導電性金属や合金からなる導電材、あるいは焼成後に導電材となる各種酸化物、有機金属化合物、レジネート等と、上記した有機ビヒクルとを混練して調製する。
【0030】
グリーンシート20は、図4に示すキャリアフィルム28の表面に、ドクターブレード法等によって上述の誘電体ペーストを塗布して作製される。また、電極パターン層24は、グリーンシート20の表面に、上述の内部電極法ペーストをスクリーン印刷法等によって印刷して形成される。なお、グリーンシート20は、最終的には図1に示す誘電体層10となる部分であり、電極パターン層24は、最終的には図1に示す内部電極層12となる部分である。
【0031】
図2に示す積層部82は、金型装置33を有する。金型装置33は、下部金型34、周縁部パンチ型40と中央部パンチ42とを有する上部金型39、上部金型39を駆動するサーボ駆動機構50等を有する。また、金型装置33は、第1〜第3取付部48a〜48cによって構成される上部金型取付部48と、周縁部取付部46と、コイルスプリング44とを有する。下部金型34は、台33の上に設置されており、台33に対して固定されている。上部金型39は、上部金型取付部48等を介してサーボ駆動機構50の可動部50aに取り付けられており、下部金型34に対向するように配置されている。
【0032】
本実施形態に係る下部金型34には、上部金型39に対向する設置面34aから上部金型39の方向に延びる位置決めピン36が形成されている。位置決めピン36は、図3に示すキャリアフィルム28の4つの角部に形成されたシート孔29に対応して、上部金型39の4つの角部に形成されている。図2に示す搬送ヘッド32から下部金型34にグリーンシート20が受け渡される際、キャリアフィルム28のシート孔29(図3)が位置決めピン36を挿通することによって、グリーンシート20が下部金型34に対して位置決めされる。
【0033】
位置決めピン36は、下部金型34に対して移動可能に取り付けられており、下部金型34の設置面34aから突出している位置(図2)から、先端が設置面34aより下方に収納される位置まで移動することができる。なお、下部金型34における上部金型39に対向する設置面34aには、台紙37が設置されており、一層目のグリーンシート20は台紙37の上に設置される。
【0034】
サーボモータ機構50の可動部50aには、取付部48等を介して、上部金型39が取り付けられている。サーボモータ機構50は、不図示の制御部の制御に応じて、可動部50aを矢印51に示す方向(Z軸方向)に移動させる。
【0035】
サーボモータ機構50は、上部金型39を、下部金型34に押し付ける位置まで移動させ、さらに上部金型39を所定の圧力で加圧することができる。したがって、上部金型39は、下部金型34との間にセラミックグリーンシート20を挟み、セラミックグリーンシート20を加圧することができる。
【0036】
上部金型39は、周縁部パンチ型40と中央部パンチ42とを有する。周縁部パンチ型40は、略矩形形状である中央部パンチ42の側面42b(下部金型37に対向する面に垂直な面)に沿って、中央部パンチ42の側面42bを取り囲むように形成されている。下部金型34に対向する周縁部パンチ型40の周縁部加圧面40aは、図3に示すセラミックグリーンシート20のグリーンシート周縁部20aの形状に対応する窓枠形状を有している。周縁部パンチ型40は、上金型39が下部金型34に設置されたグリーンシート20を加圧する際に、周縁部加圧面40aを介して、グリーンシート20のグリーンシート周縁部20aを加圧する。
【0037】
それに対して、下部金型34に対向する中央部パンチ42の中央部加圧面42aは、図3に示すセラミックグリーンシート20のグリーンシート中央部20bに対応する長方形状を有する。中央部パンチ42は、上部金型39が下部金型34に設置されたグリーンシート20を加圧する際に、中央部加圧面42aを介して、グリーンシート20のグリーンシート中央部20bを加圧する。
【0038】
周縁部パンチ型40は、周縁部取付部46を介して上部金型取付部48に取り付けられている。周縁部パンチ型40と周縁部取付部46は、固定ボルト54によって互いに固定されており、周縁部取付部46と上部金型取付部48も互いに固定されている。さらに、サーボモータ機構50の可動部50aと上部金型取付部48も互いに固定されている。すなわち、周縁部パンチ型40は、サーボモータ機構の可動部50aに対し、周縁部取付部46および上部金型取付部48を介して、互いに相対移動しないように固定されている。
【0039】
それに対して、中央部パンチ42は、可動ボルト52で中央部パンチ42に固定されるカラー(円筒シャフト)52bを介して、上部金型取付部48の第3取付部48cに対して、中央部加圧面42aの法線方向(Z軸方向)に移動自在に取り付けられている。可動ボルト52とカラー52bは、第3取付部48cに設けられた貫通孔48dを、移動自在に挿通している。また、可動ボルト52の一方の端部に形成されたボルト頭とカラー52bに挟まれるワッシャ52aを有しており、ワッシャ52aは、第3取付部48cよりサーボ機構部側(Z軸正方向側)に配置され、第2取付部48bに設けられた貫通孔に収納されている。可動ボルト52でカラー52bと一体に固定されたワッシャ52aは、貫通孔48dの径より大きく、貫通孔48dを通過できない。したがって、ワッシャ52aと第3取付部48cの係合により可動ボルト52の他方の端部に取り付けられた中央部パンチ42は、上部金型取付部48に保持される。そして、可動ボルト52の一方の端部であるボルト頭の上端部と、第1取付部48aの下面の間には隙間が設けられているので、中央部パンチ42は上方へ移動することができる。
【0040】
第3取付部48cと中央部パンチ42の間には、中央部パンチ42を第3取付部48cに対して反対方向(Z軸負方向)に付勢するスプリング44が配置されている。スプリング44は、Z軸方向の両端部を、第3取付部48cと中央部パンチ42に挟まれ、Z軸方向に縮められた状態で配置されている。本実施形態では、可動ボルト52とカラー52bがスプリング44を挿通しており、可動ボルト52に沿う方向(Z軸方向)以外の方向に、スプリング44が変形することを防止している。したがって、スプリング44は、安定した力で中央部パンチ42を付勢することができる。
【0041】
中央部パンチ42は、周縁部パンチ型40が固定されている上部金型取付部48に対して移動自在に取り付けられているため、周縁部パンチ型40に対して相対移動自在である。すなわち、上部金型39がグリーンシート20を加圧する際、中央部パンチ42の中央部加圧面42aは、周縁部パンチ型40の周縁部加圧面40aに対して、中央部加圧面42aの法線方向に沿って、下部金型34とは反対側の方向(Z軸正方向)へ相対移動できる。この際、中央部加圧面42aを介して加圧されるグリーンシート中央部20bは、スプリング44が中央部パンチ42を付勢する力(スプリング44の復元力)に相当する力で加圧される。
【0042】
このようにして、スプリング44は、上部金型39が下部金型34に設置されたグリーンシート20を加圧する際、サーボ駆動機構52から中央部パンチ42に伝えられる力を調整することができる。したがって、金型装置33によれば、仮圧着の際に、グリーンシート周縁部20aと中央部20b(図3)とを、互いに異なる圧力で加圧することができる。
【0043】
また、金型装置33によれば、スプリング44のばね定数および縮みを適切な値に設定し、スプリング44が中央部パンチ42を付勢する力を所定の大きさに調整できる。したがって、例えば、中央部パンチ42によって、中央部加圧面42aを介してグリーンシートのグリーンシート中央部20b(図3)に印加される圧力を、下部金型24に積層されているグリーンシート20の層数にかかわわらず略一定とすることができる。なお、スプリング44は、中央部加圧面42aを介して、グリーンシート20のグリーンシート中央部20b(図3)を略均一に加圧できるように、金型装置33の中心軸αに対して略対称に配置されることが好ましい。
【0044】
本実施形態に係る積層部82には、図7に示すフィルム剥離機構56が備えられている。フィルム剥離機構56は、クランプ部56aと、当該クランプ部56aを矢印57で示す方向に移動させる不図示の移動手段を有する。フィルム剥離機構56は、クランプ部56aにキャリアフィルム28をクランプさせ、クランプ部56aを移動させることによって、グリーンシート20からキャリアフィルム28を剥離することができる。
【0045】
なお、図2に示す積層部82に備えられるフィルム剥離機構としては、キャリアフィルム28をクランプして剥離するものに限られず、たとえば、粘着テープにキャリアフィルムを粘着させて剥離するフィルム剥離機構や、その他の剥離機構であってもよい。
【0046】
以下に、図2に示すセラミック積層体の製造装置90を用いて、グリーンシート20を積層する工程について説明する。まず、供給部80の搬送ヘッド32が、キャリアフィルム28の表面に形成されたセラミックグリーンシート20を、供給テーブル30から積層部82の下部金型34に搬送し、下部金型34の設置面34aに設置する。
【0047】
キャリアフィルム28の表面に形成されたセラミックグリーンシート20は、図4に示すキャリアフィルム28表面のうち、セラミックグリーンシート20が形成されている側の表面を、図2に示す下金型34の側に向けて、設置面34aに設置される。すなわち、図4に示すキャリアフィルム28表面のうち、セラミックグリーンシート20が形成されていない側の表面28aを、図2に示す上金型39の側に向けて、設置面34aに設置される。
【0048】
なお、積層する層が2層目以降の場合は、キャリアフィルム28の表面に形成されたセラミックグリーンシート20は、下金型34に既に設置されているグリーンシート21(図6)の上に設置される。また、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20は、図3に示すシート孔29を、図2に示す下金型39の位置決めピン34に挿通させることによって、下金型34に既に設置されているグリーンシート21に対して位置合わせされる。
【0049】
次に、図2に示す金型装置33のサーボモータ機構50は、上部金型39を、下部金型34に押し付ける位置まで移動させる。さらに、サーボモータ機構50は、上部金型39を所定の圧力で加圧し、キャリアフィルム28の表面に形成されたセラミックグリーンシート20を、下部金型34に既に設置されているグリーンシート21に対して仮圧着する(図6)。図6は、下部金型34に既に設置されているグリーンシート21に対して、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20を仮圧着する状態を表した要部断面図である。
【0050】
上金型39の周縁部パンチ型40および中央部パンチ42は、キャリアフィルム28の上からグリーンシート20,21を加圧する。周縁部パンチ型40は、既に設置されているグリーンシート21の周縁部21aと、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20の周縁部20aとを仮圧着するために、グリーンシート周縁部20a,21aを加圧する。
【0051】
それに対して、中央部パンチ42は、既に設置されているグリーンシート21の中央部21bと、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20の中央部20bとを仮圧着するために、グリーンシート中央部20b,21bを加圧する。このとき、中央部パンチ42の加圧面42aは、中央部パンチ42をグリーンシート20,21の側に付勢しているスプリング46が収縮することによって、周縁部パンチ型40の周縁部加圧面40aに対して相対的に移動することができる。これによって、中央部パンチ42がグリーンシート中央部20b,21bに印加する圧力は、所定の大きさに調整される。
【0052】
すなわち、図6に示すように、グリーンシート周縁部20a,21aには電極パターン層24が形成されていないのに対して、グリーンシート中央部20b,21bには電極パターン層24が形成されている。したがって、グリーンシート周縁部20a,21aと、グリーンシート中央部20b,21bとの間には段差Dが発生する。また、段差Dの大きさは、設置されているグリーンシート21の積層数に応じて変化する。このような場合であっても、本実施形態に係る製造装置によれば、グリーンシート周縁部20a,21aと中央部20b,21bの双方に対して、適切な圧力を印加することができる。
【0053】
例えば、不図示の制御部が、図2に示すサーボモータ機構50を制御し、周縁部パンチ型40がグリーンシート周縁部20a,21aに加える圧力を適切な値に設定する。中央部パンチ42は、図6に示すように、スプリング46が収縮することによって、下金型34とは反対側(Z軸正方向)に移動するため、段差Dの大きさにかかわらず、略一定の圧力をグリーンシート中央部20b,21bに印加することができる。これによって、本実施形態に係る金型装置33は、電極パターン層24が形成されているグリーンシート中央部20b,21bに過剰な圧力が印加されることを回避して、グリーンシートの積層ずれや崩れを防止することができる。したがって、本実施形態に係る製造装置90は、グリーンシートを高精度に積層することができる。
【0054】
また、周縁部パンチ型40がグリーンシート周縁部20a,21aに加える圧力は、中央部パンチ42がグリーンシート中央部20b,21bに加える圧力より大きくなるように設定されてもよい。グリーンシート周縁部20a,21aに加えられる圧力を大きくすれば、グリーンシート周縁部20a,21aが強固に圧着されるため、キャリアフィルム28をグリーンシート20からきれいに剥離することができる。
【0055】
すなわち、従来技術では、キャリアフィルム28を剥離する場合、グリーンシート20の外縁がキャリアフィルム28から離れる剥がし始めにおいて、グリーンシート20の外縁がキャリアフィルム28に引っ張られて変形したり、損傷する場合があった。しかし、本実施形態に係る製造装置は、キャリアフィルム28を剥離する際に、グリーンシート20が変形したり、損傷することを防止できる。
【0056】
なお、本実施形態に係る製造装置は、スプリング44によってグリーンシート中央部20b,21bに加えられる圧力が調整されるため、周縁部20a,21aに加えられる圧力を大きくしても、中央部20b,21bに過剰な圧力が加えられることを回避できる。
【0057】
グリーンシート20を仮圧着した後に、図2に示す金型装置33のサーボモータ機構50は、上部金型39をZ軸正方向側に移動させ、下金型34から離間させる。その後、図7に示すフィルム剥離機構56によって、グリーンシート20からキャリアフィルム28が剥がす。剥離機構56のクランプ部56aは、キャリアフィルム28をクランプした後、矢印57で示す方向に移動することによって、グリーンシート20からキャリアフィルム28を剥離する。
【0058】
図2に示すセラミック積層体の製造装置90を用いて、上述のように、グリーンシート20を下部金型34に設置する工程と、グリーンシート20,21を加圧して仮圧着させる工程と、キャリアフィルム28を剥がす工程とを有する一連の工程を繰り返すことによって、図8に示すようなグリーンシート積層体59を得ることができる。上述のような製造方法によれば、積層数が増加して図6に示す段差Dが大きくなった場合でも、積層数が少ない場合とほぼ同じ圧力でグリーンシート20,21を加圧し、圧着させることができる。したがって、各グリーンシート20は略均一な圧力で、各層ごとに仮圧着される。これにより、上述のような製造方法によれば、積層ずれが少なく、高精度に積層されたグリーンシート積層体を得ることができる。
【0059】
また本実施形態に係るセラミック積層体の製造装置90によれば、仮圧着の際に、グリーンシート周縁部20a,21aと中央部20b,21bの双方に対して、適切な圧力が印加される。したがって、例えばグリーンシート周縁部20a,21aを強固に圧着し、キャリアフィルム28をグリーンシート20から剥離する際に、グリーンシート20が損傷することを防止できる。さらに、電極パターン層24が形成されているグリーンシート中央部20b,21bに過剰な圧力が印加されることを防止し、過剰な圧力が印加されることによって発生するグリーンシートの積層ずれや崩れを防止できる。
【0060】
セラミック積層体の製造装置90によって得られた積層体は、必要に応じてプレス装置で更に押圧された後、切断工程において切断されて、グリーンチップが作製される。グリーンチップは、焼成工程において焼成された後、端子電極6,8等が取り付けられ、図1に示すセラミックコンデンサ2となる。このようにして作製されたセラミックコンデンサ2は、グリーンシートが高精度に積層されたセラミック積層体を用いて製造されているため、小型化に適しており、電気特性が良い。なお、上述のように、各層ごとにグリーンシート20を仮圧着する製造方法によれば、例えばインダクタのように電極パターンが層毎に変化する積層体を製造する場合でも、各層をほぼ同じような圧力で圧着することができる。したがって、本実施形態に係る製造装置では、グリーンシート20の表面方向だけでなく、積層方向に関する圧力の均一性も十分に考慮されており、積層体の一部に過剰な圧力が加わることを防止し、積層ずれの発生を低減できる。
第2実施形態
【0061】
図9は、本発明の第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図である。第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置90aは、供給テーブル30aと、金型装置33aとを有する。金型装置33aは、下部金型34、周縁部パンチ型96と中央部パンチ98とを有する上部金型94、上部金型94を駆動するサーボ駆動機構50等を有する。また、金型装置33aは、第1〜第3中央部取付部74a〜74cと、流体シリンダ62とを有する。なお、第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置90aにおいて、第1実施形態に係る製造装置90と同様の部材には、第1実施形態と同様の部材番号を付し、説明を省略する。
【0062】
本実施形態に係る製造装置90aにおいて、供給テーブル30aと下部金型34がそれぞれ水平方向に移動可能であり、上部金型94に対向する位置と退避する位置との間をそれぞれ移動し、上部金型94は上下方向にのみ移動して、供給テーブル30aとグリーンシートの受け渡しと、下部金型34に対する積層動作を行うことができる。上部金型94は、吸着部64にキャリアフィルム28を吸着することによって、供給テーブル30aから下部金型34へグリーンシート20を移動させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る製造装置90aは、第1実施形態に係る製造装置90と同様に、既に設置されているグリーンシートと、キャリアフィルム28の表面に形成されたグリーンシート20(図3)とを仮圧着することができる。
【0064】
本実施形態において、周縁部パンチ型96は、サーボモータ機構50の可動部50aに対して、油圧シリンダ62を介して取り付けられている。図9に示すように、サーボモータ機構50の可動部50aには、油圧シリンダ62が固定されており、油圧シリンダ62の可動軸部62aには、周縁部パンチ型96が取り付けられている。
【0065】
油圧シリンダ62の可動軸部62aは、不図示の油圧制御部からの制御を受けて、図9に示すZ軸方向に移動することができる。したがって、可動軸部62aに固定されている周縁部パンチ型96は、サーボモータ機構50の可動部50aに対して、周縁部パンチ型96の周縁部加圧面96aの法線方向(Z軸方向)に移動自在に備えられている。
【0066】
これに対して、上部金型94の中央部パンチ98は、サーボモータ機構50の可動部50aに対し、第1〜第3中央部取付部74a〜74cを介して、互いに相対移動しないように固定されている。このように、本実施形態では、周縁部パンチ型96が油圧シリンダ62の可動軸部62aに取り付けられているため、中央部パンチ98は、周縁部パンチ型96に対して相対移動自在である。
【0067】
したがって、金型装置33aによれば、第1実施形態と同様に、仮圧着の際に、グリーンシート周縁部20aと中央部20b(図3)とを、互いに異なる圧力で加圧することができる。なお、図9に示す上部金型94における周縁部加圧面96aおよび中央部加圧面98aの形状は、第1実施形態の周縁部加圧面40aおよび中央部加圧面42aと同様である。
【0068】
また、本実施形態に係る金型装置33aでは、例えば、サーボモータ機構50を制御してグリーンシート中央部20bに加える圧力を調整した後、流体シリンダ62によって周縁部20aに加える圧力を調整することができる。したがって、本実施形態に係る金型装置33aでは、仮圧着の際に、グリーンシート周縁部20aと中央部20bの双方に対して、適切な圧力を印加することができる。
【0069】
第2実施形態に係る製造装置90aは、第1実施形態と同様に、図3に示すグリーンシート20からキャリアフィルム28を剥離するフィルム剥離手段(図7)を有していてもよい。これにより、第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置90aは、第1実施形態と同様に、先に示した一連の工程を繰り返すことによって、図8に示すようなグリーンシート積層体59を得ることができる。
【0070】
第2実施形態に係る製造装置90aは、サーボモータ機構50および油圧シリンダ62を制御することによって、第1実施形態と同様に、積層ずれが少なく、高精度に積層されたグリーンシート積層体を得ることができる。すなわち、電極パターン層24が形成されているグリーンシート中央部分に過剰な圧力が印加されることを防止し、グリーンシートの積層ずれや、崩れが発生することを防止できる。また、第1実施形態と同様に、グリーンシート周縁部を強固に圧着し、圧着後にキャリアフィルム28をグリーンシート20からきれいに剥離することができる。
【0071】
さらに、第2実施形態に係る製造装置90aは、サーボモータ機構50および油圧シリンダ62の2つの駆動手段によって、グリーンシート周縁部20aおよび中央部20bに印加する圧力を調整できる。したがって、第2実施形態に係る製造装置90aは、グリーンシート周縁部20aに印加する圧力と、グリーンシート中央部20bに印加する圧力を、詳細に設定および調整することができる。また、サーボモータ機構50および油圧シリンダ62を、各制御部から制御することによって、グリーンシート20に印加する圧力を積層工程の最中に調整することができる。従って、第2実施形態に係る製造装置90aは、積層されるグリーンシートの枚数や、グリーンシートの種類に合わせて、グリーンシート20に印加する圧力を、より詳細に設定することができる。なお、図9に示す油圧シリンダ62は、サーボモータ等の他の駆動手段に置き換えられてもよく、この場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0072】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
実施例
【0073】
図2に示す第1実施形態に係る製造装置を用いて、図3に示すグリーンシート20を18層目まで(18シート)積層し、積層体を作製した。3層目および18層目を積層する時点で、キャリアフィルム28表面に感圧シートを設置して仮圧着を行い、圧力分布を調査するとともに、グリーンシートの周縁部20aおよび中央部20bに印加されている圧力を測定した。
【0074】
グリーンシート20の厚さは30〜70μm、グリーンシート20の表面に形成された電極パターン層24の厚さは10μm、グリーンシート20のサイズは120mm×120mmのものを積層した。結果を表1および図11に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
表1に示すとおり、実施例では、3層目を積層する際にグリーンシート周縁部20aに印加される圧力と、18層目を積層する際にグリーンシート周縁部20a(図3)に印加される圧力がほぼ等しい。また、3層目を積層する際にグリーンシート中央部20bに印加される圧力と、18層目を積層する際にグリーンシート中央部20bに印加される圧力もほぼ等しい。
【0077】
すなわち、実施例では、積層数が増加して図6に示す段差Dが大きくなった場合でも、積層数が少ない場合とほぼ同じ圧力でグリーンシート20を加圧し、圧着させている。積層方向に均一に加圧されることによって、積層体の一部に荷重が集中することによって発生する積層ずれが抑制される。
【0078】
また、表1に示すとおり、実施例では、3層目を積層する際にも、18層目を積層する際にも、グリーンシート周縁部20aに印加される圧力が、グリーンシート中央部20bに印加される圧力より十分に大きい。したがって、実施例では、3層目を積層する際にも、18層目を積層する際にも、グリーンシート周縁部20a,21aを強固に圧着することができ、キャリアフィルム28をグリーンシート20からきれいに剥離することができる。
【0079】
また、表1に示すとおり、実施例では、3層目を積層する際にも、18層目を積層する際にも、グリーンシート中央部20bに印加される圧力が、グリーンシート周縁部20aに印加される圧力より十分に小さく、しかもほぼ同一である。したがって、実施例では、3層目を積層する際にも、18層目を積層する際にも、グリーンシート中央部に過剰な圧力が印加されることが防止されており、グリーンシートの積層ずれや、崩れの発生が防止されている。
【0080】
図11は、実施例において、3層目および18層目を積層する時点でキャリアフィルム28表面の上に設置された感圧シートを示す写真である。図11の上部に示す写真は、3層目を積層する時点で設置された感圧シートであり、図11の下部に示す写真は、18層目を積層する時点で設置された感圧シートである。なお、各感圧シートにおいて、より濃く着色されている部分ほど、より大きい圧力が印加されたことを意味する。
【0081】
図11に示すように、実施例では、3層目を積層する際にグリーンシート20に印加される圧力の分布と、18層目を積層する際にグリーンシート20に印加される圧力がほぼ等しい。したがって、18層目までの各グリーンシート20は、ほぼ同じ圧力分布で圧着されている。また、実施例では、3層目を積層する際にも、18層目を積層する際にも、グリーンシート周縁部20aに印加される圧力が、グリーンシート中央部20bに印加される圧力より十分に大きい。
参考例
【0082】
図10に示すに係る金型装置190を有する製造装置を用いて、図3に示すグリーンシート20を18層目まで積層し、積層体を作製した。金型装置190は、一体に形成されている上部金型139を有している。上部金型139は、周縁部加圧面140aと中央部加圧面142aとを有している。上部金型139は、周縁部加圧面140aを介して、グリーンシート周縁部20aを加圧し、中央部加圧面142aを介して、グリーンシート中央部20bを加圧する。
【0083】
上部金型139は、取付部材146を介して、上部金型取付部48に対して固定されている。したがって、中央部加圧面142aは、周縁部加圧面140aに対する相対的位置を変化させることはできない。なお、中央部加圧面142aは、周縁部加圧面140aに対して40μm上方(Z軸正方向側)に配置されている(図10の寸法G参照)。
【0084】
金型装置190のその他の部分は、実施例で用いた金型装置90(図2)と同様であり、図10では、下部金型34は図示を省略している。参考例に用いた製造装置における供給部および剥離機構についても、実施例(第1実施形態)と同様である。
【0085】
参考例では、実施例と同様に、3層目および18層目を積層する時点で、キャリアフィルム28表面に感圧シートを設置して仮圧着し、圧力分布を調査するとともに、グリーンシートの周縁部20aおよび中央部20bに印加されている圧力を測定した。グリーンシート20は、実施例で用いたグリーンシート20と同様のものを用いた。結果を表1および図12に示す。
【0086】
表1に示すとおり、参考例では、18層目を積層する際にグリーンシート周縁部20aに印加される圧力が、3層目を積層する際にグリーンシート周縁部20aに印加される圧力より小さい。このため、参考例では、18層目を積層する際には、グリーンシート周縁部20a,21aを強固に圧着することができず、キャリアフィルム28をグリーンシート20からきれいに剥離することができない場合がある。
【0087】
また、参考例では、18層目を積層する際にグリーンシート中央部20bに印加される圧力が、3層目を積層する際にグリーンシート中央部20bに印加される圧力より大きい。このため、参考例では、積層数が増加すると、グリーンシート中央部に過剰な圧力が印加され、グリーンシートの積層ずれや、崩れが発生する場合がある。
【0088】
図12は、参考例において、3層目および18層目を積層する時点でキャリアフィルム28表面の上に設置された感圧シートを示す写真である。図12の上部に示す写真は、3層目を積層する時点で設置された感圧シートであり、図12の下部に示す写真は、18層目を積層する時点で設置された感圧シートである。
【0089】
図12および表1に示すように、参考例では、18層目を積層する際に、グリーンシート中央部20bに印加される圧力と、グリーンシート周縁部20aに印加される圧力とがほぼ等しくなっている。したがって、参考例では、グリーンシート中央部20bと周縁部20aとの双方に対して適切な圧力を印加することは困難である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る積層セラミック電子部品の製造方法によって製造されたセラミックコンデンサの一例を表す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図である。
【図3】図3は、図2に示す製造装置の積層部に供給されるグリーンシートを表す平面図である。
【図4】図4は、図3に示すグリーンシートのIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図5は、図3に示すグリーンシートの表面の一部を拡大した拡大図である。
【図6】図6は、図2に示す製造装置の積層部において、グリーンシートをプレスする状態を表した要部断面図である。
【図7】図7は、図2に示す製造装置の積層部において、グリーンシートからキャリアフィルムを剥離する状態を表した要部断面図である。
【図8】図8は、図2に示す製造装置によって製造されたセラミック積層体の一例を表した断面図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係るセラミック積層体の製造装置の概略断面図である。
【図10】図10は、本発明の参考例に係る金型装置を表した概略断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施例において、グリーンシートに印加される圧力の分布を調査した感圧シートを示す写真である。
【図12】図12は、本発明の参考例において、グリーンシートに印加される圧力の分布を調査した感圧シートを示す写真である。
【符号の説明】
【0091】
20,21… グリーンシート
20a,21a… グリーンシート周縁部
20b,21b… グリーンシート中央部
24… 電極パターン層
28… キャリアフィルム
33,33a… 金型装置
34… 下部金型
40,96… 周縁部パンチ型
42,98… 中央部パンチ
44… スプリング
50… サーボモータ機構
56… フィルム剥離機構
62… 油圧シリンダ
80… 供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置されている第1グリーンシートの上に、キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートを積み重ねる工程と、
前記キャリアフィルムの上から、前記第1および第2グリーンシートの周縁部分には第1の圧力を印加し、前記第1および第2グリーンシートの中央部分には前記第1の圧力とは異なる第2の圧力を印加して、前記第1のグリーンシートと第2のグリーンシートを仮圧着する工程と、
前記キャリアフィルムを前記第1グリーンシートから剥がす工程とを有するセラミック積層体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載されたセラミック積層体の製造方法であって、
前記第1の圧力は、前記第2の圧力より大きいことを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項3】
設置されている第1グリーンシートの上に、キャリアフィルムの表面に形成された第2グリーンシートが積み重ねられて設置される下型と、
前記キャリアフィルムの上から前記第1および第2グリーンシートの周縁部分を加圧する周縁部パンチ型と、前記周縁部パンチ型に対して加圧方向に相対移動自在であって前記キャリアフィルムの上から前記第1および第2グリーンシートの中央部分を加圧する中央部パンチとを有する上型と、
前記上型または前記下型を駆動する型駆動手段と、を有することを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載された製造装置であって、
前記周縁部パンチ型が前記第1および第2グリーンシートの前記周縁部分を加圧する第1の圧力は、前記中央部パンチが前記第1および第2グリーンシートの前記中央部分を加圧する第2の圧力より大きいことを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載された製造装置であって、
前記キャリアフィルムを剥離する剥離手段をさらに有することを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれかに記載された製造装置であって、
前記型駆動手段から前記中央部パンチに伝えられる力を調整する弾性部材をさらに有すること特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項7】
請求項3から6のいずれかに記載された製造装置であって、
前記型駆動手段は、前記周縁部パンチ型を加圧する周縁部駆動手段と、前記中央部パンチを加圧する中央部駆動手段とを有することを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項8】
請求項7に記載された製造装置であって、
前記周縁部駆動手段は流体シリンダであり、前記中央部駆動手段はサーボモータであることを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項9】
請求項7に記載された製造装置であって、
前記周縁部駆動手段および前記中央部駆動手段はサーボモータであることを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項10】
請求項3から9のいずれかに記載された製造装置であって、
前記型駆動手段の駆動力を制御する制御手段をさらに有することを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項11】
請求項3から10のいずれかに記載された製造装置であって、
前記キャリアフィルムの表面に形成された前記第2グリーンシートを、前記下型に設置する供給手段をさらに有することを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項12】
請求項1または2に記載のセラミック積層体の製造方法によってグリーンシートを積層し、セラミック積層体を得る工程と、
前記セラミック積層体を切断してグリーンチップを得る工程と、
前記グリーンチップを焼成する工程と、を有することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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