説明

セラミック積層体の製造方法及び製造装置

【課題】セラミック積層体の品位を確保するとともに製造効率の向上を図る。
【解決手段】本発明のセラミック積層体の製造方法は、キャリアフィルム3上に配置された未焼成のセラミックシートを第1の支持テーブル121上に保持した状態でセラミックシート2からキャリアフィルム3を剥離するフィルム剥離工程と、第1の支持テーブル121上に保持されたセラミックシートを2直接若しくは間接的に移載して第2の支持テーブル131上に保持するシート移載工程と、セラミックシート2が保持された第2の支持テーブル131を移動させ、セラミックシート2を第2の支持テーブル131上に保持した状態で他のセラミックシートに圧着させることにより積層するシート積層工程と、を繰り返し実施し、一のセラミックシートに対するシート積層工程と他のセラミックシートに対するフィルム剥離工程との少なくとも一部を同時並行して実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセラミック積層体の製造方法及び製造装置に係り、特に、キャリアフィルム上の未焼成のセラミックシートを他のセラミックシートに積層する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、積層セラミックコンデンサなどの積層構造を有する電子部品を製造する方法としては、未焼成で未硬化のセラミックシート(セラミックグリーンシート)を積層してセラミック積層体を形成し、このセラミック積層体を分割した後に焼成することで個々のチップ状の電子部品を得る方法が知られている。また、このような電子部品の製造方法の初期工程であるセラミック積層体を得る工程では、キャリアフィルム上に展開されたセラミックシートからキャリアフィルムを剥離してセラミックシートを支持テーブル上に保持し、この支持テーブルをプレス機構まで移動させ、当該プレス機構により支持テーブル上のセラミックシートを他のセラミックシートに積層する場合がある(例えば、以下の特許文献1参照)。
【0003】
また、上記のようにキャリアテーブル上のセラミックシートを剥離する方法としては、キャリアフィルムをガイドする剥離板(剥離テーブル)を用いて、支持テーブル上に保持したセラミックシートの一端から他端へ向けてキャリアフィルムを剥離していく方法(特許文献1)があるが、これとは異なり、セラミックシートを支持テーブル上に保持し、支持テーブルをキャリアフィルムから離反させることでセラミックシートを強制的に抜き取る方法(特許文献2)も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−284346号公報
【特許文献2】特開平9−128499号公報
【特許文献3】特開2005−277198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のようにセラミックシートの一端から他端へ向けてキャリアフィルムを剥離していく方法では、以下の問題点がある。すなわち、図12に示すように、この方法では、支持テーブル1上に保持されたセラミックシート2に対して、剥離板4の板面により案内されたキャリアフィルム3を剥離板4の端縁部で折り曲げ、この折り曲げ部分をセラミックシート2から剥離していく。この場合、セラミックシート2が剥離部位においてキャリアフィルムの折り曲げ部分から受ける引っ張り力Fにより支持テーブル1上から持ち上がり、これによってセラミックシート2が局部的に剥離方向Gに引き伸ばされるので、最終的にキャリアフィルムの剥離が終了した時点では、支持テーブル1上のセラミックシート2が全体としては剥離方向Gに延伸された状態になるとともに、上記引っ張り力Fの変動により歪を伴った状態とされる。
【0006】
上記方法において、過去においては上記のセラミックシート2の延伸量が小さく歪が少なければ大きな支障はなかったが、近年においては、特許文献3に記載されているように、セラミックシートの薄型化や電極パターンの微細化が進んできているとともにセラミック積層体の積層数も増大してきているので、セラミックシートの延伸や歪による問題が多々生じるようになってきている。
【0007】
上記のようなセラミックシートの剥離時の延伸量や歪の抑制や再現性の向上を図る方法としては、支持テーブルや剥離板によりキャリアフィルム上のセラミックシートを冷却することで、セラミックシートの上記引っ張り力Fによる変形を抑制することが考えられる。しかしながら、従来方法では支持テーブル上のセラミックシートをそのままプレス機構により他のセラミックシートに加熱しながら加圧して積層するため、剥離時において支持テーブルの温度を低下させることが困難で、剥離時のセラミックシートの延伸量や歪の低減に関して十分な効果を得ることができず、その結果、セラミック積層体の品位を高めることが難しいという問題があった。また、支持テーブルの温度を剥離時において十分に低下させるには剥離時とプレス時の時間間隔を十分に確保する必要があるので、セラミック積層装置の積層サイクルを短縮することができず、製造効率の向上も困難であるという問題もあった。
【0008】
また、セラミックシートの剥離時の延伸量や歪の抑制や再現性の向上を図る別の方法としては、セラミックシートからキャリアフィルムをゆっくりと時間をかけて剥離させることで剥離部位の変形量を低減することが考えられるが、剥離時間が長くなるとセラミックシートの積層サイクルも長くなるので、セラミック積層体の製造効率はさらに低下するという問題が生ずる。
【0009】
したがって、上記の剥離方法を用いる場合には、セラミック積層体の品位を確保しつつ、製造効率を高めることがますます困難になりつつある。
【0010】
一方、セラミックシートをキャリアフィルム上から抜き取る方法では、セラミックシートをキャリアフィルム上から強制的に引き離すために剥離に要する力が大きくなるので、一回の抜き取り面積を大きくすることができず、その結果、一つのセラミック積層体の面積が小さくなって電子部品の取り数が減少し、結局製造効率が低下するという問題がある。また、上述のように近年のセラミックシートの薄型化によりセラミックシートの抜き取り自体が困難になってきているので、剥離不良に起因してセラミック積層体の品位が低下する虞があるとともに、製造効率もさらに低下することが考えられる。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、セラミック積層体の品位を確保するとともに製造効率の向上を図ることができるセラミック積層体の製造方法及び製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
斯かる実情に鑑み、本発明のセラミック積層体の製造方法は、キャリアフィルム上に配置された未焼成のセラミックシートを第1の支持テーブル上に保持した状態で前記セラミックシートから前記キャリアフィルムを剥離するフィルム剥離工程と、前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを直接若しくは間接的に移載して第2の支持テーブル上に保持するシート移載工程と、前記セラミックシートが保持された前記第2の支持テーブルを移動させ、前記セラミックシートを前記第2の支持テーブル上に保持された状態で別のセラミックシートに圧着させることにより積層するシート積層工程と、を繰り返し実施し、一の前記セラミックシートに対する前記シート積層工程と、他の前記セラミックシートに対する前記フィルム剥離工程との少なくとも一部を同時並行して実施することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、フィルム剥離工程においてキャリアフィルムを剥離する際にセラミックシートを保持する第1の支持テーブルと、シート積層工程においてセラミックシートを他のセラミックシートに圧着させて積層する際にセラミックシートを保持する第2の支持テーブルとが別に設けられるので、第2の支持テーブルにより一のセラミックシートを別のセラミックシートに積層している間に、第1の支持テーブル上で他のセラミックシートからキャリアフィルムを剥離することができるなど、フィルム剥離工程とシート積層工程の少なくとも一部を同時並行して実施できる。このため、フィルム剥離工程とシート積層工程の工程時間を短縮しなくても積層サイクルを短縮することができ、したがって、セラミック積層体の品位を確保しつつ製造効率を高めることが可能になる。
【0014】
この場合に、第1の移動経路と第2の移動経路を交差させて第1の支持テーブルから第2の支持テーブルへとセラミックシートを直接に移載してもよく、或いは、1又は複数の中間部材(例えば、第3の支持テーブル)を介して間接的にセラミックシートを移載してもよい。
【0015】
また、前記第1の支持テーブル上から前記第2の支持テーブル上へ直接にセラミックシートを移載する場合には、第1の支持テーブルの保持面と、第2の支持テーブルの保持面とが逆向きに設定され、第1の支持テーブルと第2の支持テーブルとが重なり配置されたときに両保持面が相互に対向するように構成されることが好ましい。たとえば、前記第1の支持テーブルの上面にセラミックシートを保持し、前記第2の支持テーブルの下面にセラミックシートを保持するように構成することで、セラミックシートの上下姿勢を変えずにそのまま第2の支持テーブルに保持されたセラミックシートを別のセラミックシートの上方から積層することができる。
【0016】
本発明の一の態様においては、前記フィルム剥離工程における前記セラミックシートの温度が前記シート積層工程における前記セラミックシートの温度より低くなるように温度制御される。この場合には、フィルム剥離工程においてキャリアフィルムを剥離する際にセラミックシートを保持する第1の支持テーブルと、シート積層工程においてセラミックシートを他のセラミックシートに圧着させて積層する際にセラミックシートを保持する第2の支持テーブルとが別々に設けられるとともに、セラミックシートを直接若しくは間接的に受け渡しする間において短時間だけ直接若しくは間接的に熱接触するに過ぎないので、両支持テーブル間の温度差を十分かつ容易に確保することが可能になる。したがって、積層サイクルを短縮してもフィルム剥離工程とシート積層工程の温度差を十分に大きくすることができるため、フィルム剥離工程におけるセラミックシートの延伸量や歪の低減を図ることでセラミック積層体の品位を高めつつ、製造効率を高めることができる。
【0017】
上記のような構成は以下の方法によって実現できる。例えば、前記フィルム剥離工程では、前記剥離板と前記第1の支持テーブルの少なくとも一方により、前記セラミックシートを冷却しながら前記キャリアフィルムを剥離することが好ましい。また、前記シート積層工程では、前記第2の支持テーブルとこれに対向する別のセラミックシートを保持する基台の少なくとも一方により、或いは、加熱用の光照射などの別の方法により、前記セラミックシート若しくは前記他のセラミックシートを加熱しながら、前記セラミックシートを前記他のセラミックシートに圧着させることが好ましい。ここで、上記の冷却と加熱は共に行われてもよく、いずれか一方のみを行ってもよい。すなわち、両工程間に温度差が生ずるように何らかの温度制御がなされていればよい。
【0018】
本発明の他の態様においては、前記フィルム剥離工程では、前記キャリアフィルムを前記セラミックシートの一端から他端まで順に剥離していく。このようにセラミックシートの一端から他端までキャリアフィルムを剥離していく場合には、大面積のセラミックシートでも容易にキャリアフィルムを剥離することができる反面、セラミックシートが延伸したり歪んだりする虞があるが、上述のようにフィルム剥離工程の工程時間を短縮しなくても積層サイクルを短縮できるので、剥離速度を抑制することが可能になり、その結果、剥離時のセラミックシートの延伸量や歪を抑制することができる。
【0019】
本発明の別の態様においては、前記フィルム剥離工程と前記シート積層工程との間において、前記第1の支持テーブル若しくは前記第2の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートの延伸量若しくは歪の程度を検出するシート検査工程をさらに具備する。これによれば、シート検査工程において、フィルム剥離工程によってキャリアフィルムが剥離された後のセラミックシートの延伸量若しくは歪の程度を検出することで、剥離後のセラミックシートの保持態様を検査し、その検査結果であるセラミックシートの延伸状態や歪状態に応じて支持テーブルの位置や姿勢の調整、或いは、当該セラミックシートの使用の可否を判断することができるため、セラミックシートの電極パターン等の位置ずれによるセラミック積層体の不具合を防止し、品位の向上を図ることができる。
【0020】
次に、本発明のセラミック積層体の製造装置は、キャリアフィルム上に配置された未焼成のセラミックシートを剥離し、他のセラミックシートに圧着させて積層するセラミック積層体の製造装置において、前記セラミックシートを保持可能に構成された第1の支持テーブルを備え、該第1の支持テーブルを第1の移動経路に沿って移動可能に構成する第1のテーブル移動機構と、前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートから前記キャリアフィルムを剥離するフィルム剥離機構と、前記セラミックシートを保持可能に構成された第2の支持テーブルを備え、該第2の支持テーブルを第2の移動経路に沿って移動可能に構成する第2のテーブル移動機構と、前記第2の移動経路上に配置され、前記第2の支持テーブルに保持された前記セラミックシートを基台上に配置された別のセラミックシートに圧着させて積層するシート積層機構と、を具備し、前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを直接若しくは間接的に前記第2の支持テーブルに移載し、該第2の支持テーブル上に保持するようにしたことを特徴とする。
【0021】
この発明によれば、フィルム剥離機構によりキャリアフィルムが剥離されるセラミックシートを保持する第1の支持テーブルと、シート積層機構により別のセラミックシートに積層されるセラミックシートを保持する第2の支持テーブルとを別に設けたので、フィルム剥離工程とシート積層工程の少なくとも一部を同時並行して行うことが可能になり、セラミック積層体の製造効率を高めることが可能になる。また、第1の支持テーブルと第2の支持テーブルがそれぞれ第1の移動経路と第2の移動経路に沿ってそれぞれ移動可能に構成されることで、セラミックシートの移載時の態様や装置の移載部の構造の自由度を高めることができる。具体的には、第1の支持テーブルを剥離位置より移動させることができるとともに、第2の支持テーブルを積層位置より移動させることができるので、第1の支持テーブルに保持されたセラミックシートを第2の支持テーブルへ直接若しくは間接的に移載させる移載場所を剥離位置や積層位置とは別に設定できるため、装置構造を簡易に構成できる。
【0022】
本発明の一の態様においては、前記フィルム剥離機構には、前記剥離板と前記第1の支持テーブルの少なくとも一方に冷却手段が設けられる。本発明の他の態様においては、前記シート積層機構には、前記第2の支持テーブルと前記基台の少なくとも一方に加熱手段が設けられる。
【0023】
上記の冷却手段と加熱手段は共に設けられることが好ましいが、フィルム剥離機構における剥離時のセラミックシートの温度と、シート積層機構における積層時のセラミックシートの温度との間に差があればよいので、いずれか一方の手段が設けられるだけでも構わない。
【0024】
さらに、本発明の別の態様においては、前記第1の移動経路において前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシート、或いは、前記第2の移動経路において前記第2の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを検査するシート検査手段をさらに具備する。これによれば、剥離後のセラミックシートを検査することで、剥離不良に起因するセラミック積層体の不具合を防止できる。
【0025】
この場合に、前記シート検査手段は、前記第1の支持テーブルから前記セラミックシートが移載される位置若しくは前記第2の支持テーブルへ前記セラミックシートが移載される位置において前記セラミックシートを検査することが好ましい。これによれば、セラミックシートの移載が実施される位置で検査を行うことで、セラミックシートの移載に伴うテーブルの停止時に同時に検査を行うことが可能になることから、移載位置以外の位置でテーブルを停止する必要がなくなるため、製造効率をさらに向上することが可能になる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、セラミック積層体の品位を確保しつつ、製造効率を高めることができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態の製造装置の全体構成を模式的に示す概略構成斜視図。
【図2】剥離時における実施形態の製造装置の全体構成を模式的に示す概略構成斜視図。
【図3】剥離後における実施形態の製造装置の全体構成を模式的に示す概略構成斜視図。
【図4】移載時における実施形態の製造装置の全体構成を模式的に示す概略構成斜視図。
【図5】剥離開始前のフィルム剥離機構の構成を模式的に示す概略構成断面図。
【図6】剥離途中のフィルム剥離機構の構成を模式的に示す概略構成断面図。
【図7】移載位置における剥離後のセラミックシートの検査時の様子を模式的に示す概略図(a)及び移載直前の様子を模式的に示す概略図(b)。
【図8】移載中の構成を示す概略図(a)及び移載直後の構成を模式的に示す概略図(b)。
【図9】移載後の第2支持テーブル及びシート積層機構の構成を模式的に示す概略図。
【図10】第2支持テーブルが積層位置に到達した様子を模式的に示す概略図。
【図11】積層時の様子を模式的に示す概略図。
【図12】剥離時のセラミックシートの様子を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。図1は本発明に係るセラミック積層体の製造方法及び製造装置を説明するための製造装置100の全体構成を模式的に示す概略構成斜視図である。本実施形態では、製造装置100は、セラミックシート2からキャリアフィルム3を剥離するためのフィルム剥離機構110と、セラミックシート2を保持可能な第1支持テーブル121を移動方向120Aに伸びる第1移動経路に沿って移動可能に構成してなる第1テーブル移動機構120と、セラミックシート2を保持可能な第2支持テーブル131を移動方向131Aに伸びる第2移動経路に沿って移動可能に構成してなる第2テーブル移動機構130と、第2支持テーブル131上に保持されたセラミックシート2を他のセラミックシートに積層するためのシート積層機構140と、を備えている。
【0029】
フィルム剥離機構110は、帯状のキャリアフィルム3上にセラミックシート2が配置されてなる連続シートのセラミックシート2からキャリアフィルム3を剥離するものである。このフィルム剥離機構110は、複数の案内ローラを備え、供給ロール111から繰り出された上記連続シートを剥離板113へと案内する繰出側案内部112と、繰出側案内部112を通過した先において上記連続シートのキャリアフィルム3を鋭角に屈折させるように案内する剥離板113と、複数の案内ローラを備え、剥離板113を通過した後のキャリアフィルム3を案内するとともに、剥離板113とともに剥離方向に移動可能に構成された可動案内部114と、この可動案内部114を通過した後のキャリアフィルム3を複数の案内ローラによって巻取ロール116へ導く巻取側案内部115と、を有する。
【0030】
繰出側案内部112には、上記連続シートのテンションを調整するためのテンションローラ112aを備えた公知のテンション調整手段と、剥離時に上記連続シートを吸引して保持するサクションローラ112bを備えた公知のシート保持手段とが設けられている。また、可動案内部114には、剥離時にキャリアフィルム3を吸引保持するサクションローラ114aを備えた公知のシート保持手段が設けられ、また、巻取側案内部115には、キャリアフィルム3のテンションを調整するためのテンションローラ115aを備えた公知のテンション調整手段が設けられている。上記の各テンション調整手段はそれぞれ架設経路上の上記連続シートやキャリアフィルム3の張力を一定のテンション範囲内に維持するように動作する。
【0031】
剥離板113は、繰出側案内部112と可動案内部114の間に架設される上記連続シートと平行に配置され、図示しない駆動機構により、可動案内部114とともに連続シートの延在方向に沿って往復移動可能に構成される。剥離板113には、図5に示すように、上記連続シートの架設経路に沿った案内面113aと、この案内面113aの先に設けられたブレード状の端縁部113bとを有している。上記案内面113aは下方に向いた下面で構成される。端縁部113bは図示例では剥離板113の端縁を斜めにカットしてなる刃先状に構成され、キャリアフィルム3を鋭角に屈折した態様で案内している。ただし、端縁部113bは図示例に限らず、キャリアフィルム3をセラミックシート2との間の接着力に抗して剥離するに必要な程度の屈折状若しくは屈曲状に案内することができる構造となっていればよい。
【0032】
図1は剥離板113が剥離位置Aにある状態を示しているが、図2及び図6に示すように、この剥離位置Aから剥離板113を上記連続シートの繰出側へ移動させることで、セラミックシート2からその一端から他端へと順次にキャリアフィルム3を剥離していくことができるようになっている。
【0033】
第1テーブル移動機構120において、第1支持テーブル121は、剥離位置Aから移載位置Bまでの既定の第1移動経路を移動方向120Aに沿って第1テーブル駆動構造122により移動可能に案内される。図5及び図6に示すように、第1支持テーブル121はテーブルの上方に向いた上面で構成される保持面121aを備えている。第1支持テーブル121は、剥離位置Aに配置されるときに同位置Aに配置された剥離板113の下方に配置され、その保持面121aが剥離板113の上記案内面113aと対向配置される。
【0034】
第1テーブル駆動構造122は、第1支持テーブル121を上記移動経路に沿って移動可能に案内する案内手段と、この案内手段の案内方向に沿って第1支持テーブル121を移動させる駆動手段とを含む。当該案内手段としては案内レールとスライダなどのスライド構造を用いることができ、駆動手段としてはボールネジなどの送りねじ機構、リニアモータなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0035】
第1支持テーブル121の上記保持面121aには、セラミックシート2を吸着保持するための微細な複数の吸引孔(図示せず)が分散配置されている。第1支持テーブル121は、水平面上の位置及び姿勢を規定するX方向、Y方向及びθ方向にそれぞれ可動に構成されたX・Y・θ可動機構123a及び垂直方向であるZ方向の位置を規定するZ可動機構123bを備えた位置決め機構123上に設置され、これによって、上記保持面121aの平面位置及び姿勢と、垂直位置とがそれぞれ調整可能に構成される。
【0036】
図5及び図6に示すように、剥離板113の内部には冷媒を通過させる冷却路や熱電素子などで構成された冷却手段113cが配置される。また、第1支持テーブル121の内部にも保持面121aの直下位置等において冷媒を通過させる冷却路や熱電素子などで構成された冷却手段121cが配置される。これらの冷却手段113c、121cはいずれもセラミックシート2を冷却して剥離させやすくするためのものであり、双方が設けられることがセラミックシート2を効率的に冷却して剥離を容易にする点で好ましいが、いずれか一方のみが設けられていてもよい。セラミックシート2の剥離時の温度は特に限定されないが、通常は0〜35℃の範囲内であり、10〜30℃の範囲とすることが好ましく、特に15〜25℃(常温)とすることがさらに望ましい。この温度は後述するセラミックシート2の積層時の温度より低くなるように設定される。
【0037】
剥離位置Aには、上記フィルム剥離機構110に架設された上記連続シートにおけるキャリアフィルム3上のセラミックシート2を撮影するCCDカメラ等の剥離前撮像手段として構成された検出器124が設けられる。この検出器124は剥離位置Aにおいて剥離板113の下方に配置され、下方からキャリアフィルム3に展開されたセラミックシート2を撮影できるように構成される。検出器124は、剥離前のセラミックシート2やキャリアフィルム3に形成されたアライメントマークやセラミックシート2の電極パターンなどの検出対象を撮影し、図示しない制御部が当該検出対象の位置情報を画像処理等により導出する。そして、この位置情報に基づいて上記制御部により第1支持テーブル121の平面位置決め手段であるX・Y・θ可動機構123aが制御され、保持面121aの水平面上の位置及び姿勢が設定される。ここで、検出器124は複数設けられ、複数の検出対象を検出することで、セラミックシート2の平面位置及び姿勢が完全に検出でき、それによって保持面121aの平面位置及び姿勢が完全に設定できるように構成することが好ましい。図示例では2つの検出器124が移動方向120Aに沿って所定の間隔で配列され、これによってセラミックシート2の移動方向120Aの両側にあるアライメントマークを同時に検出できるようになっている。
【0038】
また、移載位置Bには、第1支持テーブル121の保持面121a上に配置されるセラミックシート2を撮影する剥離後撮像手段である検出器125が設けられる。この検出器125は、上記フィルム剥離機構120によってキャリアフィルム3が剥離された後のセラミックシート2の検査を行う。具体的には、セラミックシート2の平面位置及び姿勢、或いは、セラミックシートの延伸量や歪の程度を検出する。
【0039】
図示例では、検出器125は、図7(a)に示すように、移載位置Bに配置された第1支持テーブル121の上方から保持面121a上のセラミックシート2を撮影するように配置される。この検出器125の設置目的は、剥離後のセラミックシート2の平面位置及び姿勢を検出して、積層前に当該平面位置及び姿勢の調整を行うことでもよく、或いは、剥離後のセラミックシート2の電極パターンに基づいて画像処理を行うことなどによってセラミックシート2の延伸量や歪の程度が検出され、これに基づいてセラミックシート2の剥離後の状態を確認し、シート積層工程に進むのに支障がないか否かを確認することでもよい。また、上記二つの目的を共に果たすために設置してもよく、いずれか一方のために設置しても構わない。
【0040】
前者の場合には、検出器125によって検出されたデータに基づいて上記制御部がX・Y・θ可動機構123aを制御し、セラミックシート2の移載時の位置及び姿勢を調整するようにしてもよい。また、このデータに基づいて第2支持テーブル131の移載時の平面位置及び姿勢を調整するように構成しても構わない。
【0041】
後者の場合には、検出器125で得られたデータ(平面パターンの画像など)は制御部によって処理され、セラミックシート2の平面的な延伸量、歪量や歪の分布態様が導出される。セラミックシート2の延伸量や歪の程度は、適宜に設定される基準パターンから上記平面パターンがどの程度ずれているかを少なくとも一つの領域において計算して求める。平面パターンのずれは、X方向とY方向に分けて導出してもよく、また、複数の領域において求めることで平面パターンのずれの分布や平均値を得るようにしてもよい。
【0042】
この検出器125も複数設けられることが好ましい。複数の検出器125によってセラミックシート2の平面位置及び姿勢が完全に把握することができ、また、複数の検出器125によってセラミックシート2の電極パターン等の平面パターン画像を取得することで、セラミックシート2の延伸量や歪を正確かつ詳細に検出することができる。図示例では4つの検出器125を設けることで平面位置及び姿勢の検出と、延伸量及び歪の検出のいずれにも対応できるように構成される。
【0043】
なお、上記の延伸量や歪の検出によってセラミック積層体を得るのに不適切と判断されたセラミックシート2は、上記第1支持テーブル121上から、手動により、若しくは、図示しないシート除去手段により除去される。或いは、セラミックシート2は、以下に説明する第2支持テーブル上へ移載された後において、当該第2支持テーブル上から、手動により、若しくは、上記シート除去手段により除去されてもよい。いずれの場合でも、上記シート除去手段としては、テーブル上に配置されたセラミックシート2を吸着して廃棄箇所へ廃棄する別の移動可能な吸着テーブル、セラミックシート2の端部を把持してテーブル上から剥離して廃棄箇所へ廃棄するピックアップなど、種々の構成を用いることができる。
【0044】
第2テーブル移動機構130において、第2支持テーブル131は、図7(b)に示すように、セラミックシート2を吸着保持するための微細な複数の吸引孔(図示せず)が分散して開口してなる保持面131aを備えている。この保持面131aはテーブルの下方を向いた下面で構成される。また、第2支持テーブル131はX・Y・θ可動機構133a及びZ可動機構133bを備えた位置決め機構133に取り付けられ、これによって上記保持面131aの平面位置及び姿勢と、垂直位置とをそれぞれ調整可能に構成される。
【0045】
また、第2テーブル移動機構130には、移載位置Bから積層位置Cまでの第2移動経路に沿って移動方向130Aに第2支持テーブル131を移動可能に構成する第2テーブル駆動構造132が設けられている。この第2テーブル駆動構造132は、第2支持テーブル131を上記第2移動経路に沿って移動可能に案内する案内手段と、この案内手段の案内方向に沿って第2支持テーブル131を移動させる駆動手段とを含む。当該案内手段としては案内レールとスライダなどのスライド構造を用いることができ、駆動手段としてはボールネジなどの送りねじ機構、リニアモータなどを用いることができるが、特に限定されるものではない。
【0046】
第2支持テーブル131は、図7(b)に示すように、上記第2テーブル駆動構造132によって移載位置Bに配置されたとき、上記第1テーブル駆動構造122によって移載位置Bに配置された第1支持テーブル121と平面的に重なるように配置され、保持面131aは保持面121aと対向配置される。そして、図8(a)に示すように、第1支持テーブル121のZ可動機構123b(図5及び図6参照)と、第2支持テーブル131のZ可動機構133bの少なくとも一方を動作させることで第1支持テーブル121の保持面121a上に保持されたセラミックシート2を第2支持テーブル131の保持面131aで吸着保持し、その後、保持面121aのセラミックシート2に対する吸着保持状態を解除した上で、図8(b)に示すように、保持面121aと131aを離間させることで、セラミックシート2を第1支持テーブル121から第2支持テーブル131へと受け渡すことができる。
【0047】
図9に示すように、積層位置Cには、別のセラミックシート2′が配置される基台141と、該基台141の上方に配置された加圧部材142とを有し、加圧部材142は加圧機構143によって基台141側に向けた所定の加圧方向に圧力を与えることができるように構成される。なお、加圧部材142は加圧機構143に対して角度自在に連結され、複数(図示例では4本)のガイド軸144に案内されるガイド部材145は加圧部材142を保持して加圧部材142を上記加圧方向に正確に案内する。
【0048】
第2テーブル駆動構造132によって移動可能に構成された第2支持テーブル131は、図9及び図10に示すように移載位置Bより積層位置Cに移動し、積層位置Cにおいて上記基台141の上方に位置決めされる。そして、上記加圧部材142が第2支持テーブル131の受圧板134を下方に押し下げることで、図11に示すように、保持面131aに保持されたセラミックシート2が基台141上に既に配置されていた他のセラミックシート2′に圧着され、積層される。
【0049】
図9乃至図11に示すように、基台141の内部には加熱ヒータや熱電素子などで構成された加熱手段141cが配置される。また、第2支持テーブル131の内部にも保持面131aの直下位置等において加熱ヒータや熱電素子などで構成された加熱手段131cが配置される。これらの加熱手段141c、131cはいずれもセラミックシートを加熱することにより、セラミックシート2と他のセラミックシート2′の密着を容易にするためのものであり、双方を設けることが好ましいが、いずれか一方のみが設けられていてもよい。セラミックシートの積層時の温度としては、30〜80℃が好ましく、40〜60℃の範囲とすることがさらに望ましい。
【0050】
上記の製造装置100では、第1移動経路と第2移動経路は共に水平方向に伸びている。また、第1移動経路及び第2移動経路は共に直線状の経路とされることで、第1支持テーブル121と第2支持テーブル131の移動速度の向上や移動方向の精度の向上が図られている。さらに、フィルム剥離機構110における連続シートの架設方向と移動方向120Aとは平面上で相互に直交する方向とされ、また、移動方向120Aと130Aも相互に直交する方向とされる。これにより、第2移動経路がフィルム剥離機構110の連続シートの架設方向に沿った方向に伸びるので、装置全体をコンパクトに構成できる。また、本実施形態の場合には、第1移動経路と第2移動経路の端部同士が移載位置Bにおいて平面的に重なるように構成され、これによって移載位置Bにおいて第1支持テーブル121の保持面121aと第2支持テーブル131の保持面131aとが相互に対向配置されうる構成となり、セラミックシート2の第1支持テーブル121から第2支持テーブル131への移載動作が実現できるようになっている。
【0051】
以上説明した本実施形態においては、以下のようにしてセラミック積層体の製造が行われる。まず、図5に示すように、剥離位置Aにおいてキャリアフィルム3が剥離板113の案内面113aに案内された状態で、検出器124によって上記キャリアフィルム3及びその上に配置されたセラミックシート2のアライメントマークや電極パターンを撮影し、セラミックシート2の配置状態を検出する。このとき、第1支持テーブル121は剥離位置Aとは異なる位置に配置される。その後、第1支持テーブル121を剥離位置Aに配置し、上記のセラミックシート2の配置状態に応じてX・Y・θ可動機構123aにより保持面121aの平面位置及び姿勢を調整する。
【0052】
次に、Z可動機構123bによって保持面121aをセラミックシート2に当接させ、セラミックシート2を保持面121aに吸着保持する。このとき、セラミックシート2が保持面121a上に保持された状態で、必要に応じて保持面121a上に配置されたセラミックシートの部分を、第1支持テーブル121上や別に設けられた図示しないカット機構により他の部分と切り離す。ただし、予めキャリアフィルム3上において保持面121a上に保持されたセラミックシート2が他の部分と分離した状態で形成されている場合には当該カット機構及びカット動作は不要である。
【0053】
次に、上記サクションローラ等により剥離板113の両側でキャリアフィルム3を保持した状態で、図1及び図5に示す第1支持テーブル121の保持面121aと平面的に重なる剥離開始位置から剥離板113が端縁部113bとは反対側に移動することによって、図2及び図6に示すように、キャリアフィルム3がセラミックシート2の一端から他端へ向けて剥離される。このとき、上述のように可動案内部114もまた剥離板113と共に同方向へ移動する。この移動中において、可動案内部114(好ましくは最も剥離板113に近い案内ローラ)によってキャリアフィルム3を巻取側へ引っ張ることにより、端縁部113b上のキャリアフィルム3の弛みを防止して、セラミックシート2の延伸量を低減することができる。これは、端縁部113bからキャリアフィルム3が摺動抵抗を受けることで弛みが発生しやすくなるからである。
【0054】
その後、図3に示すように、第1支持テーブル121は保持面121a上にセラミックシート2を保持した状態で移載位置Bに向けて移動する。そして、移載位置Bにおいて第1支持テーブル121が停止する。ここで、第1支持テーブル121が移載位置Bに配置された当初には、第2支持テーブル131は移載位置B以外の位置(例えば、移載位置Bと積層位置Cの間の位置)にあり、第1支持テーブル121の上方は第2支持テーブル131によって覆われていない。このとき、上記検出器125によって剥離後のセラミックシート2の状態が検出される。ここでは、上述のようにセラミックシート2の平面位置及び姿勢が検出され、或いは、延伸量や歪の程度が許容範囲内に収まっているか否かが判断される。そして、平面位置及び姿勢の検出データに応じて第1支持テーブル121の位置及び姿勢の調整が行われる。また、上記の判断結果に応じて、そのままセラミックシート2が第2支持テーブル131に移載されるか、或いは、所定の廃棄箇所に廃棄される。
【0055】
なお、検出器125によって第1支持テーブル121上のセラミックシート2が検査される位置は上記移載位置Bに限らず、上記剥離位置A、或いは、剥離位置Aと移載位置Bの間の任意の位置であっても構わない。ただし、剥離位置Aでは第1支持テーブル121の上方に上記連続シート若しくはキャリアフィルム3が通過するので、検出器125の設置位置に多少の制約が課せられる。また、剥離位置Aと移載位置Bの間の位置で検査を行う場合において、検出器125による検出が第1支持テーブル121の移動を一旦停止しなければ実施できないときには、第1支持テーブル121の移動サイクルの長時間化を招き、本装置による製造効率の低下を招く虞がある。
【0056】
上記と比べて、セラミックシート2の移載位置Bで検査を行うことによって、第1支持テーブル121の上方が覆われていない状態で検出器125によって上方からセラミックシート2を検査することができるために、検出器125の設置位置に関する制約が少なくなる。また、移載位置Bでは第2支持テーブル131に対する移載動作のために第1支持テーブル121を一旦停止させる必要があるので、その停止時に検査を行うことで移動サイクルの長時間化を抑制できるという利点もある。
【0057】
次に、図4に示すように、移載位置Bにおいて第1支持テーブル121と第2支持テーブル131とを重ね配置させ、図7(b)、図8(a)及び図8(b)に示すように順次に動作させることで、セラミックシート2を第1支持テーブル121の保持面121a上から第2支持テーブル131の保持面131a上へと移載する。
【0058】
なお、検出器125によって第2支持テーブル131の保持面131a上に保持されたセラミックシート2を検査することも可能である。この場合には、撮像手段である検出器125を保持面131aの下方に配置する必要があるが、移載動作によってセラミックシート2の保持態様に問題が生じた場合にも対処でき、最終的に積層位置Cにおいて積層される態様について検査できるという利点がある。
【0059】
その後、図9及び図10に示すように、第2支持テーブル131を移動させ、図1に示すように積層位置Cにおいて停止させる。このとき、第1支持テーブル121は移載位置Bから剥離位置Aへと戻り、次のセラミックシート2の準備に入る。なお、第1支持テーブル121が剥離位置Aに戻る前にキャリアフィルム3上にある次のセラミックシート2の上述の剥離前の状態の検査が検出器124によって行われる。
【0060】
積層位置Cでは、前述のようにして、図10乃至図11に示す動作によって第2支持テーブル131に保持されたセラミックシート2が加圧手段143の加圧力により他のセラミックシート2′上に積層される。また、この積層作業は、次のセラミックシート2に対する剥離作業と同時並行して行われるので、剥離作業及び積層作業にある程度の時間が必要であっても、積層サイクルの長時間化を招くことが少ない。すなわち、本実施形態では、フィルム剥離工程とシート積層工程とを別々の支持テーブルにて行うことができるので、積層サイクルは、各支持テーブルの移動時間と、両支持テーブル間のセラミックシートの移載時間と、剥離時間又は積層時間の長い方とによって主として決定され、効率的にセラミック積層体を形成することができる。
【0061】
また、本実施形態では、フィルム剥離工程で用いる第1支持テーブル121と、シート積層工程で用いる第2支持テーブル131とをそれぞれ移動可能に構成したことにより、移載位置や検査位置などの自由度が向上し、装置構成の設計が容易になり、装置をコンパクトに構成したり、各工程の最適化を図ったりすることが可能になる。特に、第1支持テーブル121と第2支持テーブル131を移動可能に構成することで、移載位置Bを剥離位置Aや積層位置Cとは別に設定できるので、各部の干渉を回避でき、装置を簡易かつコンパクトに構成できる。
【0062】
以上の工程を繰り返し行うことで、複数のセラミックシート2が積層されてなるセラミック積層体を製造することができる。なお、図1に二点鎖線で模式的に示すように、異なる構成のセラミックシートを剥離するための別のフィルム剥離機構110′と、上記剥離位置Aとは異なる剥離位置から移載位置Bまで別の支持テーブル121′を別のテーブル駆動構造122′によって移動可能に構成してなる別のテーブル移動機構120′と、を設けることも可能である。このようにすると、たとえば、上述のセラミックシート2とは異なるセラミックシートを適宜の位置及びタイミングにてセラミック積層体に積層させることができる。たとえば、セラミックシート2が電極パターンを備えた中間層を構成するセラミックシートであり、上記異なるセラミックシートがセラミック積層体の最下層と最上層の少なくとも一方に配置されるべき電極パターンのない最外層を構成するセラミックシートとすることができる。
【0063】
本実施形態では、フィルム剥離工程で用いる第1支持テーブル121上からシート積層工程で用いる第2支持テーブル131へとセラミックシートを移載するので、上記のように効率的な製造が可能になるという効果の他に、フィルム剥離工程におけるセラミックシートの温度と、シート積層工程におけるセラミックシートの温度とを異なる温度に設定しやすくなり、また、両工程間の時間間隔を設けなくても両工程におけるセラミックシートの温度差を維持できるという利点がある。すなわち、フィルム剥離工程ではセラミックシートの温度を低くすることで剥離を容易にするとともに剥離状態を良好にすることができ、シート積層工程ではセラミックシートの温度を高くすることでセラミックシート間の接着力を高めることができる。
【0064】
本実施形態では、フィルム剥離工程においてセラミックシート2からキャリアフィルム3を剥離したときに、セラミックシート2に剥離方向の延伸や歪が生ずる虞があるので、検出器125によって剥離後のセラミックシート2の延伸量や歪の程度を検査するようにしている。そして、その検査結果に応じて不適切なセラミックシート2を排除したり、検査結果に応じてセラミックシート2の積層時の平面位置や姿勢を調整したり(これは第1支持テーブル121又は第2支持テーブル131の位置決めによって行うことができる。)することによって、セラミック積層体に積層される各層間の電極パターンのずれを低減することができ、セラミック積層体の品位を向上させることができる。この場合に、上記検査は移載位置Bで行うことでより効率的に検査を行うことができ、積層サイクルへの影響も少なくなる。
【0065】
尚、本発明のセラミック積層体の製造方法及び製造装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、製造方法において第1支持テーブル121上のセラミックシート2を直接に第2支持テーブル131上に移載し、また、製造装置において第1支持テーブル121上から第2支持テーブル131へとセラミックシート2を直接に移載する移載位置Bを設定しているが、第1支持テーブル121から1又は複数の中間部材(例えば第3支持テーブル等)を介して第2支持テーブル131へ間接的に移載するようにしても構わない。
【符号の説明】
【0066】
100…製造装置、110…フィルム剥離機構、113…剥離板、120…第1テーブル移動機構、121…第1支持テーブル、121a…保持面、122…第1テーブル駆動構造、124、125…検出器、130…第2テーブル移動機構、131…第2支持テーブル、131a…保持面、132…第2テーブル駆動構造、140…シート積層機構、A…剥離位置、B…移載位置、C…積層位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアフィルム上に配置された未焼成のセラミックシートを第1の支持テーブル上に保持した状態で前記セラミックシートから前記キャリアフィルムを剥離するフィルム剥離工程と、
前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを直接若しくは間接的に移載して第2の支持テーブル上に保持するシート移載工程と、
前記セラミックシートが保持された前記第2の支持テーブルを移動させ、前記セラミックシートを前記第2の支持テーブル上に保持した状態で別のセラミックシートに圧着させることにより積層するシート積層工程と、
を繰り返し実施し、
一の前記セラミックシートに対する前記シート積層工程と、他の前記セラミックシートに対する前記フィルム剥離工程との少なくとも一部を同時並行して実施することを特徴とするセラミック積層体の製造方法。
【請求項2】
前記フィルム剥離工程における前記セラミックシートの温度が前記シート積層工程における前記セラミックシートの温度より低くなるように温度制御されることを特徴とする請求項1に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項3】
前記フィルム剥離工程では、前記キャリアフィルムを前記セラミックシートの一端から他端まで順に剥離していくことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項4】
前記シート剥離工程と前記シート積層工程との間において、前記第1の支持テーブル若しくは前記第2の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートの延伸量若しくは歪の程度を検出するシート検査工程をさらに具備することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセラミック積層体の製造方法。
【請求項5】
キャリアフィルム上に配置された未焼成のセラミックシートを剥離し、他のセラミックシートに圧着させて積層するセラミック積層体の製造装置において、
前記セラミックシートを保持可能に構成された第1の支持テーブルを備え、該第1の支持テーブルを第1の移動経路に沿って移動可能に構成する第1のテーブル移動機構と、
前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートから前記キャリアフィルムを剥離するフィルム剥離機構と、
前記セラミックシートを保持可能に構成された第2の支持テーブルを備え、該第2の支持テーブルを第2の移動経路に沿って移動可能に構成する第2のテーブル移動機構と、
前記第2の移動経路上に配置され、前記第2の支持テーブルに保持された前記セラミックシートを基台上に配置された別のセラミックシートに圧着させて積層するシート積層機構と、
を具備し、
前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを直接若しくは間接的に前記第2の支持テーブル上に移載して保持するようにしたことを特徴とするセラミック積層体の製造装置。
【請求項6】
前記フィルム剥離機構には、前記剥離板と前記第1の支持テーブルの少なくとも一方に冷却手段が設けられることを特徴とする請求項5に記載のセラミック積層体の製造装置。
【請求項7】
前記シート積層機構には、前記第2の支持テーブルと前記基台の少なくとも一方に加熱手段が設けられることを特徴とする請求項5又は6に記載のセラミック積層体の製造装置。
【請求項8】
前記第1の移動経路において前記第1の支持テーブル上に保持された前記セラミックシート、或いは、前記第2の移動経路において前記第2の支持テーブル上に保持された前記セラミックシートを検査するシート検査手段をさらに具備することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか一項に記載のセラミック積層体の製造装置。
【請求項9】
前記シート検査手段は、前記第1の支持テーブルから前記セラミックシートが移載される位置若しくは前記第2の支持テーブルへ前記セラミックシートが移載される位置において前記セラミックシートを検査することを特徴とする請求項8に記載のセラミック積層体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−171048(P2010−171048A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9751(P2009−9751)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(599100176)TEEM株式会社 (2)
【Fターム(参考)】