説明

セラミック顆粒粉末の調湿方法

【課題】セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を連続的に、効率よく調整することが可能なセラミック顆粒粉末の調湿方法を提供する。
【解決手段】回転盤3上にセラミック顆粒粉末7を連続的に定量供給し、回転盤3の回転による遠心力により、セラミック顆粒粉末7を移動させつつ、回転盤3の上方から水を噴霧して、セラミック顆粒粉末を水分を付与することにより、前記セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整する。
また、回転盤上に定量供給されるセラミック顆粒粉末の供給量を変化させることにより、セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック顆粒粉末の調湿方法に関し、詳しくは、セラミック顆粒粉末に水を噴霧して加湿することによりセラミック顆粒粉末に含まれる水分を調整する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェライトコアは、ノイズ対策部品を構成する主要な部材として広く使用されている。
このフェライトコアは、通常、Fe23、ZnO、NiO、CuOなどの原料を混合、仮焼した仮焼粉末に、水およびバインダー、可塑剤、分散剤などを加えて、湿式で粉砕したスラリーをスプレー乾燥して作製したスプレー粉末を、所定の形状に成型した後、焼成することにより製造される。
【0003】
この製造工程で、スプレー粉末に含まれる水分量はフェライトコアの成型性に大きな影響を及ぼす。水分量が少ないと成型圧力が高くなり、成型体にヒビが入る原因になるなどの問題を引き起こす。逆に、水分量が多いと金型との離型性が悪くなる。
【0004】
したがって、スプレー粉末の水分量を適切な範囲に調整することは、重要な工程であり、水分調整を効率よく行うことが可能な調湿方法が求められている。
【0005】
このような観点から、図3に示すように、液体成分からなる霧と固体成分からなる固形物とを混合室41の内部に導入し、固形物に液体成分を含有させるために、(イ)遮蔽板12を備えた霧化容器10内で液体粒子を整流して霧を生成するステップと、(ロ)霧を導管21、導管22を介し前記混合室41に導入するステップと、(ハ)前記混合室41の内部で固形物を移動しながら霧と固形物を接触させるステップを順次実行することにより、固形物に液体成分を含有させ、セラミック微粉末や顆粒等の含有水分を調整する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−327898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の方法の場合、水分調整がバッチ式となるため、原料を入れ替えるなどの手間が必要になり、効率が悪いという問題点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するものであり、セラミック顆粒粉末に含まれる水分を連続的に、効率よく調整することが可能な、セラミック顆粒粉末の調湿方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のセラミック顆粒粉末の調湿方法は、
回転盤上にセラミック顆粒粉末を連続的に定量供給し、前記回転盤の回転による遠心力により、前記セラミック顆粒粉末を移動させつつ、
前記回転盤の上方から前記回転盤上の前記セラミック顆粒粉末に水を噴霧することにより、前記セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整すること
を特徴としている。
【0010】
なお、「前記セラミック顆粒粉末に水を噴霧する」方法としては、例えば、
(a)ノズルから水を噴出させてミスト化して噴霧する方法、
(b)気体と水とを同時に噴出させる2流体ノズルから、空気などの気体と水とを同時に噴出させ、水を微細なミスト状にして噴き付ける方法
などがある。
【0011】
なお、(b)の方法の場合、通常は、ミスト状の水の一部が蒸発して水蒸気とミストを含む流体が噴き付けられることになる。また、場合によっては、ミスト状の水の大部分または全部が蒸発して水蒸気と少量のミストを含む気体、あるいはミストが蒸発した水蒸気を含む、ミストを含まない湿度の高い気体が噴き付けられることになる。しかしその場合も、セラミック顆粒粉末の調湿には有効であり、本発明がそのような場合を排除するものでないことはいうまでもない。
【0012】
なお、シャワー状などの極めて大きい液滴の状態で水をセラミック顆粒粉末に噴き付けることは、セラミック顆粒粉末に均一に水分を含有させることができないため好ましくない。
【0013】
本発明は種々のセラミック顆粒粉末の水分量を調整する場合に適用することが可能であるが、特に、セラミック顆粒粉末が、セラミック粉末とバインダーを含むスラリーをスプレー乾燥した粉末である場合に好適に適用することができる。
【0014】
また、本発明においては、回転盤上に定量供給されるセラミック顆粒粉末の供給量を変化させることにより、前記セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整することが望ましい。
ただし、セラミック顆粒粉末の供給量を変化させる以外の方法、例えば、噴霧する空気と水との混合流体中の水分量を調整する方法などによっても、セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明のセラミック顆粒粉末の調湿方法は、回転盤上にセラミック顆粒粉末を連続的に定量供給して、回転盤の回転による遠心力により、セラミック顆粒粉末を移動させつつ、上方から水を噴霧してセラミック顆粒粉末に水分を付与するようにしているので、セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を連続的に、効率よく調整することが可能になる。
【0016】
前記セラミック顆粒粉末が、セラミック粉末とバインダーを含むスラリーをスプレー乾燥した粉末である場合、セラミック顆粒粉末が回転盤上を円滑に転動するため、より確実にセラミック顆粒粉末に含まれる水分量を連続的に、効率よく調整することができる。
【0017】
また、回転盤上に定量供給されるセラミック顆粒粉末の供給量を変化させることにより、容易にセラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整することが可能になり、本発明をより実効あらしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例においてセラミック顆粒粉末の調湿を行うのに用いた調湿装置の要部構成を示す図である。
【図2】図1の調湿装置を用いてセラミック顆粒粉末の調湿を行う方法を説明する図である。
【図3】従来の固液の混合方法に適用される固液混合装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施例を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0020】
セラミック粉末としてNi−Zn−Cu系フェライト粉末を用意するとともに、バインダーとしてポリビニルアルコール、および所定の分散剤、可塑剤を用意した。
【0021】
それから、上記セラミック粉末とバインダーとを純水に分散させてスラリーとし、このスラリーをスプレー乾燥機で、乾燥、造粒して、セラミック粉末(フェライト粉末)とバインダーを含むセラミック顆粒粉末を作製した。
【0022】
作製したセラミック顆粒粉末に含まれる水分量を測定したところ、セラミック顆粒粉末に占める水分量は0.2重量%であった。
【0023】
次に、このセラミックス顆粒粉末に含まれる水分量を、図1に要部構成を示す調湿装置を用いて調整した。
図1の調湿装置は、円筒状の顆粒粉末の導入通路1、導入通路1の下方に設けられた円錐状の顆粒粉末の受け部2を備えている。さらに、受け部2の下方には、主面が略水平になるように、円板状の回転盤3が配設されており、この回転盤3は中央の回転軸4によって、水平方向に所定の速度で回転させることができるように構成されている。
【0024】
また、円錐状の顆粒粉末の受け部2を貫通するように、水および空気の導入通路5が設けられており、この導入通路5から供給された水と空気が2流体ノズル6から噴き出されることにより水が霧化され、空気とともに下方の回転盤3上のセラミック顆粒粉末7に噴霧されるように構成されている。
なお、この実施例で用いた調湿装置は、図1に示す主要な機構部が、円筒状の容器(図示せず)に収納された構造を有している。
【0025】
次に、この調湿装置を用いてセラミック顆粒粉末の調湿を行う場合の動作について、図2を参照しつつ説明する。
まず、上述のようにして作製したフェライト粉末とバインダーを含むセラミック顆粒粉末7が、円筒状の導入通路1の上方から、一定の供給速度で連続的に投入される。そして、投入されたセラミック顆粒粉末7は、導入通路1を落下して、円錐状の受け部2に衝突し、その傾斜に沿って下方の回転盤3上に供給される。
【0026】
回転盤3は中央の回転軸4によって一定の回転速度で回転しており、回転盤3上に供給されたセラミック顆粒粉末7は遠心力によって、回転盤3の周辺方向に移動する。
【0027】
そして、セラミック顆粒粉末7が、回転盤3の周辺方向に移動して行く過程で、2流体ノズル6から下方に噴霧される空気と水の混合流体が、セラミック顆粒粉末7に噴き付けられる。
このとき、通常は、空気と水の混合流体に含まれる水分の割合と、セラミック顆粒粉末7に含まれる水分との関係で、空気と水の混合流体側からセラミック顆粒粉末7に水分が移行し、セラミック顆粒粉末7中の水分が増加する方向の水分量の調整が行われる。
【0028】
この実施例では、セラミック顆粒粉末7の供給量(供給速度)を、以下の条件1〜5の条件で変化させて水分調整(加湿)処理を行った。
条件1 : 1.8kg/分
条件2 : 2.1kg/分
条件3 : 2.4kg/分
条件4 : 2.7kg/分
条件5 : 3.0kg/分
なお、各条件において、水分の噴霧量は10ml/分、回転盤3の回転数は60〜120回転/分の範囲で一定とした。
【0029】
そして、上記の各条件1〜5で、セラミック顆粒粉末7の供給量がそれぞれ30kgに達するまで連続的にセラミック顆粒粉末7供給し、得られたセラミック顆粒粉末7について水分量(水分含有率)を測定した。
セラミック顆粒粉末の供給量(供給速度)と、水分調整処理を行う前と後のセラミック顆粒粉末の水分量(水分含有率)の関係を表1に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
表1に示した結果から、セラミック顆粒粉末の供給量(供給速度)を適宜調整することにより、セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を容易に調整して、所望の水分量(水分含有率)のセラミック顆粒粉末を得ることが可能になることがわかる。
【0032】
なお、セラミック顆粒粉末に含有される水分量の好ましい範囲は、成型体の形状などにより変化するが、通常は、0.3〜0.5重量%程度である。上記の例では、条件2,3,4の場合において、水分量が0.3〜0.5重量%のセラミック顆粒粉末が得られることがわかる。
【0033】
上述のような水分量に調整することにより、成型性に優れたセラミック顆粒粉末を得ることができる。そして、そのようなセラミック顆粒粉末を用いることにより、フェライトコアのようなセラミック成型体を形状精度よく作製することが可能になる。
【0034】
なお、この実施例では、セラミック顆粒粉末の供給量(供給速度)を変化させることにより、セラミック顆粒粉末の水分量を調整するようにしているが、例えば、噴霧する空気と水との混合流体中の水分量を調整することによっても、セラミック顆粒粉末の水分量を調整することが可能である。
【0035】
また、上記実施例では、水分量を調整する対象であるセラミック顆粒粉末が、フェライト系セラミック粉末とバインダーを含むセラミック顆粒粉末である場合を例にとって説明したが、本発明は、他の種類のセラミック顆粒粉末の調湿を行う場合にも適用することが可能である。
【0036】
本発明はさらにその他の点においても、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の調湿方法に用いる調湿装置の回転盤の形状や構造、セラミック顆粒粉末の供給機構などの具体的な構成、調湿処理を行う際の具体的な条件などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 顆粒粉末の導入通路
2 顆粒粉末の受け部
3 回転盤
4 回転軸
5 水および空気の導入通路
6 2流体ノズル
7 セラミック顆粒粉末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転盤上にセラミック顆粒粉末を連続的に定量供給し、前記回転盤の回転による遠心力により、前記セラミック顆粒粉末を移動させつつ、
前記回転盤の上方から前記回転盤上の前記セラミック顆粒粉末に水を噴霧することにより、前記セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整すること
を特徴とするセラミック顆粒粉末の調湿方法。
【請求項2】
前記セラミック顆粒粉末が、セラミック粉末とバインダーを含むスラリーをスプレー乾燥した粉末であることを特徴とする請求項1記載のセラミック顆粒粉末の調湿方法。
【請求項3】
前記回転盤上に定量供給される前記セラミック顆粒粉末の供給量を変化させることにより、前記セラミック顆粒粉末に含まれる水分量を調整することを特徴とする請求項1または2記載の調湿方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−121251(P2011−121251A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280121(P2009−280121)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】