説明

セリアゾル及びその製造方法並びに酸化第二セリウム

【課題】高温条件下における比表面積の減少が抑制された、排ガス浄化用触媒として好適に利用できる酸化第二セリウムを提供する、並びに、該酸化第二セリウムの製造に適したセリアゾル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セリア一次粒子の凝集体が分散媒中に分散してなるセリアゾルであって、
(1)凝集体は平均粒子径1〜3nmのセリア一次粒子が凝集してなり、凝集体の平均粒子径は30〜50nmであり、
(2)凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在している
ことを特徴とするセリアゾル、
セリアゾルの製造方法であって、
(1)セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成させる加水分解工程、及び
(2)別途用意したセリウム塩を前記核セリアの共存下で加水分解することにより、前記核セリアを成長させる核セリア成長工程
を含むセリアゾルの製造方法、並びに
酸化雰囲気中800℃で4時間焼成後のBET比表面積が20m2/g以上である酸化第二セリウム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリアゾル及びその製造方法並びに酸化第二セリウムに関する。
【背景技術】
【0002】
セリア微粒子は、従来、研磨剤として用いられており、近年では、排ガス浄化用触媒又は触媒担体として用いられている。
【0003】
排ガス浄化用触媒(担体も含む)として用いる場合には、特にセリアゾルを乾燥して得られる酸化第二セリウム(セリア)の特性として、1)結晶子径が小さいこと、2)比表面積が大きいこと、3)高温環境下で微粒子が焼結し難い(即ち、高温条件下において比表面積の減少が少ない)こと等が要求されている。
【0004】
ところで、セリアゾル、酸化セリウム等については、従来、下記のような開示がある。
【0005】
特許文献1には、酸化セリウムを含有する分散性生成物の製造方法において、酸化セリウム(IV)水和物を塩の存在下において加熱し、酸化セリウム(IV)水和物中の凝集された微結晶を解体させて酸化セリウムを含有する分散性生成物を製造することが開示されている(特許請求の範囲第1項)。該分散性組成物は、個々の微結晶の大きさが5nm以下(〜5nm)であって、ほぼ10nmの該微結晶の小凝集体からなるコロイド状の大きさの粒子を含有することが記載されている(公報第5欄)。
【0006】
特許文献2には、セリウムIV塩水溶液を酸性媒体で加水分解し、得られた沈殿を分離し、場合によっては熱処理することにからなる方法によって得られたセリウムIV化合物(例えば、Ce(OH)x(NO3y・nH2O;nは0〜20)を水に懸濁させて水性ゾルを製造する方法が開示されている(請求項1、4等)。該水性ゾルを乾燥した場合、結晶化した部分では結晶子の大きさは一般に60Å未満、好ましくは30〜50Åと小さいこと及び水性ゾルの準弾性光散乱試験により求めた流体動力学的平均粒径は450〜630Åであることが記載されている(実施例等)。
【0007】
特許文献3には、酸性媒体中でセリウムIV化合物の水性コロイド分散体(例えば、Ce(M)z(OH)x(NO3y・pCeO2・nH2O;Mはアルカリ金属原子又は第四アンモニウム塩基を示し、zは0〜0.2、yは0〜1.5、xは4−y+xを満足し、pは0〜2.0)の存在下にセリウムIV塩水溶液を加水分解し、得られた沈澱を分離し、次いでこれを300℃〜1000℃の温度で焼成工程に付すことを特徴とする、調節された粒度を有する酸化第二セリウムの製造方法が開示されている(請求項1、6等)。該水性ゾルのコロイド粒子の平均粒子径は220〜600Åであることが記載されている(実施例等)。
【0008】
しかしながら、特許文献1〜3に記載されたゾル又はコロイドを用いて(例えば、乾燥等して)得られる酸化第二セリウムは、排ガス浄化用触媒に求められる上記特性を十分に満足できない。
【0009】
他方、特許文献4には、a)セリウム塩の溶液と塩基を要すれば酸化剤の存在下で反応させることによって水酸化第二セリウムを製造し、その際塩基の割合は反応媒質のpHが7以上であるような割合とし、次いで得られた沈殿を分離し、要すればそれを洗浄し、b)水酸化第二セリウムを水又は分解性塩基の水溶液に懸濁させ、c)これを閉鎖容器内で反応媒質の臨界温度及び臨界圧力よりもそれぞれ低い温度及び圧力まで加熱し、d)反応混合物を冷却し、大気圧まで戻し、e)そのように処理された水酸化第二セリウムを分離し、f)次いでそれを焼成することにより、800〜900℃の間の温度における2時間の焼成に対して少なくとも15m2/gの比表面積を示す酸化第二セリウムの製造方法が開示されている(公報第3頁左欄)。特許文献4記載の酸化第二セリウムは、特許文献1〜3に基づく酸化第二セリウムに比して、排ガス浄化用触媒に求められる特性を有するが、高温条件下における比表面積の減少抑制(比表面積の耐熱性)の点で、さらなる改良の余地がある。
【特許文献1】特公平2−49249号公報
【特許文献2】特公平8−11690号公報
【特許文献3】特許第2537662号公報
【特許文献4】特公平8−18833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高温条件下における比表面積の減少が抑制された、排ガス浄化用触媒として好適に利用できる酸化第二セリウムを提供すること、並びに、該酸化第二セリウムの製造に適したセリアゾル及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、セリアゾルの製造に際し、セリウム塩の加水分解を少なくとも2回行い、2回目以降の加水分解時に既に得られた核セリアを共存させることが、上記目的の達成に寄与することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記のセリアゾル及びその製造方法並びに酸化第二セリウムに係る。
1. セリア一次粒子の凝集体が分散媒中に分散してなるセリアゾルであって、
(1)凝集体は平均粒子径1〜3nmのセリア一次粒子が凝集してなり、凝集体の平均粒子径は30〜50nmであり、
(2)凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在していることを特徴とするセリアゾル。
2. 凝集体が単分散している上記項1記載のセリアゾル。
3. 分散媒が水である上記項1又は2記載のセリアゾル。
4. セリアゾルの製造方法であって、
(1)セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成させる加水分解工程、及び
(2)別途用意したセリウム塩を前記核セリアの共存下で加水分解することにより、前記核セリアを成長させる核セリア成長工程
を含むことを特徴とするセリアゾルの製造方法。
5. 成長させた核セリアからセリアゾルが得られるまで、前記核セリア成長工程をさらに1回以上繰り返す上記項4記載の製造方法。
6. セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成後、該核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解することにより核セリアを成長させ、次いで成長した核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解するセリアゾルの製造方法。
7. 加水分解に供するセリウム塩溶液中のセリウム濃度であって、核セリアの共存を考慮しない濃度が、いずれの加水分解においてもCeO2濃度に換算して2〜10重量%である上記項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
8. 酸化雰囲気中800℃で4時間焼成後のBET比表面積が20m2/g以上である酸化第二セリウム。
9. 排ガス浄化用触媒である上記項8記載の酸化第二セリウム。

以下、本発明のセリアゾル及びその製造方法並びに酸化第二セリウムについて詳細に説明する。
【0013】
なお、本明細書における比表面積は、窒素吸着により決定されるBET比表面積を言い、平均粒子径とは粒子径分布の累積頻度が50%となる粒子径を言う。
【0014】
セリアゾル
本発明のセリアゾルは、セリア一次粒子の凝集体が分散媒中に分散してなり、
(1)凝集体は平均粒子径1〜3nmのセリア一次粒子が凝集してなり、凝集体の平均粒子径は30〜50nmであり、
(2)凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在している
ことを特徴とする。
【0015】
凝集体中のセリア一次粒子の平均粒子径は1〜3nmの範囲内であればよい。
【0016】
セリア一次粒子が凝集してなる凝集体の平均粒子径は30〜50nm、好ましくは35〜45nmである。
【0017】
図1には、本発明のセリアゾルの透過型電子顕微鏡(TEM)観察像の一例が示されている。本発明のセリアゾルは、図1に示されるように、凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在している。凝集体自体の形状は、略球形であることが好ましい。かかる凝集体の外観及び凝集体中のセリア一次粒子の配置形状は、これまでにない新規なものである。
【0018】
本発明のセリアゾルは、凝集体が分散媒中で分散してなる。分散態様としては単分散が好ましい。図1のTEM像では、凝集体が単分散していることが分かる。
【0019】
セリアゾルに含まれる分散媒は特に限定されないが、通常は水でよい。
【0020】
セリアゾル中の凝集体の割合は特に限定されないが、CeO2濃度が1〜15重量%であれば好ましい。かかる濃度のセリアゾルは、後記する酸化第二セリウムの製造原料として有用である。
【0021】
セリアゾルの製造方法
本発明のセリアゾルの製造方法は特に限定されないが、例えば、
(1)セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成させる加水分解工程、及び
(2)別途用意したセリウム塩を前記核セリアの共存下で加水分解することにより、前記核セリアを成長させる核セリア成長工程
を含むセリアゾルの製造方法(以下「本発明の製造方法」と称する)が好ましい。
【0022】
核セリアは、本発明のセリアゾルを構成する凝集体の前駆体であり、セリア一次粒子又は該一次粒子が凝集したものであって未だ上記所定の凝集体の大きさまで成長していないものを意味する。2回目以降の加水分解により、該前駆体(核セリア)表面にセリア一次粒子がさらに凝集することにより、最終的に所定の凝集体を含むセリアゾルが得られる。なお、1回目、2回目…、と称している上記加水分解は、いずれも別途用意したセリウム塩の新しい加水分解操作である。
【0023】
本発明の製造方法では、2回目以降の加水分解において、加水分解により新たに生じたセリア一次粒子が共存する核セリアに凝集していき、セリア一次粒子凝集体を形成する。2回目の加水分解により所定のセリアゾルが得られる場合には、さらなる加水分解は不要である。2回目の加水分解により未だ所定のセリアゾルが得られていない場合には、2回目の加水分解により得られたセリア微粒子(一次粒子又は凝集体)を3回目の加水分解時に共存させる核セリアとする。即ち、本発明の製造方法において、成長させた核セリアから目的のセリアゾルが得られるまで、核セリア成長工程をさらに1回以上繰り返せばよい。
【0024】
セリウム塩としては、加水分解により容易にセリア微粒子を生成するものであれば特に限定されないが、加水分解が容易に起こる点からは、硝酸第二セリウムが好ましい。
【0025】
加水分解に供するセリウム塩溶液(以下「水溶液」として説明する)のセリウム濃度は、CeO2に換算して2〜10重量%、特に4〜8重量%が好ましい。セリウム濃度は、純水希釈により容易に調整できる。セリウム濃度が低濃度では経済的ではなく、高濃度では未反応のセリウム塩が多くなるため収率が低下する。
【0026】
セリウム塩の加水分解は、70℃〜セリウム塩水溶液の沸点温度、好ましくはセリウム塩水溶液の沸点温度において1〜96時間、好ましくは6〜24時間保持することにより行える。加水分解反応は、高温ほど速く進行するので、高温ほど高効率且つ高収率となり、逆に低温度では非効率的である。時間は短いと収率が低下し、長いと非効率である。
【0027】
2回目以降の加水分解において、反応系に共存させる核セリアの量は特に限定されないが、セリウム塩の加水分解により新たに生じる加水分解生成物の重量の50%以上が好ましく、80%以上がより好ましく、100%以上が特に好ましい。共存量が少ないと、核セリアと加水分解により新たに生じた生成物(セリア一次粒子)との凝集が起こり難くなり、凝集体の平均粒子径及び単分散化の制御が困難となる。
【0028】
上記したセリウム塩溶液のセリウム濃度(但し、2回目以降の加水分解では、共存する核セリアの存在は考慮しない)、加水分解条件等は、2回目以降の加水分解でも同様とすることが好ましい。
【0029】
加水分解の回数は、2回以上であって所定のセリアゾルが得られる回数であれば特に限定されないが、上記セリウム塩溶液のセリウム濃度及び加水分解条件を採用する場合には、断定的ではないが、3回目の加水分解終了時に所定のセリアゾルが得られる場合が多い。
【0030】
3回目の加水分解終了時に所定のセリアゾルが得られる場合には、セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成後、該核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解することにより核セリアを成長させ、次いで成長した核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解するという手順となる。即ち、1回目の加水分解により核セリアを生成し、2回目の加水分解により該核セリアを成長させ、3回目の加水分解により目的のセリアゾルを得るものである。
【0031】
このような3回の加水分解を含む手順をより具体的に示すと、次のようになる。
【0032】
即ち、1回目の加水分解が終われば静置する。それにより沈殿物が生じる。この沈殿物はセリア微粒子であり、2回目の加水分解時に核セリアとして共存させる。沈殿物を加水分解せずに残ったセリウム塩と分離する。分離方法は特に限定されないが、通常はデカンテーション後に濾過することにより好適に分離できる。
【0033】
2回目の加水分解に供するセリウム塩溶液を用意し、溶液中に1回目の加水分解で得られた核セリアを共存させて加水分解を行う。2回目の加水分解が終われば静置する。それにより加水分解生成物が沈殿する。この沈殿物は1回目の沈殿物と同様に核セリアとなるが、1回目で得られた核セリアに2回目の加水分解により新たに生じたセリア一次粒子が凝集してなるため、核セリアの大きさは1回目よりも大きくなっている。
【0034】
2回目の加水分解で得られた沈殿物(核セリア)を共存させて3回目の加水分解を行い、所定のセリアゾルを得る。得られた本発明のセリアゾルは、凝集体の外観がぶどうの房状(好ましくは略球形をしたぶどうの房状)で且つ一次粒子がぶどうの粒状に存在している。必要に応じて、限外濾過することにより、セリアゾルの不純物を除去するとともにゾル濃度を上げることができる。なお、ここでは3回目の加水分解により所定のセリアゾルが得られる手順を示したが、加水分解条件等により、3回目で所定のセリアゾルが得られない場合には、4回目以降の加水分解を同様の手順により繰り返し行えばよい。
【0035】
本発明のセリアゾルは、加水分解の繰り返しにより、当初は沈殿物として得られるが、撹拌すると速やかに解膠してセリアゾルとなる。沈殿物(セリア)自体を分離して取り出した場合にも、該沈殿物を純水でCeO2濃度が約1重量%となるように希釈すると、速やかに解膠してセリアゾルとなる。
【0036】
本発明の製造方法は、加水分解により生じるセリア一次粒子どうしの凝集のみならず、反応系に共存させた核セリアへのセリア一次粒子の凝集が行われるため、2回以上の加水分解を経て核セリアが一次粒子凝集体に変化し、効率的に本発明のセリアゾルが得られる。このような製造方法が本発明のセリアゾルを効率的に製造できるのは、加水分解で生じたセリア一次粒子どうしが凝集するよりも、既に反応系に共存する核セリアに凝集する方がエネルギー的に有利であり、1回目の加水分解で得られた核セリアに2回目以降の加水分解において選択的に一次粒子が凝集・成長していくことが理由と考えられている。
【0037】
酸化第二セリウム
本発明の酸化第二セリウムは、構造の詳細は不明であるが、高温条件下における比表面積の減少が抑制されている。即ち、比表面積の耐熱性が高い。具体的には、酸化雰囲気中800℃で4時間焼成後のBET比表面積が20m2/g以上、好ましくは25m2/g以上である。このような比表面積の耐熱性が高い酸化第二セリウムは、排ガス浄化用触媒として好適に利用できる。
【0038】
本発明の酸化第二セリウムは、本発明のセリアゾルから好適に製造できる。製造過程の一例を次に示す。なお、以下でも分散媒は水として説明する。
【0039】
先ず、本発明のセリアゾルをCeO2濃度が1〜15重量%になるように純水で希釈後、希釈したセリアゾルをアンモニア水中に滴下する。アンモニア水の濃度としては、通常1〜5重量%とする。
【0040】
アンモニア水の量は特に限定されないが、セリアゾル中の酸成分を中和するとともにセリアを水酸化セリウムとするのに要する量があればよく、通常はNH3/Ce(モル比)が3以上となるように設定するのが好ましい。
【0041】
セリアゾルを滴下することにより、水酸化セリウムの沈殿が生じる。水酸化セリウムの沈殿を分離し、十分な量の純水で沈殿を洗浄する。沈殿の分離方法は特に限定されないが、前記したデカンテーション等が好ましい。
【0042】
洗浄後の水酸化セリウムを300〜400℃で1〜10時間、好ましくは2〜4時間焼成することにより本発明の酸化第二セリウムが得られる。なお、焼成雰囲気は特に限定されないが、大気中(酸化雰囲気)でよい。
【0043】
本発明の酸化第二セリウムが高い比表面積の耐熱性を有する理由の詳細は不明であるが、本発明のセリアゾルが、凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在するという特異な形状を有することに由来して、酸化第二セリウムにおいても、高温条件下で焼結が起こり難いか又は焼結が起こっても焼結の接点が小さい(失われる表面積が小さい)ことが理由と考えられる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の酸化第二セリウムは、比表面積の耐熱性が高い。具体的には、酸化雰囲気中800℃で4時間焼成後のBET比表面積が20m2/g以上であり、従来品よりも高い。このような本発明の酸化第二セリウムは、排ガス浄化用触媒として好適である。
【0045】
本発明のセリアゾルに含まれるセリアの凝集体はこれまでにない特異な形状を有しており、本発明の酸化第二セリウムの原料として有用である。本発明のセリアゾルは本発明のセリアゾル製造方法により好適に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0047】
実施例1
硝酸第二セリウム含有水溶液(CeをCeO2として120g含有、CeO2濃度6重量%;pH≦1)2000gを還流下で攪拌しながら100℃で24時間保持した。その後、一昼夜20〜25℃の雰囲気温度で静置した後、上澄みをデカンテーションで除去して沈殿物(セリアゾル前駆体、以下同じ)を残し、そこへ硝酸第二セリウムと純水を加えて2000g(該沈殿物の存在を考慮せず、CeをCeO2として120g含有、CeO2濃度6重量%、pH≦1)とした。
【0048】
この沈殿物を共存させた硝酸第二セリウム含有水溶液を、再度、還流下で攪拌しながら100℃で24時間保持した。その後、一昼夜20〜25℃の雰囲気温度で静置した後、上澄みをデカンテーションで除去して沈殿物を残し、そこへ硝酸第二セリウムと純水を加えて2000g(該沈殿物の存在を考慮せず、CeをCeO2として120g含有、CeO2濃度6重量%、pH≦1)とした。
【0049】
この沈殿物を共存させた硝酸第二セリウム含有水溶液を、再度、還流下で攪拌しながら100℃で24時間保持した。その後、一昼夜20〜25℃の雰囲気温度で静置した後、上澄みをデカンテーションで除去し、濾過を行った。得られた沈殿物188g(wet)に純水を533ml加えることにより、セリアゾルを得た。
【0050】
該セリアゾルの透過型電子顕微鏡(TEM)像を図1に示す。図1より、コロイド粒子(凝集体)は平均粒子径1〜3nmのセリア一次粒子が凝集してなる平均粒子径30〜50nmの凝集体であり、凝集体の表面部分には一次粒子がぶどうの粒状に存在し、凝集体は単分散していることが分かる。図3に、コロイド粒子の粒度分布を示す。図3より粒度分布が20〜70nmで平均粒子径が40nmであることが判る。
【0051】
比較例1
硝酸第二セリウム含有水溶液(CeをCeO2として120g含有、CeO2濃度6重量%;pH≦1)2000gを還流下で攪拌しながら100℃で24時間保持した。その後、一昼夜20〜25℃の雰囲気温度で静置した後、上澄みをデカンテーションで除去して沈殿物の濾過を行った。得られた沈殿物85g(wet)に純水を240ml加えることにより、セリアゾルを得た。
【0052】
該セリアゾルの透過型電子顕微鏡(TEM)像を図2に示す。図2より、コロイド粒子の形状はばらばらであり、単分散していないことが判る。また、図4にコロイド粒子の粒度分布を示す。図4より粒度分布が8〜12nmで平均粒子径が10nmであることが判る。
【0053】
実施例2
実施例1で得られた最終沈殿物(wet)90gを純水310mlで希釈しCeO2濃度を5重量%に調整した。調整されたセリアゾル(CeO2として20g含有)400gを2.5%アンモニア水500gに30分間かけて徐々に滴下し、水酸化セリウムを得た。
【0054】
次いで、水酸化セリウムをろ過し、1Lの純水で洗浄して水酸化物のケーキを得た。これを大気中350℃で3時間焼成し酸化第二セリウムを得た。
【0055】
この酸化第二セリウムを大気中800℃で4時間焼成し、BET比表面積を測定したところ、28m2/gであった。
【0056】
比較例2
比較例1で得られた沈殿物120g(wet)を純水280mlで希釈してCeO2濃度5重量%に調整した。調整されたセリアゾル(CeO2として20g含有)400gを2.5%アンモニア水500gに30分間かけて徐々に滴下し、水酸化セリウムを得た。
【0057】
次いで、水酸化セリウムをろ過し、1Lの純水で洗浄して水酸化物のケーキを得た。これを大気中350℃で3時間焼成し酸化第二セリウムを得た。
【0058】
この酸化第二セリウムを大気中800℃で4時間焼成し、BET比表面積を測定したところ、9m2/gであった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】実施例1で製造されたセリアゾルの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。上図は倍率50万倍、下図は倍率20万倍である。
【図2】比較例1で製造されたセリアゾルの透過型電子顕微鏡(TEM)像を示す。上図は倍率50万倍、下図は倍率20万倍である。
【図3】実施例1で得られたセリアゾル中のコロイド粒子(凝集体)の粒度分布を示す。
【図4】比較例1で得られたセリアゾル中のコロイド粒子の粒度分布を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セリア一次粒子の凝集体が分散媒中に分散してなるセリアゾルであって、
(1)凝集体は平均粒子径1〜3nmのセリア一次粒子が凝集してなり、凝集体の平均粒子径は30〜50nmであり、
(2)凝集体の外観がぶどうの房状で且つセリア一次粒子がぶどうの粒状に存在していることを特徴とするセリアゾル。
【請求項2】
凝集体が単分散している請求項1記載のセリアゾル。
【請求項3】
分散媒が水である請求項1又は2記載のセリアゾル。
【請求項4】
セリアゾルの製造方法であって、
(1)セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成させる加水分解工程、及び
(2)別途用意したセリウム塩を前記核セリアの共存下で加水分解することにより、前記核セリアを成長させる核セリア成長工程
を含むことを特徴とするセリアゾルの製造方法。
【請求項5】
成長させた核セリアからセリアゾルが得られるまで、前記核セリア成長工程をさらに1回以上繰り返す請求項4記載の製造方法。
【請求項6】
セリウム塩を加水分解することにより核セリアを生成後、該核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解することにより核セリアを成長させ、次いで成長した核セリアの共存下、別途用意したセリウム塩を加水分解するセリアゾルの製造方法。
【請求項7】
加水分解に供するセリウム塩溶液中のセリウム濃度であって、核セリアの共存を考慮しない濃度が、いずれの加水分解においてもCeO2濃度に換算して2〜10重量%である請求項4〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
酸化雰囲気中800℃で4時間焼成後のBET比表面積が20m2/g以上である酸化第二セリウム。
【請求項9】
排ガス浄化用触媒である請求項8記載の酸化第二セリウム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−82994(P2006−82994A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267297(P2004−267297)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000208662)第一稀元素化学工業株式会社 (56)
【Fターム(参考)】