説明

セリアック病患者のための、グルテンを含まない、ブルーベインの(blue−veined)日用製品

【課題】 セリアック病患者に安全に適用できる培地の製造方法の提供。
【解決手段】 本発明は、ペニシリウム属、特にペニシリウム ロッケフォリティ種のグルテンフリーのスポアまたはミルデューの培地で、セリアック病患者用に作られたブルーベイニングを提供ために、第1段階では、選択した天然のグルテンフリー培地で増殖するスポアまたはミルデューの培地を調整し、ミルデュー、スポアの生物活性を完全に保護し、それにより、最適なブルーベイニングを保証し、第2段階では、前記培地の酵素処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペニシリウム(Penicillium)属、特にペニシリウム ロッケフォリティ種(penicillium roqueforti)、のグルテンフリーの(グルテンを含まない)スポア(spore)またはミルデュー(mildew)の培地で、セリアック病患者用に作られたチーズのブルーベイニング(blue-veining)に関する。
【0002】
本発明の目的は、前記のグルテンフリーの培地であって、グルテンフリーの非アレルギー性培地として使用した後に、不慮の、故意でない汚染(交差汚染)から生じた微量のグルテンが存在していれば、前記微量のグルテンを完全除去するために適切な酵素処理をも共に行う培地を生成することである。
【背景技術】
【0003】
セリアック病は、腸症、慢性、免疫介在性の炎症性疾患であって、グルテン摂取により発症する。前記グルテンとはいわゆる貯蔵蛋白質であって、穀物などに天然に含まれる。この食物アレルギーは、遺伝的要因を有する人であって、年齢に関わりなく、コムギ、スペルトコムギ(コムギの1種)、カムットおよびスペル(コムギの1種)、オオムギ、ライムギ、トリチカレ(コムギとライムギとの交配種)、および、それらの派生物に特有の蛋白質の一部を摂取すると、特異な反応を示す免疫系を有する人が冒される。ある人は、オートムギ特有の蛋白質にもアレルギーを示す。
【0004】
正式には「グルテン」という言葉は、「グリアジン」と呼ばれる、高プロリン含量を示すプロラミンと、「グルテニン」と呼ばれる、高グルタミン含量を示すグルテリンとの組み合わせである。前記プロラミンと前記グルテリンとは、上記のような穀物に含まれる単純蛋白質である。セリアック病において「グルテン」という言葉は、穀物に含まれるあらゆる蛋白質に関して頻繁に用いられ、グルテンを形成している異なる蛋白分画間で、グリアジンは、最も有害なようである。
【0005】
セリアック病には様々な症状があり、常にそれらの症状が顕在化しているわけではない。実際は、潜伏性または潜在性を有しており、臨床的に無症状で、明白な症状が無い場合や、単一症状または種々の症状を示す場合、腸および腸外に臨床的な症状を示す場合がある。
【0006】
慢性の炎症は、腸上皮内リンパ球を増加させ、陰窩を肥大化し、小腸の腸絨毛を平坦化し、消滅させる。特に、十二指腸が、結果的に栄養素の吸収不良を起こし、下痢、腹部膨張、食欲不振、体重減少、貧血、ビタミン欠乏などの症状が現れる。最も深刻な事例として近年診断されている症状としては、骨粗鬆症、生殖不能、反復性および習慣性流産、若者の身長低下、真性糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、脱毛症、大脳のカルシウム沈着、そして重篤な腸のリンパ腫が挙げられる。セリアック病患者は、少量のグルテン摂取でも、免疫系が特異な反応を示すことがある。例えば、トランスグルタミナーゼは、腸内の粘液組織に存在する酵素であって、グリアジンと結合し、アミド分解によって、T細胞(免疫系の細胞であって、蛋白抗原との免疫反応の全てを仲介することができる細胞)を活性化できる分子に転換し、最終的に、トランスグルタミナーゼ抗体であるIgGおよびIgA、また抗エンドミシアル抗体であるIgAの免疫グロブリンをつくる。まず、腸上皮内の活性化T細胞が増加し、一方で、疾患の進行と共に、固有ラミナの溶浸プラズマ細胞とリンパ球とが増加し、絨毛を短くする要因となるメタロプロティナーゼを生成する。その結果、腸の粘膜にダメージを与える。
【0007】
セリアック病の発生防止法や、その治療法は、現在までに確立していなかったため、グルテン除去の食事療法を生涯にわたり厳格に続けることのみが、セリアック病患者の完全な健康を維持する方法であった。セリアック病患者は、微量の粉末であっても、危険な穀物類は避けなければならない。これは、グルテンを摂取すると、少量であっても、自己免疫反応を制御することができないためである。腸を冒すレベルまで中毒作用が誘引され得るグルテンの摂取量は、未だ明らかになっていない。「微量」という言葉は、量に関する限り、セリアック患者の治療、および食品の立法案に関して、基本的かつ実用的な重要性を有している。なぜなら「微量」は、セリアック病患者の食事療法に適した、生産物中の許容グルテンの最大値(境界値)に関連するからである。当業者は皆、1日、100mgのグリアジンであって、200mgのグルテン、すなわち約3gのパンの摂取は、大抵のセリアック病患者にとって、腸上皮内リンパ球の増加、すなわち、持続性の炎症性腸疾患の早期徴候を引き起こすのに十分であることを認めている。
【0008】
最小限度に関して、現在までに行われたわずかな科学業績によると、1日、10mgのグリアジン(20ppmのグルテンと等しい)で、痛みを感じるほど腸粘膜を冒されることは無かったが、少数のセリアック病患者には、胃腸に症状が現れた。
【0009】
国際法の段階においては、古い規格である「グルテンフリー食品におけるコーデックス規格」は未だ有効で、前記規格は、食事療法に用いる生産物中のグルテン最大含有量を、乾燥食品(コムギデンプンなど)100gあたり0.05窒素、すなわち、約500ppmのグルテンと表記している。しかしながら、前述のガイドラインの正しく、且つ、適切な見直しが現在行われている。この見直しは、天然のグルテンフリー原料からなるグルテンフリー食品が、20ppmより多くのグルテンを含むことはないが、一方で、グルテンを含む穀物からなるグルテンフリー食品は、最大200ppmのグルテンを含むことから行われているようだ。
【0010】
フランス、英国、オランダは、上記ガイドラインの見直しの待機段階であるが、グルテンフリー生産物の最大値は200ppmであると考えている。イタリアでは、下記のような法律(政令 n.109/1992)が施行される予定である。食品の組成、あるいは、食品となる1種類以上の原料(調味料、添加物、あるいは、補強剤(co-adjuvants))に、グルテンを含む穀物、あるいは、それらから派生する物質が含まれている場合、および/または、製造工程からグルテンの量を分析し、最終製品に20ppmよりも多く含まれると判断された場合には、ラベルに記載された原材料の一覧表の下に、はっきりと見えるように「グルテン含有食品」と表示しなければならない。
【0011】
したがって、セリアック病患者に対し、食品がグルテンフリーであることを示す正確な情報を確実に提供するために、チーズに関しても同様、微量のグルテンが含まれることをラベルに表示することは必須となる。
【0012】
ブルーチーズ製造に特化した日用製品業界は、この新たに調整すべき状況により潜在的な消費者が減少し、商業上、深刻なダメージを受けている。
【0013】
食事からグルテンを完全除去することは、しかしながら、容易では無い。これは、本来グルテンフリーの穀物およびその派生物(デンプン類、粉類、デンプン類の粉など)に、工業的な製粉段階ですでに、交差汚染が起こり得るからである。
【0014】
上記のように交差汚染した製品はその後、異なる原産地および異なる特質で、多様な生産技術に基づいた、原料と、添加物と、補強剤(co-adjuvants)とからなる合成食品の生産に利用される。最近の調査によると、報告された原材料に基づいた「理論上」グルテンフリーである製品のうちの6%は、実際には、100gの最終製品に対して30mgのグリアジン、すなわち、600ppmのグルテンを含んでいる。グルテン不純物を全て除去するためには、各々の市販の食料品について、使用された全ての原材料および製造方法のみでなく、各々の原材料の全ての製造過程をも考慮する必要がある。
【0015】
「危険食品」に、セリアック病患者のイタリア協会も指摘している「かび臭い皮のついたブルーチーズ」がさらに付け加えられた。これは、イタリアで実施された実験調査の結果によると、ある「かび臭い皮のついたブルーチーズ」は、分裂菌網(ミルデューやイースト)の増殖培地から生成されるグルテンを含む可能性があるからである。前記分裂菌網は、ブルーチーズ(ペニシリウム ロッケフォリティ種(Penicillium roqueforti))の典型的なブルーベイニング(blue-veining)や、ブリー、カマンベール、キャレ・ドゥ・レスト、トム・ブランシュ(ペニシリウム カンジダ(Penicillium candidum))などのチーズの白いフェルト状被覆物を得るためのスターターとして用いられ、および/または、その他多くのチーズ(Kluyveromyce属、Debaromyces属)の精製に用いられる。
【0016】
施行される予定の規則は、食品中にグルテンが含まれていないことを伝える正確な情報を要するセリアック病患者の要望を満足させるために定められ、前記規則によると、前記チーズが微量のグルテンを含む場合、または、生産技術上グルテンを含む原材料、または、補強剤(co-adjuvants)から生産されている場合も、ラベルにグルテンの存在を表示することは義務となる。
【0017】
したがって「グルテンフリー」で、ブルーベイニング(blue-veined)を有する日用製品の供給に対する強い要望が存在している。
【0018】
さらに、ペニシリン培地の製造過程において、グルテンを含む原材料、または、グルテンを含む物質を使用することは考慮されていない。しかしながら、意図的ではなく偶発的な交差汚染により、ペニシリン培養の製造過程に使用される組成物が微量のグルテンをもたらす可能性はある。
【0019】
したがって、全ての部門の生産者は、今までのところ、分裂菌網(ミルデューやイースト)の増殖に適した培地の製造方法の提供に対して、強い要望が存在することを認めている。前記分裂菌網は、チーズ類のブルーベイニング(blue-veining)を得るためのスターターとして用いられ、パンに基づいていない基質を利用でき、同時に、交差汚染や、意図的ではなく偶発的な汚染が起きたときは、それを軽減することができる。
【0020】
特に、チーズ類のブルーベイニング(blue-veining)を得るためのスターターとして用いられ、グルテンフリーに関して、2重の安全水準を提供する分裂菌網(ミルデューやイースト)の増殖用培地の製造方法を提供する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、従来の限度を超える培地であって、セリアック病患者に安全に適用できる前記培地の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
以下の詳細な説明から明らかとなる、上記およびその他の目的は、本出願人によって達成され、それにより、培地のグルテン除去に関する2重の安全水準を含む、ある方法論が向上した。
【0023】
特に、本出願人は、一つの方法論を確立した。その方法論の第1段階では、選択した天然のグルテンフリー培地で増殖するスポア(胞子)またはミルデュー(カビ)の培地を調整し、ミルデュー、スポアの生物活性を完全に保護し、それにより、最適なブルーベイニング(blue-veining)が保証できる。次の第2段階では、前記培地の酵素処理を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
ペニシリウム ロッケフォリティ種(Penicillium roqueforti)のミルデューは、好ましくは、本出願人が寄託したグループから選択する。前記グループは、c/o the Collection center DSMZ (Deutsche Sammlung von Mikroorganism und Zellkulturen GmbH; ブラウンシュヴァイク(Braunsweig)、ドイツ)に、2005年12月21日に寄託した本願に係るグループで、前記センターが、下記の表1に記載された受理番号により識別した微生物からなる。
【表1】

上記は、本願独立請求項に記載されている。
【0025】
グルテンフリーのスポアやミルデューの培地であって、前記培地は上記グループから選択され、前記培地を少なくとも1種含む組成を有する培地の調整方法と、セリアック病患者のためのブルーベイニング(blue-veining)の日用製品を製造するために、上記培地の少なくとも1種を利用することとは、本願の目的であり、付随の本願請求項に記載の特徴を有する。
【0026】
ブルーベイニング(blue-veining)は、大抵濃い緑色の筋で、ゴルゴンゾーラ(イタリア)、ロクフォール、ブレス ブルー、ブルー・ド・ヴェルニュ、サスナージュなど(フランス)、スティルトン(イギリス)、ダナブル(デンマーク)、カブラレス(スペイン)、ブルーチーズ(アメリカ合衆国)などに代表され、ペニシリウム属(ペニシリウム ロッケフォリティ(Penicillium roqueforti)種)のミルデュー増殖により得られる。前記ペニシリウム属のミルデューは、ミルク酵素およびレンネットと共に、製造時に、自発的にミルクに加えられる。ミルデューの種類とスポアの量(amount)と製造過程とは、チーズにより変化するが、全ての種類は、凝乳酵素レンネットの種類で、最近の一般的な乳酸の性質と、水分を含み、とりわけ柔らかく、分離している凝乳酵素と、ゆっくりと連続的に水分を排除する性質とにより特徴づけられている。混合ミクロフローラ(乳酸菌、ミルデュー、多くはイースト菌)の酵素反応では、比較的短期間で、多くのタンパク質が分解されたペースト(熟成指数は、約65%)を得ることができ、前記ペーストは、ペニシリンが脂肪分に働きかけることによってなされた脂肪分解のための、様々な芳香性物質によって特徴づけられる。ミルデュー増殖に不可欠な前記分解は、乳酸酵素による酸性化と、ヘテロ発酵されたイースト菌または細菌から生成された二酸化炭素(炭酸ガス)の発生とによってなされる。
【0027】
熟成時に、異なる2つの段階で、適切な針によって、成形体の双方の面を貫通させる。前記操作は、ペーストの中に存在する分裂体(splittings)中に酸素孔を形成し、空気を取り込む目的がある。
【0028】
通気した環境でのみペニシリンスポアは増殖できる。ペニシリンスポアは、まず、穴や割れ目を充満させる菌糸が相互交流し(菌糸体)、その後、スポアを保持し、大抵濃い青緑色を呈している分生子柄を生成することにより、増殖する。
【0029】
スポアの色が、ゴルゴンゾーラおよびその他の全てのブルーチーズの典型的な外観を特徴づけていて、同時に、ミルデューのタンパク質分解および脂肪分解が、チーズの熟成を促し、独特の知覚的特徴を形成している。
【0030】
製造過程で用いるペニシリウム ロッケフォリティ種(Penicillium roqueforti)の、様々な種類のスポア培地は、専門の製造所で、当業者に知られた方法により、液体あるいは凍結乾燥した形態に作られる。
【0031】
実際には、ペニシリン属のスポア(ワーキングセルバンクの試験管より)を適切な寒天培地(例えば、ポテト寒天、ポテトデキストロース寒天、麦芽エキス寒天など)に播種し、5〜10日間、22〜28℃で培養し、その数を増加させるために、中間培地を準備する。
【0032】
上記培地の一つで、中間培地の増殖およびスポア形成(通常1週間)が一端終了すると、減菌ピペットで、スポアを取り、寒天培地の表面から採取する。
【0033】
特に好ましい実施形態では、前記中間培地は、上記で説明し、且つ、付随の本願独立請求項に記載したグループから選択したペニシリウム ロッケフォリティ(Penicillium roqueforti)種のスポアの増加により得ることができる。
【0034】
前記のようなスポアは、人や動植物の生息地から、得に、食料の存在する場所からは、隔離されてきた。
【0035】
前記中間培地のスポアは、適切な無菌培養液(生理溶液または自己の液体培地であって、前記寒天が無い形態)に懸濁した後、最終培地を形成するために必要な種菌を形成する。
【0036】
本出願人は、増殖培地として少なくとも、植物性由来の天然グルテンフリー培地が有用であることを発見した。
【0037】
実際には、本出願人は、増殖培地として、天然グルテンフリーの米、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオク、タピオカ、クリ、エンドウ、ソラマメ、マメ科植物の、穀物膨張状態、あるいは、穀物破裂状態(ポップコーンなど)、または、粉末状態および/または粉末の加熱済(precook)状態、からなるグループから選択した1種以上の培地が有用であることを発見した。
【0038】
塊茎(ジャガイモ、タピオカ、マニオカ)は、その実現性に応じて、小立方体または細長い一辺にあらかじめ切断されていなければならないが、前記塊茎は、粉末状態および粉末の加熱済(precook)状態でも有用である。これに対してマメ科植物(ソラマメ、エンドウ、マメ類、ヒヨコマメなど)は、そのまま、または、乾燥状態で用いられる。上記にも関わらず、これまでに列挙した原料の、どの混合物であっても有用である。更に培地は、米および/またはトウモロコシから選択され、好ましくは、膨張培地あるいは破裂培地、または粉末状態で、単独でおよび/または全てで、単純なおよび/または複雑な、組み合わせで有用である。
【0039】
膨張した米および/または破裂したトウモロコシからなる、好ましい培地を、大きな開口部を有するパイレックス(登録商標)のガラス瓶に導入した後、前記開口部を細菌使用の綿で閉じ、121℃で20分間、オートクレーブ内で殺菌した。
【0040】
その後、各々の瓶にペニシリン培地のスポアの懸濁液を植えつけて、単一生産ロットを形成する、多くのその他の同一懸濁液と共に、使用する種類に応じて、20から28℃まで温度制御されたサーモスタット中で、培養する。
【0041】
培地の性質および培養状態により、静止スポア形態から植物性形態まで、継代培養が可能である。すなわち、スポアが発生し、各々のスポアから細胞(菌糸)が形成される。前記細胞は、酵素を生成し、前記酵素は、細胞により吸収された単純分子中の上記培地に存在する複雑物質を、変質し、急成長させることができる。
【0042】
各々の菌糸が伸びて、分節自体が、メカニズムに働きかける二つの娘細胞をもたらし、数日間で長いフィラメントを生じさせる。
【0043】
大抵、近くの菌糸が交錯(interlacement)することにより、灰色がかった白色のフェルト状の一種が形成される(菌糸体)。前記菌糸体が、増殖段階に十分達し、環境条件が良いと、大抵、濃い青緑色を呈するスポアを有し、子実体を含む「ブラシ」型の特有菌糸を生成する。
【0044】
スポアの保持に要する時間は、種類により異なるが、一般的に、パンを培地とした場合、サイクルは、接種から12〜21日後に完了する。
【0045】
増殖が完了したら、菌糸体および緑色のスポアが充満し、完全に被覆した、本願に係る1種以上の培地は、水と、塩と、寒天とからなる減菌溶液を用いて、瓶から除去され、適切なプラント内で粉砕、均質化、濾過をしてスポアを抽出する。その手順の最後に、精製したペニシリン属のスポアが懸濁した青緑色の液体を得る。
【0046】
前記抽出後は、スポアのタイター標準法(titre standardization step)を行う。この方法の目的は、比濁により、同じ種類の標準試料と同程度の光学不透明度を示すまで、水と、塩と、寒天とからなる減菌溶液を添加することにより達成される。
【0047】
これまで説明してきた方法は、天然のグルテン含有原料、添加剤、または、物質をどの製造段階でも使用していないことから、既に、本願のペニシリン培地がグルテンフリー培地として生成されたことを証明できる。
【0048】
上記にも関わらず、更なる安全水準を満たすために、本出願人は、上記の培地から得た懸濁スポアで、偶発的な交差汚染によりグルテンが混入された場合に、前記グルテンを分解する、蛋白分解酵素を用いる製造方法をさらに進めた。
【0049】
したがって、本発明により、本出願人は、二重の安全水準を満たす方法を提供することができ、使用する原材料の製造過程で起きる交差汚染により、存在する微量のグルテンから生じ得るリスクをも回避することができる。
【0050】
トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、ペプシン、パパイン、ブロメラインなどの、プロテアーゼ、ペプチダーゼ、および、その混合物を含む複数の蛋白分解酵素を調査した後に、本発明に係る酵素の使用について定義した。
【0051】
ペプシンとブロメラインとを用いると良い。また、前記二つの酵素の混合物の比率が1:10〜10:1であると良くて、好ましくは、重さの比率が1:5〜5:1の混合物を用いると良い。
【0052】
ペプシンとは、食糧の消化を促す胃液に含まれる酵素である。ペプシンは、酸性下で最善の働きをするプロテアーゼであり、多くの異なる場所で、且つ、無秩序に、タンパク質を分解する。その加水分解作用は、アスパラギン酸の二つの残基を含む活性部位により生じる。ペプシンは、特に、ブタの胃粘膜、または、ウシ属を代表とする反芻動物の第四胃から抽出される。ペプシンは液状および粉末状で市販されていて、それらは異なるタイターを示し、酵素ユニット(Enzymatic Unit)で表記されるが、ミルクを凝固し、チーズの熟成を促すために日常産業で用いられるウシ属から抽出されたタイプは、MCU(ミルク凝固ユニット)で表記される。
【0053】
ブロメラインは、プロテイナーゼが混合された複合体であり、よく似た酵素が果肉に存在しているが、通常、パイナップルの軸から搾取する。ブロメラインは、粉末状で市販されていて、その酵素力はGDU(ゼラチン溶解ユニット)またはMCU(ミルク凝固ユニット)で表記されている。1MCUは、およそ2/3GDUと等しい。
【0054】
グルテンが加水分解する温度は、かなり広範囲に及び、5〜60℃、好ましくは30〜50℃に及ぶ。pHの値は、1〜7で、好ましくは、4〜5である。特に、ペプシンのpHは、1.8〜6.0で、ブロメラインは3.5〜6.5である。
【0055】
さらに、ペプシンが加水分解する温度は、30〜40℃で、好ましくは37℃である。さらに、ブロメラインが加水分解する温度は、40〜50℃で、好ましくは45℃である。
【0056】
加水分解にかかる時間は、5〜60時間で、好ましくは15〜50時間である。
【0057】
ミルデュー培地に存在する全てのグルテンを除去し、自然のグルテンフリー物質を生成するのに適した酵素の作用条件を定義づけるために、最終濃度が3〜20ppmの範囲となるように、ミルデュー培地に既知量のグルテンを添加する実験がなされた。上記のグルテン濃度は、ミルデュー増殖培地として使用される自然のグルテンフリー食品や物質の製造過程で、公差汚染が生じるような、より深刻な状態を誘導する濃度である。
【0058】
上記実験では、添加したグルテンを加水分解する目的で、タイター300〜800MCU、好ましくは、500MCUの液状ペプシン、タイター1500〜3000GDU、好ましくは、タイター2200GDUの粉末状ブロメリンを用いた。
【0059】
いくつかの検査が、最終濃度が経時的に変化する酵素を単独または混合で用いて、あるいは、加水分解の作用条件下(温度、ミルデューのpH、作用時間)でなされた。
【0060】
グルテンの最大添加量、20ppmを完全除去するための好ましい実施形態では、ペプシン(タイター500MCU)とブルメリン(タイター2200MCU)とを同時に使用し、計20〜28時間、例えば24時間、温度24〜30℃で、pHを4〜5に制御した。酵素処理後、品質管理によりロット(lot)が承認されると、殺菌した瓶で包装した。
【0061】
2005年の年末に施行される予定のヨーロッパ規則に基づくと、本発明に係る技術により生成されたミルデューにより精製されたブルーチーズのみが、グルテン除去に関して、完全な品質保証をすることができる。したがってこのチーズは、グルテン含有についてラベルに言及する必要が無い。
【0062】
一方で、増殖培地として使用した原材料について、充分な数のデータが既に報告されており、酵素処理に関する好ましい実施形態を、本発明の重要性を限定しない実施例に基づいて、以下に記す。
【0063】
これらの好ましい実施形態における作用条件は、ミルデュー、スポアの生物活性なので、ブルーチーズの最適なブルーベイニング(blue-veining)と熟成とを確実にする能力は保護される。
【0064】
例えば、好ましい実施形態は下記条件でなされた:
a)ブロメラインのミルデューに対する濃度:0.1〜0.4g/l(220〜880GDU/lに等しい)、加水分解のpH:4.4〜4.6、加水分解の温度:22〜28℃(例えば24℃など)、加水分解の長さ:24〜48時間
【0065】
例えば、他の好ましい実施形態は下記条件でなされた:
b)ペプシンのミルデューに対する濃度:0.2〜0.4g/l(100〜200MCU/lに等しい)、加水分解のpH:4.4〜4.6、加水分解の温度:22〜28℃(例えば24℃など)、加水分解の長さ:24〜48時間
【0066】
例えば、他の好ましい実施形態は下記条件でなされた:
c)ブロメラインのミルデューに対する濃度:0.05〜0.2g/l(110〜440GDU/lに等しい)、ペプシンのミルデューに対する濃度:0.1〜0.2ml/l(50〜100MCU/lに等しい)、加水分解のpH:4.4〜4.6、加水分解の温度:22〜28℃(例えば24℃など)、加水分解の長さ:24〜48時間
【0067】
さらに、本発明に係る方法を用いた最終生成物中のグルテンの質量は、現在市販されている高感度の検査キットでは、常に決定できなかった。この場合、本発明に係る方法で生成された培地はグルテンフリーであることを保証できる。グルテン濃度に関する分析捜査は、ドイツのR-Biopharma A, Darmstadt社製の グリアジンのキットであるELISA RIDASCREEN(商標)によって、グリアジンと対応するプロラミンの質量分析がなされた。専門誌「主要食物アレルギーと、食物に含有されるグルテンとの限界値確立へのアプローチ(Approaches to Establish Thresholds for Major Food Allergens and for Gluten in Fodd)」の2005年6月に掲載された食品医薬品局(米)のレポートによると、グルテン濃度を計測する前記分析キットは、報告されているわずかなキットのなかで、最も高い感度で、計量可能で、種々のグリアジンに特化したキットと言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記微生物からなるグループから選択するペニシリウム ロッケフォリティ種のスポアまたはミルデュー。

【請求項2】
グルテンフリーの、スポアまたはミルデューの培地を、少なくとも含む組成物の製造方法であって、
前記培地がペニシリウム属で、
前記培地がグルテンフリーの培地により生成される製造方法。
【請求項3】
前記スポアまたはミルデューの培地が、ペニシリウム ロッケフォリティ種である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記培地が、請求項1に記載のグループから選択される請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記培地が、植物性由来である請求項2〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記培地が、天然のグルテンフリーの米、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオク、タピオカ、クリ、エンドウ、ソラマメ、マメ、マメ科植物、または、それらの混合物、から選択した培地である請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記培地が、米およびトウモロコシの混合物からなる請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記培地が、膨らまされた粒子状態、破裂された粒子状態、または、粉末状態および/または粉末の加熱済状態である請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
請求項2〜8に記載のいずれかの培地に、ペニシリウム ロッケフォリティ種のスポア懸濁液を植えつける工程を、少なくとも含み、
好ましくは、前記スポアが、請求項1に記載のグループから選択される
請求項2〜8に記載のいずれかの製造方法。
【請求項10】
前記スポアの成熟が進むように時間および温度を設定し、前記植えつけを行う、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記培地から、前記スポアが懸濁した液体を分離する工程をさらに含む請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
スポア培地の凍結乾燥形態、飛散形態、または、粉末形態を得るために、前記液体を加水分解する工程をさらに含む請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項2〜12のいずれかに記載の、グルテンフリーの、スポアまたはミルデューの培地を少なくとも含む組成物であって、
好ましくは、前記スポアが請求項1に記載のグループから選択される組成物。
【請求項14】
ブルーベインの日用製品の製造方法であって、
グルテンフリーのスポア培地を少なくとも含む請求項13に記載の組成物を使用する工程を、少なくとも含む製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法により得られたブルーベインの日用製品。
【請求項16】
請求項2〜12のいずれかに記載の方法により製造された、ペニシリウム属からなる、グルテンを含まないスポア培地を、セリアック病患者のための、ブルーベインの日用製品の製造時に使用する方法であって、
好ましくは、前記スポアが、ペニシリウム ロッケフォリティ種に属し、
さらに好ましくは、前記スポアが、請求項1に記載のグループから選択される、使用方法。
【請求項17】
天然のグルテンフリーの米、トウモロコシ、ジャガイモ、マニオク、タピオカ、クリ、エンドウ、ソラマメ、マメ、マメ科植物、または、それらの混合物、から選択した培地を、ペニシリウム属からなるグルテンフリーのスポアまたはミルデューの培地の製造時に使用する方法であって、
好ましくは、前記スポアが、請求項1に記載のグループから選択される使用方法。
【請求項18】
グルテンフリーのスポアまたはミルデューの培地を少なくとも含む組成物の製造方法であって、
請求項2〜12のいずれかに記載の方法で製造した組成物に微量のグルテンが存在するとき、前記微量のグルテン除去するために、酵素処理を施すことを特徴とする製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の製造方法であって、
前記スポアまたはミルデューが、ペニシリウム属であって、
好ましくは、ペニシリウム ロッケフォリティ種であって、
さらに好ましくは、前記スポアが、請求項1に記載のグループから選択される製造方法。
【請求項20】
請求項18または19に記載の製造方法であって、
前記組成物に含まれ、前記処理を施される、前記微量のグルテンは、意図的ではなく、偶発的な交差汚染により混入された製造方法。
【請求項21】
請求項18または19に記載の製造方法であって、
前記酵素処理では、蛋白質分解酵素を少なくとも使用する製造方法。
【請求項22】
請求項21に記載の製造方法であって、前記蛋白質分解酵素は、プロテアーゼまたはペプチダーゼである製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載の製造方法であって、前記プロテアーゼおよびペプチダーゼは、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチン、ペプシン、パパイン、ブロメラインから選択し、
好ましくは、前記プロテアーゼおよびペプチダーゼは、ペプシンおよび/またはブロメラインである製造方法。
【請求項24】
請求項18〜23のいずれかに記載の製造方法であって、
少なくとも1種の前記蛋白質分解酵素を、請求項2〜12のいずれかに記載の製造方法で得た組成物に添加し、
前記組成物に微量のグルテンが存在するときは、前記微量のグルテンを加水分解する、製造方法。
【請求項25】
請求項24に記載の製造方法であって、前記加水分解が、pH値1〜7、好ましくは、4〜5、温度5〜60℃、好ましくは30〜50℃、時間5〜60時間、好ましくは15〜50時間でなされる製造方法。
【請求項26】
請求項25に記載の製造方法であって、前記加水分解がペプシンおよび/またはブロメラインで、pH値4.4〜4.6、温度22〜28℃、時間24〜48時間でなされる製造方法。
【請求項27】
請求項18〜26のいずれかに記載の製造方法で得られる、グルテンフリーのスポアまたはミルデューの培地を少なくとも含む組成物であって、
好ましくは、前記スポアまたはミルデューが、請求項1に記載のグループから選択される組成物。
【請求項28】
ブルーベインの日用製品の製造方法であって、
請求項27に記載のグルテンフリーのスポアまたはミルデューの培地を少なくとも含む組成物を使用する工程を、少なくとも含む製造方法。
【請求項29】
請求項28に記載の製造方法から得られるブルーベインの日用製品。
【請求項30】
請求項18〜26のいずれかに記載の方法により製造された、ペニシリウム属からなるグルテンを含まないスポア培地を、セリアック病患者のための、ブルーベインの日用製品の製造時に使用する方法であって、
好ましくは、前記スポアが、ペニシリウム ロッケフォリティ種に属し、
さらに好ましくは、前記スポアが、請求項1に記載のグループから選択される使用方法。

【公表番号】特表2009−511040(P2009−511040A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535198(P2008−535198)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【国際出願番号】PCT/IT2006/000573
【国際公開番号】WO2007/054988
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(508111899)モフィン エス.アール.エル. (1)
【氏名又は名称原語表記】MOFIN S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Via Pietro Custodi,12,I−28100 Novara,Italy
【Fターム(参考)】