説明

セリウムランタン酸化物に基づく触媒を使用してN2Oを分解する方法

本発明は、NOを分解する方法に関する。本方法は、触媒として、セリウムおよびランタンに基づき、ジルコニウムならびにセリウムおよびランタン以外の希土類から選択される元素の少なくとも1種の酸化物をさらに含む酸化物を使用することを特徴とする。この触媒は、より安定であり、高温において使用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セリウムおよびランタンの酸化物に基づく触媒を使用する、NOを分解する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Oは、地球温暖化を撲滅するにあたり減らすことがますます望まれている温室効果に関与するガスの1種であることが知られている。
【0003】
実際、NOは、幾つかの産業プラント、例えば、硝酸またはアジピン酸の製造用プラントにより放出されたガス中で大量に生じる。NOの排出を回避するため、これらのガスを処理してNOを分解して酸素および窒素を生じさせてから、大気に排出する。この処理を効率的にするため、触媒の使用が要求される。
【0004】
既に、この型の処理のための触媒、例えば、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウムに基づく組成物、ニッケルおよびコバルトの酸化物に基づく組成物もしくは銅および亜鉛の酸化物に基づく組成物、またはセリウムおよびコバルトの酸化物に基づく組成物もしくはセリウムおよびジルコニウムの酸化物に基づく組成物が存在する。
【0005】
公知の触媒に伴う問題は、これらの触媒が不十分な経時的安定性を示すことである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、改善された安定性を示す、NO分解用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、NOを分解する本発明の方法は、触媒として、セリウムおよびランタンに基づき、ジルコニウムならびにセリウムおよびランタン以外の希土類金属から選択される元素の少なくとも1種の酸化物をさらに含む酸化物を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の触媒は、1000℃超の温度においてさえ、改善された安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の他の特徴、詳細および利点は、以下の詳細な説明および本発明の説明を目的とする、具体的であるが非限定的な種々の実施例を読むことにより、よりいっそう十分に明らかとなる。
【0010】
用語「希土類金属」は、以下の詳細な説明において、イットリウムおよび原子番号57から71の間(両端の番号を含む。)の周期表の元素からなる群の元素を意味するものと解される。
【0011】
用語「比表面積」は、雑誌The Journal of the American Chemical Society,60,309(1938)に記載のBrunauer−Emmett−Teller法から作成されたASTM D3663−78規格に従って窒素吸着により求められるBET比表面積を意味するものと解される。
【0012】
含有率は、特に記載のない限り、酸化物の重量として挙げられる。本発明の触媒において、酸化セリウムは、酸化第2セリウムの形態であり、他の希土類金属の酸化物は、Lnの形態であり、Lnは希土類金属を意味し、例外として、プラセオジムはPr11の形で表現される。
【0013】
以下の詳細な説明において、特に記載のない限り、挙げられる値の全ての範囲または限界において、限界における値が含まれ、従って、こうして定義される値の範囲または限界は、少なくとも下限であり、もしくは下限超であり、および/または多くとも上限であり、もしくは上限未満である任意の値を包含することも規定される。さらに、比表面積値が与えられる終了時のか焼は、特に記載のない限り、空気下でのか焼である。
【0014】
本発明の具体的な実施形態によれば、使用触媒は、セリウム、ランタンおよびジルコニウムに基づく酸化物であり、この酸化物は、セリウムおよびランタン以外の希土類金属から選択される元素の少なくとも1種の酸化物をさらに含む。
【0015】
上記の両実施形態において、セリウムおよびランタン以外の希土類金属は、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウムまたはイットリウムであり得る。
【0016】
ランタン元素ならびに任意のセリウムおよびランタン以外の希土類金属の全比率は、一般に、触媒の全重量に対して多くとも15重量%のこの、またはこれらの元素(ランタン+他の希土類金属)の酸化物である。この比率は、さらに特定すると、多くとも10%であり得る。ランタンおよび任意の他の希土類金属の最小量は、一般に、少なくとも3重量%の酸化物である。触媒が少なくとも1種の他の希土類金属とともにランタンを含む特定の場合、ランタン含有率は、好ましくは、少なくとも2%であり、多くとも10%である。上記の全ての値は、目安として挙げられ、限定を意図するものではない。最小値は、この値未満では触媒が十分な安定性を示さないであろう値である。最大値は、この値を超えると触媒の活性が不十分であり得る値であり、または経済的限界に対応する。
【0017】
ジルコニウムに基づく触媒の場合、ジルコニウムの比率は、好ましくは、触媒の全重量に対して多くとも40重量%の酸化ジルコニウムである。この比率は、さらに特定すると、多くとも35%であり得る。
【0018】
さらに、本発明の触媒は、コバルト、鉄、銅および亜鉛から選択される少なくとも1種の他の元素をさらに含むことができる。この他の元素は、一般に、触媒中に酸化物の形態で存在する。この、またはこれらの他の元素の比率は、一般に、触媒の全重量に対して多くとも15重量%のこの元素の酸化物である。この元素の最小量は、この元素が本発明の触媒中に存在する場合、好ましくは、少なくとも1%である。
【0019】
本発明は、触媒がセリウム、ランタンならびに上記の1種以上の他の元素、即ち、ジルコニウム、セリウムおよびランタン以外の希土類金属、コバルト、鉄、銅および亜鉛に基づく酸化物から本質的に構成される場合に当てはまることに留意されたい。特に、触媒は、セリウム、ランタンならびにセリウムおよびランタン以外の1種以上の希土類金属と、コバルト、鉄、銅および亜鉛から選択される任意の別の元素に基づく酸化物から本質的に構成され得る。用語「本質的に構成される」は、当該触媒が上記元素の酸化物のみを含むこと、および当該触媒が別の機能元素、即ち、触媒の安定性に対して明白な影響を有し得る元素の酸化物を含まないことを意味するものと解される。他方、触媒は、特に、この調製のプロセスから、例えば、使用される出発材料または出発反応物質から生じ得る不純物のような元素を含むことができる。
【0020】
本発明の別の有利な実施形態によれば、触媒は、固溶体の形態で提供される。本詳細な説明の意味の範囲内で、用語「固溶体の形態で提供される」は、触媒が、水(15容積%)の存在下で1050℃の温度において48時間空気下でか焼した後、固溶体型の結晶構造を示すという事実を意味するものと解される。この場合、上記条件下でか焼した後の触媒についてX線回折により得られる回折図により、触媒内で、単一の結晶相の存在のみが表される。この相は、一般に、フッ素型の立方結晶対称の明確に識別可能な相であり、従って、酸化セリウム中のランタン、ジルコニウムおよび他の任意選択の希土類金属の純粋な固溶体の存在を反映する。
【0021】
この同一の実施形態の場合、コバルト、鉄、銅および亜鉛から選択される別の元素を含む触媒について、この元素は、好ましくは、触媒中で、一般に触媒の表面において微粉砕形態で見出され、この元素の酸化物の存在がX線分析において現れない。
【0022】
この実施形態の場合、固溶体の形態の触媒は、改善された触媒活性を示す。
【0023】
触媒として、高温において高い比表面積を示す酸化物を使用することが好ましい。従って、触媒は、有利には、900℃において6時間空気下でか焼した後、少なくとも20m/gの比表面積を示すことができる。酸化ジルコニウムを含む触媒の特定の場合、この比表面積は、温度および継続時間の同一条件下で、好ましくは、少なくとも25m/gであり、より好ましくは、少なくとも35m/gである。
【0024】
本発明に触媒として使用することができる酸化物は、公知である。例えば、特許出願EP−0 906 244−A1に記載の酸化物を使用することができる。これらの酸化物は、セリウム、ジルコニウムおよび別の希土類金属の酸化物に基づく組成物である。
【0025】
900℃において本発明に好適な比表面積を示すことができる、EP−0 444 470−A1に記載の生成物の、セリウム、ランタンおよび任意の別の希土類金属の酸化物に基づく組成物を使用することができる。
【0026】
目下、さらに特定すると、高温においてはるかに高い比表面積を示し、本発明の範囲内でとりわけ好適であり得る、セリウム、ランタンおよび任意の別の希土類金属の酸化物に基づく組成物について詳細な説明を挙げる。
【0027】
この具体的な、または特定の組成物は、酸化セリウム、酸化ランタンおよび別の希土類金属の少なくとも1種の酸化物から本質的に構成される型の組成物であり、この組成物は、1000℃において5時間か焼した後、少なくとも20m/gの比表面積を示すことを特徴とする。
【0028】
用語「本質的に構成される」は、この場合も同様に、当該組成物が、上記元素、セリウムおよび他の希土類金属の酸化物のみを含むこと、および当該組成物が組成物の比表面積の安定性に対して明白な影響を有し得る別の元素の酸化物を含まないことを意味するものと解される。他方、組成物は、特に、この調製のプロセスから、例えば、使用される出発材料または出発反応物質から生じ得る不純物のような元素を含むことができる。
【0029】
この特定の組成物は、1000℃において5時間か焼した後、少なくとも22m/gの比表面積をさらに示すことができる。より一般には、少なくとも約25m/gの値を同一か焼条件下で得ることができる。
【0030】
この同一組成物の比表面積は、はるかに高い温度においてさえ、依然として高いままであり得る。従って、この比表面積は、1100℃において5時間か焼した後、少なくとも10m/gであり、さらに特定すると、少なくとも14m/gであり得る。
【0031】
この同一組成物は、この多孔度を特徴とすることもできる。なぜなら、この組成物が高温においてさえ、大きくとも200nmのサイズを有する細孔により提供される高い多孔度を示すからである。換言すると、組成物は、高いメソ多孔度を示す。
【0032】
本詳細な説明において示される多孔度は、ASTM D4284−03規格(水銀圧入ポロシメトリーにより触媒の細孔容積分布を求める標準的な方法)に従って水銀圧入ポロシメトリーにより測定される。
【0033】
より具体的には、組成物は、1000℃において5時間にわたりか焼した後、大きくとも200nmの直径を有する細孔により提供され、少なくとも0.15cm/gであり、さらに特定すると、少なくとも0.2cm/gである多孔度を示す。さらに、この同一組成物は、1000℃において5時間か焼した後、少なくとも0.10cm/g、さらに特定すると、少なくとも0.15cm/gの多孔度を示すことができ、この多孔度は、大きくとも50nmの直径を有する細孔により提供される。
【0034】
この具体的な組成物は、900℃において5時間か焼した後、実質的に同一の多孔度を示すことにも留意されたい。換言すると、組成物の多孔度は、900℃において、次いで1000℃において5時間か焼した後に事実上変動しない。このことは、とりわけ、大きくとも200nmの細孔により提供される多孔度に当てはまる。なぜなら、この場合、多孔度の減少は、一般に、大きくとも10%、好ましくは、大きくとも5%であるからである。
【0035】
この具体的な組成物を調製する方法を、目下説明する。
【0036】
この方法は、以下の段階:
セリウム化合物を含む液体媒体を形成させる段階;
この媒体を、少なくとも100℃の温度において加熱する段階;
前段階の終了時に得られた沈殿物をこの液体媒体から分離し、他の希土類金属(ランタンならびにランタンおよびセリウム以外の希土類金属)の化合物をこの沈殿物に添加し、別の液体媒体を形成させる段階;
こうして得られた媒体を少なくとも100℃の温度において加熱する段階;
前段階の加熱操作の終了時に得られた反応媒体を塩基性pHにする段階;
前段階から得られた沈殿物を分離し、か焼する段階
を含むことを特徴とする。
【0037】
従って、本方法の第1の段階は、セリウム化合物を含む液体媒体を形成させることである。
【0038】
液体媒体は、一般に、水である。
【0039】
セリウム化合物は、好ましくは、可溶性化合物から選択される。セリウム化合物は、特に、有機または無機酸塩、例えば、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物または硝酸第2セリウムアンモニウムであり得る。
【0040】
好ましくは、硝酸第2セリウムを使用する。少なくとも99.5%、さらに特定すると、少なくとも99.9%の純度を有する塩を使用することが有利である。硝酸第2セリウム水溶液は、過酸化水素水溶液の存在下での第1セリウム塩、例えば、硝酸第1セリウムの溶液およびアンモニア溶液の反応により慣用的に調製された酸化第2セリウム水和物と硝酸を反応させることにより得ることができる。好ましくは、ここで有利な出発材料を構成する、文献FR−A−2 570 087に記載の硝酸第1セリウム溶液の電解酸化法に従って得られた硝酸第2セリウム溶液を使用することもできる。
【0041】
ここで、セリウム塩の水溶液が、塩基または酸の添加により調整することができる初期の遊離酸性度の程度を示し得ることに留意されたい。しかしながら、いくぶん入念な手法において事前に中和された溶液として上記の遊離酸性度の程度を実際に示すセリウム塩の初期溶液を用いることが同時に可能である。この中和は、塩基性化合物を上記混合物に添加してこの酸性度を制限することにより実施することができる。この塩基性化合物は、例えば、アンモニア溶液またはアルカリ金属(ナトリウム、カリウムなど)水酸化物の溶液であり得るが、好ましくは、アンモニア溶液である。
【0042】
最後に、出発混合物がセリウムを本質的にIII形で含む場合、方法の過程において、酸化剤、例えば、過酸化水素水溶液を含めることが好ましいことに留意されたい。
【0043】
出発セリウム化合物として、ゾルを使用することも可能である。用語「ゾル」は、セリウム化合物に基づく、コロイド寸法、即ち、約1nmから約500nmの間の寸法の固体微粒子から構成される任意の系を意味し、このセリウム化合物は、一般に、水性液相中で懸濁している酸化セリウムおよび/または酸化セリウム水和物であり、さらに前記粒子は、結合または吸着しているイオン、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物またはアンモニウムなどの残留量を任意に含むことが可能である。このようなゾル中で、セリウムは、完全にコロイドの形態で、または同時にイオンの形態およびコロイドの形態で生じ得ることに留意されたい。
【0044】
混合物は、例えば、最初は固体状態の化合物から、続いてこの化合物を水のベッセルヒール(vessel heel)中に導入して、またはこれらの化合物の溶液から直接的に、区別することなく得ることができる。
【0045】
本方法の第2の段階は、前段階において調製された媒体を少なくとも100℃の温度において加熱することである。
【0046】
媒体を加熱する温度は、一般に、100℃から150℃の間であり、さらに特定すると、110℃から130℃の間である。加熱操作は、液体媒体を密閉チャンバ(オートクレーブ型の密閉反応器)中に導入することにより実施することができる。従って、上記所与の温度条件下、水性媒体中では、説明として、密閉反応器中の圧力は、1bar(10Pa)超から165bar(1.65×10Pa)の値、好ましくは、5bar(5×10Pa)から165bar(1.65×10Pa)の間で変動し得ることを規定することができる。加熱は、約100℃の温度について開放反応器中で実施することも可能である。
【0047】
加熱は、空気下と不活性ガス雰囲気、好ましくは、窒素下のいずれかで実施することができる。
【0048】
加熱の継続時間は、広範囲内で、例えば、30分から48時間の間、好ましくは、1から5時間の間で変動し得る。同様に、昇温は、臨界的でない速度において行い、従って、媒体を、例えば、30分から4時間の間加熱することにより設定反応温度に到達することが可能であり、これらの値は、もっぱら目安として挙げられる。
【0049】
加熱操作の終了時に沈殿物が得られ、この沈殿物を任意の好適な手段により、例えば、水性母液を抜き取ることにより液体媒体から分離する。こうして分離された沈殿物に他の希土類金属(ランタンならびにランタンおよびセリウム以外の希土類金属)の化合物を添加し、第2の液体媒体を形成させる。
【0050】
これらの希土類金属化合物は、本方法の第1の段階において使用されるセリウム化合物と同一の性質の化合物であり得る。従って、ここで、この化合物について上記したことが、さらに特定すると、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩または塩化物から選択することができる、これらの希土類金属化合物に当てはまる。
【0051】
本方法の別の段階において、第2の液体媒体を、少なくとも100℃の温度において加熱する。
【0052】
この場合も同様に、ここで、第1の加熱操作について上記したことが、第2の加熱操作に同様に当てはまる。
【0053】
第2の加熱操作の終了時、得られた反応媒体を塩基性pHにする。このため、塩基性化合物を反応媒体中に導入する。塩基または塩基性化合物として、水酸化物型の生成物を使用することができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。第2級、第3級または第4級アミンを使用することもできる。しかしながら、アミンおよびアンモニアが、これらがアルカリ金属またはアルカリ土類金属陽イオンによる汚染のリスクを減らす限り、好まれ得る。ウレアを挙げることもできる。塩基性化合物は、さらに特定すると、溶液の形態で使用することができる。
【0054】
媒体にもたらすpHの値は、さらに特定すると、8から10の間、さらに特定すると、8から9の間であり得る。
【0055】
本方法の最終段階において、回収された沈殿物を続いてか焼する。このか焼により、形成された生成物の結晶化度を発達させることが可能になり、このか焼は、組成物のために意図される後続の操作温度に応じて調整および/または選択することもでき、生成物の比表面積は用いられるか焼温度が増加するにつれて低下するという事実を考慮しながら行う。このようなか焼は、一般に、空気下で実施するが、例えば、不活性ガス下、または制御雰囲気下(酸化または還元)で実施されるか焼が除外されないのは極めて明確である。
【0056】
実際、か焼温度は、一般に、300℃から1000℃の間の値の範囲に限定される。
【0057】
上記の特定の組成物の説明の終了時、本発明のより一般的な説明に目下戻ると、コバルト、鉄、銅および亜鉛から選択される別の元素を含む触媒について、これらの触媒は、上記の混合酸化物から、前記元素を任意の公知の表面堆積技術、例えば、特に乾式含浸または湿式含浸により、この混合酸化物中に取り込ませることにより得ることができることに留意されたい。
【0058】
酸化物は、本発明の用途において触媒として使用することができるようにするため、成形されていなければならない。
【0059】
従って、酸化物は、例えば、押出またはビーズ形態で提供することができる。こうして成形された酸化物は、結合剤をさらに含むことができる。この結合剤は、押出技術において通常使用される結合剤、例えば、シリカ、アルミナ、ベーマイト、粘土、ケイ酸塩、アルミノケイ酸塩、硫酸チタンまたはセラミック繊維などから選択される。これらの結合剤は、一般に使用される比率、即ち、最大約30重量%で、さらに特定すると、多くとも約20重量%で存在する。
【0060】
触媒は、セラミックまたは金属支持体上での本発明の酸化物に基づく被覆物の形態であってもよい。
【0061】
本発明の触媒は、この安定性の観点から、広い温度範囲内で、特に高温において、特に1000℃超の温度において使用することができる。
【0062】
本発明のNOを分解する方法は、とりわけ、硝酸またはアジピン酸を調製する方法において用いることができる。
【0063】
硝酸を調製する方法の特定の場合、触媒は、特に、アンモニア酸化用反応器の白金網下に置くことにより使用することができる。
【0064】
目下、実施例を挙げる。
【0065】
以下の実施例において使用される触媒の特性を以下の表1に挙げる。
【0066】
触媒C0は比較触媒であり、触媒C1からC4は本発明による触媒である。
【0067】
触媒C1からC3は、EP−0 906 244−A1の教示に従って、得られた酸化物をコバルト溶液により含浸させることにより調製した。触媒C4は、以下の手段において調製した。
【0068】
少なくとも90mol%のセリウム(IV)イオンを含み、50gのCeOを含む201.6mlの硝酸第2セリウム溶液を、5.7mlの25%アンモニア水溶液により中和し、次いで792.7mlの純水により希釈する。続いて、この溶液を100℃において0.5時間加熱する。水性母液を除去した後、2.63gのLaを含む6.1mlの硝酸ランタン溶液および2.63gのPr11を含む5.3mlの硝酸プラセオジム溶液を媒体に添加する。純水を添加して溶液の全容量を1リットルにする。続いて実施する手順は、実施例1と同様であり、5重量%のLa、5重量%のPr11および90重量%のCeOを含む組成物を得る。
【0069】
得られた酸化物を、コバルト溶液により含浸させた。
【0070】
加熱処理を、空気+水(15%)混合物下で、下記温度および下記時間において実施した。
【0071】
【表1】

【実施例1】
【0072】
本実施例は、上記所与の条件下で950℃において加熱処理した後に種々の触媒上で得られるNO変換率を説明する。
【0073】
触媒は、粒度が0.5mmから1mmの間である顆粒の形態で試験する。各試験につき、触媒の重量は10.5g(即ち、10mlの顆粒の容積)であり、空時速度は70000h−1である。
【0074】
実験室内で実施される試験の条件は、以下の通りである:
処理されるガス混合物は、15容積%のHOおよび1000ppmのNOを含み、残部は空気である。水蒸気の含有率は、ステンレス鋼製空気給湿器により温度(60℃)において調整する。
【0075】
Oは、反応器出口において赤外線により分析する。NO変換率は、850℃である一定温度において測定する。
【0076】
得られた結果を以下の表2に挙げる。
【0077】
【表2】

【0078】
同一の実験条件下で、本発明による触媒の変換度(NOの少なくとも95%の変換率)と、比較触媒の変換度(87%の変換率にすぎない。)との間で顕著な差異が記録される。
【実施例2】
【0079】
本実施例は、上記所与の条件下で1050℃において加熱処理した後に種々の触媒上で得られるNO変換率を説明する。
【0080】
触媒の成形およびこれらの触媒の使用の実験条件は、実施例1において上記したものと同一である。
【0081】
得られた結果を以下の表3に挙げる。
【0082】
【表3】

【0083】
表3は、本発明による触媒が、1050℃における加熱処理後、比較触媒よりも良好なNO変換率を与えることを示す。さらに、本発明による触媒の活性降下は、比較触媒の活性降下よりも顕著に小さい。
【実施例3】
【0084】
本実施例は、空気+水(15容積%)混合物下で1ヵ月、850℃において加熱処理した後に触媒上で得られるNO変換率を説明する。
【0085】
触媒の成形およびこれらの触媒の使用の実験条件は、実施例1において上記したものと同一である。
【0086】
得られた結果を以下の表4に挙げる。
【0087】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒として、セリウムおよびランタンに基づき、ジルコニウムならびにセリウムおよびランタン以外の希土類金属から選択される元素の少なくとも1種の酸化物をさらに含む酸化物を使用することを特徴とする、NOを分解する方法。
【請求項2】
触媒として、セリウム、ランタンおよびジルコニウムに基づき、セリウムおよびランタン以外の希土類金属から選択される元素の少なくとも1種の酸化物をさらに含む酸化物を使用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
他の希土類金属が、プラセオジム、ネオジム、ガドリニウムまたはイットリウムである上記型の触媒を使用することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
水の存在下で1050℃の温度において、および48時間空気下でか焼した後、固溶体の形態で提供される上記型の触媒を使用することを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の方法。
【請求項5】
ランタン元素ならびに任意のセリウムおよびランタン以外の希土類金属の全比率が、触媒の全重量に対して多くとも15重量%のこの、またはこれらの元素の酸化物である、上記型の触媒を使用することを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の方法。
【請求項6】
ジルコニウムの比率が、触媒の全重量に対して多くとも40重量%の酸化ジルコニウムである、上記型の触媒を使用することを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の方法。
【請求項7】
コバルト、鉄、銅および亜鉛から選択される少なくとも1種の他の元素をさらに含む上記型の触媒を使用することを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の方法。
【請求項8】
上記他の元素の比率が、触媒の全重量に対して多くとも15重量%のこの元素の酸化物である触媒を使用することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
硝酸またはアジピン酸を調製する方法において用いることを特徴とする、請求項1から8の一項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504484(P2012−504484A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529515(P2011−529515)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062490
【国際公開番号】WO2010/037696
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【出願人】(511083905)
【Fターム(参考)】