説明

セルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、偏光板及び液晶表示装置

【課題】使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動が抑制されたセルロースアシレートフィルムの提供。
【解決手段】アシル置換度が下記式0.5≦A+B≦2.7;0.0≦A≦2.5;0.1≦B≦2.0(Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂と、(A)〜(C)の要件を満たす水素結合性化合物を含むセルロースアシレートフィルム。(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、それらを含む偏光板及び液晶表示装置、特にVA(vertical aligned)モードの液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置の表示特性は近年ますます高まっており、特に大型のテレビ用の液晶表示装置として有力なVAモード液晶表示装置では、液晶セルの表示面側及びバックライト側に2枚の偏光板の吸収軸を互いに直交させて配置し、さらにそれぞれの偏光板と液晶セルとの間に、特定のレターデーションを有する位相差フィルムを配置することで、より広い視野角が実現できること、すなわち表示特性を向上できることが知られている。
【0003】
このような位相差フィルムとしては、優れた光学性能、具体的には位相差フィルムの面内レターデーションRe(nm)及び厚み方向のレターデーションRth(nm)を発現させることができるセルロースアシレートフィルムが近年注目されており、位相差フィルムとして液晶表示装置に用いられている。また、このようなセルロースアシレートフィルムの中でも、セルロースアセテートフィルムが多用されている。
【0004】
このようなセルロースアセテートフィルムに添加することでRthを上昇させることができる化合物として、特徴的な構造を有するレターデーション上昇剤が開示されている(特許文献1参照)。この文献に開示されているレターデーション上昇剤は、ケト−エノール互変異可能な化合物をその構成要素として含む分子錯合体を形成しうる化合物であり、その一例として1,3,5−トリアジン環を含む構造を有する化合物や、その中でもグアナミン骨格を有する化合物が開示されている。また、その他のセルロースアセテートフィルムに添加することでRthを上昇させることができる化合物として、円盤状化合物からなるレターデーション上昇剤が開示されている(特許文献2参照)。この文献に開示されているレターデーション上昇剤は、円盤状化合物であり、その一例として1,3,5−トリアジン環またはポルフィリン骨格を含む構造を有する化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−109410号公報
【特許文献2】特開2001−166144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、本発明者らがこのようなレターデーション上昇剤を添加したセルロースアセテートフィルムについてその他の特性を検討したところ、使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動が大きく、すなわちReおよびRthの湿度依存性が高いことが判明した。そこで、本発明者らはこのような問題に対処するために、セルロースアセテート以外の基材を用いることを検討した。その際、特許文献1および2に記載のレターデーション上昇剤の中には、基材が変わるとレターデーション上昇剤を示さないものがあることを見出すにいたった。つまり、基材が変わると添加剤の作用も変わるという知見を得た。
【0007】
このような知見に基づき、本発明者らは、特にセルロースアシレート・プロピオネート基材を中心に各種添加剤を添加したときの影響を検討したところ、下記(A)〜(C)の要件を満たす水素結合性化合物をセルロースアシレート・プロピオネート基材に添加すると、顕著にReおよびRthの湿度依存性が改良され、環境湿度変化に対する光学特性の安定性が良好となることを見出すに至った。そこで、さらなるセルロースアシレート・プロピオネート基材との組み合わせで、顕著に使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動を抑制できる化合物を得ることを目的にさらなる研究を進めるに至った。
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が25以上65以下。
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
【0008】
すなわち、本発明は使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動が抑制されたセルロースアシレートフィルムの提供を課題とする。また、本発明は、該セルロースアシレートフィルムを用いた位相差フィルム、該セルロースアシレートフィルムまたは該位相差フィルムを有する偏光板および液晶表示装置を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者らは、上記課題を解決することを目的として複素環化合物の置換基を検討したところ、特定の置換基群を有する化合物が湿度依存性を改良できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
特に、本発明で選択される複素環に特定の置換基を有する化合物は、円盤状の形状(または平面性)に注目してRthを上昇させることを見出した特許文献2などとは、複素環を含む化合物の中から選択した範囲が一致していない。具体的には、本発明では、数多の複素環含有化合物の中から、複素環が適切な配置および適切な種類の置換基を有する化合物群が使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動抑制という新たな効果を奏することを見出したものである。そのため、複素環を含む化合物は、全体が円盤状の形状であるものに限定されない。
【0011】
具体的には、前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] アシル置換度が下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂と、下記(A)〜(C)の要件を満たす水素結合性化合物を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
式(i) 0.5≦A+B≦2.7
式(ii) 0.0≦A≦2.5
式(iii) 0.1≦B≦2.0
(式(i)〜式(iii)中、Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
[2] 前記セルロースアシレート樹脂のアシル置換度が、下記式(iv)〜(vi)を同時に満たすことを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(iv) 1.0≦A+B≦2.5
式(v) 0.1≦A≦2.0
式(vi) 0.1≦B≦1.8
(式(iv)〜式(vi)中、Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
[3] 前記水素結合性化合物が下記一般式(A−1)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化1】

(一般式(A−1)中、Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。X、X、XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
[4] 前記水素結合性化合物が下記一般式(B−1)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化2】

(一般式(B−1)中、RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
[5] 前記一般式(A−1)および(B−1)において、前記X、X、X、X、XおよびXが、それぞれ独立に、単結合および下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択されるいずれか一つである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化3】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(A−1)および(B−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
[6] 前記水素結合性化合物が下記一般式(C−1)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化4】

(一般式(C−1)中、Ra11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb11、Rc11、Rd11およびRe11はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q1は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Raと連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化5】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(C−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
[7] 前記水素結合性化合物が下記一般式(D−1)で表される化合物である、[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化6】

(一般式(D−1)中、Ra21、Rg21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd21、およびRe21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q11は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra21と連結して環を形成してもよい。Q12は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg21と連結して環を形成してもよい。X23は単結合または2価の連結基を表す。X24は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化7】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(D−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
[8] 前記水素結合性化合物が下記一般式(E−1)で表される化合物である[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化8】

(一般式(E−1)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra31はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb31、Rc31、Rd31およびRe31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q21は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra31と連結して環を形成してもよい。X31、X32、およびX33は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X34は、下記一般式(Q)
一般式(Q)
【化9】

(一般式(Q)中、*側が前記一般式(E−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
[9] 前記水素結合性化合物が下記一般式(F−1)で表される化合物である[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化10】

(一般式(F−1)中、Y11はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra41、Rg41はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd41、およびRe41はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q31は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra41と連結して環を形成してもよい。Q32は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg41と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X44は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化11】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
[10] 前記水素結合性化合物が下記一般式(G−1)で表される化合物である[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化12】

(一般式(G−1)中、Lは単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R81は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)
[11] 前記水素結合性化合物が下記一般式(H−1)で表される化合物である[1]または[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化13】

(一般式(H−1)中、L3は単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R85は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)R83、R84はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。X53、X54はそれぞれ独立に、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化14】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(H−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
[12] 前記水素結合性化合物の分子量が100〜1000であることを特徴とする[1]〜[11]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[13] 前記セルロースアシレート樹脂に対する前記水素結合性化合物の含有量が30質量%以下であることを特徴とする[1]〜[12]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[14] [1]〜[13]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
[15] [1]〜[13]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムまたは[14]に記載の位相差フィルムを含んでなる偏光板。
[16] [1]〜[13]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム、[14]に記載の位相差フィルムまたは[15]に記載の偏光板を含んでなる液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、使用環境の湿度の変化に対するReおよびRthの変動の抑制効果に優れているため、液晶表示装置における位相差フィルム、偏光板に好適に用いることができ、特に本発明の液晶表示装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
まず、本明細書で用いられる用語について、説明する。
(レターデーション(Re及びRth))
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(X)及び式(XI)よりRthを算出することもできる。
【0016】
【数1】

式(XI)
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
注記:
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。また、式中、nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
【0017】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0018】
本発明において、位相差膜等の「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380nm〜780nmのことをいう。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=589nmでの値である。
また、本明細書において、位相差膜及び液晶層等の各部材の光学特性を示す数値、数値範囲、及び定性的な表現(例えば、「同等」、「等しい」等の表現)については、液晶表示装置やそれに用いられる部材について一般的に許容される誤差を含む数値、数値範囲及び性質を示していると解釈されるものとする。
【0019】
1. セルロースアシレートフィルム
本発明のセルロースアシレートフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、アシル置換度が前記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂と、前記一般式(1)または一般式(2)で表される化合物とを含むことを特徴とする。以下、本発明のフィルムの好ましい態様について説明する。
【0020】
(1−1)セルロースアシレート樹脂
本発明のフィルムは、アシル置換度が前記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂を含む。また、本発明のフィルムは、アシル置換度が前記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂を主成分として含有することが好ましい。ここで「主成分として含有する」とは、セルロースアシレートフィルムの材料として用いられているセルロースアシレート樹脂が1種である場合は、当該セルロースアシレート樹脂をいい、複数種である場合は、最も高い割合で含有されるセルロースアシレート樹脂をいう。セルロースには、β−1,4結合しているグルコース単位当り、2位、3位及び6位に遊離の水酸基がある。本発明のセルロースアシレートフィルムの材料には、これらの3つの水酸基が、アセチル基と、プロピオニル基及び/又はブチリル基に置換されたセルロースアシレート樹脂を少なくとも使用する。具体的には、セルロースアセテート・プロピオネート、セルロースアセテート・ブチレート、又はセルロースアセテート・プロピオネート・ブチレートを用いるのが好ましい。
【0021】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレート樹脂でも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができ、前記セルロースアシレートフィルムに対しては特に限定されるものではない。
【0022】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレートを含有することを特徴とする。すなわち、本発明は、アセチル基ならびにプロピオニル基及び/又はブチリル基を有するセルロースアシレートを少なくとも含むセルロースアシレートフィルムに関する。
式(i) 0.5≦A+B≦2.7
式(ii) 0.0≦A≦2.5
式(iii) 0.1≦B≦2.0
(式(i)〜式(iii)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
【0023】
式(i)〜(iii)を満足するセルロースアシレート樹脂を用いると、親水性がある程度低くなるためにセルロースアシレート樹脂を溶解するための溶媒として好ましく用いられるメチレンクロライドやアルコール系溶剤(メタノール、エタノール、ブタノール等)に溶解しやすくなり、かつ、フィルムが通常の湿度下で安定となる。さらに、本発明に用いられる前記水素結合性化合物の効果が大きい。また、式(i)〜(iii)を満足するセルロースアシレート樹脂であれば安価に合成でき、工業製品としての光学フィルムを提供する上で製造コスト上の優位性が大きい。
同時に、Bが2.0以下のセルロースアシレートであれば安価に合成でき、工業製品としての光学フィルムを提供する上で製造コスト上の優位性が大きい。
【0024】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート樹脂のアシル置換度が、下記式(iv)〜(vi)を同時に満たすことが好ましい。
式(iv) 1.0≦A+B≦2.5
式(v) 0.1≦A≦2.0
式(vi) 0.1≦B≦1.8
(式(iv)〜式(vi)中、Aはアセチル基の置換度、Bはプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
さらに、1.2≦A+B≦2.5であることがより好ましく、0.1≦A≦1.9であることがより好ましく、0.5≦B≦1.8であることがより好ましい。
【0025】
セルロースアシレート樹脂中のアセチル置換度、プロピオニル置換度およびブチリル置換度はそれぞれ、セルロースの構成単位((β)1,4−グリコシド結合しているグルコース)に存在している、3つの水酸基がアセチル化ならびにプロピオニル化及び/又はブチリル化されている割合をそれぞれ意味する。なお、本明細書では、セルロースアシレート樹脂のアセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基の置換度は、セルロースの構成単位質量当りの結合脂肪酸量を測定して算出することができる。測定方法は、「ASTM D817−91」に準じて実施する。
【0026】
前記セルロースアシレート樹脂は、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがさらに好ましい。また本発明に用いるセルロースアシレート樹脂は、70000〜230000の数平均分子量を有することが好ましく、75000〜230000の数平均分子量を有することがさらに好ましく、78000〜120000の数平均分子量を有することがよりさらに好ましい。
【0027】
前記セルロースアシレート樹脂は、アシル化剤として酸無水物や酸塩化物を用いて合成できる。工業的に最も一般的な合成方法としては、以下の通りである。綿花リンタや木材パルプなどから得たセルロースをアセチル基並びにプロピオニル基及び/又はブチリル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化し、目的のセルロースアシレート樹脂を合成することができる。
【0028】
(1−2)水素結合性化合物
本発明に用いられる前記水素結合性化合物は、下記(A)〜(C)の要件を満たす。
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
【0029】
まず(A)の要件について説明する。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物において水素結合性ドナー部および水素結合性アクセプター部として働く官能基の例は例えば、Jeffrey, George A.著、Oxford UP刊のIntroduction to Hydrogen Bondingの15ページのTable 2に記載されており、本明細書ではこの表に記載の官能基の数の前記水素結合性化合物における合計を、水素結合性ドナー数および水素結合性アクセプター数の合計として用いる。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物は1分子内に水素結合性ドナー部と水素結合性アクセプター部の双方を有することにより、水と強い水素結合を形成し、水がセルロースアシレート中のカルボニル基に配位するを抑制することができる。水素結合性ドナー部と水素結合性アクセプター部を結ぶ結合の数は0個以上3個以下が、前記水との水素結合形成の点で好ましく、1個および2個がさらに好ましい。
【0030】
次に(B)の要件について説明する。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物は、分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値は35以上60以下がさらに好ましい。分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が大きすぎると、セルロースアシレートに水素結合性化合物が接近しにくくなり、環境変化にともなうレターデーション変化の改良効果が小さくなってしまう。一方、分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が小さすぎると水素結合性化合物同士の相互作用が強くなりすぎて、溶媒への溶解性、セルロースアシレートとの相溶性が不足するため好ましくない。
【0031】
次に(C)の要件について説明する。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物中の芳香環構造の数は1以上3以下である。ここで、芳香環構造とは、芳香族炭化水素環の他、複素芳香環も含む。また、芳香環構造の数は、芳香環が縮合している縮合環の場合は1つと数え、芳香環どうしが連結基を介して連結しているときに複数個と数える。例えば、ナフタレン由来の炭素数10の芳香環は、芳香環構造1つと数える。芳香環構造の数が4以上になると水素結合性化合物の分子サイズが大きくなりすぎて、セルロースアシレート中のカルボニル基に接近しにくくなり、環境湿度による光学特性変化に対する抑制効果が小さくなってしまう。
また、本発明に用いられる前記水素結合性化合物は少なくとも一つの複素芳香環を含むことが好ましい。複素芳香環を含むことにより複素芳香環中のヘテロ原子と水素結合性化合物中の他の水素結合性アクセプターあるいは水素結合性ドナーが水と環状水素結合を形成しやすくなり好ましい。
【0032】
(水素結合性化合物の親疎水性)
本発明に用いられる水素結合性化合物の親疎水性は特定範囲に制御されていることが好ましい。すなわち、添加剤が疎水的過ぎるとセルロースアシレートとの相溶性が不足し、セルロースアシレートに近傍に存在しうる添加剤の割合が少なくなってしまう。一方、添加剤が親水的過ぎると、ドープ溶剤への溶解性が不足してしまう。
【0033】
−ClogP値−
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、一般にJIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などを用いることが知られている。本発明では、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))を用いる。
ClogP値とは、1−オクタノールと水への分配係数Pの常用対数logPを計算によって求めた値である。ClogP値の計算に用いる方法やソフトウェアについては公知の物を用いることができるが、本発明ではDaylight
Chemical Information Systems社のシステム:PCModelsに組み込まれたCLOGPプログラムを用いた。
また、ある化合物のlogPの値が、測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することとなる。
【0034】
水素結合性化合物の親疎水性は、オクタノール−水分配係数(以下logPと称することがある)により表すことができる。本発明に用いられる水素結合性化合物の親疎水性が、オクタノール−水分配係数の中でも前記ClogP値として0〜5.5の範囲になるように制御されていることを特徴とする。本発明に用いられる水素結合性化合物のClogP値は、さらに好ましくは1.0〜5.0であり、最も好ましくは2.0〜4.5である。
【0035】
以下に本発明に用いられる前記水素結合性化合物の具体的な構造について説明する。
本発明に用いられる前記水素結合性化合物は以下に示す一般式(A−1)〜(H−1)であらわされる化合物が好ましい。以下に各々の構造について詳しく説明する。
【0036】
(A)一般式(A−1)で表される水素結合性化合物
まず、一般式(A−1)で表される化合物について説明する。なお、本明細書中において、アルキル基などの炭化水素基は、本発明の趣旨に反さない場合、直鎖であっても、分枝であってもよい。
【0037】
【化15】

(一般式(1)中、Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。X、X、XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【0038】
前記Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表し、アルキル基またはアリール基であることが好ましい。
【0039】
前記Raがアルキル基である場合、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルケニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアルキニル基である場合、炭素数2〜20であることが好ましく、炭素数3〜15であることがより好ましく、炭素数6〜12であることが特に好ましい。
前記Raがアリール基である場合、炭素数6〜24であることが好ましく、炭素数6〜18であることがより好ましい。
前記Raが複素環基である場合、炭素数5〜23であることが好ましく、炭素数5〜17であることがより好ましい。
【0040】
前記Raはさらに置換基を有していても、有していなくともよいが、さらに置換基を有していないことが、湿度依存性改良の観点から好ましい。
前記Raが有していてもよい置換基としては、以下の置換基Tを挙げることができる。前記置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)などが挙げられる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0041】
前記X、X、XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、それぞれ独立に単結合であることがより好ましく、全て単結合であることが特に好ましい。
前記X、X、XおよびXがそれぞれ独立に表していてもよい前記2価の連結基としては、例えば、下記一般式(P)で表される2価の連結基、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは炭素数1〜3、特に好ましくは炭素数2)、アリーレン基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは、炭素数6〜10)などを挙げることができる。その中でも下記一般式(P)で表される2価の連結基であることが好ましく、カルボニル基であることがより好ましい。
【0042】
【化16】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(A−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
【0043】
前記R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、水素原子、アルキル基、アリール基または複素環基であることが好ましく、水素原子、アルキル基または複素環基であることがより好ましく、水素原子またはアルキル基であることがより特に好ましい。また、前記RまたはRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましく、前記RまたはRの少なくとも一方が水素原子であることが好ましい。
前記R、R、RおよびRがアルキル基である場合、炭素数1〜12であることが好ましく、炭素数1〜6であることがより好ましく、炭素数1〜4であることが特に好ましい。前記Rがアルキル基かつXが−C(=O)−、前記Rがアルキル基かつXが−C(=O)−、前記Rがアルキル基かつXが−C(=O)−、前記Rがアルキル基かつXが−C(=O)−である場合、湿度依存性改良の観点から好ましいR、R、RおよびRの範囲は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アシル基または複素環基であり、より好ましくは置換または無置換のアリール基である。該アリール基が有する好ましい置換基は、後述する一般式(A−4)におけるのR31〜R34の範囲と同様であり、すなわちハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基である。
前記R、R、RおよびRがアルケニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R、R、RおよびRがアルキニル基である場合、炭素数2〜12であることが好ましく、炭素数2〜6であることがより好ましく、炭素数2〜4であることが特に好ましい。
前記R、R、RおよびRがアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、炭素数6〜12であることがより好ましく、炭素数6であることが湿度依存性改良の観点から特に好ましい。
前記R、R、RおよびRはさらに置換基を有していても、有していなくともよく、該置換基としては前記置換基Tを挙げることができる。
【0044】
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−2)で表されることが特に好ましい。
【0045】
【化17】

【0046】
前記Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
【0047】
前記R21およびR24はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基複素環基を表し、好ましい範囲は前記R、R、RおよびRの好ましい範囲と同様である。
【0048】
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−3)で表されることがより特に好ましい。
【化18】

(一般式(A−3)中、Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。)
【0049】
前記Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記Raがアルキル基であることが、Rthを下降させつつ、レターデーションの湿度依存性を改良する場合に好ましく、その場合はさらに前記Raが無置換のアルキル基であるときがより好ましい。
【0050】
前記一般式(A−1)で表される化合物は、下記一般式(A−4)で表されることが特に好ましい。
【化19】

一般式(A−4)中、R31、R32、R33およびR34は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。前記Ra4はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は、前記Raの好ましい範囲と同様である。
【0051】
(B)一般式(B−1)で表される水素結合性化合物
次に、一般式(B−1)で表される化合物について説明する。
【0052】
【化20】

(一般式(B−1)中、RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【0053】
前記RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
【0054】
およびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表し、好ましい範囲は前記X、X、XおよびXの好ましい範囲と同様である。
【0055】
前記RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R、R、RおよびRの好ましい範囲と同様である。
【0056】
前記一般式(B−1)で表される化合物は、下記一般式(B−2)で表されることが特に好ましい。
【化21】

【0057】
前記RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
【0058】
前記R25はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R21およびR24の好ましい範囲と同様である。
【0059】
前記一般式(B−3)で表される化合物は、下記一般式(B−3)で表されることがより特に好ましい。
【化22】

【0060】
前記RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、好ましい範囲は前記Raの好ましい範囲と同様である。
【0061】
前記一般式(B−1)で表される化合物は、下記一般式(B−4)で表されることが特に好ましい。
【化23】

【0062】
前記RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表す。
さらに、本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記RbおよびRcが共にアルキル基であることが、Rthを下降させつつ、レターデーションの湿度依存性を改良する場合に好ましく、その場合はさらに前記RbおよびRcが共に無置換のアルキル基であるときがより好ましい。同様に前記RbおよびRcが共にアルキル基であることが好ましい。
【0063】
41およびR42はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、好ましい範囲は前記R21およびR24の好ましい範囲と同様である。
【0064】
以下に前記一般式(A−1)〜(B−1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明は以下の具体例によって限定されるものではない。
【0065】
【化24】

【0066】
【化25】

【0067】
【化26】

【0068】
(一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物の製造方法)
前記水素結合性化合物に含有される一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物の製造方法は、特に限定はなく、公知の方法により製造することができる。本発明において好ましく用いられる製造方法としては、例えば米国特許第3,478,026公報やChem.Eur.J.2005,11,6616−6628に記載されているようにジシアノジアミドとニトリル化合物とを水酸化カリウム等の無機塩基存在下にてアルコール中で加熱することでトリアジン環を形成する方法や、Tetrahedron 2000,56,9705−9711に記載されているように塩化シアヌルを原料としてグリニャール化合物とアミン化合物を段階的に置換反応させていく方法や、有機合成化学協会誌 1967,第25巻第11号,1048−1051に記載されているようにイミドイルグアニジンとカルボン酸クロリドまたはエステルの反応によりモノアミノ−ジ置換−s−トリアジン類を合成する方法を用いることができる。
また、一般式(A−1)または一般式(B−1)で表される化合物は商業的に入手してもよい。
【0069】
(C)一般式(C−1)で表される化合物
次に一般式(C−1)で表される化合物について詳しく説明する。
【化27】

(一般式(C−1)中、Ra11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb11、Rc11、Rd11およびRe11はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q1は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Raと連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0070】
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−2)で表されることが特に好ましい。
【化28】

(一般式(C−2)中、Ra12はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb12およびRd12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Qは−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra12と連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0071】
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−3)で表されることが特に好ましい。
【化29】

(一般式(C−3)中、Ra13はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Qは−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra13と連結して環を形成してもよい。)
【0072】
前記一般式(C−1)で表される化合物は、下記一般式(C−4)で表されることが特に好ましい。
【化30】

(一般式(C−4)中、R41、R42、R43およびR44は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra14はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Qは−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra14と連結して環を形成してもよい。)
【0073】
(D)一般式(D−1)で表される化合物
つぎに一般式(D−1)で表される化合物について詳しく説明する。
【化31】

(一般式(D−1)中、Ra21、Rg21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd21、およびRe21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q11は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra21と連結して環を形成してもよい。Q12は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg21と連結して環を形成してもよい。X23は単結合または2価の連結基を表す。X24は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0074】
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−2)で表されることが特に好ましい。
【化32】

(一般式(D−2)中、Ra22、Rg22はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd22は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q13は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra22と連結して環を形成してもよい。Q14は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg22と連結して環を形成してもよい。X25は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0075】
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−3)で表されることが特に好ましい。
【化33】

(一般式(D−3)中、Ra23、Rg23はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q15は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra23と連結して環を形成してもよい。Q16は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg23と連結して環を形成してもよい。)
【0076】
前記一般式(D−1)で表される化合物は、下記一般式(D−4)で表されることが特に好ましい。
【化34】

(一般式(D−4)中、R51およびR52は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra24、Rg24はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q17は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra24と連結して環を形成してもよい。Q18は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg24と連結して環を形成してもよい。)
【0077】
一般式(C−1)または一般式(D−1)で表される化合物の好ましい化合物例を以下に示す。
【化35】

【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
【化36】

【表3】

【0081】
【化37】

【表4】

【0082】
(E)一般式(E−1)で表される化合物
つぎに一般式(E−1)で表される化合物について詳しく説明する。
【化38】

(一般式(E−1)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra31はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb31、Rc31、Rd31およびRe31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q21は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra31と連結して環を形成してもよい。X31、X32、およびX33は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X34は、下記一般式(Q)
一般式(Q)
【化39】

(一般式(Q)中、*側が前記一般式(E−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0083】
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−2)で表されることが特に好ましい。
【化40】

(一般式(E−2)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra32はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb32、Rc32、Rd32はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q22は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra32と連結して環を形成してもよい。X35は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X36は、前記一般式(Q)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【0084】
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−3)で表されることが特に好ましい。
【化41】

(一般式(E−3)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra33はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q23は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra33と連結して環を形成してもよい。)
【0085】
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−4)で表されることが特に好ましい。
【化42】

(一般式(E−4)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra34はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q24は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra34と連結して環を形成してもよい。R61、R62、R63およびR64は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
【0086】
前記一般式(E−1)で表される化合物は、下記一般式(E−5)で表されることが特に好ましい。
【化43】

(一般式(E−5)中、R65、R66、R67およびR68は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。Ra35はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q25は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra35と連結して環を形成してもよい。)
【0087】
(F)一般式(F−1)で表される化合物
【化44】

(一般式(F−1)中、Y11はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra41、Rg41はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd41、およびRe41はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q31は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra41と連結して環を形成してもよい。Q32は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg41と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X44は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【0088】
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−2)で表されることが特に好ましい。
【化45】

(一般式(F−2)中、Y12はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra42、Rg42はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd42は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q33は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra42と連結して環を形成してもよい。Q34は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg42と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X45は、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【0089】
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−3)で表されることが特に好ましい。
【化46】

(一般式(F−3)中、Y13はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra43、Rg43はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q35は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra43と連結して環を形成してもよい。Q36は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg43と連結して環を形成してもよい。)
【0090】
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−4)で表されることが特に好ましい。
【化47】

(一般式(F−4)中、Y14はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra44およびRg44はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q37は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra44と連結して環を形成してもよい。Q38は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg44と連結して環を形成してもよい。R71およびR72は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
【0091】
前記一般式(F−1)で表される化合物は、下記一般式(F−5)で表されることが特に好ましい。
【化48】

(一般式(F−5)中、Ra45およびRg45はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q39は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra45と連結して環を形成してもよい。Q40は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg45と連結して環を形成してもよい。R73およびR74は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、スルファモイル基、炭素数1から8のアルキル基、炭素数1から8のアルコキシ基、炭素数1から8のアルキルアミノ基、炭素数1から8のジアルキルアミノ基を表す。)
【0092】
一般式(E−1)または一般式(F−1)で表される化合物の好ましい例を以下に示す。
【0093】
【化49】

【0094】
【化50】

【0095】
【化51】

【0096】
【化52】

【0097】
【化53】

【0098】
【化54】

【0099】
【化55】

【0100】
【化56】

【0101】
【化57】

【0102】
前記一般式(E−1)の化合物は、例えば、下記スキーム1の方法で合成することができる。すなわち、一般式(E−1a)の化合物と一般式(E−1b)の化合物を有機溶剤中にて塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(E−1a)、および一般式(E−1b)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。有機溶媒としては、アルコール(例、メタノール、エタノール)、エステル(例、酢酸エチル)、炭化水素(例、トルエン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン)、ハロゲン化炭化水素(例、ジクロロメタン)、ニトリル(例、アセトニトリル)あるいはこれらの混合溶媒を用いることができる。アルコールおよびアミドが好ましく、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドンが特に好ましい。また、メタノール、エタノール、N−メチルピロリドンおよびN−エチルピロリドンの混合溶媒も特に好適な例である。
塩基としては、無機塩基(例、炭酸カリウム)と有機塩基(例、トリエチルアミン、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド)のいずれも使用できる。有機塩基が好ましく、ナトリウムメトキシドが特に好ましい。用いる塩基の使用量は、一般式(E−1b)で表される化合物に対して0.5乃至10当量の範囲であることが好ましく、1乃至3当量の範囲であることが特に好ましい。
反応温度は、 通常−20℃から用いる溶媒の沸点までであり、室温から溶媒の沸点が好ましい。反応時間は、通常10分〜3日間であり、好ましくは1時間から1日間である。反応を窒素雰囲気下、あるいは減圧下で行ってもよい。特に脱離基Zがアルコキシ基、アリール基の場合は減圧下で行うことも好ましい。
【0103】
スキーム1
【化58】

スキーム1中、Zは脱離基を表し、好ましくはハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。
【0104】
本発明に用いられる前記一般式(E−2)の化合物は、例えば、下記スキーム2の方法で合成することができる。すなわち、一般式(E-2a)の化合物と一般式(E-2b)、一般式(E-2c)の化合物を有機溶剤中にて塩基存在下で反応させることにより合成することができる。一般式(E-2a)、一般式(E-2b)および一般式(E-2c)の化合物は市販品、あるいは既知の合成法により製造した合成品を用いることができる。用いる有機溶媒の好適な例は前記と同様である。用いる塩基の好適な例は前記と同様であるが、用いる塩基の使用量は、一般式(E-2b)で表される化合物と一般式(E-2c)で表される化合物の総量に対して0.5乃至10当量の範囲であることが好ましく、1乃至3当量の範囲であることが特に好ましい。用いる反応温度、反応時間の好適な例は前記に同じである。
【0105】
スキーム2
【化59】

【0106】
つぎに一般式(G−1)で表される化合物について詳しく説明する。
【化60】

前記一般式(G−1)中、Lは単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、ヘテロ原子を含む2価の連結基であることが好ましい。前記Lが表す前記ヘテロ原子を含む2価の連結基としては、連結に関与する2本の結合手を同一原子が有する連結基であることが好ましい。このような連結基としては、−O−、−N(R82)−、−C(=O)−、−S−、−S(=O)−、およびそれらの組合せからなる連結基などを挙げることができる。なお、前記R82の範囲は前記Rの範囲と同様であり、前記R82の好ましい範囲は、水素原子または炭素数1〜15のアルキル基(より好ましくは炭素数1〜10、特に好ましくは炭素数1〜5、より特に好ましくはメチル基)である。
これらの中でも、−O−、−NH−および−N(CH)−、−C(=O)−およびそれらの組合せからなる連結基が好ましく、−O−、−NH−C(=O)−および−N(CH)−がより好ましい。
【0107】
前記一般式(G−1)中、前記R81は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数5〜20のヘテロアリール基または炭素数6〜20のアリール基を表す。
前記R81がアルキル基である場合、炭素数1〜15であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
前記RおよびRがそれぞれ独立にがアルケニル基である場合、炭素数12〜15であることが好ましく、12〜10であることがより好ましく、12〜5であることが特に好ましい。
前記R81がアルキニル基である場合、炭素数2〜15であることが好ましく、2〜10であることがより好ましく、2〜5であることが特に好ましい。
前記R81がアルキル基、アルケニル基またはアルキニル基である場合、環状、直鎖または分岐のいずれであってもよいが、直鎖または分岐であることが好ましく、直鎖であることがより好ましい。
前記R81がヘテロアリール基である場合、炭素数5〜18であることが好ましく、5〜12であることがより好ましい。
前記R81がアリール基である場合、炭素数6〜18であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
前記R81がアリールアルキル基である場合、炭素数7〜18であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。
【0108】
また、前記R81はさらに置換基を有していても、無置換であってもよい。該置換基としては、本発明の趣旨に反しない限りにおいて特に制限はないが、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数5〜20のヘテロアリール基または炭素数6〜20のアリール基などが好ましい。その中でも炭素数6〜20のアリール基であることがより好ましく、特に前記R81が置換基を有するアルキル基である場合は、該置換基はフェニル基であることが好ましい。
【0109】
前記Lと前記R81の好ましい組み合わせは以下のとおりである。
前記Lが−O−である場合、前記R81は炭素数1〜15のアルキル基またはアリールアルキル基であることが好ましく、アリールアルキル基であることがより好ましい。
前記Lが−NH−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基、アリールアルキル基であることが好ましく、アリールアルキル基であることがより好ましい。
前記Lが−NH−C(=O)−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基、アリール基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
前記Lが−N(CH)−である場合、前記R81は 炭素数1〜15のアルキル基またはアルキル基であることが好ましく、アルキル基であることがより好ましい。
【0110】
前記R81は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であることが、環境湿度に対するレターデーション変化抑制の観点からより好ましい。
【0111】
前記水素結合性化合物は、前記一般式(G−1)で表される化合物の中でも、置換基を除くプリン塩基骨格中のアミノ基の数が0または1である化合物が好ましい。
【0112】
前記水素結合性化合物は、前記一般式(G−1)で表される化合物において、前記R81が水素原子ではないことが好ましい。すなわち、前記水素結合性化合物は、前記核酸塩基骨格を含有する化合物が、下記一般式(G−2)で表されることがより好ましい。
【化61】

【0113】
一般式(G−2)中、Lは単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R82は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。
【0114】
前記一般式(G−2)中、Lの好ましい範囲は、前記一般式(G−1)におけるLの好ましい範囲と同様である。
【0115】
前記R82は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表し、各基の好ましい炭素数の範囲は一般式(G−1)におけるR81における各基の好ましい炭素数の範囲と同様である。
前記R82はメチル基、フェニル基またはベンジル基であることがより好ましく、メチル基、フェニル基またはベンジル基であることが特に好ましい。
【0116】
前記一般式(G−2)中、LとR82の好ましい組み合わせは、一般式(G−1)におけるLとR81の好ましい組み合わせと同様の傾向である。
【0117】
前記水素結合性化合物は、セルロースアシレートフィルムにヘイズを発生させたり、フィルムからブリードアウトあるいは揮散したりしないように、前記核酸塩基骨格を含有する化合物とセルロースアシレートの相互作用を制御することが好ましい。
前記核酸塩基骨格を含有する化合物が有していることが好ましい水素結合等によってセルロースアシレートと相互作用可能である部分構造としては、プリン塩基骨格、エーテル結合構造、エステル結合構造、アミド結合構造、−NH−連結基構造などを挙げることができる。
【0118】
(核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物の具体例)
前記核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができる。ただし、前記水素結合性化合物として用いることができる前記核酸塩基骨格を含有する一般式(G−1)で表される化合物は、これらに限定されるものではない。
【0119】
【化62】

【0120】
【化63】

【0121】
【化64】

【0122】
(H) 一般式(H−1)で表される化合物
次に一般式(H−1)で表される化合物について詳しく説明する。
【化65】

(一般式(H−1)中、Lは単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R85は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)R83、R84はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。X53、X54はそれぞれ独立に、前記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。但し、前記一般式(P)中、*側が前記一般式(H−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【0123】
以下に一般式(H−1)で表される化合物の好ましい例を示す。
【化66】

【化66−2】

【0124】
(物性)
前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物は、分子量が100〜1000であることが好ましく、150〜700であることがより好ましく、150〜450であることが最も好ましい。
【0125】
(添加量)
前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して、30質量%以下とすることが好ましく、1〜30質量%とすることがより好ましく、2〜20質量%とすることが特に好ましく、3〜15質量%とすることがさらに好ましい。
また、本発明のフィルムは、前記セルロースアシレート樹脂に対する、前記水素結合性化合物の合計含有量が35質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記水素結合性化合物は前記一般式(A−1)〜(H−1)で表される化合物に限定されない。
【0126】
(1−3) 他の添加剤
本発明のセルロースアシレートフィルムは、種々の目的により、前記一般式(1)または(2)で表される化合物以外の添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤は、当該セルロースアシレートフィルムを溶液製膜法で製造する場合は、セルロースアシレートドープ中に添加することができる。添加のタイミングについては特に制限はない。添加剤は、セルロースアシレートと相溶(溶液製膜法ではセルロースアシレートドープ中に可溶)な剤から選択する。添加剤は、セルロースアシレートの光学特性の調整及びその他の特性の調整等を目的として添加される。
【0127】
(可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、可塑剤を含有しているのが、製膜性などが改善されるので好ましい。可塑剤として、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される糖類系可塑剤、又はジカルボン酸類とジオール類との重縮合エステル及びその誘導体からなるオリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を使用すると、セルロースアシレートフィルムの環境湿度耐性が改善されるので好ましい。具体的には、湿度に依存したRthの変動を軽減することができる。糖類系可塑剤及びオリゴマー系可塑剤の双方を併用すると、湿度に依存したRthの変動の軽減効果が高くなる。
【0128】
(糖類系可塑剤)
上記した通り、本発明のセルロースアシレートフィルムは、糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される少なくとも1種の化合物を、含有しているのが好ましい。中でも、1〜10量体の糖類及びその誘導体からなる化合物群から選択される化合物は、可塑剤として好ましい。その例には、国際公開を2007/125764号パンフレットの[0042]〜[0065]に記載のグルコース等の糖のOHの一部又は全部の水素原子がアシル基に置換された糖誘導体が含まれる。糖類系可塑剤の添加量は、主成分であるセルロースアシレートに対して、0.1質量%以上20質量%未満であるのが好ましく、0.1質量%以上10質量%未満であるのがより好ましく、0.1質量%以上7質量%未満であるのがさらに好ましい。
【0129】
(オリゴマー系可塑剤)
上記した通り、本発明のセルロースアシレートフィルムは、オリゴマー類から選択されるオリゴマー系可塑剤を含有しているのが好ましい。オリゴマー系可塑剤の好ましい例には、ジオール成分とジカルボン酸成分との重縮合エステル及びその誘導体(以下、「重縮合エステル系可塑剤」という場合がある)、並びにメチルアクリレート(MA)のオリゴマー及びその誘導体(以下、「MAオリゴマー系可塑剤」という場合がある)が含まれる。
【0130】
前記重縮合エステルは、ジカルボン酸成分とジオール成分との重縮合エステルである。ジカルボン酸成分は、1種のジカルボン酸のみからなっていても、又は2種以上のジカルボン酸の混合物であってもよい。中でも、ジカルボン酸成分として、少なくとも1種の芳香族性ジカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分を用いるのが好ましい。一方、ジオール成分についても1種のジオール成分おみからなっていても、又は2種以上のジオールの混合物であってもよい。中でも、ジオール成分として、エチレングリコール及び/又は平均炭素原子数が2.0より大きく3.0以下の脂肪族ジオールを用いるのが好ましい。
【0131】
前記時カルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との比率は、芳香族ジカルボン酸が5〜70モル%であることが好ましい。上記範囲であると、フィルムの光学特性の環境湿度依存性を低減できるとともに、製膜過程でブリードアウトの発生を抑制できる。前記ジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸は、より好ましくは10〜60モル%であり、20〜50モル%であることがさらに好ましい。
芳香族ジカルボン酸の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸等が含まれ、フタル酸、及びテレフタル酸が好ましい。脂肪族ジカルボン酸の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれ、中でも、コハク酸、及びアジピン酸が好ましい。
【0132】
前記ジオール成分は、エチレングリコール及び/又は平均炭素数が2.0より大きく3.0以下のジオールである。前記ジオール成分中、エチレングリコールが50モル%であることが好ましく、75モル%であることがより好ましい。脂肪族ジオールとしては、アルキルジオール又は脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種又は2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
【0133】
前記ジオール成分は、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールであるのが好ましく、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールである。
【0134】
また、前記重縮合エステル系可塑剤としては、前記重縮合エステルの末端のOHがモノカルボン酸とエステルを形成している当該重縮合エステルの誘導体であるのが好ましい。両末端OH基の封止に用いるモノカルボン酸類としては、脂肪族モノカルボン酸が好ましく、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、安息香酸及びその誘導体等が好ましく、酢酸又はプロピオン酸がより好ましく、酢酸が最も好ましい。重縮合エステルの両末端に使用するモノカルボン酸類の炭素数が3以下であると、化合物の加熱減量が大きくならず、面状故障の発生を低減することが可能である。また、封止に用いるモノカルボン酸は2種以上を混合してもよい。前記重縮合エステルの両末端は酢酸又はプロピオン酸による封止されているのが好ましく、酢酸封止により両末端がアセチルエステル残基となっている重縮合エステルの誘導体が特に好ましい。
【0135】
前記重縮合エステル及びその誘導体は、数平均分子量は700〜2000程度のオリゴマーであることが好ましく、800〜1500程度がより好ましく、900〜1200程度がさらに好ましい。なお、重縮合エステルの数平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
【0136】
以下の表5に、重縮合エステル系可塑剤の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0137】
【表5】

【0138】
前記重縮合エステルは、常法により、ジカルボン酸成分とジオール成分とのポリエステル化反応もしくはエステル交換反応による熱溶融縮合法、又はジカルボン酸成分の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤
その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0139】
前記重縮合エステル系可塑剤の添加量は、主成分であるセルロースアシレートの量に対し0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることがよりさらに好ましい。
【0140】
なお、重縮合エステル系可塑剤が含有する原料及び副生成物、具体的には、脂肪族ジオール、ジカルボン酸エステル、及びジオールエステル等、のフィルム中の含有量は、1%未満が好ましく、0.5%未満がより好ましい。ジカルボン酸エステルとしては、フタル酸ジメチル、フタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジ(ヒドロキシエチル)、アジピン酸ジ(ヒドロキシエチル)、コハク酸ジ(ヒドロキシエチル)等が挙げられる。ジオールエステルとしては、エチレンジアセテート、プロピレンジアセテート等が挙げられる。
【0141】
本発明のセルロースアシレートフィルムに用いられる可塑剤としては、メチルメタクリレート(MA)オリゴマー系可塑剤も好ましい。MAオリゴマー系可塑剤と前記糖類系可塑剤との併用も好ましい。併用の態様では、MAオリゴマー系可塑剤と糖類型可塑剤とを質量比で1:2〜1:5の割合で使用するのが好ましく、1:3〜1:4の割合で使用するのがより好ましい。MAオリゴマー系可塑剤の一例は、下記繰り返し単位を含むオリゴマーである。
【0142】
【化67】

【0143】
重量平均分子量は、500〜2000程度が好ましく、700〜1500程度がより好ましく、800〜1200程度であるのがさらに好ましい。
【0144】
また、MAオリゴマー系可塑剤は、MA単独のオリゴマーの他、MAから誘導体される上記繰り返し単位とともに、他のモノマーから誘導される繰り返し単位の少なくとも1種を有するオリゴマーであってもよい。前記他のモノマーの例には、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、ならびに上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルにかえたモノマーが含まれる。また、スチレン、メチルスチレン、ヒドロキシスチレンなどの芳香環を有するモノマーを利用することもできる。前記他のモノマーとしては、芳香環を持たない、アクリル酸エステルモノマー及びメタクリル酸エステルモノマーが好ましい。
また、MAオリゴマー系可塑剤が、2種以上の繰り返し単位を有するオリゴマーである場合は、X(親水基を有するモノマー成分)及びY(親水基を持たないモノマー成分)からなり、X:Y(モル比)が1:1〜1:99のオリゴマーが好ましい。
【0145】
これらのMA系オリゴマーは、特開2003−12859号公報に記載されている方法を参考にして合成することができる。
【0146】
(高分子可塑剤)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前述した糖類系可塑剤、重縮合エステル系可塑剤、及びMMAオリゴマー系可塑剤とともに、又はそれに代えて、他の高分子系可塑剤を含有していてもよい。他の高分子系可塑剤としては、ポリエステルポリウレタン系可塑剤、脂肪族炭化水素系ポリマー、脂環式炭化水素系ポリマー、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリN−ビニルピロリドン等のビニル系ポリマー、ポリスチレン、ポリ4−ヒドロキシスチレン等のスチレン系ポリマー、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリウレア、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物、尿素−ホルムアルデヒド縮合物、酢酸ビニル、等が挙げられる。
【0147】
(少なくとも2つの芳香環を有する化合物)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、少なくとも2つの芳香環を有する化合物を含有していてもよい。当該化合物は、セルロースアシレートフィルムの光学特性を調整する作用がある。例えば、本発明のセルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合、光学特性、特にReを好ましい値に制御するには、延伸が有効である。Reの上昇はフィルム面内の屈折率異方性を大きくすることが必要であり、一つの方法が延伸による主鎖配向の向上である。また、屈折率異方性の大きな化合物を添加剤として用いることで、さらにフィルムの屈折率異方性を上昇することが可能である。例えば上記の2つ以上の芳香環を有する化合物は、延伸によりポリマー主鎖が並び、それに伴い該化合物の配向性も向上し、所望の光学特性に制御することが容易となる。
【0148】
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物としては、例えば特開2003−344655号公報に記載のトリアジン化合物、特開2002−363343号公報に記載の棒状化合物、特開2005−134884及び特開2007−119737号公報に記載の液晶性化合物等が挙げられる。より好ましくは、上記トリアジン化合物又は棒状化合物である。少なくとも2つの芳香族環を有する化合物は2種以上を併用して用いることもできる。なお、少なくとも2つの芳香環を有する化合物の分子量は、300〜1200程度であることが好ましく、400〜1000であることがより好ましい。
【0149】
少なくとも2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%がさらに好ましい。また、前記2つの芳香族環を有する化合物は、本発明に用いられる前記一般式(1)または(2)で表される化合物を兼ねていてもよい。一方、前記2つの芳香族環を有する化合物が、1,3,5−トリアジン環構造を有するものの前記一般式(1)または(2)を満たさない場合は、湿度依存性改良の観点から、該2つの芳香族環を有する化合物の添加量は、セルロースアシレート樹脂に対して質量比で0.05%〜10%が好ましく、0.5%〜8%がより好ましく、1%〜5%が特に好ましい。
【0150】
(光学異方性調整剤)
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学異方性調整剤を含有していてもよい。例えば、特開2006−30937号公報の23〜72頁に記載の「Rthを低減させる化合物」が例に挙げられる。
【0151】
(マット剤微粒子)
前記セルロースアシレートフィルムには、マット剤を添加してもよい。マット剤として使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
【0152】
2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムの製造方法には、微粒子の分散液を用いることができる。微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ調製し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集し難い点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースアシレートを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行い、これを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。いずれの方法を利用してもよいし、またこれらの方法に限定されるものでもない。
上記調製方法に使用される溶剤は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースアシレートの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
【0153】
(低分子可塑剤、劣化防止剤、剥離剤)
前記セルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた、上述した以外の種々の添加剤(例えば、低分子可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期は、ドープ調製工程においていずれのタイミングで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後のタイミングで添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
【0154】
(1−4) セルロースアシレートフィルムの製造方法
本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法(ソルベントキャスト法)によって製膜されたフィルムであるのが好ましい。ソルベントキャスト法では、ポリマーを有機溶媒に溶解して調製されたドープを、金属等からなる支持体の表面にキャストして、乾燥して製膜する。その後、膜を支持体面から剥ぎ取り、延伸処理することで製造される。
ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の記載を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号 等に記載の例を参考にすることができる。
【0155】
(1−5) セルロースアシレートフィルムの諸特性
(ReおよびRth)
本発明のセルロースアシレートフィルムの光学特性の好ましい範囲は、用途に応じて変動するであろう。
VAモード用としては589nmで測定したReは30〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜100nmのものがさらに好ましい。Rthは70〜400nmのものが好ましく、100〜300nmのものがより好ましく、100〜250nmのものがさらに好ましい。
TNモード用としては589nmで測定したReは0〜100nmのものが好ましく、0〜90nmのものがより好ましく、0〜80nmのものがさらに好ましい。Rthは20〜200nmのものが好ましく、30〜150nmのものがより好ましく、40〜120nmのものがさらに好ましい。
【0156】
(Reの湿度依存性およびRthの湿度依存性)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを25℃・相対湿度10%にて 時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe(10%)、Rth(10%)とも言う)と、25℃・相対湿度80%にて12時間調湿したときのRe、Rth(それぞれRe(80%)、Rth(80%)とも言う)の変動が小さい。このように光学特性の湿度依存性を向上させることで、使用環境の湿度が変化する条件下においてもReおよびRthの変動が抑制され、前記好ましい範囲のレテーデーションを発揮することができ、使用環境の湿度が変化する条件下での使用にも好適なセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
【0157】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Reの湿度依存性(ΔRe=Re(10%)−Re(80%))が、10nm未満であることが好ましく、8nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムはRthの湿度依存性(ΔRth=Rth(10%)−Rth(80%))が、20.5nm以下であることが好ましく、18.5nm以下であることがより好ましく、14.5nm以下であることが特に好ましい。
【0158】
(膜厚)
本発明のセルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の部材等、薄型化が望まれる装置の部材として利用する態様では、膜厚は薄いほうが好ましいが、一方、膜厚が薄すぎるとその用途に要求される光学特性を達成できない。液晶表示装置の光学補償フィルムや偏光板保護フィルムとして利用する態様では、膜厚は20〜80μm程度であるのが好ましい。より好ましくは、25〜70μm程度であり、さらに好ましくは30〜60μm程度である。
【0159】
(ヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、低ヘイズであるのが好ましい。低へイズのフィルムを用いると、液晶表示装置の正面(表示面に対して法線方向)のコントラストを低下させないので好ましい。
【0160】
(軸ズレ)
テンター延伸により横方向すなわちフィルム搬送方向と直交する方向に遅相軸を持つフィルムにおいては、延伸によってフィルムの中心では遅相軸が直交する方向にあってもフィルム幅の外へ行くほど弓なりに遅相軸がずれることがある(ボウイング)。フィルム幅とは、溶液流延法で作製されたフィルムについては、ドープ流延方向に直交する方向のフィルムの長さをいう。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム全幅について、遅相軸の軸ズレが小さいのが好ましい。
フィルムの遅相軸は、フィルムの搬送方向に沿った末端と完全に平行に切り出した小片を用いて、KOBRA 21ADH又はWRによって、面内のレターデーション測定をすることにより同時に測定される。
【0161】
2. セルロースアシレートフィルムの用途
本発明のセルロースアシレートフィルムは、種々の用途に用いることができる。例えば、液晶表示装置の位相差フィルム(以下、光学補償フィルムとも言う)、偏光板の保護フィルム等に利用することができる。
(位相差フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。なお、「位相差フィルム、または光学補償フィルム」とは、一般に液晶表示装置等の表示装置に用いられ、光学異方性を有する光学材料のことを意味し、光学補償シートなどと同義である。液晶表示装置において、光学補償フィルムは表示画面のコントラストを向上させたり、視野角特性や色味を改善したりする目的で用いられる。
【0162】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムを複数枚積層したり、本発明のセルロースアシレートフィルムと本発明外のフィルムとを積層したりしてReやRthを適宜調整して光学補償フィルムとして用いることもできる。フィルムの積層は、粘着剤や接着剤を用いて実施することができる。
【0163】
(偏光板)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板(本発明の偏光板)の保護フィルムとして用いることができる。本発明の偏光板の一例は、偏光膜とその両面を保護する二枚の偏光板保護フィルム(透明フィルム)からなり、本発明のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一方の偏光板保護フィルムとして有する。本発明のセルロースアシレートフィルムが支持体として利用され、その表面に液晶組成物からなる光学異方性層を有する態様について、偏光板の保護フィルムとして利用する場合は、支持体である本発明のセルロースアシレートフィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)を偏光膜の表面に貼り合せるのが好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムを前記偏光板保護フィルムとして用いる場合、本発明のセルロースアシレートフィルムには前記表面処理(特開平6−94915号公報、同6−118232号公報にも記載)を施して親水化しておくことが好ましく、例えば、グロー放電処理、コロナ放電処理、又は、アルカリ鹸化処理などを施すことが好ましい。特に、本発明のセルロースアシレートフィルムを構成するセルロースアシレートがセルロースアシレートの場合には、前記表面処理としてはアルカリ鹸化処理が最も好ましく用いられる。
【0164】
また、前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸したもの等を用いることができる。ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬して延伸した偏光膜を用いる場合、接着剤を用いて偏光膜の両面に本発明の透明セルロースアシレートフィルムの表面処理面を直接貼り合わせることができる。本発明の製造方法においては、このように前記セルロースアシレートフィルムが偏光膜と直接貼合されていることが好ましい。前記接着剤としては、ポリビニルアルコール又はポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール)の水溶液や、ビニル系ポリマー(例えば、ポリブチルアクリレート)のラテックスを用いることができる。特に好ましい接着剤は、完全鹸化ポリビニルアルコールの水溶液である。
【0165】
一般に液晶表示装置は二枚の偏光板の間に液晶セルが設けられるため、4枚の偏光板保護フィルムを有する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、4枚の偏光板保護フィルムのいずれに用いてもよいが、本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置における偏光膜と液晶層(液晶セル)の間に配置される保護フィルムとして、特に有用である。また、前記偏光膜を挟んで本発明のセルロースアシレートフィルムの反対側に配置される保護フィルムには、透明ハードコート層、防眩層、反射防止層などを設けることができ、特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。
【0166】
(液晶表示装置)
本発明のセルロースアシレートフィルム、ならびそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、様々な表示モードの液晶表示装置に用いることができる。以下にこれらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。これらのモードのうち、本発明のセルロースアシレートフィルム、並びにそれを利用した光学補償フィルム及び偏光板は、特にVAモードの液晶表示装置に好ましく用いられる。これらの液晶表示装置は、透過型、反射型及び半透過型のいずれでもよい。
【0167】
図1に、本発明の液晶表示装置の一例の断面模式図を示す。なお、図1中、上を観察者(表示面)側、下をバックライト側とする。
図1のVAモード液晶表示装置は、液晶セルLC(上側基板1、下側基板3、及び液晶層5、からなる)と、液晶セルLCを挟持して配置される一対の上側偏光板P1及び下側偏光板P2とを有する。なお、偏光膜は、双方の表面に保護フィルムを有する偏光板として液晶表示装置に組み込まれるのが一般的であるが、図1では、偏光膜の外側保護フィルムは省略した。偏光板P1及びP2は、それぞれ偏光膜8a及び8bを有し、その吸収軸9a及び9bを互いに直交方向にして配置されている。液晶セルLCはVAモードの液晶セルであり、黒表示時には、図1に示す通り、液晶層5はホメオトロピック配向になる。上側基板1と下側基板3は、それぞれ内面に、配向膜(図示せず)と電極層(図示せず)を有し、さらに観察者側の基板1の内面には、カラーフィルタ層(図示せず)を有する。
【0168】
上側基板1と上側偏光膜8aとの間、及び下側基板3と下側偏光膜8bとの間には、位相差膜10a及び10bがそれぞれ配置されている。位相差膜10a及び10bは、本発明のセルロースアシレートフィルムである。位相差膜10a及び10bは、その面内遅相軸11a及び11bを、上側偏光膜8a及び下側偏光膜8bのそれぞれの吸収軸9a及び9bと直交にして配置される。即ち、位相差膜10a及び10bは、それぞれの遅相軸を直交にして配置される。本発明のセルロースアシレートからなる位相差膜10a及び10bは、黒表示時の斜め方向に生じる光漏れ及びカラーシフトの軽減に寄与する。
【0169】
(ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルム)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、場合により、ハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへ適用してもよい。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明の透明セルロースアシレートフィルムの片面又は両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れか或いは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムにおいても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0170】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0171】
1.セルロースアシレートフィルムの作製
セルロースアシレート樹脂A 100質量部を、溶媒であるメチレンクロライド、410質量部、エタノール、45質量部中に混合して、セルロースアシレート(具体的には、セルロースアセテート・プロピオネート)溶液を調製した。この溶液を、バンド流延機を用いて流延し、得られたウェブをバンドから剥離し、その後145℃の条件下、TD方向(フィルム幅方向)に35%延伸した後、乾燥して、厚さ50μmのセルロースアシレートフィルム(具体的には、セルロースアセテート・プロピオネート)フィルムを作製した。これをフィルム101として用いた。
【0172】
セルロースアシレート樹脂の種類を、Aから下記表に示す通りに変えた以外は、フィルム101と同様にして、下記表6に示すフィルム115、121、127、131および135を作製した。
【0173】
(光学特性の評価)
得られた添加剤無添加のフィルム101、115、121、127、131および135のフィルムについて、幅方向3点(中央、端部(両端からそれぞれ全幅の5%の位置))を長手方向に10mごとに3回サンプリングし、3cm角の大きさのサンプルを9枚取り出し、下記の方法にしたがって求めた各点の平均値から求めた。
サンプルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差を測定することから、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出する。
その結果を下記表6に示す。
【0174】
また、レターデーション値の湿度に伴う変化については、フィルムを25℃・相対湿度10%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe(10%)、Rth(10%))、および25℃・相対湿度80%にて12時間調湿した以外は上記の方法と同様にして測定して算出したRe、Rth(それぞれRe(80%)、Rth(80%))から、Reの湿度依存性とRthの湿度依存性とを算出した。具体的には、得られた添加剤無添加のフィルム101、115、121、127、131および135のReの湿度依存性をΔRe={各フィルムのRe(10%)}−(各フィルムのRe(80%)}とし、同様にRthの湿度依存性をΔRth={各フィルムのRth(10%)}−{各フィルムのRth(80%)}とした。
その結果を下記表6に示す。
【0175】
さらに、その他のフィルムについては、以下のとおりに作製した。具体的には、フィルム101を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして102〜114をそれぞれ作製した。同様に、フィルム115を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして116〜120を、フィルム121を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして122〜126を、フィルム127を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして128〜130を、フィルム131を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして132〜134を、フィルム135を製造するときに下記表6に示した添加剤を下記表6に記載の割合で加えたフィルムとして136をそれぞれ作製した。以下に、添加剤として用いた化合物A−11〜A−16および、比較用化合物T、U−1〜U−3の構造を示す。
【0176】
【化68】

【0177】
作製した添加剤を含む各実施例および比較例のフィルムについて、添加剤無添加のフィルム(フィルム101、115、121、127、131および135)と同様に諸特性を測定した。ここで、添加剤を含む各実施例および比較例のフィルムでは、レターデーションの湿度依存性をΔRe={各フィルムのRe(10%)}−{各フィルムのRe(80%)}、ΔRth={各フィルムのRth(10%)}−{各フィルムのRth(80%)}として計算した。
【0178】
さらに、同種のセルロースアシレート樹脂を用いた系列中において、添加剤無添加のフィルムで計算したΔReと添加剤を含む各実施例および比較例のフィルムで計算したΔReから、各系列におけるΔRe−ΔReの値を計算した。同様に各種類のセルロースアシレート樹脂を用いた系列におけるΔRth−ΔRthの値を計算した。
これらの結果を下記表6に示す。
【0179】
【表6】

【0180】
上記表6に示す結果から、本発明に用いられる前記水素結合性化合物を添加したフィルムはいずれも、本発明に用いられる前記水素結合性化合物を添加していないフィルムと比較して、湿度依存性が良好であることが分かった。また、比較化合物T、U−1〜3を添加したセルロースアシレート樹脂からなるフィルムは湿度依存性改良効果が不十分であることが分かった。
【0181】
[合成例:一般式(A−2)で表される化合物の合成]
以下の一般式(A−2)で表される本発明に用いられる前記水素結合性化合物の合成を行った。
【化69】

【化70】

【0182】
化合物(3−1)の合成
アセトグアナミン10g(32mmol)のピリジン50mL溶液に、ベンゾイルクロライド9.9g(70mmol)を加え、8時間加熱還流させた。反応系の温度を室温に戻し、酢酸エチル及び水を加えて分液し、有機層を1N塩酸水、水の順に水洗した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去しカラムクロマトグラフィーにより精製し化合物(3−1)を得た。
得られた化合物(3−1)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(3H、s)
7.45−7.55(4H、m)
7.60−7.65(2H、m)
7.90−8.00(4H、m)
11.20(2H、s)
【0183】
化合物(3−2)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからo−メチル安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−2)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(6H、s)
2.60(3H、s)
7.20−7.30(4H、m)
7.35−7.45(2H、m)
7.50−7.60(2H、m)
8.55(2H、s)
【0184】
化合物(3−3)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからp−メチル安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−3)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.35(6H、s)
2.50(3H、s)
7.30(4H、d)
7.85(4H、d)
11.10(2H、s)
【0185】
化合物(3−4)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからp−メトキシ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−4)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(3H、s)
3.80(6H、s)
7.00(4H、d)
7.95(4H、d)
11.00(2H、s)
【0186】
化合物(3−5)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからm−メトキシ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−5)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(3H、s)
3.80(6H、s)
7.10−7.20(2H、m)
7.35−7.45(2H、m)
7.50−7.60(4H、m)
11.20(2H、s)
【0187】
化合物(3−6)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからp−tert−ブチル安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−6)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.30(18H、s)
2.50(3H、s)
7.55(4H、d)
7.95(4H、d)
11.10(2H、s)
【0188】
化合物(3−7)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからm−メチル安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−7)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.40(6H、s)
2.65(3H、s)
7.35−7.45(4H、m)
7.70−7.80(4H、m)
8.80(2H、s)
【0189】
化合物(3−8)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからp−クロロ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−8)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.60(3H、s)
7.40−7.50(4H、m)
7.90−8.00(4H、m)
9.10(2H、s)
【0190】
化合物(3−9)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからo−クロロ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−9)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:CDCl、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(3H、s)
7.30−7.50(6H、m)
7.60−7.70(2H、m)
8.95(2H、s)
【0191】
化合物(3−10)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからm−クロロ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−10)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.50(3H、s)
7.55(2H、m)
7.70(2H、m)
7.90(2H、m)
8.00(2H、s)
11.35(2H、s)
【0192】
化合物(3−11)の合成
出発原料をベンゾイルクロライドからo−メトキシ安息香酸クロライドに変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−11)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.40(3H、s)
3.80(6H、s)
7.00−7.20(4H、m)
7.55(2H、m)
7.65(2H、m)
10.70(2H、s)
【0193】
化合物(3−12)の合成
原料の酸クロライドを変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。目的物はMSスペクトルで確認した。
【0194】
化合物(3−13)の合成
原料の酸クロライドを変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。目的物はMSスペクトルで確認した。
【0195】
化合物(3−14)の合成
原料の酸クロライドを変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−14)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.40(3H、s)
4.00(4H、s)
7.20−7.30(10H、m)
10.90(2H、s)
【0196】
化合物(3−15)の合成
原料の酸クロライドを変更した他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−15)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
2.40(3H、s)
3.80(3H、s)
7.15(1H、m)
7.35−7.55(5H、m)
7.75(2H、m)
11.10(1H、s)
11.20(1H、s)
【0197】
化合物(3−16)の合成
原料にベンゾグアナミンとp−tert−ブチル安息香酸クロライドを用いた他は化合物(3−1)と同様に合成を行った。
得られた化合物(3−16)のNMRスペクトルは以下の通りである。
H−NMR(溶媒:重DMSO、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
1.35(18H、s)
7.50−7.60(7H、m)
7.90−8.00(4H、m)
7.30(2H、m)
11.20(2H、s)
【0198】
化合物(3−17)の合成
【化71】

Chemistry−A European Journal, 2005, vol.11, #22 p.6616〜6628の方法に従い中間体3−17−1を合成し、化合物(3−7)と同様に合成を行った。目的物はMSスペクトルで確認した。
【0199】
化合物(3−18)の合成
化合物(3−17)と同様に合成を行い、目的物はMSスペクトルで確認した。
【0200】
【化72】

ジメチルアセトアミド300mlに2−クロロ4,6−ジアミノ1,3,5−トリアジン50g、モルホリン60g、炭酸カリウム95gを加え100℃で3時間攪拌した。室温に冷却後、反応液に食塩水1Lを加え10℃に冷却し、析出した結晶を濾取した。この結晶を水、アセトニトリルで洗浄し、乾燥することで中間体(3−1)を55g得た。N-エチルピロリドン400mlに中間体(3−1)40g、2−メチル安息香酸メチル64g、ナトリウムメトキシド55gを加え40℃で30分攪拌した。室温に冷却後、反応液に1N塩酸水を加え、析出した結晶を濾取した。この結晶を水で洗浄し乾燥した。この結晶を酢酸エチル、メタノール、炭酸水素ナトリウム水溶液の混合溶媒中で攪拌し、結晶を濾取した。この結晶を水、アセトニトリルで洗浄し、乾燥することで目的物を60g得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
【0201】
【化73】

2−クロロ4,6−ジアミノ1,3,5−トリアジン20gに40%メチルアミン水溶液を60ml加え70℃で2時間攪拌した。室温に冷却後、反応液に水を加え結晶を濾取した。この結晶をイソプロパノール、ヘキサンで洗浄し、乾燥することで中間体(43−1)を16g得た。その後の操作は化合物(C−103)の合成と同様に行い目的物を得た。
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
【0202】
化合物(C−113)の合成
2−クロロ4,6−ジアミノ1,3,5−トリアジン27gにメタノール300ml、水酸化ナトリウム16gを加え5時間加熱還流を行った。室温に冷却後、反応液に水を加え結晶を濾取した。この結晶を水で洗浄し、乾燥することで中間体(13−1)を17g得た。N-エチルピロリドン200mlに中間体(13−1)17g、2−メチル安息香酸メチル38g、ナトリウムメトキシド33gを加え40℃で8時間攪拌した。室温に冷却後、反応液に1N塩酸水、酢酸エチル、ヘキサンを加え、析出した結晶を濾取した。この結晶をイソプロパノールで再結晶し、乾燥することで目的物を20g得た。
【0203】
[実施例301]
〔偏光板保護フィルムの作製〕
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液301を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液301の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度1.6、プロピオニル置換度0.8、
重合度350のセルロースアセテート 100.0質量部
重量平均分子量1100の重縮合ポリエステルA 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
エタノール(第2溶媒) 60.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0204】
【化74】

【0205】
(マット剤溶液302の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液302を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤溶液302の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、
日本アエロジル(株)製) 2.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 75.0質量部
エタノール(第2溶媒) 12.7質量部
前記セルロースアシレート溶液301 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0206】
(水素結合性化合物溶液303の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、有機酸溶液303を調製した。
【0207】
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
水素結合性化合物溶液303の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
水素結合性化合物(A−35) 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 67.2質量部
エタノール(第2溶媒) 10.0質量部
前記セルロースアシレート溶液1 12.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0208】
上記マット剤溶液302の1.3質量部と、水素結合性化合物溶液303の6.7質量部をそれぞれ濾過後にインラインミキサーを用いて混合し、さらにセルロースアシレート溶液301を92.0質量部加えて、インラインミキサーを用いて混合した。混合した溶液を、バンド流延機を用いて流延し、100℃で残留溶媒含量40%まで乾燥した後、フィルムを剥ぎ取った。剥ぎ取ったフィルムは、さらに140℃の雰囲気温度でテンター延伸装置を用いて搬送方向と垂直方向に30%の拡幅率で延伸した。140℃でさらに延伸後のフィルム20分乾燥させた。製造されたフィルムの膜厚は50μmであった。
【0209】
〔実施例302〜313および比較例401〜405の偏光板保護フィルムの作製〕
実施例301においてセルロースアシレートの置換度、重縮合ポリエステルAの添加量、水素結合性化合物の種類および添加量、フィルム厚みを下記表1に記載したとおりに変更した以外は同様にして、実施例302〜313および比較例401〜405の偏光板保護フィルムを製造した。
【0210】
(光学特性の評価)
得られた実施例301〜313のセルロースアシレートフィルム301〜313および比較例401〜405のセルロースアシレートフィルム401〜405について、実施例1と同様にして光学特性およびレターデーションン値の湿度に伴う変化を評価した。
その結果を下記表7に示す。
【0211】
【表7】

【0212】
【化75】

【0213】
化合物U-5;:ペンタ-O-アセチル-β-D-ガラクトピラノース;(株)東京化成製
【0214】
【化76】

【0215】
上記表7に示す結果から、本発明に用いられる前記水素結合性化合物を添加したフィルムはいずれも、本発明に用いられる前記水素結合性化合物を添加していないフィルムと比較して、湿度依存性が良好であることが分かった。また、比較化合物U−1〜U−5を添加したセルロースアシレート樹脂からなるフィルムは湿度依存性改良効果が不十分であることが分かった。
【符号の説明】
【0216】
1 液晶セル上側基板
3 液晶セル下側基板
5 液晶層(液晶分子)
8a、8b 偏光フィルム
9a、9b 偏光フィルム吸収軸
10a、10b 位相差膜(本発明のセルロースアシレートフィルム)
P1、P2 偏光板
LC 液晶セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アシル置換度が下記式(i)〜(iii)を同時に満たすセルロースアシレート樹脂と、下記(A)〜(C)の要件を満たす水素結合性化合物を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(A)1分子内に水素結合ドナー部と水素結合アクセプター部の双方を有する。
(B)分子量を水素結合ドナー数と水素結合アクセプター数の合計数で除した値が30以上65以下。
(C)芳香環構造の総数が1以上3以下。
式(i) 0.5≦A+B≦2.7
式(ii) 0.0≦A≦2.5
式(iii) 0.1≦B≦2.0
(式(i)〜式(iii)中、Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
【請求項2】
前記セルロースアシレート樹脂のアシル置換度が、下記式(iv)〜(vi)を同時に満たすことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(iv) 1.0≦A+B≦2.5
式(v) 0.1≦A≦2.0
式(vi) 0.1≦B≦1.8
(式(iv)〜式(vi)中、Aはセルロースアシレート樹脂のアセチル基の置換度、Bはセルロースアシレート樹脂のプロピオニル基の置換度とブチリル基の置換度の合計を表す。)
【請求項3】
前記水素結合性化合物が下記一般式(A−1)で表される化合物である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化1】

(一般式(A−1)中、Raはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。X、X、XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。R、R、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【請求項4】
前記水素結合性化合物が下記一般式(B−1)で表される化合物である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化2】

(一般式(B−1)中、RbおよびRcはそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、複素環基またはアリール基を表す。XおよびXはそれぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。)
【請求項5】
前記一般式(A−1)および(B−1)において、前記X、X、X、X、XおよびXが、それぞれ独立に、単結合および下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択されるいずれか一つである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化3】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(A−1)および(B−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項6】
前記水素結合性化合物が下記一般式(C−1)で表される化合物である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化4】

(一般式(C−1)中、Ra11はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb11、Rc11、Rd11およびRe11はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q1は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Raと連結して環を形成してもよい。X11、X12、およびX13は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X14は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化5】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(C−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項7】
前記水素結合性化合物が下記一般式(D−1)で表される化合物である、請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化6】

(一般式(D−1)中、Ra21、Rg21はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd21、およびRe21はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q11は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra21と連結して環を形成してもよい。Q12は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg21と連結して環を形成してもよい。X23は単結合または2価の連結基を表す。X24は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化7】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(D−1)で表される化合物中の1,3,5−トリアジン環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項8】
前記水素結合性化合物が下記一般式(E−1)で表される化合物である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化8】

(一般式(E−1)中、Yはメチン基、あるいは−N−を表す。Ra31はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rb31、Rc31、Rd31およびRe31はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q21は単結合、−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra31と連結して環を形成してもよい。X31、X32、およびX33は、それぞれ独立に単結合または2価の連結基を表す。X34は、下記一般式(Q)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
一般式(Q)
【化9】

(一般式(Q)中、*側が前記一般式(E−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項9】
前記水素結合性化合物が下記一般式(F−1)で表される化合物である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化10】

(一般式(F−1)中、Y11はメチン基、あるいは−N−を表す。Ra41、Rg41はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Rd41、およびRe41はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。Q31は−O−、−S−、あるいは−NRf−を示し、Rfは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Ra41と連結して環を形成してもよい。Q32は−O−、−S−、あるいは−NRh−を示し、Rhは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、または複素環基を表し、Rg41と連結して環を形成してもよい。X43は単結合または2価の連結基を表す。X44は、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化11】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(F−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項10】
前記水素結合性化合物が下記一般式(G−1)で表される化合物である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化12】

(一般式(G−1)中、Lは単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R81は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)
【請求項11】
前記水素結合性化合物が下記一般式(H−1)で表される化合物である請求項1または2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化13】

(一般式(H−1)中、L3は単結合またはヘテロ原子を含む2価の連結基を表し、R85は炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、炭素数6〜20のアリール基または炭素数7〜20のアリールアルキル基を表す。)R83、R84はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。X53、X54はそれぞれ独立に、下記一般式(P)で表される2価の連結基からなる群から選択される連結基を表す。)
【化14】

(一般式(P)中、*側が前記一般式(H−1)で表される化合物中の複素環に置換しているN原子との連結部位である。)
【請求項12】
前記水素結合性化合物の分子量が100〜1000であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項13】
前記セルロースアシレート樹脂に対する前記水素結合性化合物の含有量が30質量%以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムを含むことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムまたは請求項14に記載の位相差フィルムを含んでなる偏光板。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項14に記載の位相差フィルムまたは請求項15に記載の偏光板を含んでなる液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−94114(P2011−94114A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207238(P2010−207238)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】