説明

セルロースアシレートフィルム、偏光板および液晶表示装置

【課題】含水率が低いセルロースアシレートフィルムの提供。
【解決手段】セルロースアシレートと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、前記セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TV用途を中心に液晶表示装置の大型化が進み、これに伴い高画質化と低価格化が益々求められている。また、今後は電子看板用途等を中心に室外での使用頻度が増加することが予想され、従来よりもさらに過酷な環境下での使用にも耐えうる液晶表示装置が求められている。
【0003】
液晶表示装置における偏光板は、ポリビニルアルコール(PVA)とヨウ素を用いた偏光子をセルロースアシレートフィルム等の偏光板保護フィルムで挟みこんだ構成のものが広く使用されている。しかし、前記偏光板は高湿環境下で使用した際に、表示ムラが発生しやすく、また耐久性が低下することが問題であった。セルロースアシレートフィルムは一般的に含水率が高く、これらの問題は、高湿環境下でセルロースアシレートフィルムの寸法変化やレターデーション変化が生じるために発生すると考えられている。そのため、含水率を低減させたセルロースアシレートフィルムを用いることで、高湿下での寸法変化の抑制、レターデーション変化の抑制、偏光子耐久性の向上を達成して上記問題を解決することが期待されている。
【0004】
一方、セルロースアシレートフィルムに対して種々の添加剤を添加してフィルムの特性を改善する方法が知られている。このような添加剤として、側鎖に窒素原子と炭素原子を含む構造単位を有するポリマー類が知られている。
【0005】
例えば、特許文献1では、R1(R2)N−C(=O)−R3(前記R1〜R3は置換基を有していてもよい脂肪族基、芳香族基または複素環基を表す)の部分構造を有するエチレン性不飽和モノマーと少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させて得られるポリマーをセルロースアシレートフィルムに用いることで、幅手方向のレターデーションのバラツキが小さい等の優れた光学特性を有し、輝点異物の発生抑えられかつフィルム幅手方向の端部着色が少ないセルロースアシレートフィルムを提供できることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、側鎖にアミド結合を有するビニルポリマーがセルロース誘導体に対して優れた相溶性を示し、かつ、非揮発性、非移行性を示すことが記載されており、可塑剤としてセルロースアシレートフィルムに用いることで可撓性に優れたセルロースアシレートフィルムを提供できることが開示されている。
【0007】
【特許文献1】国際公開WO2008/120595号公報
【特許文献2】特開2000−212224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、本発明者らが特許文献1や2に記載の化合物をセルロースアシレートフィルムに添加したところ、特に含水率を低減させることができない点で不満が残るものであった。
【0009】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、含水率が低いセルロースアシレートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが上記課題を解決するために鋭意検討した結果、側鎖に窒素原子と炭素原子を含む構造単位を有するポリマーの中でも、特定の部分構造を有するポリマーをセルロースアシレートに添加すると、フィルムの含水率を大きく低減できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の構成である。
[1] セルロースアシレートと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【化1】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
[2] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが、下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、または下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーと少なくとも1種のその他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させて得られるポリマーであることを特徴とする[1]に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化2】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
[3] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーであることを特徴とする[2]に記載のセルロースアシレートフィルム。
[4] 前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR1が水素原子またはメチル基であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[5] 前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR2が置換基を有していてもよいフェニル基であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[6] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの重量平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[7] 前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを、前記セルロースアシレートに対して5〜50質量%含むことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[8] 前記セルロースアシレートが下記式(3)を満たすことを特徴とする[1]〜[7]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(3)
1.5≦A≦3.0
(式中、Aはセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
[9] 前記セルロースアシレートが下記式(4)を満たすことを特徴とする[1]〜[8]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(4)
2.0≦B≦3.0
(式中、Bはセルロースアシレートのアセチル置換度を表す。)
[10] 25℃相対湿度80%における含水率が5%以下であることを特徴とする[1]〜[9]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
[11] 偏光子と、該偏光子の両側に二枚の保護フィルムを有し、該保護フィルムのうち少なくとも一枚が[1]〜[10]のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
[12] 液晶セル、該液晶セルの両側に二枚の偏光板を有し、該偏光板のうち少なくとも一枚が[11]に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、含水率が低いセルロースアシレートフィルムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の液晶表示装置の一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムやその製造方法、それに用いる添加剤などについて詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中、「アミド結合」とは「−NH−C(=O)−」の連結基を意味し、窒素原子に水素原子が直結していない構造はアミド結合に含まれない。
【0015】
[セルロースアシレートフィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルム(以下、本発明のフィルムとも言う)は、セルロースアシレートと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、を含むことを特徴とする。
【化3】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
以下において、本発明のフィルムの特徴を詳しく説明する。
【0016】
<一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー>
(一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー)
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、側鎖にアミド結合を有する。ここで、本発明は、側鎖にアミド結合を有するポリマーの中でも、側鎖に窒素原子と酸素原子を含み、前記窒素原子が−C(=O)−連結基を介してポリマー主鎖に連結し、かつ、前記窒素原子が置換基R2と水素原子に結合している前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを用いた場合に、セルロースアシレートフィルムの含水率が顕著に低減されることを見出したものである。すなわち、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、側鎖にアミド結合(−NH−C(=O)−)を有するポリマーの中でも、(−NH−C(=O)−)の炭素原子側が主鎖に連結している点にも特徴があり、(−NH−C(=O)−)の窒素原子側が主鎖に連結しているN−ビニルアセトアミドなどとは異なる構造である。
いかなる理論に拘泥するものでもないが、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーは、疎水的かつ立体障害の大きいR2で表される芳香族基がアミド結合の近傍にある構造を有することによって、高湿下に本発明のフィルムを置いたときにアミド基と水との水素結合が抑制されて、その結果フィルムの含水率が低減されると考えられる。
まず、一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの構造の好ましい態様とセルロースアシレートフィルム中における添加量などについて説明する。
【0017】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、または下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーと少なくとも1種のその他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させて得られるポリマーであることが好ましい。
【化4】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
【0018】
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。
前記R1における脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基などを挙げることができ、その中でも炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
前記R1における芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、その中でもフェニル基が好ましい。
前記における複素環基としては、ピリジン基、ピリミジン基を挙げることができ、その中でもピリジン基が好ましい。
前記脂肪族基、芳香族基または複素環基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基、ヒドロキシル基、エステル基を挙げることができ、その中でもアルキル基が好ましい。
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR1は、水素原子または脂肪族基であることが好ましく、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基であることが特に好ましく、メチル基であることがより特に好ましい。
【0019】
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR2は、置換基を有していてもよい芳香族基を表す。
前記R2における芳香族基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができ、その中でもフェニル基が好ましい。
前記芳香族基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、エステル基、エーテル基、ケトン基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、カルボン酸を挙げることができ、その中でもハロゲン原子(その中でもフッ素原子、塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい)およびアルキル基(その中でも炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい)がより好ましい。さらに、本発明のフィルムのヘイズを低減させる観点からは、前記R2における芳香族基はハロゲン原子であることが特に好ましい。
また、前記芳香族基が置換基を有する場合、前記芳香族基が有する置換基の位置に特に制限はないが、前記芳香族基がフェニル基の場合はオルト位およびパラ位の少なくとも一方に置換基を有することが好ましく、オルト位およびパラ位の両方に置換基を有することがより好ましい。
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR2は、置換基を有していてもよいフェニル基であることが好ましく、置換基を有するフェニル基であることがより好ましくオルト位およびパラ位の両方に置換基を有するフェニル基であることが特に好ましい。
【0020】
本発明に有効な一般式(1)で表されるポリマーを下記に挙げるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【化5】

【0021】
(その他の繰り返し単位)
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー以外のその他の繰り返し単位を含んでいる共重合体であってもよい。
前記その他の繰り返し単位としては、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマー以外の、その他のエチレン性不飽和モノマーであることが好ましく、(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル類、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、クロルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アセト酢酸エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、特に好ましいものとしては、メチル(メタ)アクリレートモノマー、アセト酢酸エチル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0023】
(一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの構成)
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーは、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、または前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーと少なくとも1種のその他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させて得られるポリマーであってもよい。
前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーとその他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合比率については特に制限はないが、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーの共重合比率が高い方が、本発明のフィルムの含水率を低減させる観点から好ましく、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーであることが特に好ましい。
【0024】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの重量平均分子量が1000〜100000であることが好ましく、2000〜90000であることがより好ましく、5000〜70000であることが特に好ましい。
【0025】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの数平均分子量が500〜50000であることが好ましく、1000〜45000であることがより好ましく、3000〜35000であることが特に好ましい。
【0026】
本発明のフィルムは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを、前記セルロースアシレートに対して5〜50質量%含むことが好ましく、15〜50質量%含むことがより好ましく、20〜45質量%含むことが特に好ましい。
【0027】
<セルロースアシレート>
次に本発明のフィルムに含まれるセルロースアシレートについて詳しく説明する。
前記セルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートの原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0028】
前記セルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートのアシル基は1種類だけでもよいし、あるいは2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。前記セルロースアシレートフィルムに用いられるセルロースアシレートは、炭素数2〜4のアシル基を置換基として有することが好ましい。2種類以上のアシル基を用いるときは、そのひとつがアセチル基であることが好ましく、炭素数2〜4のアシル基としてはプロピオニル基またはブチリル基が好ましい。これらのセルロースアシレートにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。さらに粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
【0029】
まず、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートについて詳細に記載する。セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースの水酸基がアシル化している割合(各位における100%のアシル化は置換度1)の合計を意味する。
【0030】
前記セルロースアシレートは、下記式(3)を満たすことが好ましい。
式(3)
1.5≦A≦3.0
(式中、Aはセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
前記セルロースアシレートの総アシル置換度は、1.8〜3.0であることがより好ましく、2.2〜3.0であることが特に好ましい。
本発明では、総アシル置換度が低いセルロースアシレートを用いた場合においても、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーと組み合わせることで、セルロースアシレートフィルムの含水率を大幅に低下させることができる。
【0031】
前記セルロースアシレートは、下記式(4)を満たすことが好ましい。
式(4)
2.0≦B≦3.0
(式中、Bはセルロースアシレートのアセチル置換度を表す。)
前記セルロースアシレートのアセチル置換度は、2.2〜3.0であることがより好ましく、2.4〜3.0であることが特に好ましい。
【0032】
前記セルロースアシレートの炭素数2以上のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)であり、より特に好ましくはアセチル基(セルロースアシレートが、セルロースアセテートである場合)である。
【0033】
セルロ−スのアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
【0034】
触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、CH3CH2COCl)である場合には、塩基性化合物が用いられる。
【0035】
最も一般的なセルロ−スの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0036】
前記セルロースアシレートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
【0037】
前記セルロースアシレートフィルムは、前記樹脂としてセルロースアシレートを5〜99質量%含むことが透湿度の観点から好ましく、20〜99質量%含むことがより好ましく、50〜95質量%含むことが特に好ましい。
【0038】
<その他の添加剤>
前記セルロースアシレートフィルム中には、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマー以外の添加剤として、重縮合ポリマー、レターデーション調整剤(レターデーション発現剤およびレターデーション低減剤);フタル酸エステル、リン酸エステルなどの可塑剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;マット剤などの添加剤を加えることもできる。
【0039】
(重縮合ポリマー)
前記セルロースアシレートフィルムは、重縮合ポリマーを含むことが、ヘイズ低減の観点から好ましい。
【0040】
前記重縮合ポリマーとしては、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の高分子量添加剤を広く採用することができる。添加剤の含量は、セルロース系樹脂に対して、1〜35質量%であることが好ましく、4〜30質量%であることがより好ましく10〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0041】
前記セルロースアシレートフィルムに重縮合ポリマーとして用いられる高分子量添加剤は、その化合物中に繰り返し単位を有するものであり、数平均分子量が700〜10000のものが好ましい。高分子量添加剤は、溶液流延法において、溶媒の揮発速度を速める機能や、残留溶媒量を低減する機能も有する。さらに、機械的性質向上、柔軟性付与、耐吸水性付与、水分透過率低減等のフィルム改質の観点で、有用な効果を示す。
【0042】
ここで、本発明に用いられる重縮合ポリマーである高分子量添加剤の数平均分子量は、より好ましくは数平均分子量700〜8000であり、さらに好ましくは数平均分子量700〜5000であり、特に好ましくは数平均分子量1000〜5000である。
以下、本発明に用いられる重縮合ポリマーである高分子量添加剤について、その具体例を挙げながら詳細に説明するが、重縮合ポリマーである高分子量添加剤がこれらのものに限定されるわけでないことは言うまでもない。
また、前記重縮合ポリマーは、非リン酸エステル系のエステル系化合物であることが好ましい。但し、前記「非リン酸エステル系のエステル系化合物」は、リン酸エステルを含まず、エステル系である、化合物を意味する。
【0043】
重縮合ポリマーである高分子系添加剤としては、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)、ポリエステル系成分と他の成分の共重合体などが挙げられ、脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とアクリル系ポリマーの共重合体およびポリエステル系ポリマー(脂肪族ポリエステル系ポリマー、芳香族ポリエステル系ポリマー等)とスチレン系ポリマーの共重合体が好ましく、少なくとも共重合成分の1つとして芳香族環を含有するポリエステル化合物であることがより好ましい。
【0044】
前記ポリエステル系ポリマーは、ジカルボン酸と、脂肪族ジオールやアルキルエーテルジオールから選ばれる少なくとも1種類以上のジオールとの反応によって得られるものであり、かつ反応物の両末端は反応物のままでもよいが、さらにモノカルボン酸類やモノアルコール類またはフェノール類を反応させて、所謂末端の封止を実施してもよい。この末端封止は、特にフリーなカルボン酸類を含有させないために実施されることが、保存性などの点で有効である。
【0045】
かかる前記高分子量添加剤の合成は、常法により上記脂肪族ジカルボン酸とジオールおよび/または末端封止用のモノカルボン酸またはモノアルコール、とのポリエステル化反応またはエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。これらのポリエステル系添加剤については、村井孝一編者「添加剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。
【0046】
前記重縮合ポリマーである高分子系添加剤の詳細と好ましい態様は、特開2010−250298号公報に記載されている。
【0047】
(レターデーション低減剤)
本発明ではレターデーション低減剤として、リン酸系であるエステル系の化合物や、セルロースアシレートフィルムの添加剤として公知の非リン酸エステル系の化合物以外の化合物を広く採用することができる。
【0048】
高分子系レターデーション低減剤としては、リン酸系であるポリエステル系ポリマー、スチレン系ポリマーおよびアクリル系ポリマーおよびこれら等の共重合体から選択され、アクリル系ポリマーおよびスチレン系ポリマーが好ましい。また、スチレン系ポリマー、アクリル系ポリマーといった、負の固有複屈折を有するポリマーを少なくとも一種含まれることが好ましい。
【0049】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、以下を挙げることができる。これらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に劣化防止剤の混合などである。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はセルロースアシレート溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。さらにまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
【0050】
非リン酸エステル系の化合物以外の化合物である低分子量レターデーション低減剤としては、特に限定されないが、詳細は特開2007−272177号公報の[0066]〜[0085]に記載されている。
【0051】
レターデーション低減剤は、セルロース系樹脂に対し、0.01〜30質量%の割合で添加することが好ましく、0.1〜20質量%の割合で添加することがより好ましく、0.1〜10質量%の割合で添加することが特に好ましい。
【0052】
(レターデーション発現剤)
前記セルロースアシレートフィルムは、レターデーション値を発現するために、前記低置換度層に少なくとも1種のレターデーション発現剤を含有することが好ましい。前記レターデーション発現剤としては、特に制限はないが、棒状または円盤状化合物からなるものや、前記非リン酸エステル系の化合物のうちレターデーション発現性を示す化合物を挙げることができる。上記棒状または円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として好ましく用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。前記レターデーション発現剤中に含まれる円盤状化合物が、前記セルロースアシレート100質量部に対して3質量部未満であることが好ましく、2質量部未満であることがより好ましく、1質量部未満であることが特に好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
【0053】
レターデーション発現剤の詳細は公開技報2001−1745の49頁に記載されている。
【0054】
(可塑剤)
本発明に用いられる可塑剤としては、セルロースアシレートの可塑剤として知られる多くの化合物も有用に使用することができる。可塑剤としては、リン酸エステルまたはカルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびトリクレジルホスフェート(TCP)が含まれる。カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)およびジエチルヘキシルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)が含まれる。その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。フタル酸エステル系可塑剤(DMP、DEP、DBP、DOP、DPP、DEHP)が好ましく用いられる。DEPおよびDPPが特に好ましい。
【0055】
(酸化防止剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に公知の酸化防止剤、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、セルロース系樹脂100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加することが好ましい。
【0056】
(紫外線吸収剤)
本発明においてはセルロースアシレート溶液に、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤を加えてもよい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、光学フィルム全体中に質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0057】
(マット剤)
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムすべり性、および安定製造の観点からマット剤を加えてもよい。前記マット剤は、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
前記無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。前記二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
前記有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
【0058】
これらのマット剤をセルロースアシレート溶液へ添加する場合は、特にその方法に限定されずいずれの方法でも所望のセルロースアシレート溶液を得ることができれば問題ない。例えば、セルロースアシレートと溶媒を混合する段階で添加物を含有させてもよいし、セルロースアシレートと溶媒で混合溶液を作製した後に、添加物を添加してもよい。更にはドープを流延する直前に添加混合してもよく、所謂直前添加方法でありその混合はスクリュー式混練をオンラインで設置して用いられる。具体的には、インラインミキサーのような静的混合機が好ましく、また、インラインミキサーとしては、例えば、スタチックミキサーSWJ(東レ静止型管内混合器Hi−Mixer)(東レエンジニアリング製)のようなものが好ましい。なお、インライン添加に関しては、濃度ムラ、粒子の凝集等をなくすために、特開2003-053752号公報には、セルロースアシレートフィルムの製造方法において、主原料ドープに異なる組成の添加液を混合する添加ノズル先端とインラインミキサーの始端部の距離Lが、主原料配管内径dの5倍以下とする事で、濃度ムラ、マット粒子等の凝集をなくす発明が記載されている。さらに好ましい態様として、主原料ドープと異なる組成の添加液供給ノズルの先端開口部とインラインミキサーの始端部との間の距離(L)が、供給ノズル先端開口部の内径(d)の10倍以下とし、インラインミキサーが、静的無攪拌型管内混合器または動的攪拌型管内混合器であることが記載されている。さらに具体的には、セルロースアシレートフィルム主原料ドープ/インライン添加液の流量比は、10/1〜500/1、好ましくは50/1〜200/1であることが開示されている。さらに、添加剤ブリードアウトが少なく、かつ層間の剥離現象もなく、しかも滑り性が良好で透明性に優れた位相差フィルムを目的とした発明の特開2003-014933号にも、添加剤を添加する方法として、溶解釜中に添加してもよいし、溶解釜〜共流延ダイまでの間で添加剤や添加剤を溶解または分散した溶液を、送液中のドープに添加してもよいが、後者の場合は混合性を高めるため、スタチックミキサー等の混合手段を設けることが好ましいことが記載されている。
【0059】
前記セルロースアシレートフィルムにおいて、前記マット剤は、0.01〜5.0重量%の割合で含めることが好ましく、0.03〜3.0重量%の割合で含めることがより好ましく、0.05〜1.0重量%の割合で含めることが特に好ましい。
【0060】
<セルロースアシレートフィルムの構成と物性>
(フィルムの層構造)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、単層であっても、2層以上の積層体であってもよい。
【0061】
(含水率)
本発明のセルロースアシレートフィルムの含水率は一定温湿度における平衡含水率を測定することにより評価することができる。平衡含水率は前記温湿度に24時間放置した後に、平衡に達した試料の水分量をカールフィッシャー法で測定し、水分量(g)を試料重量(g)で除して算出したものである。
本発明のセルロースアシレートフィルムの25℃相対湿度80%における含水率は7質量%以下であることが好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、4質量%以下がさらに好ましい。フィルムの含水率を小さくすることにより、本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板保護フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に、高湿下における液晶表示装置の表示ムラを発生しにくくすることができる。
【0062】
(ヘイズ)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.7%未満であることがより好ましく、0.5%未満であることが特に好ましい。ヘイズを0.5%未満とすることにより、液晶表示装置に組み込んだ際のコントラスト比を改善することができる。また、フィルムの透明性がより高くなり、光学フィルムとしてより用いやすくなるという利点もある。
【0063】
(膜厚)
本発明のセルロースアシレートフィルムは膜厚が30〜100μmであることが好ましく、30〜80μmであることがより好ましく、30〜70μmであることがさらに好ましい。30μm以上とすることにより、ウェブ状のフィルムを作製する際のハンドリング性が向上し好ましい。また、70μm以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性を維持しやすい。
【0064】
(フィルム幅)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルム幅が700〜3000mmであることが好ましく、1000〜2800mmであることがより好ましく、1500〜2500mmであることが特に好ましい。
【0065】
<セルロースアシレートフィルムの製造方法>
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法について詳細に説明する。
【0066】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ソルベントキャスト法により製造されることが好ましい。ソルベントキャスト法を利用したセルロースアシレートフィルムの製造例については、米国特許第2,336,310号、同2,367,603号、同2,492,078号、同2,492,977号、同2,492,978号、同2,607,704号、同2,739,069号及び同2,739,070号の各明細書、英国特許第640731号及び同736892号の各明細書、並びに特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号及び同62−115035号等の公報を参考にすることができる。また、前記セルロースアシレートフィルムは、延伸処理を施されていてもよい。延伸処理の方法及び条件については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号等の各公報を参考にすることができる。
【0067】
(流延方法)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
【0068】
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるドープ(樹脂溶液)の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
また、前記金属支持体の材質については特に制限はないが、SUS製(例えば、SUS 316)であることがより好ましい。
【0069】
(延伸処理)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、製膜された延伸する工程を含んでいてもよい。本発明の光学補償フィルムは波長分散特性も改善されていることが好ましいが、延伸処理によってこのような光学性能を付与することが可能となり、さらに前記セルロースアシレートフィルムに所望のレターデーションを付与することが可能である。前記セルロースアシレートフィルムの延伸方向はフィルム搬送方向と搬送方向に直交する方向(巾方向)のいずれでも好ましいが、フィルム搬送方向に直交する方向(幅方向)であることが、後に続く該フィルムを用いた偏光板加工プロセスの観点から特に好ましい。
【0070】
幅方向に延伸する方法は、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、同11−48271号などの各公報に記載されている。長手方向の延伸の場合、例えば、フィルムの搬送ローラーの速度を調節して、フィルムの剥ぎ取り速度よりもフィルムの巻き取り速度の方を速くするとフィルムは延伸される。幅方向の延伸の場合、フィルムの巾をテンターで保持しながら搬送して、テンターの巾を徐々に広げることによってもフィルムを延伸できる。フィルムの乾燥後に、延伸機を用いて延伸すること(好ましくはロング延伸機を用いる一軸延伸)もできる。
【0071】
本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の保護膜として使用する場合には、偏光板を斜めから見たときの光漏れを抑制するため、偏光子の透過軸と本発明の樹脂フィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状の前記セルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよいが、本発明の製造方法では残留溶媒を含んだ状態で延伸を行うため、製膜工程の途中で延伸することが好ましい。
【0072】
(乾燥)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法では、前記セルロースアシレートフィルムを乾燥する工程と、乾燥後の本発明の樹脂フィルムをTg−10℃以上の温度で延伸する工程とを含むことが、レターデーション発現性の観点から好ましい。
【0073】
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0074】
(剥離)
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、前記ドープ膜を前記金属支持体から剥ぎ取る工程を含むことが好ましい。前記セルロースアシレートフィルムの製造方法における剥離の方法については特に制限はなく、公知の方法を用いた場合に剥離性を改善することができる。
【0075】
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0076】
以上のようにして得られた、前記セルロースアシレートフィルムの長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
【0077】
一般的に、大画面表示装置において、斜め方向のコントラストの低下及び色味付きが顕著となるので、本発明のセルロースアシレートフィルムは、特に大画面液晶表示装置に用いるのに適している。大画面用液晶表示装置用の光学補償フィルムとして用いる場合は、例えば、フィルム幅を1470mm以上として成形するのが好ましい。また、本発明の偏光板保護フィルムには、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様のフィルムのみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様のフィルムも含まれる。後者の態様の偏光板保護フィルムは、その状態で保管・搬送等され、実際に液晶表示装置に組み込む際や偏光子等と貼り合わされる際に、所望の大きさに切断されて用いられる。また、同様に長尺状に作製されたポリビニルアルコールフィルム等からなる偏光子等と、長尺状のまま貼り合わされた後に、実際に液晶表示装置に組み込む際に、所望の大きさに切断されて用いられる。ロール状に巻き上げられた光学補償フィルムの一態様としては、ロール長が2500m以上のロール状に巻き上げられた態様が挙げられる。
【0078】
[偏光板]
また、本発明は、本発明のセルロースアシレートフィルムを少なくとも一枚用いることを特徴とする偏光板にも関する。
本発明の偏光板は、偏光子と、該偏光子の両側に二枚の保護フィルムを有し、該保護フィルムのうち少なくとも一枚が本発明のセルロースアシレートフィルムであることが好ましく、偏光子と該偏光子の片面に本発明のフィルムを有することがより好ましい。本発明のフィルムと同様、本発明の偏光板の態様は、液晶表示装置にそのまま組み込むことが可能な大きさに切断されたフィルム片の態様の偏光板のみならず、連続生産により、長尺状に作製され、ロール状に巻き上げられた態様(例えば、ロール長2500m以上や3900m以上の態様)の偏光板も含まれる。大画面液晶表示装置用とするためには、上記した通り、偏光板の幅は1470mm以上とすることが好ましい。
本発明の偏光板の具体的な構成については、特に制限はなく公知の構成を採用できるが、例えば、特開2008−262161号公報の図6に記載の構成を採用することができる。
【0079】
[液晶表示装置]
本発明は、本発明のセルロースアシレートフィルムまたは本発明の偏光板を有する液晶表示装置にも関する。
本発明の液晶表示装置は液晶セルと該液晶セルの両側に配置された一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、前記偏光板の少なくとも一方が本発明の偏光板であることを特徴とする。本発明の液晶表示装置は、IPS、OCBまたはVAモードの液晶表示装置であることが好ましい。
本発明の液晶表示装置の具体的な構成としては特に制限はなく公知の構成を採用できる。また、特開2008−262161号公報の図2に記載の構成も好ましく採用することができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
【0081】
[合成例]
<合成例1>
(PhA−1モノマーの合成)
2リットルの三口フラスコに、N,N−ジメチルアセトアミド600gを添加し、アニリン(200.0g、2.148mol)を溶解し、0℃に冷却したところへ、メタクリル酸クロリド(246.9g、2.362mol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま30分攪拌した後、反応液を25℃まで加温し、更に2時間攪拌を行った。反応液を水5.5Lに滴下し、析出した固体を酢酸エチルに溶解させ、食塩水を加えて水層から抽出した。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を減圧留去、減圧乾燥を行い、白色固体PhA−1モノマー(以降、PhA−1M)を403.5g得た。
【0082】
(PhA−1の合成)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた300ミリリットル三口フラスコに、メチルエチルケトン20.0g、PhA−1M80.0gを仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、メチルエチルケトン20.0g、及び「V−601」(和光純薬(株)製)2.0gからなる混合溶液を、30分で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、3時間30分攪拌後、(1)「V−601」0.50g、メチルエチルケトン2.0gからなる溶液を加え、2時間攪拌を行った。続いて、(1)の工程を2回繰り返し、さらに2時間攪拌を続けた後、2.0リットルのn−ヘキサンに注いで乾燥した。得られた薄黄色固体75.0gをアセトン700gに溶解させ、水8Lへ注いで乾燥し、白色固体(PhA−1)72.2gを得た。該ポリマーの重量平均分子量(Mw)は9400(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))であった。
【0083】
<合成例2、3>
合成例1の(PhA−1M)の合成において、アニリンの代わりに、それぞれ2,4−ジフルオロアニリン、2,4,6−トリメチルアニリンへと変更し、仕込みモル比が合成例1と同一となるように仕込み量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、各モノマーを得た。また、表1記載の分子量となるように開始剤量を変更して、PhA−2およびPhA−3を得た。
【0084】
<合成例4>
合成例1の(PhA−1M)の合成において、メタクリル酸クロリドの代わりにアクリル酸クロリドへ変更し、仕込みモル比が合成例1と同一となるように仕込み量を変更したこと以外は合成例1と同様にして、PhA−4モノマーを得た。また、表1記載の分子量となるように開始剤量を変更して、PhA−4を得た。
【0085】
[実施例101]
(1)セルロースアシレートフィルムの製膜
<セルロースアシレートの調製>
アセチル置換度2.85のセルロースアシレートを調製した。これは、触媒として硫酸(セルロース100質量部に対し7.8質量部)を添加し、アシル置換基の原料となるカルボン酸を添加し40℃でアシル化反応を行った。またアシル化後に40℃で熟成を行った。さらにこのセルロースアシレートの低分子量成分をアセトンで洗浄し除去した。
【0086】
(セルロースアシレート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、基層用ドープを調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
セルロースアシレート溶液の組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.85のセルロースアセテート
100.0質量部
下記ポリマーPhA−1 11.0質量部
メチレンクロライド 457質量部
メタノール 68質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0087】
【化6】


【0088】
<流延>
得られたドープをガラス板上に流延した。ガラス板上の温度は14〜18℃に設定した。
流延後ガラス状のウェブを70℃で6分間乾燥後、セルロースアシレートフィルムを剥ぎ取り、クリップで挟んだ後、100℃で10分、次に140℃で20分乾燥し、実施例1のセルロースアシレートフィルムを得た。得られたセルロースアシレートフィルムの厚みは60μmであった。
【0089】
[実施例2〜16および比較例1〜13]
〔実施例2〜16および比較例1〜13の偏光板保護フィルムの作製〕
実施例1においてセルロースアシレートの種類、添加ポリマーの種類および添加量を下記表1に記載したとおりに変更した以外は同様にして、実施例2〜16および比較例1〜13の偏光板保護フィルムを製造した。なお、比較化合物A−1〜A−4は下記の繰り返し単位からなる構造のポリマーである。
【0090】
【化7】

【0091】
[評価]
(含水率の測定)
25℃相対湿度80%の環境下24時間調湿後、平沼産業(株)社製AQ−2000カールフィッシャー水分測定装置で平衡含水率を測定した。
得られた結果を下記表1に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
表1の結果から、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーを添加したセルロースアシレートフィルムは含水率が小さいことがわかった。
【0094】
(ヘイズの測定)
フィルム試料40mm×80mmを、25℃相対湿度60%の環境下で、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)でJIS K−6714に従って測定した。
実施例3、実施例4、実施例11、実施例12のフィルムではヘイズ値はそれぞれ0.16%、0.33%、0.19%、0.15%という低いヘイズを示した。また比較例2、比較例3のフィルムではヘイズ値が5%以上となった。
【0095】
[実施例201]
<製造機によるフィルムの製造>
(セルロースアシレート溶液C−1の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液C−1を調製した。
【0096】
セルロースアシレート溶液C−1の組成
・セルロースアシレート(アセチル置換度2.85) 100質量部
・上記合成例1で合成したポリマー 11質量部
・メチレンクロライド 384質量部
・メタノール 69質量部
・ブタノール 9質量部
【0097】
(マット剤分散液D−1の調製)
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を溶解し、マット剤分散液D−1を調製した。
【0098】
マット剤分散液D−1の組成
・シリカ粒子分散液(平均粒径16nm)
"AEROSIL R972"、日本アエロジル(株)製
10.0質量部
・メチレンクロライド 72.8質量部
・メタノール 3.9質量部
・ブタノール 0.5質量部
・セルロースアシレート溶液C−1 10.3質量部
【0099】
(セルロースアシレートフィルムの作製)
セルロースアシレート溶液C−1とマット剤分散液D−1を、加熱しながら充分に攪拌して各成分を溶解し、ドープを調製した。得られたドープを30℃に加温し、流延ギーサーを通して直径3mのドラムである鏡面ステンレス支持体上に流延した。支持体の表面温度は−5℃に設定し、塗布幅は1470mmとした。流延部全体の空間温度は、15℃に設定した。そして、流延部の終点部から50cm手前で、流延して回転してきたセルロースアシレートフィルムをドラムから剥ぎ取った後、両端をピンテンターでクリップした。剥ぎ取り直後のセルロースエステルウェブの残留溶媒量は70%およびセルロースアシレートウェブの膜面温度は5℃であった。
【0100】
ピンテンターで保持されたセルロースアシレートウェブは、乾燥ゾーンに搬送した。初めの乾燥では45℃の乾燥風を送風した。次に110℃で5分、さらに140℃で10分乾燥した。得られたセルロースアシレートフィルムの膜厚は60μmであった。
【0101】
得られた実施例201のセルロースアシレートフィルムの評価を実施例1(但し、ヘイズについては実施例3)と同様の方法で行ったところ、実施例1と同様に良好なヘイズ、含水率および面状であった。
【0102】
<偏光板および液晶表示装置の製造>
〔偏光板保護フィルムの鹸化処理〕
作製した実施例201の偏光板保護フィルムを、2.3mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で3分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05mol/Lの硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、実施例201の偏光板保護フィルムについて表面の鹸化処理を行った。
【0103】
〔偏光板の作製〕
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
鹸化処理した実施例1の偏光板保護フィルムを、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の片側に貼り付けた。市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に同様の鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、作成した実施例201の偏光板保護フィルムを貼り付けてある側とは反対側の偏光子の面に鹸化処理後のセルローストリアセテートフィルムを貼り付けた。
この際、偏光子の透過軸と作成した実施例201の偏光板保護フィルムの遅相軸とは直交するように配置した。また、偏光子の透過軸と市販のセルローストリアセテートフィルムの遅相軸についても、直交するように配置した。
このようにして実施例201の偏光板を作製した。
【0104】
[実施例202〜216および比較例201〜213]
〔製造機によるセルロースアシレートフィルムの製造、偏光板保護フィルムの鹸化処理と偏光板の作製〕
用いたセルロースアシレートの種類、ポリマーの種類および添加量を上記表1に記載の実施例2〜16および比較例1〜13と同様に変更した以外は実施例201と同様な方法でフィルムを作成し、それぞれ実施例202〜216、比較例201〜213のセルロースアシレートフィルムとした。
実施例202〜216の偏光板保護フィルムおよび比較例201〜213の偏光板保護フィルムについても、それぞれ実施例201と同様にして鹸化処理と偏光板の作製を行い、各実施例および比較例の偏光板を作製した。
【0105】
〔液晶表示装置の作製および評価〕
市販の液晶テレビ(SONY(株)のブラビアJ5000)の視認者側の偏光板をはがし、実施例201〜216の偏光板保護フィルムを用いた本発明の偏光板を、実施例201〜216の偏光板保護フィルムが液晶セル側となるように、粘着剤を介して貼り付けた。視認者側の偏光板の透過軸が上下方向に配置とした。また、実施例201〜216の偏光板保護フィルムの代わりに比較例201〜213の偏光板保護フィルムを用いた以外は同様にして、比較例の液晶表示装置を作製した。このようにして作製した液晶表示装置を60℃相対湿度90%の環境下に24時間放置した後に表示ムラを確認したところ、本発明の液晶表示装置は、各比較例の偏光板保護フィルムを使用した液晶表示装置に対して、ムラが生じない、もしくはムラの発生面積が小さく好ましかった。
【符号の説明】
【0106】
11 偏光子
12 偏光子
13 液晶セル
14 各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム
15 各実施例および比較例のセルロースアシレートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレートと、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーと、を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【化1】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが、下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマー、または下記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーと少なくとも1種のその他のエチレン性不飽和モノマーとを共重合させて得られるポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【化2】

(式中、R1は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、前記脂肪族基、芳香族基または複素環基は置換基を有していてもよい。R2は置換基を有していてもよい芳香族基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーが、前記一般式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーを重合して得られるポリマーであることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR1が水素原子またはメチル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
前記一般式(1)または前記一般式(2)におけるR2が置換基を有していてもよいベンゼン環であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーの重量平均分子量が1000〜100000であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むポリマーを、前記セルロースアシレートに対して5〜50質量%含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項8】
前記セルロースアシレートが下記式(3)を満たすことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(3)
1.5≦A≦3.0
(式中、Aはセルロースアシレートの総アシル置換度を表す。)
【請求項9】
前記セルロースアシレートが下記式(4)を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
式(4)
2.0≦B≦3.0
(式中、Bはセルロースアシレートのアセチル置換度を表す。)
【請求項10】
25℃相対湿度80%における含水率が5%以下であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項11】
偏光子と、該偏光子の両側に二枚の保護フィルムを有し、該保護フィルムのうち少なくとも一枚が請求項1〜10のいずれか一項に記載のセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする偏光板。
【請求項12】
液晶セル、該液晶セルの両側に二枚の偏光板を有し、該偏光板のうち少なくとも一枚が請求項11に記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−172025(P2012−172025A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33762(P2011−33762)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】