説明

セルロースナノファイバーの製造方法

【課題】流動性が高く、かつ透明度の高いセルロースナノファイバーを提供する。
【解決手段】(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物又はこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用いて粉末セルロースを酸化し、次いで超高圧ホモジナイザーを用いて100MPa以上の圧力で湿式微粒化処理してナノファイバー化させることにより、濃度2%(w/v)の水分散液のB型粘度(60rpm、20℃)が500〜3000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであり、濃度0.1%(w/v)の水分散液の660nm光の透過率が90%以上であるセルロースナノファイバーを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性が高く、かつ透明度が高いセルロースナノファイバーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系原料を触媒量の2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)と安価な酸化剤である次亜塩素酸ナトリウムとの共存下で処理すると、セルロースのミクロフィブリルの表面にカルボキシル基を効率よく導入することができ、このカルボキシル基を導入したセルロース系原料は、水中でミキサーなどの簡単な機械処理を行なうことにより、セルロースナノファイバー水分散液へと調製することができることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
セルロースナノファイバーは、生分解性のある水分散型新規素材である。セルロースナノファイバーの表面には酸化反応によりカルボキシル基が導入されているため、セルロースナノファイバーを、カルボキシル基を基点として、自由に改質することができる。また、上記の方法により得られたセルロースナノファイバーは、分散液の形態であるため、各種水溶性ポリマーとブレンドしたり、或いは有機・無機系顔料と複合化することで品質の改変を図ることもできる。さらに、セルロースナノファイバーをシート化したり繊維化することも可能である。セルロースナノファイバーのこのような特性を活かし、高機能包装材料、透明有機基盤部材、高機能繊維、分離膜、再生医療材料などに応用することが想定されている。今後、セルロースナノファイバーの特徴を最大限活用することで循環型の安全・安心社会形成に不可欠な新規高機能性商品の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Saito, T., et al., Cellulose Commun., 14 (2), 62 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法、すなわち、セルロース系原料をTEMPOを用いて酸化してミキサーで解繊・微粒化することにより得られたセルロースナノファイバー分散液は、0.3〜0.5%(w/v)といった程度の低い濃度でもB型粘度(60rpm、20℃)が800〜4000mPa・s程度というように、非常に高い粘度を有しており、取り扱いが容易ではなく、その応用範囲は実際には限られていた。例えば、セルロースナノファイバー分散液を基材に塗布して基材上にフィルムを形成させる場合、分散液の粘度が高すぎると均質に塗布することができないため、分散液のB型粘度(60rpm、20℃)を500〜3000mPa・s程度に調整しなければならず、そのためには、分散液中のセルロースナノファイバーの濃度を0.2〜0.4%(w/v)程度の低い濃度に設定せざるを得なかった。しかしながら、そのような低濃度の分散液を用いる場合には、所望のフィルム厚みが達成されるまで何度も塗布と乾燥とを繰り返し実施せざるを得ず、効率が悪いという問題があった。
【0006】
また、セルロースナノファイバー分散液を顔料及びバインダーを含む塗料に混ぜて紙などに塗布する場合、分散液の粘度が高すぎると塗料中に均一に混合させることができないため、分散液の濃度を低くして低粘度化させなければならないが、このような低濃度の分散液を用いると塗料の濃度が希薄となり、塗布に必要な十分な粘性が確保できないため塗布し難くなったり、乾燥負荷が増大したり、また、塗料が原紙に浸透することにより有効塗膜が薄くなって光沢発現性や表面強度、印刷むらの抑制などの塗膜に期待される所望の機能が発現しないという問題もあった。
【0007】
このように、TEMPOを用いて酸化して得られたセルロース系原料をミキサーを用いて微粒化処理する従来の方法では、得られる分散液の粘度が非常に高くなり、様々な問題を生じていた。また、粘度が高すぎると、攪拌羽周辺のみで分散が進行するため、不均一な分散が生じ、透明性の低い分散液となるという問題もあった。
【0008】
また、上記の方法により得られたセルロースナノファイバー分散液は、透明度が低いという問題もあった。
【0009】
以上の課題に鑑み、本発明は、流動性が高く、かつ高い透明度を有するセルロースナノファイバーを製造できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物の存在下で、酸化剤を用い水中にて粉末セルロースを酸化し、該酸化された粉末セルロースを超高圧ホモジナイザーを用いて圧力100MPa以上で湿式微粒化処理することにより、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜3000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sというような高い流動性を有し、かつ高い透明度を有するセルロースナノファイバーを製造できることを見出した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、N−オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物との存在下で粉末セルロースを酸化し、得られた酸化された粉末セルロースを圧力100MPa以上の超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理することにより、高濃度であっても流動性に優れていて取り扱いがしやすく、かつ透明性にも優れているセルロースナノファイバーの分散液を効率的に製造することができる。本発明により得られたセルロースナノファイバー分散液は、濃度2%(w/v)という高濃度であってもB型粘度(60rpm、20℃)が500〜3000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sの範囲にあり、流動性に優れているため、例えば、セルロースナノファイバー分散液を基材に塗布して基材上にフィルムを形成させる際に、分散液を塗料としてそのまま用いることができ、また、1回塗布するだけで5〜30μm程度の厚さを有するフィルムを形成できるといった利点がある。従来は、塗布可能な500〜3000mPa・s(B型粘度、60rpm、20℃)程度の粘度を有する塗料を調製するためには、セルロースナノファイバーの濃度を0.2〜0.4%(w/v)といった低い濃度に設定せざるを得ず、5〜30μm程度の厚さを有するフィルムを作成するには、塗布と乾燥を何度も繰り返し行なう必要があった。本発明により得られるセルロースナノファイバー分散液の高濃度で流動性が高いという特徴は、非常に優れたものである。
【0012】
また、本発明により得られるセルロースナノファイバーは、高い透明度を有している。本発明により得られたセルロースナノファイバーの分散液中には、ナノファイバー化されていないセルロースや、ナノファイバー同士の凝集がほとんど存在していないため、本発明により得られた分散液を用いると、例えば、透明性に優れ、かつバリアー性に優れたフィルムを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のセルロースナノファイバーは、水に分散させると透明な液体となり、濃度2%(w/v)の水分散液におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜3000mPa・s、好ましくは500〜2000mPa・sであることから適度な粘調性を示すので、そのままで、又は所望の濃度に調整することにより塗料として好適に使用できる。このセルロースナノファイバーは、粉末セルロースを、(1)N−オキシル化合物と、並びに(2)臭化物、ヨウ化物又は混合物の存在下で、酸化剤を用いて酸化し、得られた酸化された粉末セルロースを、圧力100MPa以上の超高圧ホモジナイザーを用いて湿式微粒化処理してナノファイバー化することにより製造することができる。
【0014】
(N−オキシル化合物)
本発明で用いるN−オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であれば、いずれの化合物も使用できる。例えば、本発明で使用されるN−オキシル化合物としては、下記一般式(式1)で示される物質が挙げられる。
【0015】
【化1】

【0016】
(式1中、R1〜R4は同一又は異なる炭素数1〜4程度のアルキル基を示す。)
式1で表される化合物のうち、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−N−オキシラジカル(以下、TEMPOと称する)及び4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジン−オキシラジカル(以下、4−ヒドロキシTEMPOと称する)を発生する化合物が好ましい。また、4−ヒドロキシTEMPOから得られる誘導体も好ましい。4−ヒドロキシTEMPOの誘導体としては、4−ヒドロキシTEMPOの水酸基を炭素数4以下の直鎖或いは分岐状炭素鎖を有するアルコールでエーテル化するか、カルボン酸或いはスルホン酸でエステル化したものを使用することが好ましい。この際、アルコール及びカルボン酸の炭素数が4以下であれば飽和、不飽和結合の有無に関わらず水溶性となり、酸化触媒としてより効率よく機能するから好ましい。4−ヒドロキシTEMPO誘導体としては、例えば、以下の式2〜式4の化合物が挙げられる。
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
(式2〜4中、Rは炭素数4以下の直鎖又は分岐状炭素鎖である。)
さらに、下記式5で表されるN−オキシル化合物のラジカル、すなわち、アザアダマンタン型ニトロキシラジカルも、短時間で、均一なセルロースナノファイバーを製造できるため、とりわけ好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
(式5中、R5及びR6は、同一又は異なる水素又はC1〜C6の直鎖若しくは分岐鎖アルキル基を示す。)
4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物の使用量は、粉末セルロースをナノファイバー化できる触媒量であれば特に制限されない。例えば、絶乾1gの粉末セルロースに対して、0.01〜10mmol、好ましくは0.01〜1mmol、さらに好ましくは0.05〜5mmol程度を用いることができる。
【0023】
(臭化物またはヨウ化物)
本発明の方法では、前記の4−ヒドロキシTEMPO誘導体などのN−オキシル化合物のラジカルと、臭化物、ヨウ化物及びこれら混合物からなる群から選択される化合物との存在下で、酸化剤を用い水中にて粉末セルロースを酸化する。酸化された粉末セルロースは効率良くナノファイバー化することができる。
【0024】
臭化物またはヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。臭化物またはヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gの粉末セルロースに対して、0.1〜100mmol、好ましくは0.1〜10mmol、さらに好ましくは0.5〜5mmol程度を用いることができる。
【0025】
(酸化剤)
粉末セルロースの酸化の際に用いる酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、過ハロゲン酸またはそれらの塩、ハロゲン酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。中でも、生産コストの観点から、現在工業プロセスにおいて最も汎用されている安価で環境負荷の少ない次亜塩素酸ナトリウムが好適である。酸化剤の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択できる。例えば、絶乾1gの粉末セルロースに対して、0.5〜500mmol、好ましくは0.5〜50mmol、さらに好ましくは2.5〜25mmol程度を用いることができる。
【0026】
(粉末セルロース)
本発明では、セルロース系原料として、粉末セルロースを用いる。本発明において、粉末セルロースとは、木材パルプの非結晶部分を酸加水分解処理で除去した後、粉砕・篩い分けすることで得られる微結晶性セルロースからなる棒軸状粒子である。粉末セルロースにおけるセルロースの重合度は好ましくは100〜500程度であり、X線回折法による粉末セルロースの結晶化度は好ましくは70〜90%であり、レーザー回折式粒度分布測定装置による体積平均粒子径は好ましくは100μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。体積平均粒子径が、100μm以下であると、流動性に優れるセルロースナノファイバー分散液を得ることができる。本発明で用いる粉末セルロースとしては、例えば、精選パルプを酸加水分解した後に得られる未分解残渣を精製・乾燥し、粉砕・篩い分けするといった方法により製造される棒軸状である一定の粒径分布を有する結晶性セルロース粉末を用いてもよいし、KCフロックR(日本製紙ケミカル社製)、セオラスTM(旭化成ケミカルズ社製)、アビセルR(FMC社製)などの市販品を用いてもよい。
【0027】
(酸化反応条件)
本発明の方法は温和な条件であっても酸化反応を円滑に進行させることができるという特色がある。そのため、反応温度は15〜30℃程度の室温であっても粉末セルロースを効率良く酸化できる。なお、反応の進行に伴ってセルロース中にカルボキシル基が生成し、反応液のpH低下が認められる。そのため、酸化反応を効率良く進行させるためには、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加することにより、反応液のpHを9〜12、好ましくは10〜11程度に維持することが望ましい。酸化反応における反応時間は、適宜設定することができ、特に限定されないが、例えば、0.5〜4時間程度である。
【0028】
(湿式微粒化処理)
本発明のセルロースナノファイバーは、前述の方法により酸化された粉末セルロースを、超高圧ホモジナイザーを用いて、100MPa以上の圧力で湿式微粒化処理して解繊することにより製造することができる。超高圧ホモジナイザー装置としては、公知の装置を必要に応じて単独もしくは2種類以上組合せて用いることができる。
【0029】
湿式微粒化処理における圧力が、100MPa未満であると、得られる分散液のB型粘度が増大して分散液の流動性が悪化する。さらに、透明度も顕著に悪化する。したがって、湿式微粒化処理の圧力は、100MPa以上でなければならず、好ましくは120MPa以上、より好ましくは140MPa以上がよい。
【0030】
超高圧ホモジナイザーでの湿式微粒化処理に先立って、必要に応じて、高速せん断ミキサーや高圧ホモジナイザーなどの公知の混合、攪拌、乳化、分散装置で酸化された粉末セルロースを予備処理してもよい。
【0031】
(セルロースナノファイバー)
本発明のセルロースナノファイバーは、幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースシングルミクロフィブリルである。本発明において、「ナノファイバー化する」とは、粉末セルロースを、幅2〜5nm、長さ1〜5μm程度のセルロースのシングルミクロフィブリルであるセルロースナノファイバーへと加工することを意味する。
【0032】
本発明により得られたセルロースナノファイバー分散液は、濃度2%(w/v)におけるB型粘度(60rpm、20℃)が500〜3000mPa・sであり好ましくは、500〜2000mPa・sであり、最も好ましくは、600〜1500mPa・sである。本発明により得られるセルロースナノファイバー分散液は、良好な流動性を有するため、塗料の調製などの加工がし易いという利点を有する。
【0033】
また、本発明により得られたセルロースナノファイバー分散液は、濃度0.1%(w/v)における光透過率(660nm)(透明度の指標である。)が90%以上であり、好ましくは95%以上である。透明度が90%以上であると、分散液中に、ナノファイバー化されていないセルロースや、ナノファイバー同士の凝集がほとんど存在していないと言うことができ、そのような分散液を用いてフィルムを形成すると、透明性及びバリアー性に優れたフィルムを得ることができる。
【0034】
以上のとおり、本発明により製造されるセルロースナノファイバーは、流動性と透明性に優れており、さらには、バリヤー性や耐熱性にも優れているので、包装材料等の様々な用途に使用することが可能である。
【0035】
なお、本発明において、セルロースナノファイバー分散液のB型粘度は、当業者に慣用される通常のB型粘度計を用いて測定することができ、例えば、東機産業社のTV−10型粘度計を用いて、20℃及び60rpmの条件で測定することができる。
【0036】
また、セルロースナノファイバー分散液の透明度は、紫外・可視分光光度計を用いて660nm光の透過率として測定することができる。
【0037】
また、本発明のセルロースナノファイバーのカルボキシル基量としては0.5mmol/g以上であるものが望ましい。セルロースナノファイバーのカルボキシル基量は、セルロースナノファイバーの0.5質量%スラリーを60ml調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定し、電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
【0038】
カルボキシル基量〔mmol/gパルプ〕= a〔ml〕× 0.05/セルロースナノファイバー質量〔g〕
(本発明の作用)
本発明では、N−オキシル化合物を用いて酸化された粉末セルロースを100MPa以上の圧力の超高圧ホモジナイザーで湿式微粒化処理することにより、高濃度であっても流動性と透明性に優れているセルロースナノファイバー分散液を得ることができる。その理由は、以下のように推察される。N−オキシル化合物を用いて酸化された粉末セルロースの表面にはカルボキシル基が局在しており、水和層が形成されている。そのため、該原料同士の間には、カルボキシル基同士の電荷反発力の作用で、通常のパルプでは見られない微視的隙間が存在すると考えられる。そして、該原料を100MPa以上という超高圧下で湿式微粒化処理することにより、セルロース鎖が効率よく分断され、最終的にセルロース鎖の短繊維化が促進されると考えられる。セルロース鎖の短繊維化により、得られる分散液のB型粘度が顕著に低下し、流動性が向上すると考えられる。また、セルロース鎖の短繊維化により、分散液の透明度が顕著に向上すると考えられる。
【実施例】
【0039】
以下に実施例にて本発明をより詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
【0040】
[実施例1]
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径24μm)15g(絶乾)を、TEMPO(Sigma Aldrich社)78mg(0.5mmol)と臭化ナトリウム755mg(7mmol)を溶解した水溶液500mlに加え、粉末セルロースが均一に分散するまで攪拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(有効塩素5%)50mlを添加した後、0.5N塩酸水溶液でpHを10.3に調整し、酸化反応を開始した。反応中は系内のpHは低下するが、0.5N水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。2時間反応した後、遠心操作(6000rpm、30分、20℃)で酸化した粉末セルロースを分離し、十分に水洗することで酸化処理した粉末セルロースを得た。酸化処理した粉末セルロースの2%(w/v)スラリーをミキサーにより12,000rpm、15分処理し、さらに粉末セルローススラリーを超高圧ホモジナイザーにより140MPaの圧力で5回処理したところ、透明なゲル状分散液が得られた。得られた2%(w/v)のセルロースナノファイバー分散液のB型粘度(60rpm、20℃)をTV−10型粘度計(東機産業社)を用いて測定し、0.1%(w/v)のセルロースナノファイバー分散液の透明度(660nm 光の透過率)をUV−VIS分光光度計 UV−265FS(島津製作所社)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例2]
TEMPOの代わりに、4−メトキシTEMPOを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイアバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1]
粉末セルロースの代わりに、サルファイトパルプを用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0043】
[比較例2]
粉末セルロースの代わりに、サルファイトパルプを用い、140MPaの超高圧ホモジナイザーで40回処理した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0044】
[実施例3]
超高圧ホモジナイザーの圧力を120MPaに変更した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0045】
[実施例4]
超高圧ホモジナイザーの圧力を100MPaに変更した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。
【0046】
[比較例3]
超高圧ホモジナイザーの圧力を80MPaに変更した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0047】
[比較例4]
粉末セルロースの代わりにサルファイトパルプを用いた以外は、比較例2と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0048】
[比較例5]
超高圧ホモジナイザーの代わりに、回転刃を装備したハイシェアーミキサー(周速37m/s、日本精機製作所、処理時間30分)を使用した以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0049】
[実施例5]
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径6μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例6]
粉末セルロース(日本製紙ケミカル(株)製、粒径75μm)を用いた以外は、実施例1と同様にしてセルロースナノファイバー分散液を得た。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)(1)N−オキシル化合物、及び(2)臭化物、ヨウ化物若しくはこれらの混合物からなる群から選択される化合物の存在下で、酸化剤を用いて粉末セルロースを酸化すること、
(B)前記(A)からの粉末セルロースを超高圧ホモジナイザーを用いて100MPa以上の圧力で湿式微粒化処理することによりナノファイバー化させること、
を含む、セルロースナノファイバーの製造方法。
【請求項2】
前記粉末セルロースの体積平均粒子径が、50μm以下である、請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。

【公開番号】特開2009−263652(P2009−263652A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81984(P2009−81984)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】