説明

セレンの豊富な食品の生産用の非経口投与セレノメチオニン

セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む非経口投与用配合物。この配合物は、動物の血液、乳および肉のうちの1つ以上においてセレン濃度を上昇させるために用いられる。これらの製品(すなわち、乳および肉)および配合物自体は、セレンの欠乏した動物において成長および健康のためのセレン栄養所要量を満たすために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレンの豊富な食品の生産用の非経口投与セレノメチオニンに関する。より詳細には、本発明はセレノメチオニンを含む配合物と、動物由来の乳、肉またはその両方におけるセレン濃度を著しく増大させるためのその配合物の使用の方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
[食事のセレンの栄養上の役割および価値]
知識のある消費者は、単純な栄養を越える利点を有し、生活様式、個人の嗜好に合うとともに、特定の食事必要量を満たす食品を、次第に要求しつつある。これによって、高濃度のビタミンおよびミネラルを含む食品への関心が促されている。そのような食品を生産するための栄養上の調節は幾つかの手法によって達成可能であるが、農場にて所望の変化を生じさせ、後に続く操作なしで直接的に食品を改良することが好適である。
【0003】
対象となる1つのミネラルはセレンである。セレンは、一般にヒトや動物における成長および健康に必須の微量元素である。体の中で、セレンはタンパク質に組み込まれ、セレノプロテインを生産する。セレノプロテインは、細胞解毒化、酸化還元サイクルの循環およびフリーラジカルによる細胞損傷に対する抗酸化防御に活性である。フリーラジカルは、癌および心臓疾患など慢性疾患の発現に寄与する、酸素代謝の天然副産物である。他のセレノプロテインは甲状腺機能を調節し、免疫系において一定の役割を担う。極端な場合を除き、セレン不足自体によっては疾患は生じないが、セレン不足によって、他の栄養上のストレス、生化学的なストレスまたは伝染性のストレスにより引き起こされる疾患に対し、身体がより影響を受け易くなることがある。
【0004】
すべての必須ミネラルについてのように、セレンの摂取源は食事である。ニュージーランドその他における基準では、様々な年齢の健康な消費者に対するセレンの食事摂取基準(RDI)または推奨1日所要量(RDA)が規定されている。ニュージーランドおよびオーストラリアのRDIは、オーストラリア国立保健医療研究委員会(Australian National Health and Medical Research Council)によって設定され、現在は次の通りである。
【0005】
【表1】

【0006】
様々な国々でRDI/RDA濃度には差が存在するので、上述の情報は単なる例として提供されていることが当業者には認められる。
作物によるミネラルの吸収に影響を与え、最終的にはそこで成長した食品のセレン含有量に影響を与える土壌のミネラル含有量を決定する国土の地質の結果、ニュージーランド人のセレン栄養状態は、世界保健機関(World Health Organisation)の推奨未満である傾向がある。英国では、農業および輸入慣行における最近の変化によって、一般人口のセレン栄養状態の低下も引き起こされた。
【0007】
バランスの取れた豊かな食事を取る人々は、通常、自身の最小摂取必要量を満たすことが可能である。しかしながら、多様な食品選択を制限する古い習慣、食餌または文化的慣習によって、良好なセレン源の摂取が厳しく限定されることがある。したがって、多くの消費者は栄養補助剤によって自身のセレンの摂取を増大する手法を求めており、これは錠剤による場合が多いが、栄養強化された食品を取ることによる場合が増えている。
【0008】
ニュージーランドの家畜由来の肉および乳は、牧草食の組成を反映する低濃度であるとはいえ、天然にセレンを含んでいる。通常のセレン濃度は、新鮮な赤身の牛肉または子羊肉では50μg/kg(30〜85μg/kgの範囲)であり(注1)、全乳では2〜11μg/リットルである(注2)。100gまたは100mlの摂取量の“典型的”な肉または乳を取ることによるヒトの1日セレン必要量への寄与は、成人および幼児について、それぞれ1〜6%および1〜20%となる。より高濃度のセレンによって、100g以下の食品摂取量による利益が増大されることは明らかである。
注1:ウエスト ジェイ.(West J.)、“国内および輸出取引におけるニュージーランド産牛肉および子羊肉に関する栄養データの収集(Compilation of
nutritional data for New Zealand beef and lamb in domestic and export trade)”、プロジェクト96MZ 64/4.3、ニュージーランド食肉研究開発会議(New Zealand Meat Research and Development Council)、ニュージーランド、ウェリントン、1996年。未出版の報告。
注2:グレース エヌディー(Grace ND)、アンケンバウアー ケイ(Ankenbauer K)、アレキサンダー エイエム(Alexander AM)、マーチャント アールエム(Marchant RM)、“ニュージーランド酪農牛における血液セレン濃度またはグルタチオンペルオキシダーゼ活性と乳セレン濃度との関係(Relationship between blood selenium concentration or glutathione peroxidase activity, and milk selenium concentrations in New Zealand dairy cows)”、ニュージ−ランド獣医ジャーナル(NZ Veterinary Journal)、2001年、第49巻、p.24〜28。
【0009】
それらの食品(や主要穀物)では、セレンは、主として、アミノ酸であるメチオニンの類似物である有機化学物質形態の“セレノメチオニン”として存在する。セレノメチオニンはメチオニンの代わりに身体タンパク質へ組み込まれ、そのようにして器官および組織においてセレン貯蔵所として作用する。食品由来のセレノメチオニンは、よく吸収され利用されるという点で、高い生物学的利用能を有すると考えられる。
【0010】
[セレン含有量の豊富化による食品栄養の改良]
セレンなどの栄養素を外因性に(すなわち、収穫後に工場で)添加することによって、あるいは内因性に収穫または屠殺前に食品へ余分なセレンを成長させることによって、強化食品を生産することが可能である。後者の利点は、セレンがその天然の化学形態で食品に組み込まれ、添加物なしで消費者へ届けられ、収穫後の処理または濃縮工程が回避されることである。
【0011】
反芻動物由来の乳のセレン含有量を内因性に豊富化するための既知の1つの方法は、例えば、特許文献1乃至3に記載されているように、動物飼料にセレンまたはセレノメチオニンを添加することによる。飼料添加物には、2つの無機形態のセレン塩である、亜セレン酸ナトリウムおよびセレン酸ナトリウムも含まれる。少なくとも特許文献4乃至6には、亜セレン酸ナトリウム飼料補助剤の例が記載されている。
【0012】
動物および結果として生産される肉または乳におけるセレン濃度を増大する代替の方法は、皮下注射または筋肉注射によってセレン補助剤を投与することである。非経口投与とは、消化器官を通じる以外の方法で身体へものを取り込ませることを指すが、これには例えば次のような、栄養補助された飼料源を超える幾つかの明らかな利点が存在する。
・注射による処置は、主として開放された牧場で放牧され、通常はいかなる補助剤も全く与えられていない(例えば、ニュージーランドでは)家畜に適切である。
・注射配合物を生産して投与する費用は、栄養補助された飼料を生産して給餌する費用より低くできる。
・投与されるセレンの量は注射によって正確に制御することが可能であるが、経口投与されるセレンの量は、飼料製造業者における変動および様々な動物により食べられる量における変動のため、より不正確である。
・群のうちの選択されたものだけにセレンを投与する場合、他の動物に対するのとは異なる何らかの手法によって、処置される動物を分離したり、その食餌を調節したりする必要がないので、注射は経口投与よりも取り扱いが容易である。
・飼料の無駄や動物の吸収が不充分であることのためにセレンが失われることがないので、注射によるセレンの投与量はより少ない。これによって地面へ失われ水道に混入(leech)し得るセレンの量は減少するので、環境制限がある場合に利点が得られる。
【0013】
市場には多くの注射可能なセレン補助剤が存在するが、いずれも“セレノメチオニンを含んでいない”。それらのセレン補助剤のうちには、ノバルティス(Novartis)社のDeposel(登録商標)がある。Deposelは、“セレン酸バリウム”(無機セレン塩)の微粉化された粒子の配合液であり、家畜動物へ皮下注射され、注射部位にセレンの長期的な貯留部を提供する。Deposelは、セレン不足の治療および予防のために、ヒツジおよびウシにおける使用が登録されている。その目的は動物の健康維持であり、肉または乳におけるセレン含有量に対する効果は主張されていない。
【0014】
ニュージーランドでは、他の15以上の注射可能なセレン補助剤が“非経口栄養素”として登録されている。それらはすべて、無機物の“亜セレン酸ナトリウム”または“セレン酸ナトリウム”を含む動物用治療剤であり、いずれにおいても肉または乳の組成に対する効果は主張されていない。特許文献7には、乳生産量の増大のために用いられる亜セレン酸ナトリウムの筋肉注射法について記載されているが、しかしながら、生産される乳中のセレン濃度の変化については記載されていない。
【0015】
本発明者らは、セレン酸バリウムおよびセレン酸ナトリウムの注射可能な配合物を家畜において試験し、処置によって動物のセレン状態(すなわち、血中セレン濃度)は増大されるが、その動物の乳または肉へはほとんどセレンが移動しないことを見出した。それらの食品は、さらなる濃縮工程などの処理なしでは、ヒトの消費する機能食品または強化食品として直接的に用いるには充分に豊富化されない。本発明者らによって行われたある研究(注1)では、動物のセレンの血液状態を増大させるためにセレン酸バリウムの単回の皮下注射を用いた。この処置によって、全乳汁分泌に対する乳のセレン濃度は2倍しか上昇しなかった(セレン/乳は6〜11μg/リットル)。
注1:グレース エヌディー(Grace ND)、リー ジェイ(Lee J)、ミルズ エイアール(Mills AR)、デス エイエフ(Death AF)、“酪農牛の乳Se濃度に対するSe状態の影響(Influence of Se status
on milk Se concentrations in dairy cows)”、ニュージーランド・ジャーナル・オブ・アグリカルチャラル・リサーチ(NZ Journal of Agricultural Research)、1997年、第40巻、p.75−78。
【0016】
第2の刊行物(注2)には、牧草セレン摂取の変化(飼料操作)または長時間作用性の動物注射の使用もしくは経口第一胃ボーラスの使用を含む、動物生産品中のセレン量を変化させる方法が認められる。また、この記事では、肉のセレン含有量を豊富化するために、明らかな化学形態の有機セレンを含む注射を用いることが示されている。肉のセレン含有量を増大するために用いられる配合物については記載されていない。
注2:ノールズ エスオウ(Knowles SO)ら、“牧草を餌とする家畜由来の食肉および乳に対する栄養値の追加(Adding Nutritional Value
to Meat and Milk from Pasture−fed Livestock)”、ニュージ−ランド獣医ジャーナル(NZ Veterinary Journal)、2004年、第52巻、p.342〜351。
【特許文献1】台湾特許出願第TW0565432B号明細書
【特許文献2】中国特許出願第CN1094899A号明細書
【特許文献3】中国特許出願第CN1217153A号明細書
【特許文献4】中国特許出願第CN1452884A号明細書
【特許文献5】中国特許出願第CN1439284A号明細書
【特許文献6】中国特許出願第CN1452883A号明細書
【特許文献7】露国特許出願第RU2222192C2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
家畜に対するセレンの非経口投与は栄養補助された飼料源に対する明らかな利点(上述の中黒記号を参照)を有するので、したがって、例えば、ヒト消費者の食事摂取に対する補強として、消費者の使用および利益のために乳または肉中のセレン濃度を著しく増大させるために用いられる、注射可能な配合物およびその投与のための適切な方法を有することは有利である。
【0018】
本発明は、上述の問題に対処するか、少なくとも有用な選択肢を一般に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[配合物]
本発明の一態様では、非経口投与用の配合物を提供する。この配合物は、セレノメチオニンおよび1つ以上の油系ビヒクルを含む。
【0020】
本明細書では、用語“非経口”とは、皮下注射または筋肉注射などによって、消化器官を通じる以外の方法で身体へものを取り込ませること、すなわち、投与することを指す。
本明細書では、セレノメチオニンは、D体、L体のエナンチオマーまたはそれらのラセミ混合物を表す、次式(I)の化学構造を有する。
【0021】
【化1】

【0022】
好適には、セレノメチオニンは微粉化された粒子体である。より好適には、セレノメチオニン形態の粒径分布は0.1〜10μmである
好適には、配合物中のセレノメチオニンの濃度は約25〜100g/Lの範囲である。より好適には、セレノメチオニンの濃度は約50g/Lである
好適には、1つ以上の油系ビヒクルは非アレルギー性であり、室温にて薄く流れ、かつ、酸化による劣化が遅い。好適な一実施形態では、油系ビヒクルの粘度は、23℃にて約50〜100mパスカル秒である。好適な実施形態では、ビヒクルは野菜油である。より好適には、ビヒクルは、落花生油、ケシの実油およびクルミ油から選択される。最も好適には、ビヒクルは、落花生(ピーナッツ)油または等しい粘度および温度安定性を有する同様の油である。
【0023】
好適には、配合物は懸濁化剤も含む。懸濁化剤の目的は、配合物の容器の振とう時に、ユーザが反復的に容器から配合物を出し、その配合物を動物に投与することを可能とするように充分に長く、セレノメチオニンの粒子がビヒクル中に懸濁されたままであるように、配合物を充分に厚くすることである。
【0024】
好適な実施形態では、懸濁化剤は蜜蝋であり、より好適には、晒し蜜蝋である。本発明者らの理解では、蜜蝋は、混合物を厚くし、したがって、溶液からセレノメチオニンの粒子が沈降するのを遅らせることによって、配合物に最適な懸濁性および流動性を提供する。好適には、蜜蝋は約5〜50g/Lの範囲の濃度で添加されている。より好適には、この濃度は約15g/Lである。発明者らの実験では、この濃度範囲によって、懸濁液の沈降を最小化しつつ、配合物が低温で厚くなり過ぎることが回避される。
【0025】
好適には、懸濁化剤は適切な医薬等級(pharmaceutical grade)である。
好適には、23℃での測定時に配合物の密度が約0.92g/mlとなるのに充分な懸濁化剤が配合物に添加されている。
【0026】
[投与方法]
本発明のさらなる態様では、ほぼ上述のように、配合物の非経口投与によって動物のセレン濃度を上昇させる方法を提供する。
【0027】
本発明のさらなる態様では、ほぼ上述のように、配合物の非経口投与によって、欠乏した動物において成長および健康のためのセレン栄養必要量を満たす方法を提供する。
本発明のさらなる態様では、ほぼ上述のように、配合物の非経口投与によって、動物由来の乳、肉またはその両方におけるセレン濃度を増大させる方法を提供する。
【0028】
本発明のさらなる態様では、ほぼ上述のように、配合物の非経口的な反復投与によって、動物由来の乳、肉またはその両方におけるセレン濃度を増大させる方法を提供する。
好適には、配合物は異なる間隔で反復的に投与される。より好適には、配合物の次回の投与は1回目の投与または前回の投与の約50日後に行われる。
【0029】
好適には、配合物は反芻動物へ投与される。より好適には、動物はウシ、ヤギまたはヒツジである。
好適には、配合物は皮下注射または筋肉注射によって投与される。投与時に、配合物はデポを形成する。
【0030】
本明細書では、用語“デポ(depot)”は、長期間に渡って吸収が生じるように、投与部位にとどまり、保持された治療量のセレノメチオニンを放出する傾向を有する配合物の貯留部を指す。
【0031】
本発明のさらなる態様では、ほぼ上述のように、単回投与または反復投与など、治療有効量の配合物の非経口投与時に、未処置の動物と比較して動物のセレン状態(例えば、血中セレン濃度)が95日以上に渡って6〜25倍に増大される配合物の使用を提供する。この血液状態は動物には安全かつ有益であり、本発明者らの実験では、動物の成長および健康に必須の必要量を満たすには適切以上のものである。
【0032】
また、本発明者らは、酪農牛に対する配合物の反復投与によって、未処置と比較して乳のセレン濃度は27〜54倍にも増大し、濃度は95日以上に渡って2倍以上に維持されることを見出した。この豊富化は、100mlの摂取によって成人および幼児に対するセレンRDIのうち、それぞれ50%および200%までが供給されるものである。この豊富化によって、乳から生産され乳児用調合へと処理される粉ミルク粉体に、現行の製造方式でのように粉体処理中にセレンを追加する必要はなくなる。
【0033】
乳中のセレン濃度は投与後の約7〜15日の間にピークを示し、投与後の95日以上に渡って、濃度は未処置と比較して上昇したままである。このデポの放出速度は予期されないものであり、本発明者らには驚きであった。これによって、処置したウシが簡単に高豊富化乳(付加価値のある特別乳として採取可能)を生産し、次いで通常生産へと戻ることが可能となるのに有用な時間が提供される。このように、配合物によって、乳のセレン豊富化を切り換えるための“スイッチ”が提供される。
【0034】
さらに、ヒツジへの配合物の反復投与でも、動物の筋肉中のセレンの濃度は未処置と比較して5〜13倍に増大する。
本発明者らの実験では、配合物の注射によって、組織(血液、乳および肉のうちの1つ以上)における上述の応答のための有用な持続時間を可能とするのに充分なデポ効果が示され、処置後の動物を投与後にさらなる処理のために留めておく必要はない。セレン応答の強度および持続時間を制御するために、組織に対する効果を投与によって滴定することができることが当業者には認められる。
【0035】
本発明者らの実験では、全血または血清および乳または肉におけるセレン濃度の関係は比例するが、線形ではない。この関係は動物補助に用いられるセレン源に応じて変化し、セレノメチオニンとセレン酸ナトリウムとで異なり、セレン酸ナトリウムとセレン酸ナトリウムバリウムとで異なる。発明者らの実験では、血液セレン濃度に対する乳または肉セレン含有量を豊富化するには、セレノメチオニンが最も有効な補助剤である(注1)。
注1:ノールズ エスオウ(Knowles SO)、グレース エヌディー(Grace ND)、ウルムス ケイ(Wurms K)、リー ジェイ(Lee J)、“放牧牛における、血液、乳およびカゼインのセレン濃度に対する食事のセレンの量および形体の重要性(Significance of amount and form of dietary selenium on blood, milk, and casein selenium concentrations in grazing cows)”、ジャーナル・オブ・デアリ・サイエンス(Journal of Dairy Science)、1999年、第82巻、p.429−437。
【0036】
本発明者らは、処置した動物由来の乳、肉またはその両方における“余分な”セレン化学種の形成は、セレノメチオニンおよびセレノシステインの形態であり、遊離セレンイオンおよびSe−メチルセレノシステインとしての量は少ないと想定している。これらの形体のセレンの生物学的利用能および代謝能は良好であるので、この性質の化学種形成が広がることは消費者に有利である可能性が存在する。
【0037】
処置した動物由来の乳、肉またはその両方は、ニュージーランド食糧安全庁(NZFS
A;New Zealand Food Safety Authority)の農薬および動物薬(Agricultural Compounds and Veterinary Medicines;ACVM)のグループによって、ヒトの消費には安全であると考えられている。さらに、発明者らの実験では、一団の熟練した味覚評価者によって、また多数の訓練されていない消費者ボランティアによる調査によって判定されるように、処置した子羊由来の肉は、未処置の肉と比較して、風味、香りおよび他の官能的な特性に変化または減少はなかった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
ここで、動物の血液セレン状態、乳セレン濃度および(実施例1,4)または肉セレン濃度(実施例2,3)に対する配合物の投与の効果を測定するために行った家畜動物における4つの実地試験に関連して、本発明の組成物について記載する。
【0039】
[実施例1:酪農牛由来のセレン豊富化乳]
血液および乳のセレン濃度に対するセレノメチオニン配合物の経時的効果を測定するために、合計13の放牧酪農牛(処置6、未処置7)に対し試験を行った。ほぼ上述のように、配合物の非経口皮下投与によって動物を処置した。投与割合はセレン/生体重で約0.35mg/kgであった。投与後第1、7、17、28、45、83日に、ウシから血液および乳の試料を採取し、全セレン濃度を分析した。
【0040】
図1に示す結果では、未処置に対し83日以上に渡って6〜11倍の平均血液セレン濃度の著しい増大が示されている。測定はその時点で中止した。図2に示すように、乳セレン濃度は著しく増大し、投与の約7日後に未処置に対し28倍のピーク濃度を示し、投与後の83日以上に渡って濃度は上昇したままであった。
【0041】
明らかに、酪農牛に単回のセレノメチオニン注射を行うことによって、動物血液セレン濃度が増大するばかりでなく、動物由来の乳におけるセレン濃度も増大するので、血液から乳へのセレンの有用な移行が実証される。
【0042】
[実施例2:子羊由来のセレン豊富化肉]
血液および筋肉のセレン濃度に対するセレノメチオニン配合物の経時的効果を測定するために、放牧群の60頭の若い子羊に対し試験を行った。試験の第1日には、ほぼ上述のように、週齢約4週の20頭の子羊に配合物の皮下注射を行った。投与割合はセレン/生体重で約0.8mg/kgであった。他の20頭の子羊にノバルティス社のDeposelと呼ばれるセレン酸バリウムの市販配合物の注射を行った。投与割合はセレン/生体重で約1.8mg/kgであった。追加の20頭の子羊は未処置であった。投与後第1、19、40、89、138日に、子羊から血液試料を採取し、全セレン濃度と、セレン含有酵素であるグルタチオンペルオキシダーゼの活性とを分析した。
【0043】
筋肉の試料は“連続屠殺(serial slaughter)”方式で採取した。この方式では、群の残りの動物すべてが屠殺される試験の最終日まで、間隔をおいて各処置群から数頭の動物を屠殺した。すなわち、第1日には群あたり2頭の動物から、第40,89,138日には各々群あたり6頭の動物から、筋肉試料を採取した。セレン濃度について、動物毎に2つの異なる筋肉を分析した。それらの筋肉は、半腱様筋(m. semitendinosus;アイオブラウンド(eye of round))および上腕三頭筋(m. triceps brachii;ボーラー(bolar))であった。
【0044】
図3に示す結果は、セレンの欠乏した未処置の子羊では成長が損なわれたことを示している。それらの動物はその最大の可能性までは成長せず、その健康が損なわれるにつれて体重が減少した。対照的に、セレノメチオニン配合物による処置によって、子羊の成長お
よび健康に必須のセレン必要量は満たされた。この点について、この配合物の動物用補助剤としての効果は、セレン酸バリウム(無機セレン塩)系の既知の好調な動物用治療剤であるDeposelと同等であった。
【0045】
図4に示す結果(上のパネル)は、セレノメチオニン配合物またはDeposelによる処置によって、未処置に対し138日以上に渡って平均血液セレン濃度の著しい増大が生じたことを示している。測定はその時点で中止した。図4(下のパネル)では、動物のセレン状態の代替の指標、すなわち、平均血液グルタチオンペルオキシダーゼ活性が、処置によって著しく上昇することも示されている。
【0046】
図5の結果は、肉セレン濃度を豊富化するためにセレノメチオニンによる処置がセレン酸バリウムよりどれほど効果的であるかを示している。ここでは、第1日により少量(セレノメチオニンはセレン/生体重で0.8mg/kg、セレン酸バリウムはセレン/生体重で1.8mg/kg)を投与することによって、肉のセレンには、より大きな増大が生じている。増大のピークは第40日であった(未処置より12倍、5倍大きい)。しかしながら、この最大のセレン濃度は、子羊がわずか25kgのまだ小さい時に生じた。第89日には生体重は38kg(経済的に屠殺の可能な体重)であり、13kgの成長により得られた筋肉の希釈効果のため、肉セレン濃度は39%だけ低下した。なお、この図の凡例に用いた略語について、“SeMet”はセレノメチオニン、“BaSeO4”はセレン酸バリウム、“アイオブラウンド”は半腱様筋、“ボーラー”は上腕三頭筋である。
【0047】
明らかに、子羊に単回のセレノメチオニン注射を行うことによって、動物のセレン状態が増大するばかりでなく、動物の筋肉におけるセレン濃度も増大するので、血液から筋肉組織へのセレンの有用な移行が実証される。投与量(デポサイズ)が小さい場合にも、セレノメチオニン配合物によってセレン酸バリウムと同様の薬物動態プロファイルが与えられる(経時的な血液セレン濃度の変化によって示されるように)。筋肉において最大のセレン濃度を得るには、急速に成長中の動物の筋組織に内因性にセレンが組み込まれるように、動物の寿命の初期に配合物による処置を行う必要がある。
【0048】
[実施例3:最適化した処置方式を用いる子羊由来のセレン豊富化肉]
血液および筋肉のセレン濃度に対するセレノメチオニン配合物の反復処置の経時的効果を測定するために、放牧群の30頭の若い子羊に対し試験を行った。試験の第1日には、ほぼ上述のように、週齢約5週の16頭の子羊に配合物の単回の皮下注射を行った。投与割合はセレン/生体重で約0.7mg/kgであった。それらのうち、10頭には第54日に配合物の2回目の注射を行った。投与割合はセレン/生体重で約0.6mg/kgであった。14頭の子羊は試験を通じて未処置であった。
【0049】
投与後第1、19、54、73、90日に、子羊から血液の試料を採取し、全セレン濃度を分析した(データは示さず)。
筋肉の試料は短縮した“連続屠殺(serial slaughter)”方式で採取した。この方式では、処置前の試験開始時に各処置群から数頭の動物を屠殺し、試験終了時に群の残りの動物すべてを屠殺した。すなわち、第1日に5頭の未処置の子羊から筋肉試料を採取した。第95日には、残る未処置の子羊9頭、単回注射した子羊6頭および2回注射した子羊10頭から、試料を採取した。セレン濃度について、動物毎に2つの異なる筋肉を分析した。それらの筋肉は、半腱様筋(アイオブラウンド)および背腰最長筋(m. longissimus dorsi lumborum;ストリップロイン(striploin))であった。
【0050】
図6の結果は、若年におけるセレノメチオニン配合物による1回目の処置と、それに続く屠殺の約40日前の配合物の2回目の注射とによって、子羊が経済的に屠殺の可能な体
重まで成長するときに、筋肉中の高セレン濃度がどのように維持されるかを示している。第95日に屠殺した子羊の平均の生体重は44kgであった(データは示さず)。この日、肉セレン濃度は未処置より13倍大きかった。なお、この図の凡例に用いた略語について、“SeMet”はセレノメチオニン、“10+0”は単回注射した子羊、“10+20”は2回注射した子羊、“アイオブラウンド”は半腱様筋、“ストリップロイン”は背腰の最長筋である。
【0051】
図7の結果は、9人の熟練した感覚評価者の一団の平均応答を示している。制御条件下で、これらの回答者は、9頭の未処置の子羊および10頭の“10+20”(2回注射した)子羊に由来する調理済みの肉を賞味し、8点の嗜好尺度によって芳香、風味、柔らかさ、食感(texture)および汁気について各試料を比較した。最適化した方法によってセレノメチオニン配合物を用いた子羊の処置では、得られたセレン豊富化子羊肉の食用品質や受容性に影響は見られなかった。
【0052】
[実施例4:酪農牛由来のセレン豊富化乳−反復処置]
血液および乳のセレン濃度に対するセレノメチオニン配合物による反復処置を含む処置の時間の効果を測定するために、合計40頭の酪農牛(10頭からなる4群に無作為に割り当てた)に対し試験を行った。それらの群を、(a)未処置(“対照”群)、(b)セレン/生体重で約0.35mg/kgの投与割合のセレノメチオニン(“単回・低”群)、(c)上述のようにセレン/生体重で約0.35mg/kg、次いで第49日に2回目の同様の注射(“反復・低”群)、(d)セレン/生体重で約0.70mg/kg、次いで第49日に2回目の同様の注射(“反復・高”群)からなる処置へ分割した。第0日に、各群(n=群あたり10頭のウシ)にその設定した処置の単回の皮下注射を行った。血液および全乳の試料を処置前の第−9日および第0日にウシから採取し、乳汁分泌中の第5、12、26、49、54、61、76、95日にも採取した。動物の試料採取の詳細および時期については、以下のテーブル1に要約する。
【0053】
【表2】

【0054】
図8に示す結果は、単回の群と反復のうちの1回目の注射の群との両方で、対照群と比較して血液セレン濃度が10〜18倍増大したことを示している。反復処置における血液セレン濃度の増大は、対照と比較して第54日には9〜20倍に増大した。2回目の処置に対する応答は1回目の処置に対する応答よりわずかに小さかったが、それらの組み合わせの効果は累積的であった。全体として、研究期間(約95日)において血液セレン濃度は非常に高く維持された。
【0055】
図9に示す結果では、1回目の試料採取期の第5日に、全乳中のセレン濃度は対照と比較して8〜14倍のピークを示している。第54日には、反復処置によって、乳セレン濃度は対照と比較して27〜54倍大きなピークを示した。対照と比較して、乳セレン濃度
は95日以上、約2倍に維持された。2回目の処置に対する応答は1回目の処置に対する応答よりわずかに小さかったが、それらの組み合わせの効果は累積的であった。
【0056】
本発明者らは、反復投与の後の乳のピーク濃度が特別に有効な抽出を表すことに注目している。本発明者らは、1回目の投与によって乳腺抽出プロセスが準備され、2回目のセレノメチオニン注射がより大きな割合で乳へ送られると仮定している。
【0057】
上述の実施例から、一定期間を通じて動物の血液、乳および肉のうちの1つ以上におけるセレン濃度を増大し保持することの可能な配合物が提供されることが認められる。また、この配合物の投与および調製に適切な方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】血液セレン濃度によって示される、処置した“酪農牛”のセレン状態を増大および維持する配合物の効果を、実施例1に記載の実地試験の期間を通じて示すグラフ。n=群あたり約6。
【図2】“酪農牛”から採取した未処理の全乳のセレン濃度を著しく増大させる配合物の効果を、実施例1に記載の実地試験の期間を通じて示すグラフ。n=群あたり約6。
【図3】他の場合にはセレン欠乏である“子羊”における成長および健康に必須のセレン栄養必要量を満たす配合物の効果を、実施例2に記載の実地試験の期間を通じて動物の生体重によって示すグラフ。n=群あたり20。
【図4】血液セレン濃度(上のパネル)および血液セレノプロテイングルタチオンペルオキシダーゼ活性(下のパネル)によって示される、処置した“子羊”のセレン状態を増大および維持する配合物の効果を、実施例2に記載の実地試験の期間を通じて示す1組のグラフ。n=群あたり20。
【図5】実施例2に記載の実地試験による、処置した“子羊”由来の未処理の筋肉中のセレン濃度を増大する配合物の効果を示すグラフ。n=群あたり約6。
【図6】実施例3に記載の実地試験による、処置した“子羊”由来の未処理の筋肉中のセレン濃度を増大する配合物の効果を示すグラフ。屠殺前40日に配合物の2回目の注射を行うことによって、セレン効果がさらに増大している。n=群あたり約7。
【図7】実施例3に記載の実地試験による子羊肉の官能属性のレーダグラフ。セレン豊富化肉の味および食感に対するセレノメチオニン処置の有意な効果は示されていない。n=群当たり6〜10。
【図8】配合物の単回注射を行うことによって、あるいは1回目の注射から約50日後に別の注射を行うことによって、血液セレン濃度によって示される、処置した“酪農牛”のセレン状態を増大および維持する配合物の効果を、実施例4に記載の実地試験の期間を通じて示すグラフ。n=群あたり10。
【図9】配合物の単回注射を行うことによって、あるいは1回目の注射から約50日後に別の注射を行うことによって、“酪農牛”から採取した未処理の全乳のセレン濃度を増大する配合物の効果を、実施例4に記載の実地試験の期間を通じて示すグラフ。n=群あたり10。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む非経口投与用の配合物。
【請求項2】
セレノメチオニンは、D体、L体のエナンチオマーまたはそれらのラセミ混合物を表す次式の化学構造を有する請求項1に記載の配合物。
【化1】

【請求項3】
セレノメチオニンは微粉化された粒子体である請求項1または2に記載の配合物。
【請求項4】
セレノメチオニンの粒径分布は約0.1〜10μmである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項5】
セレノメチオニンの濃度は25〜100g/Lの範囲である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項6】
セレノメチオニンの濃度は約50g/Lである請求項1乃至5のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項7】
1つ以上の油系ビヒクルは非アレルギー性であり、室温にて薄く流れ、かつ、酸化による劣化が遅い請求項1乃至6のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項8】
前記油系ビヒクルは、23℃にて約50〜100mパスカル秒の粘度を有する請求項1乃至7のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項9】
前記油系ビヒクルは野菜油である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項10】
前記油系ビヒクルは落花生油、ケシの実油またはクルミ油から選択される請求項1乃至9のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項11】
前記油系ビヒクルは、落花生油と等しい粘度および温度安定性を有する油である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項12】
懸濁化剤を含む請求項1乃至11のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項13】
懸濁化剤は蜜蝋である請求項12に記載の配合物。
【請求項14】
蜜蝋は晒し蜜蝋である請求項13に記載の配合物。
【請求項15】
蜜蝋は約5〜50g/Lの範囲の濃度で添加されている請求項12乃至14のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項16】
蜜蝋は約15g/Lの濃度で添加されている請求項12乃至15のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項17】
懸濁化剤は医薬等級である請求項12乃至16のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項18】
23℃での測定時に配合物の密度が約0.92g/mlとなるのに充分な懸濁化剤が添加されている請求項12乃至17のいずれか一項に記載の配合物。
【請求項19】
セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む配合物の非経口投与によって、動物の血中セレン濃度を上昇させる方法。
【請求項20】
セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む配合物の非経口投与によって、欠乏した動物において成長および健康のためのセレン栄養必要量を満たす方法。
【請求項21】
セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む配合物の非経口投与によって、動物由来の乳、肉またはその両方におけるセレン濃度を増大させる方法。
【請求項22】
セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む配合物の非経口的な反復投与によって、動物由来の乳、肉またはその両方におけるセレン濃度を増大させる方法。
【請求項23】
配合物は異なる間隔で反復的に投与される請求項22に記載の方法。
【請求項24】
配合物の次回の投与は1回目の投与または前回の投与の約50日後に行われる請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
配合物によって、動物の乳中のセレン濃度は投与後の90日以上に渡って上昇したままとなる請求項19乃至24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
配合物は反芻動物へ投与される請求項19乃至25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
動物はウシ、ヤギまたはヒツジである請求項26に記載の方法。
【請求項28】
配合物は皮下注射または筋肉注射によって投与される請求項19乃至26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
投与時に配合物はデポを形成する請求項19乃至28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
配合物中のセレノメチオニンは微粉化された粒子体である請求項19乃至29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
セレノメチオニンの濃度は25〜100g/Lの範囲である請求項19乃至30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
配合物中の1つ以上の油系ビヒクルは非アレルギー性であり、室温にて薄く流れ、かつ、酸化による劣化が遅い請求項19乃至31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記油系ビヒクルは、23℃にて約50〜100mパスカル秒の粘度を有する請求項19乃至32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記油系ビヒクルは落花生油、ケシの実油またはクルミ油から選択される請求項19乃
至33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
配合物は懸濁化剤を含む請求項19乃至34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
懸濁化剤は蜜蝋である請求項35に記載の方法。
【請求項37】
懸濁化剤は医薬等級である請求項35または36に記載の方法。
【請求項38】
23℃での測定時に配合物の密度が約0.92g/mlとなるのに充分な懸濁化剤が配合物に添加されている請求項35乃至37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
動物の血中セレン濃度を増大させる薬剤の製造における、セレノメチオニンと、1つ以上の油系ビヒクルとを含む配合物の使用。
【請求項40】
セレノメチオニンは微粉化された粒子体である請求項39に記載の配合物の使用。
【請求項41】
セレノメチオニンの濃度は25〜100g/Lの範囲である請求項39または40に記載の配合物の使用。
【請求項42】
1つ以上の油系ビヒクルは非アレルギー性であり、室温にて薄く流れ、かつ、酸化による劣化が遅い請求項39乃至41のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項43】
前記油系ビヒクルは、23℃にて約50〜100mパスカル秒の粘度を有する請求項39乃至42のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項44】
前記油系ビヒクルは落花生油、ケシの実油またはクルミ油から選択される請求項39乃至43のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項45】
懸濁化剤を含む請求項39乃至44のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項46】
懸濁化剤は蜜蝋である請求項45に記載の配合物の使用。
【請求項47】
懸濁化剤は医薬等級である請求項45または46に記載の配合物の使用。
【請求項48】
23℃での測定時に配合物の密度が約0.92g/mlとなるのに充分な懸濁化剤が添加されている請求項45乃至47のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項49】
未処置の動物と比較して動物のセレン状態を6〜25倍に増大させる請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項50】
動物の筋肉中のセレンの濃度を未処置と比較して5〜13倍に増大させる請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項51】
動物の乳中のセレンの濃度を未処置と比較して8〜54倍に増大させる請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項52】
100gの摂取によってヒトの成人および幼児に対するセレンRDIのうちのそれぞれ50%および200%までが供給されるように動物の乳中のセレン濃度を増大させる請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項53】
動物の乳中のセレン濃度は投与後の約7〜15日の間にピークを示す請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項54】
反復投与によって、乳のセレン濃度を未処置と比較して27〜54倍に増大させる請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。
【請求項55】
反復投与によって、乳のセレン濃度を95日以上に渡って2倍以上に維持する請求項39乃至48のいずれか一項に記載の配合物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−546834(P2008−546834A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519201(P2008−519201)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000164
【国際公開番号】WO2007/001194
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(501010845)アグリサーチ リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】AgResearch Limited
【Fターム(参考)】