セレーション軸の組付方法及び組付装置
【課題】作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることのできるセレーション軸の組付方法を提供する。
【解決手段】まず、セレーション軸3を組付ベース20に支持させて、セレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共にハウジング5の位置決め孔43に組付ベース20のハウジング用位置決めシャフト44を挿通して、セレーション軸3を組付ベース20側に押し込みながら所定位置まで回転させた後、セレーション軸3への押し込みを解除すれば、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6とが嵌合する。これにより、嵌合作業が従来よりも軽減されて、嵌合時に異物等が発生することもない。
【解決手段】まず、セレーション軸3を組付ベース20に支持させて、セレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共にハウジング5の位置決め孔43に組付ベース20のハウジング用位置決めシャフト44を挿通して、セレーション軸3を組付ベース20側に押し込みながら所定位置まで回転させた後、セレーション軸3への押し込みを解除すれば、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6とが嵌合する。これにより、嵌合作業が従来よりも軽減されて、嵌合時に異物等が発生することもない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させるセレーション軸の組付方法及び組付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンには、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構が搭載されている。該回転直線運動変換機構(ギヤアッシ)は、モータからの回転運動が伝達され、内周面に軸方向に間隔を置いて複数配置されるリングギヤを有するリングシャフトと、該リングシャフトの内側に配置されるサンシャフトと、該サンシャフトの周囲に配置される複数のプラネタリシャフトとがねじ及びギヤで嵌合して構成される。そして、モータからの回転運動によりリングシャフトが回転運動すると、各プラネタリシャフトがサンシャフトの周りを遊星運動して、サンシャフトが各プラネタリシャフトに対して軸方向に直線運動するようになる(特許文献1参照)。
なお、回転直線運動変換機構のサンシャフトの一端部は、リングシャフトよりも突出して構成されており、その突出した一端部の外周面にセレーション部が形成される。そのセレーション部に被嵌合部材としてのハウジングのセレーション孔が嵌合することで、セレーション軸のハウジングに対する回転が規制される。
【0003】
そして、上述した回転直線運動変換機構をハウジングに組み付ける際には、該サンシャフト(セレーション軸)のセレーション部をハウジングのセレーション孔に特定の位相で嵌合して組み付ける必要がある。その嵌合の際には、両者に設けた欠歯を基準として両者の位相を一致させて嵌合していた。
【0004】
しかしながら、セレーション軸のセレーション部をハウジングのセレーション孔に特定の位相で嵌合する際には、作業者が目視で両者の欠歯を確認しながら嵌合するために、嵌合作業に時間を要しコストアップの要因となる。また、作業者は、セレーション軸のセレーション部をハウジングのセレーション孔に擦り合せて嵌合させるために、異物が発生しやすく、発生した異物がギヤアッシ内に入り込む懸念がある。このように、この嵌合作業は作業者にとって大きな負担となっており改善する必要がある。
【0005】
また、特許文献2には、ドライブシャフトとアウトボードコンポとが互いに加圧された状態で、ドライブシャフトが揺動機構により揺動されて、ドライブシャフトのセレーション軸部とアウトボードコンポの内輪部材のセレーション孔との位相が一致すると、ドライブシャフトがアウトボードコンポに近接する方向に移動するセレーション軸部材の位相決め圧入方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−33198号公報
【特許文献2】特開2004−276135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2の発明では、セレーション孔側がアルミ等の軽金属が採用されている場合、ドライブシャフトを揺動させて、該ドライブシャフトのセレーション軸部とセレーション孔との位相を一致させる最中に、セレーション孔が損傷して異物が発生する虞があり、上述した問題を解決することはできない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることのできるセレーション軸の組付方法及び組付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のセレーション軸の組付方法は、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、を含むことを特徴としている。
また、本発明のセレーション軸の組付装置は、セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、を備えたことを特徴としている。
これにより、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることができる。
なお、本発明のセレーション軸の組付方法及び組付装置の各種態様およびそれらの作用については、以下の発明の態様の項において詳しく説明する。
【0010】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。なお、各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付して、必要に応じて他の項を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施の形態等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要件を付加した態様も、また、各項の態様から構成要件を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0011】
(1)セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付方法であって、前記セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、を含むことを特徴とするセレーション軸の組付方法(請求項1に相当)。
(1)項のセレーション軸の組付方法では、まず、支持ステップにて、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持する。この時、セレーション軸は軸方向で組付ベースから離れる方向に付勢されている状態となる。次に、位置決めステップにて、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、被嵌合部材を組付ベースに対してセレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする。この状態では、被嵌合部材のセレーション孔よりも組付ベース側にセレーション軸のセレーション部が位置しており、互いの位相も一致していない状態となっている。次に、位相一致ステップにて、セレーション軸を、その付勢力に抗するように組付ベース側に押し込みながら組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させる。すると、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相が一致される。次に、嵌合ステップにおいて、セレーション軸への押し込みを解除すると、セレーション軸は組付ベースから離れる方向に付勢されるためその付勢力によって移動して、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とが嵌合するようになる。
【0012】
(2)前記位置決めステップでは、前記被嵌合部材に設けた位置決め孔に、前記組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることを特徴とする(1)項に記載のセレーション軸の組付方法(請求項2に相当)。
(2)項のセレーション軸の組付方法では、位置決めステップにおいては、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、且つ、被嵌合部材に備えた位置決め孔に、組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることで、被嵌合部材が組付ベースに対してセレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めされる。
【0013】
(3)前記位置決めステップの後に、前記組付ベースに対して位置決めされた被嵌合部材を前記組付ベースにクランプするクランプステップを含むことを特徴とする(1)項または(2)項に記載のセレーション軸の組付方法。
(3)項のセレーション軸の組付方法では、被嵌合部材が組付ベースに対して確実に位置決めされた状態でクランプされるので、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との嵌合を確実にすることができる。
【0014】
(4)前記位相一致ステップは、前記セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合するハンドル嵌合ステップと、前記組付ハンドルを前記組付ベース側に押し込みながら前記セレーション軸と共に回転させて、前記組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる当接ステップと、を含むことを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付方法(請求項3に相当)。
(4)項のセレーション軸の組付方法では、位相一致ステップにおいて、まず、ハンドル嵌合ステップにて、セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合する。次に、当接ステップでは、組付ハンドルを、セレーション軸への付勢力に抗するように組付ベース側に押し込みながらセレーション軸と共に回転させて、組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる。この結果、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とは、両者の高さ方向の位置はまだ相違しているが、両者の位相は一致している状態となる。
【0015】
(5)セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付装置であって、前記セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、を備えたことを特徴とするセレーション軸の組付装置(請求項4に相当)。
(5)項のセレーション軸の組付装置では、まず、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持するが、セレーション軸は付勢手段により軸方向で組付ベースから離れる方向に付勢されている状態となる。次に、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、被嵌合部材用位置決め手段により、被嵌合部材の組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を位置決めする。次に、セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合して、組付ハンドル用位置決め部により、組付ハンドルの組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を位置決めすることで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる。その後、セレーション軸が付勢手段により組付ベースから離れる方向に移動することで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とが嵌合する。
【0016】
(6)前記被嵌合部材用位置決め手段は、前記被嵌合部材に備えた位置決め孔と、前記組付ベースに備えた、前記位置決め孔に挿通される被嵌合部材用位置決めシャフトとから構成されることを特徴とする(5)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項5に相当)。
(6)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、且つ、被嵌合部材用位置決め手段を構成する、被嵌合部材に備えた位置決め孔に、組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることで、被嵌合部材の組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置が位置決めされる。
【0017】
(7)前記被嵌合部材に既に備えられた他の用途で使用される孔を前記位置決め孔として利用することを特徴とする(6)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(7)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させるために、新たな位置決め孔を形成しないので、加工工数を低減させることができ、コスト削減に繋がる。
【0018】
(8)前記組付ハンドル用位置決め部は、前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパで構成されることを特徴とする(5)項〜(7)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置(請求項6に相当)。
(8)項のセレーション軸の組付装置では、組付ハンドルをセレーション軸に所定位相で嵌合した後、組付ハンドルを、組付ハンドル用位置決めストッパに当接するまで、セレーション軸心周りを回転させることで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相が一致される。
【0019】
(9)前記被嵌合部材用位置決めシャフトと、前記組付ハンドル用位置決めストッパとを共通化することを特徴とする(8)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項7に相当)。
(9)項のセレーション軸の組付装置では、構成部材を最小限にして加工工数を低減させると共に作業者による作業を簡易化させることで、全体的なコストを削減することができる。
【0020】
(10)前記セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部に、前記組付ハンドルに備えた嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせ凸部または凹部が嵌合して両者が嵌合されることを特徴とする(5)項〜(9)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置(請求項8に相当)。
(10)項のセレーション軸の組付装置では、作業者は、セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部の位置を目視で確認することができるので、セレーション軸に組付ハンドルの嵌合凹部を嵌合させる作業を簡易化させることができる。
【0021】
(11)前記セレーション軸に設けた前記位置合わせ凹部または凸部は、前記セレーション部の転造工程にて該セレーション部と同時に形成されることを特徴とする(10)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項9に相当)。
(12)前記セレーション軸のセレーション部に備えた欠歯と、前記セレーション軸の先端部に設けた前記位相合わせ凹部または凸部とは同一位相で形成されることを特徴とする(10)項または(11)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(11)項及び(12)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸のセレーション部に備えた欠歯と、先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部との位相ズレを抑制することができる。
【0022】
(13)前記セレーション軸の先端部に設けた径方向に延びる位相合わせ孔に、前記組付ハンドルの嵌合凹部の内周面に設けた出没自在の位相合わせピンを係合させて両者を嵌合することを特徴とする(5)項〜(9)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
(13)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の先端部に組付ハンドルの嵌合凹部を被せ、組付ハンドルをセレーション軸に対して回転させれば、セレーション軸の先端部の外周面に設けた位置合わせ孔に、組付ハンドルの嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせピンが係合して両者が嵌合されるので、セレーション軸に組付ハンドルを嵌合させる作業を簡易化させることができる。
【0023】
(14)前記セレーション軸に既に備えられた他の用途で使用される孔を前記位相合わせ孔として利用することを特徴とする(13)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(14)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の外周面に組付ハンドル嵌合用の位相合わせ孔を新たに形成する必要がないので、加工工数を低減させることができ、コスト削減に繋がる。
【0024】
(15)前記被嵌合部材を、前記被嵌合部材用位置決め手段により前記組付ベースに位置決めした後、前記被嵌合部材を前記組付ベースにクランプするクランプ機構を備えることを特徴とする(5)項〜(14)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
(15)項のセレーション軸の組付装置では、クランプ機構により、被嵌合部材が組付ベースに対して確実に位置決めされた状態でクランプされるので、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との嵌合を確実にすることができる。
【0025】
(16)前記セレーション軸は、自動車のエンジンに搭載される、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構のサンシャフトであることを特徴とする(5)項〜(15)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることのできるセレーション軸の組付方法及び組付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置が使用されるギヤアッシの断面図である。
【図2】図2は、図1のギヤアッシのサンシャフトであるセレーション軸を示し、(a)は側面図で、(b)は正面図である。
【図3】図3は、図1のギヤアッシのセレーション軸が嵌合されるセレーション孔を有するハウジングの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置を示し、組付ベースにギヤアッシが支持された状態を示す断面図である。
【図5】図5は、図4の状態から組付ベースにハウジングを組み付ける直前を示す断面図である。
【図6】図6は、図5の状態から組付ベースにハウジングがクランプされた状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図6の状態からセレーション軸の先端部に組付ハンドルを嵌合させて、該組付ハンドルを組付ベース側に押し込んだ状態を示す断面図である。
【図8】図8は、図7の状態から組付ハンドルを回転させて組付ハンドル用位置決めストッパに当接された状態を示す断面図である。
【図9】図9は、図8の状態からセレーション軸の先端部から組付ハンドルを離脱させた状態を示す断面図である。
【図10】図10は、図2に示すセレーション軸とは別のセレーション軸を示す側面図である。
【図11】図11は、図10に示すセレーション軸の先端部に嵌合する組付ハンドルの第2嵌合凹部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図11に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1は、図1に示すような、自動車のエンジンに搭載される、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構2(以下、ギヤアッシという)のサンシャフトであるセレーション軸3のセレーション部4を、図3に示すような、被嵌合部材としてのハウジング5のセレーション孔6に特定の位相で嵌合させるものである。
【0029】
本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1を図1〜図9に基づいて詳細に説明する。
ギヤアッシ2は、図1に示すように、モータ(図示略)からの回転運動が伝達され、内周面に軸方向に間隔を置いて複数配置されるリングギヤ11を有するリングシャフト10と、該リングシャフト10の内側に配置され、リングシャフト10から突設されるサンシャフト(セレーション軸3)と、該サンシャフト(セレーション軸3)の周囲に配置される複数のプラネタリシャフト12とがねじ及びギヤで嵌合して構成される。
図1〜図3に示すように、セレーション軸3の一端は、リングシャフト10よりも突出しており、その突出した部位の外周面にセレーション部4が形成される。該セレーション軸3のセレーション部4及びハウジング5のセレーション孔6に欠歯7、8(図2及び3の黒塗り部分)がそれぞれ形成され、各欠歯7、8を基準として両者が嵌合される。
【0030】
図1及び図2に示すように、ギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13は、セレーションが加工されていない非セレーション部位として構成される。セレーション軸3の先端部13の外周面には、軸方向に延びる位相合わせ凹部14(例えば、V字状の凹部が周方向に間隔を置いて複数)が形成される。該位相合わせ凹部14は、後述する組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に設けた位相合わせ凸部55に嵌合する。また、該位相合わせ凹部14はセレーション部4の欠歯7と同一位相で形成される。
【0031】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1は、セレーション軸3を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、セレーション軸3の非セレーション部位である先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入してハウジング5を支持する組付ベース20と、セレーション軸3を軸方向で組付ベース20から離れる方向に付勢する付勢手段であるコイルスプリング21と、組付ベース20とハウジング5との間に備えられ、ハウジング5の組付ベース20に対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定するハウジング用位置決め手段22と、セレーション軸3に所定位相で嵌合する組付ハンドル23と、組付ベース20に備えられ、該組付ベース20に対する組付ハンドル23のセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部25と、ハウジング5をハウジング用位置決め手段22により組付ベース20に位置決めした後、ハウジング5を組付ベース20にクランプするクランプ機構26とを備えている。
【0032】
組付ベース20は、ベース板27と、ベース板27上に固定される有底円筒状のガイド部材28と、該ガイド部材28の内部に同心状に配置され、内部にギヤアッシ2を支持する受け座29とからなる。
ガイド部材28は、内部に受け座29を軸方向(上下方向)に移動自在に支持する円筒状壁部30と、該円筒状壁部30の下端開口を閉塞する円板状の底壁部31とからなる有底円筒状に形成される。ガイド部材28の円筒状壁部30には、受け座29の上限位置を定めるガイド部材側ストッパ35が内方に向かって突設される。
【0033】
受け座29は、内部にギヤアッシ2を支持する円筒状壁部36と、該円筒状壁部36の内部を横切るように延びる円板状の支持壁部37とからなる断面H字状に形成される。受け座29の支持壁部37上には、ギヤアッシ2のリングシャフト10の下端外周面を回転自在に支持するリング部材38が配置される。受け座29の円筒状壁部36の上部にはギヤアッシ2のリングシャフト10の上部外周面を回転自在に支持する軸受39が配置される。受け座29の円筒状壁部36には、ガイド部材28に設けたガイド部材側ストッパ35に対応する受け座側ストッパ40が外方に向かって突設される。
【0034】
ガイド部材28の底壁部31と受け座29の支持壁部37との間には、受け座29をガイド部材28の底壁部31(組付ベース20)から離れる方向(上方)に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング21が配設される。なお、コイルスプリング21は、その内部に受け座29の支持壁部37の下面から延びる上側支持ブロック41と、ガイド部材28の底壁部31の上面から延びる下側支持ブロック42とが配置される。そして、コイルスプリング21は、これら上側及び下側支持ブロック41、42により軸方向に支持される。
【0035】
図3及び図4に示すように、ハウジング用位置決め手段22は、ハウジング5に備えられた位置決め孔43と、組付ベース20に備えられた、ハウジング5の位置決め孔43に挿通されるハウジング用位置決めシャフト44とから構成される。
ハウジング5に備えられた位置決め孔43は、図3に示すように、ハウジング5の上側のフランジ部47aの一端に設けられており、セレーション孔6の欠歯8を基準とした所定位相(角度)の位置に形成される。該位置決め孔43は、ハウジング5が搭載車両の所定部位に固定される際に使用される固定孔が利用されている。
一方、図4に示すように、組付ベース20のベース板27上にはハウジング用位置決めシャフト44が、受け座29の支持壁部37の径方向中心(セレーション軸心)を基準とした所定位相(角度)の位置に立設されている。
【0036】
そして、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2からの延びるセレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5に備えられた位置決め孔43を、組付ベース20に備えられたハウジング用位置決めシャフト44に挿入すると、ハウジング5の組付ベース20に対する受け座29の径方向中心周り(セレーション軸心周り)の回転方向の相対位置が決定される。言い換えれば、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8が組付ベース20に対して所定位相で位置決めされる。
【0037】
図6に示すように、組付ハンドル23は、棒状のハンドル部50と、ハンドル部50の一端に一体的に形成され該ハンドル部50と直交する方向に延びる嵌合部51とからなる。該嵌合部51の下面には、ハウジング5の上部を覆う平面視円形状の第1嵌合凹部52と、第1嵌合凹部52の底部に設けられ第1嵌合凹部52よりも小径でセレーション軸3の先端部13を覆う第2嵌合凹部53とが設けられている。また、嵌合部51の第2嵌合凹部53の内周面には軸方向に延び、セレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14に対応する位相合わせ凸部55が形成される。
そして、セレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の嵌合部51の第2嵌合凹部53に設けた位相合わせ凸部55を嵌合すると、セレーション軸3と組付ハンドル23とが所定位相で、すなわち、セレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向とが所定の位相差となるように嵌合される。
【0038】
図6に示すように、組付ハンドル用位置決め部25は、組付ベース20に備えられ、該組付ベース20に対する組付ハンドル23のセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定するものであって、組付ハンドル23のハンドル部50のセレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパ56で構成される。
【0039】
該組付ハンドル用位置決めストッパ56は、組付ベース20のベース板27上にて、受け座29の支持壁部37の径方向中心を基準とした所定位相(角度)の位置に立設されているが、ハウジング5がハウジング用位置決め手段22により位置決めされた際のハウジング5のセレーション孔6の欠歯8(図2参照)と組付ハンドル用位置決めストッパ56との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23が嵌合された際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とが一致する位置に立設される。
【0040】
なお、本実施の形態では、ハウジング用位置決めシャフト44と組付ハンドル用位置決めストッパ56とが共通化されており、ハウジング5が組付ベース20に支持された際の、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8と組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23が嵌合した際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とを同じに設定している。
また、本実施の形態では、セレーション軸3の先端部13の外周面に位相合わせ凹部14を、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に位相合わせ凸部55をそれぞれ設けたが、セレーション軸3の先端部13の外周面に位相合わせ凸部55を設け、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に位相合わせ凹部14を設けてもよい。
【0041】
図4に示すように、クランプ機構26は、ハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を上方から押圧する複数のトグルクランプ57、57で構成される。各トグルクランプ57は、組付ベース20のベース板27上から立設される柱状体58の上面にそれぞれ固定される。該トグルクランプ57は、軸部59の先端に該軸部59と直交する方向に延びる押圧部60を有する押圧本体65と、該押圧本体65とリンク部材66を介して連結される把持体67と、これら押圧本体65と把持体67とを支持し、柱状体58に固着される支持体68とを備えて構成される。
そして、このクランプ機構26によりハウジング5を組付ベース20にクランプする際には、図6に示すように、把持体67を受け座29側に回動させれば、押圧本体65がリンク部材66を介して回動して、クランプ時には、押圧本体65の軸部59が組付ベース20のベース板27と略同方向に延びると共に把持体67がベース板27と直交する方向に延び、押圧本体65の押圧部60によりハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を上方から押圧するようになる。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1を使用した組付方法を図4〜図9に基づいて説明する。
まず、図4に示すように、ギヤアッシ2のリングシャフト10を組付ベース20の受け座29の円筒状壁部36内に挿入すると、リングシャフト10は、受け座29の円筒状壁部36内のリング部材38及び軸受39により受け座29と同心状に回転自在に支持される。この時、ギヤアッシ2を含む受け座29はコイルスプリング21により常時組付ベース20から軸方向に離れる方向(上方)に付勢されるが、受け座29に備えた受け座側ストッパ40がガイド部材28に備えたガイド部材側ストッパ35に当接しているためそれ以上の組付ベース20から離れる方向への移動が規制される(支持ステップ)。
次に、図5及び図6に示すように、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13(非セレーション部位)にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5に備えられた位置決め孔43に、組付ベース20に備えられたハウジング用位置決めシャフト44(組付ハンドル用位置決めストッパ56と共通)を挿入する(位置決めステップ)。
【0043】
次に、図6に示すように、クランプ機構26である各トグルクランプ57の把持体67を受け座29側に回動させることで、各トグルクランプ57の押圧本体65の押圧部60がハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を下方に向けて押圧する(クランプステップ)。すると、ハウジング5は、その内周面のテーパ面70がガイド部材28の円筒状壁部30の上端縁部に沿うように組付ベース20側に移動して、ハウジング5の内周面の段部71がガイド部材28の円筒状壁部30の上端縁部に当接される。これと同時に、ハウジング5のセレーション孔6の下端がギヤアッシ2のセレーション軸3の上端に干渉することで、ハウジング5の移動に伴って、ギヤアッシ2と共に受け座29がコイルスプリング21の付勢力に抗して組付ベース20に近接する方向(下方)に移動するが、受け座29の円筒状壁部36とガイド部材28の底壁部31との間に若干の隙間を有する状態で停止される。この結果、ハウジング5がセレーション軸3と同心状に配置され、しかも、ハウジング5の組付ベース20に対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置が決定され、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8が、組付ベース20に対して所定位相で位置決めされてクランプされる。なおこの時点では、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6との位相は一致していない状態である。
【0044】
次に、図7に示すように、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14の位置を目視にて確認し、組付ハンドル23の嵌合部51の第2嵌合凹部53をセレーション軸3の先端部13に被せるようにして、セレーション軸3の先端部13の位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の位相合わせ凸部55を嵌合させる(位相一致ステップを構成するハンドル嵌合ステップ)。すると、セレーション軸3と組付ハンドル23とが、セレーション部4の欠歯7と組付ハンドル23のハンドル部50の延びる方向とが所定の位相差となるように嵌合される。この時、作業者は、セレーション軸3の先端部13の外周面に設けた位相合わせ凹部14の位置を目視で確認することができるので、その位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の位相合わせ凸部55を容易に嵌合することができる。
【0045】
次に、図7及び図8に示すように、組付ハンドル23を、ギヤアッシ2と共にコイルスプリング21の付勢力に抗するように組付ベース20側に押し込み、ハウジング5のセレーション孔6の下端とセレーション軸3のセレーション部4の上端との間に隙間を生じさせた状態で、そのハンドル部50を回転させて組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)に当接させる(位相一致ステップを構成する当接ステップ)。その結果、ハウジング5が組付ベース20に支持された際のハウジング5のセレーション孔6の欠歯8と組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23を嵌合させた際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とが同じに設定されているために、セレーション軸3のセレーション部4と、ハウジング5のセレーション孔6との位相が一致する。
【0046】
次に、図9に示すように、組付ハンドル23の組付ベース20側(下方)への押し込みを解除して、組付ハンドル23をセレーション軸3の先端部13から離脱させると、コイルスプリング21の付勢力によりギヤアッシ2を支持する受け座29がガイド部材28の円筒状壁部30に沿って組付ベース20から離れる方向(上方)に、受け座29に備えた受け座側ストッパ40がガイド部材28に備えたガイド部材側ストッパ35に当接するまで移動することで、ギヤアッシ2から延びるセレーション軸3も同方向に移動して、そのセレーション部4がハウジング5のセレーション孔6に嵌合するようになる(嵌合ステップ)。
【0047】
ギヤアッシ2のセレーション軸3とハウジング2のセレーション孔6とが嵌合した後は、各トグルクランプ57を解除して、ギヤアッシ2と共にハウジング5を組付ベース20から離脱させる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、作業者は、組付ベース20にギヤアッシ2を組み付けた後、ギヤアッシ2からの延びるセレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5の位置決め孔43を、組付ベース20に備えたハウジング用位置決めシャフト44(組付ハンドル用位置決めストッパ56と共通)に挿通させて、各トグルクランプ57によりハウジング5を組付ベース20にクランプする。その後、セレーション軸3の先端部13の外周面に設けた位相合わせ凹部14に組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に設けた位相合わせ凸部55を嵌合して、組付ハンドル23を組付ベース20側に押し込みながらそのハンドル部50を回転させて組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)に当接させる。この時点で、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6との位相が一致しているので、その後、組付ハンドル23の組付ベース20側への押し込みを解除すれば、セレーション軸3がコイルスプリング21の付勢力により組付ベース20から離れる方向へ移動して、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6とが嵌合される。
【0049】
これにより、作業者による、セレーション軸3のセレーション部4をハウジング5のセレーション孔6に嵌合させる嵌合作業が従来よりもはるかに軽減されると共に、セレーション部4とセレーション孔6とを嵌合させるために両者が擦り合うこともないので異物等の発生を抑制することができる。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1において、組付ハンドル23の変形例を図10及び図11に基づいて説明する。
本実施形態では、セレーション軸3の先端部13と組付ハンドル23’の嵌合部51の第2嵌合凹部53との嵌合形態が第1の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1と相違する。
図10に示すように、セレーション軸3の先端部13に径方向に延びる位相合わせ孔75が形成される。なお、位相合わせ孔75の一方の開口部75a(75b)がセレーション部4の欠歯7と同位相になる。また、この位相合わせ孔75は、セレーション軸3が搭載車両の構成部材と連結される際の連結孔が利用されている。
一方、図11に示すように、本実施形態に係る組付ハンドル23’は、その嵌合部51の第2嵌合凹部53の内周面に出没自在の一対の位相合わせピン76、76が設けられて構成される。なお、一対の位相合わせピン76、76に代えて一対のボールプランジャーを採用してもよい。
【0051】
そして、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23’を嵌合する際には、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23’の嵌合部51の第2嵌合凹部53を被せるようにセットする。その後、組付ハンドル23’の嵌合部51を回転させ、一対の位相合わせピン76、76と、位相合わせ孔75の両開口75a、75bとが一致すると、一対の位相合わせピン76、76が位相合わせ孔75内に挿入されて両者が嵌合される。
【符号の説明】
【0052】
1 セレーション軸の組付装置,2 ギヤアッシ(回転直線運動変換機構),3 セレーション軸,4 セレーション部,5 ハウジング(被嵌合部材),6 セレーション孔,13 先端部(非セレーション部位),14 位相合わせ凹部,20 組付ベース,21 コイルスプリング(付勢手段),22 ハウジング用位置決め手段(被嵌合部材用位置決め手段),23、23’ 組付ハンドル,25 組付ハンドル用位置決め部,26 クランプ機構,43 位置決め孔,44 ハウジング用位置決めシャフト(被嵌合部材用位置決めシャフト),50 ハンドル部,56 組付ハンドル用位置決めストッパ,57 トグルクランプ,75 位相合わせ孔,76 位相合わせピン
【技術分野】
【0001】
本発明は、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させるセレーション軸の組付方法及び組付装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車のエンジンには、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構が搭載されている。該回転直線運動変換機構(ギヤアッシ)は、モータからの回転運動が伝達され、内周面に軸方向に間隔を置いて複数配置されるリングギヤを有するリングシャフトと、該リングシャフトの内側に配置されるサンシャフトと、該サンシャフトの周囲に配置される複数のプラネタリシャフトとがねじ及びギヤで嵌合して構成される。そして、モータからの回転運動によりリングシャフトが回転運動すると、各プラネタリシャフトがサンシャフトの周りを遊星運動して、サンシャフトが各プラネタリシャフトに対して軸方向に直線運動するようになる(特許文献1参照)。
なお、回転直線運動変換機構のサンシャフトの一端部は、リングシャフトよりも突出して構成されており、その突出した一端部の外周面にセレーション部が形成される。そのセレーション部に被嵌合部材としてのハウジングのセレーション孔が嵌合することで、セレーション軸のハウジングに対する回転が規制される。
【0003】
そして、上述した回転直線運動変換機構をハウジングに組み付ける際には、該サンシャフト(セレーション軸)のセレーション部をハウジングのセレーション孔に特定の位相で嵌合して組み付ける必要がある。その嵌合の際には、両者に設けた欠歯を基準として両者の位相を一致させて嵌合していた。
【0004】
しかしながら、セレーション軸のセレーション部をハウジングのセレーション孔に特定の位相で嵌合する際には、作業者が目視で両者の欠歯を確認しながら嵌合するために、嵌合作業に時間を要しコストアップの要因となる。また、作業者は、セレーション軸のセレーション部をハウジングのセレーション孔に擦り合せて嵌合させるために、異物が発生しやすく、発生した異物がギヤアッシ内に入り込む懸念がある。このように、この嵌合作業は作業者にとって大きな負担となっており改善する必要がある。
【0005】
また、特許文献2には、ドライブシャフトとアウトボードコンポとが互いに加圧された状態で、ドライブシャフトが揺動機構により揺動されて、ドライブシャフトのセレーション軸部とアウトボードコンポの内輪部材のセレーション孔との位相が一致すると、ドライブシャフトがアウトボードコンポに近接する方向に移動するセレーション軸部材の位相決め圧入方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−33198号公報
【特許文献2】特開2004−276135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献2の発明では、セレーション孔側がアルミ等の軽金属が採用されている場合、ドライブシャフトを揺動させて、該ドライブシャフトのセレーション軸部とセレーション孔との位相を一致させる最中に、セレーション孔が損傷して異物が発生する虞があり、上述した問題を解決することはできない。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることのできるセレーション軸の組付方法及び組付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のセレーション軸の組付方法は、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、を含むことを特徴としている。
また、本発明のセレーション軸の組付装置は、セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、を備えたことを特徴としている。
これにより、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることができる。
なお、本発明のセレーション軸の組付方法及び組付装置の各種態様およびそれらの作用については、以下の発明の態様の項において詳しく説明する。
【0010】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。なお、各態様は、請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付して、必要に応じて他の項を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施の形態等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要件を付加した態様も、また、各項の態様から構成要件を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0011】
(1)セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付方法であって、前記セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、を含むことを特徴とするセレーション軸の組付方法(請求項1に相当)。
(1)項のセレーション軸の組付方法では、まず、支持ステップにて、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持する。この時、セレーション軸は軸方向で組付ベースから離れる方向に付勢されている状態となる。次に、位置決めステップにて、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、被嵌合部材を組付ベースに対してセレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする。この状態では、被嵌合部材のセレーション孔よりも組付ベース側にセレーション軸のセレーション部が位置しており、互いの位相も一致していない状態となっている。次に、位相一致ステップにて、セレーション軸を、その付勢力に抗するように組付ベース側に押し込みながら組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させる。すると、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相が一致される。次に、嵌合ステップにおいて、セレーション軸への押し込みを解除すると、セレーション軸は組付ベースから離れる方向に付勢されるためその付勢力によって移動して、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とが嵌合するようになる。
【0012】
(2)前記位置決めステップでは、前記被嵌合部材に設けた位置決め孔に、前記組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることを特徴とする(1)項に記載のセレーション軸の組付方法(請求項2に相当)。
(2)項のセレーション軸の組付方法では、位置決めステップにおいては、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、且つ、被嵌合部材に備えた位置決め孔に、組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることで、被嵌合部材が組付ベースに対してセレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めされる。
【0013】
(3)前記位置決めステップの後に、前記組付ベースに対して位置決めされた被嵌合部材を前記組付ベースにクランプするクランプステップを含むことを特徴とする(1)項または(2)項に記載のセレーション軸の組付方法。
(3)項のセレーション軸の組付方法では、被嵌合部材が組付ベースに対して確実に位置決めされた状態でクランプされるので、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との嵌合を確実にすることができる。
【0014】
(4)前記位相一致ステップは、前記セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合するハンドル嵌合ステップと、前記組付ハンドルを前記組付ベース側に押し込みながら前記セレーション軸と共に回転させて、前記組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる当接ステップと、を含むことを特徴とする(1)項〜(3)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付方法(請求項3に相当)。
(4)項のセレーション軸の組付方法では、位相一致ステップにおいて、まず、ハンドル嵌合ステップにて、セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合する。次に、当接ステップでは、組付ハンドルを、セレーション軸への付勢力に抗するように組付ベース側に押し込みながらセレーション軸と共に回転させて、組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる。この結果、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とは、両者の高さ方向の位置はまだ相違しているが、両者の位相は一致している状態となる。
【0015】
(5)セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付装置であって、前記セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、を備えたことを特徴とするセレーション軸の組付装置(請求項4に相当)。
(5)項のセレーション軸の組付装置では、まず、セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持するが、セレーション軸は付勢手段により軸方向で組付ベースから離れる方向に付勢されている状態となる。次に、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、被嵌合部材用位置決め手段により、被嵌合部材の組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を位置決めする。次に、セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合して、組付ハンドル用位置決め部により、組付ハンドルの組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を位置決めすることで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる。その後、セレーション軸が付勢手段により組付ベースから離れる方向に移動することで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔とが嵌合する。
【0016】
(6)前記被嵌合部材用位置決め手段は、前記被嵌合部材に備えた位置決め孔と、前記組付ベースに備えた、前記位置決め孔に挿通される被嵌合部材用位置決めシャフトとから構成されることを特徴とする(5)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項5に相当)。
(6)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の先端部の非セレーション部位に被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、且つ、被嵌合部材用位置決め手段を構成する、被嵌合部材に備えた位置決め孔に、組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることで、被嵌合部材の組付ベースに対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置が位置決めされる。
【0017】
(7)前記被嵌合部材に既に備えられた他の用途で使用される孔を前記位置決め孔として利用することを特徴とする(6)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(7)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させるために、新たな位置決め孔を形成しないので、加工工数を低減させることができ、コスト削減に繋がる。
【0018】
(8)前記組付ハンドル用位置決め部は、前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパで構成されることを特徴とする(5)項〜(7)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置(請求項6に相当)。
(8)項のセレーション軸の組付装置では、組付ハンドルをセレーション軸に所定位相で嵌合した後、組付ハンドルを、組付ハンドル用位置決めストッパに当接するまで、セレーション軸心周りを回転させることで、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との位相が一致される。
【0019】
(9)前記被嵌合部材用位置決めシャフトと、前記組付ハンドル用位置決めストッパとを共通化することを特徴とする(8)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項7に相当)。
(9)項のセレーション軸の組付装置では、構成部材を最小限にして加工工数を低減させると共に作業者による作業を簡易化させることで、全体的なコストを削減することができる。
【0020】
(10)前記セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部に、前記組付ハンドルに備えた嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせ凸部または凹部が嵌合して両者が嵌合されることを特徴とする(5)項〜(9)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置(請求項8に相当)。
(10)項のセレーション軸の組付装置では、作業者は、セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部の位置を目視で確認することができるので、セレーション軸に組付ハンドルの嵌合凹部を嵌合させる作業を簡易化させることができる。
【0021】
(11)前記セレーション軸に設けた前記位置合わせ凹部または凸部は、前記セレーション部の転造工程にて該セレーション部と同時に形成されることを特徴とする(10)項に記載のセレーション軸の組付装置(請求項9に相当)。
(12)前記セレーション軸のセレーション部に備えた欠歯と、前記セレーション軸の先端部に設けた前記位相合わせ凹部または凸部とは同一位相で形成されることを特徴とする(10)項または(11)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(11)項及び(12)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸のセレーション部に備えた欠歯と、先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部との位相ズレを抑制することができる。
【0022】
(13)前記セレーション軸の先端部に設けた径方向に延びる位相合わせ孔に、前記組付ハンドルの嵌合凹部の内周面に設けた出没自在の位相合わせピンを係合させて両者を嵌合することを特徴とする(5)項〜(9)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
(13)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の先端部に組付ハンドルの嵌合凹部を被せ、組付ハンドルをセレーション軸に対して回転させれば、セレーション軸の先端部の外周面に設けた位置合わせ孔に、組付ハンドルの嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせピンが係合して両者が嵌合されるので、セレーション軸に組付ハンドルを嵌合させる作業を簡易化させることができる。
【0023】
(14)前記セレーション軸に既に備えられた他の用途で使用される孔を前記位相合わせ孔として利用することを特徴とする(13)項に記載のセレーション軸の組付装置。
(14)項のセレーション軸の組付装置では、セレーション軸の外周面に組付ハンドル嵌合用の位相合わせ孔を新たに形成する必要がないので、加工工数を低減させることができ、コスト削減に繋がる。
【0024】
(15)前記被嵌合部材を、前記被嵌合部材用位置決め手段により前記組付ベースに位置決めした後、前記被嵌合部材を前記組付ベースにクランプするクランプ機構を備えることを特徴とする(5)項〜(14)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
(15)項のセレーション軸の組付装置では、クランプ機構により、被嵌合部材が組付ベースに対して確実に位置決めされた状態でクランプされるので、セレーション軸のセレーション部と被嵌合部材のセレーション孔との嵌合を確実にすることができる。
【0025】
(16)前記セレーション軸は、自動車のエンジンに搭載される、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構のサンシャフトであることを特徴とする(5)項〜(15)項のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、作業者による、セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる作業を軽減させて、異物等が発生することなく容易に両者を嵌合させることのできるセレーション軸の組付方法及び組付装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置が使用されるギヤアッシの断面図である。
【図2】図2は、図1のギヤアッシのサンシャフトであるセレーション軸を示し、(a)は側面図で、(b)は正面図である。
【図3】図3は、図1のギヤアッシのセレーション軸が嵌合されるセレーション孔を有するハウジングの斜視図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置を示し、組付ベースにギヤアッシが支持された状態を示す断面図である。
【図5】図5は、図4の状態から組付ベースにハウジングを組み付ける直前を示す断面図である。
【図6】図6は、図5の状態から組付ベースにハウジングがクランプされた状態を示す断面図である。
【図7】図7は、図6の状態からセレーション軸の先端部に組付ハンドルを嵌合させて、該組付ハンドルを組付ベース側に押し込んだ状態を示す断面図である。
【図8】図8は、図7の状態から組付ハンドルを回転させて組付ハンドル用位置決めストッパに当接された状態を示す断面図である。
【図9】図9は、図8の状態からセレーション軸の先端部から組付ハンドルを離脱させた状態を示す断面図である。
【図10】図10は、図2に示すセレーション軸とは別のセレーション軸を示す側面図である。
【図11】図11は、図10に示すセレーション軸の先端部に嵌合する組付ハンドルの第2嵌合凹部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態を図1〜図11に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1は、図1に示すような、自動車のエンジンに搭載される、可変バルブ機構に直線運動を伝達する回転直線運動変換機構2(以下、ギヤアッシという)のサンシャフトであるセレーション軸3のセレーション部4を、図3に示すような、被嵌合部材としてのハウジング5のセレーション孔6に特定の位相で嵌合させるものである。
【0029】
本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1を図1〜図9に基づいて詳細に説明する。
ギヤアッシ2は、図1に示すように、モータ(図示略)からの回転運動が伝達され、内周面に軸方向に間隔を置いて複数配置されるリングギヤ11を有するリングシャフト10と、該リングシャフト10の内側に配置され、リングシャフト10から突設されるサンシャフト(セレーション軸3)と、該サンシャフト(セレーション軸3)の周囲に配置される複数のプラネタリシャフト12とがねじ及びギヤで嵌合して構成される。
図1〜図3に示すように、セレーション軸3の一端は、リングシャフト10よりも突出しており、その突出した部位の外周面にセレーション部4が形成される。該セレーション軸3のセレーション部4及びハウジング5のセレーション孔6に欠歯7、8(図2及び3の黒塗り部分)がそれぞれ形成され、各欠歯7、8を基準として両者が嵌合される。
【0030】
図1及び図2に示すように、ギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13は、セレーションが加工されていない非セレーション部位として構成される。セレーション軸3の先端部13の外周面には、軸方向に延びる位相合わせ凹部14(例えば、V字状の凹部が周方向に間隔を置いて複数)が形成される。該位相合わせ凹部14は、後述する組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に設けた位相合わせ凸部55に嵌合する。また、該位相合わせ凹部14はセレーション部4の欠歯7と同一位相で形成される。
【0031】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1は、セレーション軸3を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、セレーション軸3の非セレーション部位である先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入してハウジング5を支持する組付ベース20と、セレーション軸3を軸方向で組付ベース20から離れる方向に付勢する付勢手段であるコイルスプリング21と、組付ベース20とハウジング5との間に備えられ、ハウジング5の組付ベース20に対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定するハウジング用位置決め手段22と、セレーション軸3に所定位相で嵌合する組付ハンドル23と、組付ベース20に備えられ、該組付ベース20に対する組付ハンドル23のセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部25と、ハウジング5をハウジング用位置決め手段22により組付ベース20に位置決めした後、ハウジング5を組付ベース20にクランプするクランプ機構26とを備えている。
【0032】
組付ベース20は、ベース板27と、ベース板27上に固定される有底円筒状のガイド部材28と、該ガイド部材28の内部に同心状に配置され、内部にギヤアッシ2を支持する受け座29とからなる。
ガイド部材28は、内部に受け座29を軸方向(上下方向)に移動自在に支持する円筒状壁部30と、該円筒状壁部30の下端開口を閉塞する円板状の底壁部31とからなる有底円筒状に形成される。ガイド部材28の円筒状壁部30には、受け座29の上限位置を定めるガイド部材側ストッパ35が内方に向かって突設される。
【0033】
受け座29は、内部にギヤアッシ2を支持する円筒状壁部36と、該円筒状壁部36の内部を横切るように延びる円板状の支持壁部37とからなる断面H字状に形成される。受け座29の支持壁部37上には、ギヤアッシ2のリングシャフト10の下端外周面を回転自在に支持するリング部材38が配置される。受け座29の円筒状壁部36の上部にはギヤアッシ2のリングシャフト10の上部外周面を回転自在に支持する軸受39が配置される。受け座29の円筒状壁部36には、ガイド部材28に設けたガイド部材側ストッパ35に対応する受け座側ストッパ40が外方に向かって突設される。
【0034】
ガイド部材28の底壁部31と受け座29の支持壁部37との間には、受け座29をガイド部材28の底壁部31(組付ベース20)から離れる方向(上方)に付勢する付勢手段としてのコイルスプリング21が配設される。なお、コイルスプリング21は、その内部に受け座29の支持壁部37の下面から延びる上側支持ブロック41と、ガイド部材28の底壁部31の上面から延びる下側支持ブロック42とが配置される。そして、コイルスプリング21は、これら上側及び下側支持ブロック41、42により軸方向に支持される。
【0035】
図3及び図4に示すように、ハウジング用位置決め手段22は、ハウジング5に備えられた位置決め孔43と、組付ベース20に備えられた、ハウジング5の位置決め孔43に挿通されるハウジング用位置決めシャフト44とから構成される。
ハウジング5に備えられた位置決め孔43は、図3に示すように、ハウジング5の上側のフランジ部47aの一端に設けられており、セレーション孔6の欠歯8を基準とした所定位相(角度)の位置に形成される。該位置決め孔43は、ハウジング5が搭載車両の所定部位に固定される際に使用される固定孔が利用されている。
一方、図4に示すように、組付ベース20のベース板27上にはハウジング用位置決めシャフト44が、受け座29の支持壁部37の径方向中心(セレーション軸心)を基準とした所定位相(角度)の位置に立設されている。
【0036】
そして、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2からの延びるセレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5に備えられた位置決め孔43を、組付ベース20に備えられたハウジング用位置決めシャフト44に挿入すると、ハウジング5の組付ベース20に対する受け座29の径方向中心周り(セレーション軸心周り)の回転方向の相対位置が決定される。言い換えれば、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8が組付ベース20に対して所定位相で位置決めされる。
【0037】
図6に示すように、組付ハンドル23は、棒状のハンドル部50と、ハンドル部50の一端に一体的に形成され該ハンドル部50と直交する方向に延びる嵌合部51とからなる。該嵌合部51の下面には、ハウジング5の上部を覆う平面視円形状の第1嵌合凹部52と、第1嵌合凹部52の底部に設けられ第1嵌合凹部52よりも小径でセレーション軸3の先端部13を覆う第2嵌合凹部53とが設けられている。また、嵌合部51の第2嵌合凹部53の内周面には軸方向に延び、セレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14に対応する位相合わせ凸部55が形成される。
そして、セレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の嵌合部51の第2嵌合凹部53に設けた位相合わせ凸部55を嵌合すると、セレーション軸3と組付ハンドル23とが所定位相で、すなわち、セレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向とが所定の位相差となるように嵌合される。
【0038】
図6に示すように、組付ハンドル用位置決め部25は、組付ベース20に備えられ、該組付ベース20に対する組付ハンドル23のセレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定するものであって、組付ハンドル23のハンドル部50のセレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパ56で構成される。
【0039】
該組付ハンドル用位置決めストッパ56は、組付ベース20のベース板27上にて、受け座29の支持壁部37の径方向中心を基準とした所定位相(角度)の位置に立設されているが、ハウジング5がハウジング用位置決め手段22により位置決めされた際のハウジング5のセレーション孔6の欠歯8(図2参照)と組付ハンドル用位置決めストッパ56との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23が嵌合された際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とが一致する位置に立設される。
【0040】
なお、本実施の形態では、ハウジング用位置決めシャフト44と組付ハンドル用位置決めストッパ56とが共通化されており、ハウジング5が組付ベース20に支持された際の、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8と組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23が嵌合した際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とを同じに設定している。
また、本実施の形態では、セレーション軸3の先端部13の外周面に位相合わせ凹部14を、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に位相合わせ凸部55をそれぞれ設けたが、セレーション軸3の先端部13の外周面に位相合わせ凸部55を設け、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に位相合わせ凹部14を設けてもよい。
【0041】
図4に示すように、クランプ機構26は、ハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を上方から押圧する複数のトグルクランプ57、57で構成される。各トグルクランプ57は、組付ベース20のベース板27上から立設される柱状体58の上面にそれぞれ固定される。該トグルクランプ57は、軸部59の先端に該軸部59と直交する方向に延びる押圧部60を有する押圧本体65と、該押圧本体65とリンク部材66を介して連結される把持体67と、これら押圧本体65と把持体67とを支持し、柱状体58に固着される支持体68とを備えて構成される。
そして、このクランプ機構26によりハウジング5を組付ベース20にクランプする際には、図6に示すように、把持体67を受け座29側に回動させれば、押圧本体65がリンク部材66を介して回動して、クランプ時には、押圧本体65の軸部59が組付ベース20のベース板27と略同方向に延びると共に把持体67がベース板27と直交する方向に延び、押圧本体65の押圧部60によりハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を上方から押圧するようになる。
【0042】
次に、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1を使用した組付方法を図4〜図9に基づいて説明する。
まず、図4に示すように、ギヤアッシ2のリングシャフト10を組付ベース20の受け座29の円筒状壁部36内に挿入すると、リングシャフト10は、受け座29の円筒状壁部36内のリング部材38及び軸受39により受け座29と同心状に回転自在に支持される。この時、ギヤアッシ2を含む受け座29はコイルスプリング21により常時組付ベース20から軸方向に離れる方向(上方)に付勢されるが、受け座29に備えた受け座側ストッパ40がガイド部材28に備えたガイド部材側ストッパ35に当接しているためそれ以上の組付ベース20から離れる方向への移動が規制される(支持ステップ)。
次に、図5及び図6に示すように、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13(非セレーション部位)にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5に備えられた位置決め孔43に、組付ベース20に備えられたハウジング用位置決めシャフト44(組付ハンドル用位置決めストッパ56と共通)を挿入する(位置決めステップ)。
【0043】
次に、図6に示すように、クランプ機構26である各トグルクランプ57の把持体67を受け座29側に回動させることで、各トグルクランプ57の押圧本体65の押圧部60がハウジング5の下側のフランジ部47bの所定部位を下方に向けて押圧する(クランプステップ)。すると、ハウジング5は、その内周面のテーパ面70がガイド部材28の円筒状壁部30の上端縁部に沿うように組付ベース20側に移動して、ハウジング5の内周面の段部71がガイド部材28の円筒状壁部30の上端縁部に当接される。これと同時に、ハウジング5のセレーション孔6の下端がギヤアッシ2のセレーション軸3の上端に干渉することで、ハウジング5の移動に伴って、ギヤアッシ2と共に受け座29がコイルスプリング21の付勢力に抗して組付ベース20に近接する方向(下方)に移動するが、受け座29の円筒状壁部36とガイド部材28の底壁部31との間に若干の隙間を有する状態で停止される。この結果、ハウジング5がセレーション軸3と同心状に配置され、しかも、ハウジング5の組付ベース20に対するセレーション軸心周りの回転方向の相対位置が決定され、ハウジング5のセレーション孔6に設けた欠歯8が、組付ベース20に対して所定位相で位置決めされてクランプされる。なおこの時点では、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6との位相は一致していない状態である。
【0044】
次に、図7に示すように、組付ベース20に支持されたギヤアッシ2から延びるセレーション軸3の先端部13に設けた位相合わせ凹部14の位置を目視にて確認し、組付ハンドル23の嵌合部51の第2嵌合凹部53をセレーション軸3の先端部13に被せるようにして、セレーション軸3の先端部13の位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の位相合わせ凸部55を嵌合させる(位相一致ステップを構成するハンドル嵌合ステップ)。すると、セレーション軸3と組付ハンドル23とが、セレーション部4の欠歯7と組付ハンドル23のハンドル部50の延びる方向とが所定の位相差となるように嵌合される。この時、作業者は、セレーション軸3の先端部13の外周面に設けた位相合わせ凹部14の位置を目視で確認することができるので、その位相合わせ凹部14に、組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の位相合わせ凸部55を容易に嵌合することができる。
【0045】
次に、図7及び図8に示すように、組付ハンドル23を、ギヤアッシ2と共にコイルスプリング21の付勢力に抗するように組付ベース20側に押し込み、ハウジング5のセレーション孔6の下端とセレーション軸3のセレーション部4の上端との間に隙間を生じさせた状態で、そのハンドル部50を回転させて組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)に当接させる(位相一致ステップを構成する当接ステップ)。その結果、ハウジング5が組付ベース20に支持された際のハウジング5のセレーション孔6の欠歯8と組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)との位相差と、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23を嵌合させた際のセレーション部4の欠歯7とハンドル部50の延びる方向との位相差とが同じに設定されているために、セレーション軸3のセレーション部4と、ハウジング5のセレーション孔6との位相が一致する。
【0046】
次に、図9に示すように、組付ハンドル23の組付ベース20側(下方)への押し込みを解除して、組付ハンドル23をセレーション軸3の先端部13から離脱させると、コイルスプリング21の付勢力によりギヤアッシ2を支持する受け座29がガイド部材28の円筒状壁部30に沿って組付ベース20から離れる方向(上方)に、受け座29に備えた受け座側ストッパ40がガイド部材28に備えたガイド部材側ストッパ35に当接するまで移動することで、ギヤアッシ2から延びるセレーション軸3も同方向に移動して、そのセレーション部4がハウジング5のセレーション孔6に嵌合するようになる(嵌合ステップ)。
【0047】
ギヤアッシ2のセレーション軸3とハウジング2のセレーション孔6とが嵌合した後は、各トグルクランプ57を解除して、ギヤアッシ2と共にハウジング5を組付ベース20から離脱させる。
【0048】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、作業者は、組付ベース20にギヤアッシ2を組み付けた後、ギヤアッシ2からの延びるセレーション軸3の先端部13にハウジング5のセレーション孔6を挿入すると共に、ハウジング5の位置決め孔43を、組付ベース20に備えたハウジング用位置決めシャフト44(組付ハンドル用位置決めストッパ56と共通)に挿通させて、各トグルクランプ57によりハウジング5を組付ベース20にクランプする。その後、セレーション軸3の先端部13の外周面に設けた位相合わせ凹部14に組付ハンドル23の第2嵌合凹部53の内周面に設けた位相合わせ凸部55を嵌合して、組付ハンドル23を組付ベース20側に押し込みながらそのハンドル部50を回転させて組付ハンドル用位置決めストッパ56(ハウジング用位置決めシャフト44と共通)に当接させる。この時点で、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6との位相が一致しているので、その後、組付ハンドル23の組付ベース20側への押し込みを解除すれば、セレーション軸3がコイルスプリング21の付勢力により組付ベース20から離れる方向へ移動して、セレーション軸3のセレーション部4とハウジング5のセレーション孔6とが嵌合される。
【0049】
これにより、作業者による、セレーション軸3のセレーション部4をハウジング5のセレーション孔6に嵌合させる嵌合作業が従来よりもはるかに軽減されると共に、セレーション部4とセレーション孔6とを嵌合させるために両者が擦り合うこともないので異物等の発生を抑制することができる。
【0050】
次に、本発明の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1において、組付ハンドル23の変形例を図10及び図11に基づいて説明する。
本実施形態では、セレーション軸3の先端部13と組付ハンドル23’の嵌合部51の第2嵌合凹部53との嵌合形態が第1の実施形態に係るセレーション軸の組付装置1と相違する。
図10に示すように、セレーション軸3の先端部13に径方向に延びる位相合わせ孔75が形成される。なお、位相合わせ孔75の一方の開口部75a(75b)がセレーション部4の欠歯7と同位相になる。また、この位相合わせ孔75は、セレーション軸3が搭載車両の構成部材と連結される際の連結孔が利用されている。
一方、図11に示すように、本実施形態に係る組付ハンドル23’は、その嵌合部51の第2嵌合凹部53の内周面に出没自在の一対の位相合わせピン76、76が設けられて構成される。なお、一対の位相合わせピン76、76に代えて一対のボールプランジャーを採用してもよい。
【0051】
そして、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23’を嵌合する際には、セレーション軸3の先端部13に組付ハンドル23’の嵌合部51の第2嵌合凹部53を被せるようにセットする。その後、組付ハンドル23’の嵌合部51を回転させ、一対の位相合わせピン76、76と、位相合わせ孔75の両開口75a、75bとが一致すると、一対の位相合わせピン76、76が位相合わせ孔75内に挿入されて両者が嵌合される。
【符号の説明】
【0052】
1 セレーション軸の組付装置,2 ギヤアッシ(回転直線運動変換機構),3 セレーション軸,4 セレーション部,5 ハウジング(被嵌合部材),6 セレーション孔,13 先端部(非セレーション部位),14 位相合わせ凹部,20 組付ベース,21 コイルスプリング(付勢手段),22 ハウジング用位置決め手段(被嵌合部材用位置決め手段),23、23’ 組付ハンドル,25 組付ハンドル用位置決め部,26 クランプ機構,43 位置決め孔,44 ハウジング用位置決めシャフト(被嵌合部材用位置決めシャフト),50 ハンドル部,56 組付ハンドル用位置決めストッパ,57 トグルクランプ,75 位相合わせ孔,76 位相合わせピン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付方法であって、
前記セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、
前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、
前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、
前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、
を含むことを特徴とするセレーション軸の組付方法。
【請求項2】
前記位置決めステップでは、前記被嵌合部材に設けた位置決め孔に、前記組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることを特徴とする請求項1に記載のセレーション軸の組付方法。
【請求項3】
前記位相一致ステップは、
前記セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合するハンドル嵌合ステップと、
前記組付ハンドルを前記組付ベース側に押し込みながら前記セレーション軸と共に回転させて、前記組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる当接ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のセレーション軸の組付方法。
【請求項4】
セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付装置であって、
前記セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、
前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、
前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、
前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、
前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、
を備えたことを特徴とするセレーション軸の組付装置。
【請求項5】
前記被嵌合部材用位置決め手段は、前記被嵌合部材に備えた位置決め孔と、前記組付ベースに備えた、前記位置決め孔に挿通される被嵌合部材用位置決めシャフトとから構成されることを特徴とする請求項4に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項6】
前記組付ハンドル用位置決め部は、前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパで構成されることを特徴とする請求項4または5に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項7】
前記被嵌合部材用位置決めシャフトと、前記組付ハンドル用位置決めストッパとを共通化することを特徴とする請求項6に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項8】
前記セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部に、前記組付ハンドルに備えた嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせ凸部または凹部が嵌合して両者が嵌合されることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項9】
前記セレーション軸に設けた前記位置合わせ凹部または凸部は、前記セレーション部の転造工程にて該セレーション部と同時に形成されることを特徴とする請求項8に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項1】
セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付方法であって、
前記セレーション軸を組付ベースに回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する支持ステップと、
前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して、前記被嵌合部材を前記組付ベースに対して前記セレーション軸を中心とした回転方向の所定の相対位置に位置決めする位置決めステップと、
前記セレーション軸を前記支持ステップでの付勢に抗するように前記組付ベース側に押し込みながら前記組付ベースに対する所定の相対位置まで回転させて、前記セレーション軸のセレーション部と前記被嵌合部材のセレーション孔との位相を一致させる位相一致ステップと、
前記セレーション軸への押し込みを解除して、前記支持ステップにおける付勢により該セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向へ移動させて、前記セレーション軸のセレーション部を前記被嵌合部材のセレーション孔に嵌合させる嵌合ステップと、
を含むことを特徴とするセレーション軸の組付方法。
【請求項2】
前記位置決めステップでは、前記被嵌合部材に設けた位置決め孔に、前記組付ベースに備えた被嵌合部材用位置決めシャフトを挿通させることを特徴とする請求項1に記載のセレーション軸の組付方法。
【請求項3】
前記位相一致ステップは、
前記セレーション軸に所定位相で組付ハンドルを嵌合するハンドル嵌合ステップと、
前記組付ハンドルを前記組付ベース側に押し込みながら前記セレーション軸と共に回転させて、前記組付ベースに備えた組付ハンドル用位置決めストッパに当接させる当接ステップと、
を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のセレーション軸の組付方法。
【請求項4】
セレーション軸のセレーション部を被嵌合部材に備えたセレーション孔に嵌合するセレーション軸の組付装置であって、
前記セレーション軸を回転可能に、且つ軸方向に移動可能に支持して、前記セレーション軸の先端部の非セレーション部位に前記被嵌合部材のセレーション孔を挿入して前記被嵌合部材を支持する組付ベースと、
前記セレーション軸を軸方向で前記組付ベースから離れる方向に付勢する付勢手段と、
前記組付ベースと前記被嵌合部材との間に備えられ、前記組付ベースに対する前記被嵌合部材の前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する被嵌合部材用位置決め手段と、
前記セレーション軸に所定位相で嵌合する組付ハンドルと、
前記組付ベースに備えられ、該組付ベースに対する前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転方向の相対位置を決定する組付ハンドル用位置決め部と、
を備えたことを特徴とするセレーション軸の組付装置。
【請求項5】
前記被嵌合部材用位置決め手段は、前記被嵌合部材に備えた位置決め孔と、前記組付ベースに備えた、前記位置決め孔に挿通される被嵌合部材用位置決めシャフトとから構成されることを特徴とする請求項4に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項6】
前記組付ハンドル用位置決め部は、前記組付ハンドルの前記セレーション軸心周りの回転を所定位置で規制する組付ハンドル用位置決めストッパで構成されることを特徴とする請求項4または5に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項7】
前記被嵌合部材用位置決めシャフトと、前記組付ハンドル用位置決めストッパとを共通化することを特徴とする請求項6に記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項8】
前記セレーション軸の先端部の外周面に設けた位相合わせ凹部または凸部に、前記組付ハンドルに備えた嵌合凹部の内周面に設けた位相合わせ凸部または凹部が嵌合して両者が嵌合されることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のセレーション軸の組付装置。
【請求項9】
前記セレーション軸に設けた前記位置合わせ凹部または凸部は、前記セレーション部の転造工程にて該セレーション部と同時に形成されることを特徴とする請求項8に記載のセレーション軸の組付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−71215(P2013−71215A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212856(P2011−212856)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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