説明

センサー材料用導電性組成物

【課題】電気抵抗の電圧依存性および環境依存性の双方の特性に優れ、しかも電気抵抗のばらつきが小さく、低電気抵抗化可能であるセンサー材料用導電性組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)を必須成分とし、下記(A)の導電性ポリマーが下記(B)のバインダーポリマー中に1μm以下の粒径で分散しているか、もしくは(B)のバインダーポリマー中に溶解しているセンサー材料用導電性組成物である。。
(A)導電性ポリマーの原料モノマーを界面活性剤の存在下に酸化剤で化学酸化重合して得られる界面活性剤構造を有する溶剤溶解性の導電性ポリマー。
(B)溶剤に可溶なバインダーポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサー材料用導電性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、導電性を制御するためには、バインダーポリマーに、イオン導電剤や電子導電剤が配合されている。イオン導電剤は、バインダーポリマーに溶解するため、導電性のばらつきが小さく、また電圧を変化させた時の電気抵抗の変動が小さく、電気抵抗の電圧依存性に優れるという利点がある。しかしながら、上記イオン導電剤は、導電性発現のメカニズムがイオンの電導によるものであるため、電気抵抗が1×108 Ω・cm以上であれば、バインダーポリマー中でのイオンの電導が良好で、導電性の制御が可能であるが、電気抵抗が1×108 Ω・cm未満になると、イオンの電導が起こりにくく、導電性の制御が困難になる。また、イオン導電剤は水分等の影響を受けやすく、高温高湿と低温低湿の条件下では電気抵抗が2桁以上変動するため、電気抵抗の環境依存性に劣る。
【0003】
一方、カーボンブラック等の電子導電剤は、水分等の影響を受けにくく、高温高湿と低温低湿の条件下での電気抵抗の変動が小さく、環境依存性に優れるとともに、低電気抵抗化が可能である。しかしながら、電子導電剤はバインダーポリマー中での均一分散が困難であるため、電気抵抗のばらつきが大きく、導電性の制御が困難である。また、比較的均一に分散している場合でも、導電性発現のメカニズムがバインダーポリマー中のカーボン間を電子が高電圧により伝わるトンネル効果によるため、電圧を変化させた時の電気抵抗の変動が大きく、電気抵抗の電圧依存性に劣る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、イオン導電剤および電子導電剤には、それぞれ欠点があり、そのぞれの長所を備えた導電性組成物、すなわち、電気抵抗のばらつきが小さく、電気抵抗の電圧依存性に優れるというイオン導電剤の利点と、低電気抵抗化可能で電気抵抗の環境依存性に優れるという電子導電剤の利点との双方の特性を備えた導電性組成物の開発が待望されている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、電気抵抗の電圧依存性および環境依存性の双方の特性に優れ、しかも電気抵抗のばらつきが小さく、低電気抵抗化可能であるセンサー材料用導電性組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のセンサー材料用導電性組成物は、下記の(A)および(B)を必須成分とし、下記(A)の導電性ポリマーが下記(B)のバインダーポリマー中に1μm以下の粒径で分散しているか、もしくは(B)のバインダーポリマー中に溶解しているという構成をとる。
(A)導電性ポリマーの原料モノマーを界面活性剤の存在下に酸化剤で化学酸化重合して得られる界面活性剤構造を有する溶剤溶解性の導電性ポリマー。
(B)溶剤に可溶なバインダーポリマー。
【0007】
すなわち、本発明者らは、電気抵抗の電圧依存性および環境依存性の双方の特性に優れた導電性組成物を得るべく鋭意研究を重ねた。まず、ポリアニリン等の導電性ポリマーの導電性に着目し、これを界面活性剤により処理してなる特殊な導電性ポリマーを用いると、電子導電剤とイオン導電剤の双方の特性を備えるようになることを突き止めた。そして、この特殊な導電性ポリマーとバインダーポリマーとを併用すると、特殊な導電性ポリマーがバインダーポリマー中に分散または溶解して特殊な導電性ポリマーとバインダーポリマーとの複合体からなるポリマーアロイを形成することにより、電気抵抗の電圧依存性に優れるというイオン導電剤の利点と、電気抵抗の環境依存性に優れるという電子導電剤の利点との双方の特性を備え、しかも電気抵抗のばらつきが小さく、低電気抵抗化が可能であることを見いだし、本発明に到達した。
【0008】
また、上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマーおよびバインダーポリマーに加えて、イオン導電剤および電子導電剤の少なくとも一方を用いると、電気抵抗の電圧依存性や環境依存性がさらに良好になる。
【0009】
さらにまた、上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマーおよびバインダーポリマーに加えて、架橋剤を用いると、導電性組成物の強度が向上し、部材の耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のセンサー材料用導電性組成物は、界面活性剤構造を有する導電性ポリマーとバインダーポリマーとを含有するものである。その結果、特殊な導電性ポリマーがバインダーポリマー中に分散または溶解して特殊な導電性ポリマーとバインダーポリマーとの複合体からなるポリマーアロイを形成し、電気抵抗の電圧依存性に優れるというイオン導電剤の利点と、電気抵抗の環境依存性に優れるという電子導電剤の利点との双方の特性を備え、しかも電気抵抗のばらつきが小さく、低電気抵抗化が可能である。この様な電気特性の差を利用したセンサー材料は効果的である。
【0011】
また、上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマーおよびバインダーポリマーに加えて、イオン導電剤および電子導電剤の少なくとも一方を用いると、電気抵抗の制御性、電圧依存性や環境依存性がさらに良好になる。
【0012】
さらにまた、上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマーおよびバインダーポリマーに加えて、架橋剤を用いると、組成物の強度が向上し、部材としての耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の導電性組成物は、界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)とバインダーポリマー(B成分)とを用いて得ることができる。
【0015】
上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)は、例えば、導電性ポリマーの原料モノマーと界面活性剤とを酸化剤で化学酸化重合する等の方法によって製造することができる。
【0016】
上記導電性ポリマーの原料モノマーとしては、導電性を有するものであれば特に限定はなく、例えば、アニリン(アニリン誘導体の他、アニリン塩酸塩等のアニリン塩も含む)、ピロール、チオフェン、アセチレン、パラフェンレン、フェンレンビニレン、フラン、セレノフェン、イソチアナフテン、パラフェニレンスルフィド、パラフェニレンオキシド、ビニレンスルフィド等が挙げられる。
【0017】
上記界面活性剤としては、特に限定はなく、例えば、長鎖アルキル硫酸塩等のアニオン性界面活性剤や、長鎖アルキルアンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤の他、中性界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0018】
上記アニオン性界面活性剤の長鎖アルキル硫酸塩としては、例えば、ドデシルスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等があげられる。
【0019】
上記カチオン性界面活性剤の長鎖アルキルアンモニウム塩としては、例えば、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド等があげられる。
【0020】
上記酸化剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水、塩化第二鉄等があげられる。
【0021】
上記導電性ポリマーの原料モノマーと界面活性剤との混合比は、重量比で、原料モノマー/界面活性剤=96/4〜30/70の範囲が好ましく、特に好ましくは原料モノマー/界面活性剤=80/20〜40/60である。すなわち、界面活性剤の重量比が4未満であると、バインダーポリマーとの相溶性や分散性が低下し、逆に界面活性剤の重量比が70を超えると、界面活性剤のイオン導電性への効果が強くなりすぎ、導電性ポリマーの電子導電性を減らすこととなるからである。
【0022】
上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)の数平均分子量は、500〜100000の範囲が好ましく、特に好ましくは1000〜20000である。
【0023】
上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)とともに用いられるバインダーポリマー(B成分)としては、特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系ポリマー、ゴム系ポリマー等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。これらのなかでも、A成分との相溶性に優れる点で、アクリル系樹脂、エポキシ系ポリマーが好ましい。
【0024】
上記アクリル系樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリヒドロキシメタクリレート、アクリルシリコーン系樹脂、アクリルフッ素系樹脂等があげられる。
【0025】
上記ウレタン系樹脂としては、例えば、エーテル系、エステル系、脂肪族系等のウレタンやそれにシリコーン系ポリオール、フッ素系ポリオールを共重合させたもの等があげられる。
【0026】
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体等があげられる。
【0027】
上記ポリアミド系樹脂としては、例えば、アルコール可溶性メトキシメチル化ナイロン等があげられる。
【0028】
上記エポキシ系ポリマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、エポキシノボラック樹脂、臭素化型、ポリグリコール型、ポリアミド併用型、シリコン変性、アミノ樹脂併用型、アルキッド樹脂併用型等があげられる。
【0029】
上記ゴム系ポリマーとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素添加NBR(H−NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、ウレタンゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、エチレンプロピレンジエンポリマー(EPDM)、アクリルゴム(ACM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、多硫化ゴム、フッ素ゴムやスチレン−ブタジエンブロック共重合体(SBS)、SBSやスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)を水素添加したSEBS等の公知の熱可塑性ポリマー等があげられる。
【0030】
上記バインダーポリマー(B成分)の数平均分子量は、5000〜2000000の範囲が好ましく、特に好ましくは20000〜800000である。
【0031】
上記界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)の原料(導電性ポリマーの原料モノマーと界面活性剤との合計量)と、バインダーポリマー(B成分)との混合比は、重量比で、A成分の原料/B成分=1/99〜35/65の範囲が好ましく、特に好ましくはA成分の原料/B成分=4/96〜35/65である。すなわち、A成分の原料の重量比が1未満であると、導電性への効果が少なく、逆にA成分の原料の重量比が35を超えると、導電性ポリマーが固くて脆くなりやすく、組成物としての物性が低下するからである。
【0032】
なお、本発明の導電性組成物には、上記A成分およびB成分に加えて、イオン導電剤、電子導電剤、架橋剤等を配合しても差し支えない。
【0033】
上記イオン導電剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩、ホウ酸塩、界面活性剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
また、上記イオン導電剤の配合割合は、物性や電気特性の点から、A成分の原料(原料モノマーと界面活性剤との合計量)とB成分との合計100重量部(以下「部」と略す)に対して、0.01〜5部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.5〜2部である。
【0035】
上記電子導電剤としては、例えば、カーボンブラック、c−ZnO(導電性酸化亜鉛)、c−TiO2 (導電性酸化チタン)、c−SnO2 (導電性酸化錫)、グラファイト等があげられる。
【0036】
また、上記電子導電剤の配合割合は、物性や電気特性の点から、A成分の原料(原料モノマーと界面活性剤との合計量)とB成分との合計100部に対して、5〜30部の範囲が好ましく、特に好ましくは8〜20部である。
【0037】
上記架橋剤としては、例えば、硫黄、イソシアネート、ブロックイソシアネート、メラミン等の尿素樹脂、エポキシ硬化剤、ポリアミン硬化剤、パーオキサイド等があげられる。
【0038】
また、上記架橋剤の配合割合は、物性、粘着、液保管性の点から、A成分の原料(原料モノマーと界面活性剤との合計量)とB成分との合計100部に対して、1〜30部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜10部である。
【0039】
なお、上記導電性組成物には、前記各成分に加えて、架橋促進剤、触媒、老化防止剤、ドーパント等を必要に応じて配合しても差し支えない。
【0040】
上記架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系架橋促進剤、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤、アミン類、有機錫系触媒等があげられる。
【0041】
そして、本発明の導電性組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。すなわち、まず、前述の方法に従い、界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)を作製する。つぎに、この界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)をバインダーポリマー(B成分)に配合するとともに、必要に応じて、イオン導電剤、電子導電剤、架橋剤等を配合する。そして、これらをロール、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練することにより、目的とする導電性組成物を得ることができる。また、ロール等で混練した後に、水や溶剤等に溶解または分散させて導電性組成物(コーティング液)としても差し支えない。
【0042】
さらには、前述の方法に従い、界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)を作製するとともに、この界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)を高剪断分散機を用いてバインダーポリマー(B成分)中に分散させてもよい。このように高剪断分散機を用いると、界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)の粒径がより小さくなり、バインダーポリマー(B成分)中に均一に微分散するようになるため好ましい。界面活性剤構造を有する導電性ポリマー(A成分)の粒径(メジアン径)は、分散性の点から、1μm以下が好ましい。
【0043】
上記高剪断分散機とは、ガラス、ジルコニア等のセラミックビーズを利用した高速ビーズミル、サンドミル、ボールミル、3本ロール、加圧ニーダー、すりつぶし力を利用したコロイドミル等である。
【0044】
上記溶剤としては、例えば、m−クレゾール、メタノール、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン等の有機溶剤等があげられる。
【0045】
このようにして得られた本発明の導電性組成物は、センサーに用いられる。
【0046】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例1】
【0047】
まず、アニリン10部と、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(過硫酸アンモニウム)3部の存在下に酸化重合させて、界面活性剤構造を有するポリアニリンを得た。つぎに、この界面活性剤構造を有するポリアニリンを乾燥させ、それにバインダーポリマーとしてポリメチルメタクリレート(住友化学社製、PMMA)〔数平均分子量20000〕82部を配合し、ロールを用いて混練して導電性組成物を調製した。そして、この導電性組成物をガラス板上に押出成形して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【実施例2】
【0048】
まず、アニリン10部と、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(過硫酸アンモニウム)3部の存在下に酸化重合させた後、メタノールで未反応物を取り除き、濾過をして水分を除去し、界面活性剤構造を有するポリアニリンを得た。つぎに、バインダーポリマーであるポリメチルメタクリレート(住友化学社製、PMMA)〔数平均分子量20000〕82部を溶剤(m−クレゾール)500部に溶解した後、上記界面活性剤構造を有するポリアニリン18部を加え、3本ロールを用いて混練し、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【実施例3】
【0049】
アニリンの配合量を11部に、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)の配合量を0.55部に、ポリメチルメタクリレートの配合量を88.45部に、ポリアニリンの配合量を11.55部にそれぞれ変更した。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例4】
【0050】
界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)の配合量を23.3部に、ポリメチルメタクリレートの配合量を66.7部に、ポリアニリンの配合量を33.3部にそれぞれ変更するとともに、m−クレゾールに代えてトルエンを用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例5】
【0051】
アニリンの配合量を2部に、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)の配合量を2部に、ポリメチルメタクリレートの配合量を96部に、ポリアニリンの配合量を4部にそれぞれ変更するとともに、m−クレゾールに代えてトルエンを用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例6】
【0052】
アニリンの配合量を17.5部に、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)の配合量を17.5部に、ポリメチルメタクリレートの配合量を65部に、ポリアニリンの配合量を35部にそれぞれ変更するとともに、m−クレゾールに代えてトルエンを用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例7】
【0053】
ポリメチルメタクリレートに代えて可溶性ナイロン(帝国化学社製、EF30T)を用いるとともに、m−クレゾール500部に代えて、メタノール400部と水100部を用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例8】
【0054】
ポリメチルメタクリレートに代えてポリウレタン(日本ミラクトラン社製、TPU)を用いるとともに、m−クレゾール500部に代えて、メチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部を用いた。それを高剪断分散機(ダイノーミル3200rpm、ビーズ粒径0.8mm)で分散させた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例9】
【0055】
高剪断分散機を使用しない以外は、実施例8と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例10】
【0056】
ポリメチルメタクリレートに代えてアクリルフッ素系樹脂(大日本インキ化学工業社製、ディフェンサTR230K)を用いるとともに、m−クレゾール500部に代えて、メチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部を用いた。それ以外は、実施例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例11】
【0057】
まず、アニリン10部と、界面活性剤(ペンタデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(過硫酸アンモニウム)3部の存在下に酸化重合させた後、メタノールで未反応物を取り除き、濾過をして水分を除去し、界面活性剤構造を有するポリアニリンを得た。つぎに、バインダーポリマーとしてH−NBR(日本ゼオン社製、ゼットポール0020)82部、架橋剤として硫黄1部、スルフェンアミド系架橋促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーCZ)0.5部、ジチオカルバミン酸塩系架橋促進剤(大内新興化学工業社製、ノクセラーBZ)0.5部をロールを用いて混練し、これらをメチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部に溶解した後、上記界面活性剤構造を有するポリアニリン18部を加え、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布した後、150℃にて30分間加熱架橋して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【実施例12】
【0058】
導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS100)5部をさらに配合する以外は、実施例11と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例13】
【0059】
導電剤として第四級アンモニウム塩(テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート:TBAHS)2部をさらに配合する以外は、実施例11と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【実施例14】
【0060】
まず、ピロール10部と、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(塩化第二鉄)1部の存在下に酸化重合させた後、メタノールで未反応物を取り除き、濾過をして水分を除去し、界面活性剤構造を有するポリピロールを得た。つぎに、バインダーポリマーであるポリウレタン(日本ミラクトラン社製、TPU)82部をメチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部に溶解した後、上記界面活性剤構造を有するポリピロール18部を加え、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【実施例15】
【0061】
まず、チオフェン10部と、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(塩化第二鉄)1部の存在下に酸化重合させた後、メタノールで未反応物を取り除き、濾過をして水分を除去し、界面活性剤構造を有するポリチオフェンを得た。つぎに、バインダーポリマーであるポリウレタン(日本ミラクトラン社製、TPU)82部をメチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部に溶解した後、上記界面活性剤構造を有するポリチオフェン18部を加え、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【実施例16】
【0062】
まず、アニリン10部と、界面活性剤(ドデシルベンゼンスルホン酸)8部とを、酸化剤(塩化第二鉄)1部の存在下に酸化重合させた後、メタノールで未反応物を取り除き、濾過をして水分を除去し、界面活性剤構造を有するポリアニリンを得た。つぎに、バインダーポリマーであるポリウレタン(日本ミラクトラン社製、TPU)82部をメチルエチルケトン(MEK)200部とトルエン300部に溶解した後、上記界面活性剤構造を有するポリアニリン18部を加え、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【0063】
〔比較例1〕
エピクロルヒドリンゴム(大阪曹達社製、エピクロマーCG)100部と、導電剤として第四級アンモニウム塩(TBAHS)2部と、受酸剤(酸化亜鉛)10部と、チオウレア系架橋促進剤(三新化学社製、サンセラー22C)3部を配合し、ロールを用いて混練した後、これらをメチルエチルケトン(MEK)300部とトルエン150部に溶解して、導電性組成物(コーティング液)を調製した。そして、この導電性組成物(コーティング液)をガラス板上に塗布した後、150℃にて30分間加熱架橋して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【0064】
〔比較例2〕
ポリウレタン(日本ミラクトラン社製、TPU)100部と、導電剤としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS100)7部と、ブロックイソシアネート(大日本インキ化学工業社製、バーノックDB980K)2部を配合し、ロールを用いて混練した後、150℃にて30分間加熱架橋して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【0065】
〔比較例3〕
アセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラックHS100)の配合量を20部に変更した。それ以外は、比較例2と同様にして、導電性塗膜を作製した。
【0066】
〔比較例4〕
導電性シリコーンポリマー(信越化学工業社製、KE1350AB)をガラス板上に塗布して、厚み100μmの導電性塗膜を作製した。
【0067】
このようにして得られた実施例品および比較例品の導電性塗膜を用いて、電気抵抗を測定した。また、電気抵抗の環境依存性および電圧依存性も評価した。これらの結果を、後記の表1〜表4に併せて示した。
【0068】
〔電気抵抗〕
25℃×50%RHの環境下において、10Vの電圧を印加した時の導電性塗膜の電気抵抗を、SRIS 2304に準じて測定した。
【0069】
〔環境依存性〕
上記電気抵抗の評価に準じて、低温低湿(15℃×10%RH)の時の電気抵抗と、高温高湿(35℃×85%RH)の時の電気抵抗をそれぞれ測定し、電気抵抗の差を変動桁数で示した。なお、この時の印加電圧は10Vである。
【0070】
〔電圧依存性〕
上記電気抵抗の評価に準じて、25℃×50%RHの環境下、0.1Vの電圧を印加した時の電気抵抗と、100Vの電圧を印加した時の電気抵抗をそれぞれ測定し、電気抵抗の差を変動桁数で示した。
【0071】
〔粒径〕
バインダーポリマー中に分散している導電性ポリマー(比較例1〜3は導電剤)の粒径(メジアン径)を、堀場製作所製の粒度分布計LA920を用いて測定した。なお、カーボンを併用しているため、導電性ポリマーの粒径を正確に測定できないものを「−」と表示した。
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
上記結果から、すべての実施例品は、界面活性剤構造を有する導電性ポリマーとバインダーポリマーとを組み合わせて用いているため、環境依存性および電圧依存性の双方の特性に優れ、しかも電気抵抗が小さいことがわかる。
【0077】
これに対して、比較例1品はイオン導電剤を用いているため、電圧依存性に優れているが、環境依存性に劣ることがわかる。比較例2品,比較例3品は電子導電剤を用いているため、環境依存性に優れているが、バインダーポリマー中に分散している電子導電剤の粒径が非常に大きく、電子導電剤がバインダーポリマー中で均一に分散していないため、電圧依存性に著しく劣ることがわかる。比較例4品は、導電性カーボンを用いたシリコーンポリマーを用いているため、環境依存性に優れているが、電圧依存性に劣ることがわかる。このように、比較例品はいずれも、環境依存性および電圧依存性のいずれか一方の特性に優れるのみで、環境依存性および電圧依存性の双方の特性を満足するものではないことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)および(B)を必須成分とし、下記(A)の導電性ポリマーが下記(B)のバインダーポリマー中に1μm以下の粒径で分散しているか、もしくは(B)のバインダーポリマー中に溶解していることを特徴とするセンサー材料用導電性組成物。
(A)導電性ポリマーの原料モノマーを界面活性剤の存在下に酸化剤で化学酸化重合して得られる界面活性剤構造を有する溶剤溶解性の導電性ポリマー。
(B)溶剤に可溶なバインダーポリマー。
【請求項2】
(A)の原料である導電性ポリマーの原料モノマーと界面活性剤との混合比が、重量比で、原料モノマー/界面活性剤=96/4〜30/70である請求項1記載のセンサー材料用導電性組成物。
【請求項3】
(A)の原料(原料モノマーと界面活性剤との合計量)と、(B)との混合比が、重量比で、(A)の原料/(B)=1/99〜35/65である請求項1または2記載のセンサー材料用導電性組成物。
【請求項4】
(B)のバインダーポリマーが、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系ポリマーおよびゴム系ポリマーからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載のセンサー材料用導電性組成物。
【請求項5】
(A)および(B)に加えて、イオン導電剤および電子導電剤の少なくとも一方を含有してなる請求項1〜4のいずれか一項に記載のセンサー材料用導電性組成物。
【請求項6】
(A)および(B)に加えて、架橋剤を含有してなる請求項1〜5のいずれか一項に記載のセンサー材料用導電性組成物。
【請求項7】
原料モノマーと界面活性剤とを用いて(A)の界面活性剤構造を有する導電性ポリマーを合成するとともに、この導電性ポリマーを高剪断分散機を用いて(B)のバインダーポリマー中に分散させる請求項5または6記載のセンサー材料用導電性組成物。

【公開番号】特開2006−124717(P2006−124717A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350301(P2005−350301)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【分割の表示】特願2001−252690(P2001−252690)の分割
【原出願日】平成13年8月23日(2001.8.23)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】