説明

センサ及び該センサを用いた人検知、省エネ制御システム

【目的】 赤外線を検知する焦電素子等のセンサの前方に配置し、センサに入射する赤外線をチョッピングするシャッタを電子化して、小型で騒音のないセンサを得ること。
【構成】 省エネ制御システムは、液晶パターンフィルタ3、焦電素子4、検出信号処理回路5、負荷機器6、コントローラ7、液晶ドライバ8からなる。人体1から放射される赤外線2は、液晶パターンフィルタ3に生成されるパターンによりチョッピングされ、焦電素子4へ入射する。焦電素子4から出力される検出信号はコントローラ7に入力され、コントローラ7によって人の存在とその状態が判断され、その判断結果により負荷機器6の電源スイッチが制御される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、テレビジョン等の視聴者等の有無を検知し、視聴者等のない時にはテレビジョン等の電源をオフするような省エネ制御システム、及び該省エネ制御システムにおいて使用するのに適した視聴者等の有無や状態を検知するために使用されるセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】赤外線または熱線センサとして、焦電素子が広く用いられている。焦電素子は、熱を一旦素子の温度上昇に変換し、温度の変化を電荷の変量とする熱電変換素子であって、電荷の変化が生じなければ信号として取り出せないため、焦電素子への熱入力変化を効果的に発生させる必要がある。
【0003】従来、被検知体を検知するための焦電素子を利用したセンサとしては、多面体凹面鏡を用い、その焦点近傍に焦電素子を配していたため、センサを収容する筐体が大きくなり、テレビジョン受信機等の機器に組み込む場合、スペースやデザイン、コスト面で満足すべきものではなかった。また、静止状態の被検知体を検知するには、等価的に被検知体の動きを作るため、焦電素子に入射する赤外線をシャッタでチョッピングするのにモータを用いるが、その場合においても、スペースやデザイン、コスト面で満足すべきものでなく、可動部から騒音が発生することも問題であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点を解決することを課題とし、赤外線あるいは熱線を検出するセンサを小型で省スペースに形成し、低コストでテレビジョン受信機等の機器に組み込み易く、機器のデザイン裕度を拡大することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、従来技術が有していた問題点に鑑み、焦電素子の検知面前方に液晶素子を配置し、該液晶素子に所定のパターンを生成し、該パターンの種類を被検知体の検知状況に応じて選択し、この選択したパターンを移動させるようにし、これにより、前記従来のセンサの機械的チョッピング処理を電子化し、装置の小型化と低コスト化を可能としたものである。
【0006】請求項1に係る発明は、赤外線検知素子の検知面前方に複数種のパターンを生成する液晶素子を配置したことを特徴とするセンサに関する。
【0007】請求項2に係る発明は、請求項1に記載のセンサにおいて、前記液晶素子に複数種のパターンを生成させ、それらを適宜切り替え、検知感度を制御することを特徴とするセンサに関する。
【0008】請求項3に係る発明は、請求項1に記載のセンサにおいて、前記液晶素子が生成するパターンを所定方向に移動する際、前記パターンの開口率を一定に維持することを特徴とするセンサに関する。
【0009】請求項4に係る発明は、請求項2または3に記載のセンサにおいて、パターン移動を連続的に行うことを特徴とするセンサに関する。
【0010】請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサを用いた人検知システムにおいて、液晶素子が生成したパターンに応動したセンサ出力を所定のアルゴリズムによって処理することによって、人の所在状態を検知する人検知システムに関する。
【0011】請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサまたは人検知システムを用いたテレビジョン等の省エネ制御システムにおいて、前記センサ、または人検知システムは、テレビジョン等の視聴者の有無を検知し、検知結果を省エネ機能の実現に利用することを特徴とする省エネ制御システムに関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のセンサは、焦電素子等の熱電変換素子の入力面前方に液晶素子を置き、該液晶素子に所定の窓パターンを形成し、熱電変換素子の表面に被検知体の像を多数結ばせ、これにより被検知体の移動が熱電変換素子の表面における多数像の変移となり、検出素子である熱電変換素子への入力変動量を大きくし、検出感度を向上させることができる。
【0013】図1は、本発明のセンサを人体検知手段として用いた、テレビジョン等の負荷機器の省エネシステムを説明するための模式図である。被検知体としての人体1は、その体温により赤外線または熱線2を放射する。テレビジョン等の負荷機器の省エネシステムは、液晶パターンフィルタ3、赤外線検知素子としての焦電素子4、検出信号処理回路5、負荷機器としてのテレビジョン受信機6、コントローラ7、液晶ドライバ8等から構成されている。
【0014】液晶パターンフィルタ3は、焦電素子4の検知面前方に配置され、その液晶パネルには液晶ドライバ8の出力により、図2(A)〜図2(D)に示すような縦縞状(A)、横縞状(B)、格子状(C)、斜縞状(D)等複数のパターンを生成させることができ、生成されたパターン、例えば、図2(A)に示したパターンを図3(A)〜図3(D)に示すように適宜の方向に適宜の速度で移動させる。検出信号処理回路5は、焦電素子4に生じる電荷の変量を電圧に変換し、増幅、ノイズ除去、コントローラ7に適した信号形態への変換等の処理をする。コントローラ7は、検出信号処理回路5によって処理した検知信号の変化パターンを所定のアルゴリズムで処理し、被検知体である人体の有無、状態を判断し、液晶ドライバ8へ透過パターン切替信号を出力し、また、透過パターンを移動させるとともに、検出信号処理回路5及び負荷機器6を制御する。
【0015】次に、図1に示したシステムの動作概要をテレビジョン等の省エネシステムに適用した場合を例として説明する。テレビジョン視聴者である人体1より放射される赤外線または熱線2が、液晶パターンフィルタ3を通過する。図2は、赤外線検知素子である焦電素子4の検知面前方に配置される液晶パターンフィルタ3の液晶パネルに生成されるパターンの例を示したもので、該パターンは液晶マスク部パターン9と液晶透過部パターン10とからなり、図2の(A)は縦縞状、(B)は横縞状、(C)は格子状、(D)は斜縞状のパターンの例である。焦電素子4の検知面前方に液晶透過パターンフィルタ3を配置することによって、前記人体1の像が図4(A),図4(B)のように焦電素子4の検知面上に前記パターンの透過部パターン10に基づく透孔(スリット)の数だけ結像する。
【0016】人体1,液晶パターンフィルタ3,焦電素子4が図4(A)のような位置関係にあると、人体1が静止していれば、焦電素子4の面上には静止した象が得られ、また、人体1が図4(A)の位置から図4(B)の位置に移動すれば、移動する像が得られる。さらに、人体は静止していても、液晶透過パターンフィルタ3のパターンが液晶ドライバ8によって駆動され所定方向に図3(A)〜図3(D)のように移動すれば、その複数の像も移動することになる。したがって、焦電素子4の前面に配置する液晶透過パターンフィルタ3のパターンを所定の方向にたえず移動するようにしておくことにより、人体1が静止した状態にあっても焦電素子4に誘起する電荷は変化するから、人体1の検出が可能である。そして、前記焦電素子4は特定の赤外線波長域に感応し、前記赤外線2の入射量に応じた電荷を誘起する。
【0017】なお、図3は、開口率を一定に保ちながらフィルタパターンを連続的に移動させる例を示すもので、該パターンは、特に、静止状態の検知に用いるのに適している。液晶パターンフィルタ3は、以上のような作用を有するもので、液晶ドライバ8によって図2(A)〜図2(D)に例示したようなパターンが生成されるとともに、該パターンが適宜の方向へ、適宜の速度で移動するように駆動される。被検知体である人体1の動き量が大きい場合はスリット間隔を広く、動きの少ない場合はスリット間隔を狭くすることで検知感度の切り替えが可能である。また、この検知感度は動きの方向によって変わるが、絶対検出感度は検知素子面上に入射される赤外線量の相対変化量に比例するので、前記液晶パターンフィルタ3に生成するパターンの開口率を大きくすることが望ましい。しかし、パターンの開口率が変動すると、入射する赤外線の総入力量変動が生じるので、前記液晶パターンフィルタ3のパターンを切り替えても開口率を一定に維持する必要がある。
【0018】コントローラ7は、焦電素子4の検知信号の変化パターンを検知し、後に説明する所定のアルゴリズムで処理し、その判定結果に基づいて液晶ドライバ8へ透過パターンを切り替えるよう指示し、液晶フィルタのパターンを適宜のパターンに切り替え、また適宜の速度でパターンを移動するように液晶透過パターンフィルタ3を駆動する。上記各処理を繰り返し、前記アルゴリズムによる判定結果に応じてコントローラ7よりテレビジョン等の負荷機器6に状況検知信号を出力する。そして、テレビジョン受信機を視聴する位置に人が存在すると判断したときは、テレビジョン受信機の電源スイッチのオン状態を維持し、また、テレビジョン受信機を視聴する位置に人が存在しないか、存在しても動きが無く寝ていると判断したときは、電源スイッチをオフするように制御する。
【0019】次に、コントローラ7により実現される前記機能を図5のフローチャートによって説明する。検知装置のスイッチをオンしてスタートすると、最初に、液晶パターンフィルタ3に形成される複数種のパターンのうちの標準のパターンにする(ステップS1)。液晶パターンフィルタ3のパターンが前記標準パターンであるとき、焦電素子4より検知信号出力の有無を判断し(ステップS2)、検知信号出力が有れば検知信号の出現をパターン化し所定時間第1回目のサンプリングをし、次いで、前記所定時間以降の検知信号の出現を第1回目のサンプリングと同様に所定時間第2回目のサンプリングをする(ステップS3)。第1回目、第2回目のサンプリングが完了したことを判断し(ステップS4)、未完了であればステップS2〜S4を繰り返す。
【0020】ステップS4において、サンプリング完了であれば前記第1回目、第2回目のサンプリング結果を比較し、両サンプリング結果のパターンの差が所定範囲内であるか否かを判断する(ステップS5)。ここで、その差が所定範囲内と判断すれば、次にその差が閾値以上であるか否かが判断され(ステップS6)、閾値以上であれば、人体1は活動中であると判断し(ステップS7)、閾値以上でなければ、人体1は存在するが静止している(寝ている)と判断し(ステップS8)、処理を終了する。
【0021】ステップS5において、第1回目、第2回目サンプリングパターンの差が所定範囲外であれば、ステップS2へ戻り、再度パターンのサンプリングを行うことにより(ステップS2〜4)、人体の挙動変化が大のとき、人体の状態を判断しない。また、ステップS2において、標準フィルタによる標準パターンを生成している状態の時、検知信号出力がなければ前記標準フィルタを第2のフィルタに切り替える(ステップS9)。ステップS10,S2,S9を繰り返し、複数種全てのフィルタが切り替えられたか否かを判断し(ステップS10)、複数種全てのフィルタが替えられてない(残っているフィルタがある)ならば、再度検知信号の有無を判断する(ステップS2)。複数種全てのフィルタを切り替え、残っているフィルタが無くなれば(ステップS10)、不在と判断し(ステップS11)、処理を終了する。
【0022】なお、前記実施例は、負荷機器をテレビジョン、被検知体を人体、赤外線検知素子を焦電素子として具体的な省エネシステムについて説明したが、これらの例に限ったものでなく多くの技術分野に応用することができる。
【0023】
【発明の効果】検出素子の前方に複数の異なるパターンを生成する液晶パターンフィルタを配設することにより、小型で省スペース、しかも無騒音化されたセンサが得られる。 また、該センサを用いた人検知システム、該人検知システムを用いたテレビジョン等の省エネ制御システムにおいても、センサそのものが小型で省スペース、しかも可動部がなく無騒音化されているので、センサを組み込む筐体が大きくなることがなく、組み込み機器のデザイン裕度が拡大し、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のセンサを人体検知手段として用いたテレビジョン等の省エネシステムを説明するための模式図である。
【図2】液晶パターンフィルタに生成されるパターンの例を示す図である。
【図3】液晶パターンフィルタに生成されるパターンを所定方向に移動させる例を示す図である。
【図4】焦電素子の検知面前方に液晶パターンフィルタを配置することにより、被検知体の像が複数結像することを示す図である。
【図5】コントローラにおいて実行される処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1…被検知物(人体)、2…赤外線、3…液晶パターンフィルタ、4…赤外線検知素子(焦電素子)、5…検出信号処理回路、6…負荷機器、7…コントローラ、8…液晶ドライバ、9…液晶マスク部パターン、10…液晶透過部パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 赤外線検知素子の検知面前方に複数種のパターンを生成する液晶素子を配置したことを特徴とするセンサ。
【請求項2】 請求項1に記載のセンサにおいて、前記液晶素子に複数種のパターンを生成させ、それらを適宜切り替え、検知感度を制御することを特徴とするセンサ。
【請求項3】 請求項1に記載のセンサにおいて、前記液晶素子が生成するパターンを所定方向に移動する際、前記パターンの開口率を一定に維持することを特徴とするセンサ。
【請求項4】 請求項2または3に記載のセンサにおいて、パターン移動を連続的に行うことを特徴とするセンサ。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサを用いた人検知システムにおいて、液晶素子が生成するパターンに応動するセンサ出力を所定のアルゴリズムによって処理することによって、人の所在状態を検知する人検知システム。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサまたは人検知システムを用いたテレビジョン等の省エネ制御システムにおいて、前記センサ、または人検知システムは、テレビジョン等の視聴者の有無を検知し、検知結果を省エネ機能の実現に利用したことを特徴とする省エネ制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2000−205948(P2000−205948A)
【公開日】平成12年7月28日(2000.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−3202
【出願日】平成11年1月8日(1999.1.8)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】