説明

センサ取付け孔の気泡除去装置

【課題】人為的操作を要することなく、センサ取付け孔に残留する気泡を除去することができ、センサによる潤滑油の検出が正確に行なえるセンサ取付け孔の気泡除去装置を提供する。
【解決手段】センサ取付け用ブロック等の潤滑油を流す流路の脇にセンサ取付け孔16を設ける。センサ取付け孔16に、潤滑油の存在を検出するセンサ9の感知部9aを挿入する。循環流路3におけるセンサ取付け部より上流より分岐した分流路11を設けてその分流路をセンサ取付け孔16に接続する。分流路11からセンサ取付け孔16に導く導入孔17の出口を、センサ取付け孔16の中心から偏位させた方向に向ける。これによりセンサ取付け孔16における潤滑油の流れにサイクロン流18を発生させ、このサイクロン流18により気泡を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベルやクレーンあるいはこれらの応用機械となる建設機械において、トランスミッション等の機器に供給する潤滑油用センサの取付け孔に溜まる気泡を除去する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械においては、エンジンの動力をトランスミッションを介して油圧ポンプに伝達し、油圧ポンプから吐出される作動油により、走行用油圧モータ、旋回用油圧モータおよび作業用フロントの関節部作動用の油圧シリンダ等を作動させる。前記トランスミッションは複数の歯車により構成され、トランスミッションの上部に設けたマニホールドから歯車に潤滑油を流下させて潤滑し、トランスミッション内のオイルパンに溜まる潤滑油を、エンジンにより駆動される循環用油圧ポンプによりオイルクーラに送って冷却すると共に、前記マニホールドへと循環させる構成を有する(特許文献1参照)。
【0003】
このようなトランスミッションの潤滑油の循環回路において、潤滑油が正常に循環しているか否かを確認しながら建設機械を稼働させる必要がある。このため、本出願人は、特許文献1において、マニホールドに、潤滑油が正常に循環している場合には潤滑油で満たされ、潤滑油が循環していないときには空気が溜まる検出空間を設け、この検出空間に潤滑油の有無を検出するセンサを設けたものを提案している。
【0004】
図4(A)は特許文献1に記載のものと同様の目的を持って潤滑油の有無を検出するセンサの従来の取付け構造の一例を示す図である。図4(A)において、10はセンサ9を取付けるブロックであり、このブロック10内には潤滑油の流路14を有する。センサ9は、その感知部9aに例えば2つの電極を有してその電極間の例えば容量を検出することにより、潤滑油の有無で切換わるスイッチング素子を内蔵するものである。ブロック10内には、流路14の脇に、流路14に連通させて、前記感知部9aを挿着する検出空間としての円形のセンサ取付け孔16を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−315506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トランスミッションに供給する潤滑油は、一定の稼働時間を経過すると交換する必要がある。しかしながら、センサ取付け孔16は流路14の脇に設けられているため、古い潤滑油をトランスミッションから排出した後、新たな潤滑油を供給する際に、センサ取付け孔16に気泡が残り易い。気泡がセンサ取付け孔16に残留すると、トランスミッションに潤滑油が正常に供給されて循環されていても、センサ9により検出される検出信号は、潤滑油無しという誤ったものとなり、誤作動を生じる。
【0007】
このようなセンサ取付け孔16における気泡の残留を防止するため、図4(B)に示すように、センサ取付け孔16の長さを短くすることが考えられる。しかしながら、センサ取付け孔16を短くすると、センサ9の感知部9aを流路14に突出させたセンサ取付け構造を採用せざるを得なくなる。このように感知部9aを流路14に突出させると、潤滑油の流量が過大となった場合、感知部9aが破損するおそれがある。
【0008】
このため、センサ9の取付け構造としては、図4(B)のように、センサ取付け孔16の長さを短くすることは困難であり、図4(A)に示すように、感知部9aが収容できる長さのセンサ取付け孔16を有する構造を採用せざるを得ず、その結果、気泡残留を回避することができない。このような気泡残留を防止する従来の気泡除去方法として、センサ取付け孔16を外部に連通させる栓つきの通気孔を設け、その通気孔からセンサ取付け孔16内の気泡を抜く方法が一般的に採用される。しかしこの方法は人為的操作が必要となる。この人為的操作は、建設機械の場合、上部旋回体のトランスミッションの設置箇所のカバーを開けて行なう必要があり、時間と労力を要する作業となる。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑み、人為的操作を要することなく、センサ取付け孔に残留する気泡を除去することができ、もって循環流路が潤滑油で満たされているときにのみ検出空間が潤滑油で満たされ、センサによる検出動作が正確に行なえるセンサ取付け孔の気泡除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のセンサ取付け孔の気泡除去装置は、
建設機械に備える機器に潤滑油を循環供給する循環流路の脇に設けられるとともに、センサ感知部が挿入されるセンサ取付け孔の気泡除去装置において、
前記循環流路におけるセンサ取付け部より上流側に、主流路からその主流路より少ない流量を分流させる分流路を設け、
前記センサ取付け孔と前記分流路とを潤滑油導入孔を介して接続し、
前記潤滑油導入孔の出口の向きを、前記センサ取付け孔の中心から偏心させることにより、前記センサ取付け孔に導入される潤滑油の流れにサイクロン流を発生させる構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、分流路からセンサ取付け孔に潤滑油導入孔を介して導入される潤滑油により、センサ取付け孔内にサイクロン流を発生させるため、センサ取付け孔内に存在する気泡は、サイクロン流に巻き込まれて主流路に排出される。このため、循環流路3が潤滑油で満たされるときにはセンサ取付け孔16に残留する気泡は除去され、センサの感知部の周囲は潤滑油によって満たされる一方、循環流路内が潤滑油が存在しないときには、センサの感知部の周囲は空気にさらされることになるので、センサの誤検出動作が防止され、循環流路における潤滑油の有無のセンサによる検出動作が確実に行なわれる。また、潤滑油の交換ごとにセンサ取付け孔内の気泡を除去する人為的操作が不要となり、作業員の負担やメンテナンス時間が軽減される。
【0012】
また、分流路からセンサ取付け孔内に導入される潤滑油の流量は、主流路の流量より少量である上、センサ取付け孔内ではサイクロン流であって、センサ感知部に加わる力は小さく、その流れによってセンサ感知部を破損するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明によるセンサ取付け孔の気泡除去装置の一実施の形態を示す回路図である。
【図2】(A)は図1の気泡除去装置の一部断面側面図、(B)は(A)のE−E断面図である。
【図3】本発明によるセンサ取付け孔の気泡除去装置の他の実施の形態を示す回路図である。
【図4】(A)は従来のセンサ取付け孔の一例を示す側面断面図、(B)は従来のセンサ取付け孔の他の例を示す側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はセンサ取付け孔の気泡除去装置の一実施の形態を示す回路図である。図1において、1は建設機械のエンジンや電動機等の原動機(図示せず)の動力を油圧ポンプ(図示せず)に伝達するトランスミッション(減速機)であり、複数の歯車により構成されるものである。これらのエンジン、トランスミッションおよび油圧ポンプは、建設機械の上部旋回体に設置されるものである。2はこのトランスミッション1に潤滑油を分散させて流下させるマニホールドである。
【0015】
3はトランスミッション1に溜まる潤滑油を循環させる循環流路である。この循環流路3には、トランスミッション1の底部のオイルパン(図示せず)に溜まる潤滑油中の塵埃を除去するフィルタ4と、潤滑油を循環させる油圧ポンプ5と、潤滑油を冷却するオイルクーラ6と、このオイルクーラ6に並列に接続され、オイルクーラ6に過大な圧力が作用することを防止する逆止弁7と、トランスミッション1における潤滑油の液面レベル8より高い位置に設けられたセンサ9を取付けるブロック10と、ブロック10に循環流路3に流れる潤滑油の一部をブロック10の上流側から分流させてブロック10に供給する分流路11とを備える。
【0016】
図1において、トランスミッション1から油圧ポンプ5によって吸引された潤滑油は、フィルタ4により除塵され、オイルクーラ6により冷却され、マニホールド2からトランスミッション1の必要箇所に分散して流下される。センサ9は潤滑油が循環流路3において循環して流れているか否かを検出するために設けられたものである。ここで、センサ9はトランスミッション1の液面レベル8より高い位置にあるため、この潤滑油が循環流路3を循環していないかあるいは潤滑油が循環流路3に存在しないときは、センサ9により潤滑油が検出されないので、潤滑油が循環していない状態かあるいは潤滑油が無い状態であることを検出することができる。
【0017】
図2(A)は図1の気泡除去装置の一部断面側面図、(B)は(A)のE−E断面図である。図2において、14はブロック10内に設けられた流路、12,13はこの14に連通するようにブロック10に接続された入口管、出口管である。入口管12は分流路11を接続する継手15を介して循環流路3に接続される。出口管13はこの出口管13側の循環流路3に接続されるが、図示を省略している。入口管12は循環流路3を流れる潤滑油の主流路を構成するもので、分流路11を流す流量は主流路の例えば10分の1以下ないし数分の1程度でよい。
【0018】
16はセンサ9の感知部9aを挿着するセンサ取付け孔である。このセンサ取付け孔16は、ブロック10内の流路14の内面からブロック外部にわたって貫通して設けた円孔である。センサ9はブロック10におけるセンサ取付け孔16を塞ぐようにブロック10の外面に取付けられ、センサ9の感知部9aは、このセンサ取付け孔16の中心部に挿着されている。この感知部9aは、例えば2つの電極を有し、この2つの電極の間の例えば電気容量を検出し、潤滑油が存在する場合と無い場合の容量値の変化から潤滑油の有無を判定して例えば運転室に備えた警報器等で報知するものである。センサ9は、電気容量ではなく電気抵抗を感知するものであったり、電気容量と電気抵抗の両者を検出して潤滑油の有無を判定するものであってもよい。
【0019】
ブロック10内には、分流路11から導入される潤滑油をセンサ取付け孔16の底部に導入するように、この底部からブロック10の側面にわたって、潤滑油の導入孔17が設けられている。すなわち、この潤滑油導入孔17の出口は、センサ取付け孔16の中心から偏心した方向に向けて設けられている。この実施の形態においては、潤滑油導入孔17の出口をセンサ取付け孔16の底部としているが、この出口はセンサ取付け孔16の側面部あるいは上面部であってもよい。また、この実施の形態においては、潤滑油導入孔17の方向を、センサ取付け孔16の軸線方向に対して直角をなす方向としているが、傾斜していてもよい。
【0020】
この構成において、建設機械の稼働時間が所定の時間を経過した際に、トランスミッション1内の潤滑油を排出し、所定量の潤滑油をトランスミッション1内に供給する。そして原動機が作動することにより、原動機により駆動される潤滑油循環用の油圧ポンプ5も作動してトランスミッション1内の底部のオイルパンに溜まる潤滑油は油圧ポンプ5により循環流路3を介して循環する。これにより、潤滑油はフィルタ4で除塵され、オイルクーラ6で冷却されて温度の上昇が防止された状態でマニホールド2から流下してトランスミッション1を潤滑する。
【0021】
ここで、オイルクーラ6を出た潤滑油は、その多くがブロック10内の主流路14を通るが、その一部は分流路11を通して分流し、ブロック10の潤滑油導入孔17からセンサ取付け孔16の底部に、センサ取付け孔16の中心から偏心した方向に向けて導入される。このため、円孔状をなすセンサ取付け孔16内においては、潤滑油は線18で示すようにサイクロン流となる。
【0022】
このように、センサ取付け孔16内において、潤滑油がサイクロン流となって流れて主流路14へと合流するため、仮にセンサ取付け孔16内に気泡が残留していたとしても、気泡はこのサイクロン流によって主流路14へと持ち去られるので、センサ取付け孔16における気泡の残留が防止される。このため、循環流路3が潤滑油で満たされるときにはセンサ取付け孔16に残留する気泡は除去され、センサ9の感知部9aの周囲は潤滑油によって満たされる一方、循環流路3内が潤滑油が存在しないときには、センサ9の感知部9aの周囲は空気にさらされることになるので、センサ9の誤検出動作が防止され、循環流路3における潤滑油の有無のセンサ9による検出動作が確実に行なわれる。
【0023】
また、潤滑油の交換後、エンジン始動によりセンサ取付け孔16内の気泡が自動的に除去されるので、従来のように気泡を除去する人為的作業が不要となり、作業員の負担やメンテナンス時間が軽減される。
【0024】
また、分流路11からセンサ取付け孔16内に導入される潤滑油の流量は、入口管12からなる主流路の流量より少量である上、センサ取付け孔16内に導入される潤滑油はサイクロン流であるため、センサ9の感知部9aに潤滑油の流れによって加わる力は小さく、その流れによってセンサ9の感知部9aを破損するおそれがない。
【0025】
図3は本発明の他の実施の形態であり、この実施の形態においては、センサ9をマニホールド2の外部に設けるのではなく、マニホールド2にセンサ取付け孔16を設け、マニホールド2の外面にセンサ9を取付けてその感知部9aをセンサ取付け孔16に挿着したものである。この実施の形態においては、マニホールド2に導入孔17に設け、この導入孔17を円孔状のセンサ取付け孔16に対して偏心した位置に向けて設けることによりサイクロン流を生じさせる構成としている。この実施の形態においても、センサ取付け孔16における気泡の残留を防止することができる。
【0026】
以上本発明を実施の形態により説明したが、本発明は、潤滑油を循環させる他の機器においても適用可能である。また、本発明は、潤滑油の存否を検出するセンサに限らず、センサの構成等との関連から、潤滑油の主流路から退避したセンサ取付け孔に感知部を挿着する必要のある圧力、温度等のセンサにも本発明を適用することができる。また、具体的な構成については、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の変更、付加が可能である。
【符号の説明】
【0027】
1:トランスミッション、2:マニホールド、3:循環流路、4:フィルタ、5:油圧ポンプ、6:オイルクーラ、7:逆止弁、8:液面レベル、9:センサ、9a:感知部、10:ブロック、11:分流路、12:入口管、13:出口管、14:流路、15:継手、16:センサ取付け孔、17:潤滑油導入孔、18:サイクロン流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械に備える機器に潤滑油を循環供給する循環流路の脇に設けられるとともに、センサ感知部が挿入されるセンサ取付け孔の気泡除去装置において、
前記循環流路におけるセンサ取付け部より上流側に、主流路からその主流路より少ない流量を分流させる分流路を設け、
前記センサ取付け孔と前記分流路とを潤滑油導入孔を介して接続し、
前記潤滑油導入孔の出口の向きを、前記センサ取付け孔の中心から偏心させることにより、前記センサ取付け孔に導入される潤滑油の流れにサイクロン流を発生させる構成としたことを特徴とするセンサ取付け孔の気泡除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−68293(P2013−68293A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208230(P2011−208230)
【出願日】平成23年9月23日(2011.9.23)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】