説明

センサ装置

【課題】機能診断をより精度良く行うことができるセンサ装置を提供する。
【解決手段】圧力センサ装置11において、自己診断電流発生回路20は、自己診断時に、圧力センサ素子1の出力端子に注入する自己診断電流を、歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値の影響を打ち消すように変化させるので、自己診断時の出力電圧変化は、歪ゲージ抵抗Rsにばらつきなどがあったとしてもその影響を受けることなく略一定の値となり、診断をより正確に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歪ゲージ抵抗をブリッジ接続して構成されるセンサ素子に駆動電流を供給、前記センサ素子の出力電圧を増幅して出力するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図17は、特許文献1に開示されている半導体式加速度検出装置の構成を示すものである。センサ素子1は、4つの半導体歪ゲージ抵抗2a〜2dをブリッジ接続して構成されたブリッジ(歪ゲージブリッジ)回路からなり、歪ゲージ抵抗2a及び2bの共通接続点にはセンサ駆動電流発生回路3からの定電流Isが供給され、歪ゲージ抵抗2c及び2dの共通接続点はグランドに接続されている。
歪ゲージ抵抗2b及び2dの共通接続点(電位VSP)と、歪ゲージ抵抗2a及び2cの共通接続点(電位VSM)とは、夫々増幅調整部4の入力端子に接続されており、増幅調整部4は、両接続点の電位差を増幅率Avで増幅した電圧VOUTを出力する。
VOUT=Av・(VSP−VSM)+VOFS …(1)
尚、VOFSは、増幅調整部4の回路において発生するオフセット電圧である。
【0003】
また、歪ゲージ抵抗2a及び2cの共通接続点とグランドとの間には、スイッチ5及び定電流回路6の直列回路が接続されている。これらは、センサ素子1が正常に動作するか診断を行うために使用される。即ち、図18に示すように、通常動作時はスイッチ5を開き、診断時にはスイッチ5を閉じて、定電流回路6による診断用電流I_DIGを流す。電流I_DIGが流れると電位点VSP,VSMの電圧が不平衡となり、その差に応じた電圧ΔVOUTが出力されれば、センサ素子1が正常に動作していることを確認できる。この場合、電圧ΔVOUTは、歪ゲージ抵抗2の抵抗値をRsとすると(2)式で表される。
ΔVOUT=I_DIG・Rs・Av/2 …(2)
【0004】
また、特許文献2には、図19に示すように、定電流回路6を抵抗7に置き換え、診断時にスイッチ5を閉じることでセンサ素子1の出力端子の一方をプルダウンして、出力電圧を変化させる構成が開示されている。この場合、電圧ΔVOUTは、抵抗7の抵抗値をR_DIGとすると、(3)式で表される。但し、Rs≪R_DIGと仮定する。
ΔVOUT=Is・Rs2・Av/(4・R_DIG) …(3)
【特許文献1】特公平6−64085号公報
【特許文献2】特許第3019549号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、歪ゲージの抵抗値Rsや、診断電流I_DIGは通常±20%程度独立にばらつくため、ΔVOUTは最大で±40%もばらつくことが想定され、診断精度が悪い。その結果、センサ素子1や増幅調整部4の異常検出精度も悪くなるという問題があった。
また、特許文献2の技術では、センサ駆動電流Isによりセンサ素子1の感度ばらつきを補償して、出力電圧が所望の感度になるように調整されている。したがって、駆動電流Isはセンサ素子1の感度と同程度にばらつき、ΔVOUTのばらつきも大きくなるため、やはり異常検出精度も悪くなるという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、その目的は、機能診断をより精度良く行うことができるセンサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、自己診断時にセンサ素子の出力端子に注入する自己診断電流を、歪ゲージ抵抗の抵抗値の影響を打ち消すように変化させる。従って、自己診断時の出力電圧変化は、歪ゲージ抵抗にばらつきなどがあったとしてもその影響を受けることなく略一定の値となり、診断をより正確に行うことができる。
【0008】
請求項2記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、歪ゲージ抵抗の抵抗値に反比例するように自己診断電流を変化させる。従って、診断時の出力電圧変化について、歪ゲージ抵抗の抵抗値の影響を除去することができる。
【0009】
請求項3記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、センサ素子の印加電圧に応じて流れる第1電流と、電流源回路において駆動電流を決定するために付与される電流決定電圧に応じて流れる第2電流との比に応じた電流を増幅して出力する電流増幅回路を備える。即ち、センサ素子の印加電圧は歪ゲージ抵抗の抵抗値と駆動電流とを反映しており、電流決定電圧は前記駆動電流を決定する電圧であるから、電流増幅回路が、これらの電圧に応じて定まる第1,第2電流の比に基づいて流す自己診断電流は、歪ゲージ抵抗の抵抗値に反比例する電流となる。
【0010】
請求項4記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、自己診断時に、センサ素子の印加電圧検出レベルを保持するサンプルホールド回路を備える。即ち、診断時には、センサ素子の出力端子に自己診断電流が注入されることにより、センサ素子の電圧印加点とグランドとの間の抵抗値は歪ゲージ抵抗の抵抗値から変化するため、センサ素子の印加電圧が変化する。そこで、診断時に、サンプルホールド回路によって上記印加電圧検出レベルを保持すれば、自己診断電流の精度を向上させることができる。
【0011】
請求項5記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路に、センサ素子の出力端子と自身とを断続するスイッチ回路を組み込む。即ち、自己診断電流発生回路をバイポーラトランジスタで構成する場合、スイッチ回路の機能もトランジスタによって一体に構成することができる。
【0012】
請求項6記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、歪みゲージ抵抗が有している温度特性に対して逆の温度特性を有する電流を発生する。即ち、歪みゲージ抵抗の温度特性を打ち消すように自己診断電流を流せば、歪みゲージ抵抗の温度変動による影響を小さくすることができる。
【0013】
請求項7記載のセンサ装置によれば、自己診断電流発生回路は、反転増幅回路により、電圧源の出力電圧を基準としてセンサ素子の印加電圧を反転増幅する。その増幅出力は分圧回路により分圧され、定電流回路により、分圧電位に応じて流れる電流に所定のミラー比を乗じた電流が自己診断電流として出力される。この場合、自己診断時における出力電圧変化の温度変動分は、電圧源の出力電圧を調整することで改善することができる。そして、出力電圧変化のばらつきは、分圧回路の分圧比を調整することで小さくすることができる。
【0014】
請求項8記載のセンサ装置によれば、自己診断時における出力電圧変化の温度変動分は、請求項7における電圧源の出力電圧を調整することに替えて、反転増幅回路の増幅率を調整することで改善できる。そして、出力電圧変化のばらつきは、請求項7と同様に分圧回路の分圧比を調整することで小さくすることができる。
【0015】
請求項9記載のセンサ装置によれば、電圧バッファは、自己診断時にセンサ素子の印加電圧検出レベルを保持するサンプルホールド回路を構成するので、センサ素子の駆動電流に対して自己診断電流が十分に小さいという条件が成り立たない場合でも、自己診断電流を高精度に調整することができる。
【0016】
請求項10記載のセンサ装置によれば、センサ素子は、圧力センサ又は加速度センサを構成するので、歪ゲージ抵抗により構成したブリッジ回路により圧力や加速度を検出するものに本発明を適用することができる。
【0017】
請求項11記載のセンサ装置によれば、センサ素子は、車両側面のドア内部に配置される側面衝突検出用の圧力センサを構成するので、事故発生時に車両の乗員の安全を確保するため、確実に動作する必要があるものについて自己診断を行う場合に、本発明を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第1実施例)
以下、本発明の第1実施例について図1乃至図4を参照して説明する。図1は、本実施例の圧力センサ装置11の構成を示すものである。圧力センサ装置11は、図17に示す構成より、定電流回路6を電流増幅回路12に置き換えたものである。図2は、圧力関数の一例を示すものであり、圧力とセンサの出力電圧との関係は線形である。ここで、圧力センサ装置11の出力電圧VOUTは、一般に(1.1)式のように表される。
VOUT=Av・Ks・Is・P+VOFS …(1.1)
尚、Ksは圧力センサ素子1の単位電流当たりの感度であり、Pは圧力である。圧力センサ装置11は、例えば車両の側面衝突検出用のセンサなどに使用されるので、自己診断を行う場合の圧力Pは、通常大気圧に等しい。
【0019】
圧力センサ装置11としての感度、すなわち圧力関数の傾きは(Av・Ks・Is)であり、Avは回路上数に応じて決まる一定値であるが、Ksにはばらつきがある。そこで、Ksのばらつきを吸収して所定の感度となるように、図3に示す回路において駆動電流Isを調整する。
【0020】
図3は、圧力センサ装置11の構成をより具体的に示すものである。まず、センサ駆動電流発生回路(電流源回路)3の詳細構成について説明する。電源VCCとグランドとの間には、PチャネルMOSトランジスタ(FET)P1,NチャネルMOSトランジスタN1,抵抗素子R1の直列回路が接続されており、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子とは、トランジスタN1のソース,ゲートに夫々接続されている。そして、オペアンプOP1の非反転入力端子には、D/A変換回路(DAC_K)13より基準電圧VKが与えられる。そのD/A変換回路13に対しては、EPROM14より上記の基準電圧VKを与えるためのデータDKが入力されている。
【0021】
PチャネルMOSトランジスタP2,P3のソースは電源VCCに接続され、ゲートは、トランジスタP1のゲート及びドレインに接続されてワイドラー型の二連出力形カレントミラー回路を構成している。トランジスタP3のドレインとグランドとの間には、NチャネルMOSトランジスタN2が接続されており、NチャネルMOSトランジスタN3のソースはグランドに接続され、ゲートはトランジスタN2のゲート及びドレインに接続されて、トランジスタN2,N3はカレントミラー回路を構成している。また、電源とトランジスタN3との間には、PチャネルMOSトランジスタP4が接続されている。
【0022】
PチャネルMOSトランジスタP5のソースはトランジスタP2のドレインに、ゲートはトランジスタP4のドレインに夫々接続されている。そして、トランジスタP4のゲートは、トランジスタP5のソースに接続されており、トランジスタP5のドレインより定電流Isが出力される。尚、以上の構成は、特開2006−140888号公報に開示されている定電流生成回路と同様である。
【0023】
次に、センサ駆動電流発生回路3の詳細動作について説明する。トランジスタP1のドレイン電流IP1は、オペアンプOP1のオフセット電圧を無視すると、
【0024】
【数1】

となる。
【0025】
そして、トランジスタP1,P2の電流ミラー比をmとすると、定電流Isは、
【0026】
【数2】

即ち、
Is=m・VK/R1 …(1.3a)
となる。ミラー比mは、トランジスタP1のゲート幅,ゲート長をW1,L1とし、トランジスタP2のゲート幅,ゲート長をW2,L2とすれば、
【0027】
【数3】

で表される。
【0028】
一般に、定電流回路では、トランジスタP1,P2の特性の相対精度を高めるため、L1=L2に設定し、ゲート幅がW1,W2よりも小さい単位トランジスタを複数個並列に接続してトランジスタP1,P2を構成する。また、トランジスタP3〜P5やトランジスタN2,N3は、電流ミラー比の変動を抑制するために配置されている。即ち、圧力センサ素子1の抵抗値が変化すると、トランジスタP5のソース−ドレイン間電圧は変化するが、トランジスタP2のソース−ドレイン間電圧は変化しないので、電流ミラー比mは一定に維持されるようになっている。
【0029】
センサ駆動電流発生回路3の電流出力端子(トランジスタP5のドレイン)は、圧力センサ素子1に接続されていると共にサンプルホールド回路15を介して、電流増幅回路12の入力端子I1_REFに接続されている。サンプルホールド回路15は、スイッチ16(S2)と、電圧バッファを構成するオペアンプOP2と、オペアンプOP2の非反転入力端子とグランドとの間に接続されるコンデンサC22とで構成されている。
スイッチ16は常閉型であり、サンプルホールド回路15の入力端子には、圧力センサ素子1に定電流Isを供給することで現れる電圧VSIが印加される。自己診断信号V_DIGがハイレベルになるとスイッチ16が開くため、オペアンプOP2の非反転入力端子には、直前の電圧VSIのレベルが保持される。
【0030】
電流増幅回路12の入力端子I2_REFには、センサ駆動電流発生回路3と同様に基準電圧VKが与えられている。また、電源VCCとグランドとの間には、抵抗素子17〜19の直列回路が接続されており、電流増幅回路12の入力端子IP,INには、抵抗素子17及び18の共通接続点と、抵抗素子18及び19の共通接続点とがそれぞれ接続されている。尚、以上の構成において、電流増幅回路12及びサンプルホールド回路15が、自己診断電流発生回路20を構成している。
【0031】
図4は、電流増幅回路12の具体構成を示すものである。この回路は、例えば特開2006−170620号公報の図12に開示されているものと同様である(但し、出力において電流−電圧変換を行うIV変換回路719を除く)。ここで、電流増幅回路12の回路動作について説明する。電流増幅回路12は、定電流発生回路51及び52,差動回路53,差動増幅部54で構成されている。VI1_REFを入力端子I1_REFに印加される電圧とすると、定電流発生回路51において、トランジスタQ38,Q39のコレクタ電流(定電流)I1は(1.5)式となる。
I1=VI1_REF/RI1_REF …(1.5)
【0032】
そして、差動回路53において、入力端子IP,IN間には、電源電圧VCCを抵抗素子17〜19により分圧した電圧VAが印加される。
VIP−VIN=VA …(1.6)
VIP,VINは、それぞれ入力端子IP,INに印加される電圧である。そして、トランジスタQ3,Q4のコレクタからエミッタに流れる電流IQ3,IQ4は、(1.7),(1.8)式となる。
IQ3=I1+VA/RIN …(1.7)
IQ4=I1−VA/RIN …(1.8)
この時、トランジスタQ3,Q4のエミッタ電位VP,VNは、(1.9),(1.10)式となる。
VP=VCC−(kT/q)ln(IQ3/Is) …(1.9)
VN=VCC−(kT/q)ln(IQ4/Is) …(1.10)
kはボルツマン定数、Tは絶対温度、qは電子の電荷、IsはトランジスタQ3,Q4の逆方向飽和電流である。
【0033】
トランジスタQ5〜Q8のベースエミッタ間電圧をVFとすると、差動増幅部54におけるトランジスタQ9,Q10のベース電位VQ9,VQ10は、(1.11),(1.12)式となる。
VQ9 =VN−2VF …(1.11)
VQ10=VP−2VF …(1.12)
また、VI2_REFを入力端子I2_REFに印加される電圧とすると、定電流発生回路52において、トランジスタQ48のコレクタ電流(定電流)I2は(1.13)式となる。
I2=VI2_REF/RI2_REF …(1.13)
差動増幅部54におけるトランジスタQ9側に流れる電流をIx,Q10側に流れる電流をIyとすると、定電流I2との関係は、(1.14)式となる。
I2=Ix+Iy …(1.14)
(1.14)式より電流Ix,Iyの増減は互いに逆になる。変数ΔI2を電流をIx,Iyの差で定義する。即ち、
Ix−Iy=2・ΔI2 …(1.15)
と表す。(1.14)式,(1.15)式より
Ix=I2/2+ΔI2,Iy=I2/2−ΔI2 …(1.16)
となる。
【0034】
また、トランジスタQ9,Q10のエミッタ電位をVE,逆方向飽和電流をIs’とすすると、(1.11),(1.12)式より、(1.17),(1.18)式が成り立つ。
VN−2VF−VE=(kT/q)ln(Ix/Is’) …(1.17)
VP−2VF−VE=(kT/q)ln(Iy/Is’) …(1.18)
そして、(1.18)式と(1.17)式との差をとり、(1.9),(1.10)式を使うと、
VP−VN=(kT/q)ln(Iy/Ix)
(kT/q)ln(IQ4/IQ3)=(kT/q)ln(Iy/Ix)
となるから、
IQ4/IQ3=Iy/Ix …(1.19)
の関係が成り立つ。すると、(1.7),(1.8),(1.16),(1.19)式より、(1.15)式を計算すると、
Ix−Iy=2・ΔI2=(VA/RIN)・(I2/I1) …(1.20)
となる。
【0035】
ここで、差動増幅部54の出力段において、トランジスタQ21のコレクタ電流がIx,トランジスタQ18のコレクタ電流がIyに相当するから、電流(Ix−Iy)は、差動増幅部54の出力電流、すなわち、自己診断時にスイッチ(スイッチ回路)5が閉じられた場合に流れる自己診断電流I_DIGに等しい。
【0036】
自己診断電流I_DIGは、(1.20)式に、(1.5),(1.13)式を代入すると、
【0037】
【数4】

と表される。
【0038】
入力端子I1_REF,I2_REFには、それぞれ電圧VSI,VKが印加されているので、
VI1_REF=VSI=Rs・Is …(1.22)
VI2_REF=VK …(1.23)
である。(1.21)式に(1.22),(1.23)式を代入し、(1.3a)式を使って整理すると、
【0039】
【数5】

となる。ここで、圧力センサ素子1の抵抗値Rs以外は回路定数であるから、自己診断電流I_DIGは、抵抗値Rsに反比例する電流となる。
【0040】
(1.24)式を(2)式に代入して、自己診断時における圧力センサ素子1の出力電圧変化ΔVOUTを計算すると、
【0041】
【数6】

となり、抵抗値Rsに依存しないことが判る。
【0042】
すなわち、抵抗値Rsにばらつきや温度変動があっても、自己診断電流I_DIGは電流増幅回路12の作用により自動的に補正されるので、出力電圧変化ΔVOUTが抵抗値Rsに依存しなくなるのである。更に言えば、電圧変化ΔVOUTは、回路定数の絶対値により決定されるものではなく、電流ミラー比や抵抗比などの相対値によって決定されるため、調整を行わずとも圧力センサ装置11の自己診断を精度良く行うことが可能となっている。尚、電圧VAは抵抗素子17〜19の抵抗比で決まり、増幅率Avも増幅・調整部4において増幅回路を構成するオペアンプ回路の抵抗比で決定される。
【0043】
次に、サンプルホールド回路15の作用について説明する。自己診断時には、圧力センサ素子1の出力端子より自己診断電流I_DIGを流すため、圧力センサ素子1の端子VSI−GND間の抵抗値は、等価的にRsよりも小さくなる。すると、厳密には(1.22),(1.24)式が成り立たなくなる結果、自己診断の精度が悪化してしまう。
【0044】
そこで、サンプルホールド回路15を配置し、自己診断時にスイッチ16を開くことで、自己診断電流I_DIGが流れる直前の電圧VSIの検出レベルをサンプルホールド回路15で保持し、電流増幅回路12の入力端子I1_REFに与えることができ、(1.22),(1.24)式がそのまま成り立つため、自己診断の精度悪化を防止することができる。
但し、I_DIG≪Isの関係が成り立つ場合は、自己診断電流I_DIGの影響は小さいと考えられるため、サンプルホールド回路15を配置することなく、電圧VSIを直接入力端子I1_REFに与えても良い。
【0045】
以上のように本実施例によれば、圧力センサ装置11において、自己診断電流発生回路20は、自己診断時に圧力センサ素子1の出力端子に注入する自己診断電流を、歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値の影響を打ち消すように変化させるので、診断時の出力電圧変化ΔVOUTは、歪ゲージ抵抗Rsにばらつきなどがあったとしてもその影響を受けることなく略一定の値となる。従って、診断をより正確に行うことができる。
そして、電流増幅回路12は、歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値に反比例するように自己診断電流を変化させるので、診断時の出力電圧変化ΔVOUTについて、歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値の影響を除去することができる。
【0046】
また、電流増幅回路12は、圧力センサ素子1の印加電圧VSIに応じて流れる第1電流I1と、センサ駆動電流発生回路3において駆動電流Isを決定するために付与される電流決定電圧VKに応じて流れる第2電流I2との比に応じた電流を増幅して出力する。即ち、圧力センサ素子1の印加電圧VSIは歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値と駆動電流Isとを反映しており、電流決定電圧VKは前記駆動電流Isを決定する電圧であるから、電流増幅回路12が、これらの電圧に応じて定まる電流I1,I2の比に基づいて流す自己診断電流I_DIGは、歪ゲージ抵抗Rsの抵抗値に反比例する電流となる。
更に、自己診断電流発生回路20は、診断時に、圧力センサ素子1の印加電圧VSIの検出レベルを保持するサンプルホールド回路15を備えるので、診断時に流れる電流の増加分により、圧力センサ素子1の印加電圧VSIの検出レベルが変化することを回避して、自己診断電流の精度を向上させることができる。
【0047】
(第2実施例)
図5は本発明の第2実施例を示すものであり、第1実施例と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、以下異なる部分について説明する。第1実施例では、電流増幅回路12とスイッチ5とを個別の構成としたが、第2実施例は、スイッチ5の機能を電流増幅回路21の内部に組み込んで構成した場合を示す。
【0048】
図5に示す電流増幅回路21は、図4に示す定電流発生回路51,52を機能ブロックで示すと共に、第2実施例において追加した回路部分を示すものである。図中において、差動増幅部54の右側に破線で囲んだ部分がスイッチ5(S1)の機能に相当する部分である。グランドには、NPNトランジスタQ51〜Q53のエミッタが接続されており、トランジスタQ51及びQ52のベースは、それぞれ抵抗素子R51及びR52を介してトランジスタQ53のコレクタに接続されている。そして、トランジスタQ53のコレクタは、定電流回路I4を介して電源VCCに接続されている。
【0049】
トランジスタQ51のコレクタは、差動増幅部54を構成するNPNトランジスタQ20及びQ21のベースに接続されており、トランジスタQ52のコレクタは、抵抗素子R53及びR54の直列回路を介して電源VCCに接続されている。抵抗素子R53及びR54の共通接続点は、PNPトランジスタQ54のベースに接続されており、トランジスタQ54のエミッタは電源VCCに、コレクタは、PNPトランジスタQ15及びQ16のベースに接続されている。そして、自己診断信号V_DIGの入力端子とグランドとの間には、抵抗素子R56及びR55の直列回路が接続されており、両者の共通接続点は、PNPトランジスタQ53のベースに接続されている。
【0050】
次に、第2実施例の作用について説明する。自己診断信号V_DIGがロウレベルの場合、トランジスタQ53はOFFであるから、トランジスタQ51及びQ52は何れもONとなる。したがって、トランジスタQ16及びQ21は何れもOFFとなり、自己診断電流I_DIGは流れない。一方、自己診断信号V_DIGがハイレベルの場合、上記ON,OFFの関係が逆になる結果、自己診断電流I_DIGが流れることになる。
以上のように第2実施例によれば、電流増幅回路21に、圧力センサ素子1の出力端子と自身とを断続する第1実施例におけるスイッチ5(S1)の機能に相当する回路を組み込んだので、電流増幅回路21をバイポーラトランジスタで構成する場合、スイッチS1の機能もトランジスタによって一体に構成することができる。
【0051】
(第3実施例)
図6は本発明の第3実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分のみ説明する。図6は、図3相当図である。第3実施例の圧力センサ装置22では、スイッチ5が、圧力センサ素子1の出力端子VSP側に接続されており、それに伴い、電流増幅回路12の入力端子IP,INは、抵抗素子17〜19の直列回路において接続される共通接続点が上下逆となっている。その他の構成は第1実施例と同様である。この場合、電流増幅回路12からは、自己診断電流I_DIGがソース電流として出力端子VSP側に供給される。斯様に構成される第3実施例による場合も、第1実施例と同様の効果が得られる。
【0052】
(第4実施例)
図7乃至図11は本発明の第4実施例を示すものである。第4実施例の圧力センサ装置24は、電流増幅回路12を使用することなく、全てをCMOS回路で構成した場合を示す。スイッチ5,16(S1,S2)に替わるスイッチ25,26は、MOSトランジスタP21及びN21,MOSトランジスタP22及びN22よりなるアナログスイッチで構成されている。そして、電流増幅回路12に替えて、定電流回路27が配置されており、サンプルホールド回路15と定電流回路27との間には、反転増幅回路28及び分圧回路29が配置されている。
定電流回路27は、2つの電流ミラー回路30,31によって構成されており、初段の電流ミラー回路30は、センサ駆動電流発生回路3と同様に、トランジスタP11〜P15及びN11〜N13,オペアンプOP4,抵抗素子RD_REFにより構成されている。
【0053】
後段の電流ミラー回路31は、グランド側でミラー対を構成するトランジスタN14及びN15,電源側でミラー対を構成するトランジスタP16及びP17,トランジスタP16のドレインとグランドとの間に接続され、ゲートがトランジスタN14及びN15のゲートに接続されるトランジスタN16,トランジスタP17のドレインとグランドとの間に接続され、ゲートがトランジスタN15のドレインに接続されるトランジスタN17,スイッチ25とトランジスタN15のドレインとの間に接続され、ゲートがトランジスタN17のドレインに接続されるトランジスタN18で構成されている。そして、電流ミラー回路30を構成するトランジスタP15のドレインと、電流ミラー回路31を構成するトランジスタN14のドレイン及びゲートとが接続されている。
【0054】
反転増幅回路28は、オペアンプOP3,入力抵抗RI3,帰還抵抗RF3で構成されており、オペアンプOP3の非反転入力端子には、EPROM14より出力されるデータがD/A変換回路32(DAC_D)により変換された電圧VDが与えられている。そして、反転増幅回路28の出力電圧VO3は分圧回路29により分圧され、その分圧出力VI4が、電流ミラー回路30のオペアンプOP4の非反転入力端子に与えられている。
【0055】
分圧回路29は、可変抵抗RO3H及びRO3Lの直列回路で構成されるが、その詳細構成を図8に示す。オペアンプOP3の出力端子とグランドとの間には、2DN_0+1個の抵抗素子RO3_2DN_0〜RO3_0の直列回路が接続されている。そして、各抵抗素子RO3_2DN_0〜RO3_0接続点には、アナログスイッチSO3_2DN_0-1〜SO3_0が接続されている。各アナログスイッチSO3_2DN_0-1〜SO3_0のON,OFFは、EPROM14より出力されるDN_0ビットのデータDOが、デコーダ33によりデコードされた出力DO3_2DN_0-1〜DO3_0により、インバータゲートINVO3_2DN_0-1〜INVO3_0も介して行われる。
【0056】
ここで、データDOの値に応じた各アナログスイッチSO3_0〜SO3_2DN_0-1のON,OFF状態と、その結果として実現される分圧回路29の分圧比との関係を、表1に示す。
【0057】
【表1】

尚、以上の構成において、サンプルホールド回路15,反転増幅回路28,分圧回路29,定電流回路27が、自己診断電流発生回路46を構成している。
【0058】
次に、圧力センサ装置24において、自己診断時の出力電圧変化ΔVOUTがどのように定まるかを求める。反転増幅回路28には、サンプルホールド回路15を介して電圧VSIが入力され、その電圧VSIが、D/A変換回路(電圧源)32の出力電圧VDを基準として反転増幅される。したがって、反転増幅回路28の出力電圧VO3は、
VO3=−α・VSI+(α+1)・VD …(4.1)
ただし、αは反転増幅回路28のゲインであり、
α=RF3/RI3 …(4.2)
である。
【0059】
上記出力電圧VO3は、分圧回路29において抵抗RO3H,RO3Lにより分圧されるので、電流ミラー回路30のオペアンプOP4に入力される電圧VI4は、
VI4=β・VO3 …(4.3)
となる。βは、分圧回路29の分圧比であり、
β=RO3L/(RO3H+RO3L) …(4.4)
となり、表1に示すようにデータDOに応じて調整することができる。
【0060】
定電流回路27で、初段の電流ミラー回路30におけるトランジスタP11のドレイン電流をIP11とすると、
IP11=VI4/RD_REF …(4.5)
となる。電流ミラー回路30及び31におけるミラー比の積をγとすると、自己診断電流I_DIGは、
I_DIG=γ・IP11 …(4.6)
であり、ミラー比の積γは、
【0061】
【数7】

となる。W,Lは、(1.4)式と同様に、各トランジスタP11,P12,N14,N15のゲート幅,ゲート長である。
【0062】
(4.1),(4.3),(4.5),(4.6)式より、
【0063】
【数8】

となる。更に、(2)式に(4.8)式を代入すると共に、VSI=Rs・Isを用いて出力電圧変化ΔVOUTを計算すると、
【0064】
【数9】

となる。
【0065】
次に、(4.9)式のΔVOUTについて評価する。(4.9)式の分圧比β,ミラー比の積γ,ゲインAvは、何れも相対値で決まる値であり、温度変動は十分小さく無視してよい。また、基準電圧VDも、D/A変換回路32において電源電圧を抵抗で分圧して出力されるものであるから、同様に温度変動は十分小さく無視してよい。
センサ駆動電流Is,抵抗値RD_REFは、抵抗値の温度特性に依存するが、センサ駆動電流発生回路3の抵抗素子R1と、電流ミラー回路30の抵抗素子RD_REFに薄膜抵抗等を用いることで、その温度変動を、圧力センサ素子1の歪みゲージ抵抗Rsの温度変動に対して十分小さくすることが可能である。従って、(4.9)式のΔVOUTの温度変動は、歪みゲージ抵抗Rsの温度変動のみによって生じるとみなすことができる。
【0066】
続いて、ΔVOUTの温度変動を、基準電圧VDを調整して改善できることを示す。
ΔVOUT0,ΔVOUT’を、それぞれ室温でのΔVOUT,任意の温度でのΔVOUTとする。同様に、Rs0,Rs’を、それぞれ室温でのRs,任意の温度でのRsとする。すると、(4.9)式より、
【0067】
【数10】

となる。Rs’について、室温からの変動分をδとすると、
Rs’=Rs0・(1+δ) …(4.12)
となる。
【0068】
(4.12)式を、(4.11)式に代入して整理すると、
【0069】
【数11】

となり、(4.10)式,(4.13)式より、ΔVOUTの温度変動分を求めると、
【0070】
【数12】

となる。
【0071】
(4.14)式において、[]内が0になれば、ΔVOUTの温度変動は0になる。すなわち、
【0072】
【数13】

となるように電圧VDを調整できれば、ΔVOUTの温度変動を0にすることができる。
【0073】
しかしながら、電圧VDは温度に依存しないが、δは温度により変化する。したがって、全温度範囲について(4.15)式が成り立つようにすることはできない。歪みゲージ抵抗Rsは半導体チップ上で拡散により形成されており、抵抗Rsの温度係数TCRsは、+2000ppm/℃程度である。すなわち、δは高温で正,低温で負となるから、前温度範囲での平均値を0と考え、
【0074】
【数14】

となるように電圧VDを調整する。ここで、VSI0は室温での分圧出力VSIである。
【0075】
(4.16)式を、(4.10),(4.14)式に代入して整理すると、
【0076】
【数15】

となる。更に、ΔVOUTの温度変動をΔVOUT0で規格化すると、
(ΔVOUT’−ΔVOUT0)/ΔVOUT0=−δ2 …(4.19)
となる。
【0077】
(2)式から明らかなように、従来技術(図17)の場合、回路定数の温度変動がなければ、ΔVOUTの温度変動はδに等しい。第4実施例では−δ2 であるから、温度変動はより小さくなっている。図9は、両者の変動状態を関数グラフによって示すものである。ここで、抵抗Rsの温度係数TCRsを2000ppm/℃,室温を25℃,使用温度範囲を−40℃〜125℃として、ΔVOUTの温度変動を従来技術と比較すると、次表のようになる。
【0078】
【表2】

温度変動は1/5に、温度変動幅は1/8に改善されていることが判る。
【0079】
このようにΔVOUTの温度変動が改善されたのは、VDを(4.16)式のように設定することにより、自己診断電流の温度特性が、抵抗Rsの温度特性と逆になるように構成されたからである。(4.16)式を、(4.8)式に代入して整理すると、
I_DIG=α・(2Rs0−Rs)・Is・β・γ/RD_REF …(4.20)
となる。I_DIG0を室温でのI_DIGとする。(4.20)式のRsをRs0に置き換えて、
I_DIG0=α・Rs0・Is・β・γ/RD_REF …(4.21)
となる。I_DIG’を任意の温度でのI_DIGとする。(4.12)式のRsを、Rs’と置き換えて、さらに(4.12)式を使って整理すると、
I_DIG’=α・Rs0・Is・β・γ・(1−δ)/RD_REF…(4.22)
となる。(4.21),(4.22)式より、
I_DIG’=I_DIG0・(1−δ) …(4.23)
となる。(4.23)式と(4.12)式を比較することにより、自己診断電流の温度特性が、抵抗Rsの温度特性と逆であることが判る。
【0080】
次に、ΔVOUTのばらつきを、分圧回路29の分圧比βを調整することで改善する手法について、図10及び図11を参照して説明する。
(1)まず、室温において、反転増幅の基準電圧VDを(4.16)式が成り立つように調整した後、ΔVOUT0が設計値となるように分圧比βを調整する。
(2)ΔVOUTは室温(ΔVOUT0)で最高を示し、そこからの温度変動は常に負となる。したがって、温度変動分を見込んで、ΔVOUT0を設計値よりも高めに調整すれば、全温度範囲での偏差(設計値からのずれ)を小さくすることができる。この場合、ΔVOUT0を設計値よりも温度変動幅の1/2だけ高くなるように調整すれば、偏差を最も小さく(±1/2)することができる(図10参照)。
【0081】
また、上述した説明は、基準電圧VDの調整温度を室温にすることを前提としているが、必ずしも室温でなくても良い。例えば、調整時の歪みゲージ抵抗Rs,圧力センサ素子1の印加電圧VSIを、それぞれRsa,VSIaとすると、基準電圧VDを、室温以外の温度において
【0082】
【数16】

となるように調整し、変動分δを、この調整時の温度からの変動として置き換えれば(4.19)式は成り立つ。
【0083】
(3)また、調整時の温度を、最高温度と最低温度のちょうど中間(−40℃~125℃の場合、42.5℃)に設定すれば、δMINの絶対値とδMAXの絶対値とが等しくなり、温度変動幅も最小にすることができる。
(4)この場合も(2)と同様に、調整時のΔVOUTであるΔVOUTaを、設計値よりも温度変動幅の1/2だけ高くなるように調整すれば、偏差を最も小さくすることができる(図11参照)。
【0084】
上記の調整(1)〜(4)を、次表にまとめて示す。
【0085】
【表3】

【0086】
以上のように第4実施例によれば、定電流回路27は、反転増幅回路28により、D/A変換回路32の出力電圧を基準として圧力センサ素子1の印加電圧VSIを反転増幅し、その増幅出力を分圧回路29により分圧し、分圧電位に応じて流れる電流に所定のミラー比γを乗じた電流を自己診断電流I_DIGとして出力する構成とした。
このように構成することで、自己診断時における出力電圧変化ΔVOUTの温度変動分を、D/A変換回路32の出力電圧VDを調整して改善することができる。また、出力電圧変化ΔVOUTのばらつきを、分圧比βを調整することにより小さくすることができる。さらに、出力電圧VD及び分圧比β調整時の温度と、調整の狙い値を最適化することにより、出力電圧変化ΔVOUTの偏差を小さくすることができる。
【0087】
尚、第1実施例で用いた電流増幅回路12は、バイポーラトランジスタにおけるPN接合の順方向I−V特性を利用(対数圧縮,指数伸長)したものであるから、CMOS回路で構成することは困難である。これに対して、第4実施例の定電流回路27は、室温でのばらつきや温度特性を改善するために調整が必要ではあるが、CMOS回路で容易に構成することができる。
加えて、オペアンプOP2よりなる電圧バッファは、診断時に圧力センサ素子1の印加電圧VSIの検出レベルを保持するサンプルホールド回路15の一部を構成するので、圧力センサ素子1の駆動電流に対して自己診断電流の変化分が十分に小さいという条件が成り立たない場合でも、自己診断電流を高精度に調整することができる。
【0088】
(第5実施例)
図12は本発明の第5実施例を示すものであり、第4実施例と異なる部分について説明する。第5実施例の圧力センサ装置34は、第4実施例よりD/A変換回路32を削除して、反転増幅の基準電圧VDは、抵抗素子35及び36により分圧された一定電圧として与えられている。それに替えて、反転増幅回路37における入力抵抗RI3,帰還抵抗RF3が可変抵抗として構成されており、反転増幅回路37のゲインαがEPROM14より出力されるデータDDによって調整可能となっている。そして、自己診断電流発生回路46の構成の一部を置き換えたものが、自己診断電流発生回路47を構成している。
【0089】
この場合、ゲインαを調整して(4.16)式が成り立つようにする。(4.16)式をゲインαについて解くと、
α=VD/(2VSI0−VD) …(5.1)
となる。したがって、VSI0を測定し、(5.1)で計算されたゲインαとなるようにデータDDを決定すれば良い。
【0090】
以上のように構成される第5実施例によれば、自己診断時における出力電圧変化ΔVOUTの温度変動分を、第4実施例におけるD/A変換回路32の出力電圧を調整することに替えて、反転増幅回路37の増幅率αを調整して改善することができる。そして、出力電圧変化ΔVOUTのばらつきについては第4実施例と同様に分圧比βを調整すれば良いので、第4実施例と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(第6実施例)
図13は本発明の第6実施例を示すものであり、第4実施例と異なる部分のみ説明する。第6実施例の圧力センサ装置38は、第4実施例の圧力センサ装置24より、定電流回路27の後段に配置されている電流ミラー回路31を削除して構成されている。そして、初段の電流ミラー回路30におけるトランジスタP15のドレインが、スイッチ25を介して圧力センサ素子1の出力端子VSP側に接続されている。そして、自己診断電流発生回路46の構成の一部を置き換えたものが、自己診断電流発生回路48を構成している。
この場合、第3実施例と同様に、自己診断電流I_DIGは、ソース電流として出力端子VSP側に供給される。以上のように構成される第6実施例によれば、第4実施例に比較して回路構成を小規模にすることができる。
【0092】
(第7実施例)
図14及び図15は本発明の第7実施例を示すものであり、第1実施例と異なる部分について説明する。第7実施例の圧力センサ装置41では、第1実施例のセンサ駆動電流発生回路3にPチャネルMOSトランジスタP2_1,P4_1,P5_1,NチャネルMOSトランジスタN3_1よりなる電流ミラー回路42を追加してセンサ駆動電流発生回路(電流源回路)43を構成し、電流増幅回路12における定電流回路52のトランジスタを幾つか削除して電流増幅回路44を構成している。
【0093】
センサ駆動電流発生回路43において、トランジスタP2_1及びP4_1のソースは電源VCCに接続されており、トランジスタP2_1のゲートは、トランジスタP1のゲートに接続されている。トランジスタP5_1のソースは、トランジスタP2_1のドレイン及びトランジスタP4_1のゲートに接続されている。トランジスタN3_1のドレインはトランジスタP4_1のドレイン及びトランジスタP5_1のゲートに接続されており、ソースはグランドに、ゲートはトランジスタN2のゲートに接続されている。そして、トランジスタP5_1のドレインが、電流増幅回路44の入力端子I2_INに接続されている。
【0094】
電流増幅回路44において、定電流回路52は、電流ミラー回路45に置き換えられている。その電流ミラー回路45は、定電流回路52を構成していたNPNトランジスタQ46〜Q48と、抵抗素子R43及びR44のみで構成されており、トランジスタQ46のベースが入力端子I2_INとなっている。
【0095】
次に、第7実施例の作用について説明する。センサ駆動電流発生回路43において、電流ミラー回路42が電流増幅回路44に対して出力する電流をIs_1とすると、センサ駆動電流Isと同様に、
Is_1=n・VK/R1 …(7.1)
n=(W2_1/L2_1)/(W1/L1) …(7.2)
となる。nは電流ミラー回路42のミラー比であり、W2_1,L2_1はトランジスタP2_1のゲート幅,ゲート長である。
【0096】
電流増幅回路44の電流ミラー回路45は、ミラー比「1」であるから、
I2=Is_1 …(7.3)
であり、電流増幅回路44が出力する自己診断電流I_DIGは、
【0097】
【数17】

となる。第1実施例と同様に、(1.6),(1.22),(7.3)式を代入し、(1.3a),(7.1)式を使って整理すると、
【0098】
【数18】

となる。Rs以外は回路定数なので、第1実施例と同様に、自己診断電流I_DIGは、圧力センサ素子1の抵抗値Rsに反比例する。(7.5)式を(2)式に代入し、自己診断時における圧力センサ素子1の出力電圧変化ΔVOUTを計算すると、
【0099】
【数19】

となる。
【0100】
したがって、第1実施例と同様に、抵抗値Rsにばらつきや温度変動があっても、自己診断電流I_DIGは自動的に補正され、出力電圧変化ΔVOUTは、抵抗値Rsに依存しない。そして、出力電圧変化ΔVOUTは回路定数の絶対値ではなく相対値(ミラー比,抵抗比)で決定されるので、調整を行わずとも自己診断を高精度で行うことができる。
また、電流ミラー回路42のような回路は、一般にオペアンプよりも小さなサイズで構成される。したがって、センサ駆動電流発生回路43に追加した電流ミラー回路42の占有面積は、電流増幅回路44において削除されたオペアンプOPI2等の占有面積よりも小さくなるから、第1実施例の構成よりも回路サイズを小型化することができる。
【0101】
(第8実施例)
図16は本発明の第8実施例を示すものである。第8実施例は、本発明の圧力センサ装置を、車両における側面衝突検出用の圧力センサに適用した場合を具体的に示す。
自動車の側面ドア61は、車体外側のドアアウタパネル61aと、車室内側のドアインナパネル61bとによって断面が中空となるように形成されており、このドア内空間61cには、圧力センサ62が、ドアインナパネル61bの内面のほぼ中央に固定して、ドア内空間61cの気圧を測定可能に設けられている。
【0102】
圧力センサ62は、エアバッグ制御用のECU(Electronic Control Unit)63に接続されている。ECU63は、圧力センサ62から入力された信号を処理して側面衝突の判定を行い、また側面衝突の判定時には、エアバッグモジュール64にインフレータの着火信号を出力するように構成されている。なお、ここでエアバッグモジュール64は、インフレータとエアバッグとをアッセンブリ化して構成されている。
以上のように構成される第8実施例によれば、本発明の圧力センサ装置を、車両側面のドア61内部に配置される側面衝突検出用の圧力センサ62に適用したので、事故発生時に車両の乗員の安全を確保するため、確実に動作する必要があるものについて自己診断を行う場合に、本発明を適用することができる。
【0103】
本発明は上記し且つ図面に記載した実施例にのみ限定されるものではなく、以下のような変形または拡張が可能である。
車両の側面衝突検出用の圧力センサに限ることなく、その他の用途の圧力センサについても広く適用することができる。
また、圧力センサに限ることなく、加速度センサや歪みゲージ抵抗をブリッジ接続して構成されるセンサ素子を使用するものであれば適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の第1実施例であり、圧力センサ装置の構成を示す図
【図2】圧力関数を示す図
【図3】圧力センサ装置の詳細構成を示す図
【図4】電流増幅回路の詳細構成を示す図
【図5】本発明の第2実施例を示す図4相当図
【図6】本発明の第3実施例を示す図3相当図
【図7】本発明の第4実施例を示す図3相当図
【図8】分圧回路の詳細構成を示す図
【図9】第4実施例の構成と、従来構成との温度変動特性を示す図
【図10】調整方法を説明する図(その1)
【図11】調整方法を説明する図(その2)
【図12】本発明の第5実施例を示す図3相当図
【図13】本発明の第6実施例を示す図3相当図
【図14】本発明の第7実施例を示す図3相当図
【図15】図4相当図
【図16】本発明の第8実施例であり、車両の側面ドア内部に圧力センサを配置した状態を示す断面図
【図17】従来技術(その1)を示す図1相当図
【図18】自己診断時における各端子の電圧変化を示す図
【図19】従来技術(その2)を示す図1相当図
【符号の説明】
【0105】
図面中、1は圧力センサ素子(歪ゲージブリッジ回路)、3はセンサ駆動電流発生回路(電流源回路)、4は増幅・調整部(増幅回路)、5はスイッチ(スイッチ回路)、11は圧力センサ装置、12は電流増幅回路、15はサンプルホールド回路、20は自己診断電流発生回路、21は電流増幅回路、22,24は圧力センサ装置、27は定電流回路、28は反転増幅回路、29は分圧回路、32はD/A変換回路(電圧源)、34は圧力センサ装置、37は反転増幅回路、38,41は圧力センサ装置、43はセンサ駆動電流発生回路(電流源回路)、44は電流増幅回路、46〜49は自己診断電流発生回路、62は圧力センサを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪ゲージ抵抗をブリッジ接続して構成されるセンサ素子と、
このセンサ素子に駆動電流を供給する電流源回路と、
前記センサ素子の出力電圧を増幅する増幅回路と、
前記センサ素子を診断するため、当該センサ素子の出力端子の一方に自己診断電流を注入する自己診断電流発生回路とを備え、
前記自己診断電流発生回路は、前記歪ゲージ抵抗の抵抗値の影響を打ち消すように、前記自己診断電流を変化させることを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記自己診断電流発生回路は、前記歪ゲージ抵抗の抵抗値に反比例するように、前記自己診断電流を変化させることを特徴とする請求項1記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記自己診断電流発生回路は、前記センサ素子の印加電圧に応じて流れる第1電流と、前記電流源回路において前記駆動電流を決定するために付与される電流決定電圧に応じて流れる第2電流との比に応じた電流を増幅して出力する電流増幅回路を備えて構成されることを特徴とする請求項2記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記自己診断電流発生回路は、診断時に、前記センサ素子の印加電圧検出レベルを保持するサンプルホールド回路を備えることを特徴とする請求項3記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記自己診断電流発生回路は、前記センサ素子の出力端子と自身とを断続するスイッチ回路が組み込まれて構成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記自己診断電流発生回路は、前記歪みゲージ抵抗が有している温度特性に対して逆の温度特性を有する前記自己診断電流を発生するように構成されていることを特徴とする請求項1記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記自己診断電流発生回路は、
前記センサ素子の印加電圧をバッファして出力する電圧バッファと、
出力電圧が調整可能に構成される電圧源と、
前記電圧源の出力電圧を基準として、前記電圧バッファの出力電圧を反転増幅する反転増幅回路と、
この反転増幅回路の出力電圧を分圧するもので、分圧比が調整可能に構成される分圧回路と、
前記分圧電位に応じて流れる電流に所定のミラー比を乗じた電流を、自己診断時の電流として出力する定電流回路とを備えることを特徴とする請求項6記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記自己診断電流発生回路は、
前記センサ素子の印加電圧をバッファして出力する電圧バッファと、
電圧源と、
前記電圧源の出力電圧を基準として、前記電圧バッファの出力電圧を反転増幅すると共に、増幅率が調整可能に構成される反転増幅回路と、
この反転増幅回路の出力電圧を分圧するもので、分圧比が調整可能に構成される分圧回路と、
前記分圧電位に応じて流れる電流に所定のミラー比を乗じた電流を、自己診断時の電流として出力する定電流回路とを備えることを特徴とする請求項6記載のセンサ装置。
【請求項9】
前記電圧バッファは、診断時に、前記センサ素子の印加電圧検出レベルを保持するサンプルホールド回路を構成していることを特徴とする請求項7又は8記載のセンサ装置。
【請求項10】
前記センサ素子は、圧力センサ又は加速度センサを構成するものであることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載のセンサ装置。
【請求項11】
前記センサ素子は、車両側面のドア内部に配置される側面衝突検出用の圧力センサを構成するものであることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載のセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−75006(P2009−75006A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245860(P2007−245860)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】