説明

センサ装置

【課題】筺体に熱処理を施すことなく、簡単かつ精度の高い方法で筺体をシールすることができるセンサ装置を得る。
【解決手段】シール部材として粘度が略一定に保たれるシール用オイルコンパウンド10を用い、このオイルコンパウンド10をベース3の結合部39に塗布した状態で、ベース3とケース4とを結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体センサを筺体内に密封して収納するセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上ケースと下ケース(ベース)とで構成された筺体内に圧力温度を検出する半導体センサを収納するとともに、上ケースと下ケースとを気密構造をもって結合したセンサ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このとき、特許文献1には、下ケースのフランジ部の外周と上ケースの内周との間に介装されたシールリングが開示されており、このシールリングによって筺体が密封されるものと思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−207406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のセンサ装置では、筺体を密封するのにシールリングが用いられているが、コストの低減を図るためには、シールリングに替えてシール剤(この場合のシール剤は、粘性の有る液体状態のもの)を用いるのが好ましい。このシール剤は、ディスペンサーによって塗布する場合は人の手作業となるため、個体間のバラ付きが大きくなる。その一方で、機械を用いて塗布しようとすると設備投資に費用が嵩むため、製品のコストアップが余儀なくされる。
【0006】
人による作業で簡単かつ精度の高い塗布方法としては、シール剤を溜めた槽を用い、この槽に溜めたシール剤にシール部分を接触させて塗布することが考えられる。しかし、この場合は、シール剤の塗布状態を一定に保つためには、シール剤が常に略一定の粘度となっている必要がある。
【0007】
そこで、一定の粘度を保つためには熱硬化性のシール剤を用いることが考えられるが、この場合は、シール剤を硬化させるために筺体全体を加熱する必要がある。ところが、収納した半導体センサの破損を防止するためにも、筺体を熱処理するのは好ましくない。
【0008】
なお、特許文献1には、実施形態の説明の最後に、ベース板と温度特性調整手段の性温度係数抵抗およびサーミスタとの間に形成される隙間に、オイルコンパウンドを介在させて、出力電圧特性を向上させる旨が記載されている。しかしながら、この場合のオイルコンパウドはあくまでも熱伝導部材として用いられるもので、熱伝導性に優れた放熱用オイルコンパウンドであると思われる。したがって、上記オイルコンパウンドは、筺体のシールを積極的に行おうとするものではない。
【0009】
そこで、本発明は、筺体に熱処理を施すことなく、簡単かつ精度の高い方法で筺体をシールすることができるセンサ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、半導体センサを収容する筐体を備え、当該筐体のベースとケースとの間をシール部材で密封するセンサ装置において、前記シール部材としてシール用オイルコンパウンドを用い、当該シール用オイルコンパウンドを前記筐体のベースとケースのいずれか一方の結合部に塗布した状態で、前記ベースと前記ケースとを結合したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセンサ装置によれば、ベースとケースの結合部を密封するシール部材として、粘度が略一定に保たれるシール用オイルコンパウンドを用いている。したがって、このシール用オイルコンパウンドをベースとケースのいずれか一方の結合部に塗布する際に、その塗布を人の手によって行ったとしても塗布状態を一定に保ち易くできる。さらに、シール用オイルコンパウンドは熱可塑性ではないため、塗布後にセンサ装置を熱処理する必要がなく、内蔵した半導体センサの破損を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態にかかるセンサ装置の斜視図である。
【図2】図1に示すセンサ装置のケースを取り外した平面図である。
【図3】図1のA−A線に沿った断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿った断面図である。
【図5】図1に示すセンサ装置のベースの結合部にシール用オイルコンパウンドを塗布する工程を示す断面図である。
【図6】シール用オイルコンパウンドを塗布した状態を示す図2に対応した平面図である。
【図7】シール用オイルコンパウンドを介してベースとケースとを結合した図3に対応した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1〜図7は、本発明の一実施形態にかかるセンサ装置としての半導体圧力センサ(以下、圧力センサという)1を示した図である。この圧力センサ1は、半導体センサとしての圧力センサモジュール2が、ベース3とケース4とからなるハウジング(筺体)5内に収納されて、スタンドアローン型として構成されている。なお、本実施形態を説明するにあたって、便宜上、図1中に示す矢印方向に従って前後(Fw・Rr)、上下(Up・Lw)、左右(Ls・Rs)方向を説明するものとする。
【0015】
圧力センサモジュール2は、本実施形態では水圧を直接検出するタイプのもので、図4に示すように、センサ本体部21の底面部から水圧導入部22が突設されている。センサ本体部21内には、圧力センサチップや集積回路チップなどが内蔵されており、水圧導入部22から導入した水圧を検出して、それを電気信号として取り出すようになっている。
【0016】
図2に示すように、圧力センサモジュール2は3本の端子23、24、25を備えており、1つの端子23は電源電圧端子、もう1つの端子24はグランド端子、残りの端子25は出力電圧端子となっている。これらの各端子23、24、25は、ハウジング5の一端部に形成されるコネクタ6内に臨んでいる。
【0017】
ベース3は、合成樹脂などの絶縁材料で略矩形状に形成されており、その上面中央部にはセンサ本体部21を嵌合する凹設部31が形成されている。この凹設部31の前後両側には、それぞれ前棚部32、後棚部33が隆起しており、前棚部32に各端子23、24、25の根本部分が加締められている。
【0018】
また、センサ本体部21の前側に1本のアンカー片26が各端子23、24、25と並んで突設されているとともに、後側に4本のアンカー片26が横並び状態で突設されている。そして、前側のアンカー片26を前棚部32に加締めつつ、後側の各アンカー片26を後棚部33に加締めることにより、各端子23、24、25の加締めも手伝ってセンター本体部21がベース3に固定される。
【0019】
凹設部31がセンサ本体部21の水圧導入部22に対応する位置に、この水圧導入部22を挿入する嵌合凹部34が形成され、また、ベース3の底部から嵌合凹部34を含むようにして圧力導入ポート35が突設されている。この圧力導入ポート35には、嵌合凹部34に連通する連通孔35aが形成されている。圧力導入ポート35から取り込まれた水圧は、連通孔35aおよび水圧導入部22を介してセンサ本体部21に作用する。なお、水圧導入部22内にはオイルが封入されており、このオイルを介して水圧がセンサ本体部21に作用するようになっている。
【0020】
嵌合凹部34の内周には、押えリング36で抜止めされたOリング37が配置されており、水圧導入部22をOリング37の内周に圧入することにより、水圧導入部22とベース3との間がシールされる。また、ベース3の左右両側には取付穴38aが設けられたフランジ部38が突設されている。
【0021】
一方、ケース4は、ベース3と同様に合成樹脂などの絶縁材料で形成されている。そして、そのケース4は、ベース3の外側形状に沿った略矩形状に形成され、ベース3の上側を覆うようになっている。また、ケース4は、外周に側壁が設けられており、断面が扁平な逆U字状に形成されている。
【0022】
そして、ベース3は上端部が結合部39となり、ケース4は下端部が結合部41となって、それぞれの結合部39、41どうしが結合されることにより密封されたハウジング5が構成される。
【0023】
ベース3の結合部39は、図2に示すように、ベース3の外周縁に沿った形状となり、その平面形状はコネクタ6部分で開放されるU字状となっている。また、結合部39の縦断面は、図3および図4に示すように、側壁の肉厚方向中央部に幅狭の突出部39aが上方に向かって連続して突設された形状となっている。
【0024】
一方、ケース4の結合部41は、ベース3の結合部39に合致して、ベース3の結合部39と同様に平面形状がコネクタ6部分で開放されるU字状となっている。また、結合部41の縦断面は、側壁の肉厚方向中央部に結合部39の突出部39aと略等しい幅となる凹溝41aが連続して形成されている。
【0025】
そして、ベース3側の突出部39aをケース4側の凹溝41aに挿入してほぞ組することにより、ベース3とケース4とが互いに結合される。なお、ベース3とケース4とを結合したハウジング5は、コネクタ6部分で外方に開放されるが、このコネクタ6が相手側のコネクタに差し込まれることにより、ハウジング5内部の密封性は確保される。
【0026】
ところで、ベース3とケース4のそれぞれの結合部39、41を相互に結合する際、それら両者間にシール部材を介在させることにより、ハウジング5内部の密封性が向上する。
【0027】
ここで、本実施形態では、図5に示すように、前記シール部材として粘度が略一定に保たれるシール用オイルコンパウンド(以下、オイルコンパウンドという)10を用いている。そして、このオイルコンパウンド10をベース3の結合部39に塗布した状態で、ベース3とケース4とを結合するようにしている。なお、オイルコンパウンド10とは、シリコーンオイルを基油に例えばシリカやアルミナなどの粉末を配合したものである。広い温度範囲にわたって熱酸化安定性、電気特性、撥水性などに優れ、電気絶縁、シール、放熱、撥水などの目的に使用されている。
【0028】
図6は、結合部39にオイルコンパウンド10を塗布した状態を示した図であり、図7は、結合部39と結合部41との間にオイルコンパウンド10が介在されている状態を示した図である。また、図5は、圧力センサ1のシール方法を説明するもので、オイルコンパウンド10の塗布工程を示した図である。
【0029】
この塗布工程では、まず、オイルコンパウンド10を槽11に溜めておく。そして、結合部39が下端に位置するようにベース3を天地逆にし、この状態で結合部39を槽11に溜めたオイルコンパウンド10に接触させる。
【0030】
すると、図6に示すように、オイルコンパウド10が突出部39aの先端部に塗布された状態となる。このとき、オイルコンパウンド10は粘度が略一定に保たれるので、突出部39aへの塗布が均一化し易くなる。なお、この塗布工程は、ベース3に圧力センサモジュール2を組み付けた状態で行われる。
【0031】
そして、このようにオイルコンパウンド10が塗布された突出部39aを、図7に示すように、結合部41の凹溝41aに挿入することにより、オイルコンパウンド10は突出部39aと凹溝41aとの間の僅かな隙間全体に行き渡る。
【0032】
したがって、ベース3とケース4とを結合した後は、オイルコンパウンド10がシール部材となって、水が結合部39、41間からハウジング5内に浸入するのを防ぐことができ、ハウジング5の密封性を確保することができる。また、本実施形態で用いるオイルコンパウンド10はシール用であり、圧力センサ1の通常の使用環境下では状態が変化せず、そのシール性が維持される。
【0033】
以上、説明してきたように、本実施形態の圧力センサ1では、ベース3とケース4との結合部39、41をシール用オイルコンパウンド10でシールしている。したがって、このオイルコンパウンド10をベース3の結合部39に塗布する際、つまり、本実施形態では、結合部39を人の手によって槽11に溜めたオイルコンパウンド10に接触させたとしても、塗布状態を一定に保ち易くできる。
【0034】
また、オイルコンパウンド10は熱可塑性ではないため、塗布後に圧力センサ1を熱処理する必要がなく、内蔵した圧力センサモジュール2の破損を防止できる。
【0035】
さらに、本実施形態によれば、オイルコンパウンド10を用いた圧力センサ1のシール方法として、槽11に溜めたオイルコンパウンド10にベース3の結合部39を接触させて塗布するようにしている。これにより、オイルコンパウンド10の粘度が略一定に保たれていることと相俟って、結合部39(突出部39a)全体にオイルコンパウンド10を簡単かつ均一に塗布し易くできる。
【0036】
なお、本実施形態ではベース3側に突出部39aを設けたので、ベース3の結合部39にオイルコンパウンド10を塗布する場合を示している。しかしながら、突出部と凹溝を逆にして、ケース4側に突出部を形成し、ベース3側に凹溝を形成してもよく、この場合は、ケース3側の結合部41にオイルコンパウンド10を塗布すればよい。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。
【0038】
例えば、センサ装置は圧力センサに限ることは無く、その他の物理量を検出するセンサ装置(例えば、加速度センサなど)であっても、本発明を適用することができる。
【0039】
また、ベースおよびケースの結合部は、突出部および凹溝に限らず、それ以外の結合部構造であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 半導体圧力センサ(センサ装置)
2 圧力センサモジュール(半導体センサ)
3 ベース
39 結合部
4 ケース
41 結合部
5 ハウジング(筐体)
10 シール用オイルコンパウンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体センサを収容する筐体を備え、当該筐体のベースとケースとの間をシール部材で密封するセンサ装置において、
前記シール部材としてシール用オイルコンパウンドを用い、当該シール用オイルコンパウンドを前記筐体のベースとケースのいずれか一方の結合部に塗布した状態で、前記ベースと前記ケースとを結合したことを特徴とするセンサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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