説明

センシング無線端末

【課題】消費電力を抑えつつ、緊急時に機を逃す可能性を低くすることができる。
【解決手段】センサ部11は、少なくとも2つのセンシングモードを有する。無線通信部14は、センサ部11でセンシングされた信号に対応するセンシングデータを他の端末に無線で送信するとともに、他の端末から送信される制御データを受信する。制御部13は、センサ部11が有するセンシングモードのうち、2つのセンシングモードを比較したときに、相対的にセンシング間隔が長いモードを第1のモードと定義し、相対的にセンシング間隔が短いモードを第2のモードと定義するとき、第1のモードから第2のモードへの移行の要否については、センサ部でセンシングされた信号に基づいて判定するとともに、第2のモードから第1のモードへの移行の要否については、無線通信部14が受信した制御データに基づいて判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシング無線端末に関する。
【背景技術】
【0002】
医療・ヘルスケア分野では、各種センサを備えた端末を用いて人体表面または体内から生体データを収集し、端末が収集した生体データを蓄積装置に転送して蓄積することで、蓄積装置が蓄積した生体データを健康管理や、病気の診断や、治療などに役立てようとする取り組みが盛んに進められている。このような用途では、生体データを転送するために端末と蓄積装置との間を有線ケーブルでつなぐと行動の自由が制限されてしまうため、無線通信で生体データを転送するようにし、さらに、端末を電池で駆動させるようにし、端末を自由に持ち歩くことができるようにすることが望ましい。このようなニーズは、医療分野、特に植込み型医療機器(IMD、Implantable Medical Devices)ではより大きい。
【0003】
また、植込み型医療機器は、一般に電力を電池から得て動作する。従って、電池が消耗し電圧が低下した場合には電池交換が必要となる。植込み型医療機器の電池交換には手術が必要であり、患者への負担が大きく感染症等の副作用も発生するため、電池の消耗は極力避けたいとの要望がある。
【0004】
また、植込み型医療機器は、一般的にセンサが緊急情報を検出し、検出した緊急情報の緊急度に応じて緊急内容の伝達先や伝達方法を変更する。また、植込み型医療機器は、センサが緊急情報を検出した場合、その後、生体データを蓄積装置に転送し続けていた。この場合、電池の消費が激しいため、生体データを転送し続ける動作モードと、生体データの転送を停止する動作モードとの2つのモードを切り換える植込み型医療機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−102362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、生体データを転送し続ける動作モードから、生体データの転送を停止する動作モードに切り換える判定と、生体データの転送を停止する動作モードから、生体データを転送し続ける動作モードに切り換える判定とのどちらの判定も、植込み型医療機器側で行うか、蓄積装置側で行うかのどちらか一方が行っている。
【0007】
そのため、動作モードの切り換え判定を植込み型医療機器側で行う場合には、植込み型医療機器が備える電池の消耗が早くなるという問題がある。また、動作モードの切り換え判定を蓄積装置側で行う場合には、植込み型医療機器から生体データを受信した後に動作モードの切り替え判定を行うため、緊急時に機を逃してしまう可能性があるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、消費電力を抑えつつ、緊急時に機を逃す可能性を低くすることができるセンシング無線端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、少なくとも2つのセンシングモードを有するセンサ部と、前記センサ部でセンシングされた信号に対応するセンシングデータを他の端末に無線で送信するとともに、前記他の端末から送信される制御データを受信する無線通信部と、前記センサ部が有するセンシングモードのうち、2つのセンシングモードを比較したときに、相対的にセンシング間隔が長いモードを第1のモードと定義し、相対的にセンシング間隔が短いモードを第2のモードと定義するとき、前記第1のモードから前記第2のモードへの移行の要否については、前記センサ部でセンシングされた前記信号に基づいて判定するとともに、前記第2のモードから前記第1のモードへの移行の要否については、前記無線通信部が受信した前記制御データに基づいて判定する制御部と、を有することを特徴とするセンシング無線端末である。
【0010】
また、本発明のセンシング無線端末において、前記制御部は、前記第1のモードから前記第2のモードへ移行すると判定した場合、前記無線通信部を制御し、前記他の端末が備える通信部を起動させるための信号を当該他の端末に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、センサ部は少なくとも2つのセンシングモードを有する。また、無線通信部は、センサ部でセンシングされた信号に対応するセンシングデータを他の端末に無線で送信するとともに、他の端末から送信される制御データを受信する。また、センサ部が有するセンシングモードのうち、2つのセンシングモードを比較したときに、相対的にセンシング間隔が長いモードを第1のモードと定義し、相対的にセンシング間隔が短いモードを第2のモードと定義するとき、制御部は、第1のモードから第2のモードへの移行の要否については、センサ部でセンシングされた信号に基づいて判定するとともに、第2のモードから第1のモードへの移行の要否については、無線通信部が受信した制御データに基づいて判定する。
【0012】
これにより、相対的にセンシング間隔が長いモードから相対的にセンシング間隔が短いモードへの切り替えは、センサ部がセンシングした信号に基づいて判定部がすることができるため、より迅速に相対的にセンシング間隔が短いモードへ切り換えることができる。また、相対的にセンシング間隔が短いモードから相対的にセンシング間隔が長いモードへの切り替えは、無線通信部が受信した制御データに基づいて判定するため、センシングした信号を解析する必要が無く、消費電力をより低減することができる。従って、消費電力を抑えつつ、緊急時に機を逃す可能性を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態における生体データ監視システムの構成を示した概略図である。
【図2】本実施形態における植込み型医療機器の構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態における無線通信端末の構成を示したブロック図である。
【図4】本実施形態における無線通信端末が概略判定処理を行う際のデータの流れを示した概略図である。
【図5】本実施形態における植込み型医療機器と無線通信端末との動作手順を示したシーケンス図である。
【図6】本実施形態における植込み型医療機器の動作手順を示したフローチャートである。
【図7】本実施形態における無線通信端末の動作手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図を参照しながら説明する。図1は、本実施形態における生体データ監視システムの構成を示した概略図である。生体データ監視システム1は、植込み型医療機器10(センシング無線端末)と、無線通信端末20(他の端末)とを備える。本実施形態では、植込み型医療機器10と無線通信端末20とは、1対1での無線通信を行う。
【0015】
植込み型医療機器10は、人の体内に植込められ、各種センサを使って血圧、脈拍、心電、心拍、血中酸素濃度、体温、尿糖、血糖等の生体データや、植込み型医療機器10が備える各部の状態を示す機器状態データを取得する。本実施形態では、生体データと、機器状態データとを詳細データ(センシングデータ)とする。
【0016】
また、植込み型医療機器10は、通常モード(第1のモード)と緊急モード(第2のモード)との2つのモードのうち、いずれかのモードで動作する。通常モードでは、植込み型医療機器10は、例えば1日に1回または12時間に1回ごとに詳細データを取得する。また、通常モードでは、植込み型医療機器10は、無線通信端末20に対して詳細データを送信しない。緊急モードでは、植込み型医療機器10は、例えば5秒ごとに詳細データを取得する。また、緊急モードでは、植込み型医療機器10は、無線通信端末20に対して詳細データを送信する。このように、通常モードにおけるセンシング間隔は、緊急モードにおけるセンシング間隔よりも相対的に長い。
【0017】
また、植込み型医療機器10は、取得した詳細データに基づいて、植込み型医療機器10の動作モードを通常モードから緊急モードに変更するか否かを判定する緊急度判定処理を行う。そして、植込み型医療機器10は、動作モードを通常モードから緊急モードに変更すると判定した場合、動作モードを緊急モードに変更し、緊急モードに対応した処理を行う。具体的には、植込み型医療機器10は、10秒毎に詳細データを取得する。また、植込み型医療機器10は、無線通信端末20の無線インターフェース(他の端末が備える通信部)を起動させるための信号であるRF Wake UP信号を無線通信端末20に対して送信し、その後、無線通信端末20に対して詳細データを送信する。
【0018】
また、植込み型医療機器10は、無線通信端末20から、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更する指示である測定モード変更信号を受信した場合、動作モードを緊急モードから通常モードに変更し、通常モードに対応した処理を行う。具体的には、植込み型医療機器10は、1分ごとに詳細データを取得する。また、植込み型医療機器10は、無線通信端末20への詳細データの送信を停止する。また、植込み型医療機器10は、無線通信端末20から、無線通信部の動作の停止を指示する信号であるPower Down信号を受信した場合、無線通信部の動作を停止する。
【0019】
無線通信端末20は、植込み型医療機器10から送信されたRF Wake UP信号を受信した場合、無線通信インターフェースを起動させ、詳細データを受信する準備を行う。また、無線通信端末20は、無線通信インターフェースを起動後、植込み型医療機器10から送信された詳細データを受信し、記憶部に記憶する。
【0020】
また、無線通信端末20は、受信した詳細データに基づいて、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更するか否かを判定する概略判定処理を行う。概略判定処理の詳細については後述する。そして、無線通信端末20は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、緊急モードから通常モードへの変更を指示する信号であるデータ測定モード変更信号を送信する。また、無線通信端末20は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、植込み型医療機器10に対して、植込み型医療機器10の無線通信部の動作の停止を指示する信号であるPower Down信号を送信する。
【0021】
次に、植込み型医療機器10の構成について説明する。図2は、本実施形態における植込み型医療機器10の構成を示したブロック図である。図示する例では、植込み型医療機器10は、センサ部11と、緊急度判定部12と、制御部13と、無線通信部14と、アンテナ15と、Power Down検出部16とを備える。
【0022】
センサ部11は、血圧、脈拍、心電、心拍、血中酸素濃度、体温、尿糖、血糖等をセンシングして生体データを取得し、緊急度判定部12に対して出力する。また、センサ部11は、植込み型医療機器10が備える各部の状態をセンシングして機器状態データを取得し、緊急度判定部12に対して出力する。なお、センサ部11は、複数のセンシングモードを有し、植込み型医療機器10の動作モードに応じて、センシング間隔が異なる。具体的には、植込み型医療機器10の動作モードが通常モードである場合、センサ部11は、1分ごとに詳細データを取得する。また、植込み型医療機器10の動作モードが緊急モードである場合、10秒毎に詳細データを取得する。
【0023】
緊急度判定部12は、センサ部11から入力された詳細データに基づいて、イベント(生体データの異常や、機器状態データの異常)が発生した場合、イベントを検出する。また、緊急度判定部12は、イベントを検出した場合、植込み型医療機器10の動作モードを、通常モードから緊急モードに切り換えるか否かを判定する。例えば、緊急度判定部12は、検出したイベントが軽度の異常であれば緊急モードに切り換えないと判定し、検出したイベントが重度の異常であれば緊急モードに切り換えると判定する。また、緊急度判定部12は、植込み型医療機器10が緊急モードで動作している場合、センサ部11から入力された詳細データを、無線通信部14に対して出力する。
【0024】
制御部13は、動作モードに応じた動作を行うように、植込み型医療機器10が備える各部の制御を行う。具体的には、制御部13は、緊急度判定部12が動作モードを緊急モードに切り換えると判定した場合、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードに切り換え、無線通信部14を起動させる。その後、制御部13は、無線通信部14を制御し、RF Wake UP信号を無線通信端末20に対して送信する。また、制御部13は、無線通信端末20から測定モード変更信号を受信した場合、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更する。また、制御部13は、Power Down検出部16からPower Down信号を入力された場合、無線通信部14の動作を停止させる。
【0025】
無線通信部14は、植込み型医療機器10が緊急モードで動作している場合、アンテナ15を介して、緊急度判定部12から入力された詳細データを無線通信端末20に対して無線送信する。また、無線通信部14は、アンテナ15を介して、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更する指示である測定モード変更信号(制御データ)を無線通信端末20から受信する。Power Down検出部16は、無線通信端末20から送信されるPower Down信号を受信(検出)する。また、Power Down検出部16は、Power Down信号を受信した場合、受信したPower Down信号を制御部13に対して出力する。
【0026】
なお、請求項に係る制御部は、例えば、緊急度判定部12および制御部13に対応する。
【0027】
次に、無線通信端末20の構成について説明する。図3は、本実施形態における無線通信端末20の構成を示したブロック図である。図示する例では、無線通信端末20は、アンテナ21と、RF Wake UP検出部22と、制御部23と、無線インターフェース24と、記憶部25と、表示部26と、音出力部27とを備える。
【0028】
RF Wake UP検出部22は、アンテナ21を介して、植込み型医療機器10から送信されるRF Wake UP信号を受信する。また、RF Wake UP検出部22は、RF Wake UP信号を受信した場合、受信したRF Wake UP信号を制御部23に対して出力する。
【0029】
制御部23は、無線通信端末20が備える各部の制御を行う。また、制御部23は、RF Wake UP検出部22からRF Wake UP信号を入力された場合、無線インターフェース24を起動させる。また、制御部23は、無線インターフェース24から入力された詳細データに基づいて、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更するか否かを判定する概略判定処理を行う。そして、無線通信端末20は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、無線インターフェース24を制御し、緊急モードから通常モードへの変更を指示する信号であるデータ測定モード変更信号を植込み型医療機器10に対して送信する。
【0030】
また、無線通信端末20は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10の無線通信部14の動作の停止を指示する信号であるPower Down信号を植込み型医療機器10に対して送信する。
【0031】
また、制御部23は、詳細データに基づいた内容を表示部26に表示させ、詳細データに基づいた音を音出力部27に出力させる。例えば、制御部23は、取得した詳細データが緊急度の高いデータである場合、記憶部25に予め記録されている表示データ(例えば、助けてほしいことを示す警告情報や、緊急情報や、患者の状態や、患者の容態や、緊急連絡先(自宅の連絡先または病院の連絡先)など)や、詳細データに基づいた心電図などを表示部26に表示させ、記憶部25に予め記憶されている音データ(例えば、助けを求める音声信号や警報音など)を周期的に分割して音出力部27に出力させる。
【0032】
無線インターフェース24は、制御部23によって起動されると、アンテナ21を介して、植込み型医療機器10から送信された詳細データを受信し、受信した詳細データを制御部23に対して出力する。また、無線インターフェース24は、制御部23の制御に従って、データ測定モード変更信号およびPower Down信号を植込み型医療機器10に対して送信する。
【0033】
記憶部25は、植込み型医療機器10から送信された詳細データを記憶する。また、記憶部25は、表示データや音データを記憶する。表示部26は、液晶ディスプレイ(LCD、Liquid Crystal Display)などの表示装置であり、制御部23の制御に基づいて、詳細データに対応する内容を表示する。音出力部27は、スピーカーなどであり、制御部23の制御に基づいて、詳細データに対応する音を出力する。
【0034】
次に、概略判定処理について説明する。図4は、本実施形態における無線通信端末20の制御部23が概略判定処理を行う際のデータの流れを示した概略図である。なお、概略判定処理は、植込み型医療機器10から送信される詳細データに基づいて、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更するか否かを判定する処理である。緊急モードから通常モードに変更する条件としては、詳細データに異常なデータが含まれない場合(異常を検出しない場合)である。従って、制御部23は、詳細データを解析し、詳細データの異常を検出した場合には緊急モードから通常モードに変更しないと判定し、詳細データの異常を検出しない場合には緊急モードから通常モードに変更すると判定する。
【0035】
以下、詳細データが心筋活動電位である場合を例として、無線通信端末20の制御部23が、詳細データを解析し、詳細データの異常を検出する方法について説明する。図示するように、植込み型医療機器10のセンサ部11は、アナログ信号として取得した心筋活動電位をAD変換し、デジタル信号の心筋活動電位を所定の時間分纏めた生体情報データブロックを生成する。そして、植込み型医療機器10の無線通信部14は、生体情報データブロックを無線通信端末20に対して送信する。無線通信端末20の無線インターフェース24は、植込み型医療機器10から送信された生体情報データブロックを受信し、制御部23に対して出力する。また、制御部23は、無線インターフェース24から入力された生体データブロックに基づいて、異常の検出を行う。
【0036】
異常の検出方法としては、例えば特開2009−247812に示されているように、異常な心筋活動電位が発生したときに迅速な対応が可能なように、時間軸に関して隣り合う心筋活動電位の波形のズレが所定の範囲を超えて2サイクル以上連続して発生すると、異常を検出するという方法がある。なお、この方法は、入力された心筋活動電位を1サイクル毎に同一の基点に合わせるサイクル基点同一化アルゴリズムと、時間軸に関して連続する少なくとも2サイクル以上の心筋活動電位の波形を同時に重なり表示する重なり表示アルゴリズムを含んでいるので、波形の変化の把握が容易である。また、心筋活動電位の波長が所定の範囲を超えて変わった場合に、変化した後の心筋活動電位の波長が変化する前の心筋活動電位の波長と同じ波長になるように調整する、波長調整アルゴリズムを含んでいるので、波長の変化による心筋活動電位の波形のズレを異常な波形と見誤ることが無くなる。
【0037】
また、制御部23は、概略判定処理を行った際に、時間軸に関して隣り合う心筋活動電位の波形のズレが所定の範囲を超えて2サイクル以上連続して発生したときに警報を発するように音出力部27を制御することにより、体動などによるアーキテクト(通常2サイクル以上連続して同じような波形が発生することがない)の発生による誤警報を無くし、異常な波形が発生したときにのみ警報を発することができる。また、このように警報を発した場合、ユーザーは心筋活動電位の異常に対して迅速に対応することが可能であり、その異常がどの様な心血管機能の異常に起因するものかを素早く判断することができる。
【0038】
次に、本実施形態における植込み型医療機器10と無線通信端末20との動作手順について説明する。図5は、本実施形態における植込み型医療機器10と無線通信端末20との動作手順を示したシーケンス図である。
【0039】
(ステップS101)植込み型医療機器10のセンサ部11は、詳細データ取得し、取得した詳細データを緊急度判定部12に対して出力する。緊急度判定部12は、センサ部11から入力された詳細データに基づいてイベントを検出する。
(ステップS102)緊急度判定部12は、イベントを検出した場合、植込み型医療機器10の動作モードを、通常モードから緊急モードに切り換えるか否かを判定する。そして、緊急度判定部12が、動作モードを緊急モードに切り換えると判定した場合、制御部13は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードに切り換え、無線通信部14を起動させる。その後、制御部13は、無線通信部14を制御し、RF Wake UP信号を無線通信端末20に対して送信する。
【0040】
(ステップS103)無線通信端末20のRF Wake UP検出部22は、植込み型医療機器10から送信されたRF Wake UP信号を、アンテナ21を介して受信し、受信したRF Wake UP信号を制御部23に対して出力する。制御部23は、RF Wake UP検出部22からRF Wake UP信号を入力された場合、無線インターフェース24を起動させる。
(ステップS104)無線通信端末20の制御部23は、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してセンシング詳細データ要求信号を送信する。
【0041】
(ステップS105)植込み型医療機器10の無線通信部14は、無線通信端末20から送信されたセンシング詳細データ要求信号を受信する。
(ステップS106)植込み型医療機器10の制御部13は、無線通信部14がセンシング詳細データ要求信号を受信した場合、無線通信部14を制御し、無線通信端末20に対してセンサ部11が検出した詳細データを送信する。
【0042】
(ステップS107)無線通信端末20の無線インターフェース24は、植込み型医療機器10から送信された詳細データを受信する。また、無線通信端末20の制御部23は、無線インターフェース24が受信した詳細データに基づいて概略判定を行い、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更するか否かを判定する。また、無線通信端末20の制御部23は、概略判定の判定結果を表示部26に表示させる。
(ステップS108)無線通信端末20の制御部23は、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してデータ測定モード確認要求メッセージを送信する。
【0043】
(ステップS109)植込み型医療機器10の無線通信部14は、無線通信端末20から送信されたデータ測定モード確認要求メッセージを受信する。
(ステップS110)植込み型医療機器10の制御部13は、無線通信部14を制御し、無線通信端末20に対して現在の動作モードを示すデータ測定モード信号を送信する。
【0044】
(ステップS111)無線通信端末20の無線インターフェース24は、植込み型医療機器10から送信されたデータ測定モード信号を受信する。
(ステップS112)無線通信端末20の制御部23は、ステップS111で受信したデータ測定モード信号で特定される動作モードが緊急モードであり、ステップS107の処理で植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードへの変更を指示する信号であるデータ測定モード変更信号を、植込み型医療機器10に対して送信する。
【0045】
(ステップS113)植込み型医療機器10の無線通信部14は、無線通信端末20から送信されたデータ測定モード変更信号を受信する。
(ステップS114)植込み型医療機器10の制御部13は、無線通信部14がデータ測定モード変更信号を受信した場合、動作モードを緊急モードから通常モードに変更し、通常モードに対応した処理を行う。また、制御部13は、無線通信部14を制御し、動作モードを通常モードに変更したことを示す信号である測定モード変更確認信号を、無線通信端末20に対して送信する。
【0046】
(ステップS115)無線通信端末20の無線インターフェース24は、植込み型医療機器10から送信された測定モード変更確認信号を受信する。
(ステップS116)無線通信端末20の制御部23は、植込み型医療機器10の動作モードは通常モードに変更されたため、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してPower Down信号を送信する。
【0047】
(ステップS117)植込み型医療機器10のPower Down検出部16は、無線通信端末20から送信されたPower Down信号を受信し、受信したPower Down信号を制御部13に対して出力する。植込み型医療機器10の制御部13は、Power Down信号を入力された場合、無線通信部14の動作を停止させる。
【0048】
次に、植込み型医療機器10の動作手順について説明する。図6は、本実施形態における植込み型医療機器10の動作手順を示したフローチャートである。
【0049】
(ステップS201)センサ部11は、詳細データを取得し、取得した詳細データを緊急度判定部12に対して出力する。緊急度判定部12は、センサ部11から入力された詳細データに基づいてイベントを検出する。また、緊急度判定部12は、イベントを検出した場合、植込み型医療機器10の動作モードを、通常モードから緊急モードに切り換えるか否かを判定する。そして、緊急度判定部12が、動作モードを緊急モードに切り換えると判定した場合、制御部13は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードに切り換え、無線通信部14を起動させる。その後、ステップS202の処理に進む。
(ステップS202)制御部13は、無線通信部14を制御し、RF Wake UP信号を無線通信端末20に対して送信する。その後、ステップS203の処理に進む。
【0050】
(ステップS203)制御部13は、無線通信部14がセンシング詳細データ要求信号を受信した場合、無線通信部14を制御し、無線通信端末20に対してセンサ部11が検出した詳細データを送信する。その後、ステップS204の処理に進む。
(ステップS204)制御部13は、無線通信部14がデータ測定モード確認要求メッセージを受信した場合、無線通信部14を制御し、無線通信端末20に対して現在のデータ測定モード状態を示すデータ測定モード信号を送信する。その後、ステップS205の処理に進む。
【0051】
(ステップS205)制御部13は、無線通信部14がデータ測定モード変更信号を受信した場合、動作モードを緊急モードから通常モードに変更し、通常モードに対応した処理を行う。また、制御部13は、無線通信部14を制御し、動作モードを通常モードに変更したことを示す信号である測定モード変更確認信号を、無線通信端末20に対して送信する。その後、ステップS206の処理に進む。
(ステップS206)制御部13は、Power Down検出部16がPower Down信号を受信した場合、無線通信部14の動作を停止させる。その後、処理を終了する。
【0052】
次に、無線通信端末20の動作手順について説明する。図7は、本実施形態における無線通信端末20の動作手順を示したフローチャートである。
【0053】
(ステップS301)制御部23は、RF Wake UP検出部22がRF Wake UP信号を受信した場合、無線インターフェース24を起動させる。その後、ステップS302の処理に進む。
(ステップS302)制御部23は、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してセンシング詳細データ要求信号を送信する。その後、ステップS303の処理に進む。
【0054】
(ステップS303)制御部23は、無線インターフェース24が詳細データを受信した場合、詳細データに基づいて概略判定を行い、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更するか否かを判定する。また、制御部23は、概略判定の判定結果を表示部26に表示させる。その後、ステップS304の処理に進む。
(ステップS304)制御部23は、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してデータ測定モード確認要求メッセージを送信する。その後、ステップS305の処理に進む。
【0055】
(ステップS305)制御部23は、無線インターフェース24がデータ測定モード信号を受信した場合、受信したデータ測定モード信号で特定される動作モードが緊急モードであり、ステップS303の処理で植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに変更すると判定した場合、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードへの変更を指示する信号であるデータ測定モード変更信号を、植込み型医療機器10に対して送信する。その後、ステップS306の処理に進む。
【0056】
(ステップS306)制御部23は、無線インターフェース24が測定モード変更確認信号を受信した場合、無線インターフェース24を制御し、植込み型医療機器10に対してPower Down信号を送信する。その後、処理を終了する。
【0057】
上述したとおり、本実施形態によれば、植込み型医療機器10は、データの取得間隔が長い通常モードと、データの取得間隔が短い緊急モードとの2つのモードとのいずれかのモードで動作する。通常モードから緊急モードへの切り替えの判定は、植込み型医療機器10が行う。これにより、例えば、植込み型医療機器10が緊急度の高いイベントを検出した場合、植込み型医療機器10が通常モードから緊急モードへの切り替えの判定を行うため、無線通信端末20が通常モードから緊急モードへの切り替えの判定を行う場合と比較し、より迅速に緊急モードに切り換えることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードへ切り換える判定は、無線通信端末20が行う。これにより、植込み型医療機器10は、緊急モードから通常モードへの切り替えの判定を行う必要が無いため、植込み型医療機器10が備える電池の消耗をより低減することができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、無線通信端末20は、植込み型医療機器10の動作モードを緊急モードから通常モードに切り換えると判定した場合、植込み型医療機器10に対してPower Down信号を送信する。また、植込み型医療機器10は、Power Down信号を受信した場合、無線通信部14の動作を停止させる。これにより、植込み型医療機器10は、詳細データを無線通信端末20に対して送信しない場合には、無線通信部14を停止させることができるため、植込み型医療機器10が備える電池の消耗をさらに低減させることができる。
【0060】
以上、この発明の一実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。例えば、上述した実施形態では植込み型医療機器10と無線端末装置20とは1対1との関係で無線通信を行っているがこれに限らない。例えば、植込み型医療機器10と無線端末装置20とは、多対多の関係で無線通信を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1・・・生体データ監視システム、10・・・植込み型医療機器、11・・・センサ部、12・・・緊急度判定部、13,23・・・制御部、14・・・無線通信部、15,21・・・アンテナ、16・・・Power Down検出部、20・・・無線通信端末、22・・・RF Wake UP検出部、24・・・無線インターフェース、25・・・記憶部、26・・表示部、27・・・音出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのセンシングモードを有するセンサ部と、
前記センサ部でセンシングされた信号に対応するセンシングデータを他の端末に無線で送信するとともに、前記他の端末から送信される制御データを受信する無線通信部と、
前記センサ部が有するセンシングモードのうち、2つのセンシングモードを比較したときに、相対的にセンシング間隔が長いモードを第1のモードと定義し、相対的にセンシング間隔が短いモードを第2のモードと定義するとき、前記第1のモードから前記第2のモードへの移行の要否については、前記センサ部でセンシングされた前記信号に基づいて判定するとともに、前記第2のモードから前記第1のモードへの移行の要否については、前記無線通信部が受信した前記制御データに基づいて判定する制御部と、
を有することを特徴とするセンシング無線端末。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1のモードから前記第2のモードへ移行すると判定した場合、前記無線通信部を制御し、前記他の端末が備える通信部を起動させるための信号を当該他の端末に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載のセンシング無線端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254120(P2012−254120A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127552(P2011−127552)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】