説明

ゼオライト複合分離膜及びその製造方法

【課題】担体とゼオライトとを複合化したゼオライト複合分離膜において、欠陥が少なく分離性能の高いゼオライト複合分離膜を提供する。
【解決手段】多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁が、直接又は他の層を介してゼオライト結晶で覆われたゼオライト複合分離膜であって、前記ゼオライト結晶の欠陥部内に、有機高分子またはその炭化物を有することを特徴とするゼオライト複合分離膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゼオライト複合分離膜及びその製造方法に関し、特にエタノール等のアルコールと水とを分離する分離膜として好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトは結晶性アルミノケイ酸塩の総称であり、結晶中に数オングストロームから数十オングストロームの分子サイズの極微小の細孔を持つ、網目状の結晶構造を取っている。この細孔は均一な孔径であるため、特定の大きさの分子を閉じこめたり吸着したりすることができ、分子を大きさにより篩い分ける「分子ふるい」として工業的に広く利用されている。またイオン交換剤、触媒、吸着剤としても利用されている。
【0003】
ゼオライト結晶の分子ふるい効果に着目し、ゼオライトを気体や液体の分離膜として用いることが試みられている。例えば、バイオエタノール燃料はサトウキビやトウモロコシ等の原料を酵母菌で発酵させたアルコールの希薄水溶液からエタノールを分離することにより得られるが、この分離は蒸留により行われ、エタノールは95%濃度以上では水と共沸状態となるため、95%以上の濃度のエタノールは得られない。そのため、更にエタノール濃度を上げるための脱水処理にゼオライト分離膜を用いることが提案されている。
【0004】
ゼオライト結晶は自己焼結性がないため通常の水熱合成条件下では粉体としてしか得られず、膜化は困難であった。しかし、多孔質有機高分子などの担体にゼオライトの種結晶を担持し、該担体にゼオライト結晶の原料となる液を接触させて水熱合成反応を行うことでゼオライト膜を得ることができるようになった。
【0005】
特許文献1には、アルコール選択型分離膜として、プラスチック等の多孔質担体上に固着固定化されたゼオライト膜が開示されている。また特許文献2には、ゼオライトの種結晶を多孔質有機高分子膜に配置したものを種結晶と同種の結晶を生成する原料混合物の中に置いて種結晶を水熱合成反応により成長積層させる、複合膜の製造法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平6−99044号公報
【特許文献2】特開2002−58972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のゼオライト膜の製造工程ではゼオライト膜の熱処理を行うが、ゼオライトと担体との熱膨張率の差や、熱分解成分の燃焼に伴う膨張等により応力が発生し、ゼオライト膜中に割れや欠陥が生じる場合がある。また結晶粒界による欠陥が生じる可能性もある。このような欠陥の径がゼオライト細孔の径に比べて大きい場合は、これらの欠陥を介して気体や液体が透過し、充分な分離性能を得ることが困難となる。
【0008】
そこで本発明は、担体とゼオライトとを複合化したゼオライト複合分離膜において、欠陥が少なく分離性能の高いゼオライト複合分離膜及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁が、直接又は他の層を介してゼオライトで覆われたゼオライト複合分離膜であって、前記ゼオライト結晶の欠陥部内に、有機高分子またはその炭化物を有することを特徴とするゼオライト複合分離膜である(請求項1)。
【0010】
本発明では、ゼオライト結晶の担体として多孔質支持体を用いる。多孔質支持体の表面及び/または多孔質体内部の微小孔内壁は直接又は他の層を介してゼオライト結晶で覆われている。このゼオライト結晶中の割れやピンホール、結晶粒界等を総称して欠陥部と呼ぶ。ゼオライト結晶中に欠陥部があると分離対象となる気体や液体が透過して分離性能が低下するが、この欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を有し、欠陥部を埋めていることで分離性能を高めることができる。
【0011】
前記有機高分子は、シリコーン樹脂及びポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリイミド、ポリアミドイミドから選ばれる1種以上であると好ましい(請求項2)。中でもシリコーン樹脂及びポリビニルアルコールは、水/アルコール分離性を有するため好ましく、これらの樹脂を用いると更に分離性能を高めることができる。
【0012】
前記多孔質支持体は、多孔質ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であると好ましい(請求項3)。PTFEはフッ素樹脂の中でも、弾性、耐熱性、加工性、機械的特性、耐薬品性などに優れ、しかも均一な孔径分布を持つため、多孔質支持体として好ましい。
【0013】
本発明は、さらに、多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁面に種結晶となるゼオライト微粒子を付着させる工程、前記ゼオライト微粒子を付着させた多孔質支持体にゼオライト原料液を接触させて水熱合成を行い、ゼオライト結晶を形成する工程、該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程、を有するゼオライト複合分離膜の製造方法を提供する(請求項4)。ゼオライト結晶を形成した後に、該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させ、欠陥部を埋めることで、分離性能に優れているゼオライト複合分離膜を得ることができる。
【0014】
前記ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程は、該ゼオライトの欠陥部内に有機モノマー又はオリゴマーを吸着させる工程、該有機モノマー又はオリゴマーを重合させて有機高分子とする工程、を有すると好ましい(請求項5)。低分子量である有機モノマー又はオリゴマーは微細な隙間に入り込みやすく、有機高分子をそのまま付着させる場合に比べて、欠陥部をより効率的に埋めることができる。その後モノマー又はオリゴマーを重合させて高分子量化することで、本発明のゼオライト複合分離膜を得ることができる。
【0015】
前記ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程は、該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子を付着させる工程、加熱処理により該有機高分子を炭化させる工程、を有すると好ましい(請求項6)。有機高分子は炭化されると一部が分解して低分子量化して微細な隙間に入り込みやすくなり、欠陥部を効率良く埋めることができる。
【0016】
多孔質支持体は、あらかじめ親水化処理又は金属処理することが好ましい(請求項6)。特に多孔質支持体として多孔質PTFE等のフッ素樹脂を使用する場合、フッ素樹脂とゼオライトとの親和性が少ないためゼオライトと多孔質支持体との密着力が低下して剥がれ等が生じる可能性がある。多孔質支持体を親水化処理又は金属処理すると、多孔質支持体とゼオライトとの親和性を高めることができ、このような現象を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のゼオライト複合分離膜及びゼオライト複合分離膜の製造方法によって、ゼオライト結晶中の欠陥が少なく、分離性能の高いゼオライト複合分離膜を提供することができる。特に、アルコールと水を分離するアルコール脱水処理用の分離膜として好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のゼオライト複合分離膜を図を参照して説明する。図1は、本発明のゼオライト複合分離膜の一例を示す断面模式図である。多孔質支持体1の表面はゼオライト結晶2で覆われている。なお多孔質支持体の表面とは、多孔質支持体を一方の面から見た際に(図1の矢印の方向)外側に露出して見えている部分を言う。ゼオライト結晶2の中には、欠陥部3a、3bがあり、この欠陥部の内部に有機高分子またはその炭化物4を有しており、欠陥部内部を埋めている。
【0019】
図2は、多孔質支持体内部の状態を表す模式図である。多孔質支持体の内部には微小孔5a〜5cがあり、その内壁はゼオライト結晶で覆われている。微小孔5cのように、ゼオライト結晶が孔全体を埋めていても良い。なお微小孔は多孔質支持体の一方の面から他方の面まで連通する連通気孔となっている。微小孔5aの内壁を覆うゼオライト結晶2の中に欠陥部3cがあり、欠陥部3cの内部を有機高分子またはその炭化物4が埋めている。ゼオライト結晶は多孔質支持体の表面のみにあっても良いし、微小孔の内壁表面のみにあっても良い。
【0020】
図3に示すように、ゼオライト結晶2は、他の層6を介して多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁を被覆しても良い。他の層としては、親水化層や金属層が例示される。このような層を設けることで、多孔質支持体とゼオライト結晶との親和性を高めることができる。
【0021】
多孔質支持体としては連通気孔を持ち、ゼオライトを担持可能なものであれば良く、多孔質ステンレス等の多孔質金属、多孔質ガラス、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル等からなる多孔質樹脂、等が使用できる。耐熱性、耐薬品性、機械強度に優れた多孔質フッ素樹脂が好ましく、フッ素樹脂の中でも均一な孔径分布を持つ多孔質PTFEが好ましい。
【0022】
図4は延伸多孔質PTFE膜の内部構造を示す走査電子顕微鏡写真である。図4に示すように、延伸多孔質PTFE膜は、三次元網目状に連結された繊維状組織と結節からなる繊維状骨格からなり、この繊維状骨格に囲まれた多数の微細孔を持つ。微細孔の平均孔径は0.1〜5.0μmである。
【0023】
延伸多孔質PTFE膜は例えば特公昭42−13560号公報に記載の方法により製造することができる。まずPTFEの未焼結粉末に液体潤滑剤を混合し、ラム押し出しによってチューブ状または板状に押し出す。厚みの薄いフィルムまたはシートが所望の場合は圧延ロールによって板状体の圧延を行う。押出圧延工程の後、必要に応じて押出品または圧延品から液体潤滑剤を除去する。こうして得られた押出品または圧延品を一軸方向に延伸すると、未焼結の延伸多孔質PTFE膜が膜状で得られる。未焼結の延伸多孔質PTFE膜を、収縮が起こらないように固定しながらPTFEの融点である327℃以上の温度に加熱して、延伸した構造を焼結・固定すると、強度の高い延伸多孔質PTFE膜が得られる。
【0024】
多孔質支持体は、厚み30〜1000μm、IPAバブルポイントが10〜200kPaのシート状または中空糸であることが好ましい。前記厚み範囲とすることにより多孔質支持体の強度を保持することができる。また、前記バブルポイントの範囲とすることで分離処理能力を確保することができる。
【0025】
多孔質支持体は、外径1〜14mm、内径0.5〜12mm、肉厚0.2〜1.0mm、気孔率60〜80%の中空糸とし、外周面を被分離液の流入面とし、内周面が分離された処理液の流出面として外圧濾過することが好ましい。このような中空糸とすることにより、分離処理能力を効率良く高めることができる。かつ多孔質支持体を延伸PTFEを使用の中空糸とするとコスト、耐久性の点でも好適となる。なお気孔率とは多孔質体の総体積に対する全ての気孔の体積の割合をいい、ASTM D−792に従って基膜の密度を測定することで求めることができる。
【0026】
多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁を覆うゼオライト結晶は、A型、X型、Y型、L型、MFI型、MEL型、LTA型、ANA型、CHA型、FAU型、SOD型、MOR型、ERI型、BEA型、LTL型、DDR型、MER型、PHI型等の公知の是ライト及びこれらを金属イオンでイオン交換したゼオライトが挙げられる。なかでもPHI型、MER型、LTA型、A型、BEA型、CDO型のゼオライトが好ましい。
【0027】
ゼオライト結晶中の欠陥部を埋める有機高分子としては、ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリビニルアルコール等、任意のものを使用できる。特に、水/アルコール分離性を有するシリコーン樹脂、ポリビニルアルコールが好ましい。有機高分子は単数で用いても良いし複数を組み合わせても良い。また上述の有機高分子を高温で処理して炭化させても良い。
【0028】
次に、本発明のゼオライト複合分離膜の製造方法を説明する。前述の多孔質支持体を準備する。多孔質支持体はそのまま用いても良いが、ゼオライトとの親和性を向上するために、親水化処理又は金属処理しておくと好ましい。
【0029】
親水化処理の一例として、多孔質支持体表面にポリビニルアルコール(PVA)を付着させる処理が挙げられる。具体的には、多孔質支持体をアルコールに浸漬して多孔質構造内にアルコールを含浸させた後、PVA水溶液に含浸してアルコールとPVAとを置換し、多孔質支持体にPVAを付着させる。水洗して余分なPVAや残存アルコールを除去した後、PVAを架橋することで親水化処理が完了する。
【0030】
PVA水溶液の濃度は0.4質量%〜1.0%が好ましい。0.4質量%未満であると親水性が不十分となりゼオライトとの親和性が低下する。一方、1.0%を超えると、多孔質支持体の微細孔内が目詰まりしたり、水溶液浸漬時と乾燥時における体積変化が大きくなるという問題がある。
【0031】
PVAの架橋方法は、電子線などの電離性放射線による照射架橋、熱架橋、又は架橋剤を用いた化学架橋などの方法を用いることができる。これらの架橋法のなかでも、架橋剤を用いた化学架橋を行うと多孔質支持体の強度低下が少なく好ましい。
【0032】
多孔質支持体の親水化処理として、金属ナトリウムによる処理を行っても良い。具体的には、金属ナトリウム錯体のテトラヒドロフラン(THF)溶液に多孔質支持体を浸漬して親水化処理する。この他の親水化処理としては大気中または窒素雰囲気中でのプラズマ処理が挙げられる。
【0033】
多孔質支持体とゼオライトとの親和性を高めるために、金属処理を行っても良い。例えばイオン注入、蒸着、スパッタリング、無電界メッキ等が行える。これらの金属処理は公知の方法で行うことができ、多孔質支持体の表面に導入する金属としては、ゼオライトとの親和性の高いアルミニウム、チタン、ニッケル、シリコン、銅、マグネシウムが好ましい。これらの金属処理を行う前に、多孔質支持体にプラズマ処理、電離性放射線の照射処理、アルカリ処理等を行っても良い。
【0034】
次に多孔質支持体の表面及び/又は微小孔内壁面に、種結晶となるゼオライト微粒子を付着させる。ゼオライト微粒子を水に分散させた水分散液を準備し、該水分散液を多孔質支持体に接触させる。例えば、該水分散液を多孔質支持体の透過液流入側から加圧導入、又は該水分散液を透過液流出側から吸引して、透過液流入側の表面及び/又は微小孔内壁面にゼオライトの種結晶を付着させる。
【0035】
種結晶となるゼオライト微粒子は、ゼオライト結晶として列挙したものと同様のものを用いることができる。種結晶となるゼオライトは水熱合成で得られるゼオライトの型と異なっていても良いが、同種類のゼオライトを選択することが好ましい。具体的には、PHI型、MER型、LTA型、A型、BEA型、CA型のゼオライトが好ましい。
【0036】
多孔質支持体に種結晶となるゼオライト微粒子を付着させる方法として、多孔質支持体内部にゼオライト微粒子を練り込むこともできる。多孔質支持体として多孔質PTFEを使用する場合を例にとって説明する。PTFE未焼結粉末、ゼオライト微粒子、及び液状潤滑剤を混合してペースト状にする。該PTFE未焼結粉末100質量部に対して、1〜30質量部のゼオライト微粒子を混合することが好ましい。その後、多孔質PTFE膜を作製する場合と同様に、チューブ状または板状に押し出し、延伸、焼結する。このような方法により、ゼオライトと多孔質支持体との親和性をより高めることができる。
【0037】
次に、前記ゼオライト微粒子を付着させた多孔質支持体にゼオライト原料液を接触させて水熱合成を行い、ゼオライト結晶を形成する。水熱合成は公知の方法で行うことができる。例えば、シリカ源としてケイ酸ナトリウム、コロイダルシリカ、水ガラス、粉末シリカ、ヒュームドシリカ、アルコキシドを用い、アルミ源としてアルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、活性アルミナ、ベーマイト、塩化アルミニウム等を用いてアルカリアミノケイ酸塩の水和ゲルを調整し、該水和ゲルをゼオライト原料液とする。このゼオライト原料液に多孔質支持体を浸漬し、オートクレーブ等を用いて高温高圧下に置き、水の存在下にてゼオライトを結晶化させることができる。
【0038】
前記ゼオライト原料液としては、所望の型のゼオライト結晶が得られるようなモル比率に調整した液を用いる。例えば、ゼオライト原料液としてケイ酸ナトリウム及び水酸化アルミニウムを含む原料液を用い、組成比でSiO/Al=2になるように調整した液を用いると、A型ゼオライト結晶が得られる。
【0039】
次いで、有機高分子又はその炭化物を、ゼオライトの欠陥部内に付着させる。例えば、有機高分子を溶剤に溶解させた液の中にゼオライト結晶が形成された多孔質支持体を含浸させて欠陥部内に有機高分子を付着させる。その後、溶剤を除去すると、本発明のゼオライト複合分離膜が得られる。
【0040】
有機高分子を欠陥部内に付着させる方法として、有機高分子の原料となるモノマー又はオリゴマー成分を吸着させた後、加熱架橋や照射架橋等によって重合反応を行い高分子量化することもできる。例えば、ゼオライト結晶が形成された多孔質支持体に、ビニルアルコール等のモノマーガスを吹き付けて吸着させ、その後加熱処理することでビニルアルコールが重合して高分子量化する。
【0041】
さらに、付着した有機高分子を200℃〜300℃程度に加熱すると、有機高分子が炭化する。このような状態で使用しても良い。また、モノマーガスを多孔質支持体に吹き付ける際に温度をかけながら行うと、モノマー成分の重合反応と炭化反応が同時に行われる。このような方法で欠陥部内に有機高分子又はその炭化物を付着させても良い。
【0042】
ゼオライト複合分離膜の欠陥部が有機高分子又はその炭化物で埋まっていることの確認は、リーク試験により行うことができる。得られたゼオライト複合分離膜に窒素ガスを流し、0.1MPa加圧した場合、リーク量が1cmあたり2ml/min以下であれば欠陥部が埋まっていると推定できる。リーク量が2ml/minを超える場合は欠陥部が埋まっておらず、良好な分離性能が得られない。
【0043】
このようなゼオライト複合分離膜は、気体同士の分離、気体/液体の分離、液体同士の分離等、種々の分離膜として用いることができる。特に水とアルコールとを分離するアルコール分離膜として好適であり、例えばバイオエタノールの製造時における脱水処理として用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のゼオライト複合分離膜を示す、断面模式図である。
【図2】本発明のゼオライト分離膜の内部構造を示す、模式図である。
【図3】本発明のゼオライト複合分離膜を示す、断面模式図である。
【図4】延伸多孔質PTFE膜の内部構造を示す走査電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0045】
1 多孔質支持体
2 ゼオライト結晶
3a〜3b 欠陥部
4 有機高分子
5a〜5c 微小孔
6 他の層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁が、直接又は他の層を介してゼオライト結晶で覆われたゼオライト複合分離膜であって、
前記ゼオライト結晶の欠陥部内に、有機高分子またはその炭化物を有することを特徴とするゼオライト複合分離膜。
【請求項2】
前記有機高分子は、シリコーン樹脂及びポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリイミド、ポリアミドイミドから選ばれる1種以上である、請求項1に記載のゼオライト複合分離膜。
【請求項3】
前記多孔質支持体は、多孔質ポリテトラフルオロエチレンである、請求項1又は2に記載のゼオライト複合分離膜。
【請求項4】
多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁面に、直接又は他の層を介して種結晶となるゼオライト微粒子を付着させる工程、
前記ゼオライト微粒子を付着させた多孔質支持体にゼオライト原料液を接触させて水熱合成を行い、ゼオライト結晶を形成する工程、
該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程、
を有する、ゼオライト複合分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程は、
該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機モノマー又はオリゴマーを吸着させる工程、
該有機モノマー又はオリゴマーを重合させて有機高分子とする工程、
を有する、請求項4に記載のゼオライト複合分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子またはその炭化物を付着させる工程は、
該ゼオライト結晶の欠陥部内に有機高分子を付着させる工程、
加熱処理により、該有機高分子を炭化させる工程、
を有する、請求項4又は5に記載のゼオライト複合分離膜の製造方法。
【請求項7】
さらに、多孔質支持体の表面及び/又は多孔質支持体の微小孔内壁面に、種結晶となるゼオライト微粒子を付着させる工程の前に、前記多孔質支持体を親水化処理又は金属処理する工程を有する、請求項4〜6のいずれか1項に記載のゼオライト複合分離膜の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−115610(P2010−115610A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291615(P2008−291615)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】