説明

ゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料

【課題】簡易かつ短時間で得ることができるゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料を提供することができる。
【解決手段】温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にすることにより得られるゼリー飲料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天などからなるゲルを飲料して調整されたゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料に関する。
【背景技術】
【0002】
ゾルからゲルへの転移を有するハイドロコロイドとして、単体としては、寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、ゼラチンなどがあり、複合系としては、カラギンナンと蒟蒻マンナン、カラギナンとガラクトマンナン(ローカストビーンガム、タラガム、カシアガムなど)、キサンタンガムとガラクトマンナンなどがある。これらハイドロコロイドは、熱可逆性の性質、すなわち温度変化によりゾルからゲルに転移する性質を有する。これらハイドロコロイドは、例えばゼリーやプリンなどの食品デザートに利用されている。
【0003】
ゼリーは、一般的にこれらハイドロコロイドに水を加えて加熱溶解し、冷却してゲル化温度以下に調整して均一なゼリーにすることにより作られている。例えば、みつ豆などに用いられるキューブ状寒天ゲルは、寒天を熱水に溶解して1%前後の溶液を作り、その溶液をゲル化温度30〜40℃(寒天の種類により異なる)以下、例えば20℃前後まで冷却することによりゲルを作製し、そのゲルを切断することにより作られている。同様にゼラチンのフルーツゼリーは、ゼラチンを60℃以上の湯で溶解して、ゲル化温度10〜20℃(ゼラチンの種類により異なる)以下、例えば4℃の冷蔵庫で冷却してゲル化することにより作られている。
【0004】
近年、これらゲルを飲料として利用することが考えられている。特許文献1及び特許文献2には、上記方法により一旦ゲル化させたゼリーを細かく裁断して飲料に混ぜることが記載されており、と特許文献3には、ペクチンとカルシウムにより反応させたゲルを果肉様に見立てて飲料に混合する方法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭53−26357号公報
【特許文献2】特公昭61−50586号公報
【特許文献3】特開2004−194661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のようにゼリー入り飲料を作る場合、先ずゼリーを作り、これを液体飲料とあわせるなど複雑な工程を行わなければならない。また、このような方法により大量のゼリーを作るためには、多大な時間を必要とするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡易かつ短時間で得ることができるゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意検討した結果、温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にすることにより不連続なゲルを形成することができることを見出した。すなわち、本発明は、温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にすることにより得られるゼリー飲料である。また、本発明は、温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にする工程を備えたことを特徴とするゲル飲料の製造方法である。さらに、本発明は、所定の温度の液体が添加され、溶解すると、温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液を得ることが可能なハイドロコロイド溶液の原料であって、前記ハイドロコロイド溶液が、そのゲル化温度以下に調整された水溶液と撹拌混合されてゲル化温度以下にされることにより、ゼリー飲料が得られるように調整されていることを特徴とするものである。
【0009】
以上のように、本発明に係るゲル飲料、並びにその製造方法及びその原料によれば、ゲル化温度以上のハイドロコロイド溶液とゲル化温度以下の水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にすることにより、ゲル化転移点を瞬時、例えば1分以内に通過させているので、容易に不連続のゲルを形成させてゲルを含む水溶液を作ることができる。このように一旦ゲルを作るという工程を経ないので、簡易かつ短時間でゲル飲料を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によれば、簡易かつ短時間で得ることができるゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るゼリー飲料、並びにその製造方法及びその原料において、ハイドロコロイドとして、単体としては、寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、ゼラチンなどがあり、複合系としては、カラギンナンと蒟蒻マンナン、カラギナンとガラクトマンナン(ローカストビーンガムやタラガム、カシアガム)キサンタンガムとガラクトマンナンなどがあり、これらは、ゲル化温度に応じて適宜選択される。
【0012】
本発明に係るゼリー飲料及びその製造方法において、ゲル化温度以上のハイドロコロイド溶液は、前記ハイドロコロイドのゲル化温度よりも5〜60℃高いことが好ましく、5℃〜30℃高い方がより好ましい。また、ゲル化温度以下の水溶液の温度は、出来るだけ低い方がよく、ゲル化温度の10℃以下、好ましくは20℃以下に調整することにより、ゲル化転移点を瞬時に通過させることができる。ゲル化温度以下の水溶液は、液状である必要はなく、冷凍された固体状態であっても良い。
【0013】
ゲル化温度以上のハイドロコロイド溶液及びゲル化温度以下の水溶液それぞれの温度は、加えられる容量と比熱により異なり、撹拌混合することにより、ゲル化温度以下に、ゲル化転移点を瞬時、例えば1分以内に通過させ、不連続のゲルを形成させるものであれば良い。一度ゲル化により固形物となったゲルは、加えられる水溶液と均一に混ざり合うことがないため、ゼリー片と液体が同一系内に存在することになるが、ゲル化温度以上のハイドロコロイド溶液とゲル化温度以下の水溶液を混合しゲル化温度以下になり難い場合には、溶液が混合してハイドロコロイド溶液が薄まり、結果としてゼリーとしての強度が低くなる。したがって、上記のような温度帯で瞬時に混合してゲル化転移点を通過することにより、ゼリー飲料を得ることができる。さらに、ハイドロコロイド溶液が薄まることを考慮して、ハイドロコロイド溶液の濃度を高くすることも有効である。
【0014】
ゲル化温度以下の水溶液は、それ単独ではゲル化しない溶液であり、例えばフルーツ果汁、乳飲料、炭酸水、リキュール類、コーヒー液、緑茶、紅茶、ウーロン茶などのお茶、機能性飲料などがある。
【0015】
ゲル化温度以下の水溶液は、上述のようにそれ単独ではゲル化しない溶液であるが、ハイドロコロイド溶液と反応する多糖類を含ませることにより、多様な食感を得ることができる。これらの多糖類としては、ガラクトマンナン(ローカストビーンガムやタラガム、カシアガム)やキサンタンガム、蒟蒻マンナン、ナトリウム型カッパ又はイオタカラギーナンなどである。
【実施例】
【0016】
実験例1
先ず、寒天(手作りぱぱ寒天:伊那食品工業株式会社製)0.9gとブドウ糖9gを90℃の熱水80.1gに溶解したハイドロコロイド溶液を4つ作製した。これらハイドロコロイド溶液それぞれの温度を45℃、50℃、60℃及び75℃に調整した。これらに5℃の冷水を210g加えて、マドラーによって30秒間攪拌することによって実施例1乃至4に係るゼリー飲料を得た。これら実施例1乃至4に係るゼリー飲料の温度を測定した。その結果を表1に示す。また、実施例1乃至4に係るゼリー飲料をろ紙によって液体とゼリーに分離し、ゼリーの比率を測定した。その結果を表1に示す。一方、実施例1乃至4に係るゼリー飲料について、10人のパネラーによって官能試験を行ったところ、実施例1から順に飲みやすいとの結果を得た。
【0017】
【表1】

【0018】
以上のように実施例1乃至4に係るゼリー飲料は、いずれも容易に作ることができるが、特にハイドロコロイド溶液の温度が低いものの方がゲル化転移を瞬時に行うことができるので、ゼリーの割合が少なく、すなわち液体中に含まれたハイドロコロイドが多く、飲みやすいゼリー飲料を得ることができる。
【0019】
実験例2
実験例1で用いたハイドロコロイド溶液を3つ用意し、それぞれの温度を50℃、60℃及び75℃に調整した。次に、ゼリー飲料の温度が27℃になるように、50℃のハイドロコロイド溶液に16℃の水を210g加え、60℃のハイドロコロイド溶液に11℃の水を210g加え、75℃のハイドロコロイド溶液に5℃の水を加えて、それぞれを撹拌することにより、実施例5乃至7に係るゼリー飲料を得た。実験例1と同様にゼリーの比率を調べた。その結果を表2に示す。
【0020】
【表2】

【0021】
以上のように実施例5乃至7に係るゼリー飲料は、いずれも容易に作ることができるが、特にハイドロコロイド溶液の温度が低いものの方がゲル化温度以下になるまでの時間が短いので、ゼリーの割合が少なく、すなわち液体中に含まれたハイドロコロイドが多く、飲みやすいゼリー飲料を得ることができる。
【0022】
実験例3
次に、表3に示す粉末を全て混合した後、120ccの湯に溶解し、その後、氷を80g加えて30秒間攪拌することによって、実施例8に係るローヤルゼリー入りのゼリー飲料を得た。この実施例8に係るゼリー飲料は、飲み口が優れていた。
【0023】
【表3】

【0024】
実験例4
次に、表4に示す粉末を全て混合した後、120ccの湯に溶解し、その後、氷を80g加えて30秒間攪拌することによって、実施例9に係るアミノ酸入りのゼリー飲料を得た。この実施例9に係るゼリー飲料は、飲み口が優れていた。
【0025】
【表4】

【0026】
実験例5
次に、表5に示す粉末を全て混合した後、120ccの湯に溶解し、その後、氷を80g加えて30秒間攪拌することによって、実施例10に係る大豆イソフラボン入りのゼリー飲料を得た。この実施例10に係るゼリー飲料は、飲み口が優れていた。
【0027】
【表5】

【0028】
実験例6
次に、表6に示す配合を120Lの水に分散させ加熱溶解することにより、ハイドロコロイド溶液を調整した。このハイドロコロイド溶液を55℃まで冷却した後、5℃の冷水80Lを瞬時に加えて攪拌して、不連続なゲルを形成し、これを容器に充填した後、85℃60分の熱殺菌を行うことによって、実施例11に係るブルーベリーエキス入りのゼリー飲料を得た。同様にハイドロコロイド溶液と冷水をUHL殺菌により無菌的に作り攪拌後、無菌充填することにより、ロングライフのゼリー飲料もできる。
【0029】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にすることにより得られるゼリー飲料。
【請求項2】
温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液と前記ハイドロコロイドのゲル化温度以下に調整された水溶液を撹拌混合してゲル化温度以下にする工程を備えたことを特徴とするゼリー飲料の製造方法。
【請求項3】
所定の温度の液体が添加され、溶解すると、温度変化によりゾルからゲルに転移するハイドロコロイドのゲル化温度以上に調整された該ハイドロコロイド溶液を得ることが可能なハイドロコロイド溶液の原料であって、
前記ハイドロコロイド溶液が、そのゲル化温度以下に調整された水溶液と撹拌混合されてゲル化温度以下にされることにより、ゼリー飲料が得られるように調整されていることを特徴とするハイドロコロイド溶液の原料。

【公開番号】特開2006−75026(P2006−75026A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260087(P2004−260087)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】