説明

ソイルセメント用流動化剤

【課題】
ミネラル分の少ない粘性土等を配合したソイルセメントに対しても優れた流動性を付与することができる流動化剤を提供すること。
【解決手段】
アクリル酸(塩)を必須構成単量体とする重合体(A)と、
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とからなることを特徴とするソイルセメント用流動化剤を用いる。(B)の含有量は重合体(A)の重量に基づいて150〜5000重量%が好ましい。さらにポリリン酸(塩)(C)を含有することが好ましい。(C)の含有量は(B)の重量に基づいて1〜100重量%が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント用流動化剤に関する。さらに詳しくはソイルセメントを使用する地盤改良工事等の際に用いられ、ソイルセメントに高い流動性を付与させることにより掘削性や作業性を向上させることができるソイルセメント用流動化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このソイルセメント用流動化剤としてポリアクリル酸塩等とアルカリ金属炭酸塩等とからなる流動化剤が知られている(特許文献1及び2)。
【特許文献1】特開平10−212482号公報
【特許文献2】特開2000−169209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の流動化剤は、海浜部等に存在するミネラル分(特に多価金属イオン)の多い粘性土等を使用したソイルセメントに対して良好な流動性を付与できるが、内陸部等に存在するミネラル分の少ない粘性土等を使用したソイルセメントに適用すると、希望する流動性が得られないという問題がある。
すなわち、本発明の目的は、ミネラル分の少ない粘性土等を配合したソイルセメントに対しても優れた流動性を付与することができる流動化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果本発明に達した。すなわち、本発明のソイルセメント用流動化剤は、アクリル酸(塩)を必須構成単量体とする重合体(A)と、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とからなる点を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明のソイルセメント用流動化剤は、海浜部等に存在するミネラル分(特に多価金属イオン)の多い粘性土等を使用したソイルセメントに対してだけではなく、ミネラル分の少ない粘性土等を配合したソイルセメントに対しても優れた流動性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明において、アクリル酸(塩)は、アクリル酸又はアクリル酸塩を意味する。
アクリル酸塩としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム及びリチウム等)塩、アルカリ土類金属(ベリリウム、マグネシウム及びカルシウム等)塩、アンモニウム塩{アンモニウム塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等)塩、アミン(メチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルエチルアミン及びメチルジエチルアミン等)塩及び第4級アンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム及びジメチルジエチルアンモニウム)塩}等が挙げられる。これらは単独又は混合して用いてもよい。これらのうち、アルカリ金属塩が好ましく、さらに好ましくはカリウム塩及びナトリウム塩、特に好ましくはナトリウム塩である。
【0007】
重合体(A)は、アクリル酸(塩)以外に他のビニル単量体(塩)を構成単量体として含むことができる。
他のビニル単量体としては、アクリル酸(塩)と共重合できれば特に制限はなく、炭素数4〜17の不飽和カルボン酸(塩)、炭素数4〜20の不飽和カルボン酸エステル、炭素数4〜20の脂肪酸ビニルエステル、炭素数2〜20のオレフィン、炭素数3〜5の不飽和ニトリル、炭素数2〜8の不飽和アミド及び炭素数5〜60の不飽和エーテル等の単量体等が使用できる。
【0008】
不飽和カルボン酸(塩)としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩{塩としては、アクリル酸塩と同様な塩が使用でき、好ましい範囲も同様である}が含まれる。
不飽和モノカルボン酸としては、炭素数4〜10の脂肪族モノカルボン酸、炭素数6〜10の脂環式モノカルボン酸及び炭素数9〜17の芳香族モノカルボン酸等が使用できる。
【0009】
脂肪族モノカルボン酸としては、メタクリル酸、クロトン酸、3−ブテン酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、3−メチル−2−ブテン酸、3−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−3−ブテン酸、2−メチル−2−ブテン酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、2−ヘプテン酸、4,4−ジメチル−2−ペンテン酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン酸、2−ノネン酸、3−メチル−2−オクテン酸、2−デケン酸及び2−ヒドロキシプロペン酸等が挙げられる。
【0010】
脂環式モノカルボン酸としては、1−シクロペンテンカルボン酸、3−シクロペンテンカルボン酸、4−シクロペンテンカルボン酸、1−シクロヘキセンカルボン酸、3−シクロヘキセンカルボン酸、4−シクロヘキセンカルボン酸、1−シクロヘプテンカルボン酸、3−シクロヘプテンカルボン酸、4−シクロヘプテンカルボン酸、5−シクロヘプテンカルボン酸、1−シクロオクテンカルボン酸、3−シクロオクテンカルボン酸、4−シクロオクテンカルボン酸、5−シクロオクテンカルボン酸、1−シクロノネンカルボン酸、3−シクロノネンカルボン酸、4−シクロノネンカルボン酸、5−シクロノネンカルボン酸、1−シクロデケンカルボン酸、3−シクロデケンカルボン酸、4−シクロデケンカルボン酸及び5−シクロデケンカルボン酸等が挙げられる。
【0011】
芳香族モノカルボン酸としては、オルトカルボキシスチレン、パラカルボキシスチレン、桂皮酸、アトロパ酸、(メタ)アクリル酸ベンジル、5−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸、4−ビニル−1−ナフタレンカルボン酸及び4−ビニル−1−アントラキノンカルボン酸等が挙げられる。
【0012】
不飽和ジカルボン酸としては、炭素数4〜11の脂肪族ジカルボン酸、炭素数6〜10の脂環式ジカルボン酸、炭素数9〜17の芳香族ジカルボン酸及びこれらの分子内酸無水物等が含まれる。
脂肪族ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、ブテン二酸、2−ペンテン二酸、3−ペンテン酸、4−ペンテン酸、2−メチル−2−ブテン二酸、2−エチル−2−プロペン酸、2−ヘキセン二酸、2−ヘプテン二酸、2−オクテン酸、3−メチル−2−ヘプテン二酸、2−ノネン二酸、2−デケン二酸及び2−ヒドロキシプテンロ二酸等が挙げられる。
【0013】
脂環式ジカルボン酸としては、1,2−シクロペンテンジカルボン酸、1,3−シクロペンテンジカルボン酸、1,4−シクロペンテンジカルボン酸、1,2−シクロヘキセンジカルボン酸、1,3−シクロヘキセンジカルボン酸、1,4−シクロヘキセンジカルボン酸、1,2−シクロヘプテンジカルボン酸、1,3−シクロヘプテンジカルボン酸、1,4−シクロヘプテンジカルボン酸、1,5−シクロヘプテンジカルボン酸、1,2−シクロオクテンジカルボン酸、1,3−シクロオクテンジカルボン酸、1,4−シクロオクテンジカルボン酸、1,5−シクロオクテンジカルボン酸、1,2−シクロノネンジカルボン酸、1,3−シクロノネンジカルボン酸、1,4−シクロノネンジカルボン酸、1,5−シクロノネンジカルボン酸、1,2−シクロデケンジカルボン酸、1,3−シクロデケンジカルボン酸、1,4−シクロデケンジカルボン酸及び1,5−シクロデケンジカルボン酸等が挙げられる。
【0014】
芳香族ジカルボン酸としては、o,p−ジカルボキシスチレン、o,p−ジカルボキシスチレン、4−ビニル−1,2−ナフタレンジカルボン酸及び4−ビニル−1,3−アントラキノンジカルボン酸等が挙げられる。
【0015】
不飽和ジカルボン酸の分子内酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸及び無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0016】
不飽和カルボン酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、クロトン酸メチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ヘキシル及びイタコン酸ブチル等が挙げられる。
【0017】
脂肪酸ビニルエステルとしては、酢酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ラウリン酸ビニル及びステアリン酸ビニル等が挙げられる。
【0018】
オレフィンとしては、α−オレフィン(エチレン、プロピレン、ブチレン、へキシレン、オクチレン、ウンデシレン、テトラデシレン及びノナデシレン等)、ジイソブチレン、ブタジエン、ピペリレン、クロロプレン、ピネン、リモネン、インデン、シクロペンタジエン、ビシクロペンタジエン及びエチリデンノルボルネン等が挙げられる。
【0019】
不飽和ニトリルとしては、(メタ)アクリロニトリル、シアノプロペン及びシアノペンテン等が挙げられる。
【0020】
不飽和アミドとしては、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−アミノエチル)(メタ)アクリルアミド及びN−(2−ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
不飽和エーテルとしては、メトキシポリエチレングリコール(重合度25)(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(重合度5)(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(重合度20)モノ(メタ)アクリレート及びポリエチレングリコール(重合度10)モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
これらの他のビニル単量体のうち、不飽和カルボン酸(塩)が好ましく、さらに好ましくはメタクリル酸及び無水マレイン酸、特に好ましくは無水マレイン酸である。
【0023】
他のビニル単量体を構成単量体として含有する場合、アクリル酸(塩)単位の含有量(モル%)は、重合体(A)の構成単量体の全モル数に基づいて、75〜99.9が好ましく、さらに好ましくは85〜99.7、特に好ましくは90〜99.5である。この範囲であるとソイルセメントの流動性がさらに良好となる。
【0024】
他のビニル単量体を構成単量体として含有する場合、他のビニル単量体単位の含有量(モル%)は、重合体(A)の構成単量体の全モル数に基づいて、0.1〜25が好ましく、さらに好ましくは0.3〜15、特に好ましくは0.5〜10である。この範囲であるとソイルセメントの流動性がさらに良好となる。
【0025】
本発明のソイルセメント用流動化剤は、重合体(A)と、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とを混合してなる組成物のときと、(A)と(B)とが別々に構成される(別々の容器に入る)ときとがある。
そして、混合してなる組成物のとき、重合体(A)中のカルボキシ基は、その一部又は大部分が化学量論的にカルボキシレート基になっている。
一方、混合せずに別々に構成されるとき、重合体(A)中の塩単位を含む場合、この含有量(モル%)は、重合体(A)のカルボキシ基(−COOH)及びカルボキシレート基{−COOM;Mはカチオン(アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン及び/又はアンモニウムイオン等)}の全モル数に基づいて、5〜99.9が好ましく、さらに好ましくは15〜99、特に好ましくは30〜98である。
【0026】
重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、4,000〜40,000が好ましく、さらに好ましくは7,000〜30,000、特に好ましくは10,000〜20,000である。また、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.2〜3.0が好ましく、さらに好ましくは1.3〜2.5、特に好ましくは1.4〜2.0である。この範囲内であるとソイルセメントの流動性がさらに良好となる。
【0027】
なお、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、分子量既知の(ポリ)エチレングリコールを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される(カラム温度40℃、溶離液:0.1−MPBのリン酸水素二ナトリウム水溶液:0.1−MPBリン酸二水素ナトリウム水溶液=1:1(モル比)、流速0.8ml/分、試料濃度:0.4重量%溶離液溶液。)。
【0028】
重合体(A)は、通常のビニルモノマーの重合方法を用いて得ることができ、重合方法としては懸濁重合、塊状重合及び溶液重合等が適用でき、生産性の観点等から、溶液重合が好ましい。
重合には、重合触媒を使用することができる。重合触媒としては、通常の重合触媒等が用いられ、アゾ化合物、過硫酸塩、無機過酸化物、レドックス触媒及び有機過酸化物等が含まれる。アゾ化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−アルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]及び1,1’−アゾビス(1ーアセトキシー1−フェニルエタン)等が挙げられる。過硫酸塩としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム等が挙げられる。無機過酸化物としては、過硼酸塩及び過酸化水素等が挙げられる。レドックス触媒としては、アスコルビン酸−過酸化水素等が挙げられる。有機過酸化物としては、過酸化ベンゾイル等が挙げられる。これらの重合触媒は、単独又は混合して用いられてもよい。これらのうち、過硫酸塩及びアゾ化合物が好ましく、さらに好ましくは過硫酸塩及び2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、特に好ましくは過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウムである。
【0029】
重合触媒を使用する場合、重合触媒の使用量(重量%)は、構成単量体の重量に基づいて、3〜100が好ましく、さらに好ましくは8〜80、特に好ましくは10〜60である。
【0030】
溶液重合及び懸濁重合の場合、溶媒としては、水(水道水、イオン交換水及び工業用水等)、アルコール溶剤(メタノール、エタノールおよびイソプロピルアルコール等)及び/又は芳香族溶剤(トルエン及びキシレン等)等が使用できる。これらのうち、水、水及びアルコール溶剤の混合溶媒が好ましく、さらに好ましくは水及びアルコールの混合溶媒、特に好ましくはイオン交換水及びイソプロピルアルコールの混合溶媒である。
溶媒を使用する場合、この使用量(重量%)は、構成単量体の全重量に基づいて、50〜900が好ましく、さらに好ましくは60〜800、特に好ましくは100〜600である。
重合反応温度は、40〜130℃程度が好ましく、重合反応時間は、1〜15時間程度が好ましい。
なお、構成単量体の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、重合触媒の全量又は一部を滴下しながら重合してもよい。また、溶媒の全量又は一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下しながら重合してもよい。一方、溶媒の全量を重合槽に仕込んでおき溶媒を除去しながら重合してもよい。これらのうち、生産性の観点等から、構成単量体と重合触媒との全量を滴下する方法及び溶媒の一部を構成単量体又は重合触媒と共に滴下する方法が好ましく、さらに好ましくは構成単量体と重合触媒との全量を溶剤の一部と共に滴下する方法である。
重合体(A)に塩単位を含む場合、アクリル酸塩及び必要に応じて他のビニル単量体を用いて重合してもよく、アクリル酸及び他のビニル単量体{不飽和カルボン酸塩を除く}を重合して得られる重合体を部分中和又は完全中和してもよい。
【0031】
重合体(A)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
重合体(A)が液状の場合、水性溶媒に重合体(A)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、重合体(A)を懸濁重合又は溶液重合等によって得て、溶媒をすべて除去しないで得てもよいし、塊状重合によって得た重合体(A)を水性溶媒に溶解又は分散させて得てもよい。
水性溶媒としては、水、炭素数1〜6のアルコール(エチルアルコール、メチルアルコール、エチレングリコール及びジエチレングリコール等)及び炭素数1〜6のケトン(メチルイソブチルケトン及びアセトン等)等が挙げられ、これらは単独又は混合して用いられてよい。
【0032】
一方、重合体(A)が固状の場合、重合体(A)からなる固体であってもよく、液状の重合体(A)を粉体に担持させた粉であってもよい。
重合体(A)からなる固体の場合、塊状重合によって得てもよいし、重合体(A)を含む溶液又は分散液を懸濁重合又は溶液重合等によって得てから、溶媒を除去することにより得てもよい。
重合体(A)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、乾燥粉砕法、凍結粉砕法、スプレイドライヤー法及びドラムドライヤー法等の公知の方法を用いることができる。これらのうち、乾燥粉砕法及びスプレイドライヤー法が好ましい。
固状の重合体(A)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜5が好ましく、さらに好ましくは0.05〜3、特に好ましくは0.08〜1である。
液状の重合体(A)を粉体に担持させる場合、粉体としては、活性炭、炭酸カルシウム、シリカフューム、ゼオライト、シラスバルーン及びベントナイト等が挙げられる。
これらの粉体に液状の重合体(A)を担持させる方法としては、公知の撹拌混合機(リボンミキサー及びヘンシェルミキサー等)を使用して、粉体と液状の重合体(A)とを撹拌混合する方法等が適用できる。
重合体(A)の形態のうち、液状が好ましく、さらに好ましくは水性溶媒に重合体(A)が溶解した状態である。
【0033】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)としては、水溶性であることが好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。
アルカリ金属珪酸塩としては、オルト珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム水和物、オルト二珪酸六リチウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム水和物、二珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム及びメタ珪酸カリウム等が挙げられる。
これらのうち、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルト珪酸リチウム、メタ珪酸リチウム、オルト珪酸ナトリウム、メタ珪酸ナトリウム、オルト珪酸カリウム及びメタ珪酸カリウムが好ましく、さらに好ましくは水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルト珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウム、特に好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、オルト珪酸ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウム、最も好ましくは水酸化ナトリウム及びメタ珪酸ナトリウムである。これらは単独又は混合して用いられてよい。
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の含有量(重量%)は、重合体(A)の重量に基づいて、150〜5000が好ましく、さらに好ましくは200〜3000、特に好ましくは300〜2000である。この範囲であると、硬化性に影響が小さく、流動性がさらに向上する。
【0034】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)が液状の場合、水性溶媒に(B)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)は、市場から液状製品を購入してもよいし、固状製品を購入して水性溶媒に溶解又は分散させてもよい。
【0035】
一方、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)が固状の場合、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)からなる固体であってもよく、(B)を粉体に担持させた粉であってもよい。
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)からなる固体の場合、市場から固状製品を購入しもよいし、市場から購入した液状製品から溶媒を除去することにより得てもよい。
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、好ましいものも含めて重合体(A)の場合と同様である。
固状のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜8、特に好ましくは0.08〜5である。
液状のアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)を粉体に担持させる場合、粉体及び担持方法は重合体(A)の場合と同様である。
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の形態のうち、固状が好ましく、さらに好ましくは固体である。
【0036】
本発明の流動化剤には、ポリリン酸(塩)(C)を含有させることが好ましい。
ポリリン酸(塩)(C)としては、ピロリン酸、トリポリリン酸、トリメタリン酸、テトラメタリン酸及びこれらの塩等が挙げられる。
ポリリン酸塩としては、アクリル酸塩と同様な塩が使用でき、好ましい範囲も同様である。
【0037】
ポリリン酸(塩)(C)の形態としては特に限定はなく、液状でも、固状でもよい。
ポリリン酸(塩)(C)が液状の場合、水性溶媒に(C)が溶解又は分散した状態を意味する。この場合、ポリリン酸(塩)(C)は、市場から液状製品を購入してもよいし、固状製品を購入して水性溶媒に溶解又は分散させてもよい。
【0038】
一方、ポリリン酸(塩)(C)が固状の場合、ポリリン酸(塩)(C)からなる固体であってもよく、(C)を粉体に担持させた粉であってもよい。
ポリリン酸(塩)(C)からなる固体の場合、市場から固状製品を購入しもよいし、市場から購入した液状製品から溶媒を除去することにより得てもよい。
ポリリン酸(塩)(C)を含む溶液又は分散液から溶媒を除去する方法としては、好ましいものも含めて重合体(A)の場合と同様である。
固状のポリリン酸(塩)(C)の大きさ(mm;最大長)は、本発明の流動化剤の溶解性の観点等から、0.01〜10が好ましく、さらに好ましくは0.05〜8、特に好ましくは0.08〜5である。
液状のポリリン酸(塩)(C)を粉体に担持させる場合、粉体及び担持方法は重合体(A)の場合と同様である。
ポリリン酸(塩)(C)の形態のうち、固状が好ましく、さらに好ましくは固体である。
ポリリン酸(塩)(C)を含有する場合、この含有量(重量%)は、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の重量に基づいて、1〜100が好ましく、さらに好ましくは5〜85、特に好ましくは10〜45である。この範囲であると、流動性がさらに向上する。
【0039】
本発明の流動化剤には、セメントと共に用いられる公知の添加剤(AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、硬化促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、急結剤、膨張剤、増粘剤及び防水剤等)等を含有させることができる。これらは、単独又は混合して用いられてよい。
添加剤を含有させる場合、これらの含有量(重量%)は、重合体(A)、並びにアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の合計重量に基づいて、1〜30が好ましく、さらに好ましくは2〜15、特に好ましくは3〜10である。
また、本発明の流動化剤には水性溶媒等を含有させることができる。水溶性溶媒を含有させる場合、この含有量(重量%)は、流動化剤の取扱性(粘度等)の観点等から、重合体(A)、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)、並びに添加剤の重量に基づいて、70〜2,000が好ましく、さらに好ましくは80〜1,000、特に好ましくは90〜500である。
【0040】
本発明の流動化剤の形態は、(1)重合体(A)と、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とが一緒に存在する形態{液体でも固体でもよい、また(A)と(B)とが反応してもよい}、または(2)(A)と、(B)とが別々に存在する形態{それぞれ、液体でも固体でもよい、また使用時にそれぞれが混合される}のいずれでもよい。なお、(2)の場合、必要により含有される添加剤及び/又は水は、それぞれに含まれても、いずれかに含まれてもよい。
【0041】
本発明の流動化剤は、重合体(A)、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)、並びに必要により、添加剤及び/又は水性溶媒を均一混合する方法{(A)及び(B)が混合されてなる組成物の製法}、または重合体(A)又はアルカリ金属水酸化物及び/若しくはアルカリ金属珪酸塩(B)と、必要により、添加剤及び/又は水性溶媒とを均一混合する方法{添加剤及び/又は水性溶媒は(A)及び(B)の両方に混合されてもよい。(A)と(B)とが別々に構成される製法}等により、得られる。
【0042】
本発明の流動化剤は、セメントスラリーに添加した後、これと掘削土とを混合してソイルセメントとすることが好ましい。
セメントスラリーは、セメント及び水を混合することで得られる。
セメントとしては、ポルトランドセメント(普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント及び耐硫酸塩ポルトランドセメント等;JIS R5210:2003)、高炉セメント(JIS R5211:2003)、シリカセメント(JIS R5212−1997)及びフライアッシュセメント(JIS R5213−1997)等が挙げられる。これらのセメントは、一種または二種以上の混合物として使用することができ、さらにこれらのセメントと、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム及び石灰系固化材等の公知のセメント混和剤を組み合わせて使用してもよい。これらのうち、入手しやすさの観点等から、ポルトランドセメントが好ましい。
セメントスラリーに含まれる水の含有量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、50〜200が好ましく、さらに好ましくは60〜190、特に好ましくは70〜180である。
【0043】
本発明の流動化剤の使用量は、重合体(A)、並びにアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の合計使用量(重量%)として、セメントの重量に基づいて、0.1〜60が好ましく、さらに好ましくは0.3〜30、特に好ましくは0.4〜20である。
【0044】
掘削土には制限がなく、ミネラル分(特に多価金属イオン)の多少に関わらず、粘性土や粗粒土等を含有する掘削土が使用できる。
ソイルセメントに含まれる掘削土の含有量(重量%)は、セメントの重量に基づいて、120〜2400が好ましく、さらに好ましくは200〜1500、特に好ましくは250〜1200である。
【0045】
ソイルセメントには、必要に応じて、セメントと共に用いられている公知の添加剤(AE剤、AE減水剤、高性能減水剤、遅延剤、早強剤、促進剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、急結剤、膨張剤、増粘剤、防水剤及びベントナイト等)を添加でき、これらは単独又は混合して用いられてよい。これらの添加剤を含む場合、これらの添加量は通常の場合と同様である。
【0046】
ソイルセメントを施工現場で調製して打設し硬化させることによりソイルセメント構造体が得られる。
ソイルセメント構造体の製造方法について限定はなく、例えば、掘削と混練の両機能を兼ね備えた、掘削機の先端部にセメントスラリーの排出口が設けられている掘削混練機を用いて、セメントスラリーと掘削土を地中で混練し、硬化後にソイルセメント構造体を得る方法、又は、地上でセメントスラリーと掘削土を混練した後に、掘削場所に打設し、硬化後にソイルセメント構造体を得る方法等が挙げられる(ソイルセメント構造体のより詳しい製造方法については特開2000−169209号公報等に記載の方法と同様である。)。
【実施例】
【0047】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を表す。
<実施例1>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器にイオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入し、撹拌下、アクリル酸300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから3時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は65〜100℃を保った。滴下終了後、3時間90〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を分割投入した。そして加水によりアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A1の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム{和光純薬工業株式会社製、純度99%以上、大きさ(mm;最大長)1.65〜3.33}(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(1)を得た。
【0048】
<実施例2>
滴下ライン、撹拌装置及び温度計付きの耐圧反応容器に、無水マレイン酸2.0部、イオン交換水200.0部及びイソプロピルアルコール300.0部を投入した。アクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(1)(アクリル酸298.0部に50%水酸化ナトリウム水溶液133.4部を40℃以下に保ちながら分割投入して調製した水溶液)431.4部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部をそれぞれ別々の滴下ラインから3時間かけて一定速度で滴下しながら密閉下で反応させた。反応温度は65〜100℃を保った。滴下終了後、3時間90〜100℃に保った後、150.0部のイオン交換水を滴下(加水)しながらイソプロピルアルコールを減圧除去した後、30℃まで冷却し、撹拌下、40℃以下に保ちながら、徐々に50%水酸化ナトリウム水溶液132.4部を分割投入した。そして加水によりアクリル酸ナトリウム塩(99.5モル%)−マレイン酸ナトリウム塩(0.5モル%)共重合体(重合体A2)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A2の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩−マレイン酸ナトリウム塩共重合体(重合体A2)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(2)を得た。
【0049】
<実施例3>
無水マレイン酸2.0部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(1)を、それぞれ無水マレイン酸39.5部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(2)(アクリル酸260.5部に50%水酸化ナトリウム水溶液123.6部を40℃以下に保ちながら分割投入して調製した水溶液)に変更した以外は実施例2と同様にして、アクリル酸ナトリウム塩(90.0モル%)−マレイン酸ナトリウム塩(10.0モル%)共重合体(重合体A3)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A3の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩−マレイン酸ナトリウム塩共重合体(重合体A3)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(3)を得た。
【0050】
<実施例4>
無水マレイン酸2.0部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(1)を、それぞれ無水イタコン酸1.5部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(2)に変更した以外は実施例2と同様にして、アクリル酸ナトリウム塩(99.7モル%)−イタコン酸ナトリウム塩(0.3モル%)共重合体(重合体A4)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A4の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩−イタコン酸ナトリウム塩共重合体(重合体A4)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(4)を得た。
【0051】
<実施例5>
無水マレイン酸2.0部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(1)を、それぞれクロトン酸52.2部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(2)に変更した以外は実施例2と同様にして、アクリル酸ナトリウム塩(85.0モル%)−クロトン酸ナトリウム塩(15.0モル%)共重合体(重合体A5)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A5の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩−クロトン酸ナトリウム塩共重合体(重合体A5)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(5)を得た。
【0052】
<実施例6>
無水マレイン酸2.0部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(1)を、それぞれメタクリル酸17.8部及びアクリル酸/アクリル酸ナトリウム水溶液(2)に変更した以外は実施例2と同様にして、アクリル酸ナトリウム塩(95.0モル%)−メタクリル酸ナトリウム塩(5.0モル%)共重合体(重合体A6)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A6の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩−マレイン酸ナトリウム塩共重合体(重合体A6)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(6)を得た。
【0053】
<実施例7>
イオン交換水200.0部、イソピロピルアルコール300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部を、それぞれイオン交換水100.0部、イソピロピルアルコール400.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液200.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A7)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A7の重量平均分子量は10,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.4であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A7)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(7)を得た。
【0054】
<実施例8>
イソピロピルアルコール300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部を、それぞれイソピロピルアルコール100.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液75.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A5)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A8の重量平均分子量は20,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.8であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A8)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(8)を得た。
【0055】
<実施例9>
イオン交換水200.0部、イソピロピルアルコール300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部を、それぞれイオン交換水100.0部、イソピロピルアルコール900.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液1400.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A9)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A9の重量平均分子量は4,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.3であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A9)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(9)を得た。
【0056】
<実施例10>
イオン交換水200.0部、イソピロピルアルコール300.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液100.0部を、それぞれイオン交換水100.0部、イソピロピルアルコール100.0部及び40%過硫酸ナトリウム水溶液175.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A10)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A10の重量平均分子量は40,000、分子量分布(Mw/Mn)は2.4であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A10)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(10)を得た。
【0057】
<実施例11>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を、50%水酸化ナトリウム水溶液100.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A11)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A11の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A11)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(11)を得た。
【0058】
<実施例12>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を、50%水酸化ナトリウム水溶液326.6部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A12)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A12の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A12)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(12)を得た。
【0059】
<実施例13>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を投入しなかったこと以外は実施例1と同様にしてアクリル酸重合体(重合体A13)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A13の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸重合体(重合体A13)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(13)を得た。
【0060】
<実施例14>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を、50%水酸化ナトリウム水溶液333.3部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸ナトリウム塩重合体(重合体A14)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A14の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸ナトリウム塩重合体(重合体A14)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(14)を得た。
【0061】
<実施例15>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を、50%水酸化カリウム水溶液374.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸カリウム塩共重合体(重合体A15)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A15の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A15)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(15)を得た。
【0062】
<実施例16>
50%水酸化ナトリウム水溶液266.7部を、25%アンモニア水溶液300.0部に変更した以外は実施例1と同様にしてアクリル酸−アクリル酸アンモニウム塩共重合体(重合体A16)を40%含む水溶液を得た。なお、重合体A16の重量平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.5であった。
そして、アクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A16)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(16)を得た。
【0063】
<実施例17>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)6.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(17)を得た。
【0064】
<実施例18>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化カリウム(B2){和光純薬工業株式会社製、純度85%以上、大きさ(mm;最大長)1.65〜3.33}3.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(18)を得た。
【0065】
<実施例19>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)100.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(19)を得た。
【0066】
<実施例20>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)20.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(20)を得た。
【0067】
<実施例21>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1){和光純薬工業株式会社製、純度98%以上、大きさ(mm;最大長)0.15〜0.83}1.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(21)を得た。
【0068】
<実施例22>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1)4.5部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(22)を得た。
【0069】
<実施例23>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1)0.1部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(23)を得た。
【0070】
<実施例24>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1)10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(24)を得た。
【0071】
<実施例25>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム(B1)10.0部及びピロリン酸ナトリウム(C2){和光純薬工業株式会社製、純度98%以上、大きさ(mm;最大長)0.15〜0.83}3.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(25)を得た。
【0072】
<実施例26>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、メタ珪酸酸ナトリウム(B3){関東化学株式会社製、純度98%以上、大きさ(mm;最大長)0.15〜0.83}10.0部とを別々の容器に保存し、本発明のソイルセメント用流動化剤(26)を得た。
【0073】
<実施例27>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、水酸化ナトリウム水溶液{水酸化ナトリウム(B1)5.0部及びイオン交換水6.1部とで調製した}とを均一混合して、本発明のソイルセメント用流動化剤(27)を得た。
【0074】
<比較例1>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、炭酸ナトリウム(HB1)10.0部とを別々の容器に保存し、比較用のソイルセメント用流動化剤(28)を得た。
【0075】
<比較例2>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、炭酸水素ナトリウム(HB2)10.0部とを別々の容器に保存し、比較用のソイルセメント用流動化剤(29)を得た。
【0076】
<比較例3>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、炭酸ナトリウム(HB1)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1)4.5部とを別々の容器に保存し、比較用のソイルセメント用流動化剤(30)を得た。
【0077】
<比較例4>
実施例1で得たアクリル酸−アクリル酸ナトリウム塩共重合体(重合体A1)を40%含む水溶液5.0部と、炭酸水素ナトリウム(HB2)10.0部及びトリポリリン酸ナトリウム(C1)4.5部とを別々の容器に保存し、比較用のソイルセメント用流動化剤(31)を得た。
【0078】
実施例1〜27のソイルセメント用流動化剤(1)〜(27)及び比較例1〜4のソイルセメント用流動化剤(28)〜(31)を用いて、評価用ソイルセメントを以下のように調製して、この評価用ソイルセメントについて、流動性試験及び一軸圧縮強さ測定を行いこれらの結果を表1に示した。
<ソイルセメントの調製>
JIS R 5201:2003に準拠したホバート型機械練り用練り混ぜ機(モルタルミキサC138A、(株)丸東製作所製)を用いて、水道水300部と実施例又は比較例で得たソイルセメント用流動化剤とを均一混合して混合物を得た{実施例1〜26及び比較例1〜4のソイルセメント用流動化剤については、重合体(A)を40%含む水溶液を混合し、ついでアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)を混合し、最後にポリリン酸(塩)を混合した(それぞれ10分間低速撹拌混合した)。一方、実施例27のソイルセメント用流動化剤については、水道水とソイルセメント用流動化剤とを10分間低速撹拌混合した。}。ついでこの混合物に掘削土1500部及び普通ポルトランドセメント200部を加えて、90秒間の低速撹拌混合を行った後、30秒間撹拌混合を休止し、この間にさじで容器及びパドルに付着した付着物を掻き落した。そしてさらに90秒間低速撹拌混合を行って評価用ソイルセメントを得た。
なお、用いた掘削土及び普通ポルトランドセメントは、以下の通りである。また、すべての材料は20℃の室内に少なくとも24時間放置し、調製操作も20℃の室内で行った。
a)掘削土
a1)内陸部の粘性土:愛知県名古屋市の工事現場で採取したもの{湿潤密度(JIS A 1225:2003)=1.91g/cm3、含水比(JIS A 1203:2003)=37.0%、掘削土構成:粘土29.0%、シルト分61.0%、砂分10.0%}
a2)海浜部の粘性土 :愛知県常滑市の海浜工事現場で採取したもの{湿潤密度=1.76g/cm3 、含水比=40.0%、掘削土構成:粘土33.0%、シルト分55.0%、砂分12.0%}
b)普通ポルトランドセメント:住友大阪セメント(株)製
【0079】
<流動性評価>
20℃の室内で、内径5cm×高さ5cmのアクリル製円筒管(円筒管の両端は開口されている)を50cm×50cmのアクリル板の中央に垂直に立て、この円筒管に製造直後の評価用ソイルセメントを詰めた。引き続き円筒管を垂直に引き上げ、ソイルセメントの水平方向への広がり(流動性:フロー性)を測定した。数値の大きい方が流動性は高いことを意味し好ましい。
【0080】
<一軸圧縮強さ>
垂直に立てた6本のモールド{内径5cm×高さ10cmの鉄製円筒管、取り外し可能な底板と、2つの半円筒部(2つ組み合わせると内径5cmの円筒になる)とから構成されている。}に製造直後の評価用ソイルセメントをそれぞれ充填し、20℃にて28日間及び1年間の気中養生(各3本づつ)を行った。その後、ソイルセメント構造体をモールドから取り外し、JIS A1216:1998に準拠して、20℃の室内で一軸圧縮強さを測定し、3本の平均値を求めた。
【0081】
【表1】

【0082】
本発明のソイルセメント用流動化剤(1)〜(27)は、比較用のソイルセメント用流動化剤(28)〜(31)に比べ、セメント構造体の強度を高いレベルで維持できる上に、さらに使用する粘性土の種類に関係なくソイルセメントの流動性を著しく高めた。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の流動化剤はソイルセメントが用いられる埋立土、軟弱地盤の強化、ソイルセメント壁体の造成等の地盤改良に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル酸(塩)を必須構成単量体とする重合体(A)と、
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とからなることを特徴とするソイルセメント用流動化剤。
【請求項2】
アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の含有量が重合体(A)の重量に基づいて150〜5000重量%である請求項1に記載の流動化剤。
【請求項3】
さらにポリリン酸(塩)(C)を含有してなる請求項1又は2に記載の流動化剤。
【請求項4】
ポリリン酸(塩)(C)の含有量がアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の重量に基づいて1〜100重量%である請求項3に記載の流動化剤。
【請求項5】
アクリル酸(塩)を必須構成単量体とする重合体(A)と、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)とからなるソイルセメント用流動化剤を、ソイルセメントに適用しソイルセメントを流動化させる流動化工程を含むことを特徴とするソイルセメント構造体の製造方法。
【請求項6】
ソイルセメント用流動化剤にさらにポリリン酸(塩)(C)を含有してなり、アルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ金属珪酸塩(B)の含有量が重合体(A)の重量に基づいて150〜5000重量%であって、(C)の含有量が(B)の重量に基づいて1〜100重量%である請求項5に記載の製造方法。

【公開番号】特開2006−232600(P2006−232600A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−48510(P2005−48510)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000106438)サンノプコ株式会社 (124)
【Fターム(参考)】