説明

ソイルセメント連続壁の施工法

【課題】片押し施工として削孔後に直ちに芯材を建て込むことができ芯材の挿入性の向上を図ることができ、しかもこのようにした場合であっても、芯材の建て込み精度および削孔精度を確保でき、さらに工期も短縮できるソイルセメント連続壁の施工法を提供する。
【解決手段】先行エレメント13aのソイルセメント壁と後行エレメント13bのソイルセメント壁を順次ラップさせて連続一体の壁体を造成する片押し連続施工を行う場合において、先行エレメント13aの掘削丸孔に挿入する応力負担材(芯材)であるH形鋼10は、3個数珠繋ぎ状に連続する掘削丸孔のうち、先端から隣接する2つの掘削丸孔分のものを相互に連結して2連のものとして設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土止め壁工法に原位置土とセメント混合液を削孔〜注入〜混練し、応力材としてH形鋼を挿入して連続した地中壁を造成するソイルセメント連続壁工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソイルセメント連続壁工法は、連続一体のソイルセメント連続壁として、多軸混練オーガー機を使用して、エレメント端の削孔混練軸を次エレメントに完全ラップさせてソイルセメント柱列壁を造成していくものであり、ベースマシンに3軸及び5軸の多軸オーガを搭載し、両端のオーガスクリューを完全ラップさせての削孔・混練を行うため止水性に優れた壁体の造成が可能である。
【0003】
造成されたソイルセメント柱列壁には、芯材としてH型鋼や鋼管等の鋼材を挿入する。
【0004】
図8、図9に3軸の多軸混練オーガー機を示すが、は、図8、図9に示すように、油圧モータおよび減速機からなる駆動機構4に掘削軸5を下方に向けて連結し、かつ、この掘削軸5を複数本(図示では3本)並列させたものである。
【0005】
掘削軸5は先端に掘削ヘッド5aを設け、また、途中に断続するスクリュー羽根による攪拌翼兼用の掘削翼5bを設けたものである。また、図示は省略するが、この掘削軸5は中空軸で内部にセメントミルク等の固結液を通流させ、これを掘削ヘッド5aの吐出口より注出できる。
【0006】
前記駆動機構4は掘削軸5を連結した状態で、クローラ等のベースマシーン1に起立するリーダーマスト2のトップシーブ3からワイヤーで吊り支する。さらに、駆動機構4は背面に設けた湾曲ブラケット6をリーダーマスト2に沿設したリーダー7に係合させる。図中8はリーダーマスト2の下端に設けた首かせ状の振れ止めで、掘削軸5が上下に貫通する。
【0007】
前記多軸混練オーガー機がこのような軸の場合、その施工手順は下記特許文献にもあるように、図10、図11に示すようにするのが一般である。
【特許文献1】特公昭62−54929号公報
【0008】
各エレメント1〜3は、駆動機構4により掘削軸5を回転駆動し、掘削ヘッド5aで錐揉み状に掘削を行い、掘削時に掘削ヘッド5aよりセメントミルク等の固結液を吐出させて、土中において原位置土と混合して造成したソイルセメント壁体であり、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に数珠繋ぎ状に連続するもので、エレメント1(一次掘削溝)を形成し、次いでエレメント1(一次掘削溝)の長手方向延長線上に各掘削軸にて掘削丸孔を地盤に数珠繋ぎ状に連続させて穿設して掘削土砂と固結液との混合物が入ったエレメント2(二次掘削溝)を形成して一次及び二次掘削溝間に掘残し部を形成し、然るのち一次及び二次掘削溝内の固結液と掘削土砂との混合物が未硬化の状態の時に一次及び二次掘削溝の相隣接せる端部の掘削丸孔を案内孔とし、多軸掘削機の両端の掘削軸を案内孔となる端部の掘削丸孔内にそれぞれ挿入しつつ掘残し部を内側の掘削軸にて掘削すると共に固結液と掘削土砂とを混合してエレメント3(三次掘削溝)を形成する。
【0009】
そして、かかるソイルセメント壁体を建築・土木の地下工事における土留め壁として使用する場合は、図12に示すように応力負担材(芯材)としてH形鋼10を建て込む。
【0010】
なお、この応力負担材(芯材)であるH形鋼10は図13に示すように、掘削軸にての掘削丸孔のすべてではなく、1つ置きに建て込むこともある。
【0011】
このH形鋼10の建て込みは、セメントミルク等の固結液を吐出後、固結液が硬化する前にクレーンなどで吊り込むものであり、先行エレメントに芯材を建て込んだ後、後行エレメントの削孔を開始する。
【0012】
この応力芯材を曲がり、捻じれ等を矯正すると共に、その所要間隔を正確に保持するよう組合せて、緊結固定して一体の構造体となし、複数本一挙に挿入することは下記特許文献に記載されている。
【特許文献2】特開平7−127049号公報
【特許文献3】特開2002−61171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
まず、前記特許文献1に示すようなエレメント1(一次掘削溝)とエレメント2(二次掘削溝)を間隔を存して形成し、エレメント3(三次掘削溝)でつなぐような、いわば討手返しのような施工では、エレメント1(一次掘削溝)の芯材とエレメント2(二次掘削溝)の芯材の建込精度が悪いと、エレメント3(三次掘削溝)の施工精度を確保することがむずかしい。特に、エレメント3(三次掘削溝)はエレメント1(一次掘削溝)の芯材とエレメント2(二次掘削溝)の間を掘削するので、精度が悪いと芯材に当り傷つけることになる。
【0014】
ソイルセメント連続壁の施工については、これまでは削孔深度が30m位を想定していたが近年壁長が40〜50mと深くなり施工の精度が一段と必要となってきている。
【0015】
また、多軸掘削機での掘削は、図11、図12に示すように各掘削軸5の掘削軌道が1軸分重合(オーバーラップ)するようになり、しかも、後行エレメントを造成するため削孔するときには、先行エレメントには応力負担材(芯材)としてH形鋼10が建て込んである状態であって、このH形鋼10は掘削孔内に没入している。
【0016】
さらに、削孔順序も先行・後行の2ユニットを1組として施工するので、先に削孔された先行エレメントに建て込まれるH形鋼10の建て込みの時期は、後行の施工時間分だけ先行の削孔終了より時間が経過している(通常先行削孔終了より1時間〜4時間程度)ため、セメント分の硬化や砂・礫分の沈降により、H形鋼10の挿入性が著しく低下して施工性がよくない。
【0017】
H形鋼10の挿入性を高めるため、先行エレメントに建て込むH形鋼10の建て込みの時期を早めるには、片押し(連続)施工とすれば、先行エレメントの削孔終了後に2本のH形鋼10の建て込みを直ちに行い、その後、後行エレメントの削孔を開始するから、先行エレメントのH形鋼10の建て込みを早期に行え、セメント分の硬化や砂・礫分の沈降により、H形鋼10の挿入性が低下することを防止できる。
【0018】
しかし、かかる方法ではH形鋼10の建て込みは容易になっても、後行エレメントを削孔する際に、図14に示すように先行エレメントのソイルセメントの硬化前にすぐ隣を掘削することとなるため、掘削時の加圧によって建て込まれた芯材10が押されて開いてしまい、斜めに打設されることになる。
【0019】
さらに、図15に示すように後行エレメントの掘削軸5の引上げ時には、前記とは反対に負圧によって先に打設したH形鋼10が掘削ヘッド5aの方向に引き込まれていく不都合がある。
【0020】
前記特許文献2,3は、応力芯材を建て込む際の正確性を期するものであり、建て込んだ後の芯材の固定を配慮したものではない。さらに、特許文献2,3のように、3本以上の芯材を同時に建て込むのでは、各掘削軸5の掘削軌道が1軸分重合(オーバーラップ)する掘削を行うと、芯材が邪魔になり、施工ができない。
【0021】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、片押し施工として削孔後に直ちに芯材を建て込むことができ芯材の挿入性の向上を図ることができ、しかもこのようにした場合であっても、芯材の建て込み精度および削孔精度を確保でき、さらに工期も短縮できるソイルセメント連続壁の施工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は前記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、3軸の多軸混練オーガー機で地盤を掘削し、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に3個数珠繋ぎ状に連続する先行エレメントのソイルセメント壁を造成する、次に同様な数珠繋ぎ状に連続する後行エレメントのソイルセメント壁を前記先行エレメントのソイルセメント壁に順次ラップさせて連続一体の壁体を造成する片押し連続施工を行う場合において、先行エレメントの掘削丸孔に挿入する応力負担材(芯材)であるH形鋼は、3個数珠繋ぎ状に連続する掘削丸孔のうち、先端から隣接する2つの掘削丸孔分のものを相互に連結して2連のものとして設置することを要旨とするものである。
【0023】
請求項1記載の本発明によれば、3軸の多軸混練オーガー機で地盤を掘削し、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に3個数珠繋ぎ状に連続する先行エレメントのソイルセメント壁を造成する、次に同様な数珠繋ぎ状に連続する後行エレメントのソイルセメント壁を前記先行エレメントのソイルセメント壁に順次ラップさせて連続一体の壁体を造成する片押し連続施工を行うので、従来のエレメント1(一次掘削溝)とエレメント2(二次掘削溝)を間隔を存して形成し、エレメント3(三次掘削溝)でつなぐような、いわば討手返しのような施工に比べて、施工精度を上げることができる。
【0024】
また、片押し連続施工を行うと先行エレメントの方向に後行エレメントのソイルセメントが逃げてずれていき先行エレメントの芯材に当り精度が得られてないことが多いが、二本組の芯材を相互に連結して2連のものとして設置することにより、芯材はソイルコンクリートのユニットの中で固定状態同様となり、多軸混練オーガー機の掘削ヘッドが当ってもほとんど動かず精度が保たれることになる。又、二本組みを使用することで施工サイクルが大幅に短縮出来、出来上がりも通常1/200の精度か1/350の精度が保てることが判明している。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように本発明のソイルセメント連続壁の施工法は、片押し施工として削孔後に直ちに芯材を建て込むことができ芯材の挿入性の向上を図ることができ、しかもこのようにした場合であっても、芯材の建て込み精度および削孔精度を確保でき、さらに工期も短縮できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面について本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1、図2は本発明のソイルセメント連続壁の施工法の1実施形態を示す各工程の説明図で、図中10は応力負担材(芯材)であるH形鋼、13aは先行エレメント、13bは後行エレメントを示す。
【0027】
先行エレメント13aは図8、図9に示すような3軸の多軸混練オーガー機で地盤を掘削し、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に3個数珠繋ぎ状に連続するものである。
【0028】
最初の先行エレメント13aの施工での削孔終了後、直ちに削孔部にセメントミルク等の固結液を注入してこれが固化する前に応力負担材(芯材)であるH形鋼10を建て込む。
【0029】
このH形鋼10は高さ400mm,フランジ幅200mm,ウエブ厚8mm,フランジ厚13mmの一般薄肉H鋼であり、この種工法で使用する応力芯材としては普遍的に使用されるものである。応力芯材の長さは4mから35〜40mのものまで使用されている。
【0030】
図4に示すように、応力負担材(芯材)であるH形鋼10は、2つを、結合板14で相互に連結して2連のものとした。図示の例は、溶接作業を行い、H形鋼10のウエブ部分を結合板14で連結したが、図5に示すように、結合板14の取付方法は、H形鋼10のフランジ外面でも、内面でもよいし、または、図6に示すように、H形鋼10の腹部に山形鋼材等を結合板14として溶接してもよい。
【0031】
さらに、図7に示すように、形鋼などのブレス材を結合板14として、2本のH形鋼10を固定して一体化してもよい。ブレス材は、ソイルセメント打設時の打設圧力でH形鋼10が位置ずれを起こさない程度に取り付ける。
【0032】
先行エレメント13aへの応力負担材(芯材)であるH形鋼10を建て込みは、3個数珠繋ぎ状に連続する掘削丸孔のうち、先端から隣接する2つの掘削丸孔分のものに対して行い、H形鋼10を2連のものとして設置する。
【0033】
削孔が完了してH形鋼10を建て込んだ先行エレメント13aに対して後行エレメント13bの掘削を行うが、先行エレメント13aの3個数珠繋ぎ状に連続する掘削丸孔のうち、H形鋼10を建て込まない残りの掘削丸孔に対して後行エレメント13bの先端から1つ目の掘削丸孔分をラップ(重合)させて行う。
【0034】
同様に、後行エレメント13bに対してもH形鋼10を2連のものとして建て込み、さらに、同様の工程を繰り返していく。(図3参照)
【0035】
図3に示すように、本発明は、3軸の多軸混練オーガー機で地盤を掘削し、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に3個数珠繋ぎ状に連続する先行エレメント13aのソイルセメント壁を造成する。次に同様な数珠繋ぎ状に連続する後行エレメント13bのソイルセメント壁を前記先行エレメントのソイルセメント壁に順次ラップさせて連続一体の壁体を造成する片押し連続施工を行うものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のソイルセメント連続壁の施工法における削孔順序を示す第1工程の説明図である。
【図2】本発明のソイルセメント連続壁の施工法における削孔順序を示す第2工程の説明図である。
【図3】片押し連続施工の説明図である。
【図4】芯材に使用するH形鋼の第1例を示す斜視図である。
【図5】芯材に使用するH形鋼の第2例を示す斜視図である。
【図6】芯材に使用するH形鋼の第3例を示す斜視図である。
【図7】芯材に使用するH形鋼の第4例を示す斜視図である。
【図8】本発明のソイルセメント連続壁の施工法で使用する多軸掘削機の側面図である。
【図9】本発明のソイルセメント連続壁の施工法で使用する多軸掘削機の側面図である。
【図10】従来の施工法の説明図である。
【図11】従来の施工法の側面図である。
【図12】従来の施工法の側面図である。
【図13】芯材にH形鋼を使用した場合の建て込み状態を示す平面図である。
【図14】多軸工法による掘削時の芯材の建て込み精度の二次的誤差発生状況を示す正面図である。
【図15】多軸工法による引上げ時の芯材の建て込み精度の二次的誤差発生状況を示す正面図である。
【符号の説明】
【0037】
1…ベースマシーン 2…リーダーマスト
3…トップシーブ 4…駆動機構
5…掘削軸 5a…掘削ヘッド
5b…掘削翼 5c…ビット
6…湾曲ブラケット 7…リーダー
8…振れ止め 10…H形鋼
13a…先行エレメント 13b…後行エレメント
14…結合板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3軸の多軸混練オーガー機で地盤を掘削し、固結液と掘削土砂との混合物が入った掘削丸孔が地盤に3個数珠繋ぎ状に連続する先行エレメントのソイルセメント壁を造成する、次に同様な数珠繋ぎ状に連続する後行エレメントのソイルセメント壁を前記先行エレメントのソイルセメント壁に順次ラップさせて連続一体の壁体を造成する片押し連続施工を行う場合において、先行エレメントの掘削丸孔に挿入する応力負担材(芯材)であるH形鋼は、3個数珠繋ぎ状に連続する掘削丸孔のうち、先端から隣接する2つの掘削丸孔分のものを相互に連結して2連のものとして設置することを特徴としたソイルセメント連続壁の施工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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