説明

ソフトボトルの製造方法および製造装置

【課題】 安価に大量生産に適したソフトボトルの製造方法を提供する。
【解決手段】バリヤフイルム製の筒状の胴部をコア(30)に装着するとき、初めに縮小した第1の治具(40)の胴部保持体(42)に挿入して、圧縮空気により膨張させて胴部保持体(42)に保持する。胴部を保持している第1の治具を第2の治具(50)の内筒(53)内へ挿入する。挿入するとき、内筒(53)と胴部との間に空気膜を形成する。内筒(53)に吸着しておいて第1の治具を縮小して抜く。第2の治具の内筒(53)に吸着されている胴部をコア(30)に被せるように挿入する。挿入するとき空気膜を形成する。コア(30)に吸着しておいて第2の治具を抜く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリヤフィルム製の胴部と底板部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の外周部と前記金型との間に構成されるキャビティに熱可塑性樹脂を射出充填して、胴部の開口部近傍と底部近傍に射出成形体を一体的に成形するソフトボトルの製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粉末用の容器あるいは流体用の容器としてガラス製ビン、金属製缶、プラスチック製容器等が実用に供されている。これらの容器は防湿性およびガス遮断性に富んでいるので、内容物を所定の品位に保つ点では優れているが、使用後に廃棄処分をするにしても、あるいはリサイクル処分をするにしても、いずれにしても処理費が嵩む欠点がある。そこで、低コストで処理できるソフトボトルが提案されている。提案されているソフトボトルは、液密性あるいは気密性のバリヤフィルムすなわちプラスチックラミネートフィルムからなる筒状の胴部から構成されている。筒状の胴部の一方端部は開口しているが、他方の底部は封鎖されている。このような胴部の開口部の近傍と底部の近傍の外周部には、射出成形により肉厚部が成形されている。肉厚部は射出成形により成形されているので、プラスチックラミネートフィルムと一体化され、これにより胴部の強度が向上し、形状が保たれている。このようなプラスチック容器の製造方法が特許文献1、2等により提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−103428号公報
【特許文献2】特開平7−156188号公報
【0004】
特許文献1、2には、プラスチックラミネートフィルムから筒状の胴部を形成する工程と、形成された胴部を金型のコアとなるマンドレルに被着する工程と、胴部が被着されたマンドレルを上型と下型とに装着する工程と、装着されたマンドレルと上下型との空間に溶融樹脂を射出する工程とからなる、ソフトボトルの製造方法が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2のそれぞれに記載の製造方法の実施により得られるソフトボトルは、その胴部の上下の外周部には前記のようにして射出成形により肉厚部すなわち上下の成形部が一体的に成形されているので、胴部と成形部が接着剤を使用することなく一体化され、胴部の接合部にシワが生じないという特徴を有し、またプラスチックラミネートフィルムの材料選択の幅が広くなるという利点も得られる。特に、特許文献1に記載の方法によると、下側の成形部は胴部の内側に成形されているので、胴部の表面積は下側の成形部を成形しても狭くはならないという特徴を有し、したがって印刷する胴部の面積を広く保つことができるという効果は認められる。このように、ソフトボトル自体には問題はないとしても、いずれの製造方法にも改良すべき問題がある。例えば、いずれの製造方法においても胴部をマンドレルに被着するようになっているが、この被着工程はどのようにして実施するのか必ずしも明らかではない。プラスチックラミネートフィルムから筒状に形成されている胴部は、形状を保つ上で不安定で手動的には被着できると思われるが、工業的な自動被着は不可能と思われる。また、金型についても実施はできるが効率的に実施する上では問題があると思われる。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解決したソフトボトルの製造方法および製造装置を提供することを目的としている。すなわち、安価に大量生産に適したソフトボトルの製造方法およびこの方法の実施に使用される製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために、バリヤフィルム製の筒状の胴部をコアに装着するとき、第1、2の治具を使用する。第1の治具は圧縮空気を供給すると容積が大きくなり、空気を抜くと小さくなる伸縮性の膨張体から構成されている。第2の治具は、胴部が吸着される内筒と、この内筒の外周部に設けられている空気室とから構成されている。内筒には空気室に連通した複数個の細孔が明けられ、空気室には圧縮空気が給排されるようになっている。また、他の発明によると第2の治具には、補助吸着体が設けられている。この補助吸着体はバリヤフィルム製の底板部を吸着し、また開放するもので内筒から待避可能に設けられている。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、バリヤフィルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、前記胴部を径方向と軸方向とが縮小した状態の第1の治具を取り囲むようにして挿入して、前記第1の治具に圧縮空気を供給して膨張させ、それによって前記胴部を前記第1の治具の外周部で保持する第1の準備工程と、前記第1の準備工程により保持されている前記胴部を、細孔から内側へ圧縮空気が噴出している第2の治具内へ挿入し、次いで外側へ吸引して前記第2の治具の内側に吸着すると共に、前記第1の治具の容積を減少させて待避させ、それによって前記胴部を前記第2の治具の内側に吸着保持する第2の準備工程と、前記第2の準備工程により吸着保持されている前記胴部を、細孔から外側へ圧縮空気が噴出している前記コアの外周部に挿入して、次いで内側へ吸引して前記コアの外周部に吸着すると共に前記底板部を前記コアの先端面に吸着して、前記第2の治具の細孔を大気圧に開放し、または細孔から圧縮空気を前記胴部側へ噴出しながら前記第2の治具を待避させる工程とから、前記コアに前記胴部と底板部とを装着するように構成される。請求項2に記載の発明は、バリヤフィルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、前記コアの先端部には角を落とした形でRを付けておき、前記コアの内部から外周部へ複数個の細孔を介して圧縮空気を噴出しながら前記胴部を前記コアに挿入し、次いで前記コアの内部へ前記細孔から吸引して前記胴部を吸着し、次いで底板部を前記コアの先端面に吸着し、それによって前記コアに前記胴部と底板部とを装着するように構成される。
【0009】
請求項3に記載の発明は、バリヤフィルム製の筒状の胴部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、前記胴部を径方向と軸方向とが縮小した状態の第1の治具を取り囲むようにして挿入して、前記第1の治具に圧縮空気を供給して膨張させ、それによって前記胴部を前記第1の治具の外周部で保持する第1の準備工程と、前記第1の準備工程により保持されている前記胴部を、細孔から内側へ圧縮空気が噴出している第2の治具内へ挿入し、次いで外側へ吸引して前記第2の治具の内側に吸着すると共に、前記第1の治具の容積を減少させ待避させ、それによって前記胴部を前記第2の治具の内側に吸着保持する第2の準備工程と、前記第2の準備工程により吸着保持されている前記胴部を、細孔から外側へ圧縮空気が噴出している前記コアの外周部に挿入して、次いで内側へ吸引して前記コアの外周部に吸着して、前記第2の治具の細孔を大気圧に開放し、または細孔から圧縮空気を前記胴部側へ噴出しながら前記第2の治具を待避させる工程とから、前記コアに前記胴部を装着するように構成され、請求項4に記載の発明は、バリヤフィルム製の筒状の胴部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、前記コアの先端部には角を落とした形でRを付けておき、前記コアの内部から外周部へ複数個の細孔を介して圧縮空気を噴出しながら前記胴部を前記コアに挿入し、次いで前記コアの内部へ前記細孔から吸引して前記胴部を吸着し、それによって前記コアに前記胴部を装着するように構成される。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかの項に記載の製造方法において、前記第1のキャビティに熱可塑性樹脂を充填して開口部成形体を成形するとき、該開口部成形体に雄ネジを一体的に成形するように構成される。
請求項6に記載の発明は、第1、2の治具によりバリヤフィルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを、固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形する製造装置であって、前記コアの内部には圧縮空気が給排される空気室が形成され、該空気室と前記コアの外周面と先端面は複数個の細孔で連通し、前記第1の治具は、圧縮空気を給排すると径方向と軸方向に伸縮する膨張体から構成され、該膨張体を取り囲むようにして前記胴部を挿入して圧縮空気を供給すると、前記胴部は膨張した前記膨張体の外周部により保持され、 前記第2の治具は、前記胴部が保持される内筒と、該内筒の外周部に設けられている空気室と、該空気室を取り囲んでいる外筒と、該外筒に進退可能に設けられ、前記底板部を吸着するようになっている補助吸着体からなり、前記内筒には前記空気室に連通する複数個の細孔が設けられていると共に、前記空気室には圧縮空気が給排されるようになっている。
【0011】
請求項7に記載の発明は、第1、2の治具によりバリヤフィルム製の筒状の胴部が装着されたコアを、固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形する製造装置であって、前記コアの内部には圧縮空気が給排される空気室が形成され、該空気室と前記コアの外周面とは複数個の細孔で連通し、前記第1の治具は、圧縮空気を給排すると径方向と軸方向に伸縮する膨張体から構成され、該膨張体を取り囲むようにして前記胴部を挿入して圧縮空気を供給すると、前記胴部は膨張した前記膨張体の外周部により保持され、 前記第2の治具は、前記胴部が保持される内筒と、該内筒の外周部に設けられている空気室と、該空気室を取り囲んでいる外筒とからなり、前記内筒には前記空気室に連通する複数個の細孔が設けられていると共に、前記空気室には圧縮空気が給排されるようになっている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によると、バリヤフィルム製の筒状の胴部をコアに装着するとき、第1、2の治具を使用するが、第1の治具は圧縮空気を給排すると径方向と軸方向に伸縮する膨張体から構成されているので、容積を小さくした状態で該膨張体を取り囲むようにして前記胴部を挿入することができる。すなわち、膨張体と間隔をおいた状態で挿入できる。間隔をおいて挿入できるので、形状が不安定な胴部をロボットのアームのような単純な手段により、機械的に容易に挿入できる。膨張体に空気を吹き込み、胴部を膨張体で一旦保持すると、以後胴部は剛体のようにして取り扱うことができる。また、本発明によると、第1の治具に保持されている胴部を第2の治具に挿入するとき、圧縮空気を噴出するので、第2の治具の内周面と胴部の外周面との間には潤滑作用を奏する空気膜が形成される。これにより、スムーズに胴部を第2の治具に挿入することができる。挿入したら吸引して吸着し、そして第1の治具の膨張体を縮小させるので、第1の治具を支障なく抜くことができる。これにより、胴部は第2の治具に吸着保持されるが、これをコアに装着するときコアの表面から圧縮空気を噴出するので、コアの外表面と胴部の内表面との間に空気層が形成され、容易に挿入することができる。挿入したら、コアの内部へ吸引してコアに吸着し、そして第2の治具の空気室を大気圧あるいは加圧するので、吸着されている胴部の位置を狂わせることなく、第2の治具を取り去ることができる。
【0013】
また、他の発明によると、コアの先端部は角が切り落とされた形でRが付けられているので、胴部を開口部の端部から容易に挿入することができ、挿入が進むとコアの周囲から噴出する圧縮空気により摩擦抵抗が減少するので、小さな力で最後まで挿入することができる。挿入を終わると、吸引して確実に吸着保持することができる。以上のように、本発明によると、構造および作用の異なる第1、2の治具を使い分けるので、あるいはコアの先端部にはRが付けられていると共に、その外表面からは圧縮空気が噴出あるいは吸引されるようになっているので、形状的に不安定な胴部をロボットなどを使用して機械的に装着できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る金型を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は第1の実施の形態に係る金型のコア部分を示す断面図、その(イ)は本実施の形態より得られるソフトボトルの断面図である。
【図3】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は第1の治具の実施の形態を示す断面図、その(イ)は第2の治具の実施の形態を示す断面図、その(ウ)は第1の治具に胴部を挿入した状態を示す断面図、その(エ)は第1の治具に胴部を装着した状態を示す断面図、その(オ)は胴部を装着した第1の治具を第2の治具に挿入している途中の段階を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態を示す図で、その(ア)は第2の治具に吸着されている胴部をコアに装着している途中の段階を示す断面図、その(イ)は胴部および底板の装着が終わった状態のコアを示す断面図、その(ウ)は胴部および底板が装着されたコアを型締め状態で示す断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係るコアにより成形している状態を示す断面図で、その(ア)は第2の実施の形態に係るコアにより、そしてその(イ)は他のコアにより成形している途中の段階をそれぞれ示す断面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係るコアを胴部を装着した状態で示す断面図である。
【図7】金型の他の実施の形態を示す図で、その(ア)は第2の実施の形態を示す斜視図、その(イ)は第3の実施の形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図2の(イ)に示されているようなソフトボトルSBを製造する実施の形態について説明する。このソフトボトルSBは、気密性に富んだバリヤフィルムからなる筒状の胴部Bと、胴部Bの上端部近傍の外周面に一体的に射出成形されている開口部成形体Asと、下端部の外周面と底部とに一体的に射出成形されているボトム成形体Usとからなっている。胴部Bの一方の端部はバリヤフィルム製の底板Pにより封鎖されているが、他方の端部は開口している。この開口端部の近傍の開口部成形体Asには、キャップの雌ネジが螺合する雄ネジNが成形されている。ボトム成形体Usは、底板Pの外面にも及んでいるので、本実施の形態に係るソフトボトルSBは、二重底になっている。
【0016】
第1の実施の形態に係る金型は、図1の斜視図に示されているように、概略的には固定型1と可動型20とからなっている。固定型1は、垂直方向に立ち上がっている所定幅の板状のガイド部2と、このガイド部2の上端部から水平方向に延びている固定側金型3と、前記ガイド部2に、例えば蟻溝のような構造により上下方向にスライド可能に設けられているスライド金型10とから構成されている。固定側金型3の下側はパーティング面となっていて、このパーティング面に開口した固定側凹部4が形成されている。この固定側凹部4によりソフトボトルSBの成形体As,Usの半分が成形される。固定側凹部4の構造は、スライド金型10に設けられているスライド側凹部11と同じ構造をしているので、スライド金型10の凹部11の構造についてのみ後述する。
【0017】
スライド金型10の上面は水平なパーティング面となっていて、このパーティング面に開口したスライド側凹部11が形成されている。スライド側凹部11の径は、ソフトボトルSBの外径よりもわずかに大きく、可動型20に面した側には開口部成形体Asを成形するための切欠状の第1の凹部12が形成されている。第1の凹部12には螺旋状の溝13が形成されている。この溝13により、開口部成形体Asの外周部に雄ネジが成形される。スライド側凹部11の、固定型1のガイド部2に面した側には、ボトム成形体Usを成形するための切欠状の第2の凹部15が形成されている。また、固定型1のガイド部2には、ソフトボトルSBの底板Pを成形するための面状の凹部が形成されている。この面状の凹部は、図1には示されていないが、図4の(ウ)において参照数字51’で示されている。このように構成されている固定型1には、図4の(ウ)に示されているように、ホットランナ17が固定側金型3の方へ向かって形成されている。このホットランナ17はエッジゲート18を介して第1の凹部12の溝13に開口し、またピンポイントゲート19を介して面状の凹部51’に開口している。
【0018】
スライド金型10の側面16の形状は、図1に示されているように、略台形を呈し、その下面は固定型1の方へ向かってテーパ状に厚くなっている。このテーパ状に厚くなっている斜面が従動側カム面14を構成している。この従動側カム面14を押し上げることによりスライド金型10が固定側金型3に対して、より厳密には後述する可動型20のコアに対して型締めされることになる。
【0019】
可動型20は、板状の立上部21、この立上部21の上方端部近傍から固定型1の方へ突き出ているコア30、立上部21の下端部から同様に固定型1の方へ突き出ているカム部22等からなっている。カム部22は、固定型1の方へ向かってテーパ状に薄くなっている斜面を有する。この斜面が能動側カム面23となっている。図には示されていないが、型締装置により可動型20を固定型1に対して型締めすると、能動側カム面23が受動側カム面14に作用して、スライド金型10は上方へ駆動され、固定側金型3に対して型締めされる。
【0020】
可動型20のコア30の具体的な実施の形態が、図2の(ア)に示されている。コア30の大きさおよび軸方向の長さは、ソフトボトルSBの胴部Bが装着される大きさおよび長さになっている。このコア30の内部には空気室31が形成されている。空気室31とコア30の外表面は、複数個の細孔32、32、…により連通している。したがって、空気室31に加圧空気を供給すると、空気が細孔32、32、…からコア30の外周面に吹き出て、装着するバリヤフィルムとの間に空気層あるいは膜が形成され、バリヤフィルムを滑らかに装着することができるようになる。負圧にすると、装着されたバリヤフィルムは吸着される。空気室31と送風機36はライン35で接続され、このライン35に方向切替弁37が介装されている。送風機36は、矢印で示されているように、一方から空気を吸引し、他方から吐出するようになっているので、方向切替弁37をXポジションに切り換えると空気室31は加圧され、Yポジションに切り換えると負圧になる。Zポジションにすると、空気室31は遮断される。
【0021】
本実施の形態によると、バリヤフィルム製の胴部Bは、第1、2の治具を使用して、可動型20のコア30に装着されるが、第1の治具40の実施の形態が図3の(ア)に、そして第2の治具50の実施の形態が図3の(イ)にそれぞれ示されている。第1の治具40は、ロボットのアーム等で把持される基台41と、この基台41に気密的に設けられている伸縮性の胴部保持体42と、この胴部保持体42内に圧縮空気を給排する空気管43とからなっている。胴部保持体42は、気密性の素材から径Dおよび長さLが伸縮するように形成されている。この径Dおよび長さLは、空気が供給されていない縮小状態では筒状の胴部Bの径および長さよりも充分小さいが、圧縮空気が供給されると、軸方向に伸び、それから径方向に膨張し、略胴部Bの大きさになるように構成されている。これにより、胴部Bは保持体42の外周面あるいは外周部の凸部に摩擦により保持されることになる。空気管43には、図2の(ア)に示されているような方向切替弁37を介して圧縮空気が給排されるようになっているが、図3には方向切替弁は示されていない。空気管43には複数個の細孔が明けられている。伸縮性の胴部保持体42の上方には、一定の強度を有する円錐状のガイド部材45が設けられている。
【0022】
第2の治具50の実施の形態が、図3の(イ)に示されている。第2の治具50は、ソフトボトルSBの胴部Bを吸着する吸着本体51と、底板Pを吸着する補助吸着体59とからなっている。吸着本体51は複数個の細孔52、52、…が全周にわたって明けられている内筒53と、この内筒53と所定の間隔をおいて設けられている外筒55とから構成されている。内筒53は筒状を呈し、その内径は胴部Bの外径より多少大きく、長さは実質的に同じ長さになっている。この内筒53と外筒55との間は、図2の(ア)に示されているような方向切替弁37を介して圧縮空気が給排される空気室56となっている。外筒55の外周部には、一対のスライド枠57、57が軸方向にスライド自在に設けられている。このスライド枠57、57には、揺動的に回動可能な門型をしたアーム58が設けられている。補助吸着体59は、前記門型をしたアーム58に取り付けられている。門型をしたアーム58は、スライド枠57、57に回動可能に設けられているので、図3の(イ)に示されている位置を採り、そして補助吸着体59を内筒53側へ移動させることもできるが、門型をしたアーム58を所定角度回動して待避させることもできる。この補助吸着体59にも、図には正確には示されていないが、圧縮空気が給排され、底板Pを吸着あるいは解き放すようになっている。
【0023】
次に、前記固定型1、可動型20、第1、2の治具40、50等を使用して図2の(イ)に示されているソフトボトルSBを製造する方法を説明する。図3の(ウ)に示されているように、第1の治具40の胴部保持体42を立てた状態で空気を抜く。胴部保持体42は小さくなる。バリヤフィルム製の胴部Bの上端部をロボットのアームRA等で把持して、上方から胴部保持体42に被せる。胴部Bの下端部が基台41に当接したら、胴部保持体42に空気を吹き込む。ロボットのアームRAを離す。空気を吹き込むと、胴部保持体42は、軸方向に早く伸び、それから半径方向に膨張するので、胴部Bは全長にわたって胴部保持体42の外周面あるいは外周部に確実に保持される。保持された状態が、図3の(エ)に示されている。
【0024】
胴部Bを保持した胴部保持体42を、第2の治具50の内筒53内へ挿入する。このとき、第2の治具50の内筒53の細孔52、52、…から圧縮空気を噴出する。そうすると、第2の治具50の内筒53の内表面と胴部保持体42に保持されている胴部Bの外表面との間に空気層が生じる。空気層は摩擦抵抗が小さく、潤滑作用を奏するので、胴部Bを保持した胴部保持体42をスムーズに挿入することができる。第2の治具50に挿入している途中の段階が図3の(オ)に示されている。挿入を終わったら、第2の治具50の空気室56を負圧にして胴部Bを内筒53に吸着する。第1の治具40の胴部保持体42の空気を抜く。胴部保持体42の容積は減少して、胴部Bは保持体42から離間し、第2の治具50の内筒53にのみ吸着保持される。これにより、胴部Bを可動型20のコア30に装着できる準備が整う。
【0025】
次いで、第2の治具50の内筒53に吸着保持されている胴部Bを可動型20のコア30に装着する。すなわち、第2の治具50をロボットのアームなどで把持してコア30に被せる。このとき、門型をしたアーム58を図4の(ア)に示されているように、コア30に対応させ補助吸着体59には底板Pを吸着しておく。コア30の細孔32、32、…からは圧縮空気を噴射させて前述したように空気層を形成する。挿入が終わったら、コア30の空気室31を負圧にする。そうすると、胴部Bはコア30の外周面に、底板Pは先端面に吸着保持される。第2の治具50の空気室56、補助吸着体59の空気室を大気圧あるいは加圧状態にする。加圧すると、第2の治具50の内筒53と胴部Bの外周面との間に空気層が生じ、抜けやすくなる。第2の治具50を待避させる。これにより、胴部Bと底板Pの装着を終わる。胴部Bと底板Pが可動型20のコア30に装着された状態が図4の(イ)に示されている。
【0026】
コア30の空気室31を負圧状態に保って、可動型20を固定型1に対して型締め方向に駆動して型締する。型締めすると、可動型20のコア30は固定側金型3の固定側凹部4内に挿入され、可動型20の能動側カム面23がスライド金型10の従動側カム面14に作用する。これにより、スライド金型10は上方へ駆動され、胴部Bと底板Pが装着されたコア30は固定側凹部4とスライド側凹部11とにより型締めされる。最終的には可動型20を上方へ駆動して型締めする。このようにして型締めした状態が図4の(ウ)に示されている。型締めすることにより、開口部成形体Asを成形するためのキャビティCaとボトム成形体Usを成形するためのキャビティCbが構成される。
【0027】
図4の(ウ)に示されているように、型締めが終わったら熱可塑性の溶融樹脂を射出する。溶融樹脂はホットランナ17からエッジゲート18を通ってキャビティCaに達し、またピンポイントゲート19を通ってキャビティCbに達する。これらのキャビティCa、Cbが充填される。これにより、バリヤフィルム製の胴部Bに、熱可塑性の開口部成形体Asとボトム成形体Usとが一体的に成形される。開口部成形体Asには雄ネジも成形される。可動型20を開く。可動型20を開くと、スライド金型10は開ける状態になるので、適当な手段により開く。成形品を取り出す。
【0028】
図5の(ア)、(イ)のそれぞれに底板Pのないソフトボトルの成形例が示されている。底板Pがないので、第2の治具50の補助吸着体59を使用しないと、同様にして成形できるので、図4の(ウ)において付けた参照数字をつけるだけで説明はしない。また、補助吸着体59のない第2の治具を使用して同様に成形することもできる。図5の(イ)には、先端部が内側に窪んだコア30を使用してボトムが内側に窪んだソフトボトルの成形例が示されている。同様にして成形できるので、説明はしない。
【0029】
図6には、コア30’に胴部Bを直接装着する実施の形態が示されている。本実施の形態によると、コア30’の先端面のコーナ部は所定量だけ切り落とされてRが付けられている。したがって、胴部Bをコア30’に挿入するとき、胴部Bの先端部はRに案内されてスムーズに入る。入ると、細孔32、32、…から噴出する空気層により滑らかに挿入される。以下、前述したようにして成形する。本実施の形態によると、得られるソフトボトルの底部の周囲は、Rの分だけ肉厚になっている。なお、符号C’bはボトム成形体を成形するためのキャビティを示している。
【0030】
図7には、本発明の第2、3の実施の形態が示されている。第1の実施の形態の構成要素と同じ要素には同じ参照数字を入れ、同様な要素には同じ参照数字にダッシュ「’」を付け重複説明はしない。図7の(ア)に示されている実施の形態によると、固定型1’の固定側金型3’には平行に2個の固定側凹部4、4が形成されている。したがって、スライド金型10’にも2個のスライド側凹部11、11が設けられている。また、可動型20’にも2個のコア30、30が設けられている。これに対応して、第1、2の治具にも2個当ての胴部保持体、吸着本体等が設けられるが、このような第1、2の治具は図7の(ア)には示されていない。本実施の形態によると、1サイクルあたり2個のソフトボトルを成形あるいは製造することになる。
【0031】
図7の(イ)には、第3の実施の形態が示されている。本実施の形態は、図1に示されている第1の実施の形態の金型を背中合わせに重ねた形になっている。第1、2の実施の形態の構成要素と同じ要素には同じ参照文字を、また同様な要素には「’」または「”」を付けて重複説明はしない。本実施の形態によっても、1サイクルあたり2個成形でき、第2の実施の形態と組み合わせると、コンパクトな金型で4個成形できることになる。
【符号の説明】
【0032】
1 固定型 3 固定側金型
4 固定側凹部 10 スライド金型(可動側金型)
11 スライド側凹部 14 従動側カム面
17 ホットランナ 23 能動側カム面
20 可動型 30 コア
31 空気室 32 細孔
40 第1の治具 42 胴部保持体(膨張体)
50 第2の治具 59 補助吸着体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリヤフイルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、
前記胴部を径方向と軸方向とが縮小した状態の第1の治具を取り囲むようにして挿入して、前記第1の治具に圧縮空気を供給して膨張させ、それによって前記胴部を前記第1の治具の外周部で保持する第1の準備工程と、
前記第1の準備工程により保持されている前記胴部を、細孔から内側へ圧縮空気が噴出している第2の治具内へ挿入し、次いで外側へ吸引して前記第2の治具の内側に吸着すると共に、前記第1の治具の容積を減少させて待避させ、それによって前記胴部を前記第2の治具の内側に吸着保持する第2の準備工程と、
前記第2の準備工程により吸着保持されている前記胴部を、細孔から外側へ圧縮空気が噴出している前記コアの外周部に挿入して、次いで内側へ吸引して前記コアの外周部に吸着すると共に前記底板部を前記コアの先端面に吸着して、前記第2の治具の細孔を大気圧に開放し、または細孔から圧縮空気を前記胴部側へ噴出しながら前記第2の治具を待避させる工程とから、前記コアに前記胴部と底板部とを装着することを特徴とするソフトボトルの製造方法。
【請求項2】
バリヤフイルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、
前記コアの先端部には角を落とした形でRを付けておき、前記コアの内部から外周部へ複数個の細孔を介して圧縮空気を噴出しながら前記胴部を前記コアに挿入し、次いで前記コアの内部へ前記細孔から吸引して前記胴部を吸着し、次いで底板部を前記コアの先端面に吸着し、それによって前記コアに前記胴部と底板部とを装着することを特徴とするソフトボトルの製造方法。
【請求項3】
バリヤフイルム製の筒状の胴部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、
前記胴部を径方向と軸方向とが縮小した状態の第1の治具を取り囲むようにして挿入して、前記第1の治具に圧縮空気を供給して膨張させ、それによって前記胴部を前記第1の治具の外周部で保持する第1の準備工程と、
前記第1の準備工程により保持されている前記胴部を、細孔から内側へ圧縮空気が噴出している第2の治具内へ挿入し、次いで外側へ吸引して前記第2の治具の内側に吸着すると共に、前記第1の治具の容積を減少させ待避させ、それによって前記胴部を前記第2の治具の内側に吸着保持する第2の準備工程と、
前記第2の準備工程により吸着保持されている前記胴部を、細孔から外側へ圧縮空気が噴出している前記コアの外周部に挿入して、次いで内側へ吸引して前記コアの外周部に吸着して、前記第2の治具の細孔を大気圧に開放し、または細孔から圧縮空気を前記胴部側へ噴出しながら前記第2の治具を待避させる工程とから、前記コアに前記胴部を装着することを特徴とするソフトボトルの製造方法。
【請求項4】
バリヤフイルム製の筒状の胴部が装着されたコアを固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形するとき、
前記コアの先端部には角を落とした形でRを付けておき、前記コアの内部から外周部へ複数個の細孔を介して圧縮空気を噴出しながら前記胴部を前記コアに挿入し、次いで前記コアの内部へ前記細孔から吸引して前記胴部を吸着し、それによって前記コアに前記胴部を装着することを特徴とするソフトボトルの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの項に記載の製造方法において、前記第1のキャビティに熱可塑性樹脂を充填して開口部成形体を成形するとき、該開口部成形体に雄ネジを一体的に成形するソフトボトルの製造方法。
【請求項6】
第1、2の治具によりバリヤフイルム製の筒状の胴部と底板部が装着されたコアを、固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および底板部と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形する製造装置であって、
前記コアの内部には圧縮空気が給排される空気室が形成され、該空気室と前記コアの外周面と先端面は複数個の細孔で連通し、
前記第1の治具は、圧縮空気を給排すると径方向と軸方向に伸縮する膨張体から構成され、該膨張体を取り囲むようにして前記胴部を挿入して圧縮空気を供給すると、前記胴部は膨張した前記膨張体の外周部により保持され、
前記第2の治具は、前記胴部が保持される内筒と、該内筒の外周部に設けられている空気室と、該空気室を取り囲んでいる外筒と、該外筒に進退可能に設けられ、前記底板部を吸着するようになっている補助吸着体からなり、前記内筒には前記空気室に連通する複数個の細孔が設けられていると共に、前記空気室には圧縮空気が給排されるようになっていることを特徴とするソフトボトルの製造装置。
【請求項7】
第1、2の治具によりバリヤフイルム製の筒状の胴部が装着されたコアを、固定側金型と可動側金型とで挟んだ状態で型締めし、型締めすることにより、前記胴部の一方の開口部近傍の外周部と前記金型との間に構成される第1のキャビティと、前記胴部の他方の底部近傍の外周部および前記コアの先端面と前記金型との間に構成される第2のキャビティとに熱可塑性樹脂を射出充填してソフトボトルを成形する製造装置であって、
前記コアの内部には圧縮空気が給排される空気室が形成され、該空気室と前記コアの外周面とは複数個の細孔で連通し、
前記第1の治具は、圧縮空気を給排すると径方向と軸方向に伸縮する膨張体から構成され、該膨張体を取り囲むようにして前記胴部を挿入して圧縮空気を供給すると、前記胴部は膨張した前記膨張体の外周部により保持され、
前記第2の治具は、前記胴部が保持される内筒と、該内筒の外周部に設けられている空気室と、該空気室を取り囲んでいる外筒とからなり、前記内筒には前記空気室に連通する複数個の細孔が設けられていると共に、前記空気室には圧縮空気が給排されるようになっていることを特徴とするソフトボトルの製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−20406(P2012−20406A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157594(P2010−157594)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】