説明

ソレノイドポンプ

【課題】作動液を円滑に吐出することのできるソレノイドポンプを提供する。
【解決手段】作動液をポンプハウジング11の圧力室120に吸入する際に開弁する吸入弁130と、圧力室120から作動液を吐出する際に開弁する吐出弁140と、圧力室120の容積を増減させるピストン111と、を備え、圧力室120はピストン111を挟んで可動コア13が配置される側と反対側に形成され、吸入弁130の連通口130aおよび吐出弁140の連通口140aが、圧力室120に面するポンプハウジング11に開口され、ばね部材が圧力室120の外部に配置され、吸入弁140および吐出弁140の一方は、その弁体の移動方向がピストン111の軸方向に沿う方向に配置され、他方は、一方の弁の外周を囲むように配置され、ピストン111の軸方向に沿う作動液の流れを許容あるいは遮断する弁である構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイドポンプに関し、特に、バーハンドル、主として自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に搭載可能なブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプとして、特許文献1、2に開示されたものが知られている。
特許文献1に記載されたソレノイドポンプは、固定コアと、この固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、電磁力で可動コアを固定コア側に移動させるコイルと、を有している。このソレノイドポンプでは、固定コアに連結されるポンプハウジング内にポンプ室を設けるとともに、このポンプ室内に、可動コアの移動により摺動されるピストン(プランジャ)を配置し、このピストンの一端に着座するように弁体を配置している。
【0003】
また、特許文献2に記載されたソレノイドポンプは、固定コア内に、ピストン(プランジャ)が摺動する端部領域が設けられており、この領域に対して連通するように、入口弁および出口弁が配置された構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−45932号公報
【特許文献2】特開2008−260522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のソレノイドポンプでは、ピストンが円筒状とされており、その内部に形成される中空部を作動液の流路として利用していた。
したがって、ソレノイドポンプの小型化を図ろうとして、ピストンを小径化すると、内部の流路も小径となり、吐出量が減ることになる。
特に、低温環境下におけるソレノイドポンプの使用においては、作動液の粘度が高くなる傾向にあるため、吐出量が減るおそれがある。
【0006】
また、特許文献2のソレノイドポンプでは、ピストンが摺動する端部領域内に、ピストンを初期位置に戻すためのスプリングが内設されていた。このため、このスプリングが作動液の通流(流動)の際に抵抗となり易く、吐出量が減る原因となり易い。
【0007】
そこで、本発明では、作動液を円滑に吐出することのできるソレノイドポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために創案された本発明は、固定コアと、前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルと、前記固定コア側に移動させた前記可動コアを前記固定コアから離間させるばね部材と、少なくとも一部が前記固定コアになるポンプハウジングと、前記ポンプハウジング内に形成された圧力室と、作動液を当該圧力室に吸入する際に開弁する吸入弁と、前記圧力室から作動液を吐出する際に開弁する吐出弁と、前記ポンプハウジング内に設けられ、前記可動コアの移動に連動して往復動することで、前記圧力室の容積を増減させるピストンと、を備え、前記圧力室は、前記ピストンを挟んで前記可動コアが配置される側と反対側に形成されており、前記吸入弁の連通口および前記吐出弁の連通口が、前記圧力室に面する前記ポンプハウジングに開口されているとともに、前記ばね部材が前記圧力室の外部に配置されており、前記吸入弁および前記吐出弁の一方は、その弁体の移動方向が前記ピストンの軸方向に沿う方向となるように配置されており、他方は、前記一方の弁の外周を囲むように配置されて、前記ピストンの軸方向に沿う作動液の流れを許容あるいは遮断する弁であることを特徴とする。
【0009】
かかるソレノイドポンプによると、圧力室は、ポンプハウジング内のピストンを挟んで可動コアが配置される側と反対側に形成されており、吸入弁の連通口および吐出弁の連通口が、圧力室に面するポンプハウジングに開口されているので、吸入弁から吐出弁へ作動液が流れる過程で、作動液は、ピストン内を通らずにポンプハウジング内の圧力室を経由することとなる。したがって、作動液を円滑に吐出することができる。
【0010】
また、ばね部材が圧力室の外部に配置されているので、作動液の流動の抵抗となり易いばね部材を作動液の通路となる圧力室に配置しないで済み、吐出量の減少となり得る原因を圧力室から好適に排除して、作動液の円滑な通流を実現することができる。したがって、作動液を円滑に吐出することができる。
【0011】
また、吸入弁および吐出弁の他方は、一方の弁の外周を囲むように配置されて、ピストンの軸方向に沿う作動液の流れを許容あるいは遮断する弁であるので、ソレノイドポンプの軸方向の長さを短くすることができ、小型化を図ることができる。
この場合、吸入弁および吐出弁の他方を、一方の弁の外周を囲むように配置されたカップシールで構成することにより、簡易な構成を採用しながら小型化を達成することのできるソレノイドポンプが得られる。
【0012】
また、本発明は、前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間に、前記圧力室側から前記可動コア側に作動液が流出するのを防止するシール部材が配置されている構成とするのがよい。
【0013】
このソレノイドポンプによれば、シール部材により、作動液が圧力室側から可動コア側に流出することがないので、可動コアが作動液に浸されない構成とすることができ、可動コアが作動する際に作動液による抵抗が発生するのを阻止することができる。したがって、可動コアの良好な移動を実現することができ、作動液を円滑に吐出することができる。
【0014】
また、本発明は、前記可動コアを摺動自在に収容する有底の円筒部材を備え、前記円筒部材には、前記ポンプハウジング内において前記ピストンが摺動可能に配置される空間に連通する外気連通孔が形成されている構成とするのがよい。
【0015】
このソレノイドポンプによれば、円筒部材に形成された外気連通孔によって、ポンプハウジング内においてピストンが摺動可能に配置される空間が外気に連通することとなり、ピストンの好適な摺動が確保される。したがって、作動液を円滑に吐出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るソレノイドポンプによると、作動液を円滑に吐出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図2】第1参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの断面図である。
【図3】第1参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図4】第2参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図5】第3参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図6】変形例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図7】第4参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図8】第5参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図9】第6参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図10】第7参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図11】第8参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置のブレーキ液圧回路図である。
【図12】第9参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの断面図である。
【図13】第9参考例のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図14】第1実施形態のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの断面図である。
【図15】第1実施形態のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【図16】第2実施形態のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの断面図である。
【図17】第2実施形態のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置に適用されるソレノイドポンプの要部の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、添付した図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明において、同一の要素には同一の符号を用い、重複する説明は省略する。
(第1参考例)
はじめに、第1参考例に係るソレノイドポンプが適用されるバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置(以下、「ブレーキ制御装置」という。)Uについて説明する。
【0019】
図1に示すように、ブレーキ制御装置Uは、自動二輪車、自動三輪車、オールテレーンビークル(ATV)などバーハンドルタイプの車両に好適に用いられるものである。第1参考例のブレーキ制御装置Uは、前輪側のブレーキ系統K1を備えて構成され、前輪に装着された車輪ブレーキFに付与する制動力を制御装置6により適宜制御することによって、車輪ブレーキFのアンチロックブレーキ制御が可能になっている。なお、後輪側のブレーキ系統K2は、他方の操作子としてのブレーキレバーL2の操作で車輪ブレーキRが直接作動されるコンベンショナルブレーキとして構成されている。
【0020】
以下、図1に示すブレーキ液圧回路を詳細に説明する。
ブレーキ系統K1は、一方の操作子としてのブレーキレバーL1の操作に応じて前輪の車輪ブレーキFを制動するものであり、一方のマスタシリンダとしてのマスタシリンダMC1に通じる入口ポートJ1から出口ポートJ2に至る流路を備えている。なお、マスタシリンダMC1と入口ポートJ1との間は、配管H1で接続されている。また、出口ポートJ2は、配管H2を通じて前輪の車輪ブレーキFに接続されている。
【0021】
マスタシリンダMC1は、作動液としてのブレーキ液を貯蔵するブレーキ液タンク室が接続されたシリンダを有しており、シリンダ内にはブレーキレバーL1の操作によりシリンダの軸方向へ摺動してブレーキ液を流出する図示しないロッドピストンが組み付けられている。
【0022】
ブレーキ系統K1は、第1の制御弁手段としての前輪制御弁手段1と、第1のリザーバとしてのリザーバ4と、チェック弁5と、ソレノイドポンプ10とを備えている。前輪制御弁手段1は、入口弁2と、出口弁3と、チェック弁2aとを備えている。
【0023】
なお、ここでは、入口ポートJ1から入口弁2に至る流路(油路)を「出力液圧路D1」と称し、入口弁2から出口ポートJ2に至る流路を「車輪液圧路E1」と称し、リザーバ4からソレノイドポンプ10に至る流路を「吸入液圧路G1」と称し、ソレノイドポンプ10から車輪液圧路E1に至る流路を「吐出液圧路N1」と称する。また、車輪液圧路E1から出口弁3を通じてリザーバ4に至る流路を「開放路Q1」と称し、開放路Q1から出力液圧路D1に至る流路を「戻り路T1」と称する。
【0024】
前輪制御弁手段1は、車輪液圧路E1を開放(入口弁2が開)しつつ開放路Q1を遮断(出口弁3が閉)する状態(通常時)、車輪液圧路E1を遮断(入口弁2が閉)しつつ開放路Q1を開放(出口弁3が開)する状態(ABS制御時(アンチロックブレーキ制御時)における減圧時)、および車輪液圧路E1と開放路Q1とを遮断(入口弁2、出口弁3が閉)する状態(ABS制御時における保持、あるいはABS制御時における増圧時)を切り換える機能を有している。
【0025】
入口弁2は、出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間に介設された常開型の電磁弁である。入口弁2は、通常時に開いていることで、マスタシリンダMC1からのブレーキ液圧が出力液圧路D1から車輪液圧路E1を通じて車輪ブレーキFへ伝達するのを許容している。また、入口弁2は、前輪がロックしそうになったときに制御装置6の制御により閉塞されることで、マスタシリンダMC1からのブレーキ液圧が出力液圧路D1から車輪液圧路E1を通じて車輪ブレーキFへ伝達するのを遮断する。
【0026】
出口弁3は、車輪液圧路E1と開放路Q1との間に介設された常閉型の電磁弁である。出口弁3は、通常時に閉塞されているが、前輪がロックしそうになったときに制御装置6の制御により開放されることで、車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を車輪液圧路E1から開放路Q1に逃がす(ABS制御時における減圧時)。これにより、開放路Q1に逃がされたブレーキ液は、リザーバ4へ一時的に流入する。
【0027】
チェック弁2aは、入口弁2に並列に接続されている。このチェック弁2aは、車輪ブレーキF側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入のみを許容する弁であり、ブレーキレバーL1からの入力が解除された場合に、入口弁2を閉じた状態にしたときにおいても、車輪ブレーキF側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0028】
ソレノイドポンプ10は、吸入液圧路G1と吐出液圧路N1と、の間に介設されており、後記する可動コア13と電磁コイル14(図2参照)等によって駆動することで、吸入液圧路G1を介してリザーバ4に貯留されたブレーキ液を吸入し吐出液圧路N1に吐出する。これにより、車輪ブレーキFに対して、ブレーキ液圧の増圧を行うことが可能となる。本参考例では、制御装置6の制御によってABS制御時における増圧時にのみソレノイドポンプ10が作動するように構成されている。なお、ソレノイドポンプ10の作動時(増圧時)には、前記したように制御装置6によって入口弁2および出口弁3が閉塞された状態にされ、車輪液圧路E1が閉じられた液圧路とされて吐出液圧路N1からのブレーキ液の流入が許容される状態となる。
なお、ソレノイドポンプ10の構造の詳細は後記する。
【0029】
リザーバ4は、開放路Q1に設けられており、出口弁3が開放されることによって車輪液圧路E1から逃がされるブレーキ液を一時的に貯留する機能を有している。リザーバ4に貯留されたブレーキ液は、車輪ブレーキFの増圧時等にソレノイドポンプ10により吸入される。
【0030】
チェック弁5は、戻り路T1に設けられた一方向弁である。チェック弁5は、開放路Q1側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入のみを許容し、ブレーキレバーL1からの入力が解除された場合に、リザーバ4側からマスタシリンダMC1側へのブレーキ液の流入を許容する。
【0031】
一方、第2のブレーキ系統K2は、前記したように後輪を制動するためのものであり、液圧源であるマスタシリンダMC2から配管H3を通じて後輪の車輪ブレーキRに接続されている。
これによって、ブレーキレバーL2を操作するとマスタシリンダMC2からのブレーキ液が車輪ブレーキRに直接作用するようになっている。
【0032】
制御装置6は、図示しない前輪用の車輪速度センサ等からの計測値を入力し、ブレーキ系統K1の各機器の作動を制御する。
【0033】
次に、このようなブレーキ制御装置Uによって実現される前輪側の通常のブレーキ制御およびアンチロックブレーキ制御について説明する。
【0034】
(通常ブレーキ)
通常のブレーキ制御において、前輪のブレーキ系統K1では、マスタシリンダMC1から車輪ブレーキFに至る流路が出力液圧路D1、車輪液圧路E1を通じて連通された状態となっている。これにより、ブレーキレバーL1を操作すると、出力液圧路D1、入口弁2、車輪液圧路E1を通じてブレーキ液圧が車輪ブレーキFに作用する。これにより、ブレーキレバーL1を操作することによる前輪のブレーキ制動が可能となる。
なお、ブレーキレバーL1を戻すと、車輪ブレーキFに作用していたブレーキ液が車輪液圧路E1、入口弁2(チェック弁2a)、出力液圧路D1を通じてマスタシリンダMC1に戻される。
【0035】
(ABS制御)
ABS制御は、前輪がロック状態に陥りそうになったときに実行されるものであり、前輪制御弁手段1およびソレノイドポンプ10を制御して、車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を減圧、増圧あるいは一定に保持する状態を適宜選択することによって実現される。なお、減圧、増圧および保持のいずれを選択するかは、前輪用の図示しない車輪速度センサから得られた車輪速度に基づいて、制御装置6によって判断される。
【0036】
そして、制御装置6において、例えば、前輪の車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を減圧すべきであると判断された場合には、「減圧状態」が選択され、前輪制御弁手段1により出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間が遮断され、車輪液圧路E1と開放路Q1との間が開放され、さらに、ソレノイドポンプ10が停止される。具体的には、制御装置6により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を励磁して開弁状態にし、ソレノイドポンプ10が停止される。このようにすると、車輪ブレーキFに通じる車輪液圧路E1のブレーキ液が開放路Q1を通ってリザーバ4に流入し、その結果、前輪の車輪ブレーキFに作用していたブレーキ液圧が減圧される。
【0037】
また、制御装置6において前輪の車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を一定に保持すべきであると判断された場合には、前輪制御弁手段1により出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間、および車輪液圧路E1と開放路Q1との間がそれぞれ遮断され、さらに、ソレノイドポンプ10が停止される。具体的には、制御装置6により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にする。このようにすると、車輪ブレーキF、ソレノイドポンプ10、入口弁2および出口弁3で閉じられた流路内にブレーキ液が閉じ込められることになり、その結果、車輪ブレーキFに作用しているブレーキ液圧が一定に保持される。
【0038】
さらに、制御装置6によって、前輪の車輪ブレーキFに作用するブレーキ液圧を増圧すべきであると判断された場合には、「増圧状態」が選択され、前輪制御弁手段1により出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間、および車輪液圧路E1と開放路Q1との間がそれぞれ遮断され、さらに、ソレノイドポンプ10が駆動される。具体的には、制御装置6により入口弁2を励磁して閉弁状態にするとともに、出口弁3を消磁して閉弁状態にし、ソレノイドポンプ10が駆動される。このようにすると、ソレノイドポンプ10の駆動によってリザーバ4から吸入液圧路G1を通じてブレーキ液が吸入され、車輪ブレーキF、ソレノイドポンプ10、入口弁2および出口弁3で閉じられた車輪液圧路E1の流路内に、吐出液圧路N1からブレーキ液が流出する。これによって、流出したブレーキ液が、車輪ブレーキFに作用し、ブレーキ液圧が増圧される。
【0039】
次に、ソレノイドポンプ10の詳細について説明する。なお、以下では、ソレノイドポンプ10のポンプハウジング11の挿入部11Aが配置される側を「一端側」、可動コア13が配置される側を「他端側」と称して説明する。
ソレノイドポンプ10は、図2、図3に示すように、少なくとも一部が固定コアになる円筒状のポンプハウジング11と、このポンプハウジング11の他端側に固定された有底円筒状のガイドパイプ12と、ポンプハウジング11を貫通する貫通孔110に挿通されるピストン111と、ガイドパイプ12内において進退動自在に配置され、ポンプハウジング11内に形成された圧力室120に向けてピストン111を押圧するための可動コア13と、ポンプハウジング11およびガイドパイプ12に外装されたコイルとしての電磁コイル14と、ブレーキ液を圧力室120に吸入する際に開弁する吸入弁130と、圧力室120からブレーキ液を吐出する際に開弁する吐出弁140と、を主として備えて構成されている。
【0040】
ポンプハウジング11は、鉄や鉄合金等の磁性材料からなる円筒状を呈しており、挿入部11Aと胴部11Bとを有している。挿入部11Aは、ブレーキ制御装置Uの各種部品が取り付けられる基体200に形成された取付穴201にシール部材11aを介して液密に挿入される。挿入部11Bには、ガイドパイプ12が取り付けられる。ポンプハウジング11には、ピストン111が挿通される前記した貫通孔110が軸線に沿って形成されている。また、挿入部11Aは、取付穴201の開口側からリング状の抜け止め部材11bで固定される。
なお、ポンプハウジング11は、取付穴201に対して圧入やカシメ等で固定してもよい。
【0041】
挿入部11Aは、大径部112と小径部113とを備え、大径部112の内側には、貫通孔110の一部を利用して圧力室120が形成されている。
小径部113の一端部には、基体200の取付穴201の底壁に形成された流路(吸入液圧路G1)に向けて、貫通孔110の一端が開口している。この例では、その開口の内空に吸入弁130が装着されて配置されている。
また、大径部112の周壁部には、基体200の取付穴201の側壁部に形成された流路(吐出液圧路N1)と圧力室120とを連通する連通孔110aが形成されている。この例では、連通孔110aの開口の内空に吐出弁140が配置されている。
圧力室120は、ポンプハウジング11内の後記するピストン111を挟んで可動コア13が配置される側(他端側)と反対側(一端側)に配置されている。本参考例では、吸入弁130と、吐出弁140と、ピストン111とで、貫通孔110の一部が仕切られる(囲われる)ことで圧力室120が形成されている。
そして、圧力室120に面するポンプハウジング11の側壁には、吸入弁130の連通口130aと吐出弁140の連通口140aとが開口形成されている。つまり、吸入弁130および吐出弁140は、圧力室120に相互に隣接して配置されている。
【0042】
吸入弁130は、吸入液圧路G1と圧力室120との間の流路を開閉する一方向弁であり、前記したように、貫通孔110の一端の開口の内空に配置され、吸入弁130を構成する弁体としての吸入弁体132が、ピストン111の軸方向に沿う移動方向となるように配置されている。
より詳細には、吸入弁130は、貫通孔110の一端の内壁に嵌合する円筒状の弁座部材131と、弁座部材131に形成されたテーパ状の弁座131aに着座する球状の吸入弁体132と、弁座部材131の圧力室120側の開口から弁座部材131に取り付けられた断面コ字形状の保持部材133と、吸入弁体132と保持部材133との間に圧縮状態で配置された吸入弁ばね134と、を備えて構成されている。
【0043】
吸入弁体132は、吸入弁ばね134の復元力によって、弁座131aに着座するように付勢されており、後記するピストン111が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に移動(復動作)するのに伴って圧力室120が減圧されるのに応じて開弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを許容する。また、吸入弁体132は、後記するピストン111が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に移動(往動作)するのに伴って圧力室120が増圧されるのに応じて閉弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入するのを阻止するようになっている。
【0044】
吐出弁140は、圧力室120と吐出液圧路N1との間の流路を開閉する一方向弁であり、前記したように、連通孔110aの開口の内空に配置され、吐出弁140を構成する弁体としての吐出弁体142が、ピストン111の軸方向と異なる移動方向となるように配置されている。この例では、吐出弁体142の移動方向が、ピストン111の軸方向と垂直の方向となるように吐出弁140が大径部112に配置されている。
より詳細には、吐出弁140は、貫通孔110に通じる連通孔110aに形成されたテーパ状の弁座141aに着座する球状の吐出弁体142と、連通孔110aの吐出側の開口から連通孔110aに取り付けられた断面コ字形状の保持部材143と、吐出弁体142と保持部材143との間に圧縮状態で配置された吐出弁ばね144と、を備えて構成されている。
【0045】
吐出弁体142は、吐出弁ばね144の復元力によって、弁座141aに着座するように付勢されており、後記するピストン111が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に移動(往動作)するのに伴って圧力室120が増圧されるのに応じて開弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出するのを許容するようになっている。また、吐出弁体142は、後記するピストン111が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に移動(復動作)するのに伴って圧力室120が減圧されるのに応じて閉弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出するのを阻止するようになっている。
【0046】
ポンプハウジング11の貫通孔110内には、ピストン111の他、このピストン111を可動コア13側(他端側、可動コア13をポンプハウジング11から離間させる側)へ付勢する戻しばね114(ばね部材)、可動コア13とピストン111との間に配置されるリテーナ115、このリテーナ115の摺動をガイドするガイド部材116が配置されている。
【0047】
ピストン111は、シール部材としてのOリング111aを介してポンプハウジング11の貫通孔110に軸方向摺動可能に挿通されて配置されており、摺動によって、その一端部が圧力室120に対して出没する(圧力室120の容積を可変する)ように構成されている。つまり、圧力室120は、後記するように、ピストン111が一端側に摺動してピストン111の一端部が圧力室120内に突出することで、容積が縮小するようになっており、また、ピストン111が他端側に摺動してピストン111の一端部が圧力室120から没することで、容積が増大するようになっている。
ピストン111は、圧力室120に面する部分(一端部)にブレーキ液の通路となる開口がなく、ピストン111内をブレーキ液が通流しない構造となっている。
【0048】
ピストン111の他端部にはフランジ部111bが形成されており、このフランジ部111bの中心部を貫通するように通気孔111cが形成されている。通気孔111cは、ピストン111の胴部においてピストン111の径方向における複数の方向(本参考例では2方向)にそれぞれ分岐しており、貫通孔110内の戻しばね114が配置されるばね収容室S1に連通している。ばね収容室S1は、圧力室120と区切られて設けられている。
なお、ピストン111は、胴部とフランジ部111bとが貫通孔110の内面に対してそれぞれ摺動することで、軸方向の移動がガイドされるようになっている。
【0049】
Oリング111aは、貫通孔110に形成された段部110bに配置され、この段部110bに対して他端側から装着されるリング部材110cで段部110b内に保持されている。
本参考例では、このOリング111aを境にして、一端側の領域がブレーキ液の存在する領域となっているとともに、他端側の領域が、後記するように大気に連通する領域となっている。
【0050】
戻しばね114は、コイルばねであり、圧力室120の外側である、圧力室120よりも可動コア13側のばね収容室S1に配置されている。そして、戻しばね114は、貫通孔110内において、リング部材110cとピストン111のフランジ部111bとの間に圧縮状態で介設され、ピストン111を可動コア13側に付勢している。また、これと同時に、戻しばね114は、リング部材110cを段部110bに向けて押圧し、Oリング111aを段部110b内に保持する機能も併せ備えている。
ここで、戻しばね114の戻し力は、貫通孔110とピストン111との間に生じる摺動抵抗、ピストン111とOリング111aとの間に生じる摺動抵抗、後記するリテーナ115とガイド部材116との間に生じる摺動抵抗、およびガイドパイプ12と可動コア13との間に生じる摺動抵抗の4つを加算したものよりも大きくなるように設定されている。したがって、後記するように、電磁コイル14が消磁した際には、戻しばね114の戻し力によって、ピストン111が圧力室120から離れる側(一端側:可動コア13側)へ摺動する。
なお、戻しばね114は、板ばね等の付勢力を有する部材を用いてもよい。
【0051】
リテーナ115は、可動コア13とピストン111との間に配置された非磁性材からなる円筒状の部材である。ポンプハウジング11の胴部11B内には、磁性材からなる円筒状のガイド部材116が圧入等によって固定されており、リテーナ115は、このガイド部材116に支持されて、軸方向摺動可能に設けられている。ここで、リテーナ115の一端部は、戻しばね114で付勢されたピストン111のフランジ部111bの他端面に当接しており、また、リテーナ115の他端部は、可動コア13の一端面に当接している。
これにより、後記するようにして電磁コイル14が励磁すると、可動コア13がピストン111側に摺動してリテーナ115を押圧し、押圧されたリテーナ115がピストン111を押圧して、ピストン111が圧力室120側に摺動する。また、電磁コイル14が消磁すると、戻しばね114の付勢力によってピストン111が可動コア13側に戻されるとともに、戻されたピストン111によってリテーナ115が可動コア13側に押圧され、押圧されたリテーナ115が可動コア13を押圧して、可動コア13がガイドパイプ12の他端部に当接する位置(初期位置)に摺動する。
【0052】
また、リテーナ115は、その一端部をピストン111のフランジ部111bに当接した状態で、その中空部115cが、フランジ部111bに形成された通気孔111cに連通するようになっている。
【0053】
可動コア13は、磁性材料からなり、その一端面をリテーナ115の他端部に当接させた状態でガイドパイプ12の内部を軸方向に移動する。すなわち、可動コア13は、電磁コイル14を励磁したときに、ポンプハウジング11に引き寄せられ、戻しばね114の付勢力に抗して一端側に移動する。これにより、リテーナ115を介してピストン111が一端側に押動され、圧力室120にピストン111の一端部が突出して、圧力室120の容積を縮小する。
【0054】
可動コア13の中心部には、可動コア13の軸方向に沿って連通孔13aが形成されている。連通孔13aは、一端側がリテーナ115の中空部115cに連通しており、また、他端側がガイドパイプ12の他端部に形成された空間部S2に連通している。
【0055】
ガイドパイプ12は、有底円筒状を呈しており、ポンプハウジング11の胴部11Bの他端側に外側から嵌合(圧入)され、溶接により胴部11Bに固定されている。ガイドパイプ12の底部には、大気を導入する外気連通孔としての導入孔12aが形成されている。したがって、この導入孔12aを通じて、ガイドパイプ12の他端部に形成される空間部S2に大気が導入され、この空間部S2に連通する可動コア13の連通孔13a、リテーナ115の中空部115c、ピストン111の通気孔111cをそれぞれ通じて、貫通孔110内に形成されるばね収容室S1に大気が導入されるようになっている。これによって、ばね収容室S1内に空気が自由に出入りし、ピストン111のストレスのない軸方向の摺動が確保されている。
【0056】
電磁コイル14は、樹脂製のボビン14aにコイル14bが環装されて構成され、ボビン14aの外側には、磁路を形成するヨーク14cが配置されている。
【0057】
以上のように構成されたソレノイドポンプ10は、図2に示すように、基体200の取付穴201に挿入部11Aが挿入されて固定されると、吸入弁130の吸入口が吸入液圧路G1に連通し、また、吐出弁140の吐出口が吐出液圧路N1に連通する。
そして、電磁コイル14が励磁され、可動コア13がポンプハウジング11側へ吸引されてピストン111が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に移動すると、圧力室120が増圧されるのに応じて吐出弁140が開弁し、圧力室120から吐出液圧路N1へブレーキ液が流出する。
【0058】
続いて、電磁コイル14が消磁され、戻しばね114の付勢力によってピストン111が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に移動すると、圧力室120が減圧されるのに応じて吸入弁130が開弁し、吸入液圧路G1から圧力室120へブレーキ液が流入する。
すなわち、電磁コイル14の励磁・消磁を切換えることによって、可動コア13が軸方向に連続して往復動作し、それに応じて往復駆動されるピストン111で、ブレーキ液の吸入・吐出が連続して行われることになる。
【0059】
そして、これらの一連の動作において、吸入弁130から吸入されたブレーキ液は、連通口130aを通じて隣接する圧力室120に直に導入され、圧力室120に導入されたブレーキ液は、圧力室120から直に連通口140aを通って隣接する吐出弁140から吐出される。これにより、ブレーキ液は、ピストン111のOリング111aを境として、一端側のブレーキ液が存在する領域のみを経由して吸入・吐出されることとなる。
【0060】
以上説明したブレーキ制御装置Uによれば、ソレノイドポンプ10は、マスタシリンダMC1と車輪ブレーキFとの間を遮断しつつ、車輪ブレーキFとリザーバ4との間を遮断し、さらにソレノイドポンプ10を作動する増圧状態において、リザーバ4に貯留されたブレーキ液を汲み上げ、これを閉じられた液圧路となっている車輪液圧路E1に吐出可能であるので、ソレノイドポンプ10が作動すると、車輪液圧路E1のブレーキ液圧が増圧され、車輪ブレーキF側に増圧されたブレーキ液圧が作用する。ここで、増圧状態であるソレノイドポンプ10の作動時には、マスタシリンダMC1と車輪ブレーキFとの間が遮断されているので、増圧されたブレーキ液圧がマスタシリンダMC1側に伝達されることはない。したがって、ブレーキレバーL1にキックバックが生じるのを好適に阻止することができ、操作フィーリングを向上させることができる。
なお、ABS制御における増圧状態においては、出力液圧路D1のブレーキ液圧は車輪液圧路E1のブレーキ液圧以上になっているため、ソレノイドポンプ10によって増圧されたブレーキ液圧がチェック弁5を介してマスタシリンダMC1側に伝達されることもない。
【0061】
また、ソレノイドポンプ10が駆動される増圧時には、前輪制御弁手段1の入口弁2が閉弁されて、マスタシリンダMC1からのブレーキ液が車輪液圧路E1に流入するのを阻止することができるので、ソレノイドポンプ10にマスタシリンダMC1からのブレーキ液圧が作用せず、ソレノイドポンプ10に作用する負荷を軽減することができる。したがって、ソレノイドポンプ10のサイズダウンやコストダウンを図ってコストを低減することができる。
【0062】
また、増圧時にのみソレノイドポンプ10が駆動され、ブレーキ液圧を保持する制御時等にソレノイドポンプ10が停止しているので、総合的にソレノイドポンプ10の運転時間が減少されることとなり、作動音が低減されて商品性が向上する。
【0063】
また、入口弁2には、チェック弁2aが並列に接続されているので、ブレーキレバーL1がリリースされたときに車輪液圧路E1に生じているブレーキ液圧をマスタシリンダMC1側に早く抜く(戻す)ことができる。これによって、ブレーキレバーL1のリリース応答性が高まり、操作フィーリングを向上させることができる。
【0064】
また、ブレーキ系統K2は、ブレーキレバーL2の操作で直接作動される車輪ブレーキRを備えて、ブレーキ系統K1から独立して構成されているので、ブレーキ系統K1が備わる基体200の小型化を図ることができる。したがって、ブレーキ制御装置Uのコストの低減を図ることができる。
また、ブレーキ系統K2は、前輪のブレーキ系統K1と組み合わせることによって、簡易な構成でありながら良好なブレーキフィーリングを備えたブレーキ制御装置Uを安価に得ることができる。
【0065】
また、ブレーキ制御装置Uに用いられるソレノイドポンプ10によれば、圧力室120は、ポンプハウジング11内のピストン111を挟んで可動コア13が配置される側と反対側に形成されており、吸入弁130の連通口130aおよび吐出弁140の連通口140aが、圧力室120に面するポンプハウジング11に開口されているので、吸入弁130から吐出弁140へブレーキ液が流れる過程で、ブレーキ液は、ピストン111内を通らずにポンプハウジング11内の圧力室120を経由することとなる。したがって、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
【0066】
この場合、吸入弁130から圧力室120に直接に、ブレーキ液が吸引され、圧力室120から吐出弁140へ直接に、ブレーキ液が吐出されるので、ブレーキ液の通流性がよく、ブレーキ液の粘性が高まるような比較的温度の低い低温環境下にあっても、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
【0067】
また、戻しばね114が圧力室120の外部に配置されているので、ブレーキ液の流動の抵抗となり易い戻しばね114をブレーキ液の通路となる圧力室120に配置しないで済み、ブレーキ液の吐出量の減少となり得る原因を圧力室120から好適に排除して、ブレーキ液の円滑な通流を実現することができる。したがって、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
【0068】
また、吐出弁140は、その吐出弁体142の移動方向がピストン111の軸方向(吸入弁体132の移動方向)と異なる方向に配置されているので、例えば、ピストン111の軸方向と、吸入弁体132および吐出弁体142の移動方向と、を同方向に設けた場合に比べて、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さを短くすることが可能であり、これによって、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
しかも、吐出弁140は、その吐出弁体142の移動方向がピストン111の軸方向と垂直の方向に配置されているので、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さをより短くすることができ、より一層、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0069】
また、ポンプハウジング11とピストン111との間には、圧力室120側から可動コア13側にブレーキ液が流出するのを防止するOリング111aが配置されているので、このOリング111aを境として、一端側にブレーキ液が存在し、他端側に空気(気体、大気)が存在することとなり、他端側に存在する可動コア13がブレーキ液に浸されない構造とすることができる。これによって、可動コア13の良好な移動を実現することができ、可動コア13がブレーキ液中に配置されたときに比べて応答性が高まる。したがって、昇圧(増圧)レスポンスが向上し、ブレーキ液を円滑に吐出することができる。
また、Oリング111aを境として一端側の領域にブレーキ液の通流路等がまとめて構成されることとなるので、ポンプハウジング11内におけるブレーキ液の通流路構成が簡単になり、ソレノイドポンプ10を基体200等に組み付ける際に行うエアー抜き作業の作業時間を短縮することが可能となる。このことは、コストの低減に寄与する。
【0070】
(第2参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第2参考例について説明する。
本参考例が前記第1参考例と異なるところは、図4に示すように、出力液圧路D1に分岐路D2を設けて分岐路D2にシミュレータとしてのストロークシミュレータ20を設けた点にある。
【0071】
ストロークシミュレータ20は、ブレーキレバーL1の操作反力をブレーキレバーL1に擬似的に付与するものであって、分岐路D2に設けられたシミュレータ切替弁24を介して分岐路D2に接続されている。
【0072】
ストロークシミュレータ20は、シリンダ21と、シリンダ21の内部に摺動自在に挿入されたピストン22と、このピストン22を付勢するスプリング23とを備えており、ブレーキレバーL1の操作に起因してマスタシリンダMC1から吐出されたブレーキ液を、分岐路D2からシミュレータ切替弁24を介してシリンダ21に収容し、ピストン22に与えられるスプリング23の戻し力によってブレーキレバーL1の操作反力を発生させるようになっている。
【0073】
シミュレータ切替弁24は、分岐路D2の途中に介設された常閉型の電磁弁である。シミュレータ切替弁24は、通常時に閉塞されているが、ソレノイドポンプ10が駆動されたときに制御装置6の制御により開放されることで、ブレーキレバーL1の操作に起因してマスタシリンダMC1から吐出されたブレーキ液をストロークシミュレータ20に逃がす役割をなす。これにより、シミュレータ切替弁24を通じて逃がされたブレーキ液は、ストロークシミュレータ20へ一次的に流入し、ブレーキレバーL1の操作反力がブレーキレバーL1に擬似的に付与されることとなる。
【0074】
このブレーキ制御装置Uによれば、ブレーキ系統K1において、マスタシリンダMC1と車輪ブレーキFとの間を遮断しつつ、車輪ブレーキFとリザーバ4との間を遮断し、さらに、ソレノイドポンプ10を駆動する状態、つまり、閉じられた車輪液圧路E1に対してソレノイドポンプ10からブレーキ液が吐出されて車輪液圧路E1のブレーキ液圧が増圧されるときに、ブレーキレバーL1を操作したときのストローク感をストロークシミュレータ20によって演出することができ、より一層良好なブレーキフィーリングを得ることができる。
【0075】
(第3参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第3参考例について説明する。
本参考例では、図5に示すように、前輪のブレーキ系統K1に、ブレーキレバーL1の操作で二つの車輪ブレーキF、R1を制動する一方側連動ブレーキ手段30Aが設けられている。
【0076】
一方側連動ブレーキ手段30Aは、マスタシリンダMC1から出力液圧路D1に通じる配管H1に接続された分岐管H4と、二つの入力ポートおよび相互に独立した二つのシリンダRS1,RS2で構成される後輪の車輪ブレーキR1とを備えて構成されている。
【0077】
分岐管H4の一端は、配管H1に接続されており、他端は車輪ブレーキR1のシリンダRS2に接続されている。これによって、ブレーキレバーL1が操作されると、マスタシリンダMC1から配管H1に吐出したブレーキ液は、配管H1から出力液圧路D1および車輪液圧路E1を通じて前輪の車輪ブレーキFに作用するとともに、配管H1から分岐管H4に流れ込んで、後輪の車輪ブレーキR1のシリンダRS2に作用する。これにより、ブレーキレバーL1を操作することによる前後輪の連動ブレーキ制動が可能となる。
【0078】
また、ブレーキレバーL2が操作されたときには、マスタシリンダMC2から吐出したブレーキ液が配管H3を通じて後輪の車輪ブレーキR1のシリンダRS1に作用して、後輪の車輪ブレーキR1が単独で制動される。
【0079】
なお、本参考例では、独立した二つのシリンダRS1、RS2で後輪の車輪ブレーキR1を構成したが、図6に示すように、後輪の車輪ブレーキR1を独立した三つのシリンダRS1〜RS3で構成し、このうちのシリンダRS2に分岐管H4からのブレーキ液が作用するように構成するとともに、シリンダRS1,RS3に対して後輪のマスタシリンダMC2からのブレーキ液が配管H3を通じて直接的に作用するように構成してもよい。
なお、RS1〜RS3のシリンダ径等を変更することにより、連動ブレーキ時に車輪ブレーキR1に作用する制動力の強さの割合を適宜変更してもよい。
【0080】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、前輪のブレーキレバーL1を操作した際に、後輪へもブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
また、前輪側がABS制御中でも、後輪側の連動ブレーキ制動が可能であり、制動力の向上されたブレーキ制御装置Uが得られる。
【0081】
(第4参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第4参考例について説明する。
本参考例では、図7に示すように、後輪のブレーキ系統K2に、ブレーキレバーL2の操作で二つの車輪ブレーキF1,Rを制動する他方側連動ブレーキ手段30Bが設けられている。
【0082】
他方側連動ブレーキ手段30Bは、後輪のマスタシリンダMC2から車輪ブレーキRに通じる配管H3に接続された分岐管H4’と、二つの入力ポートおよび相互に独立した二つのシリンダFS1,FS2で構成される前輪の車輪ブレーキF1とを備えて構成されている。
【0083】
分岐管H4’は一端が配管H3に接続されており、他端が車輪ブレーキF1のシリンダFS1に接続されている。これによって、ブレーキレバーL2が操作されると、マスタシリンダMC2から配管H3に吐出したブレーキ液は、配管H3から後輪の車輪ブレーキRに作用するとともに、配管H3から分岐管H4’に分岐されて、前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS1に作用する。これにより、ブレーキレバーL2を操作することによる前後輪の連動ブレーキ制動が可能となる。
【0084】
また、前輪のブレーキレバーL1が操作されると、マスタシリンダMC1から配管H1に吐出したブレーキ液は、配管H1から出力液圧路D1および車輪液圧路E1を通じて前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS2に作用することとなり、前輪の車輪ブレーキF1が単独で制動される。
【0085】
なお、本参考例では、独立した二つのシリンダFS1、FS2で前輪の車輪ブレーキF1を構成したが、図示はしないが、前輪の車輪ブレーキF1を独立した三つのシリンダFS1〜FS3で構成し、例えばこのうちのシリンダFS2に分岐管H4’からのブレーキ液が作用するように構成するとともに、シリンダFS1,FS3に対して前輪のマスタシリンダMC1からのブレーキ液が車輪液圧路E1を通じて作用するように構成してもよい。
また、シリンダFS1〜FS3のシリンダ径等を変更することにより、連動ブレーキ時に車輪ブレーキF1に作用する制動力の強さの割合を適宜変更してもよい。
【0086】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、後輪のブレーキレバーL2を操作した際に、前輪へもブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
【0087】
(第5参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第5参考例について説明する。
本参考例が前記第1〜第4参考例と異なるところは、図8に示すように、後輪側の車輪ブレーキR2に機械式ブレーキを採用しているとともに、ブレーキレバーL1またはブレーキレバーL2のいずれを操作したときにも前後輪の連動ブレーキ制動が可能となる分岐装置30Cとシリンダ装置31とを備えている点にある。
ここで、シリンダ装置31は、前輪のマスタシリンダMC1の役割も果たすものである。
【0088】
ブレーキレバーL1には、連結手段V1を介してブレーキレバーL1の操作力を伝達するためのワイヤーW1(連繋手段)の一端が接続されており、また、ブレーキレバーL2には、連結手段V2を介してブレーキレバーL2の操作力を伝達するためのワイヤーW21(連繋手段)の一端が接続されている。ワイヤーW1、W21の他端は、分岐装置30Cにそれぞれ接続されている。
【0089】
分岐装置30Cは、ワイヤーW1、W21を通じて伝達された操作力を、前後輪両方の車輪ブレーキF、R2を制動するための操作力として分岐する装置であり、回動支点30aを中心として回動可能に設けられた作動子30を備えている。
【0090】
作動子30の一端側には、ワイヤーW1、W21の他端、および後輪の車輪ブレーキR2を制動操作するためのワイヤーW22の一端が接続されている。
また、作動子30の他端側には、シリンダ装置31のピストン33に連結されたロッド33aが接続されている。
【0091】
シリンダ装置31は、ブレーキ液を貯溜するシリンダ32と、シリンダ32の内部に摺動自在に挿入されたピストン33と、ピストン33を付勢するスプリング34とを備えている。シリンダ32には、配管H7を介して制動力に必要なブレーキ液が貯留部35から供給されるようになっている。
【0092】
ピストン33は、ロッド33aを介して作動子30の他端に接続されており、ブレーキレバーL1またはブレーキレバーL2の制動操作に起因して作動子30が図中矢印X1方向に回動すると、ロッド33aを介して押動され、シリンダ32の容積を縮小させる方向に摺動する。このようなシリンダ32の摺動によって、シリンダ32内に貯留されていたブレーキ液は、配管H6を介してブレーキ系統K1に供給され、前輪の車輪ブレーキFが制動される。
【0093】
つまり、シリンダ装置31は、ブレーキレバーL1またはブレーキレバーL2のいずれかが制動操作されたときに、ブレーキ系統K1に対してブレーキ液を供給可能である。なお、本参考例では、シリンダ装置31が、ブレーキ系統K1のマスタシリンダとして機能する。
【0094】
また、作動子30の一端側には、前記したようにワイヤーW22が接続されており、ブレーキレバーL1またはブレーキレバーL2の制動操作に起因して作動子30が図中矢印X1方向に回動されたときには、ワイヤーW22を介して後輪の車輪ブレーキR2が制動されることとなる。
したがって、ブレーキレバーL1またはブレーキレバーL2のいずれを操作したときにも分岐装置30C、シリンダ装置31によって前後輪の連動ブレーキ制動が可能となっている。
【0095】
本参考例におけるブレーキ制御装置Uにおいても、増圧時にのみソレノイドポンプ10が作動するように構成されており、ソレノイドポンプ10の作動時(増圧時)には、入口弁2および出口弁3が閉塞された状態にされ、車輪液圧路E1が閉じられた液圧路とされて、吐出液圧路N1からのブレーキ液の流入を許容する状態とされる。したがって、ソレノイドポンプ10の作動時に、車輪ブレーキF側のブレーキ液圧が増圧されても、このブレーキ液圧がシリンダ装置31側に伝達されることはなく、ブレーキレバーL1、L2にキックバックが生じるのを好適に阻止することができる。
【0096】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、前輪のブレーキレバーL1あるいは後輪のブレーキレバーL2の少なくとも一つを操作した際に、前後輪ともにブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
【0097】
(第6参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第6参考例について説明する。
本参考例は前記第5参考例の変形例であり、図9に示すように、分岐装置30C、シリンダ装置31が、他方側連動ブレーキ手段として機能するようになっており、後輪のブレーキレバーL2が操作されたときに前後輪の連動ブレーキ制動が可能となっている。
【0098】
分岐装置30Cは、前記第5参考例のものと同様に、回動支点30aを中心として回動する作動子30を備えており、作動子30の一端側には、後輪のブレーキレバーL2からのワイヤーW21の他端、および後輪の車輪ブレーキR2を制動操作するためのワイヤーW22の一端が接続されている。また、作動子30の他端側には、シリンダ装置31のピストン33に連結されたロッド33aが接続されている。
これにより、後輪のブレーキレバーL2が操作されると、その操作力がワイヤーW21を介して作動子30に伝達され、作動子30が回動支点30aを中心として図中矢印X1方向に回動してピストン33が押動されるようになっている。
【0099】
一方、前輪の車輪ブレーキF1は、前記した第4参考例のものと同様に、二つの入力ポートおよび相互に独立した二つのシリンダFS1,FS2を備えている。
シリンダFS1には、シリンダ装置31からの配管H8が接続されており、また、シリンダFS2には、ブレーキ系統K1からの配管H2が接続されている。
【0100】
したがって、後輪のブレーキレバーL2が操作されてシリンダ装置31のピストン33が押動されると、シリンダ32の容積が縮小され、シリンダ32内に貯留されたブレーキ液が配管H8を介して前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS1に供給される。これによって、後輪のブレーキレバーL2を操作することによる前後輪の連動ブレーキ制動が可能となっている。
【0101】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、後輪のブレーキレバーL2を操作した際に、前輪へもブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
【0102】
(第7参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第7参考例について説明する。
本参考例では、図10に示すように、後輪のブレーキ系統K2と別に、前輪のブレーキ系統K1と同様の構成を有する第2の制御弁手段としての連動制御弁手段1’、第2のリザーバとしてのリザーバ4’、チェック弁5’、ソレノイドポンプ10’を有する連動系統K1’が設けられている。連動制御弁手段1’は、入口弁2と、出口弁3と、チェック弁2aとを備えている。
なお、各部品の機能は、前記した前輪制御弁手段1と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0103】
前輪のブレーキ系統K1は、配管H2を介して前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS2に接続されており、後輪の連動系統K1’は、出口ポートJ4から配管H10を介して前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS1に接続されている。つまり、ブレーキ系統K1、連動系統K1’によるABS制御は、いずれも、前輪の車輪ブレーキF1に対して行われることとなる。
この例では、後輪のマスタシリンダMC2から入口ポートJ3を介して出力液圧路D1に通じる配管H9に分岐管H11の一端が接続され、この分岐管H11の他端に、後輪の車輪ブレーキRが接続されて後輪のブレーキ系統K2が構成されている。
したがって、ブレーキレバーL2を操作することによる前後輪の連動ブレーキ制動が可能となっている。
また、ブレーキ系統K1、連動系統K1’による前輪の車輪ブレーキF1のABS制御が可能となっている。
【0104】
連動系統K1’におけるソレノイドポンプ10’は、前記したブレーキ系統K1のソレノイドポンプ10と同様の構成とされて、制御装置6により同様に作動するように構成されている。つまり、ソレノイドポンプ10’は、連動系統K1’の増圧時にのみ作動するように構成されており、ソレノイドポンプ10’の作動時(増圧時)には、入口弁2および出口弁3が閉塞された状態にされて車輪液圧路E1が閉じられた液圧路とされ、車輪液圧路E1が吐出液圧路N1からのブレーキ液の流入を許容する状態とされる。
【0105】
これによって、ソレノイドポンプ10’の作動時(増圧時)に、車輪ブレーキF1側のブレーキ液圧が増圧されても、このブレーキ液圧がマスタシリンダMC2側に伝達されることはなく、ブレーキレバーL2にキックバックが生じるのを好適に阻止することができる。
【0106】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、後輪のブレーキレバーL2を操作した際に、前輪へもブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
また、前輪の連動ブレーキ制御時においてもABS制御が可能となり、制動力が向上する。
なお、ブレーキ系統K1,連動系統K1’に対してストロークシミュレータ20を設けてもよい。
【0107】
(第8参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第8参考例について説明する。
本参考例は、前記第7参考例の変形例であり、図11に示すように、前記したものと同様のブレーキ系統K2、連動系統K1’を後輪側に有するとともに、後輪の車輪ブレーキR2を機械式ブレーキにして、この車輪ブレーキR2に前輪の車輪ブレーキF1が連動するように、他方側連動ブレーキ手段として機能する分岐装置30C、シリンダ装置31を備えて構成されている。
【0108】
分岐装置30Cは、前記第6参考例と同様に、回動支点30aを中心として回動する作動子30を備えており、作動子30の一端側には、後輪のブレーキレバーL2からのワイヤーW21の他端、および後輪の車輪ブレーキR2を制動操作するためのワイヤーW22の一端が接続されている。また、作動子30の他端側には、シリンダ装置31のピストン33に連結されたロッド33aが接続されている。
したがって、後輪のブレーキレバーL2が操作されて作動子30が回動し、シリンダ装置31のピストン33が押動されると、シリンダ32の容積が縮小され、シリンダ32内に貯留されたブレーキ液が配管H12を通じて連動系統K1’に供給され、配管H10から前輪の車輪ブレーキF1のシリンダFS1に供給される。これによって、後輪のブレーキレバーL2を操作することによる前後輪の連動ブレーキ制動が可能となっている。
【0109】
本参考例におけるブレーキ制御装置Uにおいても、増圧時にのみソレノイドポンプ10’が作動するように構成されており、ソレノイドポンプ10’の作動時(増圧時)には、入口弁2および出口弁3が閉塞された状態にされ、車輪液圧路E1が閉じられた液圧路とされて、吐出液圧路N1からのブレーキ液の流入を許容する状態とされる。したがって、ソレノイドポンプ10’の作動時に、車輪ブレーキF1側のブレーキ液圧が増圧されても、このブレーキ液圧がシリンダ装置31側に伝達されることはなく、ブレーキレバーL2にキックバックが生じるのを好適に阻止することができる。
【0110】
本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、後輪のブレーキレバーL2を操作した際に、前輪へもブレーキの効力が発生する連動ブレーキ制動が可能となり、制動力が向上する。
また、前輪の連動ブレーキ制御時においても、ABS制御が可能となり、制動力が向上する。
【0111】
(第9参考例)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第9参考例について説明する。
本参考例が前記第1〜第8参考例と異なるところは、ソレノイドポンプ10(10’、以下同じ)における吸入・吐出方向を変更した点にある。
【0112】
本参考例では、図12、図13に示すように、基体200の取付穴201の底壁に吐出液圧路N1が開口形成されており、この吐出液圧路N1に向けて開口するようにソレノイドポンプ10の貫通孔110が設けられ、この貫通孔110の一端の内空に、吐出弁140が配置されている。
また、基体200の取付穴201の側壁部に吸入液圧路G1が開口形成されており、この吸入液圧路G1に向けて開口するように連通孔110aに通じる通孔110eが設けられ、この通孔110eの内空に吸入弁130が装着されて配置されている。つまり、本参考例のソレノイドポンプ10では、前記図2、3に示したソレノイドポンプ10におけるブレーキ液の通流方向と逆向きの通流方向でブレーキ液が吸入・吐出されるように構成されている。
【0113】
ポンプハウジング11の挿入部11Aの大径部112には、その内側に、貫通孔110の一部を利用して圧力室120が形成されており、この圧力室120に連通するように吸入弁130および吐出弁140が形成されている。
【0114】
吸入弁130は、圧力室120と吸入液圧路G1との間の流路を開閉する一方向弁であり、前記したように、通孔110eの開口の内空に装着されて配置され、吸入弁体132が、ピストン111の軸方向と異なる移動方向となるように配置されている。この例では、吸入弁体132の移動方向が、ピストン111の軸方向と垂直の方向となるように配置されている。
【0115】
吐出弁140は、吐出液圧路N1と圧力室120との間の流路を開閉する一方向弁であり、前記したように、貫通孔110の一端の開口の内空に配置され、吐出弁体142が、ピストン111の軸方向に沿う移動方向となるように配置されている。
【0116】
以上説明した本参考例のブレーキ制御装置Uによれば、吸入弁130から吐出弁140へブレーキ液が通流する過程で、ブレーキ液は、ピストン111を経由することがなく、ポンプハウジング11内の圧力室120のみを通って流動することとなる。したがって、吐出効率を高めて吐出量を増やすことができる。
【0117】
また、吸入弁130は、その吸入弁体132の移動方向がピストン111の軸方向と異なる方向(吐出弁体142の移動方向と異なる方向)となるように配置されているので、ピストン111の軸方向と、吸入弁体132および吐出弁体142の移動方向とを同方向に設けた場合に比べて、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さを短くすることが可能であり、これによって、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0118】
しかも、吸入弁130は、その吸入弁体132の移動方向がピストン111の軸方向と垂直の方向に配置されているので、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さをより短くすることができ、より一層、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0119】
(第1実施形態)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第1実施形態について説明する。
本実施形態が前記第9参考例と異なるところは、図14に示すように、吸入弁130Aの吸入弁体132の移動方向が、ピストン111の軸方向に沿う方向となるように配置されており、また、吐出弁140’が、吸入弁130Aの径方向外側周りを囲むように配置されて、ピストン111の軸方向に沿うブレーキ液の流れを許容あるいは遮断するように構成されている点にある。
【0120】
本実施形態では、基体200の取付穴201の底壁に吸入液圧路G1が開口形成されており、この吸入液圧路G1に向けて開口するようにソレノイドポンプ10の挿入部11A’の小径部113’の内壁面である貫通孔110の一端の内空にポンプハウジング11の一部を構成する円筒状保持部材131’が嵌め入れられている。そして、この円筒状保持部材131’の内空に、吸入弁130Aが配置されている。
【0121】
また、挿入部11Aの大径部112’の内壁面と円筒状保持部材131’の外壁面との間には、円筒状の空間部S3が形成されており、この空間部S3において、吸入弁130Aの径方向外側周りを囲む位置関係で、吐出弁140’が配置されている。
なお、基体200の取付穴201の側壁部に吐出液圧路N1が開口形成されており、この吐出液圧路N1に対向する大径部112’の周壁に周壁凹部112aが形成されている。そして、この周壁凹部112aと前記した空間部S3とを連通する連通孔110a’が、大径部112’に形成されている。
【0122】
円筒状保持部材131’は、円筒形状を呈しており、貫通孔110の一端から挿入されて貫通孔110の内空に嵌め入れられる。円筒状保持部材131’の軸方向略中央部は、内空へ向けてテーパ状に突出されており、この部分に、吸入弁130Aの吸入弁体132が着座する弁座131a’が形成されている。
円筒状保持部材131’は、一端側から他端側へ向けて外壁面が段状に縮径されており、一端側の大径とされた第1外壁部131bが貫通孔110の開口近傍の内壁にきつく嵌まり合うようになっている。第2外壁部131cは、第1外壁部131bよりも小径とされており、挿入部11Aの大径部112’の内壁面との間に前記した空間部S3の一部を形成している。第3外壁部131dは、第2外壁部131cよりも小径とされており、図15に示すように、この第3外壁部131dと、隣接する第2外壁部131cの側壁131c’と、一端側に隣接するフランジ部131eの側壁部131e’とで、吐出弁140’が嵌まり込む凹部131fを形成している。
なお、フランジ部131eは、貫通孔110の内壁110hに当接しないようになっており、その周部には、ブレーキ液の通路となる連通路131g(隙間)が形成されている。
【0123】
本実施形態では、吐出弁140’としてカップシールを採用している。吐出弁140’は、円環状のベース部141’と、このベース部141’の外周端部から軸方向に延びるリップ部142’とを備え、ベース部141’からリップ部142’にかけて断面略コ字状(図14参照)に形成されている。
【0124】
リップ部142’は、ピストン111が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に移動(往動作)するのに伴って内側に撓み、挿入部11Aの大径部112’の内壁面から離間して、当該内壁面との間にブレーキ液が通流する間隙(ブレーキ液が圧力室120から吐出液圧路N1に向けて吐出する間隙)を形成するようになっている。
また、リップ部142’は、ピストン111が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に移動(復動作)するのに伴って外側に撓み、挿入部11Aの大径部112’の内壁面に密着してブレーキ液の通流を阻止(シール)するようになっている。
【0125】
本実施形態のブレーキ制御装置Uによれば、吸入弁130Aの吸入弁体132の移動方向がピストン111の軸方向に沿う方向となっており、吸入弁130Aの外周を囲むように吐出弁140’が配置されて、ピストン111の軸方向に沿うブレーキ液の流れを吐出弁140’が許容あるいは遮断するようになっているので、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さを短くすることが可能であり、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0126】
また、吐出弁140’がカップシールであるので、簡易な構成を採用しながらソレノイドポンプ10の小型化を容易に達成することができる。
【0127】
(第2実施形態)
次に、本発明のバーハンドル車両用ブレーキ液圧制御装置の第2実施形態について説明する。
本実施形態は前記第1実施形態の変形例であり、図16に示すように挿入部11Aの大径部112’の内空にポンプハウジング11の一部を構成する円筒状保持部材150が嵌合されている。そして、この円筒状保持部材150の内側に、吐出弁140Aが設けられているとともに、円筒状保持部材150の外側に、吸入弁130Bが設けられている。
【0128】
本実施形態では、基体200の取付穴201の底壁に吐出液圧路N1が開口形成されており、この吐出液圧路N1に向けて開口するようにソレノイドポンプ10の貫通孔110が設けられ、この貫通孔110の一端の内空に嵌め入れられた円筒状保持部材150の内側に、吐出弁140Aが配置されている。
また、挿入部11Aの大径部112’の内壁面と円筒状保持部材150の外壁面との間に、吐出弁140Aの径方向外側周りを囲むようにして、吸入弁130Bが配置されている。
なお、基体200の取付穴201の側壁部に吸入液圧路G1が開口形成されており、この吸入液圧路G1に対向する大径部112’の周壁に周壁凹部112aが形成されている。そして、この周壁凹部112aと、前記した吸入弁130Bとは、連通孔110a’および連通路110c’を通じて連通している。
【0129】
円筒状保持部材150は、円筒形状を呈しており、貫通孔110の一端から挿入されて貫通孔110の内空に嵌め入れられる。円筒状保持部材150の他端部内壁には、吐出弁140Aの吐出弁体142が着座する弁座141a’が形成されている。
円筒状保持部材150は、一端側から他端側へ向けて外壁面が段状に縮径されており、一端側の大径とされた第1外壁部150bが貫通孔110の開口近傍の内壁にきつく嵌まり合うようになっている。第2外壁部150cは、第1外壁部150bよりも小径とされており、挿入部11Aの大径部112’の内壁面との間に前記した連通路110c’の一部を形成している。第3外壁部150dは、第2外壁部150cよりも小径とされており、図17に示すように、この第3外壁部150dと、隣接する第2外壁部150cの側壁150c’と、一端側に隣接するフランジ部150eの側壁部150e’とで、吸入弁130Bが嵌まり込む凹部150fを形成している。
なお、フランジ部150eは、貫通孔110の内壁110h(図16参照)との間にブレーキ液の通路となる隙間を形成して配置されている。
【0130】
本実施形態では、前記第1実施形態で説明したものと同様にベース部135とリップ部136とを備えるカップシールを軸方向に逆向きとなるように、円筒状保持部材150の凹部150fに装着することによって、吸入弁130Bとして使用している。
【0131】
したがって、リップ部136は、ピストン111が圧力室120の容積を増大する方向(他端側へ向かう方向)に移動(復動作)するのに伴って内側に撓み、挿入部11Aの大径部112’の内壁面から離間して、当該内壁面との間にブレーキ液が通流する間隙(ブレーキ液が吸入液圧路G1から圧力室120に向けて流入する間隙)を形成するようになっている。
また、リップ部136は、ピストン111が圧力室120の容積を縮小する方向(一端側へ向かう方向)に移動(往動作)するのに伴って外側に撓み、挿入部11Aの大径部112’の内壁面に密着してブレーキ液の通流を阻止(シール)するようになっている。
【0132】
本実施形態のブレーキ制御装置Uによれば、吐出弁140Aの吐出弁体142の移動方向がピストン111の軸方向に沿う方向となっており、吐出弁140Aの外周を囲むように吸入弁130Bが配置されて、ピストン111の軸方向に沿うブレーキ液の流れを吸入弁130Bが許容あるいは遮断するようになっているので、ソレノイドポンプ10の軸方向の長さを短くすることが可能であり、ソレノイドポンプ10の小型化を図ることができる。
【0133】
また、吸入弁130Bがカップシールであるので、簡易な構成を採用しながらソレノイドポンプ10の小型化を容易に達成することができる。
【0134】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能である。
例えば、ブレーキ系統K1は、前輪側のブレーキ系統として説明したが、これを後輪側のブレーキ系統に採用してもよい。また、ブレーキ系統K2は、後輪側のブレーキ系統として説明したが、これを前輪側のブレーキ系統に採用してもよい。
また、ソレノイドポンプ10(10’)におけるブレーキ液の吐出量をブレーキ系統ごとに変更してもよい。この場合、圧力室120やピストン111の径を変更等することによって吐出量が異なる仕様とすることができる。
【0135】
また、ABS制御可能なブレーキ系統に、マスタシリンダMC1(MC2)、シリンダ装置31やブレーキF(F1)の液圧を計測できるように構成して、これらの液圧によって制御装置6がブレーキ系統K1(K1’)の各機器の作動を制御するように構成してもよい。
【0136】
また、ブレーキ制御装置Uが、さらに路面の摩擦係数判別手段を有する構成としてもよい。この場合、ABS制御時に、路面の摩擦係数が低いと判断したときには、前記した増圧を行い、路面の摩擦係数が高いと判断したときには、前輪制御弁手段1や連動制御弁手段1’により出力液圧路D1と車輪液圧路E1との間を開放するとともに、車輪液圧路E1と開放路Q1との間を遮断して、さらにソレノイドポンプ10(10’)が停止されるように構成してもよい。
これは、路面の摩擦係数の高い状態では、減圧によってリザーバ4(4’)に貯留されるブレーキ液量が少ないので、ソレノイドポンプ10(10’)でリザーバ4(4’)内のブレーキ液を汲み上げなくても十分な時間、ABS制御を継続可能なためである。
なお、この増圧状態においては、ソレノイドポンプ10(10’)を駆動させないので、キックバックは発生せず、ソレノイドポンプ10(10’)の駆動に伴う電力消費も生じない。
【符号の説明】
【0137】
1 前輪制御弁手段(第1の制御弁手段)
1’ 連動制御弁手段(第2の制御弁手段)
10 ソレノイドポンプ
11 ポンプハウジング
12 ガイドパイプ
13 可動コア
14 電磁コイル
20 ストロークシミュレータ
30 作動子(分岐装置)
30A 一方側連動ブレーキ手段
30B 他方側連動ブレーキ手段
30C 分岐装置
31 シリンダ装置
111 ピストン
111a Oリング(シール部材)
120 圧力室
130 吸入弁
130A 吸入弁
130B 吸入弁
132 吸入弁体(弁体)
140 吐出弁
140A 吐出弁
142 吐出弁体(弁体)
143 保持部材
150 円筒状保持部材
D1 出力液圧路
D2 分岐路
E1 車輪液圧路
F 車輪ブレーキ
F1 車輪ブレーキ
G1 吸入液圧路
K1 ブレーキ系統
K2 ブレーキ系統
L1 ブレーキレバー(一方の操作子)
L2 ブレーキレバー(他方の操作子)
MC1 マスタシリンダ
MC2 マスタシリンダ
N1 吐出液圧路
Q1 開放路
R、R1、R3 後輪の車輪ブレーキ
U ブレーキ制御装置
W1 ワイヤー(連繋手段)
W21 ワイヤー(連繋手段)
W22 ワイヤー(連繋手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定コアと、
前記固定コアに対して移動可能に設けられた可動コアと、
電磁力で前記可動コアを前記固定コア側に移動させるコイルと、
前記固定コア側に移動させた前記可動コアを前記固定コアから離間させるばね部材と、
少なくとも一部が前記固定コアになるポンプハウジングと、
前記ポンプハウジング内に形成された圧力室と、
作動液を当該圧力室に吸入する際に開弁する吸入弁と、
前記圧力室から作動液を吐出する際に開弁する吐出弁と、
前記ポンプハウジング内に設けられ、前記可動コアの移動に連動して往復動することで、前記圧力室の容積を増減させるピストンと、を備え、
前記圧力室は、前記ピストンを挟んで前記可動コアが配置される側と反対側に形成されており、
前記吸入弁の連通口および前記吐出弁の連通口が、前記圧力室に面する前記ポンプハウジングに開口されているとともに、
前記ばね部材が前記圧力室の外部に配置されており、
前記吸入弁および前記吐出弁の一方は、その弁体の移動方向が前記ピストンの軸方向に沿う方向となるように配置されており、他方は、前記一方の弁の外周を囲むように配置されて、前記ピストンの軸方向に沿う作動液の流れを許容あるいは遮断する弁であることを特徴とするソレノイドポンプ。
【請求項2】
前記吸入弁および前記吐出弁の他方は、前記一方の弁の外周を囲むように配置されたカップシールであることを特徴とする請求項1に記載のソレノイドポンプ。
【請求項3】
前記ポンプハウジングと前記ピストンとの間には、前記圧力室側から前記可動コア側に作動液が流出するのを防止するシール部材が配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のソレノイドポンプ。
【請求項4】
前記可動コアを摺動自在に収容する有底の円筒部材を備え、
前記円筒部材には、前記ポンプハウジング内において前記ピストンが摺動可能に配置される空間に連通する外気連通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載のソレノイドポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−53632(P2013−53632A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−274279(P2012−274279)
【出願日】平成24年12月17日(2012.12.17)
【分割の表示】特願2009−77182(P2009−77182)の分割
【原出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】