説明

ソーラシミュレータ及び太陽電池出力特性測定方法

【課題】本発明は、スペクトル合致度の高いソーラシミュレータ及び太陽電池出力特性測定方法の提供を目的とする。
【解決手段】キセノン光源部2からのキセノン光21を、エアマス1.5フィルタ3を通した後、分離部4によって第1キセノン分離光22と第2キセノン分離光23とに分離し、その分離した第1キセノン分離光21を、波長変換素子5に透過させて長波長帯域の光に変換する。そして、その変換した第1キセノン分離光22aを、前記第2キセノン分離光と共に太陽電池110に照射させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の出力特性を測定するソーラシミュレータ及び太陽電池出力特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の出力特性を測定するソーラシミュレータは、国際的に統一された基準太陽光スペクトル(AM1.5の擬似太陽光スペクトル)とのスペクトル合致度の差が大きいとソーラシミュレータの出力特性にも差が生じるため、上記差が小さいスペクトル合致度の高いものを用いて測定することが重要である。このようなソーラシミュレータとして、例えば図6及び図7(図7は、図6のブロック図)に示すようなものが従来から知られている。この従来のソーラシミュレータ100は、キセノンランプ101を光源としたキセノン一灯式ソーラシミュレータであり、ケーシング100a内に配設されたキセノンランプ101からのキセノン光111を、エアマス1.5(AM1.5)フィルター102に通してキセノン光スペクトルを上記基準太陽光スペクトルに近似させるようにした後、投光光学系103を通して太陽電池110に照射するようにしている。尚、図6中の104は反射ミラーを示す。
【0003】
しかしながら、上記エアマス1.5フィルター102を用いても、図8に示すようにキセノン光スペクトルは、波長範囲が略350nm〜500nmの帯域で基準太陽光スペクトルよりも分光放射照度が高い高照度部aが生じる一方、略700nm以上の帯域で基準太陽光スペクトルより分光放射照度が低い第1低照度部b及び第2低照度部cが生じる。そのため、略350nm〜500nmの短波長帯域での相対エンルギー分布が基準太陽光スペクトルの対応する相対エンルギー分布よりも高い値になる一方、略700nm以上の長波長帯域での相対エンルギー分布が基準太陽光スペクトルの対応する相対エンルギー分布よりも低い値になり、スペクトル合致度が、上記短波長帯域及び上記長波長帯域で低いものになってしまっている。尚、スペクトル合致度については、更に後述する。
【0004】
一方、特許文献1に、キセノンランプと白熱ランプの2つの光源で、スペクトル合致度を向上させる方法が開示されている。しかし、この方法では、2つの光源を使用しているため、各々の光源が独立して特性が変化してしまう。そのため、相対的分光放射照度を頻繁に測定して各々の光量を調整する必要がある。特に、短波長側のキセノン照明と長波長側の白熱光源とを繋ぐ波長での照度が不連続になり易い。
【0005】
又、キセノン一灯式ソーラシミュレータとして、例えば特許文献2に、フィルタを用い、キセノン固有の800nm〜900nm付近にある高い強度ピークd(図8参照)を相対的に低下させるハイブリッド型薄膜太陽電池の性能評価方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−133005号公報
【特許文献2】特開2002−280583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、この特許文献2に開示の方法のように、上記強度ピークdを相対的に低下させるとその帯域での全体のエネルギー分布に対する相対エネルギー分布が低下してしまうことになり、その結果、700nm〜1000nmの長波長帯域でのスペクトル合致度が更に悪くなる。
【0008】
本発明は、スペクトル合致度の高いソーラシミュレータ及び太陽電池出力特性測定方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明は、キセノン光を、太陽電池に照射することにより前記太陽電池の出力特性を測定するソーラシミュレータであって、前記キセノン光を、第1の光束と第2の光束とに分離する分離部と、前記分離した第1の光束を所定の波長以上の長波長帯域の光にする光学素子と、前記長波長帯域の光からなる光束を、前記第2の光束と共に前記太陽電池に照射させ得るように前記太陽電池に導く導光部と、を備えていることを特徴とするソーラシミュレータを提供する。
【0010】
これによれば、光学素子によって、分離した第1の光束を長波長帯域の光からなるものにできる。そして、この長波長帯域の光を第2の光束と共に太陽電池に照射するため、例えば太陽電池に照射する短波長帯域の光を実質的に第2の光束のみにできる一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光を、前記光学素子によって長波長帯域の光にした第1の光束と第2の光束とを合わせたものにできる。
【0011】
その際、第2の光束はキセノン光から分離されているため、第2の光束の分光放射照度を分離前のキセノン光に比べて低くできる。
【0012】
その一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光を、光学素子によって長波長帯域の光にした第1の光束と第2の光束を合わせたものにできるため、長波長帯域の光の分光放射照度を分離前のキセノン光に比べて低くなるのを抑えることができる。
【0013】
これにより、太陽電池に照射する短波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて少なくできる一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて多くできる。従って、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【0014】
他の一態様では、前記ソーラシミュレータにおいて、前記光学素子は、前記長波長帯域の光より短波長の光を前記長波長帯域の光に変換する波長変換素子である構成にできる。
【0015】
これによれば、第1の光束を、変換した長波長帯域の光のみにできるとともに、その変換した長波長帯域における分光放射照度を変換前の第1の光束の長波長帯域の分光放射照度に比べて同等又は高めることも可能になる。
【0016】
従って、太陽電池に照射する短波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて少なくできる一方、長波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて、より多くすることも可能になる。よって、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【0017】
他の一態様では、前記ソーラシミュレータにおいて、前記光学素子は、前記長波長帯域の光のみを通す光学フィルタであるものにできる。
【0018】
これによれば、第1の光束を、長波長帯域の光のみにでき、太陽電池に照射する短波長帯域の光を第2の光束のみにできる一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光を、光学フィルタを通して長波長帯域の光のみにした第1の光束と第2の光束とを合わせた光にできる。
【0019】
従って、太陽電池に照射する短波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて少なくできる一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて多くできる、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【0020】
又、前記課題を解決するため、本発明は、キセノン光を、太陽電池に照射させることにより前記太陽電池の出力特性を測定する太陽電池出力特性測定方法であって、前記キセノン光を、第1の光束と第2の光束とに分離し、前記第1の光束を光学素子によって所定の波長以上の長波長帯域の光からなるものにし、その後、前記長波長帯域の光を前記太陽電池に導いて前記第2の光束と共に太陽電池に照射させることを特徴とする太陽電池出力特性測定方法を提供する。
【0021】
これによれば、分離した第1の光束を光学素子によって長波長帯域の光からなるものにできる。そして、この長波長帯域の光を第2の光束と共に太陽電池に照射するため、太陽電池に照射する短波長帯域の光を実質的に第2の光束のみにできる一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光を、前記光学素子によって長波長帯域の光にした第1の光束と第2の光束とを合わせたものにできる。
【0022】
その際、第2の光束はキセノン光から分離されているため、第2の光束の分光放射照度を分離前のキセノン光に比べて低くできる。その一方、太陽電池に照射する長波長帯域の光を、前記光学素子によって長波長帯域の光にした第1の光束と第2の光束とを合わせたものにできるため、長波長帯域の光の分光放射照度を分離前のキセノン光に比べて低くなるのを抑えることができる。
【0023】
これにより、太陽電池に照射する短波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて少なくできる一方、長波長帯域の光の相対エネルギー分布を分離前のキセノン光に比べて多くできる。従って、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スペクトル合致度の高いソーラシミュレータ及び太陽電池出力特性測定方法を提供し得たものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態のソーラシミュレータのブロック図である。
【図2】第1実施形態のソーラシミュレータの光のスペクトル等を表したグラクである。
【図3】第2実施形態のソーラシミュレータのブロック図である。
【図4】第2実施形態のソーラシミュレータの光のスペクトル等を表したグラクである。
【図5】(a)は、第1及び第2実施形態のソーラシミュレータのスペクトル合致度等を表した図表、(b)は、である。
【図6】ソーラシミュレータの従来例の概略図である。
【図7】図6の従来例のブロック図である。
【図8】図6の従来例の光のスペクトル及び基準太陽光のスペクトルを表したグラクである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態のソーラシミュレータ1のブロック図である。
【0027】
第1実施形態のソーラシミュレータ1は、キセノン一灯式ソーラシミュレータから構成されており、図1に示すようにキセノン光源部2と、エアマス1.5フィルタ3と、分離部4と、光学素子としての波長変換素子5と、導光部6a〜6cと、投光光学系7とを備えている。
【0028】
キセノン光源部2は、キセノンランプ20を備え、このキセノンランプ20からキセノン光21をエアマス1.5フィルタ3に向かって発するように構成されている。
【0029】
分離部4は、エアマス1.5フィルタ3を透過してきたキセノン光21を、第1キセノン分離光(第1の光束)22と、第2キセノン分離光(第2の光束)23とに分離するもので、この分離部4には、ハーフミラー41が設けられている。
【0030】
この実施形態のハーフミラー41は、キセノン光21を、0.15:0.85の割合で第1キセノン分離光22と第2キセノン分離光23とに分離する。
【0031】
波長変換素子5は、短波長の光を長波長の光に変換するもので、この実施形態では、図2中に2点鎖線で表した変換効率を示すグラフから明らかなように、略620nm以下の短波長の光を、略700nm〜略1100nmまでの長波長の光に変換するものが使用されている。
【0032】
従って、この第1実施形態では、入射した第1キセノン分離光22は、波長変換素子5によって、略700nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光のみとされる(以下、光学素子としての波長変換素子5によって第1キセノン分離光を長波長帯域の光のみからなるものにしたものを、第1キセノン分離長波長光22aという)。
【0033】
尚、波長変換素子5は、上記のように略620nm以下の短波長の光を、略700nm〜略1100nmまでの長波長の光に変換する形態のものに限らず、例えば600nmよりも波長が短い短波長の光を、600nm〜700nmの範囲内の所定の波長〜1100nmまでの長波長の光に変換するようにしてもよく、適宜変更できる。
【0034】
導光部は、この実施形態では、第1〜第3の3つの全反射ミラー6a〜6cから構成されている。第1反射ミラー6aは、第1キセノン分離長波長光22aを受けてその受けた第1キセノン分離長波長光22aの全部を第2反射ミラー6bの方向に反射して導く。第2反射ミラー6bは、第1反射ミラー6aから案内されてきた第1キセノン分離長波長光22aを受けてその受けた第1キセノン分離長波長光22aの全部を第3反射ミラー6cの方向に反射して導く。
【0035】
又、第3反射ミラー6aは、第2反射ミラー6bから案内されてきた第1キセノン分離長波長光22aを、投光光学系7の方向に反射して導く。
【0036】
投光光学系7は、第2キセノン分離光23と共に、上記第3反射ミラー6aからの第1キセノン分離長波長光22aを透過させるとともに、その透過させた第2キセノン分離光23と第1キセノン分離長波長光22aとが太陽電池110に重ね合わされるように照射可能に配設されている。
【0037】
次に、このように構成された本発明の第1実施形態のソーラシミュレータ1を用いて太陽電池110の出力特性を測定する方法について説明する。
【0038】
キセノン光源部2のキセノンランプを点灯させる。これにより、キセノン光21が、エアマス1.5フィルタ3を透過し、分離部4で、0.15:0.85の割合で第1キセノン分離光22と第2キセノン分離光23とに分離される。
【0039】
第2キセノン分離光23は、投光光学系7に入り、投光光学系7から太陽電池110に照射される。
【0040】
一方、第1キセノン分離光22は、波長変換素子5に入射され、波長変換素子5によって、略620nm以下の短波長の光が略700nm〜略1100nmまでの長波長の光に変換され、第1キセノン分離長波長光22aとなる。
【0041】
そして、第1キセノン分離長波長光22aは、反射ミラー6a〜6cを介して投光光学系7に入り、投光光学系7から太陽電池110に、第2キセノン分離光23と重ね合わされるように照射される。
【0042】
その際、第1キセノン分離長波長光22aは、略700nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光のみからなるものであるため、太陽電池110に照射される略700nmよりも短い波長帯域の光は、実質的に第2キセノン分離光23のみとなる。
【0043】
この第2キセノン分離光23はキセノン光21から分離されているため、第2キセノン分離光23の分光放射照度を分離前の元のキセノン光21に比べて85%になる。
【0044】
一方、太陽電池110に照射される略700nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光は、図2に示すように第1キセノン分離長波長光22aと第2キセノン分離光21とが合成されたものになる。
【0045】
その際、第1キセノン分離長波長光22aは、略620nm以下の短波長の光を、略700nm〜略1100nmまでの長波長の光に変換したものとされているため、略700nm〜略1100nmまでの長波長帯域の一部における分光放射照度を分離前の元のキセノン光21における同じ帯域の分光放射照度と同等もしくは高くできる。
【0046】
従って、太陽電池に照射する上記長波長帯域のキセノン光の相対エネルギー分布を多くできる。よって、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を、従来よりも短波長帯域及び長波長帯域で、より高めることができ、スペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【0047】
ここで、第1実施形態のソーラシミュレータ1によるスペクトルと基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を調べたので、それを図5(a)に示す。このスペクトル合致度等に関する規定として、JIS C8912、JIS C8933、JIS C8942等に規定されており、例えばJIS C8912の規定のスペクトル合致度は、分光放射照度を、波長範囲400nm〜500nm、500nm〜600nm等の波長帯域ごとに積分し、その積分値の総和を100としたときの波長帯域ごとの積分値の割合を求める[相対エネルギー分布(%)]。そして、その求めた波長帯域ごとの相対エネルギー分布(%)を、基準太陽光スペクトルにおける対応する波長帯域の相対エネルギー分布(%)で除し、夫々の波長帯域でのスペクトル合致度を求める。判定は、上記JIS規格に規定された図5(b)の等級を示す。
【0048】
又、比較例として、図6及び図7に示すソーラシミュレータ100によるスペクトル合致度を調べたので、併せて図5(a)に示す。
【0049】
結果は、400nm〜1100nmの全ての波長範囲において、第1実施形態の相対エネルギー分布と基準太陽光スペクトルの相対エネルギー分布との誤差が比較例のそれよりも絶対値が小さく、スペクトル合致度が高いものとなった。これは、第1実施形態のものは、比較例のものに比べて短波長帯域での分光放射照度が分離前のキセノン光よりも低く、且つ長波長帯域での分光放射照度が同等もしくは高く、そのため、第1実施形態における相対エネルギー分布が比較例のものに比べて短波長帯域で低く長波長帯域で高くなり、その結果、第1実施形態のものが比較例のものよりもスペクトル合致度が高いものになったと考えられる。
【0050】
より詳しくは、例えば波長範囲が400nm〜500nmでは、比較例のものでは、スペクトル合致度の判定がBであったのに対し、第1実施形態のものでは、スペクトル合致度の判定がAであった。
【0051】
これは、比較例のものでは、上述したように、図8に示すように波長範囲が400nm〜500nmで、分光放射照度が高い第1高照度部aが生じ、全体に対する当該帯域の相対エネルギー分布が高くなり基準太陽光スペクトルの相対エネルギー分布との誤差が25.0%になってスペクトル合致度の判定がBとなった。これに対し、第1実施形態のものでは、波長範囲が400nm〜500nmでは、実質的に第2キセノン分離光のみとなり、第1高照度部を抑えることができ、誤差が18.2%になってスペクトル合致度の判定がAとなったと考えられる。
【0052】
又、例えば波長範囲が700nm〜800nm及び800nm〜900nmでは、夫々、第1実施形態のものの誤差が比較例のものよりも小さかった。
【0053】
これは、比較例のものでは、波長範囲が700nm〜800nmで第1低照度部bが、800nm〜900nmで第2低照度部cが、夫々生じ(図8参照)、全体に対する当該帯域の相対エネルギー分布が低くなって基準太陽光スペクトルの相対エネルギー分布との誤差が比較的大きくなったと考えられる。
【0054】
それに対して、第1実施形態のものでは、略700nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光は、略620nm以下の短波長の光を略700nm〜略1100nmまでの長波長の光に変換した第1キセノン分離長波長光22aと第2キセノン分離光21とが合成されたもので、全体に対する当該帯域の相対エネルギー分布が高くなって基準太陽光スペクトルの相対エネルギー分布との誤差が比較例のものよりも小さくなったと考えられる。
【0055】
次に、第2実施形態のソーラシミュレータ200について説明する。第2実施形態のソーラシミュレータ200は、先の第1実施形態のものと同様に、キセノン一灯式ソーラシミュレータから構成されており、図3に示すようにキセノン光源部202と、エアマス1.5フィルタ203と、分離部204と、光学素子205と、導光部206a〜206cと、投光光学系207とを備えている。
【0056】
キセノン光源部202、エアマス1.5フィルタ203、導光部206a〜206c、及び投光光学系207は、先の第1実施形態のものと同構成を採っている。
【0057】
分離部204には、先の第1実施形態と同様に、ハーフミラー241が設けられているが、この第2実施形態では、このハーフミラー241によって、キセノン光221が、0.35:0.65の割合で第1キセノン分離光222と第2キセノン分離光223とに分離されるように構成されている。
【0058】
又、第2実施形態における光学素子は、長波長帯域の光のみを通すハイパスフィルタ205(光学フィルタ)から構成されている。この実施形態では、ハイパスフィルタ205は、波長が略720nmよりも長波長の帯域の光のみを通すものから構成されている。
【0059】
従って、第1キセノン分離光222は、ハイパスフィルタ205を透過した後は、略720nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光のみからなるものとされる(以下、光学素子としてのハイパスフィルタ205を透過した後の長波長帯域の光のみからなる第1キセノン分離光を、第1キセノン分離長波長光222aという)。
【0060】
尚、ハイパスフィルタ205は、波長が略720nmよりも長波長の帯域の光のみを通すものに限らず、例えば略600nm〜略700nmの範囲内の所定の波長以上の長波長の光のみを通すものでもよく、適宜変更できる。
【0061】
このように構成された第2実施形態のソーラシミュレータ200を用いて太陽電池110の出力特性を測定するには、先の第1実施形態の場合と同様に、キセノン光源部202のキセノンランプ220を点灯させる。これにより、キセノン光221が、エアマス1.5フィルタ203を透過し、分離部204で、0.35:0.65の割合で第1キセノン分離光222と第2キセノン分離光223とに分離される。
【0062】
第2キセノン分離光223は、投光光学系207に入り、投光光学系207から太陽電池110に照射される。
【0063】
一方、第1キセノン分離光222は、ハイパスフィルタ205に入射され、略720nm以上の長波長帯域の光のみが透過して、長波長帯域の光のみからなる第1キセノン分離長波長光222aとなる。
【0064】
そして、第1キセノン分離長波長光222aは、反射ミラー206a〜206cを介して投光光学系207に入り、投光光学系207から太陽電池110に、第2キセノン分離光223と重ね合わされるように照射される。
【0065】
その際、第1キセノン分離長波長光222aは、略720nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光のみからなるものであるため、太陽電池110に照射される略720nmよりも短い波長帯域の光は、実質的に第2キセノン分離光223のみとなる。
【0066】
この第2キセノン分離光223はキセノン光221から65%の割合で分離されているため、第2キセノン分離光23の分光放射照度を分離前の元のキセノン光21に比べて65%になる。
【0067】
一方、太陽電池110に照射される略720nm〜略1100nmまでの長波長帯域の光は第1キセノン分離長波長光222aと第2キセノン分離光221とが合成されたものになる。
【0068】
従って、略720nm〜略1100nmまでの長波長帯域の分光放射照度を分離前の元のキセノン光221における同じ帯域の分光放射照度と略同等にできる。
【0069】
従って、太陽電池に照射する長波長帯域のキセノン光の相対エネルギー分布を、長波長帯域で短波長帯域よりも相対的に多くできる。よって、基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度を、従来よりも短波長帯域及び長波長帯域で高めることができ、スペクトル合致度を全体的に高めることができる。
【0070】
次に、第2実施形態のソーラシミュレータ200によるスペクトルと基準太陽光スペクトルとのスペクトル合致度についても調べたので、それを図5(a)に示す。
【0071】
結果は、400nm〜1100nmの全ての波長範囲において、スペクトル合致度の判定がAとなった。これは、第2実施形態のものは、比較例のものに比べて短波長帯域での分光放射照度が低く、且つ長波長帯域での分光放射照度が略同等であり、そのため、第2実施形態における相対エネルギー分布が比較例のものに比べて短波長帯域で低く長波長帯域で高くなり、その結果、400nm〜1100nmの全ての波長範囲において、スペクトル合致度の判定がAとなった。
【0072】
尚、上記第1実施形態及び第2実施形態では、光学素子を透過した後の第1キセノン分離光は、第1〜第3の反射ミラーを介して1つの投光光学系を第2キセノン分離光と共に透過するように構成されているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。
【0073】
例えば、ソーラシミュレータ1、200に、第1キセノン分離光を透過させるための第1キセノン分離光透過用の第1投光光学系と、第2キセノン分離光を透過させるための第2キセノン分離光透過用の第2投光光学系とを備えたものとし、例えば光学素子によって長波長帯域の光にした第1キセノン分離光を第1反射ミラーによって第1投光光学系に導いて透過させるようにしてもよい。
【0074】
又、第1キセノン分離光と第2キセノン分離光とに分離する分離割合は、上記実施形態のものに限らず、適宜変更できる。
【符号の説明】
【0075】
1、200 ソーラシミュレータ
2、202 キセノン光源部
3、203 エアマス1.5フィルタ
4、204 分離部
5 波長変換素子(光学フィルタ)
7、207 投光光学系
21、221 キセノン光
22、222 第1キセノン分離光(第1の光束)
23、223 第2キセノン分離光(第2の光束)
205 ハイパスフィルタ(光学フィルタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセノン光を、太陽電池に照射することにより前記太陽電池の出力特性を測定するソーラシミュレータであって、
前記キセノン光を、第1の光束と第2の光束とに分離する分離部と、
前記分離した第1の光束を所定の波長以上の長波長帯域の光にする光学素子と、
前記長波長帯域の光からなる光束を、前記第2の光束と共に前記太陽電池に照射させ得るように前記太陽電池に導く導光部と、
を備えていることを特徴とするソーラシミュレータ。
【請求項2】
前記光学素子は、前記長波長帯域の光より短波長の光を前記長波長帯域の光に変換する波長変換素子であることを特徴とする請求項1記載のソーラシミュレータ。
【請求項3】
前記光学素子は、前記長波長帯域の光のみを通す光学フィルタであることを特徴とする請求項1記載のソーラシミュレータ。
【請求項4】
キセノン光を、太陽電池に照射させることにより前記太陽電池の出力特性を測定する太陽電池出力特性測定方法であって、
前記キセノン光を、第1の光束と第2の光束とに分離し、前記第1の光束を光学素子によって所定の波長以上の長波長帯域の光からなるものにし、
その後、前記長波長帯域の光を前記太陽電池に導いて前記第2の光束と共に太陽電池に照射させることを特徴とする太陽電池出力特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−221972(P2012−221972A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82543(P2011−82543)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(303050160)コニカミノルタオプティクス株式会社 (175)
【Fターム(参考)】