説明

タイマ

【課題】タイマにおいて、簡易な構成を実現しつつ、実時間の計測精度をより向上させることにある。
【解決手段】次回の停止時間T11は、記憶部36に記憶される周波数(前回の周波数)と、周波数演算部31により演算された周波数(今回の周波数)との差分及び前回の停止時間に基づき算出される。従って、前回の周波数と、今回の周波数との差分が大きい場合、例えば、温度変化が大きい場合には、次回の停止時間が短く設定される。このため、周波数の差分が大きい場合には周波数の補正の頻度が上がる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイマに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子機器には、一定の時間間隔でCPUに対して割り込みを発生させるタイマが設けられている。タイマは、例えば、抵抗及びコンデンサからなるRC発振回路を備え、同RC発振回路からはHIレベル及びLOレベルを所定周期で繰り返すクロック信号が出力される。このクロック信号の周波数及び周期を計測することを通じて、実時間を計測することができる。
【0003】
ところで、RC発振回路は、例えば、温度変化に伴い周波数が変動することが知られている。この周波数変動に伴い、正確な実時間を計測することができないおそれがある。そこで、例えば、特許文献1に記載されるタイマは、周波数の変動が少ない水晶発振子又はセラミック発振子を備えたメイン発振部と、RC発振回路の温度を検出する温度センサとを備える。温度センサを通じて、一定温度以上の温度変化が検出されたとき、RC発振回路のクロック信号に周波数変動が生じたとして、同クロック信号の周波数の補正を行う。具体的には、メイン発振部とRC発振回路との周波数の比較を通じて、RC発振回路の周波数を補正する。この補正された周波数に基づき実時間が計測されるため、時間計測の精度を保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−258868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載のタイマにおいては、実時間の計測精度は確保されるものの、周波数変動を検出するために温度センサを設ける必要がある。タイマは、一般的に設置面積に制約があるIC基板上に実装されるため、よりコンパクトに構成されることが望ましい。
【0006】
また、温度センサによる周波数の補正では、温度変化以外の要因、例えば、供給電力の変動による周波数変動に対しては対応できない。この場合には、正確な実時間の計測が困難となる。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成を実現しつつ、実時間の計測精度をより向上させたタイマを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、常時動作して周波数の変動が生じうる計測クロック信号を発する発振回路と、設定される停止時間経過毎に動作して前記計測クロック信号よりも周波数及びその精度が高い基準クロック信号を発する基準発振部と、前記基準クロック信号及び前記計測クロック信号のクロックパルスをカウントするクロックカウンタと、前回の停止時間及びその計測開始前の前記計測クロック信号の周波数が記憶される記憶部と、前記クロックカウンタを通じて検出される前記計測クロック信号のカウント数及び前記記憶部に記憶される前記計測クロック信号の周波数に基づき、実時間を計測する実時間計測部と、前記前回の停止時間経過時に前記クロックカウンタを通じて検出される前記計測クロック信号のカウント数を基準とした前記基準クロック信号のカウント数に基づき前記計測クロック信号の周波数を演算するとともに、この演算した周波数を前記記憶部に記憶させる周波数演算部と、演算された前記計測クロック信号の周波数と、前記記憶部に記憶される前記前回の停止時間の計測開始前における前記計測クロック信号の周波数との差分に反比例する値を次回の停止時間として算出する停止時間算出部と、を備えたことをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、停止時間経過毎に記憶部に記憶される計測クロック信号の周波数が補正される。この停止時間とは、基準発振部の動作停止時間である。すなわち、停止時間が経過する毎に基準発振部から基準クロック信号が出力される。このとき、周波数演算部は、計測クロック信号のカウント数を基準とした基準クロック信号のカウント数に基づき計測クロック信号の周波数を演算する。周波数演算部を通じて算出された計測クロック信号の周波数が記憶部に記憶されることで、周波数の補正が行われる。このように、補正は周波数精度の高い基準クロック信号に基づき行われるため、周波数が変動した場合であっても、補正された周波数に基づき時間が正確に計測される。
【0010】
この計測クロック信号の周波数の補正とともに次回の停止時間が算出される。この停止時間は、記憶部に記憶される周波数(前回の周波数)と、周波数演算部で演算された周波数(今回の周波数)との差分に反比例する値として算出される。従って、前回の周波数と、今回の周波数との差分が大きい場合、例えば、温度変化が大きい場合には、停止時間は短く設定される。このため、周波数の差分が大きい場合には周波数の補正の頻度が上がる。このように、周波数変動幅が大きく時間計測の精度の低下が予想される状況においても、周波数の補正の頻度が上がるため、実時間計測部による時間計測の精度を保つことができる。逆に、周波数の差分が小さい場合、例えば、温度が略一定の場合には、頻繁な周波数補正は不要であるとして停止時間は長く設定される。このように、温度センサ等を備えることなく、適切なタイミングで周波数の補正が行われる。また、周波数の差分に基づき停止時間が算出されているため、温度変化以外の要因、例えば、供給電力の変動や経年劣化等によって計測クロック信号の周波数が変動した場合でも、正確な実時間の計測が可能となる。以上により、簡易な構成を実現しつつ、実時間の計測精度を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイマにおいて、前記停止時間算出部は、前記周波数演算部を通じて演算された前記計測クロック信号の周波数と、前記記憶部に記憶される前記計測クロック信号の周波数との差分を、前記記憶部に記憶される前記前回の停止時間で割った値に反比例する値を次回の停止時間として算出することをその要旨としている。
【0012】
上述のように、停止時間は周波数変動に応じて可変である。従って、周波数の差分が同じ場合であっても、前回の停止時間の長短によって適切な次回の停止時間が異なる。
上記構成によれば、周波数の差分を前回の停止時間で割るため、より適切な次回の停止時間が算出される。具体的には、周波数の差分が同じ場合であっても、前回の停止時間が長い場合には、周波数変動が比較的緩やかであるとして、次回の停止時間は長く設定される。また、前回の停止時間が短い場合には、周波数変動が比較的急激であるとして、次回の停止時間は短く設定される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、タイマにおいて、簡易な構成を実現しつつ、実時間の計測精度をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態におけるタイマの構成図。
【図2】本実施形態における計測クロック信号の波形図。
【図3】本実施形態における計測クロック信号の周波数及び温度特性を示したグラフ。
【図4】本実施形態における(a)は計測クロック信号の波形図、(b)は基準クロック信号の波形図。
【図5】本実施形態における停止時間の算出方法を示したグラフ。
【図6】本実施形態における周波数変化率に応じた停止時間を示したグラフ。
【図7】本実施形態における制御プログラムの処理手順を示したフローチャート。
【図8】本実施形態における温度変化に伴う補正タイミング等を示したタイミングチャート。
【図9】他の実施形態における周波数及び時間を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明にかかるタイマを具体化した第1の実施形態について図1〜図8を参照して説明する。本実施形態におけるタイマは車載されるとともに、特に車両のイグニッションスイッチがOFF時における時間計測の精度が確保される。従って、イグニッションスイッチのOFF時においても、タイマの時間計測を通じて、例えば、一定時間間隔でハザードランプを点滅させることができる。
【0016】
図1に示すように、タイマは、制御装置30と、RC発振回路10と、RCクロックカウンタ11と、基準発振部20と、基準クロックカウンタ21とを備える。
RC発振回路10は、抵抗及びコンデンサを備えた回路からなる。また、RC発振回路10は、図2に示すように、HIレベル及びLOレベルの信号を所定の周期T1で繰り返す計測クロック信号Srcを生成する。RC発振回路10は図示しない電源からの電力供給を受けて動作して計測クロック信号Srcを生成する。この計測クロック信号Srcは、電力が供給されている限り、常時、RC発振回路10からRCクロックカウンタ11へ出力される。
【0017】
RCクロックカウンタ11は、計測クロック信号SrcにおけるLOレベルからHIレベルへの立ち上がり、すなわちクロックパルスをカウントする。RCクロックカウンタ11の検出結果は制御装置30に出力される。
【0018】
図1に示すように、基準発振部20は、水晶振動子及び発振回路を備えるとともに、図示しない電源からの電力供給に基づき基準クロック信号Squを生成する。この基準クロック信号Squの周波数は、計測クロック信号Srcの周波数に比べて高い。また、基準発振部20から出力される基準クロック信号Squの周波数精度は、計測クロック信号Srcに比べて高いという利点がある。
【0019】
しかし、基準発振部20(水晶振動子を使用した発振回路)での信号発振に係る消費電力は、RC発振回路10での信号発振に係る消費電力に比べて大きく、特に、イグニッションスイッチのOFF時において、常時、基準クロック信号Squを生成することは消費暗電流の観点から適当ではない。従って、暗電流の低減を図るべく、イグニッションスイッチのOFF時においては、後で詳述する所定の補正タイミングにおいてのみ基準発振部20から基準クロック信号Squが出力される。イグニッションスイッチのON時の時間計測においては、基準クロック信号Squが使用されている。
【0020】
基準クロックカウンタ21は、基準クロック信号Squにおけるクロックパルスをカウントする。基準クロックカウンタ21の検出結果は制御装置30に出力される。
図1に示すように、制御装置30は、周波数演算部31と、実時間計測部32と、停止時間算出部33と、間欠動作制御部34と、基準制御部35と、を備える。
【0021】
実時間計測部32は、RCクロックカウンタ11の検出結果に基づき、実時間の演算を行う。まず、実時間計測部32は、不揮発性メモリからなる記憶部36に予め記憶される計測クロック信号Srcの周波数F1を取得する。この周波数F1は、後述する方法にて所定周期毎に補正される。次に、実時間計測部32は周波数F1の逆数から計測クロック信号Srcの周期T1を導出する。また、実時間計測部32は、RCクロックカウンタ11のカウント数に基づき、カウント開始から経過した周期数を認識することができる。具体的には、2カウントで1周期、3カウントで2周期といったように、「カウント数−1」で周期数を認識することができる。最後に実時間計測部32は、周期T1に「カウント数−1」を掛け合わせることにより、実時間を算出する。
【0022】
ここで、図3に示すように、計測クロック信号Srcの周波数は温度変化等に伴い変動することが知られている。この温度変化に伴う周波数の変動態様はRC発振回路10の回路構成によって異なる。本例においては、温度上昇に伴い周波数は増大する。基準クロック信号Squには、このような周波数変動は生じない。上述のように、実時間は、記憶部36に記憶される周波数F1、それから得られる周期T1及びカウント数に基づき算出される。このため、周波数が変動した場合にあって、この周波数を補正することなく実時間を算出すると正確な時間の算出が困難となる。そこで、温度変化に対して周波数の変動がない基準クロック信号Squの周波数を基準として記憶部36に記憶される計測クロック信号Srcの周波数を補正する。この補正処理については後に詳述する。
【0023】
基準制御部35は、基準発振部20への動作電力の供給を通じて、基準発振部20の発振動作を制御する。基準制御部35は、基準発振部20を通じて基準クロック信号Squを生成する。周波数演算部31は、両クロックカウンタ11,21の検出結果に基づき、計測クロック信号Srcの周波数を演算する。すなわち、周波数演算部31は、図4(a)に示すように、RC発振回路10の計測クロック信号Srcの1カウント分の時間を認識する。そして、図4(b)に示すように、周波数演算部31は、この1カウントの間において、基準クロック信号Squが何カウントされるかを計測する。例えば、計測クロック信号Srcの1カウントの間において基準クロック信号SquがX回カウントされたとする。上述の実時間計測と同様に、「X回−1」を基準クロック信号Squの周期T2に掛け合わせることで、計測クロック信号Srcの1カウント分の時間、すなわち、計測クロック信号Srcの周期T1を算出することができる。従って、周期T1の逆数から計測クロック信号Srcの周波数F1を算出することができる。周波数の算出が完了したとき、基準制御部35は基準発振部20を停止する。なお、基準クロック信号Squの周波数精度は高いため、その周期T2、ひいては周期T2から算出される周波数F1の精度も高くなる。計測クロック信号Srcの周波数F1の演算結果は停止時間算出部33に出力される。
【0024】
停止時間算出部33は、記憶部36に記憶される計測クロック信号Srcの周波数F2、及び停止時間T10を取得する。これら周波数F2及び停止時間T10は、前回の周波数補正時に記憶部36に記憶されたものである。停止時間とは、基準発振部20が停止される時間であって、停止時間の経過毎に一定期間に亘って基準発振部20は動作する。この基準発振部20により生成される基準クロック信号Squを使用して、記憶部36に記憶される後述する周波数の補正が行われる。従って、停止時間の経過時が補正タイミングとなる。
【0025】
停止時間算出部33は、図5に示すように、記憶部36に記憶される周波数F2と、周波数演算部31を通じて演算された周波数F1との差分ΔFを算出する。そして、停止時間算出部33は、この差分ΔFを前回の停止時間T10で割ることで、周波数変化率を算出する。停止時間算出部33は、図6に示すように、周波数変化率の逆数に比例定数を掛け合わせることで次回の停止時間T11を算出する。従って、停止時間T11は、周波数変化率に反比例し、周波数変化率が大きいほど停止時間T11は短く設定される。
【0026】
停止時間算出部33は、算出した次回の停止時間T11を間欠動作制御部34に出力する。また、停止時間算出部33は、計測クロック信号Srcの周波数F1及び次回の停止時間T11を記憶部36に記憶する。ここで、周波数F1及び次回の停止時間T11は、記憶部36に記憶される前回補正時の周波数F2及び前回の停止時間T10に上書きされる。これによって、記憶部36に記憶された新たな周波数F1は、前回の停止時間T10における周波数変動を加味したものとなる。このため、上述した実時間計測部32による時間の計測の精度を保つことができる。
【0027】
間欠動作制御部34は、停止時間算出部33から次回の停止時間T11を受けると時間tの計測を開始して、時間tが停止時間T11に達するか否かを判断する。この間には、実時間計測部32によって時間の計測が行われる。間欠動作制御部34は、時間tが停止時間T11に達したとき、基準制御部35にその旨の制御信号を出力する。基準制御部35はこの制御信号に基づき、基準発振部20を動作させる。そして、再び、計測クロック信号Srcの周波数の補正、並びに今回の周波数F1、前回の周波数F2及び前回の停止時間T11に基づく停止時間の算出が行われる。
【0028】
次に、制御装置30により実行される周波数の補正及び停止時間(補正タイミング)の算出を行う制御プログラムについて図7のフローチャートを参照して説明する。この制御プログラムは、制御装置30の各部が連携することで実行される。なお、計測クロック信号Srcは、イグニッションスイッチのOFF、ACC(アクセサリ)に関わらず、常時、出力される。ここで、イグニッションスイッチがACCのときには一部車載機器に電力が供給され、イグニッションスイッチがOFFのときには全ての車載機器への電力供給が停止される。
【0029】
制御プログラムはイグニッションスイッチがACCからOFFに切り替えられたときに開始される。まず、基準発振部20を介して基準クロック信号Squが出力される(S101)。そして、両クロックカウンタ11,21からの検出結果に基づき、計測クロック信号Srcの周波数F1が演算される(S102)。この後、基準クロック信号Squの出力が停止される(S103)。次に、記憶部36を通じて、前回の周波数F2及び停止時間T10が認識される(S104)。そして、両周波数F1,F2の差分ΔF及び前回の停止時間T10に基づき、周波数変化率が算出される(S105)。この周波数変化率に基づき、次回の停止時間T11が算出される(S106)。そして、記憶部36に演算された周波数F1及び次回の停止時間T11が上書きされる(S107)。また、間欠動作制御部34において時間tの計測が開始され(S108)、時間tが次回の停止時間T11に達するのが待たれる(S109でNO)。時間tが次回の停止時間T11に達したとき(S109でYES)、イグニッションスイッチがOFF状態を維持しているか否かが判断される(S110)。イグニッションスイッチがOFF状態を維持していれば(S110でYES)、再び、ステップS101の処理に戻る。イグニッションスイッチがOFFからACCやONとされていれば(S110でNO)、制御プログラムは終了される。すなわち、イグニッションスイッチがOFF状態を維持する限り、上記制御プログラムが繰り返し実行される。
【0030】
次に、温度変化に伴う周波数の補正頻度の変化について図8のタイミングチャートを参照しつつ説明する。
図8の中段及び下段に示すように、イグニッションスイッチがACC状態においては、両クロック信号Squ,Srcが出力されている。そして、イグニッションスイッチがACCからOFFとされた直後に上記制御プログラムの実行を通じて、周波数の補正及び次回の停止時間T11の算出が行われる。
【0031】
次回の停止時間T11は、前回イグニッションスイッチがOFFであったときの周波数及び停止時間T10に基づき算出される。従って、前回の周波数補正時から時間が経過しており、温度変化等によって周波数の差分ΔFは大きくなることが予想される。停止時間T11は周波数変化率、ひいては差分ΔFに反比例する。このため、イグニッションスイッチがOFFとされた直後の停止時間T11は短く設定される。ここで、図8の上段に示す例においては、イグニッションスイッチがOFFに切り替えられたときから一定期間は温度変化がない。このため、計測クロック信号Srcの周波数も一定となり、次の停止時間T12は前回の停止時間T11よりも長く設定される。周波数の差分ΔFが小さくなり、それに反比例して停止時間T11は大きくなるからである。停止時間T12の計測開始から時間tが停止時間T12に達したとき周波数が補正されるとともに、次の停止時間T13が算出される。このように時間tが停止時間に達する毎に計測クロック信号Srcの周波数は補正される。この補正タイミングは、図8の基準クロック信号Squの下側において三角形の図形で示されている。
【0032】
イグニッションスイッチがOFFとされる前においては、車両はその暖房やエンジンの発熱により外気温より高い温度であることが想定される。イグニッションスイッチがOFFにされることで、温度が徐々に外気温に近づいていく。すなわち、図8の上段に示すように、イグニッションスイッチがOFFとされた後、一定時間は一定温度を保つ。その後、時刻t1から温度は略一定の傾きをもって減少して、時刻t2において外気温と同じ温度になった後に温度は一定となる。上述のように、温度が下降するのに伴い計測クロック信号Srcの周波数も減少する。従って、時刻t1及び時刻t2間の期間における補正では、周波数の差分ΔFが大きいため、停止時間T14,T15は比較的短く設定される。従って、時刻t1及び時刻t2間の期間においては、頻繁に周波数の補正及び停止時間の算出が行われる。時刻t2以降においては、温度は一定となるため、停止時間T16は長く設定される。従って、時刻t2以降においては補正の頻度は下がる。
【0033】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)計測クロック信号Srcの周波数は、温度変化や供給電力変動等に伴って変動する。周波数の変動により計測クロック信号Srcの周期T1も変動する。実時間は、実時間計測部32を通じて、計測クロック信号Srcの周波数及びそれから得られる周期T1に基づき計測されている。このため、例えば、計測クロック信号Srcの周波数が変動しているのにも関わらず、周波数を補正することなく、時間を計測した場合には正確な時間の計測が困難となる。
【0034】
その点、本例では、停止時間経過毎に記憶部36に記憶される計測クロック信号Srcの周波数が補正され、その補正された周波数に基づき時間が計測される。このため、計測クロック信号Srcの周波数が変動した場合であっても、それに応じた周波数に基づき、正確に時間が計測される。
【0035】
(2)また、次回の停止時間T11は、記憶部36に記憶される周波数F2(前回の周波数F2)と、周波数演算部31により演算された周波数F1(今回の周波数F1)との差分ΔF及び前回の停止時間T10に基づき算出される。ここで、RC発振回路10を含む車両の温度は、例えば、イグニッションスイッチがOFFとされた以降、除々に下降して外気温に近づくため、一定期間に亘って連続的に変化することが多い。従って、前回の周波数F2と、今回の周波数F1との差分ΔFが大きい場合、例えば、温度変化が大きい場合には、次回の停止時間T11が短く設定される。このため、周波数の差分ΔFが大きい場合には周波数の補正の頻度が上がる。このように、温度変化が大きく時間計測の精度の低下が予想される状況においても、周波数の補正の頻度が上がるため、実時間計測部32による時間計測の精度を維持することができる。逆に、周波数の差分ΔFが小さい場合、例えば、温度が略一定の場合には、次回の停止時間T11が長く設定される。このため、基準発振部20等の動作回数を減らすことができ、周波数補正に係る暗電流を低減することができる。
【0036】
(3)また、上記構成によれば、周波数変動を検出するための温度センサ等を備える必要がないため、より簡易にタイマを構成することができる。
(4)さらに、温度変化以外の要因、例えば、RC発振回路10への供給電力の変動やRC発振回路10の経年劣化による周波数変動に対しても次回の停止時間T11が短く設定される。従って、温度変化以外の要因によって計測クロック信号Srcの周波数が変動した場合でも、時間計測の精度を確保することができる。
【0037】
(5)周波数F1,F2の差分ΔFを前回の停止時間T10で割って得られる周波数変化率に基づき、次回の停止時間T11が算出される。このため、周波数F1,F2の差分ΔFが同じ場合であっても、前回の停止時間T10が短い場合には、周波数変動が比較的急激であるとして、次回の停止時間T11は短く設定される。また、前回の停止時間T10が長い場合には、周波数変動が比較的緩やかであるとして、次回の停止時間T11は長く設定される。このように、前回の停止時間T10の長さを加味した周波数F1,F2の差分ΔFに基づきより適切な次回の停止時間T11が算出される。
【0038】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、周波数演算部31にて演算された周波数F1及び次回の停止時間T11は、記憶部36に記憶される前回の周波数F2及び停止時間T10に上書きされていた。しかし、周波数及び停止時間を上書きすることなく、過去複数回分の周波数及び停止時間を記憶部36に蓄積していって、それらに基づき次回の停止時間T11を算出してもよい。ここで、図9に示すように、実際には周波数の変動は、常に一定の変化率で変化するわけではなく、大勢でみると略一定で減少しているものの時刻t11及び時刻t12間において一時的に周波数F11からほとんど変動しなくなる場合も想定される。図9において、各時刻t10〜t13は、周波数の補正及び停止時間T10〜T12の算出が行われる補正タイミングである。時刻t12において、上記実施形態のように、前回(時刻t11)のみの周波数に基づき、停止時間T12を算出すると、時刻t11及び時刻t12における周波数の差分ΔFはゼロに近似するため、算出される停止時間T12は長く設定される。しかしながら、実際には、時刻t11及び時刻t12間は周波数変動の過程にあるため、時刻t12以後の周波数変動により、実時間の計測精度が落ちる。その点、例えば、過去2回分(時刻t10,t11)の周波数及び停止時間T10,T11に基づき停止時間T12を算出することで、停止時間T10での周波数変動に伴う周波数F10,F11の差分ΔFが加味されるため、算出される停止時間T12は比較的短く設定される。このため、過去1回分の周波数及び停止時間で次回の停止時間が設定される場合に比べて実時間の計測精度を確保することができる。
【0039】
・上記実施形態においては、イグニッションスイッチがACCからOFFに切り替えられた直後に記憶部36に記憶される前回の周波数F2及び停止時間T10と、周波数演算部31により演算された今回の周波数F1とに基づき次回の停止時間T11が算出される。ここで、ACCからOFFへの切り替え直後の記憶部36に記憶される前回の周波数F2及び停止時間T10とは、前回イグニッションスイッチがOFFであったときのものである。従って、前回の周波数F2の計測からかなりの時間が経過していることが予想される。そこで、イグニッションスイッチがACCからOFFに切り替えられた直後に周波数を2回連続で計測して、次回の停止時間T11を設定してもよい。この場合、ステップS101〜S107の処理が2回繰り返された後に、ステップS108の処理に移行する。これにより、イグニッションスイッチがACCからOFFに切り替えられた後の停止時間T11を現状に即したより適切なものにすることができる。
【0040】
・上記実施形態においては、両周波数F1,F2の差分ΔFを前回の停止時間T10で割ることで算出される周波数変化率に基づき次回の停止時間T11が算出されていた。しかし、差分ΔFを前回の停止時間T10で割ることなく、差分ΔFに反比例した次回の停止時間T11を算出してもよい。この場合、前回の停止時間T10を記憶部36に記憶する必要がなくなる。
【0041】
・上記実施形態においては、抵抗及びコンデンサを備えたRC発振回路10が実時間の計測に用いられていたが、RC発振回路10に限定されるものではない。例えば、LC発振回路等であってもよい。また、基準発振部20は水晶振動子を利用して構成されていたが、周波数精度が比較的高ければ、水晶に限定されるものではなく、例えば、セラミック振動子等を使用してもよい。
【0042】
・上記実施形態においては、イグニッションスイッチのOFF時において、計測クロック信号Srcに基づき実時間が計測されていた。しかし、イグニッションスイッチのON時において、計測クロック信号Srcに基づき実時間の計測を行い、基準クロック信号Squに基づき周波数の補正等を行ってもよい。さらに、タイマは車載されていなくてもよい。
【0043】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想を記載する。
(イ)請求項1又は2に記載のタイマにおいて、車両に搭載されるタイマ。
(ロ)前記(イ)に記載のタイマにおいて、車両のイグニッションスイッチがOFF状態にあるとき、前記実時間計測部を通じて時間が計測されるタイマ。
【0044】
(ハ)前記(ロ)に記載のタイマにおいて、車両のイグニッションスイッチがOFFとされたとき、前記周波数演算部は、2回連続で前記計測クロック信号の周波数を演算して、前記停止時間算出部は、前記イグニッションスイッチがOFFとされた後に演算された前記両周波数に基づき次回の停止時間を算出するタイマ。
【符号の説明】
【0045】
10…RC発振回路、11…RCクロックカウンタ、20…基準発振部、21…基準クロックカウンタ、30…制御装置、31…周波数演算部、32…実時間計測部、33…停止時間算出部、34…間欠動作制御部、35…基準制御部、36…記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時動作して周波数の変動が生じうる計測クロック信号を発する発振回路と、
設定される停止時間経過毎に動作して前記計測クロック信号よりも周波数及びその精度が高い基準クロック信号を発する基準発振部と、
前記基準クロック信号及び前記計測クロック信号のクロックパルスをカウントするクロックカウンタと、
前回の停止時間及びその計測開始前の前記計測クロック信号の周波数が記憶される記憶部と、
前記クロックカウンタを通じて検出される前記計測クロック信号のカウント数及び前記記憶部に記憶される前記計測クロック信号の周波数に基づき、実時間を計測する実時間計測部と、
前記前回の停止時間経過時に前記クロックカウンタを通じて検出される前記計測クロック信号のカウント数を基準とした前記基準クロック信号のカウント数に基づき前記計測クロック信号の周波数を演算するとともに、この演算した周波数を前記記憶部に記憶させる周波数演算部と、
演算された前記計測クロック信号の周波数と、前記記憶部に記憶される前記前回の停止時間の計測開始前における前記計測クロック信号の周波数との差分に反比例する値を次回の停止時間として算出する停止時間算出部と、を備えたタイマ。
【請求項2】
請求項1に記載のタイマにおいて、
前記停止時間算出部は、前記周波数演算部を通じて演算された前記計測クロック信号の周波数と、前記記憶部に記憶される前記計測クロック信号の周波数との差分を、前記記憶部に記憶される前記前回の停止時間で割った値に反比例する値を次回の停止時間として算出するタイマ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate