説明

タイミング調整装置、タイミング情報生成装置、および時刻同期システム

【課題】他の通信システムから受信したタイミング基準信号を用いる装置に対し、動作タイミングに関する情報を提供することを目的とする。
【解決手段】GPS受信機12は衛星信号を受信し、1PPS信号およびTODを時刻情報分配器14に出力する。時刻情報分配器14では、内部のタイミング調整装置22にて1PPS信号およびTODに基づいて時刻同期タイミング調整用のデータ信号を生成する。そして、各無線基地局20に対応する信号伝送線16に当該タイミング調整用データ信号を送信する。タイミング情報生成装置18は、時刻情報分配器14から信号伝送線16を介してタイミング調整用データ信号を受信する。そして、タイミング調整用データ信号が示すタイミングに基づいて1PPS信号を再生すると共に、タイミング調整用データ信号からTODを抽出し、1PPS信号およびTODを無線基地局20に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイミング調整装置、タイミング情報生成装置、および時刻同期システムに関し、特に、他の通信システムから受信したタイミング基準信号を用いる装置に対し、動作タイミングに関する情報を提供する装置およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の無線基地局を備え、無線通信端末が無線基地局との間で通信を行う無線システムが広く用いられている。無線通信システムの中には、符号位相差を利用して無線基地局や無線通信端末を識別するシステムや、送受信を時分割で切り替えるシステムがある。このような無線通信システムにおいては各無線基地局間での時刻同期が行われる。
【0003】
無線基地局には、衛星測位システム等の他の通信システムから、時刻(世界協定時刻等)に同期したタイミング基準信号を受信するものがある。例えば、引用文献1および2に記載されている無線基地局は、GPS衛星から受信した信号から1PPS信号(1Pulse Per Second)を時刻に同期したタイミング基準信号として抽出し、1PPS信号を用いて時刻同期処理を行っている。ここで、1PPS信号は、世界協定時刻に同期した1秒周期の時刻補正用基準信号である。
【0004】
なお、引用文献3〜6には、本発明に係る信号伝送技術に関連して、信号伝送線における信号遅延時間の補償等を行う技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−88071号公報
【特許文献2】特開2002−16438号公報
【特許文献3】特開2001−36538号公報
【特許文献4】特開平4−72837号公報
【特許文献5】特開平4−54745号公報
【特許文献6】特開平3−187648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の無線システムでは、無線基地局が建造物内、地下道等に設置されることが多い。この場合、タイミング基準信号の受信状況が良好でないことがあり、無線基地局が時刻同期処理を行うことが困難となる。
【0007】
本発明はこのような課題に対してなされたものである。すなわち、他の通信システムから受信したタイミング基準信号を用いる装置に対し、その装置のタイミング基準信号の受信環境に関わらず、動作タイミングに関する情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、通信対象情報およびタイミング基準信号を取得する情報取得部と、前記通信対象情報を含むデータ信号を生成し、前記タイミング基準信号に応じたタイミングで当該データ信号を信号伝送線に送信するデータ信号送信部と、前記信号伝送線の末端に接続され前記データ信号を受信した通信装置から、当該データ信号に応答して送信された応答信号を受信する応答信号受信部と、前記タイミング基準信号および前記応答信号に基づいて、前記信号伝送線に関する信号遅延情報を求める遅延測定部と、前記信号遅延情報を、動作タイミングの調整に関する情報として、前記信号伝送線を介して前記通信装置に送信するタイミング調整情報送信部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るタイミング調整装置においては、前記情報取得部は、衛星信号受信機から前記通信対象情報および前記タイミング基準信号を取得することが好適である。
【0010】
また、本発明に係るタイミング調整装置においては、前記データ信号送信部は、前記タイミング基準信号が示す時間間隔よりも短い時間間隔で、前記データ信号を送信し、前記応答信号受信部は、前記データ信号が送信される時間帯とは異なる時間帯に、前記応答信号を受信することが好適である。
【0011】
また、本発明に係るタイミング調整装置においては、前記タイミング調整情報送信部は、前記データ信号に前記信号遅延情報を含ませることが好適である。
【0012】
また、本発明は、通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、前記データ信号を受信したタイミングに応じたタイミングで、前記信号伝送線に応答信号を送信する応答信号送信部と、前記信号伝送線に関する信号遅延情報を前記応答信号を受信したタイミングに基づいて求めた前記タイミング調整装置から、当該信号遅延情報を前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るタイミング情報生成装置においては、前記動作タイミング情報出力部は、前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、前記タイミング基準信号と同期した同期信号を生成し、当該同期信号を動作タイミングに関する情報として出力することが好適である。
【0014】
また、前記タイミング調整装置と、前記通信装置を備えるタイミング情報生成装置と、を備え、基準時刻を示す時刻同期信号を無線基地局に供給する、本発明に係る時刻同期システムにおいては、前記タイミング基準信号は基準時刻に同期した信号であり、前記通信装置は、前記タイミング調整装置から、前記信号伝送線を介して前記データ信号を受信するデータ信号受信部と、前記データ信号を受信したタイミングに応じたタイミングで、前記信号伝送線に前記応答信号を送信する応答信号送信部と、前記タイミング調整装置から前記信号遅延情報を前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて前記時刻同期信号を生成し、前記無線基地局に供給する時刻同期信号生成部と、を備えることが好適である。
【0015】
また、本発明に係るタイミング調整装置、本発明に係るタイミング情報生成装置、または本発明に係る時刻同期システムの一実施形態においては、前記タイミング基準信号はGPSにおいて定義されている1PPS信号であり、前記通信対象情報はGPSにおいて定義されているTODを含むことが好適である。
【0016】
また、本発明に係るタイミング情報生成装置においては、前記タイミング調整装置によって前記データ信号に重畳して送信された従属同期用信号を、前記信号伝送線を介して取得する従属同期用信号取得部と、前記従属同期用信号に基づいて内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、を備え、前記動作タイミング情報出力部は、前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することが好適である。
【0017】
また、本発明に係るタイミング情報生成装置においては、前記データ信号受信部で受信された前記データ信号を記憶するデータ信号バッファ部と、前記データ信号バッファ部におけるデータ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、前記内部基準クロック信号の周波数に応じたデータ消去速度で前記データ信号バッファ部の記憶内容を消去するバッファ制御部と、を備え、前記動作タイミング情報出力部は、前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することが好適である。
【0018】
また、本発明は、通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、前記タイミング調整装置との間の前記信号伝送線を介した通信によって求められた前記信号伝送線に関する信号遅延情報を、前記タイミング調整装置から前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、前記タイミング調整装置によって前記データ信号に重畳して送信された従属同期用信号を、前記信号伝送線を介して取得する従属同期用信号取得部と、前記従属同期用信号に基づいて内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、を備え、前記動作タイミング情報出力部は、前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、前記タイミング調整装置との間の前記信号伝送線を介した通信によって求められた前記信号伝送線に関する信号遅延情報を、前記タイミング調整装置から前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、前記データ信号受信部で受信された前記データ信号を記憶するデータ信号バッファ部と、前記データ信号バッファ部におけるデータ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、前記内部基準クロック信号の周波数に応じたデータ消去速度で前記データ信号バッファ部の記憶内容を消去するバッファ制御部と、を備え、前記動作タイミング情報出力部は、前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るタイミング情報生成装置においては、前記動作タイミング情報出力部は、前記データ信号、前記信号遅延情報、および前記内部基準クロック信号に基づいて、前記タイミング基準信号と同期した同期信号を生成し、当該同期信号を動作タイミングに関する情報として出力することが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、他の通信システムから受信したタイミング基準信号を用いる装置に対し、その装置のタイミング基準信号の受信環境に関わらず、動作タイミングに関する情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係る時刻同期システムの構成を示す図である。
【図2】タイミング調整装置の構成を示す図である。
【図3】タイミング調整用データのフレーム構成を示す図である。
【図4】タイミング調整装置が処理する信号およびデータの時間関係を説明する図である。
【図5】タイミング情報生成装置の構成を示す図である。
【図6】タイミング情報生成装置が処理する信号およびデータの時間関係を説明する図である。
【図7】1PPS信号再生部の構成を示す図である。
【図8】ディジタルPLL部の構成を示す図である。
【図9】第2の実施形態に係る時刻同期システムにおけるタイミング調整装置の構成を示す図である。
【図10】第2の実施形態に係る時刻同期システムにおけるタイミング情報生成装置の構成を示す図である。
【図11】第3の実施形態に係る時刻同期システムにおけるタイミング情報生成装置の構成を示す図である。
【図12】データ記憶量の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に本発明の実施形態に係る時刻同期システム10の構成を示す。このシステムは、無線システムを構成する無線基地局20に、GPSで定義されている1PPS信号および時刻情報(TOD:Time Of Day)を供給するものである。無線システムとしては、無線通信によってインターネット接続を行うWiMAX(登録商標)、携帯電話システム等がある。ここでは複数の無線基地局20が設置されているものとするが、無線基地局20は1台であってもよい。また、ここでは、GPSを用いる例を採り上げているが、1PPS信号と同様の信号、およびTODと同様のデータを受信することができるその他の時刻基準システムを用いてもよい。
【0024】
GPS受信機12は、衛星信号を受信する。GPS受信機12は、衛星信号に基づいてタイミング基準信号としての1PPS信号を生成し、さらに、衛星信号からTODを抽出する。そして、1PPS信号およびTODを時刻情報分配器14に出力する。時刻情報分配器14は、TODを通信対象情報として含む時刻同期タイミング調整用のデータ信号を生成する。そして、1PPS信号に応じたタイミングで各無線基地局20に対応する信号伝送線16に当該タイミング調整用データ信号を送信する。
【0025】
信号伝送線16の末端には、タイミング情報生成装置18が接続されている。タイミング情報生成装置18は、時刻情報分配器14から信号伝送線16を介してタイミング調整用データ信号を受信する。そして、タイミング調整用データ信号が示すタイミングに基づいて1PPS信号を再生すると共に、タイミング調整用データ信号からTODを抽出し、1PPS信号およびTODを無線基地局20に出力する。
【0026】
このようなシステム構成によれば、GPS衛星信号の受信状況が良好な場所にGPS受信機12を設置しつつ、無線基地局20をGPS衛星信号の受信状況が良好でない場所に設置することができる。例えば、無線基地局20を建造物内に設置する場合には、GPS受信機12および時刻情報分配器14を、電話システムのMDF(Main Distributing Frame)が配置されたエリアに設置してもよい。そして、信号伝送線16として電話システムの信号伝送線を用いてもよい。
【0027】
本実施形態に係る時刻同期システム10では、時刻情報分配器14とタイミング情報生成装置18とが信号伝送線16によって接続されている。したがって、タイミング情報生成装置18がタイミング調整用データ信号を用いて1PPS信号を再生する際には、信号伝送線16の信号遅延時間を補償することが好ましい。また、時刻同期システム10では、複数の無線基地局20が互いに異なる位置に配置されるため、各信号伝送線16の長さ、すなわち、信号遅延時間が異なったものとなる。
【0028】
そこで、時刻情報分配器14は、信号伝送線16の信号遅延時間を補償するタイミング調整装置22を信号伝送線16ごとに備えている。タイミング調整装置22は、信号遅延補償を行わせる情報を含むタイミング調整用データ信号を生成し、信号伝送線16に出力する。
【0029】
図2にタイミング調整装置22の具体的な構成を示す。各ブロックはハードウエアによって構成してもよい。また、いずれかのブロックは、再構成可能なプロセッサを用い、プロセッサに対するプログラミングによって構成してもよい。タイミング調整装置22は、タイミング調整用データ信号を信号伝送線16に送信すると共に、タイミング調整用データ信号に対する応答信号をタイミング情報生成装置18から信号伝送線16を介して受信する。そして、タイミング調整用データ信号の送信タイミングと応答信号の受信タイミングとに基づいて信号遅延時間を求め、次に送信するタイミング調整用データ信号に信号遅延時間の情報を含ませる。これによって、タイミング調整装置22は、タイミング調整用データ信号の送信と共に信号遅延時間の情報をタイミング情報生成装置18に送信することができ、タイミング情報生成装置18は時刻同期処理を行うことができる。
【0030】
データ信号/タイミング調整情報送信部24が、タイミング調整用データ信号を送信する処理について説明する。送信データ生成部28は、遅延測定部42から出力される信号遅延情報、およびTODを取得する。ここで、信号遅延情報は、信号伝送線16での信号遅延時間を示す情報である。後述のように、信号遅延情報は、タイミング調整装置22から先に送信されたタイミング調整用データ信号、およびタイミング情報生成装置18からタイミング調整装置22に送信された応答信号に基づき遅延測定部42によって予め求められる。
【0031】
送信データ生成部28は、信号遅延情報およびTODに基づいて、図3に示すフレーム構成を有するタイミング調整用データを生成し、変調処理部30に出力する。このタイミング調整用データは、信号遅延情報およびTODを通信対象情報とするものである。タイミング調整用データのプリアンブル領域Pにはプリアンブル符号が記述される。プリアンブル符号は、タイミング調整用データを識別するための符号パターンを有する。また、データ領域Dには、TODおよび信号遅延情報が記述される。フィリング領域Fは、タイミング調整用データのフレーム時間長を調整するために設けられるものである。フィリング領域Fには任意の符号が記述される。
【0032】
他方、逓倍部34は、1PPS信号の周波数のN倍の周波数を有するN倍周波数タイミング信号を生成し、変調処理部30に出力する。逓倍部34は、時刻情報分配器14が備える複数のタイミング調整装置22に対し共通のものを1つ設けることとしてもよい。逓倍部34には、1/N秒の周期を有するパルス信号を発振するパルス発振器を備え、パルス発振器から出力されたパルス信号を、Nパルスタイミングごとに1PPS信号と同期させる処理を実行するものを用いてもよい。この場合、パルス発振器から出力されたパルス信号がN倍周波数タイミング信号として逓倍部34から出力される。
【0033】
図4(a)および図4(b)に、GPS受信機12から取得された1PPS信号とN倍周波数タイミング信号との時間関係を示す。例えば、N=10とした場合、1PPS信号が1秒の周期で1つのパルスを示すごとに、N倍周波数タイミング信号は、100msの周期で10回のパルスを示す。
【0034】
変調処理部30は、タイミング調整用データによってデータ搬送用のキャリア信号に対して変調を施し、タイミング調整用データ信号を生成する。そして、N倍周波数タイミング信号のパルスタイミング(パルス先端時刻またはパルス後端時刻)で、タイミング調整用データ信号をD/A変換部32に出力する。図4(b)および図4(c)に、N倍周波数タイミング信号とタイミング調整用データ信号との時間関係を示す。これらの図に示されるように、タイミング調整用データ信号は、N倍周波数タイミング信号の各パルス先端時刻に変調処理部30からD/A変換部32に出力される。なお、ここでは、N倍周波数タイミング信号のパルス先端時刻を基準として、タイミング調整用データ信号が変調処理部30から出力される処理例を示しているが、N倍周波数タイミング信号のパルス後端時刻を基準とした処理を採用してもよい。
【0035】
D/A変換部32は、タイミング調整用データ信号をアナログ信号に変換し、線路結合器26に出力する。線路結合器26は、D/A変換部32から出力されたタイミング調整用データ信号を信号伝送線16に出力する。
【0036】
タイミング調整用データ信号は、信号伝送線16によってタイミング情報生成装置18に伝送される。後述のように、タイミング情報生成装置18は、タイミング調整用データ信号に対し、信号伝送線16に応答信号を送信する。タイミング調整装置22は応答信号を受信し、次に説明するように、N倍周波数タイミング信号および応答信号に基づいて信号遅延情報を求める。
【0037】
線路結合器26は、信号伝送線16からタイミング調整装置22に伝送された応答信号を応答信号受信部36に出力する。A/D変換部38は、応答信号をディジタル信号に変換し、復調処理部40に出力する。復調処理部40は、タイミング情報生成装置18で生成された元の応答データを応答信号から復調し、その応答データを遅延測定部42に出力する。応答データは、図4(e)に示すように、タイミング調整用データと同様、プリアンブル領域P、データ領域D、およびフィリング領域Fを有する。
【0038】
図4(d)および図4(e)に、変調処理部30からD/A変換部32に出力されるタイミング調整用データ信号と、応答信号受信部36から遅延測定部42に出力される応答データとの時間関係を示す。これらの図では、図4(a)〜図4(c)に示される時刻t1から時刻t2までの時間範囲を拡大して示している。応答データは、タイミング調整用データ信号のプリアンブル領域の後端時刻t3から時間τ1だけ経過した後に、遅延測定部42に入力される。ここで、時間τ1は、D/A変換部32の処理時間、線路結合器26の処理時間、A/D変換部38の処理時間、タイミング情報生成装置18における応答処理時間、および、信号伝送線16の往復伝播時間を加算合計した時間である。
【0039】
遅延測定部42は、応答データのプリアンブル領域Pに記述されているプリアンブル符号と相関のあるパターン符号を記憶している。ここで相関とは、2つの符号に対し畳み込み演算等の相関演算を行った場合に0でない値が得られる関係をいう。遅延測定部42は、自らが記憶しているパターン符号と応答データとの相関演算を行い相関信号を求める。このようにして求められる相関信号は、応答データのプリアンブル領域Pが応答信号受信部36から出力された時にパルスを示す信号となる。
【0040】
他方、逓倍部34は、変調処理部30の他、遅延測定部42にもN倍周波数タイミング信号を出力する。遅延測定部42は、N倍周波数タイミング信号と相関信号とのパルスタイミングの差異に基づいて、信号伝送線16の往復伝播時間を求める。そして、往復伝播時間の半分の時間を信号遅延時間とし、その信号遅延時間を示す信号遅延情報を送信データ生成部28に出力する。
【0041】
なお、遅延測定部42は、過去に複数回にわたって求められた各信号遅延情報を記憶し、その複数の信号遅延情報に基づく信号遅延時間の平均値を求めてもよい。この場合、遅延測定部42は、その平均値を信号遅延時間として示す信号遅延情報を送信データ生成部28に出力する。
【0042】
例えば、遅延測定部42は、M回分の信号遅延情報を記憶するメモリを有するものとする。遅延測定部42は、新たに信号遅延情報が求められたときは、メモリに記憶されている信号遅延情報のうち最も先に記憶されたものをメモリから削除すると共に、その新たな信号遅延情報をメモリに記憶させる。遅延測定部42は、メモリに記憶されているM回にわたって求められた信号遅延情報に基づいて、信号遅延時間の平均値を求める。
【0043】
このような処理によれば、1PPS信号の周期のN分の1の時間間隔で、タイミング調整用データ信号がタイミング情報生成装置18に送信される。タイミング調整用データ信号には信号遅延情報が含まれる。そのため、信号遅延情報もまた、タイミング調整装置22からタイミング情報生成装置18に送信される。
【0044】
次に、タイミング情報生成装置18について説明する。図5にタイミング情報生成装置18の具体的な構成を示す。各ブロックはハードウエアによって構成してもよい。また、いずれかのブロックは、再構成可能なプロセッサを用い、プロセッサに対するプログラミングによって構成してもよい。タイミング情報生成装置18は、タイミング調整装置22から受信したタイミング調整用データ信号に対する応答信号を送信する。また、タイミング調整用データ信号に基づいて1PPS信号を再生すると共に、タイミング調整用データ信号からTODを抽出する。
【0045】
タイミング情報生成装置18が応答信号を送信する処理について説明する。線路結合器44は、信号伝送線16からタイミング情報生成装置18に伝送されたタイミング調整用データ信号を、データ信号/遅延情報受信部46に出力する。
【0046】
A/D変換部48は、タイミング調整用データ信号をディジタル信号に変換し、復調処理部50に出力する。復調処理部50は、タイミング調整用データ信号から、元のタイミング調整用データを復調し、そのタイミング調整用データをTOD抽出部52、遅延情報抽出部54、およびタイミング検出部56に出力する。
【0047】
タイミング検出部56は、タイミング調整用データのプリアンブル領域Pに記述されているプリアンブル符号と相関のあるパターン符号を記憶している。タイミング検出部56は、自らが記憶しているパターン符号と、タイミング調整用データとの相関演算を行いN倍周波数クロック信号を求める。このようにして求められるN倍周波数クロック信号は、復調処理部50からタイミング調整用データのプリアンブル領域Pが出力された時にパルスを示す信号となる。タイミング検出部56は、このようにして得られたN倍周波数クロック信号を、TOD抽出部52、遅延情報抽出部54、1PPS信号再生部68、および応答タイミング制御部58に出力する。
【0048】
図6(a)および図6(b)に、復調処理部50から出力されるタイミング調整用データと、N倍周波数クロック信号との時間関係を示す。これらの図に示されるように、N倍周波数クロック信号は、タイミング調整用データのプリアンブル領域の後端時刻においてパルスを示すクロック信号となる。
【0049】
応答タイミング制御部58は、N倍周波数クロック信号を予め定められた応答時間τ2だけ遅延させた応答クロック信号を生成し、応答信号送信部60の変調処理部64に出力する。応答信号送信部60は、次に説明するように、応答クロック信号が示すタイミングに基づいて応答信号を出力する。
【0050】
応答データ生成部62は、図4(e)および図6(c)に示されるようなフレーム構成を有する応答データを生成し、変調処理部64に出力する。なお、応答データのデータ領域Dには任意の情報が記述される。
【0051】
変調処理部64は、応答データによってデータ搬送用のキャリア信号に対して変調を施し、応答信号を生成する。そして、応答タイミング制御部58から出力された応答クロック信号のパルスタイミングで、応答信号をD/A変換部66に出力する。図6(c)に示すように、応答信号は、N倍周波数クロック信号の先端時刻から応答時間τ2だけ遅延した時刻に、変調処理部64からD/A変換部66に出力される。
【0052】
なお、ここでは、N倍周波数クロック信号のパルス先端時刻を基準として、応答信号が変調処理部64から出力される処理例を示しているが、N倍周波数クロック信号のパルス後端時刻を基準とした処理を採用してもよい。
【0053】
D/A変換部66は、応答信号をアナログ信号に変換し、線路結合器44に出力する。線路結合器44は、応答信号送信部から出力された応答信号を信号伝送線16に出力する。応答信号は、信号伝送線16によってタイミング情報生成装置18からタイミング調整装置22に伝送される。タイミング調整装置22が応答信号を受信し、応答信号に基づいてタイミング調整用信号を送信する処理は上記の通りである。
【0054】
なお、ここでは、タイミング情報生成装置18がタイミング調整用データ信号を受信したときは、常に応答信号を送信する処理について説明した。しかしながら、応答信号は、総てのタイミング調整用データ信号に対して送信しなくてもよい。例えば、タイミング調整装置22およびタイミング情報生成装置18が、信号遅延情報を求めるキャリブレーションモードで動作するよう設定されている場合にのみ、応答信号を送信する処理を実行することとしてもよい。この場合、タイミング調整装置22の遅延測定部42は、キャリブレーションモードでない通常モードで動作するときは、予めキャリブレーションモードの動作時に求められた信号遅延情報を送信データ生成部28に出力する。
【0055】
他の例としては、タイミング情報生成装置18は、予め定められた回数だけタイミング調整用データ信号が受信されるごとに応答信号を送信する処理を実行することとしてもよい。この場合、応答タイミング制御部58は、予め定められた回数だけN倍周波数クロック信号のパルスタイミングをカウントするごとに、応答パルス信号のパルスを応答信号送信部60に出力すればよい。
【0056】
他方、タイミング調整装置22の遅延測定部42は、応答信号が受信された場合にのみ、その応答信号に基づく応答データのプリアンブル領域Pのタイミングと、N倍周波数タイミング信号の直近のパルスタイミングとに基づいて新たな信号遅延情報を求めることとすればよい。
【0057】
次に、タイミング情報生成装置18が1PPS信号を再生する処理について説明する。タイミング情報生成装置18は、N倍周波数クロック信号のパルスをN回カウントするごとにパルスを示す信号を生成する。そして、そのように生成された信号に対し、信号遅延時間およびプリアンブル領域Pの時間長だけパルスタイミングを早めたパルス信号を1PPS信号として出力する。この処理は、遅延情報抽出部54および1PPS信号再生部68が、N倍周波数クロック信号を用いることで行われる。
【0058】
遅延情報抽出部54は、N倍周波数クロック信号のパルスタイミングに基づいて、復調処理部50から出力されたタイミング調整用データから信号遅延情報を抽出し、1PPS信号再生部68に出力する。
【0059】
1PPS信号再生部68は、N倍周波数クロック信号のパルスをN回カウントするごとにパルスを示す未調整1PPS信号を生成する。そして、信号遅延情報が示す信号遅延時間τdとプリアンブル領域Pの時間長τpとを加算した時間だけ、未調整1PPS信号のパルスタイミングよりもそのパルスタイミングが早い信号を生成し、生成された信号を1PPS信号として出力する。
【0060】
図6(b)および図6(d)に、N倍周波数クロック信号と未調整1PPS信号との時間関係を示す。これらの図に示されるように、未調整1PPS信号は、N倍周波数クロック信号がN回のパルスを示すごとにパルスを示す。この処理は、N倍周波数クロック信号をN分周することで行ってもよい。図6(e)に示すように、1PPS信号再生部68は、未調整1PPS信号のパルス先端時刻よりも時間τd+τpだけ前に立ち上がる1PPS信号を出力する。
【0061】
このようにして再生された1PPS信号は、無線基地局20が時刻同期処理を行うための時刻同期信号として用いられる。すなわち、1PPS信号再生部68は、無線基地局20に動作タイミングに関する情報を出力する構成要素として機能する。
【0062】
タイミング情報生成装置18がTODを出力する処理は、TOD抽出部52によって行われる。TOD抽出部52は、N倍周波数クロック信号のパルスタイミングに基づいて、復調処理部50から出力されたタイミング調整用データからTODを抽出し、そのTODを出力する。
【0063】
本実施形態に係る時刻同期システム10においては、各タイミング調整装置22は、信号伝送線16の信号遅延時間に応じたタイミング調整用データ信号を、その信号伝送線16の末端に接続されているタイミング情報生成装置18に送信する。タイミング情報生成装置18は、タイミング調整用データ信号に基づいて、1PPS信号を再生し無線基地局20に出力する。これによって、信号伝送線16における信号遅延時間が補償された1PPS信号を無線基地局20に供給することができる。
【0064】
また、本実施形態では、タイミング調整装置22からは、1PPS信号の周波数のN倍の周波数を有するタイミング調整用データ信号がタイミング情報生成装置18に伝送される。そして、タイミング情報生成装置18では、タイミング調整用データ信号のパルスをN回カウントするごとにパルスを示す未調整1PPS信号を生成し、その未調整1PPS信号に基づいて1PPS信号を再生する。
【0065】
これによって、タイミング調整装置22が備える逓倍部34が出力する信号の周波数、および、タイミング情報生成装置18が備える1PPS信号再生部68が出力する信号の周波数を、周波数精度、すなわち、タイミング精度を高くすることが可能な周波数とすることができる。さらに、タイミング調整装置22から1PPS信号の先のパルスが出力されてから、次のパルスが出力されるまでの間、複数回にわたり信号遅延時間を測定し、その平均値を最終的な信号遅延時間として求めることができる。
【0066】
なお、上記では、タイミング調整装置22が、タイミング調整用データに信号遅延情報を含ませて送信し、タイミング情報生成装置18が、タイミング調整用データから信号遅延情報を抽出する処理について説明した。このような処理の他、タイミング調整用データが送受信される時間帯とは別の時間帯に、タイミング調整用データとは別に、タイミング調整装置22からタイミング情報生成装置18に信号遅延情報を送信する処理を実行してもよい。例えば、図4(d)に示される各タイミング調整用データ信号が送信される時間帯の間の時間帯に、信号遅延情報を含む信号をタイミング調整装置22がタイミング情報生成装置18に送信してもよい。この場合、タイミング情報生成装置18は、図6(a)において、タイミング調整用データが取得される時間帯の間の時間帯に信号遅延情報を取得する。
【0067】
上記のように、本実施形態に係るタイミング調整装置22およびタイミング情報生成装置18は、ディジタル信号処理回路を含む。ここで、ディジタル信号のサンプリング周波数は、タイミング調整用信号および応答信号のパルスタイミングの誤差の目標範囲、すなわち、ジッタの目標範囲に基づいて決定してもよい。すなわち、サンプリング周波数が有限であることに起因するサンプリング起因ジッタの目標範囲を−Δ/2以上、+Δ/2以下(sec)とする場合には、各A/D変換部のサンプリング周波数を1/Δ(Hz)とする。
【0068】
すなわち、本実施形態に係る時刻同期システム10では、各A/D変換部のサンプリング周波数を1/Δとすることで、再生される1PPSのサンプリング起因ジッタを−Δ/2以上、+Δ/2以下(sec)とすることができる。例えば、サンプリング周波数を4.8MHzとすれば、サンプリング周波数が有限であることに起因するジッタを−104nsec以上、+104nsec以下とすることができる。また、サンプリング周波数を1MHzとすれば、サンプリング周波数が有限であることに起因するジッタを−500nsec以上、+500nsec以下とすることができる。
【0069】
次に、タイミング情報生成装置18の内部基準クロック信号と、1PPS信号再生部68から出力される1PPS信号との関係について説明する。図5に示すタイミング情報生成装置18には、図示しない内部基準クロック信号生成部が備えられている。内部基準クロック信号生成部は、データ信号/遅延情報受信部46、1PPS信号再生部68、応答タイミング制御部58および応答信号送信部60に内部基準クロック信号を出力する。内部基準クロック信号は、タイミング情報生成装置18が実行する処理のタイミングを規定するものである。内部基準クロック信号を取得したこれらの構成要素は、内部基準クロック信号が示すタイミングに従って処理を実行する。
【0070】
図7に1PPS信号再生部68の構成を示す。図5に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。タイミング検出部56から出力されたN倍周波数クロック信号、および、内部基準クロック信号生成部74から出力された内部基準クロック信号は、ディジタルPLL部70に入力される。ディジタルPLL部70は、PLL(Phase Locked Loop)によって、内部基準クロック信号を分周した信号とN倍周波数クロック信号とから未調整1PPS信号を生成する。
【0071】
図8にディジタルPLL部70の構成を示す。分周カウンタ80は、内部基準クロック信号を、N倍周波数クロック信号の周波数に近い周波数の信号が得られるよう分周し、分周信号を位相比較部76にフィードバックする。位相比較部76は、N倍周波数クロック信号と分周信号との位相差を示す位相差信号をループフィルタ78に出力する。ループフィルタ78は、位相差信号にフィルタ処理を施して分周カウンタ80に出力する。分周カウンタ80は、フィルタ処理後の位相差信号の値が小さくなるよう分周カウント数を調整する。分周カウンタ80は、さらに、分周信号のパルスをNカウントするごとに1つのパルスを示す信号を未調整1PPS信号として1PPS遅延補正部72に出力する。
【0072】
図7に戻り、1PPS遅延補正部72は、信号遅延情報が示す信号遅延時間τdとプリアンブル領域Pの時間長τpとを加算した時間だけ、未調整1PPS信号のパルスタイミングよりもそのパルスタイミングが早い信号を生成し、生成された信号を1PPS信号として出力する(図6(e))。
【0073】
このように、1PPS信号再生部68は、N倍周波数クロック信号と、内部基準クロック信号が分周された信号との位相比較を行うPLLに基づいて1PPS信号を再生する。したがって、内部基準クロック信号に周波数誤差やタイミング誤差があり、内部基準クロック信号がN倍周波数クロック信号にタイミング同期していない場合には、1PPS信号再生部68によって再生される1PPS信号には、タイミング調整装置22においてGPS受信機12から取得された1PPS信号に対し、周波数誤差またはタイミング誤差が生じる。なお、本明細書において「タイミング同期」とは、複数の信号の周波数が一致し、かつ、立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングが一致するという意味での「同期」と区別して、周波数が異なっていても調波関係がある等により、立ち上がりタイミングまたは立ち下がりタイミングが一致するという意味での同期をいうものとする。
【0074】
例えば、内部基準クロック信号の周波数が38.4MHzであり、N倍周波数クロック信号の周波数が10Hzである場合には、分周カウント数は384000となる。しかしながら、内部基準クロック信号がN倍周波数クロック信号にタイミング同期していない場合には、分周カウント数を384000からずらすことによっても、最大±26ns程度のタイミング誤差が生じる。ここで26nsは、周波数が38.4MHzである場合の内部基準クロック信号の周期である。また、内部基準クロック信号に、例えば、±δMHzの周波数誤差がある場合には、1PPS信号再生部68によって再生される1PPS信号には、±1/δμsecのタイミング誤差が生じる。次に説明する実施形態はこのような問題を解決するものである。
【0075】
図9に第2の実施形態に係る時刻同期システムにおけるタイミング調整装置82の構成を示す。また、図10に同システムにおけるタイミング情報生成装置88の構成を示す。第2の実施形態に係る時刻同期システムは、図1においてタイミング調整装置22がタイミング調整装置82に置き換えられ、タイミング情報生成装置18がタイミング情報生成装置88に置き換えられたものとなる。図2および図5に示す構成要素と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0076】
タイミング調整装置82は、タイミング調整用データ信号に従属同期用信号を重畳した信号をタイミング情報生成装置88に送信する。そして、その信号を受信したタイミング情報生成装置88は、従属同期用信号に応じたタイミングで1PPS信号を再生する。ここで、従属同期用信号は、タイミング調整装置82で用いられている調整装置側クロック信号にタイミング同期した信号である。この調整装置側クロック信号は、GPS受信機12から取得された1PPS信号にタイミング同期している。
【0077】
図9に示すように、タイミング調整装置82は、調整装置側クロック信号生成部84を備える。調整装置側クロック信号生成部84は、周波数変換部86、データ信号/タイミング調整情報送信部24、応答信号受信部36、および遅延測定部42に調整装置側クロック信号を出力する。調整装置側クロック信号は、タイミング調整装置82が実行する処理のタイミングを規定するものである。調整装置側クロック信号生成部84は、図1の時刻情報分配器14に備えられる複数のタイミング調整装置82に対し共通のものが1つ設けられていてもよい。内部基準クロック信号を取得したこれらの構成要素は、内部基準クロック信号が示すタイミングに従って処理を実行する。
【0078】
周波数変換部86は、調整装置側クロック信号を、データ信号/タイミング調整情報送信部24から出力されるタイミング調整用データ信号の占有周波数帯域と重ならない周波数の信号に変換し、周波数変換後の信号を従属同期用信号として線路結合器26に出力する。例えば、タイミング調整用データ信号の占有周波数帯域が0Hz〜fHzである場合には、周波数変換部86は、調整装置側クロック信号をfHzより高い周波数の信号に変換する。この処理は、調整装置側クロック信号と従属同期用信号とのタイミング同期関係が失われないように行われる。周波数変換部86は、例えば、調整装置側クロック信号を基準信号としたPLL、逓倍器等を用いて構成される。
【0079】
線路結合器26は、データ信号/タイミング調整情報送信部24から出力されるタイミング調整用データ信号に従属同期用信号を重畳した信号を信号伝送線16に出力する。
【0080】
次に、タイミング情報生成装置88について説明する。線路結合器44は、信号伝送線16からタイミング情報生成装置88に伝送された信号を、データ信号/遅延情報受信部46、および従属同期用信号取得部90に出力する。従属同期用信号取得部90は、線路結合器44から出力された信号から従属同期用信号を取得する。従属同期用信号取得部90は、例えば、線路結合器44から出力された信号から従属同期用信号を周波数分離するフィルタ回路、線路結合器44から出力された信号に含まれる従属同期用信号を基準信号とするPLL等を用いて構成される。従属同期用信号取得部90は、従属同期用信号を内部基準クロック信号生成部92に出力する。
【0081】
内部基準クロック信号生成部92は、従属同期用信号に基づいて内部基準クロック信号を生成する。内部基準クロック信号は、従属同期用信号とのタイミング同期関係が失われないよう生成される。内部基準クロック信号生成部92は、例えば、従属同期用信号を基準信号としたPLL、分周器等を用いて構成される。
【0082】
内部基準クロック信号生成部92は、データ信号/遅延情報受信部46、1PPS信号再生部68、応答タイミング制御部58および応答信号送信部60に内部基準クロック信号を出力する。内部基準クロック信号を取得したこれらの構成要素は、内部基準クロック信号が示すタイミングに従って処理を実行する。
【0083】
このような構成によれば、タイミング情報生成装置88においては、信号伝送線16を介して取得された従属同期用信号とタイミング同期する内部基準クロック信号が生成され、同じく信号伝送線16を介して取得されたタイミング調整用データ信号とタイミング同期するN倍周波数クロック信号が生成される。そして、タイミング調整装置82で生成される従属同期用信号およびタイミング調整用データ信号は、GPS受信機12から取得された1PPS信号にタイミング同期している。これによって、1PPS信号再生部68に入力される内部基準クロック信号と、N倍周波数クロック信号とがタイミング同期し、1PPS信号再生部68によって再生される1PPS信号に含まれる周波数誤差またはタイミング誤差が低減される。
【0084】
次に第3の実施形態に係る時刻同期システムについて説明する。この時刻同期システムは、タイミング調整装置の構成は図1の構成と同様とし、タイミング情報生成装置94の側でN倍周波数クロック信号とタイミング同期する内部基準クロック信号を生成するものである。図11に第3の実施形態に係る時刻同期システムにおけるタイミング情報生成装置94の構成を示す。図5のタイミング情報生成装置18と同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0085】
内部基準クロック信号の生成には、A/D変換部48から出力されるタイミング調整用データが用いられる。ここで、タイミング調整用データのデータ領域Dにはタイミング調整用データの転送レート、データサイズ等を示す転送情報が含まれ、このようなタイミング調整用データがタイミング調整装置22から送信されるものとする。データ信号バッファ部96は、A/D変換部48から出力されるタイミング調整用データを記憶する。記憶量読み取り部98は、データ信号バッファ部96に記憶されているデータの記憶量を検出し、検出されたデータ記憶量を内部基準クロック信号生成部100に出力する。内部基準クロック信号生成部100は、データ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を生成し、バッファ制御部104、データ信号/遅延情報受信部46、1PPS信号再生部68、応答タイミング制御部58および応答信号送信部60に出力する。内部基準クロック信号生成部100は、例えば、データ記憶量がある下限値D1に達したときはその時点の周波数よりも内部基準クロック信号の周波数を低く設定し、データ記憶量がある上限値D2に達したときはその時点の周波数よりも内部基準クロック信号の周波数を高く設定する。
【0086】
制御データ抽出部102は、復調処理部50から出力されたタイミング調整用データのデータ領域Dから転送情報を読み込み、その転送情報をバッファ制御部104に出力する。バッファ制御部104は、内部基準クロック信号の周波数と転送情報とに基づいて、単位時間当たりにデータ信号バッファ部96において消去されるべきデータの量を示すデータ消去速度を決定する。バッファ制御部104は、例えば、求められた記憶速度を基準として、内部基準クロック信号の周波数が高くなる程その値が大きくなるよう、内部基準クロック信号の周波数が低くなる程その値が小さくなるよう、データ消去速度を決定する。
【0087】
バッファ制御部104は、決定したデータ消去速度でデータが消去されるよう、データ信号バッファ部96を制御する。データ信号バッファ部96は、バッファ制御部104の制御に基づいて規定されるデータ消去速度で、記憶されていたデータを消去する。
【0088】
このような構成によれば、データ信号バッファ部96に記憶されているデータの記憶量は一定の範囲内に維持され、内部基準クロック信号の周波数もまた一定の範囲内に維持される。すなわち、図12に示すように、時間と共にデータ記憶量が下限値D1から増加し、データ記憶量が上限値D2に達した後は、内部基準クロック信号の周波数がその時点の周波数よりも高く設定され、データ消去速度がその時点のデータ消去速度よりも大きく設定される。その後、時間と共にデータ記憶量が上限値D2から減少し、データ記憶量が下限値D1に達した後は、内部基準クロック信号の周波数がその時点の周波数よりも低く設定され、データ消去速度がその時点のデータ消去速度よりも小さく設定される。これによって、データ記憶量はD1からD2の間に維持され、これに応じて内部基準クロック信号の周波数もまた一定の範囲内に維持される。
【0089】
なお、ここでは、制御データ抽出部102が復調処理部50から出力されたタイミング調整用データのデータ領域Dから転送情報を読み込み、その転送情報をバッファ制御部104に出力するものとした。時刻同期システムにおいて予め転送情報が固定的に定められている場合には、バッファ制御部104が予め定められた転送情報に基づいてデータ消去速度を決定する構成としてもよい。
【0090】
このような構成によれば、タイミング情報生成装置94においては、信号伝送線16を介して取得されたタイミング調整用データ信号とタイミング同期する内部基準クロック信号が生成され、同じく信号伝送線16を介して取得されたタイミング調整用データ信号とタイミング同期するN倍周波数クロック信号が生成される。したがって、1PPS信号再生部68に入力される内部基準クロック信号と、N倍周波数クロック信号とがタイミング同期し、1PPS信号再生部68によって再生される1PPS信号に含まれる周波数誤差またはタイミング誤差が低減される。
【0091】
さらに、このような構成によれば、内部基準クロック信号生成部100は、データ信号バッファ部96におけるデータ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を出力する。このデータ記憶量は、データ信号バッファ部96に記憶されるデータの加算合計値に相当する。したがって、A/D変換部48から出力されるタイミング調整用データの周波数にゆらぎがあったとしても、そのゆらぎは加算合計によって相殺されてデータ記憶量に反映される。これによって、タイミング調整用データの周波数のゆらぎに基づく内部基準クロック信号の周波数誤差が低減され、1PPS信号再生部68によって再生される1PPS信号に含まれる周波数誤差またはタイミング誤差が低減される。
【符号の説明】
【0092】
10 時刻同期システム、12 GPS受信機、14 時刻情報分配器、16 信号伝送線、18,88,94 タイミング情報生成装置、20 無線基地局、22,82 タイミング調整装置、24 データ信号/タイミング調整情報送信部、26,44 線路結合器、28 送信データ生成部、30,64 変調処理部、32,66 D/A変換部、34 逓倍部、36 応答信号受信部、38,48 A/D変換部、40,50 復調処理部、42 遅延測定部、46 データ信号/遅延情報受信部、52 TOD抽出部、54 遅延情報抽出部、56 タイミング検出部、58 応答タイミング制御部、60 応答信号送信部、62 応答データ生成部、68 1PPS信号再生部、70 ディジタルPLL部、72 1PPS遅延補正部、74,92,100 内部基準クロック信号生成部、76 位相比較部、78 ループフィルタ、80 分周カウンタ、84 調整装置側クロック信号生成部、86 周波数変換部、90 従属同期用信号取得部、96 データ信号バッファ部、98 記憶量読み取り部、102 制御データ抽出部、104 バッファ制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信対象情報およびタイミング基準信号を取得する情報取得部と、
前記通信対象情報を含むデータ信号を生成し、前記タイミング基準信号に応じたタイミングで当該データ信号を信号伝送線に送信するデータ信号送信部と、
前記信号伝送線の末端に接続され前記データ信号を受信した通信装置から、当該データ信号に応答して送信された応答信号を受信する応答信号受信部と、
前記タイミング基準信号および前記応答信号に基づいて、前記信号伝送線に関する信号遅延情報を求める遅延測定部と、
前記信号遅延情報を、動作タイミングの調整に関する情報として、前記信号伝送線を介して前記通信装置に送信するタイミング調整情報送信部と、
を備えることを特徴とするタイミング調整装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタイミング調整装置において、
前記情報取得部は、
衛星信号受信機から前記通信対象情報および前記タイミング基準信号を取得することを特徴とするタイミング調整装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のタイミング調整装置において、
前記データ信号送信部は、
前記タイミング基準信号が示す時間間隔よりも短い時間間隔で、前記データ信号を送信し、
前記応答信号受信部は、
前記データ信号が送信される時間帯とは異なる時間帯に、前記応答信号を受信することを特徴とするタイミング調整装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタイミング調整装置において、
前記タイミング調整情報送信部は、
前記データ信号に前記信号遅延情報を含ませることを特徴とするタイミング調整装置。
【請求項5】
通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、
前記データ信号を受信したタイミングに応じたタイミングで、前記信号伝送線に応答信号を送信する応答信号送信部と、
前記信号伝送線に関する信号遅延情報を前記応答信号を受信したタイミングに基づいて求めた前記タイミング調整装置から、当該信号遅延情報を前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、
前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、
を備えることを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項6】
請求項5に記載のタイミング情報生成装置において、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、前記タイミング基準信号と同期した同期信号を生成し、当該同期信号を動作タイミングに関する情報として出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項7】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタイミング調整装置と、
前記通信装置を備えるタイミング情報生成装置と、を備え、
基準時刻を示す時刻同期信号を無線基地局に供給する時刻同期システムにおいて、
前記タイミング基準信号は基準時刻に同期した信号であり、
前記通信装置は、
前記タイミング調整装置から、前記信号伝送線を介して前記データ信号を受信するデータ信号受信部と、
前記データ信号を受信したタイミングに応じたタイミングで、前記信号伝送線に前記応答信号を送信する応答信号送信部と、
前記タイミング調整装置から前記信号遅延情報を前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、
前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて前記時刻同期信号を生成し、前記無線基地局に供給する時刻同期信号生成部と、
を備えることを特徴とする時刻同期システム。
【請求項8】
請求項5に記載のタイミング情報生成装置において、
前記タイミング調整装置によって前記データ信号に重畳して送信された従属同期用信号を、前記信号伝送線を介して取得する従属同期用信号取得部と、
前記従属同期用信号に基づいて内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、
を備え、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項9】
請求項5に記載のタイミング情報生成装置において、
前記データ信号受信部で受信された前記データ信号を記憶するデータ信号バッファ部と、
前記データ信号バッファ部におけるデータ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、
前記内部基準クロック信号の周波数に応じたデータ消去速度で前記データ信号バッファ部の記憶内容を消去するバッファ制御部と、
を備え、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項10】
通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、
前記タイミング調整装置との間の前記信号伝送線を介した通信によって求められた前記信号伝送線に関する信号遅延情報を、前記タイミング調整装置から前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、
前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、
前記タイミング調整装置によって前記データ信号に重畳して送信された従属同期用信号を、前記信号伝送線を介して取得する従属同期用信号取得部と、
前記従属同期用信号に基づいて内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、
を備え、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項11】
通信対象情報およびタイミング基準信号を取得し、当該通信対象情報を含むデータ信号を当該タイミング基準信号に応じたタイミングで送信するタイミング調整装置から、信号伝送線を介して当該データ信号を受信するデータ信号受信部と、
前記タイミング調整装置との間の前記信号伝送線を介した通信によって求められた前記信号伝送線に関する信号遅延情報を、前記タイミング調整装置から前記信号伝送線を介して受信する遅延情報受信部と、
前記データ信号と前記信号遅延情報とに基づいて、動作タイミングに関する情報を出力する動作タイミング情報出力部と、
前記データ信号受信部で受信された前記データ信号を記憶するデータ信号バッファ部と、
前記データ信号バッファ部におけるデータ記憶量に応じた周波数を有する内部基準クロック信号を生成する内部基準クロック信号生成部と、
前記内部基準クロック信号の周波数に応じたデータ消去速度で前記データ信号バッファ部の記憶内容を消去するバッファ制御部と、
を備え、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記内部基準クロック信号に基づいて、動作タイミングに関する情報を出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。
【請求項12】
請求項8から請求項11のいずれか1項に記載のタイミング情報生成装置において、
前記動作タイミング情報出力部は、
前記データ信号、前記信号遅延情報、および前記内部基準クロック信号に基づいて、前記タイミング基準信号と同期した同期信号を生成し、当該同期信号を動作タイミングに関する情報として出力することを特徴とするタイミング情報生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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