説明

タイヤの外観修正方法及び外観修正装置

【課題】タイヤのサイドウォール部に生じた外観不良の修正を自動化し、確実かつ安定して修正することのできるタイヤの外観修正方法及び外観修正装置を提供する。
【解決手段】タイヤtのサイドウォール部を撮影手段13により撮影する。得られたタイヤtのサイドウォール部の画像データを画像処理手段14により基準データと比較してサイドウォール部の表面に生じている外観不良箇所を検出する。検出されたサイドウォール部の外観不良箇所に、造形手段20によりゴムを供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの外観修正方法及び外観修正装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイドウォール部は、車両に取り付けられとき目に入る部分であるため、外観が美麗であることが好ましい。しかしながら、タイヤ製造時における加硫成型時の不都合等によって、このサイドウォール部にベアと呼ばれる外観不良部分が生じる場合がある。また、タイヤのサイドウォール部には、文字や記号等による識別標識が形成されている。この識別標識を形成するために、タイヤの製造工程における加硫成型の前に、セリアルプレートと呼ばれる識別標識が刻印されたプレートを生タイヤのサイドウォール部に貼り付け、この貼り付けられた状態で加硫成型を行うことが行われている(特許文献1)。このセリアルプレートを用いて識別標識を形成するとき、加硫成型時のセリアルプレートの変形、ずれ等によって適切に識別標識が形成されずに、ベア等の外観不良部分が生じる場合がある。
【0003】
サイドウォール部に外観不良が生じた場合に、その外観不良が修正可能であると判断された場合には、人手により、外観不良としてのベア部分に補修ゴム材を埋め、焼き付けを行うという手直しを行っていた。また特に、サイドウォール部における識別標識が形成された部分に外観不良が生じた場合は、この外観不良の部分にバフ加工を行って識別標識の一部又は全部を一旦除去してから、セリアルプレートを用いて人手により所定の識別記号を形成し、焼き付けを行うという手直しを行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−38528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような外観部分の修正を、人手によって行っている現状では,修正に手間がかかる。また、外観の手直しは細かい技術を要するため、作業者の負担となるだけでなく、修正の出来が作業者の技量に依存しているので、技能継承が困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、タイヤのサイドウォール部に生じた外観不良の修正を自動化し、確実かつ安定して修正することのできるタイヤの外観修正方法及び外観修正装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のタイヤの外観修正方法は、タイヤのサイドウォール部を撮影手段により撮影し、得られた当該タイヤのサイドウォール部の画像データを画像処理手段により基準データと比較して当該サイドウォール部の表面に生じている外観不良箇所を検出し、検出されたサイドウォール部の外観不良箇所に、造形手段によりゴムを供給することを特徴とする。
【0008】
本発明のタイヤの外観修正方法においては、造形手段が、三次元造形装置であり、この三次元造形装置からゴムを吹きつけること、更にレーザ加工を行うこと、又はタイヤに、タイヤを特定する識別符号が刻印又は貼付され、画像処理手段は、このタイヤに貼付された識別符号を読み取ることで基準データを読み出すことができる。
【0009】
本発明のタイヤの外観修正装置は、タイヤのサイドウォール部を撮影する撮影手段と、得られた当該タイヤのサイドウォール部の画像データと基準データと比較して当該サイドウォール部の表面に生じている外観不良箇所を検出する画像処理手段と、検出されたサイドウォール部の外観不良箇所に、ゴムを供給する造形手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、撮影手段、画像処理手段及び造形手段により外観不良部を修正することができるから、タイヤの外観修正を自動化することができ、よってタイヤの外観修正を確実にかつ安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態の外観修正装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のタイヤの外観修正方法及び外観修正装置を、図面を用いて具体的に説明する。
図1に模式図で示す本発明の一実施形態の外観修正装置1は、外観検査装置10と、修正装置20とを備えている。
【0013】
外観検査装置10は、タイヤtを載置するテーブル11と、テーブル11よりも上方に設けられたヘッド12と、ヘッド12に取り付けられた撮影手段としてのカメラ13を有している。このカメラ13は、テーブル11に載置されてサイドウォール部が上側に位置するタイヤtの当該サイドウォール部を撮影するために、テーブル11に向けて配設されている。カメラ13は、タイヤtのサイドウォール部の全範囲を撮影することができる撮影範囲を有しているものを用いることができる。もっとも、この例に限定されず、カメラ13は、タイヤtのサイドウォール部を部分的に撮影することができる撮影範囲を有するものでもよく、この場合はヘッド12及びテーブル11のいずれか一方又は両方を、水平面内に移動可能な構造としたり、テーブル11に、タイヤtを水平面内で回転させるターンテーブルを設ける構成としたりすることができる。また、カメラ13によってタイヤtの片面のサイドウォール部だけでなく、両面のサイドウォール部を撮影することができるように、テーブル13にタイヤの反転装置を設ける構成とすることもできる。
【0014】
カメラ13により撮影された画像情報は、画像処理装置14に入力される。画像処理装置14は、カメラ13や入力装置15から信号が入力され、また表示装置16に信号を出力する入出力部と、正常なタイヤの画像情報が基準データとして記憶されている記憶部と、記憶部に記憶されている正常なタイヤの画像情報と、カメラ13から入力された画像情報とを比較して外観不良部を検出する演算部と、演算部による外観不良部を検出する際に画像情報を一時的に記憶する一時記憶部とを有している。
【0015】
画像処理装置14よって検出された外観不良部を修正するために用いられる修正装置20は、外観検査装置10により外観が検査されたタイヤtを載置するテーブル21と、テーブル21よりも上方に設けられたヘッド22と、ヘッド22に取り付けられた造形手段の部材としてのゴム吹き付け装置23とを有している。ゴム吹き付け装置23は、三次元造形装置のノズルとすることができ、三次元造形装置のノズルから、タイヤtのサイドウォール部の外観不良部としてのベアに向けてゴムを吹きつけることによりベアを埋める。このように修正装置20は、全体として三次元造形装置の構成とすることができ、ヘッド22が移動可能な構成になることにより、ゴム吹き付け装置23は水平面内に自由に移動することができ、また、テーブル21が垂直方向に昇降移動な構成になり、これによりゴム吹き付け装置23は所定の三次元的な形状にゴムを吹き付けることができるようになっている。この三次元造形装置は、より具体的には、dimension社の熱溶解積層法を用いた三次元プリンタを用いることができる。この熱溶解積層法を用いた三次元プリンタは、ABS樹脂を用いたラピットプロトタイピング装置であるが、本発明ではこのABS樹脂の代わりにゴムを用いる。
【0016】
ゴム吹き付け装置23によるゴムの吹き付けは、制御装置24により制御される。制御装置24は、この制御装置24に接続される入力装置25からの信号が入力され、また表示装置26に信号を出力し、ゴム吹き付け装置23に制御信号を出力する入出力部と、制御プログラムが記憶されている記憶部と、記憶部に記憶されている制御プログラム実行する演算部と、演算部による制御プログラムの実行の際にプログラムを一時的に記憶する一時記憶部とを有している。
【0017】
図1に示した外観修正装置1によるタイヤの外観の修正方法の一実施形態を説明する。まず、外観不良を有するタイヤtを外観検査装置10のテーブル11に載置する。タイヤtの外観不良の検出は、外観検査装置10を用いることもできるが、テーブル11に載置する前に、別の外観検査装置を用いても良いし、また、目視により検出してもよい。また、タイヤtは、外観検査装置10のテーブル11に載置する前に、前処理として外観不良部にバフ加工を行うこともできる。特に、タイヤのサイドウォール部の識別標識の部分に外観不良が生じている場合には、その識別標識の一部又は全部をバフ加工により除去することが好ましい。
【0018】
次に、外観検査装置10のカメラによりタイヤtのサイドウォール部の画像を撮影し、この画像情報の信号を画像処理装置14に入力する。画像処理装置14では、記憶部にあらかじめ記憶されている基準データとしての正常なタイヤの画像情報と比較して、タイヤtのサイドウォール部に生じている外観不良部を検出する。この外観不良部の検出は、ベア部の有無又はバフ加工された部分の有無を、画像処理により公知の方法で検出する構成とすることができる。
【0019】
次に、検出された外観不良部を修正装置20により修正する。検出された外観不良部の形状やタイヤにおける位置の情報は、外観検査装置10の画像処理装置14から出力されて修正装置20の制御装置24に入力され、この情報に従って制御装置20は、修正装置20のテーブル21及びヘッド22の移動と、ゴム吹き付け装置23のゴム吹き付け量とを制御する。このような制御を行って、修正装置20は、タイヤtの外観不良部を埋めて外観不良部を無くすようにゴムを吹き付けて、これにより外観を復元する。その後は、必要に応じて焼き付けを行う。
【0020】
以上述べたようなタイヤの外観修正方法及び外観修正装置によれば、タイヤtのサイドウォール部に生じた外観不良の修正を自動化することができるので、外観不良を確実かつ安定して修正することができる。
【0021】
図1に示した修正装置20は、三次元プリンタの構成を有するものであるが、本発明のタイヤの外観修正装置の好ましい実施形態においては、修正装置が、更にレーザ加工装置を有する構成とすることもできる。このレーザ加工装置は、タイヤのサイドウォール部を表面加工して凹部の刻印を形成することができる装置の構造を有するものを用いることができる。タイヤのサイドウォール部に形成されている識別標識は、表面から凸な部分とすることにより識別できる標識がある他に、表面から凹な部分とすることにより識別できる標識がある。表面から凸な部分とすることにより識別できる標識の一部又は全部を本発明に従い修正する場合には、先に述べた三次元プリンタの構成を有するものを用いて修正すればよく、また、表面から凹な部分とすることにより識別できる標識の一部又は全部を本発明に従い修正する場合については、上述したレーザ加工装置を有する修正装置を用いて、そのレーザ加工装置によりタイヤのサイドウォール部の表面を刻印することにより修正することができる。更に、複雑な凹凸形状を有する識別標識の部分を修正する場合には、修正装置により三次元プリンタの構成を有するものを用いてタイヤのサイドウォール部の修正すべき部分にゴムを吹き付けた後、この吹き付けたゴムの部分にレーザ加工装置を用いて刻印することができる。このレーザ加工装置は、図1に示した修正装置20のゴム吹き付け装置23と同一のヘッド22に取り付けても良いし、また、別の修正装置に取り付けても良い。
【0022】
また、本発明のタイヤの外観修正方法及び外観修正装置のより好ましい実施形態としては、上述した本発明の外観修正方法及び外観修正装置の実施形態の構成を具備した上で、更に、タイヤに、タイヤを特定する識別符号が刻印又は貼付され、画像処理手段は、このタイヤに貼付された識別符号を読み取ることでこの識別符号に対応した基準データを読み出す構成とすることができる。タイヤの製造工程において、個々のタイヤの管理のために、タイヤを特定する識別番号、例えばバーコードが個々のタイヤに刻印され、又はバーコードのシートが個々のタイヤに貼り付けられている。したがって、図1に示した外観修正装置1の外観検査装置10において、カメラ13又は別の読み取り装置によりタイヤを特定する識別番号としての、例えばバーコードを読み取り、このバーコードに含まれるタイヤを特定するための情報を画像処理装置14に入力し、この画像処理装置14では、このタイヤを特定するための情報に基づいて、記憶部からこのタイヤに対応する基準データを読み出す構成とすることができる。このように、タイヤに貼付された識別符号を読み取り、この識別符号に対応した基準データを読み出すことにより、修正のための基準データとして、誤った基準データを用いることを防止することができる。よって、修正の誤作動を防止することができる。従来技術による人手による修正では、修正のためにバフ加工により識別標識をいったん除去すると、作業者の錯誤やミスにより、修正すべき識別標識の文字、記号違いや修正未実施のような手直し不良を生じる懸念があるが、本実施形態に従い、修正すべきタイヤに刻印又は貼付されたバーコード等の識別符号を読み取ることでタイヤを特定し、適正な修正を行うことができ、人為的なミスが介在することがないので、自動化のメリットは大きい。
【0023】
以上、図面を用いて本発明の実施形態を説明したが、本発明のタイヤの外観修正方法及び外観修正装置は、実施形態及び図面の記載に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で幾多の変形が可能である。例えば、図1では、外観検査装置10と、修正装置20とが別個の装置として記載されているが、外観検査装置と修正装置20とを一体とした装置として、そのヘッドに撮影手段と造形手段との両方を設けた構成とすることもできる。また、図1の画像処理装置14及び制御装置24を同一のハードウェアとして、実行するプログラムを切り替えることにより画像処理機能と制御機能とを切り替えることもできる。
【符号の説明】
【0024】
1:外観修正装置
10:外観検査装置
13:カメラ(撮影手段)
14:画像処理装置(画像処理手段)
20:修正装置(造形手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤのサイドウォール部を撮影手段により撮影し、
得られた当該タイヤのサイドウォール部の画像データを画像処理手段により基準データと比較して当該サイドウォール部の表面に生じている外観不良箇所を検出し、
検出されたサイドウォール部の外観不良箇所に、造形手段によりゴムを供給する
ことを特徴とするタイヤの外観修正方法。
【請求項2】
前記造形手段が、三次元造形装置であり、この三次元造形装置からゴムを吹きつける請求項1記載のタイヤの外観修正方法。
【請求項3】
外観不良箇所に、更にレーザ加工を行う請求項1記載のタイヤの外観修正方法。
【請求項4】
タイヤに、タイヤを特定する識別符号が刻印又は貼付され、前記画像処理手段は、このタイヤに貼付された識別符号を読み取ることで基準データを読み出す請求項1記載の外観修正方法。
【請求項5】
タイヤのサイドウォール部を撮影する撮影手段と、
得られた当該タイヤのサイドウォール部の画像データと基準データと比較して当該サイドウォール部の表面に生じている外観不良箇所を検出する画像処理手段と、
検出されたサイドウォール部の外観不良箇所に、ゴムを供給する造形手段と
を備えることを特徴とするタイヤの外観修正装置。

【図1】
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