タイヤの搬送・保持装置
【課題】試験機上に搬入したタイヤTを上下からリムで挟んで空気を充填しようとした場合、タイヤと上リムとの隙間から空気が洩れることがあるという問題があった。
【解決手段】上下に分割したリム4,5によってタイヤTを挟み、そのタイヤTに空気を充填した状態で試験を行う試験機1に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、試験機1上に搬入されたタイヤかを外周面側から保持する保持アーム7を有する。保持アーム7は、上下リム4,5によってタイヤTが上下から挟まれ、タイヤTに空気が充填され終えるまでタイヤTを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除する。
【解決手段】上下に分割したリム4,5によってタイヤTを挟み、そのタイヤTに空気を充填した状態で試験を行う試験機1に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、試験機1上に搬入されたタイヤかを外周面側から保持する保持アーム7を有する。保持アーム7は、上下リム4,5によってタイヤTが上下から挟まれ、タイヤTに空気が充填され終えるまでタイヤTを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤの搬送・保持装置に関し、特に、上下に分割したリムによって、タイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのユニフォーミティ試験や動釣合い試験を行う際には、水平方向に寝かせたタイヤを上下からリムで挟み、タイヤに空気を充填して(インフレートして)試験を行う。そして、試験機が流れ作業を行う処理プロセス中に組み込まれた場合は、前工程からタイヤは試験機上に搬入され、搬入されたタイヤが上下からリムによって挟まれ、タイヤがインフレートされ、試験が行われ、その後タイヤの空気が排出されてリムが外され、タイヤは後工程へと搬出される。
【0003】
流れ作業プロセス中に組み込まれた試験機に対して、タイヤを搬入し、試験が終わった後のタイヤを搬出する搬送装置は、従来、多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)によって構成されていた。多数の搬送ローラは、タイヤの搬送方向に見て、試験機の上流側および下流側ならびに試験機に備えられている。そして上流側の搬送ローラ上を移動されるタイヤは、試験機の搬送ローラ上まで移動し、試験機の搬送ローラが下方に下がることにより、タイヤは下リムで受け止められ、かつ、下がった搬送ローラは下方へ退避し、その後上リムが降下してタイヤが上下のリムで挟まれる。そしてタイヤはインフレートされて、試験が行われる。
【0004】
試験終了後、上リムが上方へ移動してタイヤから離れ、試験機の搬送ローラが上方へ移動してタイヤを下リムから持ち上げ、そして搬送ローラが転動してタイヤを下流側の搬送ローラへと搬出する。(たとえば特開2000−329658号公報参照)
【特許文献1】特開2000−329658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタイヤ用試験機に適用されるタイヤの搬送装置は、多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)で構成されているが、試験機に備えられた搬送ローラは、試験機に対して上下動するため、試験機に設けられたリム(特に下リム)とぶつからないよう、平面視で中央部分に搬送ローラを配置することができない。つまり、試験機の多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)は、平面視でその中央部に空間が形成されたローラコンベヤとしなければならない。このため、上流側から搬入されるタイヤを試験機上のセンターに搬入する際、ローラコンベヤの中央部には搬送ローラがないため、タイヤを真っ直ぐに移動させて、試験機上のセンタに停止させにくいという欠点があった。また、タイヤを搬出する際にも、ローラコンベヤの中央部に搬送ローラが存在しないため、タイヤをスムーズに搬出できないことがあるという問題があった。
【0006】
さらに、試験機のローラコンベヤが下がることにより、タイヤは下リムに受け止められ、その後上リムが降下してタイヤを挟むが、そのとき、タイヤは空気が充填されていないから、下リムに受け止められたタイヤは全体的に下方へわずかに弛みを生じており、所定位置まで降下した上リムとタイヤの上側側面との間に若干の隙間が残った状態になる。そしてこの状態でタイヤに空気をインフレートしようとした場合、タイヤと上リムとの隙間から空気が漏れ、インフレートに時間がかかったり、インフレートができないといった問題があった。
【0007】
インフレートに関するかかる問題を解決するためには、たとえばタイヤの上方からタイヤと上リムとの隙間に空気を供給し、インフレートを補うといった構成を追加する必要があった。
この発明は、かかる技術背景のもとになされたもので、上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤをインフレートした状態で試験を行う試験機に適用される新規なタイヤの搬送・保持を提供することを主たる目的とする。
【0008】
またこの発明は、タイヤをスムーズに試験機へ搬入でき、かつ、搬入されたタイヤにスムーズに空気を充填できるタイヤの搬送・保持装置を提供することを他の目的とする。
さらにこの発明は、試験終了後のタイヤを試験機からスムーズに搬出できるタイヤの搬送・保持装置を提供することをさらに他の目的とする。
これら目的を達成するための本件発明の構成は、請求項1〜7の記載により実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、上記試験機上に搬入されたタイヤを外周面側から保持する保持手段を有し、当該保持手段は、上記リムによってタイヤが上下から挟まれ、タイヤに空気が充填され終えるまでタイヤを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除することを特徴とする、タイヤの搬送・保持装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記保持手段は、保持したタイヤをリムに装着し、また、リムから解除するために、上下動し得ることを特徴とする、請求項1記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項3記載の発明は、上記保持手段は、保持したタイヤの中心をリムに中心に一致させるためのセンタリング機能を有することを特徴とする、請求項1または2記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、タイヤの搬送方向に見て、上記試験機の上流側に備えられ、上面にタイヤを乗せ、タイヤを乗せた状態で搬送方向へ移動し、タイヤを上記試験機上に搬入する搬入用ローラコンベヤを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項5記載の発明は、上記搬入用ローラコンベヤは、先端側(搬送方向下流側)に、乗せたタイヤが搬送方向に移動するのを阻止して、タイヤをローラコンベヤの幅方向中央で停止させるための、開閉可能なストッパを有することを特徴とする、請求項4記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、上記試験機による試験が終了後、上記保持手段が再び保持したタイヤの下方へ搬送方向下流側から水平に移動され、保持手段が保持を解除することによりタイヤを受け取り、試験機上からタイヤを搬送方向へ搬出する搬出手段を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項7記載の発明は、上記搬出手段は、搬送方向に前後に往復移動し得るローラコンベヤまたはベルトコンベヤを含むことを特徴とする、請求項6記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、試験機上に搬入されたタイヤは、保持手段により保持され、保持状態のまま上下からリムがセットされ、かつ、保持状態のままタイヤに空気が充填される。従って、タイヤが下リムに乗せられ、自重でタイヤが下方へ僅かに撓み、上リムとタイヤとの間に隙間が生じるといった現象は生じない。タイヤは保持手段で保持されて所定の位置に下されて下リムにセットされ、その状態で上リムが下降される。よってタイヤの下方および上方はそれぞれ下リムおよび上リムに係合しており、空気がタイヤ内へ供給されると、タイヤは良好にインフレートされる。インフレート後に、保持手段の保持が解除されるから、タイヤの試験機に対する装着および空気のインフレートが、スムーズにかつ良好に行われる。
【0014】
請求項2の発明によれば、保持手段により、搬入されたタイヤを下リムに装着し、また、下リムから解除することができる。
請求項3の発明では、タイヤをリムにセットする際に、保持手段で保持されたタイヤをリムの中心に合わせるようにセンタリングでき、リムとタイヤとの位置関係がずれることがない。
【0015】
請求項4の発明では、タイヤは、搬入用ローラコンベヤに乗せられ、搬入用ローラコンベヤ自体が搬送方向へ移動することにより、試験機の上にタイヤが搬入される。
従って、タイヤの搬入をスムーズに、かつ的確に行うことができる。
請求項5の発明では、搬入用ローラコンベヤに乗せられたタイヤは、ストッパにより搬入用ローラコンベヤの所定の位置に正しく停止されるので、タイヤを乗せた搬入用ローラコンベヤが搬入方向に移動することにより、タイヤを試験機上の所定の位置に正しく搬入することができる。その結果、搬入されたタイヤを、保持手段が的確に保持することができる。
【0016】
請求項6の発明では、試験終了後のタイヤは、保持手段で再び保持され、搬出手段へ与えられる。搬出手段は、搬送方向下流側から試験機上に進入し、保持手段で保持されたタイヤを受け取った後、搬送方向へ移動して試験機上からタイヤを搬出する。搬出手段の移動によりタイヤは搬出されるので、タイヤの搬出が確実に行える。
請求項7の発明では、搬出手段は、ローラコンベヤまたはベルトコンベヤで構成されているから、試験機上からタイヤを搬出した後、その搬出したタイヤをさらに後工程に搬送するのが容易に行える。
【0017】
以上のように、この発明によれば、試験機に対してタイヤをセットし、タイヤに空気をインフレートして試験を行い、そのタイヤを試験機から搬出するにあたり、タイヤを良好に搬入でき、試験機にセットでき、空気をインフレートでき、かつ試験後のタイヤを良好に搬出できるタイヤの搬送・保持装置を提供することができる。
なお、この発明のタイヤの搬送・保持装置が適用できる試験機としては、たとえば、タイヤ用動釣合い試験機とすることができる。また、タイヤのユニフォーミティ試験を行う試験機とすることができる。あるいは、タイヤのユニフォーミティ試験および動釣合い試験の双方を行う兼用型の試験機とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1〜図9は、この発明の一実施形態に係るタイヤの搬送・保持装置が採用されたタイヤ用動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための図であり、各図において、(A)は平面図、(B)は正面図である。
まず、図1を参照して、タイヤ用動釣合い試験機システムの構成について説明をする。
【0019】
この動釣合い試験機システムには、図において左右方向中央部にタイヤ用の動釣合い試験機1が配置され、搬送方向上流側(図において左側)には搬入装置2が配置され、搬送方向下流側(図において右側)にはマーキング装置3が配置されている。
動釣合い試験機1の具体的な構成は、図面では省略されており、タイヤを上下から保持するための上リム4および下リム5だけが図示されている。動釣合い試験機1の具体的な構成は、本願出願人の先願に係る特願2004−161438号に開示されている。
【0020】
このシステムでは、動釣合い試験機1に保持手段6が組み込まれている。保持手段6は、2対の保持アーム7と、保持アーム7を上下に移動させるための昇降機構8とを含んでいる。
搬入装置2は、ベースフレーム9の上に設けられたローラコンベヤ10を含む。ローラコンベヤ10は、水平方向に配列された複数のローラ11と、それらローラを回転駆動するための図示しない駆動源と、複数のローラ11全体を搬送方向前後に(図において左右方向に)移動させるための移動機構12とを含んでいる。さらに、搬入装置2には、ベースフレーム9に備えられ、複数のローラ11上を搬送方向(図において右方向)へ移動するタイヤを停止させ、かつ、ローラコンベヤ10の幅方向中央で停止させるための一対のストッパアーム13が備えられている。ストッパアーム13は、図1に示すタイヤTを停止させることのできる閉塞位置と、図2に示す開放位置とに回動し得る。
【0021】
マーキング装置3は、動釣合い試験終了後のタイヤに対し、不釣合いの角度位置および不釣合い量を表記するための装置である。このマーキング装置3には、搬出機構14が組み込まれている。搬出機構14は、水平方向に延びるベルトコンベヤ15と、当該ベルトコンベヤ15全体を搬送方向に後方および前方へ往復移動させることのできる移動ベース16とを含んでいる。
【0022】
以上がこの動釣合い試験機システムの概略構成である。次に、システムの動作について、タイヤTの処理手順に沿って説明をする。
図1を参照して、図示しない前工程の装置からタイヤTが搬入装置2に対し図において左側から供給される。搬入装置2のローラコンベヤ10は、複数のローラ11を回転駆動させ、供給されたタイヤTをローラ11上を図において左から右方向へ移動させる。このとき、ストッパアーム13は閉じられており、ローラ11上を右方へ移動されるタイヤTは、ストッパアーム13で止められる。その際、ストッパアーム13は、タイヤTの進行方向に斜めに閉じているので、ストッパアーム13によりタイヤTはローラコンベヤ10の幅方向中央になるように停止される。タイヤTが停止後、ローラ11の回転は停止される。
【0023】
図2を参照して、次いで、ストッパアーム13が開かれ、ローラコンベヤ10全体が、移動機構12によって搬送方向(図において右方向)へ移動される。そしてこれにより、ローラコンベヤ10上に乗せられたタイヤTは、動釣合い試験機1の上に搬入される。搬入後、保持アーム7が閉じてタイヤTをその外周面側から保持する。
図3を参照して、その後、ローラコンベヤ10は搬送方向後方(図において左方向)へ移動し、図1に示す最初の位置に戻る。そしてストッパアーム13が閉じられる。なお、図3以降の各(B)図には、ストッパアーム13の表示は省略されている。
【0024】
ローラコンベヤ10が搬送方向後方へ戻っても、タイヤTは保持アーム7により保持されており、落下することはない。
図4を参照して、次に、昇降機構8によってタイヤTを保持した状態で保持アーム7が所定位置まで降下される。所定位置とは、タイヤTの下方側(下側側面)が下リム5に係合される位置である。
【0025】
なお、この実施形態に係る動釣合い試験機1では、後述するように、下リム5は、動釣合い試験をするタイヤの幅、直径および扁平率に応じて予め上下動され、所定の高さ位置にされている。この所定の高さ位置になっている下リム5に対し、保持アーム7が降下され、保持アーム7によって保持されているタイヤTの下側側面が、下リム5に係合される。
【0026】
図5を参照して、次いで、上リム4が降下される。上リム4は、タイヤサイズ等に関係なく常に一定位置まで降下される。しかし、タイヤサイズに合わせて、下リム5が、上述したように所定の高さに調整されているから、一定位置まで降下した上リム4は、保持アーム7によって保持されたタイヤTの上側側面と正しく係合する。
タイヤTに対して下リム5および上リム4が係合され、両リム4,5によってタイヤTが上下から挟まれた状態においても、保持アーム7によるタイヤの保持は継続されている。
【0027】
そして、タイヤTは保持アーム7によって保持された状態のままインフレートされる。インフレートの際、タイヤTの下側側面および上側側面は、それぞれ、下リム5および上リム4が正しく係合しているから、タイヤと各リムとの間に隙間はなく、タイヤTに対して良好なインフレートが行える。
図6を参照して、タイヤTのインフレートが完了後、保持アーム7が開かれ、タイヤTの保持が解除される。この状態では、タイヤTは上リム4および下リム5により保持された状態であり、この状態で、動釣合い試験が行われる。
【0028】
図5を再び参照して、動釣合い試験終了後、保持アーム7が閉じて、タイヤTは再び保持アーム7によって保持される。
図4を再び参照して、タイヤTが保持アーム7により保持された後、上リム4が上方へ変位されてタイヤTから外される。
図7を参照して、次いで、昇降機構8により保持アーム7が上昇され、タイヤTは下リム5から外される。
【0029】
これらの処理と並行して、搬入装置2には検査すべき次のタイヤTが供給される。また、図4に示すように、マーキング装置3で処理されていたタイヤTは、ベルトコンベヤ15が駆動されることにより、下流側へ搬出され、図7に示すように、搬出機構14のベルトコンベヤ15上には、マーキング処理されたタイヤTは存在しなくなる。
図8を参照して、次いで、搬送機構14全体が、移動ベース16によって搬送方向後方(図において左方)へ移動され、ベルトコンベヤ15が保持アーム7によって保持されたタイヤTの下方に挿入される。
【0030】
図9を参照して、次いで、保持アーム7が開かれることにより、タイヤTの保持が解除され、タイヤTはベルトコンベヤ15によって受け止められる。
図1を再び参照して、その後、タイヤTが乗せられた搬出機構14は、移動ベース16によって搬送方向(図において右方向)へ移動され、ベルトコンベヤ15上のタイヤTは、マーキング装置3によってマーキングされ得る位置に配置される。
【0031】
以上の動作が繰り返されることによって、順次供給されるタイヤTに対し、動釣合い試験がされ、試験の結果得られた不釣合いの角度位置および量が、マーキング装置3によりタイヤTに表記され、後工程へ搬出される。
図10は、保持アーム7によって保持されたタイヤTが下リム5および上リム4で挟まれた状態を示す図解的な断面図である。図10に示すように、タイヤTは保持アーム7によって保持されており、下リム5に対してタイヤTの下側側面が正しく係合するように降下され、その状態で、上リム4が下方に下りてくるから、上リム4もタイヤTの上側側面と正しく係合する。なお、タイヤTの径(内径)や幅に応じて、異なるリム部がタイヤに係合するように、上リム4および下リム5には、それぞれ、径の異なる複数のリム部が階段状に設けられている。
【0032】
ところが、先行技術の問題点でも説明したように、タイヤTを保持アーム7で保持していない状態では、次のような問題がある。
図11は、タイヤTを下リム5に係合させて保持アームによる保持は解除し、その後に、上リム4を降下させた状態の図解的な断面図である。図11に示すように、タイヤTを下リム5に係合させて、下リム5だけで支持した状態にすると、弾性体であるタイヤは自重によって僅かに下方へ歪み、上側側面が正しく上リム4と係合しなくなることがある。このため、タイヤTに空気をインフレートしようとした場合、タイヤの上側側面と上リム4との隙間から空気が漏れ、インフレートに時間がかかったり、インフレートができなかったりするという問題がある。
【0033】
これに対し、図10に示すように、この実施形態では、タイヤTは保持アーム7によって保持された状態でインフレートされるので、タイヤTの下側側面および上側側面は、それぞれ、下リム5および上リム4と正しく係合しており、インフレート時に空気が洩れる心配はない。
インフレート完了後は、図12に示すように、インフレートされたタイヤは外方へ膨らみ、タイヤと上リム4および下リム5とが強固に嵌合する。
【0034】
次に、図1〜図9で説明したタイヤ用動釣合い試験機システムにおける動釣合い試験機1の構成について、説明をする。
図13は、タイヤ用動釣合い試験機1の全体構成を示す概要図である。
この動釣合い試験機1は、ベースフレーム80と、ベースフレーム80にばね81によって振動可能に保持された回転軸82と、ベースフレーム80に固定されたモータ83と、モータ83の駆動力を回転力82に伝達して回転軸82を回転させるために必要なプーリ84およびベルト85とを備える。
【0035】
回転軸82は鉛直方向に配置されており、その上部にはタイヤ保持装置86の下リム5が取り付けられている。タイヤ保持装置86は、上記回転軸82と、下リム5と、下リム5の鉛直上方に配置された上リム4と、下リム5の側方に備えられたエア供給ユニット87とを備えている。
上リム4は、ベースフレーム80の上部に取り付けられていて、空圧シリンダ88により鉛直方向に、上下動可能である。動釣合い試験をするタイヤを着脱する際には、前述したように、上リム4は上昇させられる。その状態で、既に説明したように、図示しないタイヤは水平方向に寝かされて保持アームによって保持され、下側側面が下リム5に係合するように配置される。そして、上リム4が降下し、上リムがタイヤの上側側面に係合される。その状態で、回転軸82内に形成された図示しないエア供給路を通して空気が供給されて、タイヤはインフレートされる。インフレート後に、保持アームはタイヤの保持を解除し、モータ83により回転軸82が回転される。回転軸82の回転に伴い、下リム5および上リム4もタイヤと共に回転する。回転しているタイヤを含む回転体に振動があれば、その振動はピックアップ89,90により検出される。そしてその値に基づき、タイヤの動的不釣合いが算出される。
【0036】
エア供給ユニット87は、ベースフレーム80に嵌合されており、取付部21に対して上下にスライドし得る。エア供給ユニット87は、下リム5が回転軸82に対して上下方向に移動する際、その移動に伴って上下方向に移動し得る。
タイヤ保持装置86は、回転軸82に対して下リム5が上下に変位可能になっている。すなわち、動釣合い試験をするタイヤの幅および内径に合わせて、回転軸82に対する下リム5の位置を、上下に2分の1インチ単位で変更可能とされており、上リム4は、タイヤの幅および内径に無関係に、常に同じ位置まで降下することにより、上リム4がタイヤの上側側面に係合するようにされている。
【0037】
これにより、動釣合い試験をするタイヤの幅が変わっても、上リム4の上昇および降下の移動制御は、常に同じ制御でよく、上リム4を昇降するための構成を極めてシンプルにできるという利点がある。
なお、回転軸82に対する下リム5の上下方向の変位は、動釣合い試験用のモータ83を利用して容易に行えるようにされている。
【0038】
かかる動釣合い試験機1のより具体的な構成は、前述したように、本願出願人の先願である特願2004−161438号に詳述されており、より具体的な構成については上記特許出願を引用することとし、ここでの重複した説明については省略する。
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0039】
たとえば、マーキング装置3に組み込まれた搬出機構14は、ベルトコンベヤ15を有した構成としたが、ベルトコンベヤに代えてローラコンベヤとすることも可能である。
また、上述の実施形態では、試験機を動釣合い試験機として説明したが、試験機は動釣合い試験機に限定されるものではなく、タイヤをインフレートして試験を行う他の試験機、たとえばユニフォーミティ試験機にも適用することができる。さらに、タイヤのユニフォーミティおよび動釣合いの両方を1台で試験することのできる複合試験機に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図5】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図6】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図7】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図8】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図9】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図10】保持アーム7によって保持された状態のタイヤTが下リム5および上リム4に装着された状態の図解的な断面図である。
【図11】保持アームによって保持されず、タイヤが下リム5に受け止められ、その状態で上リムが装着された状態を示す図解的な断面図である。
【図12】下リム5および上リム4により挟まれたタイヤに空気がインフレートされた状態を示す図解的な断面図である。
【図13】動釣合い試験機1のより具体的な構成を示す全体概要図である。
【符号の説明】
【0041】
1 動釣合い試験機
2 搬入装置
3 マーキング装置
4 上リム
5 下リム
6 保持手段
7 保持アーム
8 昇降機構
9 ベースフレーム
10 ローラコンベヤ
11 ローラ
12 移動機構
13 ストッパアーム
14 搬出機構
15 ベルトコンベヤ
16 移動ベース
T タイヤ
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤの搬送・保持装置に関し、特に、上下に分割したリムによって、タイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのユニフォーミティ試験や動釣合い試験を行う際には、水平方向に寝かせたタイヤを上下からリムで挟み、タイヤに空気を充填して(インフレートして)試験を行う。そして、試験機が流れ作業を行う処理プロセス中に組み込まれた場合は、前工程からタイヤは試験機上に搬入され、搬入されたタイヤが上下からリムによって挟まれ、タイヤがインフレートされ、試験が行われ、その後タイヤの空気が排出されてリムが外され、タイヤは後工程へと搬出される。
【0003】
流れ作業プロセス中に組み込まれた試験機に対して、タイヤを搬入し、試験が終わった後のタイヤを搬出する搬送装置は、従来、多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)によって構成されていた。多数の搬送ローラは、タイヤの搬送方向に見て、試験機の上流側および下流側ならびに試験機に備えられている。そして上流側の搬送ローラ上を移動されるタイヤは、試験機の搬送ローラ上まで移動し、試験機の搬送ローラが下方に下がることにより、タイヤは下リムで受け止められ、かつ、下がった搬送ローラは下方へ退避し、その後上リムが降下してタイヤが上下のリムで挟まれる。そしてタイヤはインフレートされて、試験が行われる。
【0004】
試験終了後、上リムが上方へ移動してタイヤから離れ、試験機の搬送ローラが上方へ移動してタイヤを下リムから持ち上げ、そして搬送ローラが転動してタイヤを下流側の搬送ローラへと搬出する。(たとえば特開2000−329658号公報参照)
【特許文献1】特開2000−329658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のタイヤ用試験機に適用されるタイヤの搬送装置は、多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)で構成されているが、試験機に備えられた搬送ローラは、試験機に対して上下動するため、試験機に設けられたリム(特に下リム)とぶつからないよう、平面視で中央部分に搬送ローラを配置することができない。つまり、試験機の多数の搬送ローラ(ローラコンベヤ)は、平面視でその中央部に空間が形成されたローラコンベヤとしなければならない。このため、上流側から搬入されるタイヤを試験機上のセンターに搬入する際、ローラコンベヤの中央部には搬送ローラがないため、タイヤを真っ直ぐに移動させて、試験機上のセンタに停止させにくいという欠点があった。また、タイヤを搬出する際にも、ローラコンベヤの中央部に搬送ローラが存在しないため、タイヤをスムーズに搬出できないことがあるという問題があった。
【0006】
さらに、試験機のローラコンベヤが下がることにより、タイヤは下リムに受け止められ、その後上リムが降下してタイヤを挟むが、そのとき、タイヤは空気が充填されていないから、下リムに受け止められたタイヤは全体的に下方へわずかに弛みを生じており、所定位置まで降下した上リムとタイヤの上側側面との間に若干の隙間が残った状態になる。そしてこの状態でタイヤに空気をインフレートしようとした場合、タイヤと上リムとの隙間から空気が漏れ、インフレートに時間がかかったり、インフレートができないといった問題があった。
【0007】
インフレートに関するかかる問題を解決するためには、たとえばタイヤの上方からタイヤと上リムとの隙間に空気を供給し、インフレートを補うといった構成を追加する必要があった。
この発明は、かかる技術背景のもとになされたもので、上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤをインフレートした状態で試験を行う試験機に適用される新規なタイヤの搬送・保持を提供することを主たる目的とする。
【0008】
またこの発明は、タイヤをスムーズに試験機へ搬入でき、かつ、搬入されたタイヤにスムーズに空気を充填できるタイヤの搬送・保持装置を提供することを他の目的とする。
さらにこの発明は、試験終了後のタイヤを試験機からスムーズに搬出できるタイヤの搬送・保持装置を提供することをさらに他の目的とする。
これら目的を達成するための本件発明の構成は、請求項1〜7の記載により実現できる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の請求項1に係る発明は、上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、上記試験機上に搬入されたタイヤを外周面側から保持する保持手段を有し、当該保持手段は、上記リムによってタイヤが上下から挟まれ、タイヤに空気が充填され終えるまでタイヤを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除することを特徴とする、タイヤの搬送・保持装置である。
【0010】
請求項2記載の発明は、上記保持手段は、保持したタイヤをリムに装着し、また、リムから解除するために、上下動し得ることを特徴とする、請求項1記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項3記載の発明は、上記保持手段は、保持したタイヤの中心をリムに中心に一致させるためのセンタリング機能を有することを特徴とする、請求項1または2記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【0011】
請求項4記載の発明は、タイヤの搬送方向に見て、上記試験機の上流側に備えられ、上面にタイヤを乗せ、タイヤを乗せた状態で搬送方向へ移動し、タイヤを上記試験機上に搬入する搬入用ローラコンベヤを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項5記載の発明は、上記搬入用ローラコンベヤは、先端側(搬送方向下流側)に、乗せたタイヤが搬送方向に移動するのを阻止して、タイヤをローラコンベヤの幅方向中央で停止させるための、開閉可能なストッパを有することを特徴とする、請求項4記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【0012】
請求項6記載の発明は、上記試験機による試験が終了後、上記保持手段が再び保持したタイヤの下方へ搬送方向下流側から水平に移動され、保持手段が保持を解除することによりタイヤを受け取り、試験機上からタイヤを搬送方向へ搬出する搬出手段を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置である。
請求項7記載の発明は、上記搬出手段は、搬送方向に前後に往復移動し得るローラコンベヤまたはベルトコンベヤを含むことを特徴とする、請求項6記載のタイヤの搬送・保持装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、試験機上に搬入されたタイヤは、保持手段により保持され、保持状態のまま上下からリムがセットされ、かつ、保持状態のままタイヤに空気が充填される。従って、タイヤが下リムに乗せられ、自重でタイヤが下方へ僅かに撓み、上リムとタイヤとの間に隙間が生じるといった現象は生じない。タイヤは保持手段で保持されて所定の位置に下されて下リムにセットされ、その状態で上リムが下降される。よってタイヤの下方および上方はそれぞれ下リムおよび上リムに係合しており、空気がタイヤ内へ供給されると、タイヤは良好にインフレートされる。インフレート後に、保持手段の保持が解除されるから、タイヤの試験機に対する装着および空気のインフレートが、スムーズにかつ良好に行われる。
【0014】
請求項2の発明によれば、保持手段により、搬入されたタイヤを下リムに装着し、また、下リムから解除することができる。
請求項3の発明では、タイヤをリムにセットする際に、保持手段で保持されたタイヤをリムの中心に合わせるようにセンタリングでき、リムとタイヤとの位置関係がずれることがない。
【0015】
請求項4の発明では、タイヤは、搬入用ローラコンベヤに乗せられ、搬入用ローラコンベヤ自体が搬送方向へ移動することにより、試験機の上にタイヤが搬入される。
従って、タイヤの搬入をスムーズに、かつ的確に行うことができる。
請求項5の発明では、搬入用ローラコンベヤに乗せられたタイヤは、ストッパにより搬入用ローラコンベヤの所定の位置に正しく停止されるので、タイヤを乗せた搬入用ローラコンベヤが搬入方向に移動することにより、タイヤを試験機上の所定の位置に正しく搬入することができる。その結果、搬入されたタイヤを、保持手段が的確に保持することができる。
【0016】
請求項6の発明では、試験終了後のタイヤは、保持手段で再び保持され、搬出手段へ与えられる。搬出手段は、搬送方向下流側から試験機上に進入し、保持手段で保持されたタイヤを受け取った後、搬送方向へ移動して試験機上からタイヤを搬出する。搬出手段の移動によりタイヤは搬出されるので、タイヤの搬出が確実に行える。
請求項7の発明では、搬出手段は、ローラコンベヤまたはベルトコンベヤで構成されているから、試験機上からタイヤを搬出した後、その搬出したタイヤをさらに後工程に搬送するのが容易に行える。
【0017】
以上のように、この発明によれば、試験機に対してタイヤをセットし、タイヤに空気をインフレートして試験を行い、そのタイヤを試験機から搬出するにあたり、タイヤを良好に搬入でき、試験機にセットでき、空気をインフレートでき、かつ試験後のタイヤを良好に搬出できるタイヤの搬送・保持装置を提供することができる。
なお、この発明のタイヤの搬送・保持装置が適用できる試験機としては、たとえば、タイヤ用動釣合い試験機とすることができる。また、タイヤのユニフォーミティ試験を行う試験機とすることができる。あるいは、タイヤのユニフォーミティ試験および動釣合い試験の双方を行う兼用型の試験機とすることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1〜図9は、この発明の一実施形態に係るタイヤの搬送・保持装置が採用されたタイヤ用動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための図であり、各図において、(A)は平面図、(B)は正面図である。
まず、図1を参照して、タイヤ用動釣合い試験機システムの構成について説明をする。
【0019】
この動釣合い試験機システムには、図において左右方向中央部にタイヤ用の動釣合い試験機1が配置され、搬送方向上流側(図において左側)には搬入装置2が配置され、搬送方向下流側(図において右側)にはマーキング装置3が配置されている。
動釣合い試験機1の具体的な構成は、図面では省略されており、タイヤを上下から保持するための上リム4および下リム5だけが図示されている。動釣合い試験機1の具体的な構成は、本願出願人の先願に係る特願2004−161438号に開示されている。
【0020】
このシステムでは、動釣合い試験機1に保持手段6が組み込まれている。保持手段6は、2対の保持アーム7と、保持アーム7を上下に移動させるための昇降機構8とを含んでいる。
搬入装置2は、ベースフレーム9の上に設けられたローラコンベヤ10を含む。ローラコンベヤ10は、水平方向に配列された複数のローラ11と、それらローラを回転駆動するための図示しない駆動源と、複数のローラ11全体を搬送方向前後に(図において左右方向に)移動させるための移動機構12とを含んでいる。さらに、搬入装置2には、ベースフレーム9に備えられ、複数のローラ11上を搬送方向(図において右方向)へ移動するタイヤを停止させ、かつ、ローラコンベヤ10の幅方向中央で停止させるための一対のストッパアーム13が備えられている。ストッパアーム13は、図1に示すタイヤTを停止させることのできる閉塞位置と、図2に示す開放位置とに回動し得る。
【0021】
マーキング装置3は、動釣合い試験終了後のタイヤに対し、不釣合いの角度位置および不釣合い量を表記するための装置である。このマーキング装置3には、搬出機構14が組み込まれている。搬出機構14は、水平方向に延びるベルトコンベヤ15と、当該ベルトコンベヤ15全体を搬送方向に後方および前方へ往復移動させることのできる移動ベース16とを含んでいる。
【0022】
以上がこの動釣合い試験機システムの概略構成である。次に、システムの動作について、タイヤTの処理手順に沿って説明をする。
図1を参照して、図示しない前工程の装置からタイヤTが搬入装置2に対し図において左側から供給される。搬入装置2のローラコンベヤ10は、複数のローラ11を回転駆動させ、供給されたタイヤTをローラ11上を図において左から右方向へ移動させる。このとき、ストッパアーム13は閉じられており、ローラ11上を右方へ移動されるタイヤTは、ストッパアーム13で止められる。その際、ストッパアーム13は、タイヤTの進行方向に斜めに閉じているので、ストッパアーム13によりタイヤTはローラコンベヤ10の幅方向中央になるように停止される。タイヤTが停止後、ローラ11の回転は停止される。
【0023】
図2を参照して、次いで、ストッパアーム13が開かれ、ローラコンベヤ10全体が、移動機構12によって搬送方向(図において右方向)へ移動される。そしてこれにより、ローラコンベヤ10上に乗せられたタイヤTは、動釣合い試験機1の上に搬入される。搬入後、保持アーム7が閉じてタイヤTをその外周面側から保持する。
図3を参照して、その後、ローラコンベヤ10は搬送方向後方(図において左方向)へ移動し、図1に示す最初の位置に戻る。そしてストッパアーム13が閉じられる。なお、図3以降の各(B)図には、ストッパアーム13の表示は省略されている。
【0024】
ローラコンベヤ10が搬送方向後方へ戻っても、タイヤTは保持アーム7により保持されており、落下することはない。
図4を参照して、次に、昇降機構8によってタイヤTを保持した状態で保持アーム7が所定位置まで降下される。所定位置とは、タイヤTの下方側(下側側面)が下リム5に係合される位置である。
【0025】
なお、この実施形態に係る動釣合い試験機1では、後述するように、下リム5は、動釣合い試験をするタイヤの幅、直径および扁平率に応じて予め上下動され、所定の高さ位置にされている。この所定の高さ位置になっている下リム5に対し、保持アーム7が降下され、保持アーム7によって保持されているタイヤTの下側側面が、下リム5に係合される。
【0026】
図5を参照して、次いで、上リム4が降下される。上リム4は、タイヤサイズ等に関係なく常に一定位置まで降下される。しかし、タイヤサイズに合わせて、下リム5が、上述したように所定の高さに調整されているから、一定位置まで降下した上リム4は、保持アーム7によって保持されたタイヤTの上側側面と正しく係合する。
タイヤTに対して下リム5および上リム4が係合され、両リム4,5によってタイヤTが上下から挟まれた状態においても、保持アーム7によるタイヤの保持は継続されている。
【0027】
そして、タイヤTは保持アーム7によって保持された状態のままインフレートされる。インフレートの際、タイヤTの下側側面および上側側面は、それぞれ、下リム5および上リム4が正しく係合しているから、タイヤと各リムとの間に隙間はなく、タイヤTに対して良好なインフレートが行える。
図6を参照して、タイヤTのインフレートが完了後、保持アーム7が開かれ、タイヤTの保持が解除される。この状態では、タイヤTは上リム4および下リム5により保持された状態であり、この状態で、動釣合い試験が行われる。
【0028】
図5を再び参照して、動釣合い試験終了後、保持アーム7が閉じて、タイヤTは再び保持アーム7によって保持される。
図4を再び参照して、タイヤTが保持アーム7により保持された後、上リム4が上方へ変位されてタイヤTから外される。
図7を参照して、次いで、昇降機構8により保持アーム7が上昇され、タイヤTは下リム5から外される。
【0029】
これらの処理と並行して、搬入装置2には検査すべき次のタイヤTが供給される。また、図4に示すように、マーキング装置3で処理されていたタイヤTは、ベルトコンベヤ15が駆動されることにより、下流側へ搬出され、図7に示すように、搬出機構14のベルトコンベヤ15上には、マーキング処理されたタイヤTは存在しなくなる。
図8を参照して、次いで、搬送機構14全体が、移動ベース16によって搬送方向後方(図において左方)へ移動され、ベルトコンベヤ15が保持アーム7によって保持されたタイヤTの下方に挿入される。
【0030】
図9を参照して、次いで、保持アーム7が開かれることにより、タイヤTの保持が解除され、タイヤTはベルトコンベヤ15によって受け止められる。
図1を再び参照して、その後、タイヤTが乗せられた搬出機構14は、移動ベース16によって搬送方向(図において右方向)へ移動され、ベルトコンベヤ15上のタイヤTは、マーキング装置3によってマーキングされ得る位置に配置される。
【0031】
以上の動作が繰り返されることによって、順次供給されるタイヤTに対し、動釣合い試験がされ、試験の結果得られた不釣合いの角度位置および量が、マーキング装置3によりタイヤTに表記され、後工程へ搬出される。
図10は、保持アーム7によって保持されたタイヤTが下リム5および上リム4で挟まれた状態を示す図解的な断面図である。図10に示すように、タイヤTは保持アーム7によって保持されており、下リム5に対してタイヤTの下側側面が正しく係合するように降下され、その状態で、上リム4が下方に下りてくるから、上リム4もタイヤTの上側側面と正しく係合する。なお、タイヤTの径(内径)や幅に応じて、異なるリム部がタイヤに係合するように、上リム4および下リム5には、それぞれ、径の異なる複数のリム部が階段状に設けられている。
【0032】
ところが、先行技術の問題点でも説明したように、タイヤTを保持アーム7で保持していない状態では、次のような問題がある。
図11は、タイヤTを下リム5に係合させて保持アームによる保持は解除し、その後に、上リム4を降下させた状態の図解的な断面図である。図11に示すように、タイヤTを下リム5に係合させて、下リム5だけで支持した状態にすると、弾性体であるタイヤは自重によって僅かに下方へ歪み、上側側面が正しく上リム4と係合しなくなることがある。このため、タイヤTに空気をインフレートしようとした場合、タイヤの上側側面と上リム4との隙間から空気が漏れ、インフレートに時間がかかったり、インフレートができなかったりするという問題がある。
【0033】
これに対し、図10に示すように、この実施形態では、タイヤTは保持アーム7によって保持された状態でインフレートされるので、タイヤTの下側側面および上側側面は、それぞれ、下リム5および上リム4と正しく係合しており、インフレート時に空気が洩れる心配はない。
インフレート完了後は、図12に示すように、インフレートされたタイヤは外方へ膨らみ、タイヤと上リム4および下リム5とが強固に嵌合する。
【0034】
次に、図1〜図9で説明したタイヤ用動釣合い試験機システムにおける動釣合い試験機1の構成について、説明をする。
図13は、タイヤ用動釣合い試験機1の全体構成を示す概要図である。
この動釣合い試験機1は、ベースフレーム80と、ベースフレーム80にばね81によって振動可能に保持された回転軸82と、ベースフレーム80に固定されたモータ83と、モータ83の駆動力を回転力82に伝達して回転軸82を回転させるために必要なプーリ84およびベルト85とを備える。
【0035】
回転軸82は鉛直方向に配置されており、その上部にはタイヤ保持装置86の下リム5が取り付けられている。タイヤ保持装置86は、上記回転軸82と、下リム5と、下リム5の鉛直上方に配置された上リム4と、下リム5の側方に備えられたエア供給ユニット87とを備えている。
上リム4は、ベースフレーム80の上部に取り付けられていて、空圧シリンダ88により鉛直方向に、上下動可能である。動釣合い試験をするタイヤを着脱する際には、前述したように、上リム4は上昇させられる。その状態で、既に説明したように、図示しないタイヤは水平方向に寝かされて保持アームによって保持され、下側側面が下リム5に係合するように配置される。そして、上リム4が降下し、上リムがタイヤの上側側面に係合される。その状態で、回転軸82内に形成された図示しないエア供給路を通して空気が供給されて、タイヤはインフレートされる。インフレート後に、保持アームはタイヤの保持を解除し、モータ83により回転軸82が回転される。回転軸82の回転に伴い、下リム5および上リム4もタイヤと共に回転する。回転しているタイヤを含む回転体に振動があれば、その振動はピックアップ89,90により検出される。そしてその値に基づき、タイヤの動的不釣合いが算出される。
【0036】
エア供給ユニット87は、ベースフレーム80に嵌合されており、取付部21に対して上下にスライドし得る。エア供給ユニット87は、下リム5が回転軸82に対して上下方向に移動する際、その移動に伴って上下方向に移動し得る。
タイヤ保持装置86は、回転軸82に対して下リム5が上下に変位可能になっている。すなわち、動釣合い試験をするタイヤの幅および内径に合わせて、回転軸82に対する下リム5の位置を、上下に2分の1インチ単位で変更可能とされており、上リム4は、タイヤの幅および内径に無関係に、常に同じ位置まで降下することにより、上リム4がタイヤの上側側面に係合するようにされている。
【0037】
これにより、動釣合い試験をするタイヤの幅が変わっても、上リム4の上昇および降下の移動制御は、常に同じ制御でよく、上リム4を昇降するための構成を極めてシンプルにできるという利点がある。
なお、回転軸82に対する下リム5の上下方向の変位は、動釣合い試験用のモータ83を利用して容易に行えるようにされている。
【0038】
かかる動釣合い試験機1のより具体的な構成は、前述したように、本願出願人の先願である特願2004−161438号に詳述されており、より具体的な構成については上記特許出願を引用することとし、ここでの重複した説明については省略する。
この発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0039】
たとえば、マーキング装置3に組み込まれた搬出機構14は、ベルトコンベヤ15を有した構成としたが、ベルトコンベヤに代えてローラコンベヤとすることも可能である。
また、上述の実施形態では、試験機を動釣合い試験機として説明したが、試験機は動釣合い試験機に限定されるものではなく、タイヤをインフレートして試験を行う他の試験機、たとえばユニフォーミティ試験機にも適用することができる。さらに、タイヤのユニフォーミティおよび動釣合いの両方を1台で試験することのできる複合試験機に対しても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図2】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図3】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図4】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図5】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図6】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図7】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図8】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図9】この発明の一実施形態に係る動釣合い試験機システムの構成および動作を説明するための(A)平面図、(B)正面図である。
【図10】保持アーム7によって保持された状態のタイヤTが下リム5および上リム4に装着された状態の図解的な断面図である。
【図11】保持アームによって保持されず、タイヤが下リム5に受け止められ、その状態で上リムが装着された状態を示す図解的な断面図である。
【図12】下リム5および上リム4により挟まれたタイヤに空気がインフレートされた状態を示す図解的な断面図である。
【図13】動釣合い試験機1のより具体的な構成を示す全体概要図である。
【符号の説明】
【0041】
1 動釣合い試験機
2 搬入装置
3 マーキング装置
4 上リム
5 下リム
6 保持手段
7 保持アーム
8 昇降機構
9 ベースフレーム
10 ローラコンベヤ
11 ローラ
12 移動機構
13 ストッパアーム
14 搬出機構
15 ベルトコンベヤ
16 移動ベース
T タイヤ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、
上記試験機上に搬入されたタイヤを外周面側から保持する保持手段を有し、
当該保持手段は、上記リムによってタイヤが上下から挟まれ、タイヤに空気が充填され終えるまでタイヤを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除することを特徴とする、タイヤの搬送・保持装置。
【請求項2】
上記保持手段は、保持したタイヤをリムに装着し、また、リムから解除するために、上下動し得ることを特徴とする、請求項1記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項3】
上記保持手段は、保持したタイヤの中心をリムに中心に一致させるためのセンタリング機能を有することを特徴とする、請求項1または2記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項4】
タイヤの搬送方向に見て、上記試験機の上流側に備えられ、上面にタイヤを乗せ、タイヤを乗せた状態で搬送方向へ移動し、タイヤを上記試験機上に搬入する搬入用ローラコンベヤを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項5】
上記搬入用ローラコンベヤは、先端側(搬送方向下流側)に、乗せたタイヤが搬送方向に移動するのを阻止して、タイヤをローラコンベヤの幅方向中央で停止させるための、開閉可能なストッパを有することを特徴とする、請求項4記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項6】
上記試験機による試験が終了後、上記保持手段が再び保持したタイヤの下方へ搬送方向下流側から水平に移動され、保持手段が保持を解除することによりタイヤを受け取り、試験機上からタイヤを搬送方向へ搬出する搬出手段を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項7】
上記搬出手段は、搬送方向に前後に往復移動し得るローラコンベヤまたはベルトコンベヤを含むことを特徴とする、請求項6記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項1】
上下に分割したリムによってタイヤを挟み、そのタイヤに空気を充填した状態で試験を行う試験機に適用されるタイヤの搬送・保持装置であって、
上記試験機上に搬入されたタイヤを外周面側から保持する保持手段を有し、
当該保持手段は、上記リムによってタイヤが上下から挟まれ、タイヤに空気が充填され終えるまでタイヤを保持しており、空気がタイヤに充填された後に保持を解除することを特徴とする、タイヤの搬送・保持装置。
【請求項2】
上記保持手段は、保持したタイヤをリムに装着し、また、リムから解除するために、上下動し得ることを特徴とする、請求項1記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項3】
上記保持手段は、保持したタイヤの中心をリムに中心に一致させるためのセンタリング機能を有することを特徴とする、請求項1または2記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項4】
タイヤの搬送方向に見て、上記試験機の上流側に備えられ、上面にタイヤを乗せ、タイヤを乗せた状態で搬送方向へ移動し、タイヤを上記試験機上に搬入する搬入用ローラコンベヤを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項5】
上記搬入用ローラコンベヤは、先端側(搬送方向下流側)に、乗せたタイヤが搬送方向に移動するのを阻止して、タイヤをローラコンベヤの幅方向中央で停止させるための、開閉可能なストッパを有することを特徴とする、請求項4記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項6】
上記試験機による試験が終了後、上記保持手段が再び保持したタイヤの下方へ搬送方向下流側から水平に移動され、保持手段が保持を解除することによりタイヤを受け取り、試験機上からタイヤを搬送方向へ搬出する搬出手段を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤの搬送・保持装置。
【請求項7】
上記搬出手段は、搬送方向に前後に往復移動し得るローラコンベヤまたはベルトコンベヤを含むことを特徴とする、請求項6記載のタイヤの搬送・保持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−214865(P2006−214865A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27920(P2005−27920)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000150729)株式会社長浜製作所 (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000150729)株式会社長浜製作所 (6)
【Fターム(参考)】
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