説明

タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤ

【課題】良好な加硫速度を有し、ウェットグリップ性および燃費性能に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】Mwが90万〜150万であり、スチレン含有量が35〜45%である溶液重合SBRを40質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、下記の(1)〜(4)の条件をすべて満たすシリカを60〜110質量部配合し、かつ、脂肪酸金属塩(ただし亜鉛塩を除く)と脂肪酸エステルとの混合物を前記シリカに対して2〜8質量%配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物。前記シリカの条件:(1)NSAが194〜225m/gである。(2)CTAB比表面積が170〜210m/gである。(3)前記NSAおよび前記CTAB比表面積の関係が、NSA/CTAB比表面積として、0.9〜1.4である。(4)DBP吸収量が、190ml/100g以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、良好な加硫速度を有し、ウェットグリップ性および燃費性能に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは各種性能が要求されているが、とくにウェットグリップ性と燃費性能とを高い次元でバランスさせることが望まれている。これらの性能を向上させるためにタイヤ用ゴム組成物にシリカを配合することが知られている。
【0003】
なお、高比表面積のシリカを使用すれば、シリカとゴムとの結合数が増加し、補強性が向上することで、ウェットグリップ性能の向上が推測される。しかし、本発明者らの検討によれば、シリカを高比表面積化すると、シリカ同士の相互作用が増加し、分散性が悪化し、所望の効果が得られないという問題が見出された。また、高比表面積のシリカを多量に配合すると加硫促進剤が吸着され、加硫速度が遅くなるという問題もあった。なお、高比表面積のシリカとしては、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−500238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の目的は、高比表面積のシリカを使用しても良好な分散状態と良好な加硫速度を有し、ウェットグリップ性および燃費性能に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、分子量とスチレン含有量を特定したスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを特定量含むジエン系ゴムに、特定の特性を有する高比表面積のシリカおよび脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物を特定量配合することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.重量平均分子量が900,000〜1,500,000であり、スチレン含有量が35〜45%である溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを40質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、下記の(1)〜(4)の条件をすべて満たすシリカを60〜110質量部配合し、かつ、脂肪酸金属塩(ただし亜鉛塩を除く)と脂肪酸エステルとの混合物を前記シリカに対して2〜8質量%配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記シリカの条件:
(1)JIS K6217−2に準拠して求めた窒素吸着比表面積(NSA)が194〜225m/gである。
(2)JIS K6217−3に準拠して求めたCTAB比表面積が170〜210m/gである。
(3)前記窒素吸着比表面積(NSA)および前記CTAB比表面積の関係が、窒素吸着比表面積(NSA)/CTAB比表面積として、0.9〜1.4である。
(4)JIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めたDBP吸収量が、190ml/100g以上である。
2.前記1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、分子量とスチレン含有量を特定したスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを特定量含むジエン系ゴムに、特定の特性を有する高比表面積のシリカおよび脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物を特定量配合したので、高比表面積のシリカを使用しても良好な分散状態と良好な加硫速度を有し、ウェットグリップ性および燃費性能に優れるタイヤトレッド用ゴム組成物およびそれを用いた空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
図1は、乗用車用の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
図1において、空気入りタイヤは左右一対のビード部1およびサイドウォール2と、両サイドウォール2に連なるトレッド3からなり、ビード部1、1間に繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架され、カーカス層4の端部がビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。トレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。また、ビード部1においてはリムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
以下に説明する本発明のゴム組成物は、とくにトレッド3に有用である。
【0011】
(ジエン系ゴム)
本発明で使用されるジエン系ゴム成分は、重量平均分子量が900,000〜1,500,000であり、スチレン含有量が35〜45%である溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(以下、特定SBRということがある)を含有するとともに、前記ジエン系ゴム成分100質量部中、特定SBRが40質量部以上を占める必要がある。特定SBRの重量平均分子量とスチレン含有量が上記範囲内の場合、混練工程中にシリカに最適なせん断応力を与えることができるためにシリカの分散性が向上する。重量平均分子量が900,000未満である場合は混練工程におけるせん断応力低下してシリカの分散性が低下してしまい、また1,500,000を超える場合はゴム自体の粘度が高過ぎることで混練加工性が悪化してしまうため、好ましくない。中でもブタジエンに由来するビニル含有量が45%以下であるものが好ましい。また、特定SBRが40質量部未満では、本発明の効果を奏することができない。
特定SBRは市販されており、例えば、LANXESS(株)製BUNA VSL 2438−2 HM(重量平均分子量=1,290,000、スチレン含有量=41%、上記ビニル含有量=38%)、Dow Chemical社製商品名SLR6430(重量平均分子量=1,010,000、スチレン含有量=41%、上記ビニル含有量=25%)、等を挙げることができる。
また、ジエン系ゴム成分は、上記特定SBR以外のゴムを配合してもよい。例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。なお本発明の効果の点から、ジエン系ゴムは、特定SBR以外にBRを使用するのが好ましい。
【0012】
(シリカ)
本発明で使用されるシリカは、以下の(1)〜(4)の条件をすべて満たす必要がある(以下、特定シリカということがある)。
(1)JIS K6217−2に準拠して求めた窒素吸着比表面積(NSA)が194〜225m/gである。
(2)JIS K6217−3に準拠して求めたCTAB比表面積が170〜210m/gである。
(3)前記窒素吸着比表面積(NSA)および前記CTAB比表面積の関係が、窒素吸着比表面積(NSA)/CTAB比表面積として、0.9〜1.4である。
(4)JIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めたDBP吸収量が、190ml/100g以上である。
上記(1)〜(4)の要件を一つでも満たさないシリカを使用すると、本発明の効果を奏することができない。
【0013】
特定シリカのさらに好ましい特性としては:
(1)JIS K6217−2に準拠して求めた窒素吸着比表面積(NSA)が200〜225m/gである。
(2)JIS K6217−3に準拠して求めたCTAB比表面積が180〜210m/gである。
(3)前記窒素吸着比表面積(NSA)および前記CTAB比表面積の関係が、窒素吸着比表面積(NSA)/CTAB比表面積として、1.0〜1.3である。
(4)JIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めたDBP吸収量が、195〜230ml/100gである。
【0014】
前記(1)〜(4)の条件をすべて満たす特定シリカの製造方法は公知であり、例えば前記特許文献1に記載されている。すなわち、珪酸塩と酸性化剤とを反応させ、それによってシリカ懸濁液を得、次いでこの懸濁液を分離及び乾燥させることを含むタイプのシリカの製造方法において、珪酸塩と酸性化剤との反応を
(i)2〜5、好ましくは2.5〜5のpHを有する水性底部液を形成させ、
(ii)該底部液に珪酸塩及び酸性化剤を反応混合物のpHが2〜5、好ましくは2.5〜5に保持されるような方法で同時に添加し、
(iii)該酸性化剤の添加を停止させる一方で、珪酸塩を該反応混合物に7〜10、好ましくは7.5〜9.5の該反応混合物のpH値が得られるまで添加し続け、
(iv)該反応混合物に珪酸塩及び酸性化剤を該反応混合物のpHが7〜10、好ましくは7.5〜9.5に保持されるような方法で同時に添加し、
(v)珪酸塩の添加を停止させる一方で、該酸性化剤を該反応混合物に6以下の該反応混合物のpH値が得られるまで添加し続ける、
連続工程により得ることができる。
【0015】
本発明で使用される特定シリカは、市販されているものを利用することもでき、例えばローディア社製、Zeosil Premium 200MPを挙げることができる。
【0016】
また特定シリカは、物体寸法分布幅Ld((d84−d16)/d50)が少なくとも0.91、かつV(d5−d50)/V(d5−d100)が少なくとも0.66であるのが、本発明の効果の点から好ましい。
物体寸法分布幅Ld((d84−d16)/d50)およびV(d5−d50)/V(d5−d100)の測定方法は公知であり、例えば前記特許文献1に記載され、本発明においても該特許文献1に記載の方法に従い、上記物性を測定するものとする。
【0017】
物体寸法分布幅Ld((d84−d16)/d50)は、遠心沈降を使用するXDC粒度分析法により測定される。
分析器としては、ブルックヘブンインストルメント社より市販されているBI−XDC(ブルックヘブンインストルメントXディスク遠心)遠心沈降粒度分析器を利用できる。
前記分析器に適用する検体は、次のようにして調製される。3.2gのシリカおよび40mlの脱イオン水をトールビーカーに添加し懸濁液を調製し、これに1500ワットのブランソンプローブ(最大出力の60%で使用される)を浸漬させ、該懸濁液を20分間にわたって砕解する。
前記分析器の記録器において、16重量%、50重量%(又は中央値)及び84重量%の通過直径の値が記録される。
上記の記録値から、物体寸法分布幅Ld((d84−d16)/d50)が計算される。ここでdnは、寸法であって粒子のn%(重量%)がその寸法よりも小さい寸法を有するものである(従って、該分布幅Ldは、全体として得られた累積粒度から算出される)。
【0018】
V(d5−d50)/V(d5−d100)は、水銀ポロシメトリーによって測定される。検体は、次のように調製される。すなわち、シリカをオーブン中で200℃で2時間にわたって予備乾燥させ、次いでこのものを該オーブンから取り出した後5分以内に試験容器内に置き、そして、例えば回転羽根式ポンプを使用して真空ガス抜きする。細孔直径(AUTOPORE III 9420 粉体工学用ポロシメーター)は、ウォッシュバーンの方程式によって140°の接触角および484ダイン/cm(またはN/m)の表面張力γで算出される。
V(d5−d50)は、d5〜d50の直径の細孔によって形成される細孔容積を表し、V(d5−d100)はd5〜d100の直径の細孔によって形成される細孔容積を表し、ここで、dnは、細孔直径であって全ての細孔の全表面積のn%がその直径よりも大きい直径の細孔によって形成されるものである(細孔(S0)の全表面積は、水銀侵入曲線から決定できる)。
【0019】
(脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物)
本発明においては、脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物を使用する。
脂肪酸としては、炭素数3〜30の飽和または不飽和脂肪酸が挙げられ、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等が挙げられる。
これらの脂肪酸の塩を形成する金属としては、K、Ca、Na、Mg、Co、Ni、Ba、Fe、Al、CuおよびMnから選ばれた少なくとも1種の金属が挙げられ、とくにK、Caが好ましい。なお本発明では、本発明の効果が奏されないという理由から、脂肪酸金属塩として亜鉛塩は使用しないものとする。
また、エステル化物としては、炭素数10以下の低級アルコール等が挙げられる。
脂肪酸金属塩および脂肪酸エステルは単独でも、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0020】
(充填剤)
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、上述したシリカのほか、各種充填剤を配合することができる。充填剤としてはとくに制限されず、用途により適宜選択すればよいが、例えばカーボンブラック、無機充填剤等が挙げられる。無機充填剤としては、例えばクレー、タルク、炭酸カルシウム等を挙げることができる。
【0021】
(タイヤトレッド用ゴム組成物の配合割合)
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は、ジエン系ゴム100質量部に対し、特定シリカを60〜110質量部、前記脂肪酸金属塩(ただし亜鉛塩を除く)と脂肪酸エステルとの混合物を特定シリカに対して2〜8質量%を配合してなることを特徴とする。
前記特定シリカの配合割合が60質量部未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を達成することができない。逆に110質量部を超えると、燃費性能が悪化する。
前記脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物の配合割合が2質量%未満であると、添加量が少なすぎて本発明の効果を達成することができない。逆に8質量%を超えると、
ゴム組成物の加硫後の物性が低下してしまう。
【0022】
さらに好ましい前記特定シリカの配合量は、ジエン系ゴム100質量部に対し、
65〜100質量部である。
さらに好ましい前記脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物の配合量は、特定シリカに対して3〜7質量%である。
【0023】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤトレッド用ゴム組成物に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0024】
また本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物は従来の空気入りタイヤの製造方法に従って空気入りタイヤを製造するのに使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0026】
実施例1および比較例1〜5
サンプルの調製
表1に示す配合(質量部)において、加硫系(加硫促進剤、硫黄)を除く成分を1.7リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練した後、ミキサー外に放出させて室温冷却した。続いて、該組成物を同バンバリーミキサーに再度入れ、加硫系を加えて混練し、タイヤトレッド用ゴム組成物を得た。各未加硫ゴム組成物について、以下の各試験に供し、結果を表1に示した。
【0027】
加硫速度:得られたゴム組成物をJIS K6300−2に準拠し、ロータレス加硫試験機を使用し温度160℃において得られるトルクと加硫時間との加硫曲線から求めた最大トルクの30%に達する迄の加硫時間(T30)を測定した。比較例1の値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど加硫速度が速いことを意味する。
tanδ(60℃):得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。スペクトロメーターを用いて初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hz、雰囲気温度60℃で測定し、比較例1の値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど低発熱性であり、燃費性能に優れることを示す。
破断強度:得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で20分間加硫して加硫ゴムシートを作製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性を測定した。JIS K6251に準拠し、3号型ダンベル試験片、23℃、引張り速度500mm/分の条件で測定した。比較例1の値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど破断強度が高いことを意味する。
ペイン効果:未加硫の組成物を用いてASTM P6204に準拠してRPA2000においてG’(0.56%)を測定した。比較例1の値を100とする指数で示した。この指数が大きいほどシリカの分散性が高いことを意味する。
ウェットグリップ性能:各ゴム組成物をトレッド部に使用してサイズ235/55R17のタイヤを製造し、排気量2300ccのABSを装備した車両に装着し、フロントタイヤおよびリヤタイヤの空気圧をともに220kPaとして、水深2〜3mmに散水したアスファルト路面上で速度100kmからの制動停止距離を測定し、比較例1の制動停止距離を100として指数で表した。指数が大きいほど、制動停止距離が短く、ウェットグリップ性能に優れることを表す。
結果を表1に併せて示す。
【0028】
【表1】

【0029】
*1:SBR1(LANXESS(株)製BUNA VSL 2438−2 HM(重量平均分子量=1,290,000、スチレン含有量=41%、ビニル含有量=38%)
*2:SBR2(Dow Chemical社製商品名SLR6430(重量平均分子量=1,010,000、スチレン含有量=41%、ビニル含有量=25%)
*3:SBR3(旭化成社製商品名タフデン3835(重量平均分子量=760,000、スチレン含有量=39%、ビニル含有量=45%)
*4:SBR4(住友化学社製商品名SE6372(重量平均分子量=1,010,000、スチレン含有量=34%、ビニル含有量=61%)
*5:BR(日本ゼオン(株)製、Nipol 1220)
*6:特定シリカ(ローディア社製、Zeosil Premium 200MP。窒素吸着比表面積(NSA)=215m/g、CTAB比表面積=200m/g、DBP吸収量=203ml/100g、物体寸法分布幅Ld((d84−d16)/d50)=1.0、V(d5−d50)/V(d5−d100)=0.71。)
*7:比較シリカ(ローディア社製1165MP、窒素吸着比表面積(NSA)=163m/g、CTAB比表面積159m/g、DBP吸収量=202ml/100g)
*8:カーボンブラック(キャボットジャパン(株)製ショウブラックN339)
*9:混合物A(シール・アンド・ザイラッカー社製ストラクトールHT207。脂肪酸カリウムと脂肪酸エステルの混合物)
*10:混合物B(シール・アンド・ザイラッカー社製商品名EF44。脂肪酸亜鉛と脂肪酸エステルの混合物)
*11:亜鉛華(正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種
*12:ステアリン酸(日油(株)製、ビーズステアリン酸NY)
*13:老化防止剤(フレキシス社製サントフレックス6PPD)
*14:ワックス(大内新興化学工業株式会社製サンノック)
*15:シランカップリング剤(エボニックデグッサジャパン製、Si69)
*16:アロマオイル(昭和シェル石油(株)製、エクストラ4号S)
*17:硫黄(鶴見化学工業(株)製、金華印油入微粉硫黄)
*18:加硫促進剤(CBS)(Flexsys社製、SANTOCURE CBS)
*19:加硫促進剤(DPG)(住友化学(株)製、ソクシノールDG)
【0030】
上記の表1から明らかなように、実施例1〜4で調製されたタイヤトレッド用ゴム組成物は、分子量とスチレン含有量を特定したスチレン−ブタジエン共重合体ゴムを特定量含むジエン系ゴムに、特定の特性を有する高比表面積のシリカおよび特定の脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物を特定量配合したので、従来の代表的な比較例1に対し、高比表面積のシリカを使用しても良好な分散状態と、良好な加硫速度を有し、ウェットグリップ性および燃費性能が大幅に改善される結果となった。
これに対し、比較例2は、特定シリカを配合したものの、重量平均分子量が本発明で規定する範囲外のSBRを配合し、また脂肪酸金属塩として亜鉛塩を配合したので、シリカの分散性が悪化し、加硫速度が遅くなり、ウェットグリップ性および燃費性能もほとんど改善されなかった。
比較例3は、特定シリカと特定の脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物を配合したものの、重量平均分子量が本発明で規定する範囲外のSBRを配合したので、シリカの分散性が不充分であり、加硫速度も遅くなり、ウェットグリップ性および燃費性能の大幅な改善も見られなかった。
比較例4は、分子量とスチレン含有量を特定したスチレン−ブタジエン共重合体ゴムと特定のシリカを配合したものの、脂肪酸金属塩として亜鉛塩を配合したので、シリカの分散性が悪化し、加硫速度も遅くなり、ウェットグリップ性および燃費性能の大幅な改善も見られなかった。
比較例5は、特定SBRの配合量が本発明で規定する下限未満であるので、シリカの分散性が悪化し、加硫速度も遅くなり、ウェットグリップ性および燃費性能の大幅な改善も見られなかった。
比較例6は、脂肪酸金属塩と脂肪酸エステルとの混合物の配合量が本発明で規定する上限を超えているので、破断強度が悪化し、ウェットグリップ性および燃費性能の大幅な改善も見られなかった。
比較例7は、スチレン含有量が本発明で規定する範囲外のSBRを配合したので、シリカの分散性が悪化し、加硫速度も遅くなり、ウェットグリップ性および燃費性能の大幅な改善も見られなかった。
【符号の説明】
【0031】
1 ビード部
2 サイドウォール
3 トレッド
4 カーカス層
5 ビードコア
6 ビードフィラー
7 ベルト層
8 リムクッション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が900,000〜1,500,000であり、スチレン含有量が35〜45%である溶液重合スチレン−ブタジエン共重合体ゴムを40質量部以上含むジエン系ゴム100質量部に対し、下記の(1)〜(4)の条件をすべて満たすシリカを60〜110質量部配合し、かつ、脂肪酸金属塩(ただし亜鉛塩を除く)と脂肪酸エステルとの混合物を前記シリカに対して2〜8質量%配合してなるタイヤトレッド用ゴム組成物。
前記シリカの条件:
(1)JIS K6217−2に準拠して求めた窒素吸着比表面積(NSA)が194〜225m/gである。
(2)JIS K6217−3に準拠して求めたCTAB比表面積が170〜210m/gである。
(3)前記窒素吸着比表面積(NSA)および前記CTAB比表面積の関係が、窒素吸着比表面積(NSA)/CTAB比表面積として、0.9〜1.4である。
(4)JIS K6217−4吸油量A法に準拠して求めたDBP吸収量が、190ml/100g以上である。
【請求項2】
請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物をトレッドに使用した空気入りタイヤ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−246640(P2011−246640A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122390(P2010−122390)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】