説明

タイヤバランス測定装置におけるリム交換装置

【課題】タイヤを挟持した上リムと下リムを、下リムに連結したスピンドルで駆動回転させてタイヤの動的釣合いを測定するタイヤバランス測定装置におけるリムの交換を簡単かつ速やかに行えるようにする。
【解決手段】スピンドル2にハースカップリング17の下側カップリング17Aを同芯に連結固定する一方、下リム4にハースカップリング17の上側カップリング17Bを同芯に連結固定し、下リム4の上側カップリング17Bをスピンドル2の下側カップリング17Aに咬合するとともに、スピンドル2に対する下リム4の上方離脱をチャック機構19で阻止するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤバランス測定装置におけるリム交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの動的釣合いを測定するタイヤバランス測定装置(ダイナミックバランサ)においては、測定対象のタイヤを、スピンドルに連結固定された下リムに搬入装填した後、上方に待機している上リムを昇降装置によって下降させ、下リムと上リムとで上下から挟持した状態でタイヤに空気を注入して膨張させ、スピンドルを駆動回転することでタイヤの動的釣合いを測定するよう構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−15074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなタイヤバランス測定装置では、測定するタイヤのサイズを変更する場合に、上下のリムを交換する必要がある。従来、下リムはスピンドルにボルトで連結されており、下リムの交換に際しては、スピンドルに下リムをボルトで仮り締め装着した後、下リムを回動させながらダイヤルゲージを用いて芯出しを行い、その後、ボルトを締め直して下リムをスピンドルに連結固定している。このように下リムをスピンドルにボルトで連結固定すると、タイヤバランス測定装置自体の回転部分のアンバランス状態が変化するので、精度の高い測定を行うためには、再び校正作業を行う必要がある。この校正作業では、上リムまたは下リムに所定重量の錘を取付けた状態でそれぞれ動的釣合いを測定するといった作業が必要となり、面倒である。
【0005】
このように従来のリム交換では、下リムの芯出し作業や再校正作業が必要であり、手間と時間がかかり、測定装置や測定ラインの稼働効率が低下していた。
【0006】
本発明は、このような実情に着目してなされたものであって、手間や時間のかかる芯出し固定作業や再校正作業を要することなく、リムの交換を簡単かつ速やかに行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、次のように構成している。
【0008】
(1)本発明は、タイヤを挟持した上リムと下リムとを、下リムに連結したスピンドルで駆動回転させてタイヤの動的釣合いを測定するタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置であって、
前記スピンドルに自動調芯機能を有するカップリングの下側カップリングを同芯に連結固定する一方、前記下リムに前記カップリングの上側カップリングを同芯に連結固定し、下リムの上側カップリングをスピンドルの下側カップリングに咬合するとともに、スピンドルに対する下リムの上方離脱をチャック機構で阻止するものである。
【0009】
自動調芯機能を有するカップリングとしては、例えば、カービックカップリングやハースカップリング(商品名)を用いることができる。
【0010】
本発明によると、下リムをスピンドル上で下降させて、スピンドル上に取り付けてある下側カップリングに載置するだけで、下リムに取り付けてある上側カップリングがスピンドル上の下側カップリングに咬合し、カップリングの自動調芯機能によって下リムは正確に芯合わせされた状態となり、その後、チャック機構を用いて下リムの固定を行うことで、下リムのスピンドルへの連結固定が完了する。このようにカップリングの自動調芯機能によって、正確な芯合せを再現性よく行うことができるので、芯出し作業および再校正作業が不要となる。また、チャック機構によって下リムをチャックするので、下リムを固定するためのボルト締め作業が不要となる。
【0011】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記チャック機構を、前記下リムに備えたロック部材に、前記スピンドル側に備えた係合部材を係合させる。
【0012】
この実施態様によると、下リムを、カップリングを介して芯合わせ載置した後、ボルト締め操作のような手間と時間を要することなく、下リムのスピンドルへの連結固定を短時間で行うことができ、リム交換による測定作業休止時間を短くして、測定ラインの稼働効率を高めることができる。
【0013】
(3)本発明の他の実施態様では、前記係合部材をアクチュエータで駆動操作するようにしている。
【0014】
この実施態様によると、アクチュエータを自動制御あるいは遠隔制御して、リムのスピンドルへの固定あるいは解除を一層極短時間で行うことができ、リム交換時間の短縮化に寄与する。
【0015】
(4)本発明の更に他の実施態様では、前記カップリングの咬合不良を検知する検知手段を備えている。
【0016】
この実施態様によると、咬合不良の検知に基づいて、以降の作動の自動停止や報知を行わせるといったことが可能となる。
【0017】
(5)本発明の他の実施態様では、昇降される前記上リムによって前記下リムを吊下げ支持可能としている。
【0018】
この実施態様によると、タイヤを上下リムで挟持するために本来備えられている上リムの昇降作動を利用して、リム交換時における下リムの搬出および搬入を行うことができ、下リムの専用の搬入搬出手段は不要となる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、リム交換を、手間のかかる煩わしい芯出し作業、再校正作業やボルト締め作業を要することなく簡単かつ速やかに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タイヤバランス測定装置の側面図である。
【図2】タイヤバランス測定装置の横断平面図である。
【図3】タイヤバランス測定装置の主要部を示す縦断正面図である。
【図4】下リム連結部位を示す縦断正面図である。
【図5】図4におけるA-A断面図である。
【図6】主フレームの上面を示す平面図である。
【図7】リム連結ロックが解除された状態を示す要部の縦断正面図である。
【図8】上リム単体の縦断正面図である。
【図9】下リムの引っ掛け部位を示す平面図であり、(a)は引っ掛け解除状態、(b)は引っ掛け状態を示す。
【図10】上リムで下リムを引っ掛け支持した状態を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1にタイヤバランス測定装置の側面図が、図2にその横断平面図が、また、図3にその主要部を縦断した正面図がそれぞれ示されている。このタイヤバランス測定装置は、立設固定された主フレーム1の中央部位に、スピンドル2を鉛直に挿通支持した筒軸状の支持ケーシング3を配備し、主フレーム1の上面から突出したスピンドル2の上部に下リム4を連結するとともに、下リム4に所定の間隔をもって対向される上リム5を昇降自在に配備している。この上リム5を上方に待機させた状態で、水平姿勢で搬入されてきたタイヤWを下リム4に嵌め込み装填した後、上リム5を下降させてタイヤWを下リム4と上リム5とで挟持し、その後、タイヤWに空気を注入して所定圧まで膨張させ、この状態でスピンドル2を駆動回転させ、この時、支持ケーシング3に働く水平荷重の変動を検出することで、タイヤWの動的釣合いを計測するよう構成されている。
【0023】
前記主フレーム1は矩形箱状に構成されており、支持ケーシング3の上下2箇所と主フレーム1の側壁1aとが、平行に水平配備された左右一対ずつのトーションバー6を介して連結されるとともに、支持ケーシング3の上下中間部位と主フレーム1の上壁1bとが、鉛直配備された前後一対のトーションバー7を介して連結されている。また、支持ケーシング3の上下2箇所と主フレーム1の側壁1aとに亘って荷重変動検出用のロードセル8が架設されている。
【0024】
支持ケーシング3は、上方の筒状部3aを備え、この筒状部3aの下部に、対向する一対の板状体3b,3bが連設されている。図3に示すように、支持ケーシング3の筒状部3aに前記スピンドル2が上下2組の軸受け33を介して鉛直軸心x周りに回動可能に支承されている。
【0025】
スピンドル2の下端部が、支持ケーシング3の下部の対向する板状体3b,3b間に延出し、その延出端に備えたプーリ9と、主フレーム1の外側に配備された中継プーリ10とが歯付きのベルト11を介してスリップなく巻き掛け連動されるとともに、図2に示すように中継プーリ軸10aがサーボモータ12にベルト13を介してスリップなく巻き掛け連動されている。
【0026】
なお、スピンドル2とロータリエンコーダ14とが、ベルト15を介してスリップなく等速で巻き掛け連動され、スピンドル2の回転位置がロータリエンコーダ14で検出されるようになっている。
【0027】
スピンドル2の上部は、図1,図3及び図4に示すように、支持ケーシング3および主フレーム1の上壁1bを越えて上方に突出され、その突出部に下リム装着用のフランジ16が備えられている。このフランジ16の上面には、自動調芯機能を備えたカップリングであるハースカップリング17の下側カップリング17Aがスピンドル2と同芯にボルト連結されている。また、ハースカップリング17における上側カップリング17Bが、下リム4の下面に連結したブラケット18を介して下リム4と同芯にボルト連結されている。
【0028】
ハースカップリング17は、上面周部に放射状に歯が形成された下側カップリング17Aと、下面周部に放射状に歯が形成された上側カップリング17Bとからなり、両者を上下方向に咬合させることで、下側カップリング17Aと上側カップリング17Bとが同芯に結合されるとともに、両者が周方向ならびに前後左右に相対移動しない自動調芯機能を備えるものである。
【0029】
従って、下リム4をスピンドル2の上方から下降させ、上側カップリング17Bをフランジ16上の下側カップリング17Aに載せつけて咬合させるだけで、ハースカップリング17の自動調芯機能によって下リム4は高い精度、かつ、再現性よくスピンドル2と同芯状態となる。このように下リム4とスピンドル2とは、高い精度で同芯に結合されるので、芯出し作業が不要となる。しかも、高い再現性で同芯に結合されるので、タイヤバランス測定装置自体の回転部分のアンバラス量を補正するための校正作業を再び行う必要がない。
【0030】
上記のようにしてスピンドル2と同芯に装着した下リム4をスピンドル2に連結固定する一対のチャック機構19が、図4におけるA-A断面図である図5に示すように、スピンドル2の軸心xに対して対角位置に備えられている。
【0031】
図4,5に示すように、このチャック機構19は、下リム4の下面から下方に突出させたロック部材としてのロックピン20を、前記フランジ16の外周部に配備固定された支持ケース21に挿入して、その上方への抜け出しを阻止することで下リム4を連結固定するよう構成されている。
【0032】
ロックピン20には、後述の図10に示すように、環状の係合溝22が備えられており、他方、支持ケース21には、図4,図5及び図7に示すようにロックピン20を上方から挿入可能な支持ボス23と、この支持ボス23に外嵌されて上下スライド可能な操作筒24とが備えられている。
【0033】
支持ボス23には係合部材として複数個(この例では4個)のロックボール25が周方向等ピッチで組み込まれている。ロックボール25は、内外方向に移動可能に外周から挿入されており、内方に移動すると支持ボス内周からロックボール24の一部が突出し、外方に移動すると支持ボス内周から外方へ退避するようになっている。なお、支持ボス23に形成されたボール挿入孔の内端はボール径より若干小さくなっており、ロックボール25が支持ボス内に落ち込むことはない。
【0034】
前記操作筒24の内周面には環状溝26が備えられており、操作筒24が下方にスライドされると、環状溝26がロックボール25より下方に外れて、ロックボール25の外方移動が操作筒24によって当接阻止され、操作筒24が上方にスライドされると、環状溝26がロックボール25に対向してロックボール25の外方への移動空間が形成される。つまり、操作筒24が下方スライド位置にあると、ロックボール25が内方突出されたロック状態に保持され、操作筒24が上方スライド位置にあると、ロックボール25の外方後退が許容されたロック解除状態となるのである。
【0035】
従って、図7に示すように、操作筒24を上方スライド位置に移動させてロック解除状態にすることで、ロックピン20を支持ボス23に挿抜することができ、また、ロックピン20を支持ボス23に挿入した状態で操作筒24を下方スライド位置に移動させてロック状態にすると、操作筒24によって内方に押されたロックボール25がロックピン20の係合溝22に入り込み、ロックピン20の上方への抜け出しが阻止されて、下リム4の連結状態が維持されるのである。
【0036】
上記ロックおよびロック解除を行う操作筒24は駆動スライド操作される。すなわち、操作筒24の下端から延出した軸部24aが下方に突出されるとともに、この軸部24aに外嵌装着した圧縮コイルバネ27によって操作筒24が下方位置、つまり、ロック位置に向けスライド付勢されている。
【0037】
なお、図5に示すように、上記のように構成された一対のチャック機構19の中心を結ぶ対角線が、装置の前後方向に沿った状態にある時の回動位相をスピンドル2および下リム4の基準位置sとしている。
【0038】
図6に示すように、主フレーム1の上壁1bには一対のチャック機構操作用のアクチュエータとしてエアシリンダ28が上向きに配備されている。このエアシリンダ28は、図5に示すように、スピンドル2が上記基準位置sから反時計回り方向に所定角度θ(この例では45度)だけ回転した位相にある時、シリンダ中心上に操作筒24の軸部24aが位置するよう設置されており、スピンドル2がこの回転位相にある状態で、エアシリンダ28のピストンロッド28aを上方に突出作動させて軸部24aを突き上げ操作することで、操作筒24を圧縮コイルバネ27に抗して上方スライド位置に移動させてチャック機構19をロック解除状態にすることができ、この状態でロックピン20の挿抜が可能となる。
【0039】
なお、図4,6に示すように、ピストンロッド28aに連結したステー29には磁性金属からなる一対の検知片30が備えられるとともに、各検知片30の接近を感知する上下一対の近接スイッチ31a,31bが主フレームの上壁1bに配備されており、ピストンロッド28aの位置検知からチャック機構19がロック状態およびロック解除状態のいずれにあるかが判別されるようになっている。
【0040】
スピンドル2は筒軸状に構成されており、図3,図4及び図7に示すように、上リム5の中心から下方に延出された連結軸35が挿入されるフランジ付き筒軸36がスピンドル2の上端部に同芯に連結固定されるとともに、このフランジ付き筒軸36における上下2箇所に、図5に示すように周方向一定ピッチで複数個(この例では8個)ずつロックボール37が組み込まれている。
【0041】
連結軸35の下部外周には、図7,図8に示すように上下2組のロックボール群が入り込む環状の係合溝38が一定のピッチで多数形成されている。なお、連結軸35の上端には、図示されていない昇降装置のチャック機構に把持されて吊下げ保持される把持軸39が連結されるとともに、リム交換時に利用する下リム支持軸40が連結軸35に外嵌連結されており、この下リム支持軸40の機能については後述する。
【0042】
前記ロックボール37は、内外方向に移動可能に外周から挿入されており、内方に移動するとフランジ付き筒軸36の内周にロックボール37の一部が突出し、連結軸35が挿入されている場合にはロックボール37が連結軸35の係合溝38に入り込む。また、ロックボール37が外方に移動すると、フランジ付き筒軸36の内周から外方へ退避し、連結軸38の挿抜が許容されるようになっている。なお、ボール挿入孔の内端はボール径より若干小さくなっており、連結軸35が挿入されていない状態でもロックボール37がフランジ付き筒軸36の内部に落ち込むことはない。
【0043】
フランジ付き筒軸36の外側には、図4,図7に示すように操作筒軸41が上下スライド可能に外嵌配備されている。この操作筒軸41の内周面における上下2箇所には環状溝42が備えられており、操作筒軸41が下方にスライドされると、各環状溝42がロックボール37より下方に外れ、操作筒軸41でロックボール37の外方移動が当接阻止される。また、操作筒軸41が上方にスライドされると、各環状溝42がロックボール37に対向し、ロックボール37の外方への移動空間が形成される。つまり、操作筒軸41が下方スライド位置にあると、ロックボール37が内方突出されたロック状態に保持され、操作筒軸41が上方スライド位置にあると、ロックボール37の外方後退が許容されたロック解除状態となるのである。
【0044】
図3に示すように操作筒軸41の下端からは小径軸部41aが延出されて支持ケーシング3の下部の対向する板状体3b,3b間まで延びている。操作筒軸41及び小径軸部41aは、スピンドル2の中空内部に所定のストロークで摺動可能に挿入されている。小径軸部41aの外周には圧縮コイルバネ43が外嵌装着されており、バネ上端がスピンドル側のバネ受けカラー44に支持されるとともに、バネ下端が小径軸部41aのばね受けカラー45に支持されている。従って、この圧縮コイルバネ43の弾発力によって操作筒軸41が下方のロック位置に向けてスライド付勢されている。
【0045】
また、小径軸部41aの内部には、操作筒軸41の内部に連通する通気孔46が形成されているとともに、図示されていない加圧空気供給装置に連通接続されたロータリジョイント47が小径軸部41aの下端部に装備されており、上下リム間に装填したタイヤWを膨張するための加圧空気を、ロータリジョイント47および小径軸部41aの通気孔46を経て操作筒軸41の内部に供給することができるようになっている。
【0046】
小径軸部41aの下端近くには操作フランジ41bが備えられるとともに、支持ケーシング3における対向する板状体3b,3b間には、エアシリンダ48で上下移動される操作部材49が配備されており、エアシリンダ48を突出作動させて操作部材49を上方に移動させると、操作部材49によって操作フランジ41bが突き上げ操作され、操作筒軸41が圧縮コイルバネ43に抗して上方にスライドされ、上記したロック解除状態がもたらされる。
【0047】
次に、図8及び図10に示すように上リム5の連結軸35に外嵌連結された前記下リム支持軸40について説明する。この下リム支持軸40の下端部には、4本のフランジ爪50が放射状に設けられている。この場合、上リム5の把持軸39は周方向で一定の向きで把持されているので、上リム5の昇降にかかわらずフランジ爪50の周方向姿勢は不変である。
【0048】
他方、下リム4の中央開口部位には内向きフランジ部材51が固着されるとともに、この内向きフランジ部材51の内周には、図9に示すようにフランジ爪50の通過を許容する4個の切欠き凹部52が形成されている。
【0049】
そして、図9(a)に示すように、スピンドル2が予め設定された基準位置sにあると、フランジ爪50と切欠き凹部52とが一致して、フランジ爪50を内向きフランジ部材51の上下に通過移動させることができ、上リム5だけを昇降させることができる。また、図9(b)に示すように、フランジ爪50を内向きフランジ部材51の下まで下降させた状態でスピンドル2を上記基準位置sから反時計回り方向に所定角度θだけ回動させることで、内向きフランジ部材51をフランジ爪50で下方から係合することができ、この状態では上リム5を上昇させることで下リム4をフランジ爪50に引っ掛け支持して一体上昇させることができる。
【0050】
なお、フランジ爪50の上面にはキー50aが突設されるとともに、内向きフランジ部材51の下面には、前記キー50aが係入される溝51aが放射状に形成されており、内向きフランジ部材51がフランジ爪50に引っ掛けられて下リム4が持ち上げられる時、キー50aと溝51aとの係合によって、下リム4が不用意に位置ずれ回動することがないように構成されている。
【0051】
タイヤバランス測定装置の主要部は以上のように構成されており、次に、その作動およびタイヤサイズの変更に伴うリム交換作動について説明する。
【0052】
〔タイヤ測定作動〕
(1)初期セット状態では、下リム4がスピンドル2に同芯に連結固定されて上記した基準位置にある。この時、上リム5は下リム4から上方に大きく離れた待機位置に上昇している。
【0053】
(2)図示されていないが、タイヤバランス測定装置の左右にはローラ式の搬入搬出コンベアが備えられており、測定対象のタイヤWが水平姿勢で搬入された後、水平に揺動移動する押圧ローラ群によって位置決めされ、タイヤWの下側ビード部が下リム4に嵌合される。
【0054】
(3)次に、待機位置の上リム5が下降される。この場合、スピンドル側では操作筒軸41がエアシリンダ48によって上記のように上方にスライド操作されてロック解除状態にある。従って、上リム5の連結軸35はフランジ付き筒軸36に挿入することができるとともに、フランジ爪50は基準位置にある下リム4の内向きフランジ部材51を下方に通過することができる。
【0055】
(4)上リム5が装着したタイヤの幅に対応して予め設定された高さ位置に至るとその下降が停止され、その後、エアシリンダ48が後退作動して操作筒軸41が下方のロック位置に付勢スライドする。ここで、連結軸35に形成した係合溝38のピッチはタイヤサイズの変更ピッチに対応されているので、上下2組のロックボール37はそれぞれいずれかの係合溝38に対向し、下方スライドする操作筒軸41に押されてロックボール37が対応する係合溝38に係合される。これによって上リム5の上下方向での位置決めロックが完了する。
【0056】
(5)次に、スピンドル2に加圧空気が供給され、供給された加圧空気は、図10に示すように連結軸35の内部に沿って形成された通気路53、その奥端に形成した放射状の通気孔54、および、下リム支持軸40に形成した通気孔55を経てタイヤWの内部に供給される。
【0057】
(6)タイヤWが所定の圧まで膨張されると加圧空気の供給が停止され、その後、サーボモータ12が起動されてスピンドル2が回転され、上下リム4,5で挟持されたタイヤWを所定の速度で回転したときにアンバランスにより発生する水平方向の遠心力が、支持ケーシング3に連結された上下のロードセル8で検出される。検出されたデータはロータリエンコ−ダ14からの回転位置情報とともに演算処理装置に伝達され、タイヤWの動的釣合いが演算されるとともに、軽点位置などの演算がなされる。
【0058】
(7)測定が終了すると、下リム4が元の基準位置に戻されるようにスピンドル2が回転制御されるとともに、タイヤWの空気が抜かれる。その後、エアシリンダ48によって操作筒軸41が再び上方移動されてロック解除状態がもたらされる。次に、上リム5が上昇制御され、連結軸35がフランジ付き筒軸36から抜き出されてゆくとともに、フランジ爪50も内向きフランジ部材51を通過し、上リム5は元の待機位置に復帰して次の測定処理に備えられる。
【0059】
(8)測定を終えたタイヤWはコンベアに移載されて搬出され、これで1回の測定が完了し、以後、新たなタイヤ搬入のつど上記手順を順次繰り返す。
【0060】
〔リム交換作動〕
(1)測定対象となるタイタWのサイズ変更に伴って上下リム4,5の交換が必要となった場合、先ず、下リム4を上記基準位置に回転制御し、かつ、エアシリンダ48を突出作動させた上記ロック解除状態にし、この状態で、フランジ爪50が内向きフランジ部材51を下方に通過するまで上リム5を下降させる。
【0061】
(2)次に、スピンドル2を回転制御して、下リム4だけを上記基準位置sから所定角度θ(45度)だけ反時計回り方向に回転させる。これによって、図9(b)に示すように、フランジ爪50が内向きフランジ部材51における隣接する切欠き凹部52の中間に位置する状態となる。また、下リム4が基準位置sから所定角度θだけ回転させることで、下リム4を固定しているチャック機構19がエアシリンダ28の直上に位置される。
【0062】
(3)次に、エアシリンダ28を突出作動させてチャック機構19のロックを解除して、ロックピン20を抜き出し可能な状態にする。
【0063】
(4)このロック解除状態のまま上リム5を上昇させることで、図10に示すように、フランジ爪50と内向きフランジ部材51との係合によって引っ掛け支持された下リム4は上リム5と共に上昇される。
【0064】
(5)上リム5が待機位置まで上昇されると、予め用意されている別サイズの上下リムが軸心x上に入れ替えセットされる。この入れ替えセットにはターレット方式が採用される。この方式では、昇降部材の周方向複数位置にそれぞれ把持機構を備えて、各把持機構に異なったサイズの上下リム(下リムは上リムに吊下げ支持)を装着しておき、昇降部材を旋回させて使用するリムの取替えを行う。なお、各把持機構に支持された下リム4は、上記した基準位置sから所定角度θだけ反時計回り方向に回動した回動位相にセットしておく。
【0065】
(6)昇降装置でのリム取替えが完了すると、昇降装置を下降作動させて上下リム4,5をスピンドル2上に搬入する。下降してきた下リム4の下部には、歯を下向きにした上側カップリング17Bが備えられており、この上側カップリング17Bが、スピンドル2の上部に歯を上向きにして備えられたた下側カップリング17Aに載置され、歯同士の咬合によって上側カップリング17Bが下側カップリング17Aに対して同芯に咬合連結される。
【0066】
なお、図6に示すように、主フレーム1の上面には、ハースカップリング17の咬合部位を水平に横断するよう光路を設定した投光用光ファイバー56と受光用光ファイバー57が対向配備されており、咬合部位に大きい隙間が発生していると、光の通過感知によって咬合不良が検知されて以後の作動が自動停止されるとともに、警報作動等の処理が行われるようになっている。この咬合不良の検知は、測定終了の後、上リム5が上昇される際に、上リム5および下リム4へのタイヤビード部の強い貼り付けによって、下リム4がタイヤWを介して上リム5と一体に持ち上げられようとし、ハースカップリング17の咬合部位に大きい隙間が発生した場合の検知に有効である。
【0067】
(7)また、基準位置sから反時計回り方向に所定角度θだけ回動した姿勢にしてある下リム4のロックピン20はチャック機構19に対向し、かつ、この時、チャック機構19はエアシリンダ28によって予めロック解除状態にあり、下リム4の下降に伴ってロックピン20がチャック機構19に円滑に挿入される。
【0068】
(8)下リム4が下限まで下降してロックピン20がチャック機構19に挿入されると、エアシリンダ28の退入作動によってチャック機構19はロック状態となり、ハースカップリング17によってスピンドル2に芯合わせ連結された下リム4の固定が完了する。
【0069】
(9)この場合、下リム4が下限まで下降した後も、フランジ50が内向きフランジ部材21を下方に通過するまで上リム5は更に下降される。
【0070】
(10)以上の下リム固定作動が完了すると、スピンドル2および下リム4が逆向き(時計回り方向)に所定角度θだけ回転制御されて再び基準位置sに戻され、これによって、フランジ爪50が内向きフランジ部材51を上下に通過できる状態となる。
【0071】
(11)その後、上リム5を待機位置まで大きく上昇させることで、リム交換が終了する。
【0072】
(他の実施形態)
本発明は、以下のような形態で実施することもできる。
【0073】
(1)上記実施形態のチャック機構19は、ロック状態に付勢した操作筒24をエアシリンダ28でロック解除方向に駆動移動させて係合部材としてのロックボール25の移動を制御する構造としているが、その他種々の形態を選択することができる。例えば、スライド式のロック軸や、回動式のフック部材などの係合部材を直接にエアシリンダ、電磁ソレノイド、モータなどのアクチュエータで駆動移動させる構造とすることもできる。
【0074】
(2)本発明は、アクチュエータを自動制御あるいは遠隔制御してリムを自動的に交換する場合に限らず、作業者が下リムを持ってきて交換するような手動によるリムの交換にも適用できるものであり、この場合にも、芯出し作業、再校正作業やボルト締め作業が不要となる。
【0075】
(3)上記実施形態では、上リム5の昇降を利用して下リムをも搬入搬出するようにしているが、下リム4の搬入搬出を専用の別手段で行う形態とすることもできる。
【0076】
(4)ハースカップリング17の咬合不良を検知する手段として、リミットスイッチや近接スイッチなどの接触式あるいは非接触式の位置センサを用いることも可能である。
【符号の説明】
【0077】
2 スピンドル
4 下リム
5 上リム
19 チャック機構
20 ロック部材(ロックピン)
25 係合部材(ロックボール)
28 アクチュエータ(エアシリンダ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤを挟持した上リムと下リムとを、下リムに連結したスピンドルで駆動回転させてタイヤの動的釣合いを測定するタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置であって、
前記スピンドルに自動調芯機能を有するカップリングの下側カップリングを同芯に連結固定する一方、前記下リムに前記カップリングの上側カップリングを同芯に連結固定し、下リムの上側カップリングをスピンドルの下側カップリングに咬合するとともに、スピンドルに対する下リムの上方離脱をチャック機構で阻止する、
ことを特徴とするタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置。
【請求項2】
前記チャック機構を、前記下リムに備えたロック部材に、前記スピンドル側に備えた係合部材を係合させる、
請求項1に記載のタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置。
【請求項3】
前記係合部材をアクチュエータで駆動操作する、
請求項2に記載のタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置。
【請求項4】
前記カップリングの咬合不良を検知する検知手段を備える、
請求項1ないし3のいずれかに記載のタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置。
【請求項5】
昇降される前記上リムによって前記下リムを吊下げ支持可能とした、
請求項1ないし4のいずれかに記載のタイヤバランス測定装置におけるリム交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−36952(P2013−36952A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175570(P2011−175570)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】